説明

口腔を保護する枕

【目的】横向き寝の姿勢でも就寝者の頭部を安定的に支持しながら就寝者の口腔領域へ悪影響を確実に無くすことができる、口腔を保護する枕を提供する。
【構成】ユーザーの後頭部を支持するための頭頂側袋体であって、平面が左右に細長い略長方形状に形成されている頭頂側袋体と、ユーザーの耳周辺部及び頸部を支持するための頸部側袋体であって、その左右両端部に、前記頭頂側袋体の左右両端部に近い部分からそれぞれユーザーの胴体中央方向に向かう斜め方向に略円弧状に切り欠かれて成る欠損部であってユーザーが横向きで寝るときに前記ユーザーの顎部が対向する欠損部が形成されている頸部側袋体と、前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部及びその近傍に形成されている断面略V字状の凹部とを備えて成る枕である。前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部に繊維を互いに絡み合わせて成る多数の粒状体が充填・収容されているのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として横向きの姿勢で就寝するのが癖になっている人のための枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、横向き、仰向け、又はうつ伏せの姿勢で就寝する人のために、各姿勢に適した枕が提案されている。例えば、特許文献1は、横向き姿勢で寝るときに適した枕として、耳の部分を空洞部にした枕を提案している。これによると、横になってテレビ等を見る場合にメガネを掛けたままでも使用できる、耳が枕で押し付けられて耳が痛くならないようにできる、などの効果が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−139655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が提案している枕を使用して横向き姿勢で就寝する場合、ユーザーの顎や頬も枕に当たって枕で押圧されてしまうことになるが、そのような状態が長く継続されると、口腔領域に重大な悪影響を及ぼすことが少なくない。
【0005】
すなわち、一般に、持続的に骨に力が加わるとわずか5mgの力でも破骨細胞・造骨細胞の働きにより骨が添加吸収を起こし、骨は形態を変え、歯は位置を変える、とされている。人間の頭部の重さは成人で5kg前後あり、横向き寝などで大臼歯にかかる側方からの力は30〜200gにもなる。したがって、仮に8時間、横向きで寝たとすると、1日の3分の1もの間、歯が変位し始める力(上記の5mgの力)の数倍から数十倍の力が加わり続けることになるので、当然、歯は移動し、歯列の崩壊につながる。すなわち、このような横向き寝という睡眠態癖が継続すると、例えば、歯軸の傾斜、歯列の変形、咬合平面の非対称、顎位の変位、顔面の捩れなどのような、様々な口腔領域への悪影響が生じてしまう。
【0006】
このような口腔領域への悪影響という点からは横向き姿勢での就寝は避けた方がよいといえるが、しかし、他方、横向き姿勢でないと良好な眠りに付けないという人も居る。したがって、そのような横向き寝の癖のあるユーザーのためには、横向き姿勢のときでも就寝者(ユーザー)の頭部を安定的に支持して良好な睡眠を維持できるようにしながら、同時に、横向き姿勢による口腔領域への悪影響を防止することが必要である。
本発明はこのような従来技術の課題に着目してなされたものであって、横向き姿勢のときでも、横向き寝中のユーザーの頭部を安定的に支持して、良好な睡眠を維持させながら、枕が横向き寝中のユーザーの顎部に当たることを防止して、横向きで寝るという睡眠態癖が就寝者(ユーザー)の口腔領域へ悪影響を及ぼしてしまうことを確実に防止することができる、口腔を保護する枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための本発明による口腔を保護する枕は、ユーザーの後頭部を支持するための、所定の内容物が入れられた頭頂側袋体であって、平面が細長い略長方形状に形成され、そのユーザーから見て左右方向の長さがユーザーの額の左右いずれか一方の側部(こめかみ又はその近傍部分)から後頭部を介してユーザーの額の左右いずれか他方の側部(こめかみ又はその近傍部分)に至るまでの距離と略同一かこれよりも大きい(例えば2〜3cmくらい大きい)長さ寸法に形成されている、頭頂側袋体と、ユーザーの耳周辺部及び頸部を支持するための、所定の内容物が入れられた頸部側袋体であって、(a)その上端部が、前記頭頂側袋体の頸部側に、これと隣接するように縫製などで接続されており、(b)その平面が上下逆向きの略台形状に形成されており、(c)その左右両側(左右両端部)に、その前記頭頂側袋体の左右両端部に近い部分からそれぞれユーザーの胴体中央方向に向かう斜め方向の略円弧状(曲線状)もしくは略直線状の境界線により画されている欠損部であってユーザーが横向きで寝るときの前記ユーザーの顎部と対向する欠損部、が形成されており、(d)その全体のユーザーから見て上下方向の長さが「ユーザーの頸部の上下方向の長さ、すなわちユーザーの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さ(例えばこれに1〜2cmだけプラス又はマイナスして成る近似する長さ)に形成されており、(e)その前記頭頂側袋体側に近い部分のユーザーから見て左右方向の長さがユーザーの左右いずれか一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と略同一の又はこれに近似する長さ(例えばこれに1〜2cmだけプラス又はマイナスして成る近似する長さ)に形成されており、(f)その前記頭頂側袋体側から離れている部分のユーザーから見て左右方向の長さがユーザーの左右いずれか一方の顎部の後頭部側から頸部の背側を介して他方の顎部の後頭部側に至るまでの距離と略同一の又はこれに近似する長さ(例えばこれに1〜2cmだけプラス又はマイナスして成る近似する長さ)に形成されている、頸部側袋体と、前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部及びその近傍部分にユーザーから見て左右方向に沿って形成されている断面略V字状の凹部であって、前記頸部側袋体から前記頭頂側袋体に近づくに従ってユーザーから離れる方向に傾斜するように形成されておりユーザーが横向き寝の姿勢にあるときにユーザーの耳部が配置される傾斜部、を含む凹部と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明においては、前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部に、多数の天然繊維もしくは化学繊維が互いに絡み合わされることにより直径2〜7mmの略球状に形成されて成る粒状体が、多数個、収容されている、ことが望ましい。さらに、本発明においては、前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部に、ゲル状の保冷剤を封入した柔軟な袋体が1つ又は複数個、収容されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
