口腔ケア装置
【課題】単純な構成で、ブラシ圧を推定するための参照値(基準値)を得ることのできる電動歯ブラシを提供する。
【解決手段】加速度センサ15を備える電動歯ブラシ1は、ブラシと、ブラシを振動させるためのモータ10とを備え、CPU120は、ブラシの振動数を検出するための振動数検出手段を有する。振動数検出手段は、加速度センサ15の出力信号の波形に基づき、振動数を検出する。振動数検出手段が検出した振動数に基づき、CPU120は、ブラシに作用する荷重を指すブラシ圧を検出する。
【解決手段】加速度センサ15を備える電動歯ブラシ1は、ブラシと、ブラシを振動させるためのモータ10とを備え、CPU120は、ブラシの振動数を検出するための振動数検出手段を有する。振動数検出手段は、加速度センサ15の出力信号の波形に基づき、振動数を検出する。振動数検出手段が検出した振動数に基づき、CPU120は、ブラシに作用する荷重を指すブラシ圧を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は口腔ケア装置に関し、加速度センサにより振動数を検出する機能を有する口腔ケア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア装置の1例として電動歯ブラシがある。電動歯ブラシを用いたブラッシングにおいて、効果的にプラーク(歯垢)を除去するためには、歯に対してブラシが接触している場合などにおけるブラシに作用する荷重(以下、ブラシ圧という)の制御が重要であることが知られている。
【0003】
電動歯ブラシにおいて、ブラシの歯に対するブラシ圧は、一般的にはモータの消費電流に基づいて検知することができる(特許文献1)。他の方法として、歪ゲージを用いて検知することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−152217号公報
【特許文献2】特開平10−108734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの消費電流を検知する方法の場合、モータは動作時間の経過とともにモータが加熱し、それに伴い一定の振動数で動作していても消費電流が変化するため、検知精度が十分ではなかった。
【0006】
歪ゲージを用いた方法の場合、ブラシの歯に対する傾き角度が変化すると歪みゲージでは正確な測定ができない。また、ブラシヘッドに歪ゲージを配置する必要があり、そのための配線が電動歯ブラシの振動で断線するおそれがあった。また、歯ブラシを交換可能な電動歯ブラシでは、歯ブラシと本体との接点部で配線同士の接触不良または水分侵入のおそれがあり、これを防止するための構造的改良が必要とされる。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、単純な構成で、口腔ケア部材に作用する荷重を推定するための参照値(基準値)を得ることのできる口腔ケア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う、ケア部材を用いて口腔をケアする口腔ケア装置は、加速度センサと、ケア部材を振動させるための駆動手段と、ケア部材の振動数を検出するための振動数検出手段と、を備え、振動数検出手段は、加速度センサの出力信号の波形に基づき、振動数を検出する手段を含む。
【0009】
好ましくは、振動数検出手段が検出した振動数に基づき、ケア部材に作用する荷重を指す部材圧を検出する。
【0010】
好ましくは、駆動手段はモータであり、振動数検出手段は、無負荷時のモータの回転による振動数と、振動数検出手段が検出する振動数との差分に基づき、部材圧を検出する。
【0011】
好ましくは、駆動手段はモータであり、モータの消費電流を検出する消費電流検出手段、をさらに備え、振動数検出手段は、さらに、消費電流検出手段が検出する消費電流に基づき振動数を検出する手段を含む。
【0012】
好ましくは、口腔ケア装置の各部に電力を供給する電源と、電源が出力する電力を検出する電力検出手段と、電力検出手段が検出する電力の値に基づき、駆動手段に供給される電力を補う電力補償手段と、を備える。
【0013】
好ましくは、電力補償手段は、電力検出手段が検出する電力の値に基づき、駆動するために駆動手段に与えられるパルス信号のデューティ比を変更する。
【0014】
好ましくは、検出される部材圧を報知する。
好ましくは、検出される振動数を表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加速度センサを用いるという単純な構成で、口腔ケア部材の部材圧を推定するための参照値(基準値)である振動数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の電動歯ブラシを含む表示システムのブロック図である。
【図2】実施形態の電動歯ブラシの内部構成例を示す断面図である。
【図3】実施形態の電動歯ブラシを含む表示システムの外観例を示す斜視図である。
【図4】実施形態におけるブラッシング評価処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における姿勢検出処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態におけるブラッシング部位推定処理(上顎)を示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるブラッシング部位推定処理(下顎)を示すフローチャートである。
【図8】上顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図9】下顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図10】ブラッシング情報の一例を示す図である。
【図11】(A)〜(C)は、ブラシ角を説明するための図である。
【図12】ブラシ角の変化に伴なうセンサ出力の波形変化を示す図である。
【図13】ブラッシング結果として、ブラッシング時間の出力例を示す図である。
【図14】ブラッシング結果として、ブラシ角の出力例を示す図である。
【図15】ブラッシング結果として、ブラシ圧の出力例を示す図である。
【図16】ブラッシング結果として、ブラッシング指標の出力例を示す図である。
【図17】実施の形態に係るブラシ圧推定の為の機能構成図である。
【図18】加速度センサとその周辺回路の概略図である。
【図19】(A)と(B)はフィルタ部の出力波形を示す図である。
【図20】モータの振動数と負荷の相関関係を示す図である。
【図21】実施の形態によるブラシ圧検知(推定)処理の概略フローチャートである。
【図22】実施の形態に係るモータの負荷特性を示す図である。
【図23】充電池の出力電圧の経時変化を模式的に示す図である。
【図24】PWM制御部の他の構成を示す図である。
【図25】パルス信号のデューティ比の変更について説明するための図である。
【図26】デューティ比決定部により参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図27】ブラシ圧の検索機能を備えるブラシ圧推定部の機能構成図である。
【図28】ブラシ圧検索のために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図29】ブラシ圧検索のために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図30】電動歯ブラシの外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
実施の形態では、口腔ケア装置の一例として筐体表面に植毛されたブラシを有する電動歯ブラシを説明するが、実施の形態の構成は、口腔ケア(歯の洗浄・ブラッシング・歯茎マッサージなど)に用いることが可能な装置一般に適用することができる。具体的には、口腔ケアに用いる材料としては、歯ブラシに代替してスポンジ、ゴム、エラストマなどの樹脂部品またはブラシとこれら樹脂部品が複合された口腔ケア部材を用いた装置に適用することができる。口腔ケア装置においては、上述のブラシ圧は、ケア部材に作用する荷重を指す“部材圧”に相当する。
【0019】
<構成について>
図1〜図3を参照して、電動歯ブラシの構成を説明する。
【0020】
図1は、電動歯ブラシを含む表示システムのブロック図であり、図2は、電動歯ブラシの内部構成例を示す断面図であり、図3は、電動歯ブラシを含む表示システムの外観例を示す斜視図である。
【0021】
電動歯ブラシ1は、駆動源であるモータ10を内蔵する本体部2(以下、単に「本体2」ともいう。)と、モータ10の駆動により振動する振動部材5とを備えている。したがって、振動部材5を電動歯ブラシ本体と見なして、モータ10の回転数は、電動歯ブラシ本体の振動数に対応する。本体2は、概ね円筒形状を呈しており、歯を磨く際に使用者が手で握るためのハンドル部を兼ねている。
【0022】
さらに、本実施形態の電動歯ブラシ1は、本体2を載置し、電動歯ブラシ1を充電するための充電器100と、ブラッシング結果を出力するための表示器110とを備えている。
【0023】
本体2には、電源のオン/オフおよび後述のモータ10の動作モードの切替えを行なうためのスイッチSが設けられている。また本体2の内部には、駆動源であるモータ10(たとえば、直流モータ)、駆動回路12、各部に電力を供給するための定格出力2.4Vの電源である充電池13、充電用のコイル14などが設けられている。充電池13を充電する際には、充電器100に本体2を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。駆動回路12は、各種演算および制御を実行するCPU(Central Processing Unit)120、プログラム、各種設定値が格納されるとともに、テーブルTB1〜TB5(後述する)を予め格納するメモリ121、タイマ122、データ送信部123などを有している。データ送信部123は、表示器110のデータ受信部112との間で無線通信を行なう。表示器110は、データ受信部112で受信したブラッシング結果などのデータを出力するためのディスプレイ111を備えている。
【0024】
充電池13の出力電圧(電池残量)を検出するための電圧モニタ102、加速度センサ15の出力信号をフィルタ処理するフィルタ部103、モータ10への供給電流(すなわちモータ10の消費電流)を検出するための電流検出部104をさらに備える。
【0025】
また、本体2は、ブラッシング結果を表示するための表示部16を一体的に備える。
図3には、充電器100に装着された状態の電動歯ブラシ1の外観が、表示器110と関連付けて示される。
【0026】
本体2の内部には、電動歯ブラシ1の姿勢を検知するために、たとえば、多軸(ここではx,y,zの三軸)の加速度センサ15が設けられる。加速度センサ15は、図3に示すように、x軸がブラシ面に対して平行になり、y軸が本体2の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設置される。つまり、本体2を充電器100に載置したときに、重力加速度ベクトルがy軸に平行になり、ブラシ面を上に向けたときに、重力加速度ベクトルがz軸に平行になり、本体2を水平にしてブラシ面を横に向けたときに、重力加速度ベクトルがx軸に平行になる。加速度センサ15の各軸の出力はCPU120に入力され、ブラシの三次元姿勢を検出するために利用される。
【0027】
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体2の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0028】
振動部材5は、本体2側に固定されているステム部20と、このステム部20に装着されるブラシ部品21とを備える。ブラシ部品21の先端にはブラシ210が植毛されている。ブラシ部品21は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、ステム部20に対して着脱自在な構成となっている。
【0029】
振動部材5のブラシ部品21は、ブラシ210が配置されたブラシ部、および、本体2側に位置する柄部を含む。なお、本実施形態では、比較的長い柄部を含むブラシ部品21が取り替えられる構成を示したが、ブラシ部のみ、あるいは、ブラシ部および短い柄部を含むブラシ部品が取り替えられる構成であってもよい。つまり、柄部の全てまたは一部は、本体に含まれる構成であってもよい。
【0030】
ステム部20は、樹脂材からなる。ステム部20は、エラストマからなる弾性部材202を介して本体2に取り付けられている。ステム部20は、先端(ブラシ側の端部)が閉じた筒状の部材であり、筒の内部の先端に軸受203を有している。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、ステム部20の軸受203に挿入される。この偏心軸30は、軸受203の近傍に重り300を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。なお、偏心軸30の先端と軸受203の間には微小なクリアランスが設けられている。
【0031】
電動歯ブラシ1は、さらに、接触または接近の有無を検知するための、電極方式の接触検知部50を備える。接触検知部50は、ブラッシングの際に、生体すなわち頬粘膜および舌との接触または近接を検知する。具体的には、接触検知部50は、電極部52、および、電極部52からのインピーダンスを検出するための検出部54を含む。検出部54は、駆動回路12内に搭載されてよい。駆動回路12内の検出部54は、電極部52の電気回路を流れている電流を検出することで、インピーダンスを検出することができる。インピーダンス値により頬粘膜および舌との接触または近接を検知する。
【0032】
<電動歯ブラシの駆動原理>
CPU120が動作モードに応じた駆動信号(たとえばPWM((Pulse Width Modulation)信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させる。回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転するが、偏心軸30は重心がずれているために回転中心の回りに旋回するような運動を行なう。よって、偏心軸30の先端が軸受203の内壁に対して衝突を繰り返し、ステム部20とそれに装着されたブラシ部品21とを高速に振動(運動)させることとなる。つまり、モータ10が、ブラシを振動(運動)させる駆動部の役割を担い、偏心軸30が、モータ10の出力(回転)を振動部材5の振動に変換する運動伝達機構(運動変換機構)の役割を担っている。
【0033】
使用者は、本体2を手で持ち、高速に振動するブラシ210を歯に当てることで、ブラッシングを行なうことができる。なお、CPU120はタイマ122を用いて継続動作時間を監視しており、所定時間(たとえば2分間)が経過したら自動的にブラシの振動を停止させる。
【0034】
本実施形態の電動歯ブラシ1では、運動伝達機構である偏心軸30が振動部材5に内包され、特に重り300がブラシ210の近傍に配置されている。よって、ブラシ210の部分を効率的に振動させることができる。その一方で、振動部材5(ステム部20)が弾性部材202を介して本体2に取り付けられているので、振動部材5の振動が本体2に伝わり難くなっている。よって、歯を磨く際の本体2および手の振動を低減でき、使用感の向上を図ることができる。
