説明

口腔外の歯科補綴物の製造方法および製造装置

【課題】口腔外で製造される歯科補綴物の製造時間が、有意に短縮される製造方法、製造装置、コンピュータプログラム、及び設備を提供する。
【解決手段】基体300を提供すること;前記基体の回転研削;および、前記基体の研削を含む方法とする。さらに、フライス加工工程が可能である方法とし、又歯牙交換部品の製造のためのデータの受け取り;前記基体の回転板上へのクランプ固定;および、完成した歯牙交換部品の旋削する方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科補綴物の製造方法および製造装置に関する。特に、本開示は、基体、特にロッド状の基体を機械加工することによる、口腔外で製造される歯科補綴物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本質的に、修復歯科学において、例えばカリエスによる硬組織欠損を有する歯の修復には、2つの方法がある。1つは、欠損をプラスチック充填剤を用いて、その歯で直接処置する方法であり、欠損のある歯材はドリルで除去した後、液体または粘性の充填剤で充填する。充填剤を硬化および後処理した後は、さらなる治療的処置は不要である。
【0003】
対照的に、本開示は、口腔外で製造された歯科補綴物に関する。これらとしては、小型セラミックの橋脚、インレー、オンレー、ベニアおよびクラウンが挙げられる。これらとして、例えばインプラントのような、骨に固定する設計の締結手段は含まれない。ブリッジは歯全体の代替として働き、ブリッジに隣接する歯は、クラウンを持ち上げるように処置される。口腔外で製造される治療媒体については、治療媒体の製造は口腔の外部で行われ、製造に必要な情報は、慣用の鋳造化合物を用いて口腔内部で収集するか、スキャナを用いて口腔内で測定する。治療媒体は、要すれば歯科医からのさらなる情報で補完した、これらの仕様に基づいて製造する。歯科医は、リン酸亜鉛セメントのような特殊セメント等で、処置した歯に完成した治療媒体を取り付ける。
【0004】
従来技術では、歯科補綴物は、例えば注がれる。この目的のため、歯科医が取った鋳造物またはこの形状に基づく鋳型に、例えば金等の液体材料を流し込む。通常、歯科医から歯牙交換部品の製造を担当する歯科技工士に、例えば所望の咬合表面構造のさらなる仕様が預けられる。歯牙交換部品用の多数の材料は、金属、セラミックスまたは複合材料である。これらの材料の融点は、通常、1,000℃を超える。
【0005】
本出願は、機械的な機械加工工程よって製造される歯牙交換部品に関する。機械加工は、チップの形状に、過剰な材料を除去することによって材料を所望の形状とする、全ての機械的作業工程を含む。
【0006】
従って、従来技術では、好適な高さのディスクをフライス加工して製造する。これを図1に示す。フライス盤を用いて、高さが例えば10 mm、直径が例えば10 cmのディスクから、約10〜30の多数の歯牙交換部品をフライス加工する。図1は、フライス加工前のこのようなディスクを示す。フライス加工される部品を考慮して、好ましくは、重要なディスクのレイアウトを選択し、次のフライス加工において個々の歯牙交換部品をフライス加工する。図2に示す通り、例えば、より小さなバリ穴210を生じるより小さな歯牙交換部品があり、また、より大きなバリ穴220または230を生じる、例えばいくつかの歯に連結するブリッジに関係するためのより大きな歯牙交換部品がある。従って、目標は、ディスクに残る材料240の量ができるだけ少なくなるように、フライス加工の位置決めすることである。
【0007】
フライス加工の間、歯牙交換部品が最終的な形状になるまで、先のとがったフライスヘッドを有する回転式精密切削機械によって、ディスクから材料を除去する。加えて、歯牙交換部品とディスクとの連結に少なくとも2つのアンカーが残されることもあるが、これは歯牙交換部品がディスクに細く結合することを意味し、従って、歯牙交換部品は確実にディスクに残る。そのような方法では、例えば、アンカーでディスクに依然固定された、フライス加工した歯牙交換部品を有するディスク全体が歯科技工室または歯科医に運ばれ、その後、歯科技工士または歯科医は、フライス加工機械も用いて、ディスクから歯牙交換部品を除き、患者に適合させるだけでよい。
