説明

口腔内速崩壊錠

【課 題】本発明は、口腔内での優れた崩壊性を有し、実用的な口腔内速崩壊錠を提供する。
【解決手段】有効成分および全体に対して10%(w/w)以上のカルボキシメチルセルロースを含有する口腔内速崩壊錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で速やかに崩壊する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、経口錠剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル錠、崩壊錠、顆粒剤、散剤などが知られている。しかし、これらの錠剤はいくつかの問題点を有している。例えば、錠剤やカプセル剤は嚥下力の弱い高齢者や小児には服用が難しいこと、顆粒剤や散剤は服用時の口中の不快感や気管への混入などが挙げられる。また、錠剤の剤形によっては、服用時に水を必要とするものが多いため、場所や状況によっては、飲みたいときに服用ができなかったり、仕事に忙しい中高年齢層では毎日の規則正しい時間の服用が困難であるなどの問題点も有している。
【0003】
崩壊錠とは錠剤の取り扱いやすさを残したまま、錠剤が口腔内で唾液または少量の水で崩壊することにより飲み込みやすくした製剤をいう。崩壊錠は、投与量が正確であり、内服薬としての簡便性を備えた上で、服用時の水を必要としないため、嚥下困難な高齢者や小児患者にも飲みやすく、病状によっては水分摂取が制限されている場合の患者の服用にも適している。
【0004】
最近では、口腔内崩壊錠がその特徴から、患者のコンプライアンスを向上させるとともに、嚥下困難な患者のQOLを高めることでも注目されている。
【0005】
特許文献1には製剤ベースの基本的な構成要件となる結合剤にカンテン末を使用することで、十分な錠剤強度を有しながら口中で速やかに崩壊し、かつ製造容易な固形製剤および製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2にはクロスポピドン、クロスカルメロースおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる崩壊剤を1〜10%(w/w)含有する崩壊錠が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記、従来の崩壊錠は実用性の面から見ると製剤工程や保存性および崩壊性に対する適用範囲等においていまだ十分とはいえない。よって実用上、口腔内での十分優れた崩壊性や溶解性を有すると同時に、製剤工程および流通過程において壊れない強度を持ち、かつ製造容易な崩壊錠の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平10−290634号公報
【特許文献2】特許第3797387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、口腔内での優れた崩壊性を有し、実用的な口腔内速崩壊錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、有効成分および全体に対して10%(w/w)以上のカルボキシメチルセルロースを含有する口腔内速崩壊錠が口中での速崩壊性に極めて優れることを見出した。
【0010】
詳述すれば、市販されている口腔内崩壊錠は、口中で速やかに崩壊させるために、通常は崩壊剤が添加されている。崩壊剤の種類についてはいろいろ検討されているが、錠剤全体に占める崩壊剤の添加量は各社とも数%程度の使用にとどまっている。これは、崩壊剤の添加量を増やしたとしても一定量以上の添加は崩壊時間の短縮につながらないとして、湿潤させてから乾燥させて打錠するなど他の手法を併用することで、目的とする崩壊性と成形性のバランスを保っていたからである。
【0011】
しかし、本発明者は崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースを用いた場合、数%程度の添加率では崩壊性が得られないが、10%(w/w)を超えると急速に崩壊性が向上することを発見した。
【0012】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の各項の新規な口腔内速崩壊錠を提供する。
項1.有効成分、および全体に対して10%(w/w)以上のカルボキシメチルセルロースを含有する口腔内速崩壊錠。
項2.第15改正日本薬局方記載の崩壊試験法により測定される、崩壊時間が90秒以下のものである項1に記載の崩壊錠。
項3.錠剤重量硬度厚み測定器(菊水製作所製,TM5−5)を用いて湿度27%の条件で錠剤を直径方向に加圧して測定したときの硬度が3kgf以上である項1または2に記載の崩壊錠。
項4.さらに、糖アルコールを含有する項1〜3のいずれかに記載の崩壊錠。
項5.糖アルコールがマンニトール、パラチノース、およびソルビトールからなる群より選ばれる少なくとも一種である項4に記載の崩壊錠。
項6.さらに、糖を含有する項1〜5のいずれかに記載の崩壊錠。
項7.糖が乳糖である項6に記載の崩壊錠。
項8.糖、糖アルコールまたはその両方が造粒物の状態で含有されている項1〜7のいずれかに記載の崩壊錠。
【発明の効果】
【0013】
本発明の崩壊錠は有効成分および全体に対して10%(w/w)以上のカルボキシメチルセルロース(以下、「カルメロース」という)を含有することで、口腔内で速やかに崩壊することを特徴としている。
【0014】