1.本発明による作用効果
(1)本発明の上記構成(上記の頭頂側袋体、頸部側袋体、及び、凹部)によれば、ユーザー(就寝者)が本発明に係る枕を使用して横向きで就寝するとき、詳しくは後述するように、ユーザーの頭部と頸部側袋体との上下方向及び左右方向の位置関係が常に一定に保つことができる。
(2)よって、本発明によれば、ユーザーが横向き寝の姿勢のときでも、
(a)ユーザーの頭部の顎から前方を除く部分(額の側後部と耳周辺部と頸部)が、常に、前記頭頂側袋体及び前記頸部側袋体の上に確実に配置されるため、ユーザーの頭部を常に安定的に支持することができると共に、
(b)ユーザーの顎部(歯に対向する部分)が前記欠損部(空洞部)に確実に対向されるため、『ユーザーの顎部が枕に当たること』が無くなり、ユーザーの顎部が枕によって圧迫されてしまう(前記圧迫により歯列が変形してしまう)ことが確実に防止することができる
(3)すなわち、ユーザーの横向き寝の睡眠態癖がユーザーの口腔領域(歯列・顎部)へ悪影響を及ぼしてしまうことを防止するためには、「枕がユーザーの顎部に『当たらない』(枕が顎部を圧迫しない)」ようにすればよいが、単純に「ユーザーの顎部に『当たらない』(顎部を圧迫しない)ような枕」を作製しても、そのような枕ではユーザーの頭部を安定的に支持して快適な眠りを享受することができない。
そこで、本発明においては、前述のような特別の構成(上記の頭頂側袋体、頸部側袋体、及び、凹部)を採用することにより、ユーザーの頭部と頸部側袋体との上下方向及び左右方向の位置関係を常に一定に保てるようにし、これにより、ユーザーの頭部を安定的に支持しながら同時に「枕がユーザーの顎部に『当たらない』(=枕が顎部を圧迫しない)」ようにすることを可能にした、ものである。
(4)以上、要するに、本発明によれば、(a)就寝者(ユーザー)が横向き姿勢のときでも、横向き寝中のユーザーの頭部を安定的に支持して、良好な睡眠を維持させながら、同時に、(b)枕が横向き寝中のユーザーの顎部に『当たる』ことを防止して、横向きで寝るという睡眠態癖が就寝者(ユーザー)の口腔領域へ悪影響を及ぼしてしまうことを確実に防止する、ことができるようになる。
【0010】
2.本発明による作用効果の詳細
本発明による作用効果の詳細を述べると、次のとおりである。
(1)ユーザーの頭部と頸部側袋体との上下方向の位置関係
本発明においては、ユーザーの耳周辺部及び頸部を支持する前記頸部側袋体の全体のユーザーから見て上下方向の長さが、「ユーザーの頸部の上下方向の長さ、すなわちユーザーの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さに形成されているので(また、さらに、前記頸部側袋体2はユーザーの頸部(耳部から肩までの部分)の背側や側部の凹形状に適合する盛り上がり形状(凸形状)を有しているので)、前記頸部側袋体は、常に、ユーザーの耳周辺部と肩との間に挟まれた状態に位置決め・保持されることになる。その結果、前記頸部側袋体とユーザーの頭部(特に、その耳周辺部及び頸部)とのユーザーから見て上下方向の位置関係は、常に、一定に保持(位置決め)されるようになる
また、本発明においては、前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部の周辺に、ユーザーから見て左右方向に沿って形成されている断面略V字状の凹部が形成されており、ユーザーが仰向け又は横向きの姿勢で寝ているときは、常に、ユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出した部分(凸状部分)が前記凹部に入り込むようになるので、この点からも、ユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出した部分(凸状部分)が前記凹部との関係で常に位置決めされることになり、その結果、前記頸部側袋体とユーザーの頭部(特に、その耳周辺部及び頸部)との上下方向の位置関係が、常に、一定に保持(位置決め)されるようになる
【0011】
(2)ユーザーの頭部と頸部側袋体との左右方向の位置関係
また、本発明においては、ユーザーの耳周辺部及び頸部を支持する前記頸部側袋体の前記頭頂側袋体側に近い部分のユーザーから見て左右方向の長さが「ユーザーの左右の一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さに形成されており、且つ、その前記頭頂側袋体側から離れている部分の左右方向の長さが「ユーザーの顎部の後ろ側から左右の一方の頸部の背側を介して他方の顎部の後ろ側に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さに形成されているので、ユーザーが(仰向け寝の姿勢を介して)横向き寝の姿勢になったときは、常に、ユーザーの耳部から顔前方に向かう側(つまり顎部)が前記欠損部(空洞部)に対向し、ユーザーの顎部が枕に当接しない(ユーザーの顎部が前記欠損部に対向する)ことになる。
【0012】
(3)傾斜部の作用効果
また、本発明においては、前記頸部側袋体の前記頭頂側袋体に近い部分に、ユーザーが横向き寝の姿勢にあるときにユーザーの耳部が配置される傾斜部が形成されているので、ユーザーが横向き寝の姿勢をとるときは、常に、ユーザーの耳部が前記傾斜部の中に入り込むので、ユーザーは耳が枕に圧迫されることによる痛み又は不快感を感じることがなくなると共に、ユーザーの耳部が常に前記傾斜部の中に入り込む(位置決めされる)ことによりユーザーの耳部と前記傾斜部すなわち前記頸部側袋体との位置関係が常に一定に保持(位置決め)される。よって、ユーザーが横向き寝の姿勢になったときは、常にユーザーの顎部が前記欠損部(空洞部)に対向(位置決め)されて、ユーザーの顎部が枕で圧迫されて力が加えられてしまうことが、より確実に防止されるようになる。なお、本発明において、前記傾斜部は、前記凹部の一部を構成するものである。
【0013】
