説明

口部に栓体を装着するガラスびん

【課題】取外し具を用いて栓体をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のビードが割れるのを防止する。
【解決手段】口部外面上端部にリップ部が環状に膨出し、その下方に栓体外筒壁内周面下端部に形成された環状突条に係合する環状凹部が、その下方に環状に膨出するビードが形成されたガラスびんにおいて、ビード下面が水平面となす最小角度を50°〜65°にすると、取外し具の爪がビードに衝突したときにガラスに発生する応力が大きく減少し、ビードが割れる確率が著しく小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種飲料、調味料等の容器として使用するのに好適な、口部に栓体を装着するガラスびんで、使用後に取り外し器具により栓体を安全に取り外すにことができるもの関する。
【背景技術】
【0002】
びん口部に対し栓体を機械的に上方から一挙に打栓する場合、内容物である食用油、調味料、飲料等を消費した後にこれを容器から取り外すことは極めて困難であった。昨今は、びんを極力リターナブル化し、また、びんとプラスチック製の栓体とを分別回収し、資源をリサイクルする要請が高まり、下記特許文献1に示されるように、びん口部のリップ部直下に栓体を取り外すための縦溝を設け、栓体をびんから取り外しやすくしたガラスびんが提案されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、リップ部下方の傾斜面が水平面となす角度を30°〜50°とすることで、栓体を容易に取り外すことができ、かつ、栓体が不用意に外れることがない旨が開示されている。
【0004】
栓体を容易に取り外すための器具(取外し具)は、下記特許文献3、4などに開示されている。
【0005】
また、下記特許文献5には、ガラスびん使用後に、このような器具で栓体を取り外したときに、リップ部が割れにくいガラスびんが開示されている。
【0006】
図2は従来の丸形ビード、図3は従来の角形ビードの説明図である。丸形ビードはビード12の断面形状が円弧に近く、角形ビードは断面形状が丸形ビードよりも角張っている。ビード12下面が水平面となす最小角度は、従来20°〜43°であった。また、ビード直下の凹アール部13の曲率半径Rは約1mmであった。
【0007】
図7は、粗型で成形したパリソン4を口型で咥えたまま仕上型5の上に反転し、口型を開いてパリソン4を開放した状態を示している。パリソン4は、ビード12で仕上型5の内周部50に支えられるのと同時にパリソンの傾きが防止される。また、仕上型で最終吹製が完了したガラスびんをテイクアウトトングで取り出すとき、テイクアウトトングをビードに引っ掛ける。このようなビードの機能を正常に果たすため、ビード下面の最小角度は43°以下にしなければならないと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭56−84912号公報
【特許文献2】特開平11−348953号公報
【特許文献3】特開2003−237892号公報
【特許文献4】特開2003−2395号公報
【特許文献5】特開2010−241474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、消費者又はリサイクル業者が器具(取外し具)を用いて栓体をガラスびんから取り外す際、上記特許文献5のガラスびんによってガラスびん口部のリップ部が割れ、ケガをする事故は顕著に減少している。しかし、栓体をガラスびんから取り外す際にガラスびんのビードが割れる事故が起きている。
【0010】
出願人は、取外し具による栓体の取り外しにおいて、ガラスびん口部のビードが割れる原因を研究した結果、次のようなことが判明した。
【0011】
例えば、図1に示すような取外し具3で栓体2をガラスびん1から取り外す場合、取外し具3の先端の爪30を栓体2の外筒壁20下端に引っ掛けるのであるが、図1のように、爪30がビ−ド12の下部に引っかかり、矢印のように上方に引き上げることで、ビード12に破損が生じていると考えられる。
【0012】
なお、図1において符号10はリップ部、11は環状凹部、20は外筒壁、21は環状突条、22は注出筒、23は内筒壁である。ガラスびん1は、その口部外面上端部にリップ部10が環状に膨出し、その下方に栓体外筒壁内周面下端部に形成された環状突条21に係合する環状凹部11が、その下方に環状に膨出するビード12が形成されている。
【0013】
