説明

口腔内吸引装置の吸引管の保持装置

【課題】吸引管の位置変更が容易で、術者が所望する微妙な位置に吸引管を備えることが可能であり、しかも吸引管が口腔から外れてしまうことも完全に防止することができる口腔内吸引装置の吸引管の保持装置を提供する。
【解決手段】術者Jが患者Kに対し治療を行う場合には、ピンチ161に口腔内吸引装置の吸引管Pを挟む。そして、吸引管Pを持って患者Kの口腔内に差し入れて、所望の位置へ移動させる。吸引管Pの動作に追随するように、アーム31が支柱17に対し回動したり、アーム31の姿勢が変更したりする。そして、吸引管Pを所望の位置に止め、その状態を保ったまま押しネジ133と雌ネジ部101を締める。これにより、吸引管Pが任意の位置で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内吸引装置の吸引管の保持装置に係り、特に治療中に術者を補助する者が居なくても、口腔内吸引装置の吸引管を口内に差し入れて保持することができる口腔内吸引装置の吸引管の保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療中においては、口腔内吸引装置の吸引管を口腔内に差し入れて溜まった汚液や汚物を吸引して排出している。この吸引管を術者が片方の手で持つと、もう片方の手で治療を行うことになり、その分治療作業が妨げられてしまうことになる。
また、術者を補助する者を置いて、この者が吸引管を手で持って口腔内に差し入れる場合もあるが、吸引管を動かさないように長時間持っている行為は重労働であり、そもそも補助者が居ない場合には対応できない。
そこで、特許文献1に記載された口腔内吸引器具及び装置がある。この口腔内吸引器具及び装置は、患者が吸引管に接続された吸引器を噛んで、吸引管を口腔内に保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例に係る口腔内吸引器具及び装置は、患者が吸引器を噛んで、吸引管を口腔内に保持するものであるため、吸引管の位置を変更する場合には患者に噛んでいる吸引器を一旦離してもらい、噛み直してもらわなければならず、位置変更が相当に煩わしいという問題がある。
また、患者に吸引器を噛んで保持するのでは、術者が所望する位置に吸引管を備えることは殆ど不可能である。
更に吸引器の保持を患者だけに頼っているため、何かの拍子に吸引管が口腔から外れてしまうおそれもある。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、吸引管の位置変更が容易で、術者が所望する微妙な位置に吸引管を備えることが可能であり、しかも吸引管が口腔から外れてしまうことも完全に防止することができる口腔内吸引装置の吸引管の保持装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、床面等に設置するベースと、前記ベースに支持された支柱と、前記支柱に回動自在に支持され姿勢変更可能なアームと、前記アームの先端部に基端部が連結されて上下方向に伸び、且つ途中で角度変更可能な支持部と、前記支持部の先端部に取り付けられたピンチとから成ることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、ピンチは支持部にボールジョイントを介して連結され、且つピンチを任意の位置に止めるためボールジョイントのボールを固定するボールロック手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部の先端部とボールジョイントの間に介挿され、前記支持部の先端部に対するピンチの上下方向の位置と横方向の向きを調節する位置調節手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、位置調節手段は、支持部に対して同軸状に回動自在に連結されたノブと、前記ノブのネジ孔に螺合した雄ネジシャフトと、前記雄ネジシャフトとボールジョイントの本体部に固定された保持ケースと、前記雄ネジシャフトの上下移動及び回動しない状態にロックするロック手段を備えることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部の先端部とボールジョイントの間に介挿され、前記支持部の先端部に対するピンチの前後方向の位置を調節する位置調節手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、アームの先端には棒状のハンドルが連結されており、ハンドル操作により前記アームの折り曲げ度合いを調整できること特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部はフレキシブルパイプによって構成されていることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の口腔内吸引装置の吸引管の保持装置では、姿勢変更可能なアームと角度変更可能な連結された支持部が連結され、その支持部の先端部にピンチが取り付けられているので、このピンチに吸引管を挟持することにより、吸引管の位置変更を容易に行うことができる。