このように、本発明においては、前記頸部側袋体とユーザーの頭部(特に、その耳部及び頸部)との、上下方向の位置関係、及び左右方向の位置関係が、常に一定に保持(位置決め)され、且つ、ユーザーが横向き寝の姿勢になったときはユーザーの耳部から顔前方に向かう側(つまり顎部を含む部分)が常に前記欠損部に対向する(前記枕がユーザーの顎部に当たらない)ことになる。よって、本発明によれば、ユーザーが左右いずれかの横向きで就寝するとき、ユーザーの顎部が枕で圧迫されて力が加えられ口腔領域に悪影響が生じてしまうこと(歯列の変位など)を、常に、確実に防止できるようになる。
【0014】
3.本発明による他の作用効果
さらに、本発明において、前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部に、多数の天然繊維もしくは化学繊維が互いに絡み合わされることにより直径2〜7mmの略球状に形成されて成る粒状体が、多数個、収容(封入)されるようにしたときは、ユーザーの頭部に対応する部分が必要以上に凹むことがなく、ユーザーの頭部を安定的に保持して快適な睡眠を促進することができる。また、本発明において、前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部に、ゲル状の保冷剤を封入した柔軟な袋体が1つ又は複数個、収容するようにしたときは、頭部を安定的に保持しながら頭部を冷却して睡眠導入を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による口腔を保護する枕を示す斜視図である。
【図2】(a)は本実施例1の平面図、(b)はそれを布団かベッド・マットレスに置いたときの中央断面図である。
【図3】本実施例1を頸部側袋体の側から見たときの正面図である。
【図4】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが仰向けの姿勢で寝ているときの状態を示す平面図である。
【図5】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが仰向けの姿勢で寝ているときの状態を示す側面図である。
【図6】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが横向き(右向き)の姿勢で寝ているときの状態を示す平面図である。
【図7】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが横向き(右向き)の姿勢で寝ているときの状態を示す側面図である。
【図8】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが横向き(左向き)の姿勢で寝ているときの状態を示す平面図である。
【図9】本実施例1の動作を説明するための図で、ユーザーが横向き(左向き)の姿勢で寝ているときの状態を示す側面図である。
【図10】本実施例1の比較例による枕を使用して横向きの姿勢で寝たときの動作(不都合・問題点)を説明するための図である。
【図11】本発明の実施例2による口腔を保護する枕を示す斜視図である。
【図12】(a)は本実施例2の平面図、(b)はそれを布団かベッド・マットレスに置いたときの中央断面図である。
【図13】本実施例2を頸部側袋体の側から見たときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0017】
1.実施例1の構成
図1は本発明による口腔を保護する枕を示す斜視図、図2(a)は本実施例1による枕の平面図、図2(b)はそれを布団かベッド・マットレスに置いたときの中央断面図、図3は本実施例1による枕を前記頸部側袋体側から見た正面図(本実施例1が空間に浮かんでいるときの状態を仮想的に示す図)、である。
図1−3において、1はユーザーの後頭部を支持するための(ユーザーの頭部の後部又は側部の頭頂側を載せるための)頭頂側袋体、2はユーザーの耳周辺部及び頸部を支持するための(「ユーザーの、頸部の後ろ側を含む、耳周辺部から肩までの間の部分」を載せるための)頸部側袋体、である。前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2には、それぞれ、袋体を開閉するためのファスナーを含む開閉部11,12が形成されている。
なお、本実施例1では、予め用意された一つの袋体の中央(図1,2の境界部3)の上下の布を縫製することにより、これを2つの袋体に分離し、分離したそれぞれを前記頭頂側袋体1及び前記頸部側袋体2としている。
【0018】
本実施例1において、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内部に、前記開閉部11,12を介して、内容物(詰め物)として、多数の天然繊維を互いに絡み合わせることにより直径2〜7mmの略球状に形成して成る粒状体(粒状ウール)を、多数個、充填・封入(収容)している。本実施例1では、この粒状体として、例えば有限会社小池経編染工所(群馬県足利市西宮町2833)製の粒状ウールである「Le Berceau Blanc(ル・ベルソ・ブラン)」(商標)を、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内部に充填・封入(収容)している。(このように繊維製の粒状ウールを前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内部に充填・封入するようにしたときは、これらを使用するユーザーの頭部を安定的に保持して快適な睡眠を促進することができる)。
なお、本実施例1では、前記の繊維を封入した柔軟な袋体に代えて、ゲル状の保冷剤を封入した柔軟な袋体を使用するようにしてもよい。このゲル状の保冷剤としては、例えば、透明なゲル状保冷剤をビニール袋に封入して成るパール金属株式会社(新潟県三条市五明190)製の「COOL TIME(クールタイム)」(商標)などを採用することができる(このように保冷剤を封入した柔軟な袋体を前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内部に入れるようにしたときは、これらを使用するユーザーの頭部を安定的に保持しながら頭部を冷却して睡眠導入を促進することができる)。
また、本実施例1では、前記繊維を封入した袋体や繊維を封入した袋体に代えて、従来の枕で使用されている樹脂製の微小リング、ビーズ、そば殻などの詰め物(内容物)を前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内部に収容するようにしてもよい。
【0019】
