古紙再生装置のパルプ製造装置および古紙再生装置
【課題】小規模店舗等の室内にも設置可能な什器サイズの古紙再生装置を実現するパルプ製造技術を提供する。
【解決手段】一対の叩解円盤４１、４２が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間Ｒ（６０、６１）を備えてなり、叩解隙間Ｒ（６０、６１）は、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０，４５ａに始まるとともに、叩解円盤４１，４２の外周縁部に形成された排出口５１，４５ｂに終わる構成とされている。これにより、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間Ｒ（６０、６１）においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑で高い処理能力を有する叩解が実現する。
【解決手段】一対の叩解円盤４１、４２が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間Ｒ（６０、６１）を備えてなり、叩解隙間Ｒ（６０、６１）は、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０，４５ａに始まるとともに、叩解円盤４１，４２の外周縁部に形成された排出口５１，４５ｂに終わる構成とされている。これにより、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間Ｒ（６０、６１）においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑で高い処理能力を有する叩解が実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は古紙再生装置のパルプ製造装置および古紙再生装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置におけるパルプ製造技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【０００３】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【０００４】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【０００５】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100％再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【０００６】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から、本出願人は例えば特許文献１に記載されるような古紙再生装置を既に開発し提案している。
【０００７】
この古紙再生装置は、古紙再生工場等の大規模な古紙再生技術を、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な装置技術として実現したもので、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記パルプ製造部は、古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とからなる。
【０００８】
この叩解部においては、古紙パルプを叩解する摩砕機を配してなる古紙パルプ循環経路が形成されている。摩砕機は、叩解作用面を微小な叩解隙間をもって対向配置されるとともに、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤を備えてなる摩砕機の形態とされ、これら一対の叩解円盤の叩解隙間を調整する隙間調整手段を備える。
【０００９】
そして、古紙は、上記パルプ製造部の離解部による攪拌により離解・叩解されてパルプ化された後、上記叩解部によりさらに叩解されて微細化され、所望の古紙パルプとなり、その後上記抄紙部で抄紙されて再生紙となる。この場合、上記叩解部においては、摩砕機による叩解を経た古紙パルプを上記古紙パルプ循環経路で循環させながら叩解工程を行い、この叩解工程において、上記叩解円盤の叩解隙間を、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるようにすることで、叩解工程の初期から終期に至るまで一貫して円滑でかつ高効率な叩解を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１０】
【特許文献１】特開２０１０−１８０５１２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特に、上記古紙再生装置におけるパルプ製造部の構成技術をさらに改良して小型簡素化することにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現するパルプ製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
この目的を達成するため、本発明の古紙再生装置のパルプ製造装置は、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置において、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するものであって、古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とを備えてなり、この叩解部は、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、隣接して対向する一対の上記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、この叩解隙間は、上記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、上記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされていることを特徴とする。
【００１３】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
（１）上記叩解隙間は、上記対向する一対の上記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つの円環状叩解区域から構成され、最内径側の円環状叩解区域が上記供給口に連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域が上記排出口に連通されている。
【００１４】
（２）前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域から構成され、
内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている。
【００１５】
（３）前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域間に介在する円環状叩解区域が、前記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている。