また、本発明による崩壊錠は、このように崩壊剤の添加量が多いにもかかわらず、錠剤の成形性に影響を与えず、従来の打錠設備で容易かつ簡便に製造が可能であることも特徴としている。つまり、本発明の崩壊錠は、従来の製造方法で多く見られる加熱、融解、溶解、凍結工程を必ずしも要することなく、薬効成分と崩壊剤、糖など既知の添加剤等を混合し、打錠するだけで錠剤として成形され得る。本発明で実用的な硬度とは、具体的には打錠後の製品をPTP包装などする場合に欠けることなく、また、市場流通時や患者の通常の携帯にも耐えうる強度を備えていることをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の崩壊錠は有効成分および全体に対し10%(w/w)以上のカルメロースを含有する崩壊錠であることを特徴としている。
【0016】
カルメロース
一般的に崩壊剤としてのカルメロースの添加量は錠剤全体に対して3〜5%(w/w)程度であるが、本発明におけるカルメロースの添加量は、通常の使用量に比べてはるかに多い10%(w/w)以上である。崩壊性をより向上させるためには25%(w/w)以上が好ましく、50%(w/w)以上がより好ましい。上記範囲であれば、有効成分の薬理効果を発揮し、かつ、口腔内での実用的で優れた崩壊性が得られる。また、カルメロースの添加量の上限は通常80%(w/w)程度である。
【0017】
有効成分
本発明に用いられる有効成分は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されず、例えば排尿障害改善剤(商品名:ハルナールD錠、アステラス製薬株式会社製)、消化器官用薬剤、(商品名:ガスターD錠、アステラス製薬株式会社製;商品名:タケプロンOD錠、武田薬品工業株式会社製;商品名:プロマックD錠、ゼリア新薬工業株式会社製)、制吐剤(商品名:ナゼアOD錠、アステラス製薬株式会社製;商品名:ゾフランザイディス4、グラクソ・スミスクライン株式会社製)、低血圧治療剤(商品名:メトリジンD錠、大正製薬株式会社製)、血糖改善剤(商品名:ベイスンOD錠、武田薬品工業株式会社製)、精神神経用薬剤(商品名:ジプレキサザイディス錠、日本イーライリリー株式会社製)、健忘症治療剤(商品名:アリセプトD錠、エーザイ株式会社製)、睡眠導入剤(商品名:レンドルミンD錠、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社製)、片頭痛治療薬(商品名:ゾーミッグRM錠、アストラゼネカ株式会社製;商品名:マクサルト錠、マクサルトRPD錠、杏林製薬株式会社製)、抗アレルギー剤(商品名:エバステル錠、エバステルOD錠、大日本住友製薬株式会社製;商品名:クラリチン錠、クラリチンレディタブ錠、シェリングプラウ株式会社製)、高血圧症狭心症治療剤(商品名:アムロジンOD錠、大日本住友製薬株式会社製)など種々の薬物があげられる。有効成分は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
製剤中の有効成分の配合量は、薬物の種類によっても異なるが、通常0.01〜80%(w/w)程度とすればよい。
【0019】
糖アルコール
本発明の崩壊錠には糖アルコールが含まれていても良い。本発明に用いられる糖アルコールは内服薬に通常使用される公知の糖アルコールを制限なく使用できる。このような公知の糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、パラチノース(還元パラチノースを含む)などが挙げられる。糖類は一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、比較的成形性が良好で吸湿性が少ない糖アルコールが好ましく、マンニトール、パラチノース(還元パラチノースを含む)、またはソルビトールがより好ましい。
【0020】
糖アルコールの配合量は、通常0.1〜90%(w/w)程度、好ましくは10〜90%(w/w)程度、さらに好ましくは30〜85%(w/w)程度とすればよい。上記範囲であれば口中で優れた崩壊性を示し、触感が良好な崩壊錠となる。
【0021】
結晶セルロース
本発明の崩壊錠には結晶セルロースが含まれていても良い。前述の糖アルコールを結晶セルロースにすべて置き換えても崩壊性に優れた口腔内崩壊錠となる。公知の結晶セルロースとしては例えば、前述のカルメロースのほかにヒドロキシメチルセルロースなどが挙げられる。結晶セルロースの配合量は前述の糖アルコールと同程度でよい。
【0022】

本発明の崩壊錠には、さらに糖が含まれていても良い。本発明に用いられる糖としては、内服薬に通常使用される公知の糖を制限なく使用できる。このような公知の糖としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖(スクロース)、マルトース(好ましくはアメ粉(マルトース83%以上含有))、トレハロース、乳糖果糖などの単糖またはオリゴ糖が挙げられる。糖類は一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、汎用されていて入手が容易で、かつ比較的成形性が良好で吸湿性が少ない乳糖が好ましい。
【0023】
糖の配合量は、通常0.1〜90%(w/w)程度、好ましくは10〜90%(w/w)程度、さらに好ましくは30〜85%(w/w)程度とすればよい。上記範囲であれば口中の触感が良好な崩壊錠となる。
【0024】
その他の成分
本発明の崩壊錠にはさらに、医薬品添加物として使用される賦形剤、酸味剤、人口甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、増量剤などを本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
【0025】
賦形剤としては、結晶セルロース、結晶セルロースと軽質無水ケイ酸の混合物などが挙げられる。
【0026】
酸味剤としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
【0027】
人口甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチンニカリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