また、術者が所望する微妙な位置に吸引管を備えることが可能となり、しかも吸引管が口腔から外れてしまうことも完全に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置の斜視図である。
【図2】図1の口腔内吸引装置の吸引管の保持装置のアームの斜視図である。
【図3】図1の口腔内吸引装置の吸引管の保持装置のボールジョイントとピンチの斜視図である。
【図4】ボールジョイントの構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置の斜視図である。
【図6】図5の口腔内吸引装置のベースの前側脚部の拡大斜視図である。
【図7】図5の口腔内吸引装置の連結管付近の拡大斜視図である。
【図8】図7の一部断面平面図である。
【図9】図5の口腔内吸引装置の前後及び上下方向の位置調節手段の斜視図である。
【図10】図9の前後方向の位置調節手段の断面図である。
【図11】図9の上下方向の位置調節手段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態1に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置1を図面にしたがって説明する。
符号3はベースを示し、このベース3はY字状で後側脚部5と、一対の前側脚部7、9とを有している。後側脚部5はわずかに斜め下方に延びており、先端部が水平になっている。一対の前側脚部7、9はわずかに斜め下方に延びており、途中部分から水平に延びている。一対の前側脚部7、9は後側脚部5よりも長寸法となっていて、一対の前側脚部7、9へより倒れ難い構造になっている。後側脚部5の先端部、一対の前側脚部7、9の先端部にはキャスター11がそれぞれ取付けられている。一対の前側脚部7、9の先端部にはハンドル付きの調節ネジ13がそれぞれ取付けられており、この調節ネジ13は、その下端部に設置部15を有している。
【0016】
ベース3には上方向に延びる支柱17が支持されており、この支柱17の上端部には連結管19が取付けられている。この連結管19の外周面には図示しないネジ孔が形成されており、このネジ孔にはハンドル付きの押しネジ21が螺合されている。連結管19には上方から取付パイプ23が挿入されており、この取付パイプ23は連結管19に回動自在に支持されている。取付パイプ23は押しネジ21を締めることで固定されるようになっている。取付パイプ23の上端にはフランジ25が取付けられている。
符号29は箱状の支持ベースを示し、この支持ベース29はネジによってフランジ25の上面に取付けられている。支持ベース29上面にはアーム31が備えられている。
【0017】
アーム31の詳細な構成について図2にしたがって説明する。
符号39は支持金具を示し、この支持金具39は支持ベース29の上面に固定されている。支持金具39は斜め上方に向かって延びる一対の傾斜プレート41を有しており、一対の傾斜プレート41の先端部にはフランジを有するバネ掛部43がそれぞれ設けられている。
支持金具39には前方に向かって延びる一対の水平プレート45が取付けられている。一対の水平プレート45の前端部は互いに異なる方向に直角に曲げられて、一対のストッパ45aが形成されている。
【0018】
支持金具39の前端部には、角パイプから成る一対の前側ロッド51が支持軸53を支点として回動自在に取付けられている。一対の前側ロッド51の基端部の前方には一対の水平プレート45のストッパ45aが対向して配置され、前側ロッド51がストッパ45aに当接する位置より前方側に倒れるのを規制している。
一対の前側ロッド51の中央部には連結軸52が渡設されている。
また、支持金具39の後端部には、角パイプから成る後側ロッド55が支持軸57を支点として回動自在に取付けられている。
【0019】