【0008】
しかし、この方法は時間がかかり、従って費用がかかる。歯牙交換部品当りにかかる典型的な所要時間は約15分である。材料の最適利用は殆ど達成されず、ディスクに残る余剰材料が最少になるようにバリ穴を配置する際に、多くの時間が費やされる。加えて、いくつかの歯牙交換部品は、全ての場所がディスクの上または下から容易に接近できるようには構成できない。最終的に、このことからバリ穴が比較的大きくなり、少なからぬ数のこれらのバリ穴は、フライス加工してもフライス加工機が下層の部品にアクセス可能になるだけである。それにより、多くの材料が消費されるだけでなく、同時に非常に長い時間が費やされる。
【発明の概要】
【0009】
従って、本開示が上記の問題点を少なくとも一部は克服することが望まれる。この目的のため、1つの側面では、基体を提供すること、基体の回転研削および研削を含む、歯牙交換部品の口腔外の製造方法が提示される。
【0010】
提示された方法により、特に時間効率的な歯牙交換部品の製造方法が可能になる。従来技術で要した最長15分の時間は半分に短縮することも可能であり、これは回転研削と研削の組み合わせにより、短時間で材料の高度の浸食が達成されるためである。加えて、基体の選択により、歯牙交換部品当りに使用する材料の量も削減し得る。このことは、より詳細に記載するロッドについて特に当てはまるが、ロッドは本書では「棒」と同じ意味で使われる。
【0011】
別の側面では、口腔外の歯牙交換部品の製造装置が提供され、装置は回転研削のための設備と研削のための設備とを含む。
【0012】
さらなる有利な態様、さらなる展開および開示の詳細は、従属クレーム、説明および図面から明らかであろう。
【0013】
製造される歯牙交換部品は、代表的には、個々に製造される歯牙交換部品であり、特に単一のクラウンおよび/または複合(multi-unit)のブリッジである。特に、製造される歯牙交換部品は、多数の歯牙交換部品について同一の形状を有しない。通常、製造される歯牙交換部品は、例えばインプラント等の顎骨中に固定するための装着物ではない。
【0014】
本書において「回転研削」という用語は、「旋削(turning)」と同義に用いられる。DIN 8580によれば、これは、幾何学的に規定された切れ刃の形状を用いた、主たる群の分離および群のチップ化を言う。DIN 8589によれば、旋削は、密閉型で一般的には円形の切断動作、および、切断方向に対して垂直な面におけるいずれかの送り運動を伴う、チップ化である。切断動作の回転軸は、送り運動にかかわらず、ワークピースに対するその位置を保持する。本書における回転研削の設定は、特に、歯牙交換部品が製造される基体の回転を含む。
【0015】
回転研削としては、正面旋削、切断旋削、水平旋削、側面旋削および/または総形旋削が挙げられる。本書に記載した開示の態様としては、特に総形旋削が挙げられることから、例えば歯牙交換部品において形成される溝およびノッチ等の、コンピュータ制御の構造も挙げられる。従って、回転研削による成形は、代表的には、回転対称的に行われることに注目すべきである。
【0016】
研削は、研削材で面を機械加工するチップ化製造工程である。DIN 8580では、研削は分離の主要なグループに属し、幾何学的に定義されない刃先を用いる機械加工類の群に属する。回転研削と対照的に、研削の間、刃先は基体に反して、典型的には迅速に動き出し、基体は典型的には静止している。
【0017】
しかし、基体は、例えば毎分5および500回転の間の回転速度のような、典型的には低回転速度で回転することも可能である。研削用の刃先の好適な制御との組み合わせにより、例えば、基体を卵型(oval)にすることもできる。
【0018】
本書に記載した態様では、研削のための刃先は回転対称的であり、回転運動する。動作原理は、特に、回転研削(縦の回転研削または垂直回転研削)である。実施態様では、研削のための刃先は、直径が少なくとも2 cm、典型的には少なくとも3 cmである球体である。接着剤および粒子よりなる、研削のための刃先は、FEPA F220からFEPA H80の間の典型的なふるいサイズを有する。
【0019】