【0028】
香料としては合成香料、天然香料のいずれでもよく例えば、メントール、レモン、ライム、オレンジ、ストロベリーなどが挙げられる。
【0029】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。また、該滑沢剤としてポリエチレングリコールを用いる場合は、医薬成分の経日的分解が抑制された安定な固形製剤を得ることができる。
【0030】
着色剤としては、例えば食用赤色2号、食用黄色5号、食用青色2号などの食用色素などが挙げられる。
【0031】
増量剤としてはデンプン、Dーマンニット、ブドウ糖、食塩などが挙げられる。
【0032】
硬度
本発明における硬度は、打錠後の製品が有する錠剤の硬度であり、錠剤重量硬度厚み測定器(菊水製作所製,TM5−5)を用いて湿度25〜30%の条件で錠剤を直径方向に加圧して測定したときの硬度をいう。本発明の崩壊錠は、打錠後の包装工程や流通過程、または患者の取り扱い時に破損しない程度の十分実用的な硬度を備える必要があり、具体的には3kgf以上が好ましい。上記範囲であれば、製造工程、流通および服用時に壊れない実用的な硬度が得られる。硬度の上限は特に限定されないが、通常20kgf程度である。
【0033】
造粒物
さらに、上記、糖アルコールおよび糖は造粒物として含まれていても良い。糖アルコールおよび糖はそれぞれ単独で造粒されていても、両方を混合して造粒されていても良い。本発明でいう造粒物とは、例えば一般的な湿式造粒、乾式造粒、噴霧造粒によって造粒された造粒物(顆粒)をいう。造流時にはデンプン等の賦形剤を添加しても良い。糖、糖アルコールまたはその両方を造粒することによって、原料の取り扱い性が向上するとともに崩壊性が向上するというメリットがある。
【0034】
その他
本発明の崩壊錠は一般的な打錠機で製造が可能であり、詳細は実施例に記載する。
また、本発明の崩壊錠の形状としては、硬度に問題がない限り、円形錠、もしくは普通R面、スミカク平面、スミマル平面、二段R面等の面形を有する各種異形錠であってもよい。崩壊性の点からはより表面積の広い形状が好ましいが硬度とのバランスが重要である。また、該錠剤は割線を入れた分割錠としてもよい。
【0035】
実施例
以下に、試験例および実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<試料の調製>
実施例1
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商 会)69.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。ロータリー打錠機(菊水製作所製,型式VIRG)に直径7mmの丸形錠剤用杵を装着し、前記試料を打錠圧力0.3〜0.4tで打錠し、直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0036】
実施例2
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)79.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)10部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0037】
実施例3
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)74.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)15部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0038】
実施例4
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会).64.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)25部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0039】
実施例5
ファモチジン(コーア商事)10部,D−マンニトール(商品名:パーテックスM,メルクジャパン).69.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0040】
実施例6
ファモチジン(コーア商事)10部,乳糖(商品名:タブレトース,メグレジャパン).69.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0041】
実施例7
ファモチジン(コーア商事)10部,D−ソルビトール(商品名:ソルビトールSP,日研化学).69.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0042】
実施例8
ファモチジン(コーア商事)30g,D−マンニトール(商品名:PEARLITOL,ロケットジャパン)205.5gを流動層造粒乾燥機(型式:FLO−1,フロイント産業)にて,精製水100gにデキストリン3gを溶解させた液を噴霧して湿式造粒した後乾燥(乾燥条件:60℃、20分)させ,造粒物とした。該造粒物79.5部(D−マンニトール69.4部),カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。ロータリー打錠機(菊水製作所製,型式VIRG)に直径7mmの丸形錠剤用杵を装着し、前記試料を打錠圧力0.6〜0.7tで打錠し、直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0043】
実施例9