また、図2(a)に示すように、前記頭頂側袋体1は、その平面が略長方形状に形成されており、その図示左右方向の長辺の長さが、ユーザーの額の左右いずれか一方の側部(こめかみ又はその近傍部分)から後頭部を介してユーザーの額の左右いずれか他方の側部(こめかみ又はその近傍部分)に至るまでの距離(例えば約30〜36cm)又はそれよりも大きい長さ(例えば横に長いタイプの枕で一般的なサイズである約60cm以下)、すなわち約30〜60cm(より望ましくは約30〜50cm)の長さに、本実施例では約42cmに、形成されている。また、前記頭頂側袋体1の図示上下方向の短辺は、ユーザーの後頭部を支持するために十分な長さに、例えば約8〜20cmの長さに、より望ましくは約8〜15cmの長さに、本実施例では約9.5cmに、形成されている(なお前記の約9.5cmは、内部に内容物を封入しているときの平面から見たときのサイズであり、内容物を封入していないときの同短辺の長さは約11cmとなる)。
【0020】
また、図2(a)に示すように、前記頸部側袋体2は、その平面の全体が逆向きの略台形状に形成されている。また、前記頸部側袋体2は、その図示上下方向の長さが、「ユーザーの頸部の長さ、すなわちユーザーの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の長さ又はこれに近似する長さに、例えば約9〜15cmに、より望ましくは約10〜14cmに、本実施例では約12cmに、形成されている(なお前記の約12cmは、内部に内容物を封入しているときの平面から見たときのサイズであり、内容物を封入していないときの同上下方向の長さは約14cmである。本明細書で述べるサイズが原則として「内部に内容物を封入しているときの平面から見たときのサイズ」を示していることは以下も同様である)。
【0021】
また、図2(a)に示すように、前記頸部側袋体2は、その上辺(その前記頭頂側袋体1に接する部分の辺=後述の境界部3に沿う左右方向の辺)2aの図示左右方向の長さが、ユーザーの左右一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と略同一の長さ(例えば約30〜34cm)若しくはこれと近似する長さ(例えば約28〜38cm)と前記頭頂側袋体1のユーザーから見て左右方向の長さと略同一の長さ(前述のように例えば約30〜60cm)とのいずれかの長さに、例えば約28〜60cm(又は約30〜60cm)に、より望ましくは約28〜50cmに、本実施例では前記頭頂側袋体1の長辺と同じ約42cmに、形成されている(図2(a)では約42cmの場合を表示している)。
また、前記頸部側袋体2は、その前記頭頂側袋体1側に近い部分(前記頭頂側袋体1と接する前記辺2aの部分より少し図示下方の部分。図2の符号5で示す部分の一部)の図示左右方向の長さが、ユーザーの左右一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と略同一の長さ(例えば約30〜34cm)若しくはこれに近似する長さ(前記上辺2aよりも短い長さである、例えば約26〜36cm)に、形成されている。
また、前記頸部側袋体2は、その下辺(その前記頭頂側袋体1側から離れている部分)2bの図示左右方向の長さが、ユーザーの左右一方の顎部の後頭部側から頸部の背側を介して他方の顎部の後頭部側に至るまでの距離と略同一の長さ(例えば約20〜24cm)又はこれに近似する長さ(例えば約18〜26cm(又は約20〜26cm))に、本実施例では23cmに、形成されている。
【0022】
また、図2(b)に示すように、前記頭頂側袋体1は、その厚さが例えば3.5cmに形成されている。また、前記頸部側袋体2は、その厚さが例えば4.5cmに形成されている。このように、本実施例1では、前記頭頂側袋体1の厚さよりも前記頸部側袋体2の厚さをより大きく形成するようにしている(図3も参照)が、これは、特に横向き寝の姿勢のときのユーザーの頸部(首)と肩の段差を前記頸部側袋体2で十分に吸収できるようにして、ユーザーの頸部(首)と肩を安定的に支持できるようにするためである。
【0023】
また、図1−2において、3は前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2との境界部(仕切り線部)、4は前記頸部側袋体2の図示左右の両端部にそれぞれ形成された、円弧を含む円板(円形)の一部のような形状(もしくは略三角形状)、の欠損部(空洞部)、である。前記欠損部4は、図2(a)に示すように、前記頸部側袋体2の図示左右上方の両端部(前記頭頂側袋体1の近く又はこれと接する部分)4aからその図示中央寄りの斜め下方(ユーザーの胴体中央方向)にある左右両下端部4bにそれぞれ向かう湾曲した略円弧状の曲線4cにより、切り欠かれている(前述のような湾曲した略円弧状の曲線4cにより、前記欠損部4の前記頸部側袋体2との境界が、画されている)。これにより、前記欠損部4は、図示のような、円弧を含む円板(円形)の一部のような形状、に形成されている(なお、本発明では、前記略円弧状の曲線4cは略直線でもよいし、前記欠損部4は、円板(円形)の一部のような形状ではなく略三角形状でもよい)。
【0024】
また、図2(a)(b)において、5は、前記頸部側袋体2の前記境界部3の近傍部分(図2(a)の破線による斜線部分を参照)に形成されている、他の部分よりも薄く且つ前記境界部3に向かって傾斜(斜めに下降)している傾斜部である。なお、図2(b)において、13は布団またはベッド・マットレスである。また、図2において、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2との境界部3の近傍部分に凹部6が形成されており、ユーザーが仰向け又は横向きで寝ているときは、常に、ユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出した部分(耳の周辺部を含む)が前記凹部6に入り込むようになっている。なお、本実施例1において、前記傾斜部5は、前記凹部6の一部を構成するものである。
【0025】
2.実施例1の動作
次に、本実施例1の動作を図4−9に基づいて説明する。
(1)ユーザー10の頭部と前記頸部側袋体2との上下方向の位置関係
まず図4,5はユーザーが本実施例1の枕を使用して横向き寝の姿勢を採る前段階としての仰向けの姿勢を採っている状態を示す図である。図4,5においては、ユーザー10は、頸部(首)と耳部10aの後ろ側を前記頸部側袋体2の上に載せると共に、後頭部の頭頂側を前記頭頂側袋体1の上に載せている。この状態では、図4,5から示唆されるように、本実施例1では、前記頭頂側袋体1及び前記頸部側袋体2の図示上下方向の長さは、ユーザー10の頭部の図示上下方向の長さ(=ユーザーの頭頂から頸部を介して肩に達するまでの長さ)と略一致している。
【0026】