旋削中の回転速度は、典型的には毎分500および5,000回転の間であるため、基礎片はこの速度で回転する。研削の間、研削面の回転速度は、典型的には、毎分少なくとも500回転または少なくとも2,000回転の間である。これは、通常、研削ディスクの直径によって決まる。従って、例えば直径が15〜25 mmの場合は、回転速度は毎分2,000〜30,000回転であってもよく、直径が200〜300 mmの場合は、回転速度は毎分500〜600回転であってもよい。
【0020】
本書に記載した態様では、方法は、1以上の以下の追加工程を含む:
− 回転装置において基体をクランプで固定する工程;および/または
− 基体をフライス加工する工程。
【0021】
迅速かつ効果的な大型材料の浸食は、回転研削によって行うことができる。フライス加工の場合、同様のアブレーションに匹敵する時間は、回転研削の間に必要とされる様々な時間となるであろう。加えて、回転研削の間、切断圧力は、通常、フライス加工の間よりも小さいが、このことは材料および製造される歯牙交換部品に有利である。典型的には、旋削により研削される材料の歯牙交換部品当りの量は最大化される。
【0022】
実施態様では、先ず、基体の回転研削を行う。基体は、典型的には回転対称的であり、回転軸(本書では「軸」と記す)を有し;基体は特に円筒形またはロッド状である。このような棒は、例えば連続的鋳造法で製造され、0.25 mおよび2.0 mの間の長さであってもよい。
【0023】
研削は、典型的には第二の工程として行う。また、研削により材料の高度な浸食が可能になり、切断圧力がほぼ無くなる。旋削と異なり、研削は回転対称的な形状化に限定されず、材料の局部的な浸食が可能になる。
【0024】
歯牙交換部品を製造するための基体のフライス加工は、精密な作業工程として行われる。フライス加工は、適宜の場所で局所的に行われ、一方回転研削により、歯牙交換部品は回転対称的に構造化される。旋削とは対照的に、フライス加工の間にチップ除去に必要な切断動作は、工作台にクランプでしっかり固定された基体に関して、切削工具の回転により生じる。しかし、研削とは対照的に、切削工具はより小さいサイズの回転体であり、例えば直径が最大10 mm、典型的には最大5 mmまたは最大3 mmのような回転体である。形状化(shaping)に必要な送り運動は、設計によって、工作台を動かすか、基体に対するフライス加工工具の動きによって達成され得る。
【0025】
製造される歯牙交換部品は、当然、基体の直径から製造可能な寸法としなければならない。回転研削により、基体は、製造される歯牙交換部品の最大直径に対応するサイズに縮小する。典型的には、この回転研削としては正面旋削および/または水平旋削が挙げられる。
【0026】
さらに、回転研削または研削は、フライス加工の後に行うことも可能である。例えば、最初に、回転研削または研削工程において、迅速かつ効率的な材料の浸食を行ってもよく、ここで所望の構造の正確なフライス加工を行う。それに続いて、例えば切断旋削または切断部近くの旋削を行い、その後に再度回転研削して、例えば基体から製造された歯牙交換部品を脱着する。この切断旋削による脱着もまた迅速に進行し、フライス加工より優れる。さらなる態様では、歯牙交換部品ごとに、旋削およびフライス加工を多数連続して行う。
【0027】
製造される歯牙交換部品ごとに、典型的な態様では、基体は最初に、例えば、水平旋削または正面旋削によって製造される歯牙交換部品の最大直径にチップ化する。研削によって、さらなる材料の浸食を行う。精密な構造化のため、さらなる工程において、最終的なフライス加工を行ってもよい。
【0028】
本発明の方法は、さらに、基体を回転板に取り付けることを含む。基体は、例えば、回転板に固定されたクランプ装置に取り付け得る。本書で理解される意味において、回転板は、それ自身および基体をできる限り予め特定できる速度で回転させるために構成される基礎である。加えて、回転板は、例えば固定された位置で基体の研削および/またはフライス加工を実施するために、典型的には固定されてもよい。
【0029】
