説明

口腔ケア装置

【課題】超音波振動の付与動作と低周波電流の印加動作とを同じ部位に行える口腔ケア装置を提供する。
【解決手段】本発明の口腔ケア装置1は、把持部51を備えた本体5と、上記本体5の一端に延設され口腔内に超音波振動を付与する振動付与部2と、低周波電流を発生する低周波電流発生部63と、口腔内に低周波電流を印加する少なくとも一対の電極と、を有している。そして、上記振動付与部2は、超音波振動する超音波振動子3と、生じた上記超音波振動を口腔内に伝達する振動伝達ホーン4と、を備えており、上記振動伝達ホーン4が上記低周波電流発生部63の対をなす電極のうちの一つを兼ねている。これにより、該装置の交換や把持部51の持ち方の変更等を行わずに、超音波振動の付与動作と低周波電流の印加動作とを略同じ部位に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケア装置、殊に口腔内に超音波振動を与える超音波発生手段を備えたハンディタイプの口腔ケア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から口腔ケア装置として、特許文献1等のように、柄の先端に一対の電極を設けてあり、両電極を口腔内の歯茎に当接することで、両電極間に位置した歯茎に低周波電流を印加する低周波歯茎マッサージャーがあった。このような低周波電流を印加するものでは、電流を印加した軟組織内に電気刺激を与えることで、血流を増加させて血行促進等のマッサージ効果を与えるものであった。そして、歯に低周波電流を印加して歯垢や歯石を軟化させて除去を容易にした歯ブラシもあった。
【0003】
また、超音波振動を用いた口腔ケア装置として、特許文献2等のように、インプラントを埋め込んだ箇所に当接して超音波振動を付与することで、該箇所の顎部の骨等に含まれる骨芽細胞の分化を促進させて、インプラントの定着を促すものがあった。そして、歯に超音波振動を付与して歯垢や歯石の剥離を促がして除去を容易にした歯ブラシもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−75511号公報
【特許文献2】特許2960493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の口腔ケア装置は口腔内に低周波電流を印加するものにすぎず、特許文献2等の口腔ケア装置はインプラントを埋め込んだ箇所に超音波振動を付与するものにすぎなかった。つまり、いずれの装置も一方の動作しか行えず、上記二つの動作を単体の装置で同時にあるいは互いを切替可能で行えるものはなかった。そのため、各動作を行う際には、各装置に持ち替え且つ口腔内に配置し直すこととなり、口腔内は骨格だけなく歯並びや詰物の有無等の個体差が激しく、略同じ部位に上記二つの動作を行うことが大変困難であった。また、超音波振動を付与するものにおいては、超音波振動の付与により軟組織の内部に位置する歯根や顎部の骨等の硬組織を活性化させて、経年に伴う歯のガタツキを防止するものはなかった
そこで、本発明は上記事情に鑑みたものであり、口腔内の衛生環境の改善や健康増進のために、使用者が本体を把持して使用可能な小型で且つ容易に超音波振動の付与と低周波電流の印加の二つの動作を行える口腔ケア装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の口腔ケア装置1は、以下の構成を特徴として有している。請求項1に係る発明は、把持部51を備えた本体5と、上記本体5の一端に取り付けられ口腔内に超音波振動を付与する振動付与部2と、低周波電流を発生する低周波電流発生部63と、低周波電流発生部63で生じた低周波電流を口腔内に印加する少なくとも一対の電極と、を有している。そして、上記振動付与部2は、超音波振動する超音波振動子3と、生じた上記超音波振動を口腔内に伝達する振動伝達ホーン4と、を備えている。更に、上記振動伝達ホーン4が上記低周波電流発生部63の対をなす電極のうちの一つを兼ねたものである。
【0007】
このような構成としたことで、本体5を把持して使用可能であり、且つ一つの口腔ケア装置1で効果の異なる二つの動作、超音波振動の付与動作と、低周波電流の印加動作と、を行うことができる。そして、振動伝達ホーン4を低周波電流発生部63からの低周波電流の印加される電極の一つとしたことで、超音波振動の付与動作及び低周波電流の印加動作を同じ振動伝達ホーン4で口腔内に行うことができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の特徴に加えて、振動伝達ホーン4の兼ねた電極と対をなす他方の電極52を把持部51の外面に設けたものであることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1や請求項2に係る発明の特徴に加えて、超音波振動の付与と前記低周波電流の印加を両方同時またはいずれか一方のみの動作に切り替える切替部8を備えたものであることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3に係る発明の特徴に加えて、超音波振動子3による超音波振動の周波数を整数倍で変更する変更部74を備えたものであることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の特徴に加えて、変更部74は超音波振動の付与動作が一定時間経過する毎に超音波の周波数を変更するものであることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る発明の特徴に加えて、振動伝達ホーン4が口腔内に導入して用いる薬剤を充填する凹所42を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項1〜6に係る発明の特徴に加えて、振動伝達ホーン4が金属材料で形成されたものであることを特徴としている。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜6に係る発明の特徴に加えて、振動伝達ホーン4が導電性を有する非金属材料で形成されたものであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、請求項1〜8に係る発明の特徴に加えて、振動付与部2が振動伝達ホーン4を配置した面21に口腔内をブラッシングするブラシ毛91を備えており、振動伝達ホーン4がブラシ高さより低くブラシ毛91の先端より突出しないものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明の口腔ケア装置は、超音波振動の付与動作と低周波電流の印加動作と、を同じ振動伝達ホーンで行うため、口腔内の略同じ部位に対して上記二つの動作を容易に行うことができる。つまり、把持部の持ち方を変更する等の本体や振動付与部の位置や向きを略変えることなく、二つの動作を略同じ部位に行えるため、容易に夫々の動作による効果を相乗して得られる使い勝手の向上したものである。
【0017】
また、振動伝達ホーンと対をなす電極を把持部に設けたことで、把持した手を介して使用者に極性を持たせることができ、口腔内への低周波電流を印加することができる。
【0018】
また、付与動作と印加動作を両方同時や一方のみに切替可能としたことで、より容易に略同じ部位に対して上記二つの動作を行えると共に、使用者の好みや体質体調等の個体差に対応でき、より使い勝手を向上することができる。
【0019】
また、超音波振動の周波数を変更する変更部を設けたことで、超音波振動が軟組織内を浸透して作用可能な距離を変更できるため、個体差のある軟組織の内側に位置する硬組織に対して超音波振動を正確に付与でき、より使い勝手を向上できる。このとき、変更部が周波数を動作時間に応じて変化させるものであれば、外部操作により超音波振動の周波数を調節する必要が無くなり、より使い勝手を向上することができる。
【0020】
また、振動伝達ホーンに薬剤を充填可能な凹所を設けたことで、充填された薬剤の作用効果を付与動作中や印加動作中に得られ、付与動作によるマッサージ効果や印加動作による血行促進等をより向上させることができる。
【0021】
また、振動付与部がブラシ毛を備えたことで、ブラシ毛を用いたブラッシング動作を行え、付与動作や印加動作により得られる効果に加えて、ブラッシング動作によって、軟組織のマッサージや、歯垢や歯石等の更なる除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の口腔ケア装置であり、(a)は斜視図であり、(b)は振動付与部周辺の断面図である。
【図2】同上の一部を省略した回路ブロック図である。
【図3】超音波振動の周波数を変更可能とした例の要部の回路ブロック図である。
【図4】駆動制御部を超音波用と低周波用とに分けた例の要部の回路ブロック図である。
【図5】同上の振動付与部周辺の断面図である。
【図6】超音波振動用の制御信号が人体を介さない例の要部の回路ブロック図である。
【図7】振動伝達ホーンの表面に凹所を設けた例であり、(a)は振動付与部を拡大した斜視図であり、(b)は振動付与部の一部を切断した側面図である。
【図8】振動付与部にブラシ毛を設けた例であり、(a)は口腔ケア装置の斜視図であり、(b)は振動付与部周辺の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本発明の口腔ケア装置1は、図1及び図2に示すように、把持部51を有する棒状の本体5と、外部に超音波振動を付与する振動付与部2と、本体5の一端に振動付与部2を保持固定するネック部12と、からなり、その外装がケーシング11により形成されている。そして、振動付与部2は超音波振動子3と超音波振動子3の振動を増幅し外部に付与する振動伝達ホーン4を有している。更に、本体5は内部に、電力供給源である電源部56と、超音波振動用の高周波を発生する高周波発生部7と、低周波電流を発生する低周波電流発生部63と、各部を制御する駆動制御部6と、を備えている。