【0035】
<電動歯ブラシの動作>
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面など)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なる。よって、たとえばブラシの当て方(ブラシ角やブラシ圧)、動かし方、スピード、ブラッシング時間など、歯列の部位ごとに効果的なブラッシング動作に違いがある。それゆえ、適切なブラッシングが行われているかどうかの評価は、部位ごとに行なうことが望ましい。
【0036】
そこで、本実施形態の電動歯ブラシ1は、加速度センサ15で検出されたブラシの姿勢(姿勢情報)、および、接触検知部50の検知結果に基づいて、ブラッシング部位を精度よく推定することにより、部位ごとのブラッシング評価を実現する。評価項目は種々考えられるが、ここではブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧の3項目についての評価を行なう。
【0037】
本実施形態では、上下の歯列を、「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「上顎左頬側」、「上顎左舌側」、「上顎右頬側」、「上顎右舌側」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」、「下顎左頬側」、「下顎左舌側」、「下顎右頬側」、「下顎右舌側」、の12箇所の部位に区分する。ただし、歯列の区分はこれに限らず、もっと大まかな区分でもよいし、より細かい区分でもよい。たとえば、上下左右の噛み合わせ面を考慮してもよい。
【0038】
なお、上顎には舌がないため、「上顎前舌側」、「上顎左舌側」および「上顎右舌側」との部位名は、正確にはそれぞれ、「上顎前口蓋側」、「上顎左口蓋側」および「上顎右口蓋側」という。同様に、前顎には頬がないため、「上顎前頬側」および「下顎前頬側」との部位名は、正確にはそれぞれ「上顎前唇側」および「下顎前唇側」という。
【0039】
図4〜図7のフローチャートを参照して、ブラッシング評価のフローを具体的に説明する。図4はメインルーチンのフローチャートであり、図5〜図7、図21はメインルーチンの各処理の詳細を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、特にことわりのない限り、CPU120がメモリ121に格納されているプログラムに従って実行する処理である。
【0040】
電動歯ブラシ1の電源がONになると、CPU120は、各部を初期化する初期化処理を行う(ステップS(以下、単にSと略す)5)。その後、加速度センサ15の出力に基づきブラシの姿勢(傾き)を検出する(S10)。次に、CPU120は、少なくともS10で検出された姿勢に基づいてブラッシング部位を推定する(S20)。次に、CPU120は、ブラッシング時間の計測(S30)、ブラシ角の推定(S40)、ブラシ圧の検知(S50)を行なう。これらの情報は、部位別にメモリ121に記録され(図10参照)、出力される(S55)。S10〜S55の処理は一定時間ごとに繰り返し実行される。電源がOFFになるか、継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達すると、CPU120は、メモリ121に記録されたブラッシング情報(ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧)に基づいて、部位ごとのブラッシング結果を評価し、その評価結果を表示器110に出力する(S60)。なお、メモリ121内のブラッシング情報は、電動歯ブラシ1の電源がONになるたびにクリアされる。
【0041】
本実施形態では、ブラッシングが終了した時点で、ブラッシング結果を出力するとともに、ブラッシングが継続している間に、ブラッシングの途中経過を出力している。
【0042】
以下、図4の各処理を詳しく説明する。
(姿勢の検出)
図5は姿勢検出処理(S10)のフローチャートである。
【0043】
CPU120は、加速度センサ15からx、y、zそれぞれの出力Ax、Ay、Azを取得する(S100)。Axはx方向の加速度成分、Ayはy方向の加速度成分、Azはz方向の加速度成分を表す。電動歯ブラシ1が静止状態にあるとき(加速度センサ15に動加速度が作用していないとき)は、Ax、Ay、Azの合成ベクトルAが重力加速度に相当する。ここでは、A=(Ax、Ay、Az)を姿勢ベクトルとよぶ。
【0044】
ここで、姿勢ベクトルA=(Ax、Ay、Az)の大きさが1.2g(gは重力加速度)より大きい場合は(S101;YES)、エラーを返す(S102)。加速度センサ出力に動加速度成分が多く含まれていると、重力加速度の方向(つまりブラシの三次元姿勢)を正確に特定するのが難しくなるからである。なお、S102のようにエラーを返すのではなく、合成ベクトルの大きさが1.2g以下となる加速度センサ出力Ax、Ay、Azが得られるまでS100とS101の処理を繰返すようにしてもよい。なお、エラー判定のしきい値は1.2gに限らず、他の値でもよい。
【0045】
(ブラッシング部位の推定)
図6、図7はブラッシング部位推定処理(S20)のフローチャートである。また図8、図9は、ブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【0046】
まずCPU120は、z方向の加速度センサの出力Azに基づき、上顎か下顎かを判定する(S700)。上顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず上向きになり、下顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず下向きになることに着目した判定である。Az>0の場合は下顎(S801)、Az≦0の場合は上顎(S701)と判定される。
(1)上顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S702)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体2が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体2が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値aの場合は上顎前歯と判定される(S703)。
【0047】
上顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S704)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎前頬側」と判定され(S705)、Ax≦0の場合は「上顎前舌側」と判定される(S706)。
【0048】
一方、S702で上顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいてブラシの向きを判定する(S707)。Ax>0の場合は「上顎右頬側または上顎左舌側」と判定され(S708)、Ax≦0の場合は「上顎左頬側または上顎右舌側」と判定される(S712)。
【0049】
加速度センサ15の出力のみでは、上顎右頬側と上顎左舌側の区別、および、上顎左頬側と上顎右舌側の区別は難しい。そこでCPU120は、前回の処理(1クロック前の処理)で判定されたブラッシング部位に基づき、部位の絞り込みを行う(S709、S713)。具体的には、S709において、前回のブラッシング部位が「上顎前頬側、上顎右頬側、上顎右舌側、下顎前頬側、下顎右頬側、下顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎右頬側」であると推定し(S710)、前回のブラッシング部位が「上顎前舌側、上顎左頬側、上顎左舌側、下顎前舌側、下顎左頬側、下顎左舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎左舌側」であると推定する(S711)。S713においては、前回のブラッシング部位が「上顎前頬側、上顎左頬側、上顎左舌側、下顎前頬側、下顎左頬側、下顎左舌側」のいずれかの場合は、現在のブラッシング部位が「上顎左頬側」であると推定し(S714)、前回のブラッシング部位が「上顎前舌側、上顎右頬側、上顎右舌側、下顎前舌側、下顎右頬側、下顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎右舌側」であると推定する(S715)。このような推定が成り立つのは、ブラシの移動量や向き変更がなるべく少なくなるようにブラッシング部位の移動が行われる蓋然性が高いからである。
【0050】
(2)下顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサ15の出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S802)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体2が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体2が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値bの場合は下顎前歯と判定される(S803)。
【0051】
下顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S804)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax<0の場合は「下顎前頬側」と判定され(S805)、Ax≧0の場合は「下顎前舌側」と判定される(S806)。
【0052】
一方、S802で下顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいてブラシの向きを判定する(S807)。Ax>0の場合は「下顎右頬側または下顎左舌側」と判定され(S808)、Ax≦0の場合は「下顎左頬側または下顎右舌側」と判定される(S812)。
【0053】
S809において、前回のブラッシング部位が「下顎前頬側、下顎右頬側、下顎右舌側、下顎前頬側、上顎右頬側、上顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎右頬側」であると推定し(S810)、前回のブラッシング部位が「下顎前舌側、下顎左頬側、下顎左舌側、上顎前舌側、上顎左頬側、上顎左舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎左舌側」であると推定する(S811)。S813においては、前回のブラッシング部位が「下顎前頬側、下顎左頬側、下顎左舌側、上顎前頬側、上顎左頬側、上顎左舌側」のいずれかの場合は、現在のブラッシング部位が「下顎左
頬側」であると推定し(S814)、前回のブラッシング部位が「下顎前舌側、下顎右頬側、下顎右舌側、上顎前舌側、上顎右頬側、上顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎右舌側」であると推定する(S815)。
【0054】
以上の処理によって、現在のブラッシング部位が、「上顎前頬側」(S705)、「上顎前舌側」(S706)、「上顎右頬側」(S710)、「上顎左舌側」(S711)、「上顎左頬側」(S714)、「上顎右舌側」(S715)、「下顎前頬側」(S805)、「下顎前舌側」(S806)、「下顎右頬側」(S810)、「下顎左舌側」(S811)、「下顎左頬側」(S814)、「下顎右舌側」(S815)のいずれかに特定される。
【0055】
なお、上記判定アルゴリズムはあくまでも一例を示したものにすぎず、加速度センサ15の出力Ax、Ay、Azからブラッシング部位を特定できるのであればどのような判定アルゴリズムでも構わない。たとえばAx、Ay、Azの値をそのまま判定の変数として用いるのでなく、Ax、Ay、Azを適宜組合わせることで得られる2次変数を判定に用いてもよい。2次変数は、たとえば、Ay/Az、Ax・Ax+Ay・Ay、Az−Axなど、任意に設定できる。あるいは、各軸の加速度情報Ax、Ay、Azを、角度情報(姿勢角)α、β、γに変換した後で、ブラッシング部位を判定してもよい。重力加速度方向に対するx軸の角度をロール角α、重力加速度方向に対するy軸の角度をピッチ角β、重力加速度方向に対するz軸の角度をヨー角γのように定義している。判定に用いる閾値は臨床実験等の結果から決定することができる。
【0056】
(ブラッシング時間の計測)
図10は、メモリ121に記録されているブラッシング情報の一例を示している。図10は、下顎左頬側をブラッシングしている状態の例である。下顎左頬側よりも前に、上顎前頬側が7.5秒間ブラッシングされ、上顎左頬側が12.2秒間ブラッシングされている。なお「−」はデータが記録されていないこと、つまりその部位がまだブラッシングされていないことを表している。
【0057】
図4に示したS30において、CPU120は、S20で推定されたブラッシング部位(図10の例では下顎左頬側)のブラッシング時間をカウントアップする。たとえば、図4のS10〜S50の処理が0.1秒に1回実行されるのであれば、下顎左頬側のブラッシング時間が+0.1だけカウントアップされ、2.1秒となる。
【0058】
なおブラッシング情報には、ブラッシング時間の累積値が記録される。すなわち、たとえばブラッシング部位が再び上顎左頬側に移った場合には、メモリされているブラッシング時間がリセットされるのではなく、メモリされている値12.2秒にブラッシング時間が加算されていく。
【0059】
(ブラシ角の推定)
図4のS40において、CPU120は、S10で検出された姿勢(加速度センサ15の出力)に基づいてブラシ角を推定し、現在のブラッシング部位(図9の例では下顎左頬側)のブラシ角の値を更新する。このとき、CPU120はメモリされているブラシ角の値と今回の推定値とから、ブラシ角の平均値を算出して記録することが好ましい。
【0060】
ブラシ角とは、歯軸(歯の頭と根に沿った軸)に対するブラシの当たり角である。図11の(A)がブラシ角=15度の状態、(B)がブラシ角=45度の状態、(C)がブラシ角=90度の状態を示している。歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すには、ブラシの毛先が歯周ポケットや歯間に入り込むようにブラシを動かすとよい。したがって、ブラシ角は35度〜55度の範囲が好ましい。
【0061】
ブラシ角は、たとえば、z方向の加速度成分Azから推定可能である。図12に示すように、ブラシ角が約90度の場合はAzはほとんど0を示し、ブラシ角が小さくなるほどAzの値が大きくなる、というようにブラシ角に応じてAzの値が有意に変化するからである。なお、ブラシ角に応じてx方向の加速度成分Axも変化するため、Azの代わりにAxからブラシ角を推定したり、AxとAzの両方(AxとAzの合成ベクトルの方向)からブラシ角を推定することも好ましい。ブラシ角は連続量で算出してもよいし、「35度未満」「35度〜55度」「55度以上」のような大まかな推定でもよい。
【0062】
(ブラシ圧の検知)