符号61はブーメラン形状の連結金具を示し、この連結金具61は一対設けられている。一対の連結金具61は、その曲部が後方を向く姿勢で互いに対向して配置されている。一対の連結金具61の曲部どうしの間には後側ロッド55の先端部が備えられている。そして、連結金具61の曲部、後側ロッド55の先端部及び連結金具61の曲部には支持軸63が貫通している。従って、一対の連結金具61は支持軸63を支点として後側ロッド55に対し回動自在に支持されている。
一対の連結金具61の斜め下方へ延びる下側端部どうしの間には、角パイプから成る下側ロッド65の基端部が備えられ、また一対の連結金具61の下側端部の両側には一対の前側ロッド51の先端部が備えられている。そして、前側ロッド51の先端部、連結金具61の下側端部、下側ロッド65の基端部、連結金具61の下側端部及び前側ロッド51の先端部には支持軸67が貫通している。従って、一対の連結金具61は支持軸67を支点として前側ロッド51に対し回動自在に支持されており、また下側ロッド65は支持軸67を支点として一対の連結金具61に対し回動自在に支持されている。
【0020】
一対の連結金具61の斜め上方へ延びる上側端部どうしの間には角パイプから成る上側ロッド69の基端部が備えられている。そして、連結金具61の上側端部、上側ロッド69の基端部及び連結金具61の上側端部には支持軸71が貫通している。従って、上側ロッド69は支持軸71を支点として一対の連結金具61に対し回動自在に支持されている。支持軸71の両端部はフランジが形成されてバネ掛部73となっている。
下側ロッド65の略中央部の側面にはフランジを有するバネ掛部79がそれぞれ設けられている。
【0021】
符号81は連結金具を示し、この連結金具81は連結金具61と同じ形状を為しており、一対の連結金具81は、その曲部が前方を向く姿勢で互いに対向して配置されている。一対の連結金具81の下側端部どうしの間には下側ロッド65の先端部が備えられている。そして、連結金具81の下側端部、下側ロッド65の先端部及び連結金具81の下側端部には支持軸83が貫通している。従って、一対の連結金具81は支持軸83を支点として下側ロッド65に対し回動自在に支持されている。
一対の連結金具81の上側端部どうしの間には上側ロッド69の先端部が備えられている。そして、連結金具81の上側端部、上側ロッド69の先端部及び連結金具81の上側端部には支持軸85が貫通している。従って、一対の連結金具81は支持軸85を支点として上側ロッド69に対し回動自在に支持されている。
【0022】
符号87は一対のコイルスプリングを示し、一対のコイルスプリング87の一端部はバネ掛部43にそれぞれ掛けられており、他端部は連結軸52に掛けられている。
符号89は一対のコイルスプリングを示し、一対のコイルスプリング89の一端部はバネ掛部73にそれぞれ掛けられており、他端部はバネ掛部79にそれぞれ掛けられている。
アーム31は上記のような構成になっており、アーム31は引き伸ばされた状態と折り畳まれた状態とに姿勢変更可能となっている。
【0023】
符号91は開閉ホルダーを示し、この開閉ホルダー91にはスリット93が形成されている。開閉ホルダー91の前端部にはスリット93と連通する空間部95が形成されており、開閉ホルダー91の前面には空間部95と連通する開口97が形成されている。
開閉ホルダー91は前述した一対の連結金具81の曲部の間に備えられている。そして、連結金具81の曲部、開閉ホルダー91の後端部及び連結金具81の曲部には雄ネジ99が貫通している。従って、開閉ホルダー91は雄ネジ99を支点として一対の連結金具81に対し回動自在に支持されている。雄ネジ99の開閉ホルダー91から突出する部分にはハンドル付きの雌ネジ部101が螺合されている。
フレキシブルパイプロック手段は開閉ホルダー91、雄ネジ99及び雌ネジ部101によって構成されている。
【0024】
符号111は吊り下げ部を示し、この吊り下げ部111は円柱状の取付部113を有している。この取付部113の上端にはフランジ115が形成されている。
取付部113は開閉ホルダー91に形成された空間部95に挿入されており、吊り下げ部111は開閉ホルダー91に対し回動自在に支持されている。またフランジ115は開閉ホルダー91の上面に当接しており、吊り下げ部111が抜け止めされている。
吊り下げ部111の下端部にはフレキシブルパイプ117の基端部が取付けられて、フレキシブルパイプ117の基端部がアーム31の先端部に回動自在に連結されている。
【0025】
フレキシブルパイプ117の先端部にはボールジョイント121が備えられており、このボールジョイント121の詳細な構成について説明する(図3、図4参照)。