【0025】
高周波発生部7は、高周波域の周波数を生成する周波数生成部71と、高周波に生じる高調波を除去する高調波除去部73と、正弦波や三角波等に波形を整形する波形整形部72と、からなり、超音波振動子3を超音波振動させる高周波を発生するものである。なお、本例では、5000Hz以上を高周波としており、周波数生成部71は1MHzの周波数を生成している。
【0026】
また、把持部51には導電性を有する部材で電極52が形成されており、低周波電流発生部63からの低周波電流が該電極52から把持部51を把持した使用者の体内を介して振動付与部2側の電極へと流れている。このとき、振動付与部2側の電極は振動伝達ホーン4であり、振動伝達ホーン4と超音波振動子3の間は、超音波振動に加えて上記電流が流れるものとなっている。そのため、振動伝達ホーン4は超音波振動で疲労破壊を生じ難く且つ該振動を伝達すると共に導電性を有するアルミニウムやチタンあるいはそれらを用いた合金やステンレス等の金属材料で形成された部材であることが好ましい。もちろん、超音波振動を伝達でき且つ導電性を有するものであれば、導電性ゴムや導電性エラストマー、導電性樹脂等の非金属材料で形成されたものでもよい。なお、超音波振動子3は一端に振動伝達ホーン4が導電性を有する接着剤(特に図示しない)によって取り付けられており、他端は弾性体31を介してケーシング11に保持されており、超音波振動は弾性体31には略伝達されず、振動伝達ホーン4にのみ伝達されている。
【0027】
つまり、口腔ケア装置1は本体5の把持部51を把持した使用者が振動付与部2を口腔内に挿入し、振動付与部2の振動伝達ホーン4を口腔内の歯茎や歯等に当接することで使用するものである。詳しくは、歯茎や歯等に当接された振動伝達ホーン4で、口腔内の略同じ部位に超音波振動の付与及び低周波電流の印加の二つの動作を行うものである。このとき、振動伝達ホーン4は振動付与部2から円弧状に突出しているため、ケーシング11に邪魔されずに歯茎や歯に当接できるものとなっている。
【0028】
このように、本発明の口腔ケア装置1は本体5を把持して使用可能な小型のものであり、口腔内に挿入された振動付与部2で、超音波振動の付与動作と、低周波電流の印加動作と、を口腔内の軟組織や硬組織等に対して行うものである。そして、上記二つの動作を振動伝達ホーン4から与えるため、把持部51の持ち方を変更する等の本体5や振動付与部2の位置や向き等を変更せずに、他方の動作を口腔内の略同じ部位に行える。更に、上記二つの動作を略同じ部位で容易に行えるため、超音波振動により活性化した硬組織への血流を低周波電流の印加で増加させる等の両動作で夫々得られた効果を容易に相乗させることができる。
【0029】
つまり、従来の各動作を個別の装置で行うものより容易に且つ確実に略同じ部位に行えるため、略同じ部位で互いの効果を容易に相乗させることができ、効率よく両動作からの作用効果を得られる使い勝手の向上した口腔ケア装置1となっている。もちろん、振動伝達ホーン4と対をなす他方の電極52は口腔内の軟組織等への低周波電流の印加が可能であれば、把持部51に限らず振動伝達ホーン4の周囲や振動付与部2の裏面や周面に設けてあってもよい。
【0030】
なお、本体1の外面の符号53は口腔ケア装置1の電源スイッチであり、符号54は各動作切替や周波数の変更等を外部操作する操作部であり、符号55は電源のオンオフや操作部54の操作結果を外部に報知する表示部である。
【0031】
また、他の実施形態として、振動伝達ホーンで付与する超音波振動の周波数を変更可能としたものがある。以下、前述した例と同様の構成の説明は省略し、本例の特徴等である差異点を説明する。
【0032】
例えば、図3に示すように、高周波発生部7が、夫々異なる周波数を生成する複数の周波数生成部71と、高周波発生部7からの高周波を上記複数の周波数に切替変更する変更部74と、を有している。つまり、高周波発生部7で発生される高周波の周波数を変更可能としたことで、超音波振動子3の超音波振動の周波数が変化するため、振動伝達ホーン4で口腔内に付与する超音波振動の周波数が変更可能となっている。
【0033】
このとき、超音波振動は周波数が大きくなる程、軟組織に浸透し難くなるため、軟組織に当接した状態で超音波振動の付与される部位は、周波数が高くなれば歯茎の表皮等の軟組織の表面側に近づき、低くなれば表面から離れた深部側へと移行するものである。そのため、超音波振動の最も低い周波数は、超音波振動が歯茎の側面側から歯根まで浸透して歯根及びその周囲の顎部の骨に付与されるものが好ましく、最も高い周波数は、歯をがたつかせることなく歯垢や歯石等を剥離可能な超音波振動であることが好ましい。
【0034】
そして、変更可能な周波数は、最も低い周波数を基準として、その周波数の高周波から生じる高調波の周波数を他の周波数に採用することが好ましいため整数倍となっている。例えば、本例は周波数生成部で生成される変更可能な周波数を、1MHz、3MHz、5MHzの奇数倍で変更される三つとなっている。
【0035】