図4のS50において、CPU120は、加速度センサ15の出力に基づいてブラシ圧を推定(検出)し、現在のブラッシング部位(図10の例では下顎左頬側)のブラシ圧の値を更新する。このとき、CPU120はメモリ121に記憶されているブラシ圧の値と今回の検出値とから、ブラシ圧の平均値を算出して記録することが好ましい。
【0063】
ブラシ圧が小さすぎると歯垢除去力が低下し、逆に高すぎるとブラシ寿命の低下や歯肉への負担増などの問題が生じる可能性がある。電動歯ブラシ1のブラシ圧は普通の歯ブラシよりも小さくてよいことから、電動歯ブラシ1を使いはじめたほとんどの人はブラシ圧超過の傾向にあるといわれている。ブラシ圧の最適値は100g〜200g程度である。
【0064】
本実施の形態に係るブラシ圧の推定の詳細は後述する。
(ブラッシング結果の評価・出力)
CPU120は、図4のS55またはS60においてメモリ121に記録されたブラッシング情報に基づいて、部位ごとのブラッシング結果を評価し、その評価結果を表示器110(ディスプレイ111)に出力する。
【0065】
図13は、ブラッシング時間の評価結果の出力例である。CPU120は、メモリ121から各部位のブラッシング時間を読み込み、たとえば、7秒未満を「不足」、7秒〜15秒を「良好」、15秒超を「過剰」と評価する。その評価結果は表示器110に送信される。表示器110のディスプレイ111には歯列が描画されており、その歯列中の該当部位が評価結果に応じた色(「不足」は白色、「良好」は黄色、「過剰」は赤色など)で点灯する。このような表示をみることで、使用者は歯列中のどの部位のブラッシングが不足しているか(あるいは過剰であったか)を直感的に把握できる。
【0066】
図14は、ブラシ角の評価結果の出力例である。たとえば、「35度未満」、「35度〜55度」、「55度以上」の三段階で評価され、歯列中の各部位が評価結果に応じた色で点灯する。適切でないブラシ角でブラッシングを行った場合、最適なブラシ角に比べて歯垢除去力が劣るため、所期のブラッシング効果が得られなかったり、ブラッシングに時間がかかったりする可能性がある。図14のように部位別にブラシ角の評価を出力すれば、使用者に対して正しいブラシ角によるブラッシングを意識させることができる。
【0067】
図15は、ブラシ圧の評価結果の出力例である。たとえば、100g未満は「不足」、100g〜200gは「良好」、200g超は「過大」と評価され、歯列中の各部位が評価結果に応じた色で点灯する。上述のようにブラシ圧が適切でないと、歯垢除去力の低下、ブラシ寿命の低下、歯肉への負担増などの問題が生じる可能性がある。とはいえ、使用者にとっては、どれくらいの力を加えたときに最適なブラシ圧なのかを理解するのは難しい。その点、図15のように部位別にブラシ圧の評価を出力すれば、使用者に対して適切なブラシ圧を教示できるとともに、正しいブラシ圧によるブラッシングを意識させることができる。
【0068】
図16は、ブラッシング指標の評価結果の出力例である。ブラッシング指標とは、複数の評価項目(ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧)を総合的に評価するための指標であり、ブラッシングの達成度を表すものである。ブラッシング指標の算出式はどのように定義してもよい。本実施形態では、ブラッシング時間とブラシ圧をそれぞれ35点満点で評価し、ブラシ角を30点満点で評価して、それらの評価値の合計(100点満点)をブラッシング指標として用いる。図16の例では、80点以上を「優」、60点〜80点を「良」、60点未満を「不可」としている。このような総合評価を出力することで、使用者に対してより有益な指針を与えることができる。
【0069】
以上述べた本実施形態の構成によれば、加速度センサ15の出力を利用することにより、高精度に電動歯ブラシ1の姿勢、および、ブラッシング部位の同定が可能となる。したがって、細かい区分(部位)でブラッシング結果を評価でき、有用かつ信頼性の高い評価指針を使用者に提供することが可能となる。しかも加速度センサ15は小型ゆえ、電動歯ブラシ1本体への組み込みも容易であるという利点もある。
【0070】
なお、図13〜図16の評価結果は、ディスプレイ111上に同時に表示してもよいし、順番に表示してもよい。後者の場合、表示の切替えは自動で行われてもよいし、使用者のボタン操作により行われてもよい。
【0071】
また上記実施形態では、電動歯ブラシ1の電源がオフになると自動的に結果が表示される。しかし、表示器110の設置場所とは異なる場所で歯磨きが行われることも想定されるため、たとえば、使用者が表示器110または歯ブラシ本体2に設けられたボタンを押すと、歯ブラシ本体2から表示器110にブラッシング情報が送信され、表示器110に結果が表示されるような機能を設けることも好ましい。
【0072】
メモリ121に蓄積されたブラッシング情報や評価結果を印刷できるとよい。たとえば充電器や表示器にプリンタ(図示せず)を搭載してもよいし、歯ブラシ本体や充電器や表示器から外部のプリンタに印刷データを送信できるようにしてもよい。またブラッシング情報や評価結果のデータを無線通信もしくは有線通信により図示しない外部機器(パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA(Portable Digital Assistant)など)に転送する機能も好ましい。また歯ブラシ本体、充電器、表示器などにメモリカードスロット(図示せず)を設け、ブラッシング情報や評価結果のデータを外部メモリカードに記録できるようにしてもよい。
【0073】
また、ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧の最適値(目標値)を部位ごとに異なる値を設定できるようにしてもよい。たとえば、臼歯の歯面(側面)では、ブラシの毛先で歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すために、35度〜55度のブラシ角が好ましいが、歯面が比較的大きい前歯ではそれよりも大きい角度(たとえば55度〜90度)が好ましい。また臼歯の噛み合わせ面に対しては、ブラシ角は約0度がよい。さらに、刷掃効果の観点からではなく、歯肉などの組織にダメージを与えることを避けるという観点から、最適なブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧を決定することもできる。このように部位ごとに最適値を設定し、評価を行なえば、より有用かつ信頼性の高い評価指針の提供が可能となる。
【0074】
(ブラシ圧の推定)
電動歯ブラシ1では、モータ10に同一の駆動信号が与えられるとしても、モータ10への負荷に応じて、すなわちブラシ圧に応じて振動数が変動することに着目して、ブラシ圧を推定する。ブラシ圧の増大とともに振動数は低下し、ブラシ圧が低いほど振動数は大きくなる。
【0075】
図4のS50では、ブラシ圧は、加速度センサ15から出力される電圧信号であるAx、AyおよびAzのいずれかを用いて検知(推定)される。
【0076】
図17には、実施の形態に係るブラシ圧推定の為の機能構成が示される。図17の各部は、CPU120が実行を制御するプログラムと回路の組合わせにより実現される。これらプログラムは、メモリ121の所定領域に予め格納される。CPU120により、メモリ121からプログラムが読出され、読出されたプログラムの命令コードを実行することにより、各部の機能が実現される。
【0077】
図17を参照して、CPU120は、ブラシ圧を推定するためのブラシ圧推定部1201およびモータ10をPWM制御に従って駆動するためのPWM制御部120Aを備える。
【0078】
ブラシ圧推定部1201は、加速度センサ15の出力信号のうち、電動歯ブラシ1の動加速度成分および静加速度成分の信号を処理する動加速度成分処理部153および静加速度成分処理部155、モータ10の消費電流(供給電流)を指す電流検出部104の出力信号を入力し、入力信号に基づきモータ10の消費電流を検出する消費電流検出部156、メモリ121のテーブルTB1を検索し、検索結果を出力するテーブル検索部157を含む。
【0079】
PWM制御部120Aは、モータ10の駆動を制御するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部16Aを含む。パルス信号生成部16Aは、図示のないパルス信号発生回路を用いてパルス信号を生成する。パルス信号生成部16Aは、使用者がスイッチSを操作をして指示した動作モードを入力する動作モード入力部17A、および入力した動作モードに基づきパルス信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部18Aを有する。パルス信号生成部16Aは、決定されたデューティ比を有するパルス信号を生成して出力する。出力されるパルス信号は駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0080】
図18には、加速度センサ15とその周辺回路が概略的に示される。図18を参照して、加速度センサ15の出力段にはフィルタ部103が接続される。フィルタ部103は、加速度センサ15からの出力信号を入力し、所定周波数帯域の信号のみを通過させるBPF(Band Pass Filter)151と、BPF151の出力段に並列接続される、HPF(High Pass Filter)152およびLPF(Low Pass Filter)154とを有する。HPF152の出力段には動加速度成分処理部153が接続され、LPF154の出力段には静加速度成分処理部155が接続される。
【0081】
HPF152は、BPF151からの入力信号のうち所定の遮断周波数(たとえば、90Hz)以上の周波数の信号だけを通過させて、出力する。LPF154は、BPF151からの入力信号のうち所定の遮断周波数(たとえば数Hz)以下の周波数の信号だけを通過させ、出力する。
【0082】
動加速度成分処理部153は、HPF152から出力される信号10Dを入力し処理することにより、モータ10の回転動作に伴う電動歯ブラシ1本体の振動数を検出する。HPF152から出力される信号10Dは、モータ10の回転(振動)に起因した振動数(たとえば、100Hz〜300Hzの周波数帯域)の信号に相当する。静加速度成分処理部155は、LPF154から出力される信号10Sを入力し処理する。この入力信号10Sは、歯磨き中の使用者が電動歯ブラシ1をひねるなどのブラシの姿勢を変える動作に起因する振動数(たとえば、数Hzの周波数帯域)の信号に相当する。したがって、信号10Sは、電動歯ブラシ1本体の姿勢情報成分の信号に相当する。
【0083】
(振動数の検出)
図19の(A)には、図18のBPF151の出力信号の波形の一例が時間経過に従って示される。図19の(A)においては、数Hz以下の低周波成分である信号10S(図中は、太い実線で示す)に、100Hz〜300Hzの高周波成分であるモータ10の回転動作に起因した振動成分の信号10D(図中は、細い実線で示す)が重畳しているが、上述のフィルタ部103を通過させることにより信号10Dと10Sを分離して出力することができる。図19の(B)においては、図19の(A)のある時間帯の信号10Dが抽出されて拡大して示される。
【0084】
図19の(B)を参照して、振動数を検出する手順を説明する。動加速度成分処理部153は、信号10Dを入力し、入力した信号10Dの波形について、所定周期T(以下、サンプリング周期Tという)毎に波形の傾きを検出する。この傾きは、波形を微分処理などすることにより検出することができる。動加速度成分処理部153は、サンプリング周期T毎に、信号10Dが示す波形の傾き(正の傾き、または負の傾き)を検出し、正の傾きが連続する期間の長さまたは負の傾きが連続する期間の長さ、および正の傾きから負の傾きへ(または負の傾きから正の傾きへ)の切換わるタイミングを検出する。検出結果に基づき信号10Dの周波数、すなわち電動歯ブラシ1の振動数を検出する。検出された振動数は、テーブル検索部157に出力される。
【0085】
振動数の検出方法は、図19の(B)に示される方法に限定されない。たとえば、信号10Dの波形を微分処理することによって極値(極大値と極小値)を検出し、所定時間期間において検出される極大値と極小値の個数に基づき、信号10Dの周波数、すなわち振動数を検出するようにしてもよい。
【0086】
(振動数に基づくブラシ圧の検出)
図20のグラフは、振動数と負荷(ここでは、ブラシ圧)の相関関係を示す。図20のグラフは発明者の実験結果に基づくデータを指す。グラフでは、縦軸に振動数(Hz)をとり、横軸にはモータ10にかかる負荷(グラム:g)の大きさをとる。
【0087】
モータ10は、PWM制御部120Aから同一の駆動信号が与えられた状態において、無負荷(負荷が無い)のときに最も速い速度で回転し、負荷が増加するに従って回転速度は低下する。
【0088】
具体的には、無負荷状態では、モータ10の回転による電動歯ブラシ1の振動数は最大振動数VHを指示し、ブラシ210が歯に押し当てられるなどして、ブラシ210全体に荷重がかかるようになると、ブラシ圧が増加する。これに伴いモータ10にかかる負荷は増加し、モータ10の回転速度は低下し、振動数は減少する。たとえば、ブラシ圧が100〜200g(適圧)の場合には、モータ10の振動数は適圧時振動数V2〜V3の範囲で検出される。さらに、ブラシ210が歯に強く押し当てられるなどして、たとえば500gの過大な荷重がブラシ210全体にかかると、モータ10に過大の負荷がかかった状態となり、振動数は、過大圧時振動数V4〜0の範囲で推移する。
【0089】
図20の相関関係に従えば、信号10Dの周波数に基づいて、すなわち振動数に基づいてブラシ圧を一意に決定(検出)することができる。
【0090】
本実施の形態では、図20のグラフの特性で示される振動数のデータと、対応するブラシ圧のデータは、関連付けられてテーブルTB1に予め格納される。テーブル検索部157は、動加速度成分処理部153から出力された振動数に基づき、当該テーブルTB1を検索し、検索結果に基づき、当該振動数に対応のブラシ圧をテーブルTB1から読出す。これにより、ブラシ圧推定部1201は、ブラシ圧を検出(推定)することができる。
【0091】
(ブラシ圧推定の概略処理)
図21には、本実施の形態によるブラシ圧検知(推定)処理の概略フローチャートが示される。
【0092】
図21を参照して、ブラシ圧推定部1201は、加速度センサ15の出力信号をフィルタ部103を介して入力する(SS3)。動加速度成分処理部153は、上述の(振動数の検出)の手順に従い振動数を検出する(SS5)。続いて、テーブル検索部157は、ステップSS5において検出された振動数に基づき、上述の(振動数に基づくブラシ圧の検出)の手順に従って、ブラシ圧を検出する(ステップSS9)。これにより、ブラシ圧が決定(推定)される。
【0093】
(ブラシ圧推定の他の方法)
ブラシ圧推定部1201は、上述した手順ではモータ10の振動数のみに基づきブラシ圧を推定したが、モータ10への供給電流に基づき振動数を検出するようしてもよい。
【0094】
図22には、本実施の形態に係るモータ10の負荷特性のグラフが示される。図22のグラフの縦軸にはモータ10の回転数(rpm)とモータ10への供給電流(すなわちモータ10の消費電流)(単位:A)が示される。横軸には、モータ10にかかるトルク(負荷)が示される。このトルクは、前述したブラシ圧に相当する。図22の直線SAは、モータ10への供給電流は、トルク(負荷)が大きくなるほど増大するという理想的な特性を表わしている。直線RAは、モータ10の回転数は、トルク(負荷)が増加するほど、減少することの特性を表す。ここでは、直線SAが指す供給電流のデータと、対応するトルクのデータとは実験により予め検出されて、関連付けされてテーブルTB2に格納される。