符号123は連結部を示し、この連結部123の上端部はフレキシブルパイプ117の先端部に連結されている。連結部123の下端には本体部125が固定されている。
【0026】
本体部125は円筒状のケース部127を有しており、このケース部127の下端には内側に向かって水平に延びる係止部129が一体に設けられている。ケース部127の外周面にはネジ孔131が形成されており、このネジ孔131にはハンドル付きの押しネジ133が螺合されている。押しネジ133の先端部はケース部127の内側に向かって突出している。ケース部127の内側には押えブロック135が備えられている。この押えブロック135は円錐状の上端部を切断した形状を為しており、押えブロック135の下面には球面状の凹部137が形成されている。押えブロック135の側面には押しネジ133の先端が当接している。
ボールロック手段は押しネジ133と押えブロック135によって構成されている。
【0027】
本体部125の下端部にはボール支持部141が、そのフランジ153が係止部129に係止され、回動自在に支持されている。このボール支持部141は空間部147を有し、この空間部147はケース部127の内部と連なり、またボール支持部141の下面には空間部147に連通する開口149が形成されている。ボール支持部141の側面には空間部147と開口149に連通するスリット151が形成されている。
【0028】
空間部147には、軸157が一体に形成されたボール155が備えられ、ボール155はボール支持部141に回動自在に支持されている。また軸157は開口149を通り下方に向かって延びている。軸157はスリット151に入り込むことができる径寸法に設定されている。軸157の先端部にはピンチ161が取付けられている。即ちピンチ161はボールジョイント121を介してフレキシブルパイプ117に回動自在に連結されている。
【0029】
次に、口腔内吸引装置の吸引管の保持装置1の使用方法について説明する。
図1に示すように口腔内吸引装置の吸引管の保持装置1を、術者Jに対し治療椅子Tを挟んで対向する位置に設置しておく。
術者Jが患者Kに対し治療を行う場合には、ピンチ161に口腔内吸引装置の吸引管Pを挟む。そして、吸引管Pを持って患者Kの口腔内に差し入れて、所望の位置へ移動させる。吸引管Pの動作に追随するように、アーム31が支柱17に対し回動したり、アーム31の姿勢が変更したりする。そして、吸引管Pを所望の位置に止め、その状態を保ったまま押しネジ133と雌ネジ部101を締める。これにより、吸引管Pが所望の位置で保持される。
【0030】
従って、治療中に術者Jを補助する者が居なくても、口腔内吸引装置の吸引管Pを口内に差し入れて保持することができ、労働効率がよい。また、患者Kに頼らずに吸引管Pを保持することができるため、吸引管Pが口腔から外れてしまうことも完全に防止することができる。
【0031】
吸引管Pの位置を変更する場合には、押しネジ133を緩め、ピンチ161と共に吸引管Pを回動させて、押しネジ133を締める。このように押しネジ133や雌ネジ部101を操作するだけで、容易に吸引管Pの位置を変更して固定することができる。
前述したようにピンチ161はボールジョイント121を介してフレキシブルパイプ117に回動自在に連結されており、フレキシブルパイプ117はアーム31に対し回動自在に連結されているため、術者Jが所望する微妙な位置に吸引管Pを備えることが可能である。
【0032】
上記操作において、押しネジ133を締めると、図4(b)に示すように押しネジ133によって押えブロック135が下方に押圧され、押えブロック135がボール支持部141とボール155とを押圧する。これによりボール支持部141とボール155が固定されて、ピンチ161がその位置で止まる。
また、雌ネジ部101を締めると、雄ネジ99と雌ネジ部101とによって開閉ホルダー91が両側から押圧され、開閉ホルダー91が吊り下げ部111の取付部113を押圧する。これにより吊り下げ部111と共にフレキシブルパイプ117がその位置で回動しない状態にロックされる。
【0033】
実施の形態2に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置201を図5から図11にしたがって説明する。