また、変更部74はタイマー(特に図示しない)を備えており、付与動作が所定の時間経過する毎に超音波振動の周波数を変更するものであり、超音波振動を付与する部位が動作時間に基づいて変化するものとなっている。
【0036】
例えば、超音波振動が初期状態では周波数が最も低く歯根に超音波振動が付与されており、所定の時間が経過すると、変更部74が周波数を高いものに変更する。このとき、超音波振動が軟組織に浸透し難くなるため、振動伝達ホーン4側に近い歯根の周囲を覆う顎部の骨に付与される。
【0037】
このように、変更部74が動作時間に応じて周波数生成部71を切り替えて超音波振動の周波数を変更させることで、外部操作なしで超音波振動をより容易に広範囲に付与することができるものとなっている。なお、変更部74は操作部54によって上記所定の時間を変更可能であってもよく、もちろん動作時間で変更せずに操作部54による外部操作で各周波数に変更するものであってもよい。
【0038】
また、他の実施形態として、駆動制御部を、超音波振動の付与動作を制御する超音波用駆動制御部と、低周波電流の印加動作を制御する低周波用駆動制御部と、に夫々分けて、上記付与動作と印加動作を夫々の制御部で制御したものがある。以下、前述した他の例と同様の構成の説明は省略し、本例の特徴等である差異点を説明する。
【0039】
例えば、図4に示すように、駆動制御部6が、超音波振動の付与動作を制御する超音波用駆動制御部61と、低周波電流の印加動作を制御する低周波用駆動制御部62と、に分かれている。そして、上記二つの駆動制御部6と把持部51側の電極52の間に切替部8が配置されている。そのため、人体を介して振動伝達ホーン4と把持部51側の電極52の間には、超音波用駆動制御部61から出力された付与動作用の制御信号と、低周波用駆動制御部62から出力された低周波電流と、が切替部8の切替応じていずれか一方が流れるものである。
【0040】
そして、低周波用駆動制御部62は超音波振動子3を介さずに振動伝達ホーン4と接続されており、低周波用駆動制御部62からの低周波電流が超音波振動子3に流れないものとなっている。そのため、低周波電流が超音波振動子3で消耗されず、印加動作時の消費電力を低減している。特に、電源部56が電池等の内蔵電源であった際に、連続使用可能な時間を延ばすことができる。
【0041】
なお、図5に示すように、振動伝達ホーン4は内側に凹み41を有したキャップ形状となっており、超音波振動子3が上記凹み41内に配置されている。そのため、振動付与部2は前述した他の構成の振動付与部2より振動伝達ホーン4の突出方向に沿った寸法が薄いものとなっている。そして、振動付与部2が薄型化されたため、口腔内の奥歯付近等の狭い位置へ容易に差し込めて、使用時の取り回しを向上した口腔ケア装置1となっている。
【0042】
また、他の実施形態として、超音波振動の付与動作と、低周波電流の印加動作と、を同時に動作可能としたものもある。以下、前述した他の例と同様の構成の説明は省略し、本例の特徴等である差異点を説明する。
【0043】
例えば、図6に示すように、駆動制御部6が、人体を介さずに超音波振動用の高周波を有する制御信号を流す経路と、振動伝達ホーン4と把持部51側の電極52間に低周波電流を印加する人体を介した経路と、を夫々備えると共に、両動作の制御を行っている。そして、駆動制御部6は切替部8を兼ねており、超音波振動の付与動作のみのモードと、低周波電流の印加動作のみのモードと、同時に上記二つの動作を行うモードと、の三つのモードを切替可能となっている。
【0044】
そのため、超音波振動の付与動作と、低周波電流の印加動作と、を略同時に略同じ部位に対してより容易に行うことができ、更に使い勝手の向上した口腔ケア装置1となっている。なお、超音波振動子3に振動伝達ホーン4を取り付ける接着剤に絶縁体を用いる等で超音波振動子3と振動伝達ホーン4の間は振動を伝達するが電気的に絶縁されていることが好ましい。もちろん、上記高周波を有する制御信号として、高周波電流を用いれば、口腔内の軟組織に対して高周波電流による温熱作用によるマッサージ効果を与えることができる。
【0045】
また、他の実施形態として、振動伝達ホーンの円弧状に突出した表面に内側へ向いて凹んだ複数の凹所を形成したものがある。以下、前述した他の例と同様の構成の説明は省略し、本例の特徴等である差異点を説明する。
【0046】
図7に示すように、符号42が凹所であり、凹所42内には超音波振動の伝達を補助する薬剤や、口腔内の鎮痛、殺菌、消炎、筋弛緩や血管拡張あるいは収縮等の作用を有する薬剤等が充填されており、上記薬剤の口腔内への塗布を容易に行えるものとなっている。そのため、塗布した薬剤の作用により、低周波電流の印加動作や超音波振動の付与動作の効果を更に向上できると共に、鎮痛剤等では炎症部位等に振動伝達ホーン4等が接した際の刺激を低減でき、より使い勝手を向上したものとなっている。特に、イオン化する薬剤では、振動伝達ホーン4から口腔内に印加される電流、特に電流の波長、によって軟組織へのイオン導入を促進させることもでき、より口腔内の衛生環境の改善や健康増進を行える。