代表的な態様では、基体は回転対称的であり、特に円筒状である。基体は、例えばロッドであり、長さが少なくとも10 cmであり、典型的には少なくとも20 cmまたは少なくとも50 cmである。ロッドが長いほど、ロッドから製造し得る歯牙交換部品が多くなる。同時に、回転板にロッドを取り付ける労力が減る。
【0030】
本書に記載した態様では、基体は、コバルト・クロム合金、特にクロム・コバルト・モリブデン合金よりなる。製造者によって、基体は、コバルト約62〜66%、クロム約27〜31%、モリブデン約4〜5%および微量の炭素、ケイ素、マンガン、鉄、および/または他の成分を含有する。特に好ましいものは、ケラジェン(Keragen)(登録商標)というロッドであり、これは特に連続鋳造法で製造されたものであり、そのため、空洞および気泡がない。ケラジェン(登録商標)はコバルト・クロム合金であり、モリブデンを含有しない。これは、丈夫で耐性の高い材料であることが判っている。典型的な直径は7 mmと20 mmの間であり、特に、8 mm、9.5 mmまたは12 mmなど、8 mmと12 mmの間である。それらは典型的には、連続鋳造、ガラス鋳造によって、または焼結HIP(熱間等静圧圧縮成形(Hot Isostatic Pressuring))法によって製造された。よって均一性の程度が高く、空洞および気泡が無いかほとんど無い。
【0031】
少なくとも1,200℃という高融点のため、コバルト・クロム合金で作られる歯牙交換部品は、しばしばチップ除去による機械加工によって製造される。コバルト・クロム合金は非常に硬いことから、口腔外科において、完全に耐食性であり、唾液または食物の影響で口内は全く変色しない。患者におけるアレルギー反応の割合は少なく、その適合性は高い。ある医療制度では、これらの合金の義歯の費用は保険でカバーされ、一方、金、プラチナまたはチタン等の生体材料の費用はカバーされないことは、さらなる利点である。
【0032】
実施態様では、本発明の方法は、一部または全体がコンピュータによって実施される。従って、コンピュータは、開示に従ってより旋削および/または研削を制御し、場合により、例えばフライス加工等もさらに有する。特に、コンピュータは、例えばWorld Wide Web等のネットワークに接続してもよく、これにより、所望の歯牙交換部品がどのように見えるはずであるかについて、データを受け取る。例えば、このようなデータは、STLファイルの形態でコンピュータに転送してもよい。コンピュータは、例えばマウスおよび/またはキーボード等のインプット装置、例えばモニター等のディスプレイ装置、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置および、例えばハードドライブである常設メモリおよび/または例えばRAM(ランダム・アクセス・メモリ)である揮発性メモリ等の記憶装置を有してもよい。コンピュータは回転研削機を制御し、本書に記載した態様では、少なくとも1つの回転チゼル、1つの回転板、および棒をクランプする固定手段を有する、他の全ての本書に記載した態様と結合できる。また、コンピュータはフライス加工ツールも制御することが可能で、それを活用して、歯牙交換部品への最終作業が行われている。
【0033】
典型的には、本開示による方法は、部分的または完全に自動的に行われる。それにより、処理業者、例えば歯科技工士が要する労働時間は短縮される可能性があり、従って費用が減じられる。
【0034】
実施態様では、本発明の方法は、歯牙交換部品を基体から切断することも含む。切断は、典型的には、歯牙交換部品の所望の構造を完成した後に行う。
【0035】
典型的には、製造される各歯牙交換部品は個別に製造される。従って、提示する本発明の方法は、常に同一である歯科の構造化ワークピースの大量生産には関せず、個々の仕様書から形成される歯牙交換部品に関する。この理由などにより、歯牙交換部品を製造するため、回転研削と研削とを組み合わせることは、当該技術水準においては考慮されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下に、添付した図面を参照して本開示を例示する。
【図1】図1は、加工前の、歯牙交換部品の製造のための技術水準による基板を示す。
【図2】図2は、歯牙交換部品をフライス加工した後の、歯牙交換部品の製造のための技術水準による基板を示す。