また、図4から示されるように、本実施例1では、前記頸部側袋体2の図示上下方向の長さが「ユーザーの頸部の上下方向の長さ、すなわちユーザーの耳部10aの上端部近傍から肩10bに至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さ(本実施例1では前述のように約12cm)に形成されている。その結果、前記頸部側袋体2は、常に、ユーザーの耳部10aと肩10bとの間に挟まれて、常にユーザー10の頸部に対向するようになっている。そして、さらに、前記頸部側袋体2は、その盛り上がり凸状部分(図5において前記頸部側袋体2の中央の厚さの大きい部分)が、常に、ユーザーの頸部(耳部から肩までの部分)の背側や側部の凹形状に対向・適合するようになっている。したがって、本実施例1では、ユーザー10の頭部が本実施例1の上で仰向けから左右いずれかの横向きに姿勢を変えられても、あるいはその後にユーザーが就寝中に無意識下に動いても、ユーザー10の頭部(特に、その耳周辺部及び頸部)と前記頸部側袋体2との上下方向の位置関係は、常に、一定に保持(位置決め)されるようになっている。
【0027】
また、本実施例1においては、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2との境界部3に前記凹部6が形成されており、ユーザーが仰向け又は横向きに寝ているときは、常に、ユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出した部分が前記凹部6に入り込むようになるので、この点からも、ユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出した部分が前記凹部6との関係で常に安定的に位置決めされることになる結果、前記頸部側袋体2とユーザーの耳部10aの周辺部及び頸部との上下方向の位置関係が、常に、一定に保持(位置決め)されるようになっている。
【0028】
(2)ユーザー10の頭部と前記頸部側袋体2との左右方向の位置関係
また、図4に示すように、本実施例1では、前記頸部側袋体2の図示下方部分(前記下辺2b)の図示左右方向の長さが「ユーザーの左右いずれか一方の顎部の後ろ側から頸部の背側を介してユーザーの左右いずれか他方の顎部の後ろ側に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さ(本実施例1では前述のように約23cm)に形成されている。したがって、本実施例1においては、ユーザー10の頭部が本実施例1の上で仰向けから左右いずれかの横向きの姿勢を変えられても、あるいはその後にユーザーが就寝中に無意識下に頭部を左右方向に回転させても、ユーザー10の顎部10cは、常に、前記頸部側袋体2の前記欠損部(空洞部)4に対向するようになっている(図6,図8参照)。
【0029】
また、図4に示すように、本実施例1では、前記頸部側袋体2の前記頭頂側袋体1に近い部分(前記傾斜部5)の図示左右方向の長さが、「ユーザー10の一方の耳部10aから後頭部を介して他方の耳部10aに達する距離」と略同一か近似の寸法(本実施例1では前述のように約34cm)に、形成されている。したがって、本実施例1においては、ユーザー10の頭部が本実施例1の上で仰向けから左右いずれかの横向きに姿勢を変えられたとき(ユーザーの頭部が左右方向に回転したとき)でも、ユーザー10の右側または左側の耳部10aがちょうど前記頸部側袋体2の図示上方の傾斜部5(他の部分より薄く傾斜している部分)の左右いずれかの端部に配置されるようになっている(図6,図8参照)。
【0030】
このように、本実施例1によるときは、ユーザー10の頭部(特に、その右側または左側の耳部10a及び頸部)と前記頭頂側袋体2との左右方向の位置関係が常に一定に保持(位置決め)され、その結果、ユーザー10が横向きの姿勢で寝るときでも、あるいはその後にユーザーが就寝中に無意識下に頭部を左右方向に回転させても、ユーザーの顎部10cが常に前記欠損部4に対向するようになっており、ユーザー10の顎部10cが枕に当たることが無くなり、ユーザー10の顎部10cが枕で押圧されてしまうことが常に確実に防止できるようになっている。
【0031】
(3)傾斜部5の技術的意義
また、本実施例1では、前記傾斜部5を形成することにより、ユーザー10の頭部が本実施例1の上で仰向けから左右いずれかの横向きに姿勢を変えられたとき(ユーザーの頭部が左右方向に回転したとき)でも、前述のようにユーザーの頭部と前記頸部側袋体2との上下方向の位置関係が常に一定に保持(位置決め)される結果、ユーザー10の耳部10aは常に前記傾斜部5に対向するようになるので、ユーザー10は、耳部10aが枕で圧迫されることによる痛みや不快感を感じなくて済むようになっている。
【0032】
(4)実施例1の動作まとめ
以上のように、本実施例1においては、前記頸部側袋体2を前述のような形状及びサイズに形成することにより、ユーザー10の頭部(特に、その耳周辺部及び頸部)と前記頸部側袋体2との上下方向及び左右方向の位置関係を、たとえユーザー10の頭部の姿勢が就寝中に無意識下に左右方向に回転しても、常に一定に保持(位置決め)できるようにしている。
よって、本実施例1においては、横向きで就寝中のユーザー10の頭部の中の「額の左右の各側部、左右の各耳部10aとその周辺部、及び、頸部(後頭部側の頸部)」は、常に、前記頭頂側袋体1及び前記頸部側袋体2の上に配置される(例えば、ユーザー10の左右の各耳部10aは、前記傾斜部5に常に対向・当接する)ので、ユーザーの頭部は前記頭頂側袋体1及び前記頸部側袋体2により、常に、安定的に支持され、これによりユーザーの良好な眠りが確保されるようになる。
また、本実施例1によれば、就寝中のユーザー10がその頭部の姿勢を無意識に仰向けから横向きにした場合(頭部を左右方向に回転させた場合)などにおいても、ユーザー10の「顎部(歯列などに対向する部分)10c」は、常に、前記欠損部(空洞部)4に対向するようになるので、横向き寝のときにユーザーの顎部10cが枕に当たってユーザーの顎部10cが枕で圧迫されることが無くなり、前記顎部10cを含む口腔領域が枕からの押圧の力で悪影響を受けてしまうこと(歯列の変位など)が確実に防止されるようになる。
【0033】
また、本実施例1においては、2つの分離した袋体1,2に関して、例えば前記頭頂側袋体1の最大厚み(例えば3.5cm)よりも前記頸部側袋体2の最大厚み(例えば4.5cm)の方を、より大きく形成するようにしている。これにより、本実施例1では、例えば図7,図9に示すように、ユーザー10が横向きの姿勢で寝るときに、ユーザー10の肩10bの厚さを前記頸部側袋体2の厚さで吸収することができるので、ユーザー10は、横向きでも、自然な姿勢で楽に就寝することができる。
【0034】
3.比較例について
次に、図10は本実施例1の比較例の枕21を説明するための図である。すなわち、この比較例(公知例ではない)は、本実施例1のように「前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2との2つに分離してそれらの境界部3の周辺に凹部6を形成した枕」ではなく、図10に示すように単にその図示左右下端部にそれぞれ略円弧状の曲面21aにより画される欠損部(空洞部)21bを形成した枕21である。以下では、このような比較例の枕を想定し、これ使用して横向き寝をする場合の動作(問題点)を説明する。