実施の形態2に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置201は、実施の形態1に係る口腔内吸引装置の吸引管の保持装置1と同様の構成部分を有するので、口腔内吸引装置の吸引管の保持装置1と同様の構成部分については、同じ符号を付すことで説明を省略し、異なる構成部分についてのみ以下で説明する。
【0034】
図6に詳細に示すように、前側脚部7、9の構成と異なっている。
ベース3の前側脚部7の先端部には上下方向に貫通すると共に先端側に開口した凹部203が形成されており、その凹部203には支持軸205が嵌入され架け渡されている。符号207は設置部を示し、この設置部207にはアーム209が設けられている。アーム209の基端側には孔が形成されており、その孔に支持軸205が回転自在に挿通されている。したがって、アーム209は、支持軸205を支点として前側脚部7に対して回動自在になっている。また、アーム209にはペダル211が取り付けられている。
【0035】
従って、仮想線で示すように、ペダル211を後方に倒せば、アーム209が持ち上がり、設置部207の下面が床面から離れて、前側脚部7が移動できるようになり、ペダル211を起こして元の直立姿勢に戻せば、アーム209が横臥して設置部207の下面が床面に当接し、前側脚部7の移動が規制される。
前側脚部9も、同じように構成されている。
【0036】
図7、8に詳細に示すように、アーム209をハンドルやレバー操作により回動させる手段が付加されている。
連結部212の側面にはノブ付きネジ213が螺入されるネジ孔が形成されている。符号214は中間ハブを示し、この中間ハブ214の側面には環状溝215が形成されている。中間ハブ214の外方フランジが連結部212の上端に載せられている。ノブ付きネジ213が連結部212の外方から螺合され、中間ハブの環状溝215に挿入されるようになっている。
符号216は孔付きの支持プレートを示し、この支持プレート216にウォームギア217が軸受けを介して設置され、このウォームギア217にウォームホイール218が噛合されている。このウォームホイール218のボス部に支持ベース29が連結されている。
符号219はウォームホイール218を下側から取付けて支持するホイール取付ハブを示し、このウォームホイール218は支持プレート216の孔を貫通して中間ハブ214の孔に挿入されている。下側は、2つの座金220、222を介してボルト223により締められている。
【0037】
従って、ハンドル224を回すと、ウォームホイール218が回動し、それに追従して、支持ベース29、ホイール取付ハブ219、座金220、222、ボルト223が一体となって回動し、アーム209をベース3に対して微回動させることができる。
一方、レバー225を回すと、支持ベース29、ウォームホイール218、ホイール取付ハブ219、座金220、222、ボルト223に加えて、ウォームギア217、支持プレート216、中間ハブ214も一体に回動し、アーム209をベース3に対して大きく回動させることができる。
ノブ付きネジ213を螺入させて押圧すれば、上記した回動はできない状態になる。
【0038】
図5に詳細に示すように、アーム209の構成が異なっている。
符号221は一対の下側補強ロッドを示し、一対の下側補強ロッド221は下側ロッド65の外方両側に配置されている。各下側補強ロッド221は湾曲しており、外方に若干膨出している。下側補強ロッド221の後端部も下側ロッド65と同様に支持軸67を支点として一対の連結金具61に対し回動自在に支持されている。
符号223は一対の連結金具を示す。この連結金具223には連結金具81における雄ネジ99の貫通孔が形成されておらず、その部分は幅広の平板状になって下方に延びている。下側補強ロッド221の前端部も下側ロッド65と同様に支持軸83を支点として一対の連結金具223に対し回動自在に支持されている。
【0039】
また、一対の連結金具223、223によってフレキシブルパイプ117の上端部が挟持されて固定されている。
符号225はレバーを示し、このレバー225は棒状をなしている。レバー225の上端は連結金具223に固定されており、グリップの付いた下端部は術者の近くまで延びており、術者は治療行為を行いながら、レバー225を下げたり上げたりすることで、アーム209の折り曲げ度合いを適宜調整できるようになっている。
【0040】
次に、新たに付加されたフレキシブルパイプ117の先端部に対するピンチ161の前後方向の位置調節手段227について、図9、10にしたがって説明する。