【0047】
なお、超音波振動の伝達を補助する薬剤以外の薬剤は超音波振動を略低減せずに使用者の口腔内の軟組織や硬組織に伝播できる超音波に対する振動伝播性の高いものが好ましい。もちろん、各凹所42の間に位置する壁421の頂部が振動伝達ホーン4の円弧状の表面と略同じ高さであるため、イオン化し難い導電性の低い薬剤を凹所42に充填しても、振動伝達ホーン4と口腔内の軟組織の間の導電を充分行えるものとなっている。
【0048】
また、他の実施形態として、振動付与部が歯のブラッシング用のブラシ部を兼ねた歯ブラシ型の口腔ケア装置がある。以下、前述した他の例と同様の構成の説明は省略し、本例の特徴等である差異点を説明する。
【0049】
例えば、図8に示すように、ケーシング11の振動付与部2を形成する部位のうち、振動伝達ホーン4の突出した面21に、ブリッスル状のブラシ毛91が植毛されており、上記面21から突出した振動伝達ホーン4の側周を覆っている。そして、ブラシ毛91が上記面21に直交して伸びた突出高さL2は、振動伝達ホーン4の同面からの突出高さL1より高く、振動伝達ホーン4がブラシ毛91を用いたブラッシング動作を阻害しないものとなっている。
【0050】
そして、口腔内の唾液や水及びブラッシング用の薬剤が表面張力等によりブラシ毛91に保持されており、振動伝達ホーン4と歯茎等の軟組織の間をより容易に導電可能となっている。もちろん、ブラシ毛91は振動付与部2の上記面21の全面でなく一部にのみ植毛されたものであってもよく、適宜設計変更可能なものである。
【0051】
なお、各例に示した形状や数値は本発明を限定するものではなく、単なる例示であり、振動伝達ホーン4を半球状に突出させる等、形状や周波数等の数値は適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 口腔ケア装置
11 ケーシング
12 ネック部
2 振動付与部
3 超音波振動子
4 振動伝達ホーン
41 凹み
42 凹所
5 本体
51 把持部
52 電極
56 電源部
6 駆動制御部
61 超音波用駆動制御部
62 低周波用駆動制御部
63 低周波電流発生部
7 高周波発生部
71 周波数生成部
72 波形整形部
73 高調波除去部
74 変更部
8 切替部
9 ブラシ部
91 ブラシ毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を備えた本体と、上記本体の一端に取り付けられ口腔内に超音波振動を付与する振動付与部と、低周波電流を発生する低周波電流発生部と、低周波電流発生部で生じた低周波電流を口腔内に印加する少なくとも一対の電極と、を有しており、上記振動付与部は、超音波振動する超音波振動子と、生じた上記超音波振動を口腔内に伝達する振動伝達ホーンと、を備えており、上記振動伝達ホーンが上記低周波電流発生部の対をなす電極のうちの一つを兼ねたものであることを特徴とする口腔ケア装置。
【請求項2】
前記振動伝達ホーンの兼ねた電極と対をなす他方の電極を前記把持部の外面に設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の口腔ケア装置。
【請求項3】
前記超音波振動の付与と前記低周波電流の印加を両方同時またはいずれか一方のみの動作に切り替える切替部を備えたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の口腔ケア装置。
【請求項4】
前記超音波振動子による超音波振動の周波数を整数倍で変更する変更部を備えたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項5】
前記変更部は超音波振動の付与動作が一定時間経過する毎に超音波の周波数を変更するものであることを特徴とする請求項4に記載の口腔ケア装置。
【請求項6】
前記振動伝達ホーンが口腔内に導入して用いる薬剤を充填する凹所を備えたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項7】
前記振動伝達ホーンが金属材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項8】
前記振動伝達ホーンが導電性を有する非金属材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項9】
前記振動付与部が振動伝達ホーンを配置した面に口腔内をブラッシングするブラシ毛を備えており、前記振動伝達ホーンがブラシ高さより低くブラシ毛の先端より突出しないものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4883(P2011−4883A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150155(P2009−150155)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】