ファモチジン(コーア商事)30g,アスパルテーム(アスパルテーム,味の素)30g,D−マンニトール(商品名:PEARLITOL,ロケットジャパン)175.5gを流動層造粒乾燥機(型式:FLO−1,フロイント産業)にて,精製水100gにデキストリン(パインデックス,松谷化学工業)3gを溶解させた液を噴霧して湿式造粒した後乾燥(乾燥条件:60℃、20分)させ,造粒物とした。造粒物79.5部(D−マンニトール59.2部),カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例8と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0044】
比較例1
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,カルメロース(商品名:NS−300,五徳薬品)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0045】
比較例2
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)89.5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0046】
比較例3
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,クロスポビドン(商品名:ポリプラスドンXL−10,ISP・ジャパン)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0047】
比較例4
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,クロスポビドン(商品名:ポリプラスドンXL−10,ISP・ジャパン)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0048】
比較例5
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,クロスカルメロースナトリウム(商品名:キッコレート,ニチリン化学)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0049】
比較例6
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,クロスカルメロースナトリウム(商品名:キッコレート,ニチリン化学)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0050】
比較例7
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,結晶セルロース(商品名:セオラスKG802,旭化成ケミカルズ)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0051】
比較例8
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,結晶セルロース(商品名:セオラスKG802,旭化成ケミカルズ)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0052】
比較例9
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,カルメロースカルシウム(商品名:ECG−505,五徳薬品)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0053】
比較例10
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,カルメロースカルシウム(商品名:ECG−505,五徳薬品)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0054】
比較例11
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,部分アルファ化デンプン(商品名:PCS,旭化成ケミカルズ)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0055】
比較例12
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,結晶セルロース・軽質無水ケイ酸(商品名:プロソルブSMCC90,旭化成ケミカルズ)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0056】
比較例13
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,結晶セルロース・軽質無水ケイ酸(商品名:プロソルブSMCC90,旭化成ケミカルズ)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0057】
比較例14
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:L−HPC(LH−11),信越化学)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0058】
比較例15
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:L−HPC(LH−11),信越化学)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0059】
比較例16
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,カルボキシメチルスターチナトリウム(商品名:グリコリス,ロケットジャパン)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0060】