【図3】図3は、本開示による方法で使用するめの、基体の可能な態様の例を示す。
【図4】図4は、本開示による装置の可能な態様を模式的に示す。
【図5】図5は、本開示による装置の可能な態様を模式的に示す。
【図6】図6は、本開示による任意の工程に従って、仮想の包埋の可能な態様を模式的に示す。
【図7】図7は、本開示による任意の工程に従って、仮想の包埋の可能な態様を模式的に示す。
【図8】図8は、本開示による任意の工程に従って、仮想の包埋の可能な態様を模式的に示す。
【図9】図9は、本開示による、旋削、研削およびフライス加工を用いる材料の浸食の一例を図示する。
【図10】図10は、本開示による方法の可能な態様を示す。
【図11】図11は、本開示による装置に従って、可能な態様を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の図面において、同一の参照番号は同一の要素を指す。
【0038】
図3は、本開示による方法で使用するための、基体の1つの可能な態様を、例示的に示す。本開示による、例えばクロム・コバルト合金よりなるロッド状の基体は、旋削により歯牙交換部品の製造に使用される。ロッド状基体の典型的な長さは、2 m以下である。
【0039】
それにより、本発明の方法は、図4に図示される態様によって以下の通り機能する:基体300は、例えば、回転板400上のクランプ装置410によって固定される。回転板はモーターで動き得る。回転速度は、理想的な切削速度に適合させるべきである。
【0040】
例として模式的に、切削チゼル420および430を図4の態様中に示す。別の態様では、切削チゼルを1つのみ使用し、これは任意に位置的および方向的に調節可能である。図4の表現は、2つの異なる方向に向けた切削チゼルを表現するもの、または単に、時間内の2つの異なる点における1つの切削チゼルを表現するものと見なされる。
【0041】
本書に記載した態様では、方法は正面旋削を含んでもよい。このことは切削チゼル420を有する図4にも示される。正面旋削の間、切削チゼルは基体の軸方向に配向し、切削チゼルの運動方向(「送り方向」)は、基体の軸に関して半径方向である。このことは、回転チゼル420の上部に描かれた矢印で示す。
【0042】
本発明の方法は水平旋削も含む。このことは、回転チゼル430を有する図4にも示される。水平旋削の間、切削チゼルは基体の軸方向に対して横方向に、即ちその径方向に配向し、送り方向は、基体の軸に関して軸方向である。このことは、切削チゼル430の横の矢印でも示す。
【0043】
特に、類似形態の反復生産では、同一の側面旋削を使用することも考えられる。側面旋削の間、切削体においてテクスチャは既に再生産され、切削チゼルと製造される歯牙交換部品との間には一時に1つの接触点だけではなく、おそらく切削する数mmの表面が存在する。このことも、歯牙交換部品の製造に要する時間を短縮する。
【0044】
さらに、図4の態様は切削ディスク440も示す。ここでの場合、切削ディスクの軸は、基体の軸に垂直であることが示される。態様において、切削ディスクの軸は、基体の軸と同軸上に位置する。
【0045】
図5はさらなる態様を図示する。回転研削に使用する回転チゼル420に加えて、示される配置はフライス加工に使用するフライス加工ヘッド500も含む。前述の通り、本書に記載した態様では、フライス加工工程を行う。加えて、基体に同軸の配置で研削するための研削ディスク440を示す。典型的には、フライス加工工程は、研削工程の後に行い、同様に回転研削工程の後に行うことがある。
【0046】
典型的には、この開示が関する工程は、部分的または完全に自動的に行われる。図6〜8を参照する、以下に記載する工程は、歯科技工士等の管理者が行ってもよく、またはコンピュータによるソフトウェア工程として引き継がれる。
【0047】
実施態様では、製造される全ての歯牙交換部品は、最初に仮想的な群に分け、それらの製造のため、群の全ての部材の最大ロッド径が同程度であることが必要である。従って、例えば、ロッド径が約8 mmで製造し得る小さな歯牙交換部品の群があってもよく、ロッド径約9.5 mmで製造し得る中サイズの歯牙交換部品の群、および、ロッド径約12 mmで製造し得る大きな歯牙交換部品の群があってもよい。典型的な異なる群の数は2、3、4、または5である。これもまた、特定の時間内に製造される歯牙交換部品の数に有意に依存する。群に分ける目的は、除かれる材料の量をできるだけ減らすことである。