【0095】
モータ10への供給電流は、消費電流検出部156が、電流検出部104を用いて検出する。電流検出部104は、モータ10の駆動信号の入力段に接続された抵抗素子に相当する。消費電流検出部156は、当該抵抗素子にかかる電圧を測り、測定された電圧を抵抗素子の抵抗値で除することにより、モータ10に供給される電流を検出する。なお、抵抗値を用いた検出に代替して、電流センサを用いた検出であってもよい。
【0096】
モータ10に適用される直流モータは、直線SAに示すように、トルクが0から増加するにつれてモータ10への供給電流は増加するが、供給電流の増加につれてモータ10は発熱する。つまり、トルクが所定値TH(>0)を指示するとき、モータ10には値SA1の電流が供給されるとすれば、トルクが所定値THを超えると、モータ10への供給電流(>SA1)のうち発熱のために消費される電流が多くなり、直線SAは、図22のような理想的な相関関係を示さなくなる。
【0097】
したがって、トルクが比較的小さい期間は、たとえばトルクが0〜THに対応する電流の供給期間は、直線SAが示すモータ10の供給電流とトルクの関係に従えば、モータ10の供給電流に基づきブラシ圧を検出することが可能である。トルクが所定値THよりも大きくなるような期間においては、すなわち電流値SA1よりも大きい電流が供給される期間においては、消費電流ではなく、上述したように振動数に基づきテーブルTB1を検索してブラシ圧を検出する。なお、電流値SA1は実験により予め検出されて、メモリ121に格納される。
【0098】
動作において、ブラシ圧推定部1201は、消費電流検出部156が検出する電流値と、メモリ121から読出す電流値SA1とを比較し、比較結果に基づき、テーブル検索部157を制御する。
【0099】
つまり、比較結果に基づき、電流値SA1以下の電流が供給されると判定する期間においては、テーブル検索部157を、消費電流検出部156が検出するモータ10の消費電流値に基づき、テーブルTB2を検索するように制御する。テーブル検索部157は、検索結果に基づき、対応するトルク(ブラシ圧)をテーブルTB2から読出す。一方、比較結果に基づき、電流値SA1よりも大きい電流が供給されると判定する期間においては、テーブル検索部157を、上述したように振動数に基づきブテーブルTB1を検索するように制御する。テーブル検索部157は、検索結果に基づき、対応するブラシ圧をテーブルTB1から読出す。これにより、ブラシ圧推定部1201は、モータ10の消費電流および振動数の一方、または両方に基づきブラシ圧を精度良く推定することができる。
【0100】
(モータ10への供給電力の補償)
発明者は、ブラシ圧をより正確に推定するためには、振動数の検出精度を上げる必要があるとの動機付けのもと、モータ10の回転数すなわち振動数が低下する要因には、負荷の増加(ブラシ圧増加)および電池寿命が含まれるとの知見を得た。
【0101】
そこで、本実施の形態では、充電池13からモータ10に供給される電力を一定とするように補償する。これにより、電池寿命に起因する振動数の低下要因を排除することができる。
【0102】
図23には、充電池13の出力電圧の経時変化が模式的に示される。ここでは、出力電圧は、充電池13の電池残量を指す。図23のグラフは実験により得られた特性を示し、縦軸には、電池の出力電圧(単位:V)がとられ、横軸には、経過時間tがとられている。
【0103】
電動歯ブラシ1には、充電池13として一般的にニッケル水素電池が用いられる。充電池13の定格出力は、たとえば2.4Vであるとする。充電済みの充電池13の使用開始時は、出力電圧は定格出力(2.4V)を維持できるけれども、使用時間が経過するにつれ、出力電圧は低下する。余分な放電のない理想的な電池を想定した場合、図22の実線で示されるように、出力電圧は、電池の寿命が尽きるとき(時間t1)まで定格電圧(2.4V)を維持し、時間t1になったときに、出力電圧が0となる。しかしながら、一般的な電池は、このような理想的特性を示さない。つまり充電池13は、図22の破線で示されるように、徐々に定格電圧(2.4V)を維持することができなくなり、使用開始時からの経過時間が時間t2(<t1)になったとき、出力電圧は2.0Vとなり以降急激に低下する。充電池13の出力電圧が2.0V以下になると、電動歯ブラシ1は十分な動作能力を奏しえなくなり、十分な振動数を得られない。
【0104】
そこで、CPU120は、図17のPWM制御部120Aに代替して、図24のPWM制御部120Bを備える。図24を参照して、PWM制御部120Bは、モータ10の駆動を制御するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部16Bを含む。パルス信号生成部16Bは、図示のないパルス信号発生回路を用いてパルス信号を生成する。パルス信号生成部16Bは、使用者がスイッチSを操作をして指示した動作モードを入力する動作モード入力部17A、電圧モニタ102の検出信号を入力し、入力した検出信号に基づき充電池13の出力電圧を検知する電池電圧入力部19A、および動作モードと充電池13の出力電圧とに基づき、パルス信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部18Bを有する。パルス信号生成部16Bは、決定されたデューティ比を有するパルス信号を生成して出力する。パルス信号は、駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0105】
図25を参照して、PWM制御に用いられるパルス信号のデューティ比の変更について説明する。図25には横軸に時間がとられ、縦軸にパルス信号のON/OFFレベル(電圧)がとられている。モータ10への供給電力は、図25の斜線部に示すように、パルス信号のON期間の長さとONに対応する電圧との積(=電圧×時間)で決定される。そこで、本実施の形態では、デューティ比決定部18Bは、モータ10への供給電力(=電圧×時間)を一定とするようにパルス信号のデューティ比を変更する。ここで、デューティ比とは、パルス信号の1周期の長さを100%とした場合に、1周期の長さに対する電圧レベルがONである期間の長さを指す。デューティ比を変更するにより、充電池13の出力電圧が下がっても、モータ10に供給される電力を一定とすることができて、振動数を維持することができる。
【0106】
図26には、デューティ比を変更するためにデューティ比決定部18Bにより参照されるテーブルTB3の一例が示される。テーブルTB3には、電動歯ブラシ1の動作モードの種類MDと充電池13の出力電圧値BVの組のそれぞれに対応して、モータ10に供給される電力を一定とするためのデューティ比DRが格納される。テーブルTB3のデータは、予め実験により取得される。ここでは、出力電圧値BVとして2.4V,2.2Vおよび2Vが格納され、動作モードの種類MDとしては高速に振動する“高速”モード、それよりも低い速度で振動する“中速”モードおよびさらに低い速度で振動する“低速”モードの3種類が格納される。なお、格納される出力電圧値BVの種類および動作モードの種類MDの数は、これに限定されるものではない。
【0107】
動作において、動作モード入力部17AはスイッチSを操作して使用者が指定している動作モードの種類を入力し、電池電圧入力部19Aは充電池13の出力電圧を検知する。デューティ比決定部18Bは、入力された動作モードの種類と、検知された出力電圧との組に基づき、図26のテーブルTB3を検索する。検索結果に基づき、当該組に対応するデューティ比DRを、テーブルTB3から読出す。パルス信号生成部16Bは、読出されたデューティ比DRを有するパルス信号を生成して出力する。出力されるパルス信号は、駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0108】
このようにデューティ比DRを変更することにより、充電池13の出力電圧(電池残量)低下という振動数の低下要因を排除できて、正確なブラシ圧の検出が可能となる。
【0109】
(ブラシ圧の検索)
前述したモータ10への供給電力の補償を行なわずとも、振動数に基づき、ブラシ圧を正確に検出する例を示す。
【0110】
図27には、ブラシ圧の検索機能を備えるブラシ圧推定部1202の機能構成が示される。ブラシ圧推定部1202は、動加速度成分処理部153、静加速度成分処理部155および、ブラシ圧検索部159を含む差分振動数検出部158を備える。ブラシ圧推定部1202の差分振動数検出部158を除く他の構成は、ブラシ圧推定部1201と同様であるから説明は略す。
【0111】
差分振動数検出部158、動加速度成分処理部153から出力される振動数(Hz)を入力し、入力した振動数と無負荷時の振動数との差分を検出する。そして、検出した差分に基づきブラシ圧を検出する。これにより、ブラシ圧が推定される。
【0112】
ブラシ圧検出のために、図28および図29のテーブルTB4およびTB5が、ブラシ圧検索部159により検索される。図28のテーブルTB4には、電動歯ブラシ1の動作モードMDの種類と、充電池13の出力電圧BVとの組のそれぞれに対応して、モータ10にかかる負荷が0(無負荷)のときの振動数(Hz)DVが予め格納される。テーブルTB4に格納される動作モードMDの種類数および出力電圧BVの種類は、これに限定されない。
【0113】
図29のテーブルTB5には、テーブルTB4から読出された振動数DVと、動加速度成分処理部153が検出する振動数との差分DFと、差分DFのそれぞれに対応してブラシ圧PRが予め格納される。テーブルTB4とTB5のデータは、実験により検出される。
【0114】
電動歯ブラシ1が電源ONされて実行される図4の初期化処理(S5)では、モータ10は無負荷状態である。ステップS5において、差分振動数検出部158は、電圧モニタ102から充電池13の出力電圧値を指す信号を入力する。
【0115】
差分振動数検出部158のブラシ圧検索部159は、スイッチSから入力する使用者が指示する動作モードの種類と、電圧モニタ102からの入力信号が指す電圧値の組に基づき、テーブルTB4を検索する。検索結果に基づき、当該電圧値と動作モードの組に対応する振動数DVを、テーブルTB4から読出す。差分振動数検出部158は、テーブルTB4から読出された無負荷時の振動数DVをメモリ121の所定領域に記憶する。
【0116】
初期化処理(ステップS5)が終了すると、ブラッシングによりブラシ圧が生じて、モータ10のトルクは増加する。これに伴い、動加速度成分処理部153が検出するモータ10の振動数も増加する。
【0117】
初期化処理終了後のブラシ圧検知処理(S50)では、差分振動数検出部158は、動加速度成分処理部153が順次に検出する振動数と、メモリ121の所定領域から読出した振動数DVとの差分を検出(算出)する。そして、ブラシ圧検索部159は、検出された差分に基づき、メモリ121のテーブルTB5を検索する。検索結果に基づき、検出した差分に一致する差分DFに対応するブラシ圧PRをテーブルTB5から読出す。これにより、ブラシ圧(ブラシ圧PR)が検出(推定)される。
【0118】
このように充電池13の出力電圧(電池残量)に応じた無負荷時の振動数と、負荷がかかっている場合の振動数の差分は、負荷すなわちブラシ圧の大きさに相当することから、上述のようにモータ10の無負荷時の振動数と、負荷が有るときの振動数との差分に基づき、負荷の大きさすなわちブラシ圧を推定することができる。
【0119】
(ブラシ圧の報知)
図30では、検知されたブラシ圧を報知するための表示部16が一体的に取り付けられた電動歯ブラシ1の外観が示される。
【0120】
ブラシ圧は、図3の表示器110で表示することもできるが、表示部16により表示することもできる。表示部16は、LED(Light Emitting Diode)などの発光部からなり、ブラッシング時に使用者が確認し易いように本体2の端に設けられる。表示部16は、略円筒状の本体2のハウジング周囲を一周するように配置される。端部に配置すると、鏡に映して確認することも可能である。なお、表示部16は、本体2のブラシ210側の端に設けてもよい。
【0121】
表示態様として、検出されるブラシ圧に応じて、表示部16のLEDの点灯状態を変化させる。たとえば、ブラシ圧が高いと評価されるほど点滅速度UPや輝度UPをする。または、ブラシ圧が高いと評価されると表示色を赤にし、低いと評価されると緑色で点灯するようにしてもよい。
【0122】
検出された振動数は、表示器110または表示部16を介して表示することで報知してもよい。
【0123】
ブラシ圧および振動数の報知の態様は、表示部16を用いたものに特定されず、音や音声を用いた出力であってもよい。
【0124】
なお、駆動源としては、直流モータ10でなくても良い。たとえば、ソレノイド、圧電素子、超音波振動子、人工筋肉などを利用したアクチュエータであってもよい。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1 電動歯ブラシ、15 加速度センサ、16A,16B パルス信号生成部、17A 動作モード入力部、18A,18B デューティ比決定部、19A 電池電圧入力部、103 フィルタ部、120 CPU、120A,120B PWM制御部、153 動加速度成分処理部、155 静加速度成分処理部、156 消費電流検出部、157 テーブル検索部、158 差分振動数検出部、159 ブラシ圧検索部、1201,1202 ブラシ圧推定部、TB1〜TB5 テーブル。
【技術分野】
【0001】
この発明は口腔ケア装置に関し、加速度センサにより振動数を検出する機能を有する口腔ケア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア装置の1例として電動歯ブラシがある。電動歯ブラシを用いたブラッシングにおいて、効果的にプラーク(歯垢)を除去するためには、歯に対してブラシが接触している場合などにおけるブラシに作用する荷重(以下、ブラシ圧という)の制御が重要であることが知られている。
【0003】
電動歯ブラシにおいて、ブラシの歯に対するブラシ圧は、一般的にはモータの消費電流に基づいて検知することができる(特許文献1)。他の方法として、歪ゲージを用いて検知することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−152217号公報
【特許文献2】特開平10−108734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの消費電流を検知する方法の場合、モータは動作時間の経過とともにモータが加熱し、それに伴い一定の振動数で動作していても消費電流が変化するため、検知精度が十分ではなかった。
【0006】