本発明は、取外し具を用いて栓体をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のビードが割れるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、口部外面上端部にリップ部が環状に膨出し、その下方に栓体外筒壁内周面下端部に形成された環状突条に係合する環状凹部が、その下方に環状に膨出するビードが形成されたガラスびんにおいて、該ビード下面が水平面となす最小角度が50°〜65°であることを特徴とする口部に栓体を装着するガラスびんである。(請求項1)
【0015】
前記最小角度のさらに好ましい範囲は55°〜60°である。(請求項2)
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラスびんは、取外し具を用いて栓体をガラスびんから取り外す際、ガラスびんのビードが割れるのを防止することができる。
また、ガラスびんの成形過程において、パリソンを仕上型上に開放したときにパリソンの傾きが殆ど発生せず、さらに仕上型で最終吹製が完了したガラスびんをテイクアウトトングでビードに引っ掛けて取り出すときも、支障なく取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】取外し具でガラスびんから栓体を取り外す説明図である。
【図2】従来の丸形ビードの説明図である。
【図3】従来の角形ビードの説明図である。
【図4】実施例のガラスびんのビード説明図である。
【図5】ビード下面最小角度と負荷比率の説明図である。
【図6】実施例のガラスびんと従来ガラスびんの断面比較図である。
【図7】仕上型上に開放したパリソンの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図4は、実施例のガラスびんのビード説明図である。ビード12の下面が水平面となす最小角度θは50°〜65°、さらに好ましくは55°〜60°である。この最小角度を従来より大きくしたため、ビード直下の凹アール部13の曲率半径Rを約2mmと、従来の2倍位にすることができる。凹アール部13の曲率半径Rを大きくすることで、取外し具の爪30が奧まで入りにくくなり、爪30がビード下面に衝突したときガラスに発生する応力が小さくなる。
【0019】
ビード下面の最小角度を65°にした場合、図7のようにパリソンを仕上型上に開放しても、仕上型に対するパリソンの傾きは許容範囲内で問題なく、また、最終吹製が完了したガラスびんをテイクアウトトングで取り出すときも問題ないことが確認された。
【0020】
図5の上段に示すのは、取外し具の爪30がビード下面に衝突したときの模式図である。爪30が太い矢印方向に動いてビード下面に衝突すると、ビード下面に上向きの力Fが作用する。力Fはガラス面に垂直な負荷Eとガラス面に平行な力Pに分割され、負荷Eによってガラスに応力が生じ、平行力Pによって取外し具の爪30がガラス面をスリップする。
【0021】
図5下段に示すのは、ビード下の最小角度θを変化させたときに負荷Eがどのように変化するかを表したもので、最小角度θ=25°のときの負荷を1として、負荷比率を縦軸にとっている。例えばθ=60°の場合、負荷比率は約0.55で、負荷がθ=25°の場合の約55%で、ビードはたいへん割れにくくなっている。さらに、最小角度が大きくなると平行力Pが大きくなり、取外し具の爪がスリップしやすくなるので、これによってもビードのガラスが割れにくくなる。
【0022】
図6は、θ=60°の実施例(左側)と、θ=43°の従来例(右側)にF=1kgfの力が作用したとき、ガラスに生じる最大主応力を比較したものである。実施例の最大主応力は7.5MPaで、従来例の最大主応力20.0MPaの約37.5%に大きく減少している。このため、栓体取り外し時にビードが割れる確率は10分の1以下になった。
【符号の説明】
【0023】
1 ガラスびん
10 リップ部
11 環状凹部
12 ビード
13 凹アール部
2 栓体
20 外筒壁
21 環状突条
22 注出筒
23 内筒壁
3 取外し具
30 爪
4 パリソン
5 仕上型
50 内周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部外面上端部にリップ部が環状に膨出し、
その下方に栓体外筒壁内周面下端部に形成された環状突条に係合する環状凹部が、
その下方に環状に膨出するビードが形成されたガラスびんにおいて、
該ビード下面が水平面となす最小角度が50°〜65°であることを特徴とする口部に栓体を装着するガラスびん。
【請求項2】
前記最小角度が55°〜60°である請求項1に記載のガラスびん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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