【0035】
(1)ユーザー10の頭部と比較例との上下方向の位置関係
この図10に示す比較例の枕21においては、本実施例1におけるようなユーザーの耳周辺部(上方)と肩(下方)との間の頸部に対向する「独立の(頭頂側袋体とは別個の)頸部側袋体」(本実施例1に関する図5の符号2参照)は、存在していない。したがって、この比較例の枕21においては、ユーザーの頸部(耳部から肩までの部分)の凹形状の部分に対応・適合する盛り上がり凸状部分(図5などに示すような、本実施例1の頸部側袋体2が有している盛り上がり部分)が、存在していない。また、この比較例においては、本実施例1におけるようなユーザーの後頭部又は側頭部の最も突出している凸状部分が入り込む凹部(図5に示す、頭頂側袋体1と頸部側袋体2との間の凹部6)も、存在していない。
【0036】
したがって、この比較例の枕21においては、ユーザーの頸部と比較例の枕との「上下方向の位置関係」は、常に一定することがなく、就寝中のユーザーの無意識下での動きにより常にランダムに変動してしまう。そのため、このような比較例21を使用するときは、当初は、図10(a)に示すようにユーザー10の耳部10aの斜め下方の顎部(歯列に対向する部分)10cが前記欠損部(空洞部)21bに対向する正しい位置にあっても、その後、就寝中におけるユーザー10の無意識下の動きにより、前記ユーザー10の顎部10cが図示上方にずれてしまい、図10(b)に示すような状態、すなわちユーザー10の耳部10aの斜め下方の顎部10cが前記欠損部(空洞部)4に対向しないで枕に対向・当接し圧迫される状態になってしまい、ユーザーの横向き寝という態癖がユーザーの口腔領域に重大な悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。
【0037】
(2)ユーザー10の頭部と比較例との左右方向の位置関係
また、図10に示す比較例の枕21においては、図示下側部分の図示左右方向の長さが前記実施例1の頸部側袋体2の下側部分(頭頂側袋体1から離れている部分)におけるように「ユーザーの左右いずれか一方の顎部の後ろ側から頸部の背側を介してユーザーの左右いずれか他方の顎部の後ろ側に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さ(本実施例1では前述のように約23cm)に形成されている訳ではない。また、この比較例21においては、図示中央部分の図示左右方向の長さは、前記実施例1の頸部側袋体2の傾斜部5(図2(a)の符号5参照)の図示左右方向の長さのように「ユーザー10の一方の耳部10aから後頭部を介して他方の耳部10aに達する距離」と略同一か近似の寸法(本実施例1では前述のように約34cm)に形成されている訳ではない。したがって、この比較例を使用するときは、就寝中におけるユーザー10の無意識下の動きにより、前記ユーザー10の耳部10aが左右方向にずれてしまい、図10(c)に示すような状態、すなわち、ユーザー10の耳部10aまでもが前記欠損部(空洞部)21bに対向している状態になってしまうことがあり得る(このように、耳部10aまでもが前記欠損部に対向する場合は、比較例の枕21がユーザーの頭部を安定的に支持することができず、ユーザーに良好な眠りを与えることができないので、ユーザー10は無意識下でも、自らの頭部を例えば図示上方にずらして、図10(b)などの不都合な状態に移行させてしまう恐れがある)。
【0038】
(3)比較例の動作のまとめ
以上の(1)(2)から明らかなように、図10のような比較例の枕21を使用する場合は、ユーザーが横向きの姿勢で寝るときに、ユーザーの頭部を安定的に支持してユーザーに良好な眠りを与えることも、ユーザーの顎部が枕により圧迫されてユーザーの口腔に悪影響を与えることを防止することも、全く期待できない。
【実施例2】
【0039】
次に、図11は本発明の実施例2を示す斜視図、図12(a)は本実施例2を示す平面図、図12(b)はその縦方向断面図、図13は本実施例2を示す正面図である。本実施例2は前記実施例1の構成と基本的に同じであるが、次の点で異なっている。すなわち、本実施例2では、図12(a)に示すように、ユーザーの頭部を支持する頭頂側袋体1は、その平面が略長方形状に形成されており、その図示左右方向の長辺は、ユーザーの額の左右いずれか一方の側部(こめかみ又はその近傍部分)から後頭部を介して他方の側部(こめかみ又はその近傍部分)に至るまでの距離(例えば32〜34cm)と略同一の長さ(例えば前記距離に1〜2cmだけプラス又はマイナスして成る近似する長さ)、例えば約34cmに形成されている。また、本実施例2では、図12(a)に示すように、ユーザーの頸部を支持する頸部側袋体2は、その図示左右方向の上辺(その前記頭頂側袋体1側に近い部分の左右方向の辺)2aが、ユーザーの左右一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離(例えば32〜34cm)と略同一の長さ(例えば前記距離に1〜2cmだけプラス又はマイナスして成る近似する長さ)、例えば約34cm(前記頭頂側袋体1の長辺とほぼ同じ34cm)に、形成されている。これらの点以外については、本実施例2と前記実施例1と同様である。よって、この本実施例2によっても前記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0040】
以上に説明した実施例1,2は、多数のユーザーの頭部の標準的な形やサイズを想定して、それに対応するように、例えば子供用、大人の女性用、大人の男性用、あるいはS,M,Lなどの予め設定した複数の標準的な形・サイズにそれぞれ適合するように枕を設計し、大量生産し、多数のユーザーに販売することを想定したものである。これに対して、本実施例3は個々の特定のユーザーA毎にその頭部の形やサイズを測定してその個々のユーザーAの頭部の形やサイズに適合するように個別に枕を作製することを想定するものである。
【0041】
