説明

口腔内治療用のスペーサー

【課題】 吸収した水分が口腔内治療用のスペーサーの吸収能力を超えた場合や患者が舌や頬を動かしてしまった場合でも治療部位に水分を接触させてしまうことのない口腔内治療用のスペーサーを提供する。
【解決手段】 近年のバキュームの性能向上に鑑みれば口腔内治療用のスペーサーは吸収性材料である必要はないことに着目し、非吸水性材料から構成される口腔内治療用のスペーサーとした。例えば円筒状が好適に使用でき、直径は5〜30mm、長さ20〜100mmであると使い易い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内治療用に用いられ、治療部位に口腔内組織が接触しないように及び治療部位に口腔内の水分が接触しないように治療部位と口腔内組織間に位置させ空間を設けるための口腔内治療用のスペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、歯科用セメントや歯科用接着材を用いたインレーやクラウン等の歯科用補綴物の固定が行われる。このとき脱脂綿を単に短冊状に切断した方形の綿片、あるいはそれらをロール状に丸めた綿片を頬や舌等の口腔内組織が治療部位に接触しないように例えば歯牙と頬との間に挟むことで水や唾液等の液体が治療部位の手前で吸い取る工夫をしている。また、歯牙の切削の際にも口腔内治療用のスペーサーが同様にして使用されている。さらに、歯科用補綴物を接着し固定した時にセメント等の接着材が固まるまでの間に口腔内治療用のスペーサーを噛み締めることにより歯科用補綴物を確実に治療部位に固定することも行われている。これらの使用方法において、口腔治療用のスペーサーは綿やガーゼ等のある程度吸水性を有する材料が使用されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、従来の口腔治療用のスペーサーに広く使用されていた脱脂綿片や脱脂綿ロールは、口腔内の水や唾液等の水分を吸収することを目的としていたため、吸収した水分が口腔内治療用のスペーサーの吸収能力を超えた場合や、患者が舌や頬を強く動かしてしまった場合に一旦吸収した水分を口腔内に押し戻してしまい治療部位に水分を接触させてしまうことがあった。歯科用セメントや歯科用接着材は水分の接触によって接着能力が低下してしまうことから、水分に接触してしまった場合には歯科用補綴物が脱落してしまうという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−243116公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者が舌や頬を動かしてしまった場合でも口腔内治療用のスペーサーから水分が押し出されて治療部位に接触させてしまうことのない口腔内治療用のスペーサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、近年のバキュームの性能向上に鑑みれば口腔内治療用のスペーサーは吸収性材料である必要はないことに着目し、意外にも非吸水性材料の口腔内治療用のスペーサーを利用すれば前期課題を解決可能であることを見出して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、非吸水性材料から構成される口腔内治療用のスペーサーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は一度吸収した水分が口腔内治療用のスペーサーの吸収能力を超えた場合や、患者が舌や頬を動かして吸収した水分を押し出してしまった場合でも治療部位に水分を接触させてしまうことのない優れた口腔内治療用のスペーサーである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る口腔内治療用のスペーサーの実施例を示す斜視説明図。
【図2】本発明に係る口腔内治療用のスペーサーの別の実施例を示す斜視説明図。
【図3】本発明に係る口腔内治療用のスペーサーのさらに別の実施例を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る口腔内治療用のスペーサーは非吸水性材料により構成される必要がある。口腔内治療用のスペーサーは柔軟性を有することが好ましく、ある程度の柔軟性があれば口腔内の軟組織を痛めてしまうことなく治療に必要なスペースを確保することができる。柔軟性は従来の脱脂綿から構成されていた口腔内治療用のスペーサーと同等であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る口腔内治療用のスペーサーは、唾液等の水分を吸収しないことが必須であるため非吸水性材料であることが重要である。非吸水性は、治療部位の歯科用セメントや歯科用接着材等の歯科用材料に水滴が接触して硬化に影響を与えてしまうことのない程度の非吸水性であれば良く、材料工学分野で評価されている程度の定義を必要としているわけではないが、敢えて数値化すれば、1cmの非吸収性材料において、23℃,24時間の水中浸漬における吸水率が15重量%未満、好ましくは10重量%未満であれば良い。
【0012】
非吸水性材料としては例えば、天然ゴム,イソプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブチルゴム,エチレンプロピレンゴム,ウレタンゴム,シリコンゴム,アクリルゴム,クロルスルホン化ポリエチレンゴム,フッ素ゴム,水素化ニトリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,多硫化ゴム等のゴム系材料が好ましく、スポンジ構造を有しないことが好ましい。その他、ポリ塩化ビニル,各種ナイロン,エチレン酢酸ビニル,ポリクロロトリフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリスルホン,ポリプロピレン,ポリフェニルサルファイド等の合成樹脂材料も使用可能である。
【0013】
本発明に係る口腔内治療用のスペーサーは、窒素,空気等の気体や、水,アルコール等の液体材料を非吸水性材料で形成された容器内に内包した構造であっても良い。
【0014】
本発明に係る口腔内治療用のスペーサー形状は、例えば図1の斜視図に示す如き円筒状が好適に使用でき、直径は5〜30mm、長さ20〜100mmであると使い易い。その他、図示しないが角柱であったり、図2に示すように湾曲していても良い。なお、気体や液体材料を柔軟性を有する非吸水性材料で形成された容器内に内包した構造の場合には口腔内治療用のスペーサーの形状は不定形となる場合もある。
【0015】
本発明係る口腔内治療用のスペーサーは筒状であっても良く、更に図3に示したように外部と連通穴を有する中空状であると唾液をある程度口腔内治療用のスペーサーに内包することが可能となるため好ましい。内包した唾液は従来の綿等で構成される口腔内治療用のスペーサーと比較して外に押し出されることがないという特徴がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸水性材料から構成される口腔内治療用のスペーサー。
【請求項2】
非吸収性材料がゴム系材料及び/または合成樹脂材料からなる請求項1に記載の口腔内治療用のスペーサー。
【請求項3】
非吸水性材料が気体及び/または液体を内包した構造である請求項1または2に記載の口腔内治療用のスペーサー。
【請求項4】
非吸水性材料が外部と連通穴を有する中空状である請求項1または2に記載の口腔内治療用のスペーサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−162093(P2010−162093A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5260(P2009−5260)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】