【0048】
図6を例として引用すると、図中600と示される製造される歯牙交換部品を基体中に仮想的に配置する。本書に記載した他の態様と組み合わせてもよい態様では、製造される歯牙交換部品は、必要とされる物質の投入量が最小限になるように基体中に配置する。加えて、除かれる物質ができるだけ多く回転研削で除かれるように最適化し得る。さらなるフライス加工工程がある場合、除かれる物質がほとんどフライス加工で除かれないように最適化してもよい。
【0049】
この開示に関する方法における別の可能な最適化は、1つの基体から製造される歯牙交換部品の数を最大にすることに関する。例えば、製造される歯牙交換部品は、各部品を取る高さが最小になるように基体中に配置する。
【0050】
本発明の方法の1つの態様では、アップロードされたデータに基づいて、製造される歯牙交換部品を仮想的に基体中に配置する。このことは、図6に三次元的な眺望を提示する。図7は、それに適合する横断面を示す。製造される歯牙交換部品600は、縁への距離700および710が残るように基体300中に配置されることが明らかである。純粋な二次元の最適化では、距離700および710が同じサイズになるように旋削によって除かれる材料の量を最適化することが好ましいが、これは、縁への最小距離によって、歯牙交換部品が回転研削によってフライス加工され得る直径Dが決まるためである。
【0051】
本開示の態様では、三次元的最適化が実施される。基体は、例えば、種々の軸の高さまで種々の程度に研磨される。このことは図8に図示されるが、これは仮想的に適合した歯牙交換部品に沿った、基体の縦断面図を示す。模式的に図示した歯牙交換部品600は、下側の下向きに展開する領域よりも、上側の領域でより大きく拡張している(ここで、「上」および「下」という用語並びに以下の「左」および「右」という用語は、単に図面の引用を容易にしている)。旋削、特に正面旋削または水平旋削により、基体の種々の直径が種々の軸の高さに除かれてもよい。従って、図8は、上側の領域での左縁への距離850および右縁への距離800を示す。全体の最適化のため、距離800は距離850と同一ではないかもしれない。この高さで、回転研削は、距離800および850のより短い距離までのみ行ってもよい。
【0052】
図8に示す歯牙交換部品の態様では、下側の下向きに展開する高さでの旋削は、800および850のより短い距離に及ぶだけではなく、所望の形状に基づき、より迅速で材料親和性の回転研削によって、より大きな材料の浸食を行うことが明らかである。このように、図示した中間の高さでは、回転研削は距離810および860のより短い距離まで行い、より低い高さでは、回転研削は距離820と870のより短い距離まで行う。一般的には、このことは、各態様において、回転研削によって基体が高さに従って種々の直径までフライス加工することを意味する。典型的には、この後に別の研削工程があり、態様では、フライス加工によって材料をさらに浸食する。
【0053】
図9は、種々の方法による材料の除去を図示する。歯牙交換部品600は、示される横断面図を用いて製造する。材料は回転研削により、基体300から破線で記した円890まで除去する。それにより、多量の材料が時間的に効率よく除去される。多量の材料を除去したが、回転対称を用いてそれ以上除去できないものを、さらに研削により、片側の標線891および他の側の標線892まで除去する。これは、例えば、固定した基体を研削することによって実施し得る。また、少なくとも一部の材料を、研削により、回転する基体上で除去することも可能である。例えば、基体を低速回転(例えば、500回転/分未満)させる間、研削ディスクの接触圧を具体的に変化させることによって、卵型を製造してもよい。
【0054】
図9に示す態様では、フライス加工によって残部を除去する。他の態様では、可能な他の部分を、例えば、892で示す領域の大部分を研削によって除いてもよい。しかし、より繊細な輪郭、特に面取りした面およびくぼみは、通常、フライス加工を用いてのみ製造し得る。