すなわち、本実施例3の製造方法は、(A)個々の或るユーザーAの後頭部を支持するための所定の内容物が入れられている頭頂側袋体1であって、平面が細長い略長方形状に形成され、前記ユーザーAから見て左右方向の長さが前記ユーザーAの額の左右いずれか一方の側部から後頭部を介して前記ユーザーAの額の左右いずれか他方の側部に至るまでの距離と略同一かこれよりも大きい長さ寸法に形成されている頭頂側袋体1と、(B)前記頭頂側袋体1と隣接して配置されており前記ユーザーAの耳周辺部及び頸部を支持するための所定の内容物が入れられている頸部側袋体2であって、(a)その上端部が前記頭頂側袋体1の頸部側に接続されており、(b)その平面が上下逆向きの略台形状に形成されており、(c)その左右両側に「その前記頭頂側袋体1の左右両端部に近い部分からそれぞれ前記ユーザーAの胴体中央方向に向かう斜め方向の略円弧状もしくは略直線状の境界線により画されている欠損部4であって前記ユーザーAが横向きで寝るときの前記ユーザーAの顎部と対向する欠損部(空洞部)4」が形成されており、(d)その全体の前記ユーザーAから見て上下方向の長さが、「前記ユーザーAの頸部の上下方向の長さ、すなわち前記ユーザーAの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さに、形成されており、(e)その前記頭頂側袋体1側に近い部分の前記ユーザーAから見て左右方向の長さが、前記ユーザーAの左右いずれか一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と近似する長さと前記頭頂側袋体1のユーザーから見て左右方向の長さと略同一の長さとの間のいずれかの長さに、形成されており、(f)その前記頭頂側袋体1側から離れている部分の前記ユーザーAから見て左右方向の長さが、前記ユーザーAの左右いずれか一方の顎部の後頭部側から頸部の背側を介して他方の顎部の後頭部側に至るまでの距離と略同一の長さ又はこれに近似する長さに、形成されている、頸部側袋体2と、を形成すると共に(このような頭頂側袋体1と頸部側袋体2とを形成することと同時に又は相前後して)、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2との境界部3及びその近傍部分に、前記ユーザーAから見て左右方向に沿って形成された断面略V字状の凹部6であって、「前記頸部側袋体2から前記頭頂側袋体1に近づくに従って前記ユーザーAから離れる方向に傾斜しており前記ユーザーAが横向き寝の姿勢にあるときに前記ユーザーAの耳部が配置される傾斜部5」を含む凹部6を形成する、というものである。
【0042】
この実施例3の上記製造方法により製造される枕は、前記実施例1又は2で述べたものと同じ形状を有するものであり、実施例1,2との違いは、実施例3が仮想的なユーザーではなく個々の具体的なユーザーAに適合するように作製されたものである、ということだけである。この実施例3の上記製造方法により製造される具体的な枕は、実施例1,2に関して説明し且つ図1−9及び図11−13に図示した枕と同様のものである。図1−9及び図11−13に示す枕において、この実施例3では、図4−9のユーザー10が仮想的なユーザーではなく個々の具体的なユーザーAであることが実施例1,2と異なる点である。なお、本実施例3の枕を製造する場合、前記頭頂側袋体と頸部側袋体とは、それぞれ別個に作製してそれらを縫製などで接続するようにしてもよいし、1つの袋体を作成して、そのユーザーから見て上下方向の略中央部分で縫製などで区切って上方部分を頭頂側袋体1とし下方部分を頸部側袋体2として、本実施例3の枕を形成するようにしてもよい。
【0043】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は前記の各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2とを、予め用意した一つの袋体の略中央部(ユーザーから見て上下方向の略中央部分)の上下の2つの布を互いに縫製することによりユーザーから見て上方部分と下方部分の2つの袋体に仕切ることにより形成するようにしているが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば予めそれぞれ所定形状に形成した2つの袋体を用意し、それらを縫製などにより接続・連結することにより前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2とから成る本発明の枕を構成するようにしてもよい。また、前記実施例1においては、前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2とをそれぞれ例示したような寸法で形成するようにしているが、本発明は前述した例示の寸法に限定されるものではなく、ユーザーの身長や体格などによりそれに適したサイズのものとして構成することができる(実際には、子供用、大人の女性用、大人の男性用とか、S,M,Lなどの複数の類型に沿ってサイズをパターン化して製作することが望ましい)。また、前記前記頭頂側袋体1と前記頸部側袋体2の内容物としては、前記各実施例におけるような粒状ウールやゲル状保冷剤を使用するだけでなく、通常の蕎麦殻などの従来より枕の中に収容されている内容物を使用するようにしてもよいことはもちろんである。また、前記実施例においては、前記欠損部(空洞部)は、前記頸部側袋体2との境界線が略円弧状(曲線状)となっている(略円弧状の境界線により切り欠かれている)が、本発明における欠損部は、前記頸部側袋体2との境界線が略直線状となっており(略直線状の境界線により切り欠かれており)、その全体の平面形状が略三角形状となっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 頭頂側袋体
2 頸部側袋体
2a 頸部側袋体の上辺
2b 頸部側袋体の下辺
3 境界部
4 欠損部(空洞部)
4a 欠損部の上端部
4b 欠損部の下端部
4c 欠損部を画する曲線
5 傾斜部
6 凹部
10 ユーザー
10a 耳部
10b 肩
10c 顎部
11,12 開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの後頭部を支持する頭頂側袋体とユーザーの耳周辺部及び頸部を支持する頸部側袋体とがユーザーから見て上下方向に並ぶように配置されて成る、口腔を保護する枕であって、
所定の内容物が入れられた頭頂側袋体であって、平面が細長い略長方形状に形成され、そのユーザーから見て左右方向の長さが、ユーザーの額の左右いずれか一方の側部から後頭部を介してユーザーの額の左右いずれか他方の側部に至るまでの距離と略同一の長さ又はこれよりも大きい長さである約30〜60cmに、形成されている、頭頂側袋体と、