歪ゲージを用いた方法の場合、ブラシの歯に対する傾き角度が変化すると歪みゲージでは正確な測定ができない。また、ブラシヘッドに歪ゲージを配置する必要があり、そのための配線が電動歯ブラシの振動で断線するおそれがあった。また、歯ブラシを交換可能な電動歯ブラシでは、歯ブラシと本体との接点部で配線同士の接触不良または水分侵入のおそれがあり、これを防止するための構造的改良が必要とされる。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、単純な構成で、口腔ケア部材に作用する荷重を推定するための参照値(基準値)を得ることのできる口腔ケア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う、ケア部材を用いて口腔をケアする口腔ケア装置は、加速度センサと、ケア部材を振動させるための駆動手段と、ケア部材の振動数を検出するための振動数検出手段と、を備え、振動数検出手段は、加速度センサの出力信号の波形に基づき、振動数を検出する手段を含む。
【0009】
好ましくは、振動数検出手段が検出した振動数に基づき、ケア部材に作用する荷重を指す部材圧を検出する。
【0010】
好ましくは、駆動手段はモータであり、振動数検出手段は、無負荷時のモータの回転による振動数と、振動数検出手段が検出する振動数との差分に基づき、部材圧を検出する。
【0011】
好ましくは、駆動手段はモータであり、モータの消費電流を検出する消費電流検出手段、をさらに備え、振動数検出手段は、さらに、消費電流検出手段が検出する消費電流に基づき振動数を検出する手段を含む。
【0012】
好ましくは、口腔ケア装置の各部に電力を供給する電源と、電源が出力する電力を検出する電力検出手段と、電力検出手段が検出する電力の値に基づき、駆動手段に供給される電力を補う電力補償手段と、を備える。
【0013】
好ましくは、電力補償手段は、電力検出手段が検出する電力の値に基づき、駆動するために駆動手段に与えられるパルス信号のデューティ比を変更する。
【0014】
好ましくは、検出される部材圧を報知する。
好ましくは、検出される振動数を表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加速度センサを用いるという単純な構成で、口腔ケア部材の部材圧を推定するための参照値(基準値)である振動数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の電動歯ブラシを含む表示システムのブロック図である。
【図2】実施形態の電動歯ブラシの内部構成例を示す断面図である。
【図3】実施形態の電動歯ブラシを含む表示システムの外観例を示す斜視図である。
【図4】実施形態におけるブラッシング評価処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における姿勢検出処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態におけるブラッシング部位推定処理(上顎)を示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるブラッシング部位推定処理(下顎)を示すフローチャートである。
【図8】上顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図9】下顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図10】ブラッシング情報の一例を示す図である。
【図11】(A)〜(C)は、ブラシ角を説明するための図である。
【図12】ブラシ角の変化に伴なうセンサ出力の波形変化を示す図である。
【図13】ブラッシング結果として、ブラッシング時間の出力例を示す図である。
【図14】ブラッシング結果として、ブラシ角の出力例を示す図である。
【図15】ブラッシング結果として、ブラシ圧の出力例を示す図である。
【図16】ブラッシング結果として、ブラッシング指標の出力例を示す図である。
【図17】実施の形態に係るブラシ圧推定の為の機能構成図である。
【図18】加速度センサとその周辺回路の概略図である。
【図19】(A)と(B)はフィルタ部の出力波形を示す図である。
【図20】モータの振動数と負荷の相関関係を示す図である。
【図21】実施の形態によるブラシ圧検知(推定)処理の概略フローチャートである。
【図22】実施の形態に係るモータの負荷特性を示す図である。
【図23】充電池の出力電圧の経時変化を模式的に示す図である。
【図24】PWM制御部の他の構成を示す図である。
【図25】パルス信号のデューティ比の変更について説明するための図である。
【図26】デューティ比決定部により参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図27】ブラシ圧の検索機能を備えるブラシ圧推定部の機能構成図である。
【図28】ブラシ圧検索のために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図29】ブラシ圧検索のために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図30】電動歯ブラシの外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
実施の形態では、口腔ケア装置の一例として筐体表面に植毛されたブラシを有する電動歯ブラシを説明するが、実施の形態の構成は、口腔ケア(歯の洗浄・ブラッシング・歯茎マッサージなど)に用いることが可能な装置一般に適用することができる。具体的には、口腔ケアに用いる材料としては、歯ブラシに代替してスポンジ、ゴム、エラストマなどの樹脂部品またはブラシとこれら樹脂部品が複合された口腔ケア部材を用いた装置に適用することができる。口腔ケア装置においては、上述のブラシ圧は、ケア部材に作用する荷重を指す“部材圧”に相当する。
【0019】
<構成について>
図1〜図3を参照して、電動歯ブラシの構成を説明する。
【0020】
図1は、電動歯ブラシを含む表示システムのブロック図であり、図2は、電動歯ブラシの内部構成例を示す断面図であり、図3は、電動歯ブラシを含む表示システムの外観例を示す斜視図である。
【0021】
電動歯ブラシ1は、駆動源であるモータ10を内蔵する本体部2(以下、単に「本体2」ともいう。)と、モータ10の駆動により振動する振動部材5とを備えている。したがって、振動部材5を電動歯ブラシ本体と見なして、モータ10の回転数は、電動歯ブラシ本体の振動数に対応する。本体2は、概ね円筒形状を呈しており、歯を磨く際に使用者が手で握るためのハンドル部を兼ねている。
【0022】
さらに、本実施形態の電動歯ブラシ1は、本体2を載置し、電動歯ブラシ1を充電するための充電器100と、ブラッシング結果を出力するための表示器110とを備えている。
【0023】
本体2には、電源のオン/オフおよび後述のモータ10の動作モードの切替えを行なうためのスイッチSが設けられている。また本体2の内部には、駆動源であるモータ10(たとえば、直流モータ)、駆動回路12、各部に電力を供給するための定格出力2.4Vの電源である充電池13、充電用のコイル14などが設けられている。充電池13を充電する際には、充電器100に本体2を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。駆動回路12は、各種演算および制御を実行するCPU(Central Processing Unit)120、プログラム、各種設定値が格納されるとともに、テーブルTB1〜TB5(後述する)を予め格納するメモリ121、タイマ122、データ送信部123などを有している。データ送信部123は、表示器110のデータ受信部112との間で無線通信を行なう。表示器110は、データ受信部112で受信したブラッシング結果などのデータを出力するためのディスプレイ111を備えている。
【0024】
充電池13の出力電圧(電池残量)を検出するための電圧モニタ102、加速度センサ15の出力信号をフィルタ処理するフィルタ部103、モータ10への供給電流(すなわちモータ10の消費電流)を検出するための電流検出部104をさらに備える。
【0025】
また、本体2は、ブラッシング結果を表示するための表示部16を一体的に備える。
図3には、充電器100に装着された状態の電動歯ブラシ1の外観が、表示器110と関連付けて示される。
【0026】
本体2の内部には、電動歯ブラシ1の姿勢を検知するために、たとえば、多軸(ここではx,y,zの三軸)の加速度センサ15が設けられる。加速度センサ15は、図3に示すように、x軸がブラシ面に対して平行になり、y軸が本体2の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設置される。つまり、本体2を充電器100に載置したときに、重力加速度ベクトルがy軸に平行になり、ブラシ面を上に向けたときに、重力加速度ベクトルがz軸に平行になり、本体2を水平にしてブラシ面を横に向けたときに、重力加速度ベクトルがx軸に平行になる。加速度センサ15の各軸の出力はCPU120に入力され、ブラシの三次元姿勢を検出するために利用される。
【0027】
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体2の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0028】
振動部材5は、本体2側に固定されているステム部20と、このステム部20に装着されるブラシ部品21とを備える。ブラシ部品21の先端にはブラシ210が植毛されている。ブラシ部品21は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、ステム部20に対して着脱自在な構成となっている。
【0029】
振動部材5のブラシ部品21は、ブラシ210が配置されたブラシ部、および、本体2側に位置する柄部を含む。なお、本実施形態では、比較的長い柄部を含むブラシ部品21が取り替えられる構成を示したが、ブラシ部のみ、あるいは、ブラシ部および短い柄部を含むブラシ部品が取り替えられる構成であってもよい。つまり、柄部の全てまたは一部は、本体に含まれる構成であってもよい。
【0030】
ステム部20は、樹脂材からなる。ステム部20は、エラストマからなる弾性部材202を介して本体2に取り付けられている。ステム部20は、先端(ブラシ側の端部)が閉じた筒状の部材であり、筒の内部の先端に軸受203を有している。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、ステム部20の軸受203に挿入される。この偏心軸30は、軸受203の近傍に重り300を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。なお、偏心軸30の先端と軸受203の間には微小なクリアランスが設けられている。
【0031】
電動歯ブラシ1は、さらに、接触または接近の有無を検知するための、電極方式の接触検知部50を備える。接触検知部50は、ブラッシングの際に、生体すなわち頬粘膜および舌との接触または近接を検知する。具体的には、接触検知部50は、電極部52、および、電極部52からのインピーダンスを検出するための検出部54を含む。検出部54は、駆動回路12内に搭載されてよい。駆動回路12内の検出部54は、電極部52の電気回路を流れている電流を検出することで、インピーダンスを検出することができる。インピーダンス値により頬粘膜および舌との接触または近接を検知する。
【0032】
<電動歯ブラシの駆動原理>
CPU120が動作モードに応じた駆動信号(たとえばPWM((Pulse Width Modulation)信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させる。回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転するが、偏心軸30は重心がずれているために回転中心の回りに旋回するような運動を行なう。よって、偏心軸30の先端が軸受203の内壁に対して衝突を繰り返し、ステム部20とそれに装着されたブラシ部品21とを高速に振動(運動)させることとなる。つまり、モータ10が、ブラシを振動(運動)させる駆動部の役割を担い、偏心軸30が、モータ10の出力(回転)を振動部材5の振動に変換する運動伝達機構(運動変換機構)の役割を担っている。
【0033】
使用者は、本体2を手で持ち、高速に振動するブラシ210を歯に当てることで、ブラッシングを行なうことができる。なお、CPU120はタイマ122を用いて継続動作時間を監視しており、所定時間(たとえば2分間)が経過したら自動的にブラシの振動を停止させる。
【0034】
本実施形態の電動歯ブラシ1では、運動伝達機構である偏心軸30が振動部材5に内包され、特に重り300がブラシ210の近傍に配置されている。よって、ブラシ210の部分を効率的に振動させることができる。その一方で、振動部材5(ステム部20)が弾性部材202を介して本体2に取り付けられているので、振動部材5の振動が本体2に伝わり難くなっている。よって、歯を磨く際の本体2および手の振動を低減でき、使用感の向上を図ることができる。
【0035】
<電動歯ブラシの動作>
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面など)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なる。よって、たとえばブラシの当て方(ブラシ角やブラシ圧)、動かし方、スピード、ブラッシング時間など、歯列の部位ごとに効果的なブラッシング動作に違いがある。それゆえ、適切なブラッシングが行われているかどうかの評価は、部位ごとに行なうことが望ましい。
【0036】
そこで、本実施形態の電動歯ブラシ1は、加速度センサ15で検出されたブラシの姿勢(姿勢情報)、および、接触検知部50の検知結果に基づいて、ブラッシング部位を精度よく推定することにより、部位ごとのブラッシング評価を実現する。評価項目は種々考えられるが、ここではブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧の3項目についての評価を行なう。
【0037】
本実施形態では、上下の歯列を、「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「上顎左頬側」、「上顎左舌側」、「上顎右頬側」、「上顎右舌側」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」、「下顎左頬側」、「下顎左舌側」、「下顎右頬側」、「下顎右舌側」、の12箇所の部位に区分する。ただし、歯列の区分はこれに限らず、もっと大まかな区分でもよいし、より細かい区分でもよい。たとえば、上下左右の噛み合わせ面を考慮してもよい。
【0038】
なお、上顎には舌がないため、「上顎前舌側」、「上顎左舌側」および「上顎右舌側」との部位名は、正確にはそれぞれ、「上顎前口蓋側」、「上顎左口蓋側」および「上顎右口蓋側」という。同様に、前顎には頬がないため、「上顎前頬側」および「下顎前頬側」との部位名は、正確にはそれぞれ「上顎前唇側」および「下顎前唇側」という。
【0039】
図4〜図7のフローチャートを参照して、ブラッシング評価のフローを具体的に説明する。図4はメインルーチンのフローチャートであり、図5〜図7、図21はメインルーチンの各処理の詳細を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、特にことわりのない限り、CPU120がメモリ121に格納されているプログラムに従って実行する処理である。
【0040】