【0055】
図10は、この開示に関する方法の態様による、代表的な手順を図示する。これは単に一例を示し、限定するものと解釈されない。示される個々の工程のいくつかは、省略するか、代案で解決してもよい。
【0056】
例示した方法900は、ブロック910でデータを受け取ることで開始される。これらは普通、少なくとも1つのファイル、例えばSTLファイルのような、通常は製造される歯牙交換部品について多数のファイルを含む。
【0057】
ブロック920では、受け取られたデータにより、製造される歯牙交換部品を任意に仮想的な群に分ける。既に説明した通り、種々のサイズの基体を必要とする様々な群を形成して、様々なサイズの直径を有する基礎ロッドで基体を製造してもよい。典型的な直径は、およそ8 mmであり、時に12.5 mm以下である。例えば、最大径が8 mmである、製造される歯牙交換部品の第一の群を形成してもよく、最大径が9.5 mmである、製造される歯牙交換部品の第二の群を形成してもよく、最大径が12 mmである、製造される歯牙交換部品の第三の群を形成してもよい。任意の工程であるグループ化により、材料のさらなる最適化が可能になる。
【0058】
次のブロック930として、製造される歯牙交換部品は、選択された基体に仮想的に包埋される。この包埋は、手動またはコンピュータによって実施し得る。普通、上記の最適化条件が実施される。
【0059】
仮想的な包埋では、歯牙交換部品が最終的に製造される。ブロック940では、第一の工程において、旋削により回転対称的な材料の浸食を実施する。これは、基体のそれぞれの軸高について、その直径まで行い得る。標準的なこの工程では、旋削によって最大限の材料の浸食を規則的に達成することが可能である。
【0060】
次に、ブロック950では、付加的な工程において基体の研削を行う。この目標は、大部分の非回転対称的な材料の浸食を行うことである。
【0061】
その後、ブロック960において、さらなるチップ化のフライス加工を行う。フライス加工は、手動またはコンピュータ制御で行い得る。フライス加工により正確な局部の構造化が可能である。
【0062】
基本的に、同一の歯牙交換部品について、回転、研削およびフライス加工は交互に行ってもよく、または個々の工程を繰り返してもよい。さらに、構造体に対して、研削およびフライス加工を並行して行うことも考えられる。
【0063】
完了後、歯牙交換部品の所望の構造の可能な最大限まで、基体から分離する。これは、切断旋削またはフライス加工によって行うことができ、図9中、ブロック960で示す。切断の間、さらなるクランプユニット(示さず)で歯牙交換部品を押えることが可能である。クランプユニットは、手動またはコンピュータで制御されてもよく、歯牙交換部品を保管場所またはさらなる加工のために最終的に必要とされる場所に直接運ぶために使用してもよい。
【0064】
さらに、製造される歯牙交換部品によっては、これらの工程を繰り返す。例えば、次に製造される歯牙交換部品の仮想的な包埋は、ブロック930で直接連続してもよい。歯牙交換部品の製造後、基体は、典型的には交換する必要はなく、いくつかの、通常少なくとも10の歯牙交換部品の製造に使用してもよい。
【0065】
最後に、図11は1つの態様を示し、説明のためコンピュータ1000を示す。普通、コンピュータは、図11に模式的に示す回転切断設備である回転チゼル430、および図11に模式的に示す研削設備である研削ディスク440を制御する働きをする。加えて、コンピュータは、図11に示すフライス設備であるフライス工具500を制御する働きをしてもよい。実施態様では、コンピュータは、図11に400として模式的に示す回転板のために働いてもよい。コンピュータは典型的にはインターネットに接続する。
【0066】
本発明の方法および説明した装置は、歯牙交換部品の製造のために設計される。それにより、材料除去装置(回転チゼル、研削カッター、フライス装置)は、特にクロム・コバルト合金である、硬度が非常に高い材料を扱う能力を有さなければならない(ブリネル硬度400 kg/mm2以下またはDIN EN ISO 6506-1ステータス: 03/2006:400 HBW 10/30001)。材料除去装置が、精度が5μmまたはさらに3μmである構造を製造する能力がある適合性も同様に基本的である。