比較例17
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,カルボキシメチルスターチナトリウム(商品名:グリコリス,ロケットジャパン)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0061】
比較例18
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)84.5部,ヒドロキシプロピルスターチ(商品名:HPS,日澱化学)5部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0062】
比較例19
ファモチジン(コーア商事)10部,パラチノース(商品名:galenIQ,樋口商会)69.5部,ヒドロキシプロピルスターチ(商品名:HPS,日澱化学)20部,ステアリン酸マグネシウム(商品名:ステアリン酸マグネシウム,太平化学産業)0.5部を混合し打錠用剤を得た。実施例1と同様に打錠して直径7mm,重量100mgの錠剤を調製した。
【0063】
試験例1(硬度試験)
上記、実施例および比較例で得られた錠剤を錠剤重量硬度厚み試験による硬度試験に供した。
【0064】
<試験方法>
得られた各試料から無作為に20錠を採取し、錠剤重量硬度厚み測定器(TM5−5:菊水製作所製)により、湿度27%の条件下で、錠剤の重量、硬度、および厚みを測定し、各試料の平均値を算出した。上記測定器により測定される硬度は、各錠剤を直径方向に加圧し、錠剤が割れたときの力の大きさ(kgf)である。
【0065】
<試験結果>
この試験の結果を表1に示す。
【表1】

【0066】
錠剤の製造工程および流通面から、硬度は3kgf以上が好ましいところ、本発明の実施例1〜9により得られた錠剤はすべて目標の3kgf以上の硬度を得ることができた。
試験例2(崩壊性試験−1)
【0067】
さらに、各実施例および比較例で得られた錠剤を下記の崩壊性試験に供した。
【0068】
<試験方法>
崩壊性試験は下記の2種類の試験方法で確認した。
(1)崩壊試験法
第15改正日本薬局方一般試験法記載の崩壊試験法に従い測定した。サンプル数は各試験区につき6錠とし、各試料の平均崩壊時間を算出した。
(2)水中試験法
水中試験法は直径または内径100mmのシャーレの中央にフィルターペーパー(ADVANTEC製、5A、90mm)1枚をセットし、食用赤色3号を加えた蒸留水3mlを加えたものを使用した。
フィルターペーパーの中心部に試料を静置し、試料に色素が完全に染み込んだ時間を崩壊時間として計測した。完全に染み込んだという判断は、目視にて錠剤全体が着色した時点によって判断した。サンプル数は各試験区につき3錠とし、各試料の平均値を求めた。
【0069】
<試験結果>
この試験の結果を表2に示す。
【表2】

【0070】
この結果より、崩壊剤の種類の中では、カルメロースの崩壊性が高く、さらにカルメロースの添加量を10%(w/w)以上とすることにより格段に高い崩壊性が得られることがわかった(比較例1、実施例2〜4参照)。
試験例3(崩壊性試験−2)
【0071】
さらに、各実施例および比較例で得られた錠剤の崩壊性に対するカルメロースの効果を調べるために実際にパネラーをもちいて崩壊性試験に供した。
【0072】
<試験方法>
健康な成人男性3人をパネラーとして、口腔内に水無しで各錠剤を含ませ、崩壊錠が口腔内の唾液のみで完全に崩壊、分散するまでの時間を測定した。
【0073】
<試験結果>
この試験の結果を表3に示す。
【表3】

【0074】
この結果から、カルメロースを10%(w/w)以上含むことにより、短時間で錠剤が崩壊することがわかる。さらに糖アルコールを造粒物の状態で含むことにより一層短時間で錠剤が崩壊することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の崩壊錠により、従来の崩壊錠に比べて実用的で優れた口腔内での崩壊性を有する口腔内速崩壊錠が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分、および全体に対して10%(w/w)以上のカルボキシメチルセルロースを含有する口腔内速崩壊錠。
【請求項2】
第15改正日本薬局方記載の崩壊試験法により測定される、崩壊時間が90秒以下のものである請求項1に記載の崩壊錠。
【請求項3】
錠剤重量硬度厚み測定器(菊水製作所製,TM5−5)を用いて湿度27%の条件で錠剤を直径方向に加圧して測定したときの硬度が3kgf以上である請求項1または2に記載の崩壊錠。
【請求項4】
さらに、糖アルコールを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の崩壊錠。
【請求項5】
糖アルコールがマンニトール、パラチノース、およびソルビトールからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の崩壊錠。
【請求項6】
さらに、糖を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の崩壊錠。
【請求項7】
糖が乳糖である請求項6に記載の崩壊錠。
【請求項8】
糖、糖アルコールまたはその両方が造粒物の状態で含有されている請求項1〜7のいずれかに記載の崩壊錠。

【公開番号】特開2008−285434(P2008−285434A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130892(P2007−130892)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(592235075)大正薬品工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】