電動歯ブラシ1の電源がONになると、CPU120は、各部を初期化する初期化処理を行う(ステップS(以下、単にSと略す)5)。その後、加速度センサ15の出力に基づきブラシの姿勢(傾き)を検出する(S10)。次に、CPU120は、少なくともS10で検出された姿勢に基づいてブラッシング部位を推定する(S20)。次に、CPU120は、ブラッシング時間の計測(S30)、ブラシ角の推定(S40)、ブラシ圧の検知(S50)を行なう。これらの情報は、部位別にメモリ121に記録され(図10参照)、出力される(S55)。S10〜S55の処理は一定時間ごとに繰り返し実行される。電源がOFFになるか、継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達すると、CPU120は、メモリ121に記録されたブラッシング情報(ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧)に基づいて、部位ごとのブラッシング結果を評価し、その評価結果を表示器110に出力する(S60)。なお、メモリ121内のブラッシング情報は、電動歯ブラシ1の電源がONになるたびにクリアされる。
【0041】
本実施形態では、ブラッシングが終了した時点で、ブラッシング結果を出力するとともに、ブラッシングが継続している間に、ブラッシングの途中経過を出力している。
【0042】
以下、図4の各処理を詳しく説明する。
(姿勢の検出)
図5は姿勢検出処理(S10)のフローチャートである。
【0043】
CPU120は、加速度センサ15からx、y、zそれぞれの出力Ax、Ay、Azを取得する(S100)。Axはx方向の加速度成分、Ayはy方向の加速度成分、Azはz方向の加速度成分を表す。電動歯ブラシ1が静止状態にあるとき(加速度センサ15に動加速度が作用していないとき)は、Ax、Ay、Azの合成ベクトルAが重力加速度に相当する。ここでは、A=(Ax、Ay、Az)を姿勢ベクトルとよぶ。
【0044】
ここで、姿勢ベクトルA=(Ax、Ay、Az)の大きさが1.2g(gは重力加速度)より大きい場合は(S101;YES)、エラーを返す(S102)。加速度センサ出力に動加速度成分が多く含まれていると、重力加速度の方向(つまりブラシの三次元姿勢)を正確に特定するのが難しくなるからである。なお、S102のようにエラーを返すのではなく、合成ベクトルの大きさが1.2g以下となる加速度センサ出力Ax、Ay、Azが得られるまでS100とS101の処理を繰返すようにしてもよい。なお、エラー判定のしきい値は1.2gに限らず、他の値でもよい。
【0045】
(ブラッシング部位の推定)
図6、図7はブラッシング部位推定処理(S20)のフローチャートである。また図8、図9は、ブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【0046】
まずCPU120は、z方向の加速度センサの出力Azに基づき、上顎か下顎かを判定する(S700)。上顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず上向きになり、下顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず下向きになることに着目した判定である。Az>0の場合は下顎(S801)、Az≦0の場合は上顎(S701)と判定される。
(1)上顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S702)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体2が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体2が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値aの場合は上顎前歯と判定される(S703)。
【0047】
上顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S704)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎前頬側」と判定され(S705)、Ax≦0の場合は「上顎前舌側」と判定される(S706)。
【0048】
一方、S702で上顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいてブラシの向きを判定する(S707)。Ax>0の場合は「上顎右頬側または上顎左舌側」と判定され(S708)、Ax≦0の場合は「上顎左頬側または上顎右舌側」と判定される(S712)。
【0049】
加速度センサ15の出力のみでは、上顎右頬側と上顎左舌側の区別、および、上顎左頬側と上顎右舌側の区別は難しい。そこでCPU120は、前回の処理(1クロック前の処理)で判定されたブラッシング部位に基づき、部位の絞り込みを行う(S709、S713)。具体的には、S709において、前回のブラッシング部位が「上顎前頬側、上顎右頬側、上顎右舌側、下顎前頬側、下顎右頬側、下顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎右頬側」であると推定し(S710)、前回のブラッシング部位が「上顎前舌側、上顎左頬側、上顎左舌側、下顎前舌側、下顎左頬側、下顎左舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎左舌側」であると推定する(S711)。S713においては、前回のブラッシング部位が「上顎前頬側、上顎左頬側、上顎左舌側、下顎前頬側、下顎左頬側、下顎左舌側」のいずれかの場合は、現在のブラッシング部位が「上顎左頬側」であると推定し(S714)、前回のブラッシング部位が「上顎前舌側、上顎右頬側、上顎右舌側、下顎前舌側、下顎右頬側、下顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「上顎右舌側」であると推定する(S715)。このような推定が成り立つのは、ブラシの移動量や向き変更がなるべく少なくなるようにブラッシング部位の移動が行われる蓋然性が高いからである。
【0050】
(2)下顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサ15の出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S802)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体2が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体2が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値bの場合は下顎前歯と判定される(S803)。
【0051】
下顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S804)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax<0の場合は「下顎前頬側」と判定され(S805)、Ax≧0の場合は「下顎前舌側」と判定される(S806)。
【0052】
一方、S802で下顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいてブラシの向きを判定する(S807)。Ax>0の場合は「下顎右頬側または下顎左舌側」と判定され(S808)、Ax≦0の場合は「下顎左頬側または下顎右舌側」と判定される(S812)。
【0053】
S809において、前回のブラッシング部位が「下顎前頬側、下顎右頬側、下顎右舌側、下顎前頬側、上顎右頬側、上顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎右頬側」であると推定し(S810)、前回のブラッシング部位が「下顎前舌側、下顎左頬側、下顎左舌側、上顎前舌側、上顎左頬側、上顎左舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎左舌側」であると推定する(S811)。S813においては、前回のブラッシング部位が「下顎前頬側、下顎左頬側、下顎左舌側、上顎前頬側、上顎左頬側、上顎左舌側」のいずれかの場合は、現在のブラッシング部位が「下顎左
頬側」であると推定し(S814)、前回のブラッシング部位が「下顎前舌側、下顎右頬側、下顎右舌側、上顎前舌側、上顎右頬側、上顎右舌側」のいずれかであれば、現在のブラッシング部位は「下顎右舌側」であると推定する(S815)。
【0054】
以上の処理によって、現在のブラッシング部位が、「上顎前頬側」(S705)、「上顎前舌側」(S706)、「上顎右頬側」(S710)、「上顎左舌側」(S711)、「上顎左頬側」(S714)、「上顎右舌側」(S715)、「下顎前頬側」(S805)、「下顎前舌側」(S806)、「下顎右頬側」(S810)、「下顎左舌側」(S811)、「下顎左頬側」(S814)、「下顎右舌側」(S815)のいずれかに特定される。
【0055】
なお、上記判定アルゴリズムはあくまでも一例を示したものにすぎず、加速度センサ15の出力Ax、Ay、Azからブラッシング部位を特定できるのであればどのような判定アルゴリズムでも構わない。たとえばAx、Ay、Azの値をそのまま判定の変数として用いるのでなく、Ax、Ay、Azを適宜組合わせることで得られる2次変数を判定に用いてもよい。2次変数は、たとえば、Ay/Az、Ax・Ax+Ay・Ay、Az−Axなど、任意に設定できる。あるいは、各軸の加速度情報Ax、Ay、Azを、角度情報(姿勢角)α、β、γに変換した後で、ブラッシング部位を判定してもよい。重力加速度方向に対するx軸の角度をロール角α、重力加速度方向に対するy軸の角度をピッチ角β、重力加速度方向に対するz軸の角度をヨー角γのように定義している。判定に用いる閾値は臨床実験等の結果から決定することができる。
【0056】
(ブラッシング時間の計測)
図10は、メモリ121に記録されているブラッシング情報の一例を示している。図10は、下顎左頬側をブラッシングしている状態の例である。下顎左頬側よりも前に、上顎前頬側が7.5秒間ブラッシングされ、上顎左頬側が12.2秒間ブラッシングされている。なお「−」はデータが記録されていないこと、つまりその部位がまだブラッシングされていないことを表している。
【0057】
図4に示したS30において、CPU120は、S20で推定されたブラッシング部位(図10の例では下顎左頬側)のブラッシング時間をカウントアップする。たとえば、図4のS10〜S50の処理が0.1秒に1回実行されるのであれば、下顎左頬側のブラッシング時間が+0.1だけカウントアップされ、2.1秒となる。
【0058】
なおブラッシング情報には、ブラッシング時間の累積値が記録される。すなわち、たとえばブラッシング部位が再び上顎左頬側に移った場合には、メモリされているブラッシング時間がリセットされるのではなく、メモリされている値12.2秒にブラッシング時間が加算されていく。
【0059】
(ブラシ角の推定)
図4のS40において、CPU120は、S10で検出された姿勢(加速度センサ15の出力)に基づいてブラシ角を推定し、現在のブラッシング部位(図9の例では下顎左頬側)のブラシ角の値を更新する。このとき、CPU120はメモリされているブラシ角の値と今回の推定値とから、ブラシ角の平均値を算出して記録することが好ましい。
【0060】
ブラシ角とは、歯軸(歯の頭と根に沿った軸)に対するブラシの当たり角である。図11の(A)がブラシ角=15度の状態、(B)がブラシ角=45度の状態、(C)がブラシ角=90度の状態を示している。歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すには、ブラシの毛先が歯周ポケットや歯間に入り込むようにブラシを動かすとよい。したがって、ブラシ角は35度〜55度の範囲が好ましい。
【0061】
ブラシ角は、たとえば、z方向の加速度成分Azから推定可能である。図12に示すように、ブラシ角が約90度の場合はAzはほとんど0を示し、ブラシ角が小さくなるほどAzの値が大きくなる、というようにブラシ角に応じてAzの値が有意に変化するからである。なお、ブラシ角に応じてx方向の加速度成分Axも変化するため、Azの代わりにAxからブラシ角を推定したり、AxとAzの両方(AxとAzの合成ベクトルの方向)からブラシ角を推定することも好ましい。ブラシ角は連続量で算出してもよいし、「35度未満」「35度〜55度」「55度以上」のような大まかな推定でもよい。
【0062】
(ブラシ圧の検知)
図4のS50において、CPU120は、加速度センサ15の出力に基づいてブラシ圧を推定(検出)し、現在のブラッシング部位(図10の例では下顎左頬側)のブラシ圧の値を更新する。このとき、CPU120はメモリ121に記憶されているブラシ圧の値と今回の検出値とから、ブラシ圧の平均値を算出して記録することが好ましい。
【0063】
ブラシ圧が小さすぎると歯垢除去力が低下し、逆に高すぎるとブラシ寿命の低下や歯肉への負担増などの問題が生じる可能性がある。電動歯ブラシ1のブラシ圧は普通の歯ブラシよりも小さくてよいことから、電動歯ブラシ1を使いはじめたほとんどの人はブラシ圧超過の傾向にあるといわれている。ブラシ圧の最適値は100g〜200g程度である。
【0064】
本実施の形態に係るブラシ圧の推定の詳細は後述する。
(ブラッシング結果の評価・出力)
CPU120は、図4のS55またはS60においてメモリ121に記録されたブラッシング情報に基づいて、部位ごとのブラッシング結果を評価し、その評価結果を表示器110(ディスプレイ111)に出力する。
【0065】
図13は、ブラッシング時間の評価結果の出力例である。CPU120は、メモリ121から各部位のブラッシング時間を読み込み、たとえば、7秒未満を「不足」、7秒〜15秒を「良好」、15秒超を「過剰」と評価する。その評価結果は表示器110に送信される。表示器110のディスプレイ111には歯列が描画されており、その歯列中の該当部位が評価結果に応じた色(「不足」は白色、「良好」は黄色、「過剰」は赤色など)で点灯する。このような表示をみることで、使用者は歯列中のどの部位のブラッシングが不足しているか(あるいは過剰であったか)を直感的に把握できる。
【0066】
図14は、ブラシ角の評価結果の出力例である。たとえば、「35度未満」、「35度〜55度」、「55度以上」の三段階で評価され、歯列中の各部位が評価結果に応じた色で点灯する。適切でないブラシ角でブラッシングを行った場合、最適なブラシ角に比べて歯垢除去力が劣るため、所期のブラッシング効果が得られなかったり、ブラッシングに時間がかかったりする可能性がある。図14のように部位別にブラシ角の評価を出力すれば、使用者に対して正しいブラシ角によるブラッシングを意識させることができる。
【0067】
図15は、ブラシ圧の評価結果の出力例である。たとえば、100g未満は「不足」、100g〜200gは「良好」、200g超は「過大」と評価され、歯列中の各部位が評価結果に応じた色で点灯する。上述のようにブラシ圧が適切でないと、歯垢除去力の低下、ブラシ寿命の低下、歯肉への負担増などの問題が生じる可能性がある。とはいえ、使用者にとっては、どれくらいの力を加えたときに最適なブラシ圧なのかを理解するのは難しい。その点、図15のように部位別にブラシ圧の評価を出力すれば、使用者に対して適切なブラシ圧を教示できるとともに、正しいブラシ圧によるブラッシングを意識させることができる。