【0067】
ここに記載した説明により、例を用いて最良の形態を含む本発明が開示され、また、全ての当業者は、あらゆる装置またはシステムの製造および使用、およびあらゆる援用方法の実施を含む、本発明の実施が可能になる。様々な具体的な態様を上記に開示したが、当業者は、特許請求の範囲の精神および範囲により同等に効果的な修飾が可能であることを認識するであろう。特に、上述の態様の相互に非排他的な特長は、互いに組み合わせてもよい。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が行う他の例を含んでもよい。このような他の例は、特許請求の範囲の文言的な用語と異ならない構造的要素を有する場合、または、特許請求の範囲の文言的な用語と実質的に異ならない同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙交換部品の口腔外の製造方法であって、
− 基体(300)を提供すること;
− 前記基体の回転研削;および
− 前記基体の研削
を含む、方法。
【請求項2】
基体が回転対称的、特にロッド形状である、前項のうちの一項による方法。
【請求項3】
ロッド形状の基体の直径が少なくとも8 mm、任意に少なくとも9.5 mmである、請求項2による方法。
【請求項4】
さらに
− 前記基体のフライス加工
を含む、前項のうちの一項による方法。
【請求項5】
基体がクロム・コバルト合金よりなる、前項のうちの一項による方法。
【請求項6】
方法が以下の連続に従って実行される、前項のうちの一項による方法:
− 前記基体の回転研削;
− 前記基体の研削;および
− 前記基体の任意のフライス加工。
【請求項7】
さらに1以上の以下の操作を含む、前項のうちの一項による方法:
− 歯牙交換部品の製造のためのデータの受け取り;
− 前記基体の回転板上へのクランプ固定;および
− 完成した歯牙交換部品の旋削。
【請求項8】
回転研削、研削、および任意のフライス加工を、5μmの精度、任意に3μmの精度で行う、前項のうちの一項による方法。
【請求項9】
前記基体の研削が、前記基体が回転する間に実施される、前項のうちの一項による方法。
【請求項10】
データ処理装置で実行するコンピュータプログラムであって、前項のうちの一項による方法のための実行可能なコマンドを含む、コンピュータプログラム。
【請求項11】
基体(300)からの歯牙交換部品の口腔外製造装置であって、
− 前記基体(300)の回転研削のための設備(420、430);および
− 前記基体の研削のための設備(440)
を含む装置。
【請求項12】
請求項11による装置であって、前記基体が回転対称的、特にロッド状であり、直径が少なくとも8 mm、任意に9.5 mmであり、かつ任意にクロム・コバルト合金よりなる、装置。
【請求項13】
請求項11−12による装置であって、
− 前記基体のフライス加工のための設備(500)
をさらに含む、装置。
【請求項14】
請求項12−13のうちの一項による装置であって、1以上の以下の要素をさらに含む、装置:
− 製造される歯牙交換部品のデータを受け取り、および/または、前記基体の回転研削のための少なくとも1つの設備、研削のための設備、およびフライス加工のための設備を制御するための、コンピュータ(1000);および
− 前記基体を回転板上に固定するためのクランプ設備(410)。
【請求項15】
請求項11〜14のうちの一項による装置であって、回転研削のための設備、研削のための設備、および/またはフライス加工のための設備が、少なくとも5μm、任意に3μmの精度でチップ化するために設定される、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−130698(P2012−130698A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278251(P2011−278251)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(511309506)