説明

口腔湿潤剤および義歯安定剤

【課題】長時間にわたって口腔内を湿潤状態に保持でき、カンジダ症に対しても効果のある安全な口腔湿潤剤および義歯安定剤を提案すること。
【解決手段】義歯安定効果のある口腔湿潤剤は、主要成分として、クロモジから抽出した精油と、昆布水あるいはアルギン酸とを含むことを特徴としている。クロモジから抽出した精油には、オキサイド類(酸化物類)・モノテルペンアルコール類・エステル類・ケトン類・フェノール類などの油成分が含まれており、これらの成分が保湿効果およびカンジダの殺菌効果を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内を湿潤状態に保持するための抗菌および抗真菌的な口腔湿潤剤に関し、特に、義歯を装着している場合の口腔内の保湿および義歯の維持力向上を目的とした義歯安定剤として用いることのできる口腔湿潤剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内は通常は唾液によって適度な湿潤性が保たれ、また唾液の抗菌および抗真菌作用により良好な口腔環境が保たれている。しかしながら、高齢者では、何らかの原因で唾液の分泌量が減少して長期に亘って口腔内が乾燥状態になる場合があり、義歯装着者でも口腔が乾燥している場合がある。口腔内が長期に亘って乾燥状態に陥ると、口腔乾燥症と呼ばれる様々な症状や機能の障害が起き易い。
【0003】
また、口腔内が乾燥すると、単に口腔乾燥感を覚えるだけでなく、舌痛、味覚異常、口腔粘膜の炎症、舌や口角の亀裂などを引き起こす場合があり、さらには、鷲口瘡、口角炎などのカンジダ症を引き起こす場合もある。また、義歯装着者では義歯と粘膜の摩擦力の増加に伴い、口腔粘膜の炎症および疼痛が惹起され、また、義歯の維持力の低下がみられる。
【0004】
なお、義歯用口腔湿潤剤としては特許文献1、2が知られている。
【特許文献1】特開2004−136102号公報
【特許文献2】特開2002−226315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、口腔内を長時間湿潤状態に保持でき、義歯装着者においては維持力向上にも効果があり、鷲口瘡、口角炎などのカンジダ症の発生も抑制できる安全な口腔湿潤剤および義歯安定剤を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、クロモジから抽出した精油が抗菌および抗真菌的に作用し、昆布水(アルギン酸水溶液)が口腔内を湿潤状態に保持できる作用効果があることに着目し、当該精油および昆布水を口腔湿潤剤の成分として利用したことを特徴としている。
【0007】
クロモジの根皮、材、枝、葉の成分は、腸炎、寄生性皮膚症、湿疹などに効果があることが知られており、また、香水、石鹸の香料としても用いられている。クロモジから抽出した精油には、オキサイド類(酸化物類)・モノテルペンアルコール類・エステル類・ケトン類・フェノール類などの成分が含まれており、それらの成分により、抗菌・抗ウイルス・消炎・鎮痛作用がある。しかしながら、従来においてはカンジダ症の原因菌への殺菌効果については何ら着目されておらず、本発明者等によって初めて着目され、これに基づき本発明を想到したのであり、鷲口瘡、口角炎などのカンジダ症に対しても効果がある。また、その他の菌類やウイルスの抑制および、消炎・鎮痛作用も期待できる。
【0008】
ここで、本発明の口腔湿潤剤は、クロモジから抽出した精油に加えて、昆布水あるいはアルギン酸を含むことを特徴としている。アルギン酸は長時間の保湿効果および義歯の維持力向上効果があるので、口腔湿潤剤の成分として用いるのに適している。
【0009】
本発明の口腔湿潤剤は、昆布水を含む場合は口腔湿潤剤100g当り、次の主成分から構成されている。
【0010】
昆布水:90〜99.5g
クロモジから抽出した精油:0.5〜5g
これらに加えて、防腐剤などを最大で5g程度添加される。
【0011】
また、アルギン酸を含む場合は口腔湿潤剤100g当り、次の成分から構成されている。
【0012】
精製水:75〜94.5g
クロモジから抽出した精油:0.5〜5g
アルギン酸:5〜20g
【0013】
次に、本発明の口腔湿潤剤はそのまま義歯安定剤として用いることができる。すなわち、本発明の義歯安定剤は、クロモジから抽出した精油を含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の義歯安定剤は、クロモジから抽出した精油と昆布水とを含むことを特徴としている。この場合、義歯安定剤100g当り、昆布水を90〜99.5g、および、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g含むようにすればよい。
【0015】
ここで、本発明の義歯安定剤は、クロモジから抽出した精油とアルギン酸とを含む組成としてもよい。この場合、義歯安定剤100g当り、精製水を75〜94.5g、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g、および、アルギン酸を5〜20g含むようにすればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保湿効果のある昆布水を母材として用いており、また楊枝に使用されているクロモジから抽出した精油を成分として含んでいるので、安全性が高くカンジダ症に対して効果のある口腔湿潤剤および義歯安定剤を調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を適用した義歯安定効果のある口腔湿潤剤の一例を説明する。
【0018】
本例の口腔湿潤剤の含有成分および含有量は100g当り次の通りである。
【0019】
(実施例1)
昆布水:90〜99.5g
クロモジから抽出した精油:0.5〜5g
防腐剤など:0〜5g
【0020】
(実施例2)
精製水:75〜94.5g
クロモジから抽出した精油:0.5〜5g
アルギン酸:5〜20g
【0021】
ここで、いずれの場合においても、クロモジの精油だけでは非水溶性であるので、ひまし油を加え水溶性の混合精油を調合した。クロモジとひまし油の混合精油に、昆布水もしくはアルギン酸水溶液を加えて、口腔湿潤剤を調製した。
【0022】
本発明者等は、この口腔湿潤剤を用いて実験を行ったところ、良好な口腔湿潤性を確保でき、また、カンジダ症に対して効果があり、しかも、義歯の維持力向上効果が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロモジから抽出した精油を含むことを特徴とする口腔湿潤剤。
【請求項2】
請求項1において、
更に、昆布水を含むことを特徴とする口腔湿潤剤。
【請求項3】
請求項1において、
更に、アルギン酸を含むことを特徴とする口腔湿潤剤。
【請求項4】
請求項2において、
100g当り、昆布水を90〜99.5g、および、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g含むことを特徴とする口腔湿潤剤。
【請求項5】
請求項3において、
100g当り、精製水を75〜94.5g、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g、および、アルギン酸を5〜20g含むことを特徴とする口腔湿潤剤。
【請求項6】
クロモジから抽出した精油を含むことを特徴とする義歯安定剤。
【請求項7】
請求項6において、
更に、昆布水を含むことを特徴とする義歯安定剤。
【請求項8】
請求項6において、
更に、アルギン酸を含むことを特徴とする義歯安定剤。
【請求項9】
請求項7において、
100g当り、昆布水を90〜99.5g、および、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g含むことを特徴とする義歯安定剤。
【請求項10】
請求項8において、
100g当り、精製水を75〜94.5g、クロモジから抽出した精油を0.5〜5g、および、アルギン酸を5〜20g含むことを特徴とする義歯安定剤。

【公開番号】特開2008−36343(P2008−36343A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218277(P2006−218277)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506275265)
【出願人】(506275276)
【出願人】(506275368)
【出願人】(506275335)