【0068】
図16は、ブラッシング指標の評価結果の出力例である。ブラッシング指標とは、複数の評価項目(ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧)を総合的に評価するための指標であり、ブラッシングの達成度を表すものである。ブラッシング指標の算出式はどのように定義してもよい。本実施形態では、ブラッシング時間とブラシ圧をそれぞれ35点満点で評価し、ブラシ角を30点満点で評価して、それらの評価値の合計(100点満点)をブラッシング指標として用いる。図16の例では、80点以上を「優」、60点〜80点を「良」、60点未満を「不可」としている。このような総合評価を出力することで、使用者に対してより有益な指針を与えることができる。
【0069】
以上述べた本実施形態の構成によれば、加速度センサ15の出力を利用することにより、高精度に電動歯ブラシ1の姿勢、および、ブラッシング部位の同定が可能となる。したがって、細かい区分(部位)でブラッシング結果を評価でき、有用かつ信頼性の高い評価指針を使用者に提供することが可能となる。しかも加速度センサ15は小型ゆえ、電動歯ブラシ1本体への組み込みも容易であるという利点もある。
【0070】
なお、図13〜図16の評価結果は、ディスプレイ111上に同時に表示してもよいし、順番に表示してもよい。後者の場合、表示の切替えは自動で行われてもよいし、使用者のボタン操作により行われてもよい。
【0071】
また上記実施形態では、電動歯ブラシ1の電源がオフになると自動的に結果が表示される。しかし、表示器110の設置場所とは異なる場所で歯磨きが行われることも想定されるため、たとえば、使用者が表示器110または歯ブラシ本体2に設けられたボタンを押すと、歯ブラシ本体2から表示器110にブラッシング情報が送信され、表示器110に結果が表示されるような機能を設けることも好ましい。
【0072】
メモリ121に蓄積されたブラッシング情報や評価結果を印刷できるとよい。たとえば充電器や表示器にプリンタ(図示せず)を搭載してもよいし、歯ブラシ本体や充電器や表示器から外部のプリンタに印刷データを送信できるようにしてもよい。またブラッシング情報や評価結果のデータを無線通信もしくは有線通信により図示しない外部機器(パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA(Portable Digital Assistant)など)に転送する機能も好ましい。また歯ブラシ本体、充電器、表示器などにメモリカードスロット(図示せず)を設け、ブラッシング情報や評価結果のデータを外部メモリカードに記録できるようにしてもよい。
【0073】
また、ブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧の最適値(目標値)を部位ごとに異なる値を設定できるようにしてもよい。たとえば、臼歯の歯面(側面)では、ブラシの毛先で歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すために、35度〜55度のブラシ角が好ましいが、歯面が比較的大きい前歯ではそれよりも大きい角度(たとえば55度〜90度)が好ましい。また臼歯の噛み合わせ面に対しては、ブラシ角は約0度がよい。さらに、刷掃効果の観点からではなく、歯肉などの組織にダメージを与えることを避けるという観点から、最適なブラッシング時間、ブラシ角、ブラシ圧を決定することもできる。このように部位ごとに最適値を設定し、評価を行なえば、より有用かつ信頼性の高い評価指針の提供が可能となる。
【0074】
(ブラシ圧の推定)
電動歯ブラシ1では、モータ10に同一の駆動信号が与えられるとしても、モータ10への負荷に応じて、すなわちブラシ圧に応じて振動数が変動することに着目して、ブラシ圧を推定する。ブラシ圧の増大とともに振動数は低下し、ブラシ圧が低いほど振動数は大きくなる。
【0075】
図4のS50では、ブラシ圧は、加速度センサ15から出力される電圧信号であるAx、AyおよびAzのいずれかを用いて検知(推定)される。
【0076】
図17には、実施の形態に係るブラシ圧推定の為の機能構成が示される。図17の各部は、CPU120が実行を制御するプログラムと回路の組合わせにより実現される。これらプログラムは、メモリ121の所定領域に予め格納される。CPU120により、メモリ121からプログラムが読出され、読出されたプログラムの命令コードを実行することにより、各部の機能が実現される。
【0077】
図17を参照して、CPU120は、ブラシ圧を推定するためのブラシ圧推定部1201およびモータ10をPWM制御に従って駆動するためのPWM制御部120Aを備える。
【0078】
ブラシ圧推定部1201は、加速度センサ15の出力信号のうち、電動歯ブラシ1の動加速度成分および静加速度成分の信号を処理する動加速度成分処理部153および静加速度成分処理部155、モータ10の消費電流(供給電流)を指す電流検出部104の出力信号を入力し、入力信号に基づきモータ10の消費電流を検出する消費電流検出部156、メモリ121のテーブルTB1を検索し、検索結果を出力するテーブル検索部157を含む。
【0079】
PWM制御部120Aは、モータ10の駆動を制御するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部16Aを含む。パルス信号生成部16Aは、図示のないパルス信号発生回路を用いてパルス信号を生成する。パルス信号生成部16Aは、使用者がスイッチSを操作をして指示した動作モードを入力する動作モード入力部17A、および入力した動作モードに基づきパルス信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部18Aを有する。パルス信号生成部16Aは、決定されたデューティ比を有するパルス信号を生成して出力する。出力されるパルス信号は駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0080】
図18には、加速度センサ15とその周辺回路が概略的に示される。図18を参照して、加速度センサ15の出力段にはフィルタ部103が接続される。フィルタ部103は、加速度センサ15からの出力信号を入力し、所定周波数帯域の信号のみを通過させるBPF(Band Pass Filter)151と、BPF151の出力段に並列接続される、HPF(High Pass Filter)152およびLPF(Low Pass Filter)154とを有する。HPF152の出力段には動加速度成分処理部153が接続され、LPF154の出力段には静加速度成分処理部155が接続される。
【0081】
HPF152は、BPF151からの入力信号のうち所定の遮断周波数(たとえば、90Hz)以上の周波数の信号だけを通過させて、出力する。LPF154は、BPF151からの入力信号のうち所定の遮断周波数(たとえば数Hz)以下の周波数の信号だけを通過させ、出力する。
【0082】
動加速度成分処理部153は、HPF152から出力される信号10Dを入力し処理することにより、モータ10の回転動作に伴う電動歯ブラシ1本体の振動数を検出する。HPF152から出力される信号10Dは、モータ10の回転(振動)に起因した振動数(たとえば、100Hz〜300Hzの周波数帯域)の信号に相当する。静加速度成分処理部155は、LPF154から出力される信号10Sを入力し処理する。この入力信号10Sは、歯磨き中の使用者が電動歯ブラシ1をひねるなどのブラシの姿勢を変える動作に起因する振動数(たとえば、数Hzの周波数帯域)の信号に相当する。したがって、信号10Sは、電動歯ブラシ1本体の姿勢情報成分の信号に相当する。
【0083】
(振動数の検出)
図19の(A)には、図18のBPF151の出力信号の波形の一例が時間経過に従って示される。図19の(A)においては、数Hz以下の低周波成分である信号10S(図中は、太い実線で示す)に、100Hz〜300Hzの高周波成分であるモータ10の回転動作に起因した振動成分の信号10D(図中は、細い実線で示す)が重畳しているが、上述のフィルタ部103を通過させることにより信号10Dと10Sを分離して出力することができる。図19の(B)においては、図19の(A)のある時間帯の信号10Dが抽出されて拡大して示される。
【0084】
図19の(B)を参照して、振動数を検出する手順を説明する。動加速度成分処理部153は、信号10Dを入力し、入力した信号10Dの波形について、所定周期T(以下、サンプリング周期Tという)毎に波形の傾きを検出する。この傾きは、波形を微分処理などすることにより検出することができる。動加速度成分処理部153は、サンプリング周期T毎に、信号10Dが示す波形の傾き(正の傾き、または負の傾き)を検出し、正の傾きが連続する期間の長さまたは負の傾きが連続する期間の長さ、および正の傾きから負の傾きへ(または負の傾きから正の傾きへ)の切換わるタイミングを検出する。検出結果に基づき信号10Dの周波数、すなわち電動歯ブラシ1の振動数を検出する。検出された振動数は、テーブル検索部157に出力される。
【0085】
振動数の検出方法は、図19の(B)に示される方法に限定されない。たとえば、信号10Dの波形を微分処理することによって極値(極大値と極小値)を検出し、所定時間期間において検出される極大値と極小値の個数に基づき、信号10Dの周波数、すなわち振動数を検出するようにしてもよい。
【0086】
(振動数に基づくブラシ圧の検出)
図20のグラフは、振動数と負荷(ここでは、ブラシ圧)の相関関係を示す。図20のグラフは発明者の実験結果に基づくデータを指す。グラフでは、縦軸に振動数(Hz)をとり、横軸にはモータ10にかかる負荷(グラム:g)の大きさをとる。
【0087】
モータ10は、PWM制御部120Aから同一の駆動信号が与えられた状態において、無負荷(負荷が無い)のときに最も速い速度で回転し、負荷が増加するに従って回転速度は低下する。
【0088】
具体的には、無負荷状態では、モータ10の回転による電動歯ブラシ1の振動数は最大振動数VHを指示し、ブラシ210が歯に押し当てられるなどして、ブラシ210全体に荷重がかかるようになると、ブラシ圧が増加する。これに伴いモータ10にかかる負荷は増加し、モータ10の回転速度は低下し、振動数は減少する。たとえば、ブラシ圧が100〜200g(適圧)の場合には、モータ10の振動数は適圧時振動数V2〜V3の範囲で検出される。さらに、ブラシ210が歯に強く押し当てられるなどして、たとえば500gの過大な荷重がブラシ210全体にかかると、モータ10に過大の負荷がかかった状態となり、振動数は、過大圧時振動数V4〜0の範囲で推移する。
【0089】
図20の相関関係に従えば、信号10Dの周波数に基づいて、すなわち振動数に基づいてブラシ圧を一意に決定(検出)することができる。
【0090】
本実施の形態では、図20のグラフの特性で示される振動数のデータと、対応するブラシ圧のデータは、関連付けられてテーブルTB1に予め格納される。テーブル検索部157は、動加速度成分処理部153から出力された振動数に基づき、当該テーブルTB1を検索し、検索結果に基づき、当該振動数に対応のブラシ圧をテーブルTB1から読出す。これにより、ブラシ圧推定部1201は、ブラシ圧を検出(推定)することができる。
【0091】
(ブラシ圧推定の概略処理)
図21には、本実施の形態によるブラシ圧検知(推定)処理の概略フローチャートが示される。
【0092】
図21を参照して、ブラシ圧推定部1201は、加速度センサ15の出力信号をフィルタ部103を介して入力する(SS3)。動加速度成分処理部153は、上述の(振動数の検出)の手順に従い振動数を検出する(SS5)。続いて、テーブル検索部157は、ステップSS5において検出された振動数に基づき、上述の(振動数に基づくブラシ圧の検出)の手順に従って、ブラシ圧を検出する(ステップSS9)。これにより、ブラシ圧が決定(推定)される。
【0093】
(ブラシ圧推定の他の方法)
ブラシ圧推定部1201は、上述した手順ではモータ10の振動数のみに基づきブラシ圧を推定したが、モータ10への供給電流に基づき振動数を検出するようしてもよい。
【0094】
図22には、本実施の形態に係るモータ10の負荷特性のグラフが示される。図22のグラフの縦軸にはモータ10の回転数(rpm)とモータ10への供給電流(すなわちモータ10の消費電流)(単位:A)が示される。横軸には、モータ10にかかるトルク(負荷)が示される。このトルクは、前述したブラシ圧に相当する。図22の直線SAは、モータ10への供給電流は、トルク(負荷)が大きくなるほど増大するという理想的な特性を表わしている。直線RAは、モータ10の回転数は、トルク(負荷)が増加するほど、減少することの特性を表す。ここでは、直線SAが指す供給電流のデータと、対応するトルクのデータとは実験により予め検出されて、関連付けされてテーブルTB2に格納される。
【0095】
モータ10への供給電流は、消費電流検出部156が、電流検出部104を用いて検出する。電流検出部104は、モータ10の駆動信号の入力段に接続された抵抗素子に相当する。消費電流検出部156は、当該抵抗素子にかかる電圧を測り、測定された電圧を抵抗素子の抵抗値で除することにより、モータ10に供給される電流を検出する。なお、抵抗値を用いた検出に代替して、電流センサを用いた検出であってもよい。
【0096】
モータ10に適用される直流モータは、直線SAに示すように、トルクが0から増加するにつれてモータ10への供給電流は増加するが、供給電流の増加につれてモータ10は発熱する。つまり、トルクが所定値TH(>0)を指示するとき、モータ10には値SA1の電流が供給されるとすれば、トルクが所定値THを超えると、モータ10への供給電流(>SA1)のうち発熱のために消費される電流が多くなり、直線SAは、図22のような理想的な相関関係を示さなくなる。
【0097】
したがって、トルクが比較的小さい期間は、たとえばトルクが0〜THに対応する電流の供給期間は、直線SAが示すモータ10の供給電流とトルクの関係に従えば、モータ10の供給電流に基づきブラシ圧を検出することが可能である。トルクが所定値THよりも大きくなるような期間においては、すなわち電流値SA1よりも大きい電流が供給される期間においては、消費電流ではなく、上述したように振動数に基づきテーブルTB1を検索してブラシ圧を検出する。なお、電流値SA1は実験により予め検出されて、メモリ121に格納される。
【0098】
動作において、ブラシ圧推定部1201は、消費電流検出部156が検出する電流値と、メモリ121から読出す電流値SA1とを比較し、比較結果に基づき、テーブル検索部157を制御する。
【0099】
つまり、比較結果に基づき、電流値SA1以下の電流が供給されると判定する期間においては、テーブル検索部157を、消費電流検出部156が検出するモータ10の消費電流値に基づき、テーブルTB2を検索するように制御する。テーブル検索部157は、検索結果に基づき、対応するトルク(ブラシ圧)をテーブルTB2から読出す。一方、比較結果に基づき、電流値SA1よりも大きい電流が供給されると判定する期間においては、テーブル検索部157を、上述したように振動数に基づきブテーブルTB1を検索するように制御する。テーブル検索部157は、検索結果に基づき、対応するブラシ圧をテーブルTB1から読出す。これにより、ブラシ圧推定部1201は、モータ10の消費電流および振動数の一方、または両方に基づきブラシ圧を精度良く推定することができる。