符号229はホルダーを示し、このホルダー229は矩形の平板を略コ字状に折り曲げて形成されており、左右両側及び後側が開口している。また、前面から上面にかけてその中央部分にスリット231が形成されており、スリット231は前面側では半分より下方まで延び、上面側では後端に到達している。
このホルダー229にフレキシブルパイプ117の先端部が固定されている。
【0041】
ホルダー229の上面と下面との間には後ろ寄りに支持ケース233が備えられ固定されている。この支持ケース233には、一対の貫通孔235が前後面に形成されている。
符号237はノブを示し、このノブ237は円盤状の本体239と略円柱状のボス部241が同軸状に一体に形成されている。そして、本体239とボス部241を貫通してネジ孔243が形成されている。ボス部241の軸方向中間部分には縮径された小径部245が設けられており、この小径部245は前述した前面のスリット231に遊嵌されている。このように、ノブ237はホルダー229に回転自在に支持されている。
【0042】
符号247は雄ネジシャフトを示し、この雄ネジシャフト247の前端には袋ナット249が取り付けられている。雄ネジシャフト247はノブ237のネジ孔243に螺入され、さらに支持ケース233の貫通孔235に挿通されており、後端は取付ブロック251に固定されている。
以上の構成により、ノブ237を回すと、雄ネジシャフト247が前進後退し、フレキシブルパイプ117の下のボールジョイント121及びピンチ161がそれに追従して前進後退するようになっている。
【0043】
次に、新たに付加されたフレキシブルパイプ117の先端部に対するピンチの上下方向及びピンチの横向きの位置調節手段253について、図9、11にしたがって説明する。
取付ブロック251には下面に開口した孔257が形成されている。
符号259は上側支持ケースを示し、この上側支持ケース259は天板の有る筒状体に形成されている。上側支持ケース259は取付ブロック251の下面に固定されており、この天板の中央には孔257と同軸状に貫通孔261が形成されている。上側支持ケース259の側面にはロックネジ262が螺入されるネジ孔が形成され、その下側に支持ネジ263が螺入されるネジ孔が等間隔に4つ形成されている。なお、ロックネジ262の先端部264はゴムにより形成されている。
【0044】
符号265は円筒状の吊下げ部を示し、この吊下げ部265の下端には外方フランジ267が設けられている。この吊下げ部265の側面には支持ネジ263が挿入される環状溝269が形成されている。また、外方フランジ267には支持ネジ266が挿入される貫通孔が等間隔に4つ形成されている。
吊下げ部265は、上側支持ケース259に下側から差し込まれている。また、支持ネジ263が上側支持ケース259の側面のネジ孔から螺入され、さらに吊下げ部265の側面の環状溝269まで挿入されている。このようにして、吊下げ部265は上側支持ケース259に回動自在に吊下げ支持されている。
【0045】
符号271はノブを示し、このノブ271は天井の有る円筒状体に形成されている。この天井の中央には下方に向かって突出するボス部273が形成され、天井からボス部273にかけてネジ孔275が形成されている。また、天井の外縁側には支持ネジ266が螺入されるネジ孔が等間隔に4つ形成されている。
吊下げ部265の下側にノブ271が同軸状に当接されており、支持ネジ266が吊下げ部265の外方フランジ267側の貫通孔から挿入され、さらにノブ271のネジ孔まで螺入されている。このようにして、ノブ271は吊下げ部265と一体に回動自在に支持されている。
【0046】
符号277は下側支持ケースを示し、この下側支持ケース277は底板の有る筒状体に形成されている。この底板の中央には二段の孔が形成されており、上側がネジ孔279、下側が貫通孔280になっている。貫通孔280はネジ孔279より小径になっている。下側支持ケース277の下側にはボールジョイント121の本体部125が連結されている。
符号281は雄ネジシャフトを示し、この雄ネジシャフト281は上下方向に配置されている。雄ネジシャフト281の上側は、上側支持ケース259の貫通孔261を貫通し、その上端部は、取付ブロック251の孔257に入り込めるようになっている。雄ネジシャフト281は途中でノブ271のネジ孔275に螺合している。
雄ネジシャフト281の下側は、下側支持ケース277のネジ孔279に螺合しており、さらに、小径の下端部は下側支持ケース277の貫通孔280を貫通して、下側から飛び出ている。また、雄ネジシャフト281にナット287が締め込まれ、これにより下側支持ケース277が雄ネジシャフト281に対して固定されている。