所定の内容物が入れられた頸部側袋体であって、(a)その上端部が、前記頭頂側袋体の頸部側と接しており、(b)その平面が、上下逆向きの略台形状に形成されており、(c)その左右両側に、その前記頭頂側袋体の左右両端部に近い部分からそれぞれユーザーの胴体中央方向に向かう斜め方向の略円弧状もしくは略直線状の境界線により画されている欠損部であってユーザーが横向きで寝るときの前記ユーザーの顎部と対向する欠損部、が形成されており、(d)その全体のユーザーから見て上下方向の長さが、「ユーザーの頸部の上下方向の長さ、すなわちユーザーの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の長さ又はこれに近似する長さである約9〜15cmに、形成されており、(e)その前記頭頂側袋体側に近い部分のユーザーから見て左右方向の長さが、ユーザーの左右いずれか一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と近似する長さと前記頭頂側袋体のユーザーから見て左右方向の長さと略同一の長さとのいずれかの長さである約28〜60cmに、形成されており、(f)その前記頭頂側袋体側から離れている部分のユーザーから見て左右方向の長さが、ユーザーの左右いずれか一方の顎部の後頭部側から頸部の背側を介して他方の顎部の後頭部側に至るまでの距離と略同一の長さ又はこれに近似する長さである約18〜26cmに、形成されている、頸部側袋体と、
前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部及びその近傍部分にユーザーから見て左右方向に沿って形成されている断面略V字状の凹部であって、前記頸部側袋体から前記頭頂側袋体に近づくに従ってユーザーから離れる方向に傾斜するように形成されておりユーザーが横向き寝の姿勢にあるときにユーザーの耳部が配置される傾斜部、を含む凹部と、
を含むことを特徴とする口腔を保護する枕。
【請求項2】
ユーザーの後頭部を支持する頭頂側袋体とユーザーの耳周辺部及び頸部を支持する頸部側袋体とがユーザーから見て上下方向に並ぶように配置されて成る、口腔を保護する枕であって、
所定の内容物が入れられた頭頂側袋体であって、平面が細長い略長方形状に形成され、そのユーザーから見て左右方向の長さが約30〜60cmに形成されている、頭頂側袋体と、
所定の内容物が入れられた頸部側袋体であって、(a)その上端部が、前記頭頂側袋体の頸部側と接しており、(b)その平面が、上下逆向きの略台形状に形成されており、(c)その左右両側に、その前記頭頂側袋体の左右両端部に近い部分からそれぞれユーザーの胴体中央方向に向かう斜め方向の略円弧状もしくは略直線状の境界線により画されている欠損部であってユーザーが横向きで寝るときの前記ユーザーの顎部と対向する欠損部、が形成されており、(d)その全体のユーザーから見て上下方向の長さが約9〜15cmに形成されており、(e)その前記頭頂側袋体側に近い部分のユーザーから見て左右方向の長さが約28〜60cmに形成されており、(f)その前記頭頂側袋体側から離れている部分のユーザーから見て左右方向の長さが約18〜26cmに形成されている、頸部側袋体と、
前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部及びその近傍部分にユーザーから見て左右方向に沿って形成されている断面略V字状の凹部であって、前記頸部側袋体から前記頭頂側袋体に近づくに従ってユーザーから離れる方向に傾斜するように形成されておりユーザーが横向き寝の姿勢にあるときにユーザーの耳部が配置される傾斜部、を含む凹部と、
を含むことを特徴とする口腔を保護する枕。
【請求項3】
ユーザーの後頭部を支持する頭頂側袋体とユーザーの耳周辺部及び頸部を支持する頸部側袋体とがユーザーから見て上下方向に並ぶように配置されて成り、或るユーザーAの口腔を保護するために製造される枕であって、
(A)前記ユーザーAの後頭部を支持するための所定の内容物が入れられている頭頂側袋体であって、平面が細長い略長方形状に形成され、前記ユーザーAから見て左右方向の長さが前記ユーザーAの額の左右いずれか一方の側部から後頭部を介して前記ユーザーAの額の左右いずれか他方の側部に至るまでの距離と略同一かこれよりも大きい長さに形成されている頭頂側袋体と、(B)前記頭頂側袋体と隣接して配置されており前記ユーザーAの耳周辺部及び頸部を支持するための所定の内容物が入れられている頸部側袋体であって、(a)その上端部が前記頭頂側袋体の頸部側に接続されており、(b)その平面が上下逆向きの略台形状に形成されており、(c)その左右両側に「その前記頭頂側袋体の左右両端部に近い部分からそれぞれ前記ユーザーAの胴体中央方向に向かう斜め方向の略円弧状もしくは略直線状の境界線により画されている欠損部であって前記ユーザーAが横向きで寝るときの前記ユーザーAの顎部と対向する欠損部」が形成されており、(d)その全体の前記ユーザーAから見て上下方向の長さが、「前記ユーザーAの頸部の上下方向の長さ、すなわち前記ユーザーAの耳部もしくはその周辺部から肩に至るまでの距離」と略同一の又はこれに近似する長さに、形成されており、(e)その前記頭頂側袋体側に近い部分の前記ユーザーAから見て左右方向の長さが、前記ユーザーAの左右いずれか一方の耳部から後頭部を介して他方の耳部に至るまでの距離と近似する長さと前記頭頂側袋体のユーザーから見て左右方向の長さとのいずれかの長さに、形成されており、(f)その前記頭頂側袋体側から離れている部分の前記ユーザーAから見て左右方向の長さが、前記ユーザーAの左右いずれか一方の顎部の後頭部側から頸部の背側を介して他方の顎部の後頭部側に至るまでの距離と略同一の長さ又はこれに近似する長さに、形成されている、頸部側袋体と、を形成すると共に、
前記頭頂側袋体と前記頸部側袋体との境界部及びその近傍部分に、前記ユーザーAから見て左右方向に沿って形成された断面略V字状の凹部であって、「前記頸部側袋体から前記頭頂側袋体に近づくに従って前記ユーザーAから離れる方向に傾斜しており前記ユーザーAが横向き寝の姿勢にあるときに前記ユーザーAの耳部が配置される傾斜部」を含む凹部を形成する、
ことにより製造される、ことを特徴とする口腔を保護する枕。
【請求項4】
請求項1から3において、
前記頭頂側袋体及び頸部側袋体の内部には、多数の天然繊維もしくは化学繊維が互いに絡み合わされることにより直径2〜7mmの略球状に形成されて成る粒状体が、多数個、収容されているか、又は、ゲル状の保冷剤を封入した柔軟な袋体が1つ又は複数個、収容されている、ことを特徴とする口腔を保護する枕。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−218138(P2011−218138A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157760(P2010−157760)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【特許番号】特許第4617400号(P4617400)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(396025816)
【Fターム(参考)】