【0100】
(モータ10への供給電力の補償)
発明者は、ブラシ圧をより正確に推定するためには、振動数の検出精度を上げる必要があるとの動機付けのもと、モータ10の回転数すなわち振動数が低下する要因には、負荷の増加(ブラシ圧増加)および電池寿命が含まれるとの知見を得た。
【0101】
そこで、本実施の形態では、充電池13からモータ10に供給される電力を一定とするように補償する。これにより、電池寿命に起因する振動数の低下要因を排除することができる。
【0102】
図23には、充電池13の出力電圧の経時変化が模式的に示される。ここでは、出力電圧は、充電池13の電池残量を指す。図23のグラフは実験により得られた特性を示し、縦軸には、電池の出力電圧(単位:V)がとられ、横軸には、経過時間tがとられている。
【0103】
電動歯ブラシ1には、充電池13として一般的にニッケル水素電池が用いられる。充電池13の定格出力は、たとえば2.4Vであるとする。充電済みの充電池13の使用開始時は、出力電圧は定格出力(2.4V)を維持できるけれども、使用時間が経過するにつれ、出力電圧は低下する。余分な放電のない理想的な電池を想定した場合、図22の実線で示されるように、出力電圧は、電池の寿命が尽きるとき(時間t1)まで定格電圧(2.4V)を維持し、時間t1になったときに、出力電圧が0となる。しかしながら、一般的な電池は、このような理想的特性を示さない。つまり充電池13は、図22の破線で示されるように、徐々に定格電圧(2.4V)を維持することができなくなり、使用開始時からの経過時間が時間t2(<t1)になったとき、出力電圧は2.0Vとなり以降急激に低下する。充電池13の出力電圧が2.0V以下になると、電動歯ブラシ1は十分な動作能力を奏しえなくなり、十分な振動数を得られない。
【0104】
そこで、CPU120は、図17のPWM制御部120Aに代替して、図24のPWM制御部120Bを備える。図24を参照して、PWM制御部120Bは、モータ10の駆動を制御するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部16Bを含む。パルス信号生成部16Bは、図示のないパルス信号発生回路を用いてパルス信号を生成する。パルス信号生成部16Bは、使用者がスイッチSを操作をして指示した動作モードを入力する動作モード入力部17A、電圧モニタ102の検出信号を入力し、入力した検出信号に基づき充電池13の出力電圧を検知する電池電圧入力部19A、および動作モードと充電池13の出力電圧とに基づき、パルス信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部18Bを有する。パルス信号生成部16Bは、決定されたデューティ比を有するパルス信号を生成して出力する。パルス信号は、駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0105】
図25を参照して、PWM制御に用いられるパルス信号のデューティ比の変更について説明する。図25には横軸に時間がとられ、縦軸にパルス信号のON/OFFレベル(電圧)がとられている。モータ10への供給電力は、図25の斜線部に示すように、パルス信号のON期間の長さとONに対応する電圧との積(=電圧×時間)で決定される。そこで、本実施の形態では、デューティ比決定部18Bは、モータ10への供給電力(=電圧×時間)を一定とするようにパルス信号のデューティ比を変更する。ここで、デューティ比とは、パルス信号の1周期の長さを100%とした場合に、1周期の長さに対する電圧レベルがONである期間の長さを指す。デューティ比を変更するにより、充電池13の出力電圧が下がっても、モータ10に供給される電力を一定とすることができて、振動数を維持することができる。
【0106】
図26には、デューティ比を変更するためにデューティ比決定部18Bにより参照されるテーブルTB3の一例が示される。テーブルTB3には、電動歯ブラシ1の動作モードの種類MDと充電池13の出力電圧値BVの組のそれぞれに対応して、モータ10に供給される電力を一定とするためのデューティ比DRが格納される。テーブルTB3のデータは、予め実験により取得される。ここでは、出力電圧値BVとして2.4V,2.2Vおよび2Vが格納され、動作モードの種類MDとしては高速に振動する“高速”モード、それよりも低い速度で振動する“中速”モードおよびさらに低い速度で振動する“低速”モードの3種類が格納される。なお、格納される出力電圧値BVの種類および動作モードの種類MDの数は、これに限定されるものではない。
【0107】
動作において、動作モード入力部17AはスイッチSを操作して使用者が指定している動作モードの種類を入力し、電池電圧入力部19Aは充電池13の出力電圧を検知する。デューティ比決定部18Bは、入力された動作モードの種類と、検知された出力電圧との組に基づき、図26のテーブルTB3を検索する。検索結果に基づき、当該組に対応するデューティ比DRを、テーブルTB3から読出す。パルス信号生成部16Bは、読出されたデューティ比DRを有するパルス信号を生成して出力する。出力されるパルス信号は、駆動信号としてモータ10に与えられる。
【0108】
このようにデューティ比DRを変更することにより、充電池13の出力電圧(電池残量)低下という振動数の低下要因を排除できて、正確なブラシ圧の検出が可能となる。
【0109】
(ブラシ圧の検索)
前述したモータ10への供給電力の補償を行なわずとも、振動数に基づき、ブラシ圧を正確に検出する例を示す。
【0110】
図27には、ブラシ圧の検索機能を備えるブラシ圧推定部1202の機能構成が示される。ブラシ圧推定部1202は、動加速度成分処理部153、静加速度成分処理部155および、ブラシ圧検索部159を含む差分振動数検出部158を備える。ブラシ圧推定部1202の差分振動数検出部158を除く他の構成は、ブラシ圧推定部1201と同様であるから説明は略す。
【0111】
差分振動数検出部158、動加速度成分処理部153から出力される振動数(Hz)を入力し、入力した振動数と無負荷時の振動数との差分を検出する。そして、検出した差分に基づきブラシ圧を検出する。これにより、ブラシ圧が推定される。
【0112】
ブラシ圧検出のために、図28および図29のテーブルTB4およびTB5が、ブラシ圧検索部159により検索される。図28のテーブルTB4には、電動歯ブラシ1の動作モードMDの種類と、充電池13の出力電圧BVとの組のそれぞれに対応して、モータ10にかかる負荷が0(無負荷)のときの振動数(Hz)DVが予め格納される。テーブルTB4に格納される動作モードMDの種類数および出力電圧BVの種類は、これに限定されない。
【0113】
図29のテーブルTB5には、テーブルTB4から読出された振動数DVと、動加速度成分処理部153が検出する振動数との差分DFと、差分DFのそれぞれに対応してブラシ圧PRが予め格納される。テーブルTB4とTB5のデータは、実験により検出される。
【0114】
電動歯ブラシ1が電源ONされて実行される図4の初期化処理(S5)では、モータ10は無負荷状態である。ステップS5において、差分振動数検出部158は、電圧モニタ102から充電池13の出力電圧値を指す信号を入力する。
【0115】
差分振動数検出部158のブラシ圧検索部159は、スイッチSから入力する使用者が指示する動作モードの種類と、電圧モニタ102からの入力信号が指す電圧値の組に基づき、テーブルTB4を検索する。検索結果に基づき、当該電圧値と動作モードの組に対応する振動数DVを、テーブルTB4から読出す。差分振動数検出部158は、テーブルTB4から読出された無負荷時の振動数DVをメモリ121の所定領域に記憶する。
【0116】
初期化処理(ステップS5)が終了すると、ブラッシングによりブラシ圧が生じて、モータ10のトルクは増加する。これに伴い、動加速度成分処理部153が検出するモータ10の振動数も増加する。
【0117】
初期化処理終了後のブラシ圧検知処理(S50)では、差分振動数検出部158は、動加速度成分処理部153が順次に検出する振動数と、メモリ121の所定領域から読出した振動数DVとの差分を検出(算出)する。そして、ブラシ圧検索部159は、検出された差分に基づき、メモリ121のテーブルTB5を検索する。検索結果に基づき、検出した差分に一致する差分DFに対応するブラシ圧PRをテーブルTB5から読出す。これにより、ブラシ圧(ブラシ圧PR)が検出(推定)される。
【0118】
このように充電池13の出力電圧(電池残量)に応じた無負荷時の振動数と、負荷がかかっている場合の振動数の差分は、負荷すなわちブラシ圧の大きさに相当することから、上述のようにモータ10の無負荷時の振動数と、負荷が有るときの振動数との差分に基づき、負荷の大きさすなわちブラシ圧を推定することができる。
【0119】
(ブラシ圧の報知)
図30では、検知されたブラシ圧を報知するための表示部16が一体的に取り付けられた電動歯ブラシ1の外観が示される。
【0120】
ブラシ圧は、図3の表示器110で表示することもできるが、表示部16により表示することもできる。表示部16は、LED(Light Emitting Diode)などの発光部からなり、ブラッシング時に使用者が確認し易いように本体2の端に設けられる。表示部16は、略円筒状の本体2のハウジング周囲を一周するように配置される。端部に配置すると、鏡に映して確認することも可能である。なお、表示部16は、本体2のブラシ210側の端に設けてもよい。
【0121】
表示態様として、検出されるブラシ圧に応じて、表示部16のLEDの点灯状態を変化させる。たとえば、ブラシ圧が高いと評価されるほど点滅速度UPや輝度UPをする。または、ブラシ圧が高いと評価されると表示色を赤にし、低いと評価されると緑色で点灯するようにしてもよい。
【0122】
検出された振動数は、表示器110または表示部16を介して表示することで報知してもよい。
【0123】
ブラシ圧および振動数の報知の態様は、表示部16を用いたものに特定されず、音や音声を用いた出力であってもよい。
【0124】
なお、駆動源としては、直流モータ10でなくても良い。たとえば、ソレノイド、圧電素子、超音波振動子、人工筋肉などを利用したアクチュエータであってもよい。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1 電動歯ブラシ、15 加速度センサ、16A,16B パルス信号生成部、17A 動作モード入力部、18A,18B デューティ比決定部、19A 電池電圧入力部、103 フィルタ部、120 CPU、120A,120B PWM制御部、153 動加速度成分処理部、155 静加速度成分処理部、156 消費電流検出部、157 テーブル検索部、158 差分振動数検出部、159 ブラシ圧検索部、1201,1202 ブラシ圧推定部、TB1〜TB5 テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケア部材を用いて口腔をケアする口腔ケア装置であって、
加速度センサと、
前記ケア部材を振動させるための駆動手段と、
前記ケア部材の振動数を検出するための振動数検出手段と、を備え、
前記振動数検出手段は、前記加速度センサの出力信号の波形に基づき、前記振動数を検出する手段を含む、口腔ケア装置。
【請求項2】
前記振動数検出手段が検出した前記振動数に基づき、前記ケア部材に作用する荷重を指す部材圧を検出する、請求項1に記載の口腔ケア装置。
【請求項3】
前記駆動手段はモータであり、
前記振動数検出手段は、
無負荷時の前記モータの回転による前記振動数と、前記振動数検出手段が検出する前記振動数との差分に基づき、前記部材圧を検出する、請求項1または2に記載の口腔ケア装置。
【請求項4】
前記駆動手段はモータであり、
前記モータの消費電流を検出する消費電流検出手段、をさらに備え、
前記振動数検出手段は、さらに、前記消費電流検出手段が検出する前記消費電流に基づき、前記振動数を検出する手段を含む、請求項1または2に記載の口腔ケア装置。
【請求項5】
前記口腔ケア装置の各部に電力を供給する電源と、
前記電源が出力する電力を検出する電力検出手段と、
前記電力検出手段が検出する前記電力の値に基づき、前記駆動手段に供給される電力を補う電力補償手段と、を備える、請求項1から4のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項6】
前記電力補償手段は、
前記電力検出手段が検出する前記電力の値に基づき、駆動するために前記駆動手段に与えられるパルス信号のデューティ比を変更する、請求項5に記載の口腔ケア装置。
【請求項7】
検出される前記部材圧を報知する、請求項2から6のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項8】
検出される前記振動数を表示する、請求項1から7のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項1】
ケア部材を用いて口腔をケアする口腔ケア装置であって、
加速度センサと、
前記ケア部材を振動させるための駆動手段と、
前記ケア部材の振動数を検出するための振動数検出手段と、を備え、
前記振動数検出手段は、前記加速度センサの出力信号の波形に基づき、前記振動数を検出する手段を含む、口腔ケア装置。
【請求項2】
前記振動数検出手段が検出した前記振動数に基づき、前記ケア部材に作用する荷重を指す部材圧を検出する、請求項1に記載の口腔ケア装置。
【請求項3】
前記駆動手段はモータであり、
前記振動数検出手段は、
無負荷時の前記モータの回転による前記振動数と、前記振動数検出手段が検出する前記振動数との差分に基づき、前記部材圧を検出する、請求項1または2に記載の口腔ケア装置。
【請求項4】
前記駆動手段はモータであり、
前記モータの消費電流を検出する消費電流検出手段、をさらに備え、
前記振動数検出手段は、さらに、前記消費電流検出手段が検出する前記消費電流に基づき、前記振動数を検出する手段を含む、請求項1または2に記載の口腔ケア装置。
【請求項5】
前記口腔ケア装置の各部に電力を供給する電源と、
前記電源が出力する電力を検出する電力検出手段と、
前記電力検出手段が検出する前記電力の値に基づき、前記駆動手段に供給される電力を補う電力補償手段と、を備える、請求項1から4のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項6】
前記電力補償手段は、
前記電力検出手段が検出する前記電力の値に基づき、駆動するために前記駆動手段に与えられるパルス信号のデューティ比を変更する、請求項5に記載の口腔ケア装置。
【請求項7】
検出される前記部材圧を報知する、請求項2から6のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項8】
検出される前記振動数を表示する、請求項1から7のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−156204(P2011−156204A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21097(P2010−21097)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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