符号285はダブルナットを示し、このダブルナット285が雄ネジシャフト281に取り付けられている。
【0047】
次に使用方法について説明する。
レバー225を下げたり上げたりすることで、アーム209の折り曲げ度合いを適宜調整し、次に、ノブ237を回してフレキシブルパイプ117の先端部に対するボールジョイント121及びピンチ161の前後方向の位置を調整する。
次に、ボールジョイント121における本体部125に対するボール155の軸157の姿勢を調節し、押しネジ133を締めてその姿勢を固定させる。
【0048】
次に、上記した上下方向及び横向きの位置調節手段を操作する。具体的には、ロックネジ262を緩めてその先端部264を雄ネジシャフト281から離間させて、雄ネジシャフト281をロック状態から解除する。
次に、下側支持ケース277を片方の手で把持し、ノブ271をもう片方の手で回して、雄ネジシャフト281を上下方向に移動させる。下側支持ケース277は上昇すると、ノブ271内に入り込むようになっている。ノブ271の天井面に下側支持ケース277が当接すると、雄ネジシャフト281の上昇はそこでストップされる。一方、ダブルナット285の下面がノブ271に当接すると、雄ネジシャフト281の下降はそこでストップされる。雄ネジシャフト281の上下移動に追従して、ピンチ161も上下移動する。因みに、図11は雄ネジシャフト281が最大限下降した状態を示している。
【0049】
次に、ノブ271を片方の手で把持し、今度はもう片方の手で下側支持ケース277を回動させる。これによって、ボールジョイント121と共にピンチ161を回動させてピンチ161の横方向の向きを調節する。
これらの調節をした後に、ロックネジ262を締めてその先端部264を雄ネジシャフト281に押圧させて、ロック状態に戻す。
このようにして、ピンチ161は上下方向の位置だけでなく、横方向の向きも自在に微調節することができる。
【0050】
上記したように、実施の形態2でも、治療中に術者Jを補助する者が居なくても、口腔内吸引装置の吸引管Pを口内に差し入れて保持することができ、労働効率がよい。
また、レバー225、ノブ237、271が術者Jの近くにあるので、治療の途中でも操作できるようになっている。フレキシブルパイプ117の先端部に各種位置調節手段が設けられているので、ブレが少ない。従って、治療上の安全性が高くなっている。
さらに、ロックネジ262を緩め、上側支持ケース259から支持ネジ263を取り外し、吊下げ部265から支持ネジ263を取り外し、ナット287を緩めることで、雄ネジシャフト281を分離できるので、雄ネジシャフト281の定期点検を容易に行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態1では、ボールジョイント121を介してフレキシブルパイプ117にピンチ161を連結したが、ピンチ161を直接フレキシブルパイプ117に取付けてもよい。
上記実施の形態1では、フレキシブルパイプ117をアーム31に対し回動自在に連結したが、フレキシブルパイプ117が回動しない状態でアーム31に連結してもよい。
上記実施の形態2では、ボールジョイントの前後方向の位置調節手段の下側にボールジョイントの上下方向手段及びピンチの横向きの姿勢の調節手段が設けられているが、これを上下逆にしてもよい。
上記実施の形態1、2では、支持部としてフレキシブルパイプが用いられているが、支持部は角度の変更により基端部に対する先端部の上下方向の距離及び横方向の向きを変えられるものであればいずれのものでもよく、例えば途中に複数の関節が介挿されて角度変更可能になっているようなものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は医療用装置の製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…口腔内吸引装置の吸引管の保持装置(実施の形態1)
3…ベース 5…後側脚部
7、9…前側脚部 11…キャスター
13…調節ネジ 15…設置部
17…支柱 19…連結管
21…押しネジ 23…取付パイプ
25…フランジ 29…支持ベース
31…アーム
39…支持金具 41…傾斜プレート
43…バネ掛部 45…水平プレート
45a…ストッパ
51…前側ロッド 52…連結軸
53、57…支持軸 55…後側ロッド
61…連結金具 63、67、71…支持軸
65…下側ロッド 69…上側ロッド
73…バネ掛部 79…バネ掛部
81…連結金具 83、85…支持軸
87、89…コイルスプリング
91…開閉ホルダー 93…スリット
95…空間部 97…開口
99…雄ネジ 101…雌ネジ部
111…吊り下げ部 113…取付部
115…フランジ 117…フレキシブルパイプ
121…ボールジョイント 123…連結部
125…本体部 127…ケース部
129…係止部 131…ネジ孔
133…押しネジ 135…押えブロック
137…凹部
141…ボール支持部
147…空間部 149…開口
151…スリット 153…フランジ
155…ボール 157…軸
161…ピンチ
J…術者 T…治療椅子
K…患者 P…吸引管
201…口腔内吸引装置の吸引管の保持装置(実施の形態2)
203…凹部 205…支持軸
207…設置部 209…アーム
211…ペダル 212…連結部
213…ノブ付きネジ 214…中間ハブ
215…環状溝 216…孔付きの支持プレート
217…ウォームギア 218…ウォームホイール
219…ホイール取付ハブ 220、222…座金
223…ボルト
224…ハンドル 221…下側補強ロッド
223…連結金具 225…レバー
227…前後方向の位置調節手段 229…ホルダー
231…スリット 233…支持ケース
235…貫通孔 237…ノブ
239…本体 241…ボス部
243…ネジ孔 245…小径部
247…雄ネジシャフト 249…袋ナット
251…取付ブロック 253…上下方向の位置調節手段
257…孔 259…上側支持ケース
261…貫通孔 262…ロックネジ
264…(ロックネジの)先端部
263、266…支持ネジ 265吊下げ部
267…外方フランジ 269…環状溝
271…ノブ 273…ボス部
275…ネジ孔 277…下側支持ケース
279…ネジ孔 280…貫通孔
281…雄ネジシャフト 285…ダブルナット
287…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面等に設置するベースと、前記ベースに支持された支柱と、前記支柱に回動自在に支持され姿勢変更可能なアームと、前記アームの先端部に基端部が連結されて上下方向に伸び、且つ途中で角度変更可能な支持部と、前記支持部の先端部に取り付けられたピンチとから成ることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、ピンチは支持部にボールジョイントを介して連結され、且つピンチを任意の位置に止めるためボールジョイントのボールを固定するボールロック手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部の先端部とボールジョイントの間に介挿され、前記支持部の先端部に対するピンチの上下方向の位置と横方向の向きを調節する位置調節手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、位置調節手段は、支持部に対して同軸状に回動自在に連結されたノブと、前記ノブのネジ孔に螺合した雄ネジシャフトと、前記雄ネジシャフトとボールジョイントの本体部に固定された保持ケースと、前記雄ネジシャフトの上下移動及び回動しない状態にロックするロック手段を備えることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部の先端部とボールジョイントの間に介挿され、前記支持部の先端部に対するピンチの前後方向の位置を調節する位置調節手段を具備することを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、アームの先端には棒状のハンドルが連結されており、ハンドル操作により前記アームの折り曲げ度合いを調整できること特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した口腔内吸引装置の吸引管の保持装置において、支持部はフレキシブルパイプによって構成されていることを特徴とする口腔内吸引装置の吸引管の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−284333(P2010−284333A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140347(P2009−140347)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(309005010)
【出願人】(507340913)アイセック・ナノ中部株式会社 (3)
【出願人】(500178360)株式会社東興 (2)