【００１６】
（４）上記各円環状叩解区域において、対向する一対の上記叩解円盤の対向面に、複数の叩解刃が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなり、これら対向する叩解刃の刃先間隔は、上記最内径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最小とされている。
【００１７】
（５）上記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔は、上記パルプがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【００１８】
（６）上記叩解機は、上流側からの古紙パルプを供給する上記供給口および叩解された古紙パルプを下流側へ排出する上記排出口を有する叩解槽と、この叩解槽内に相対的に回転可能に設けられた上記少なくとも一対の叩解円盤と、これら叩解円盤を相対的に回転動作させる回転駆動源とを備えてなり、上記供給口から供給される古紙パルプが、上記叩解円盤間の叩解隙間を通過しながら、上記対向する叩解刃の協働作用により粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【００１９】
（７）上記叩解機は、上記叩解槽の内側面に固定的に設けられた固定側叩解円盤と、この固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、上記固定側叩解円盤の中心部位に、上記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、両叩解円盤間の叩解隙間の外周縁部が上記叩解槽の排出口に連通する出口とされている。
【００２０】
（８）上記叩解機は、上記叩解槽の対向する両内側面にそれぞれ固定的に設けられた一対の固定側叩解円盤と、これら両固定側叩解円盤間において、両固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、上記両固定側叩解円盤の中心部位に、上記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、上記３つの叩解円盤の外周縁部が上記叩解槽の排出口に連通する出口とされている。
【００２１】
（９）上記叩解部において、古紙パルプを叩解する上記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されるとともに、この古紙パルプ循環経路に古紙パルプを循環させる循環手段と、上記叩解機および循環手段を相互に連動して制御する叩解制御手段とを備えてなり、上記叩解制御手段により、上記叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされている。
【００２２】
（１０）上記離解部は、古紙を投入供給する古紙投入口および離解された古紙パルプを下流側へ排出する排出口を有する離解槽と、この離解槽内に回転可能に設けられた攪拌手段とを備え、上記古紙投入口から供給される古紙が、上記攪拌手段により水と混合攪拌されて、離解・叩解される構成とされている。
【００２３】
（１１）上記離解部は、上記離解槽内に水を供給する給水手段を備える。
【００２４】
（１２）上記離解槽の古紙投入口にシュレッダ手段が設けられて、上記古紙投入口から投入する上記古紙が、上記シュレッダ手段により予備的に裁断した後、上記攪拌手段により攪拌される。
【００２５】
（１３）上記古紙パルプ循環経路に、上記離解部の離解槽が含まれてなり、上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部の攪拌手段が駆動制御される構成とされている。
【００２６】
（１４）上記古紙パルプ循環経路に、上記叩解機により叩解された古紙パルプを貯留するリザーブ槽を含むバイパス経路が切替手段を介して接続されてなり、上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部の離解槽と上記バイパス経路のリザーブ槽を選択的に切替使用するように上記切替手段が駆動制御される構成とされている。
【００２７】
さらに、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、上記パルプ製造部は、前述したパルプ製造装置から構成されている。
【００２８】
好適な実施態様として、装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、上記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整手段を備え、このパルプ濃度調整手段は、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を上記叩解機による叩解効率に対応して調整する叩解濃度調整手段と、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を再生すべき再生紙の仕上紙質に対応して調整する抄紙濃度調整手段と、これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなる。
【発明の効果】
【００２９】
（１）本発明によれば、前工程の離解部で離解された古紙を叩解する叩解部が、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、隣接して対向する一対の上記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、この叩解隙間は、上記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、上記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされているから、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【００３０】
すなわち、離解・叩解すべき古紙の紙質は種々雑多で不均一である。古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置では、大型で非常に強力な動力源を備えた叩解機により、きわめて高い圧力下の高速回転により叩解が行われるため、叩解機の叩解隙間に古紙が詰まったりすることなく多量に円滑に流れて、所望のフィルブリル化した古紙パルプが製造され得る。
【００３１】
これに対して、什器サイズの古紙再生装置における叩解機では、求められる古紙パルプのフィルブリル化度が上記大規模な古紙再生プラントと同等に要求される一方で、叩解機の駆動源は自ずと小型で、古紙パルプを叩解隙間に送り込み通過させる推進力も小さく、このような条件下での叩解では、古紙パルプの叩解隙間で詰まり生じてしまうという問題があり、これを防止するため、例えば特許文献１に開示される叩解技術においては、前述したように、叩解部の摩砕機における叩解円盤の叩解隙間を、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるようにすることで、つまり、古紙パルプを摩砕機の叩解隙間に複数回循環流通させながら、この叩解隙間を徐々に狭くなるように制御することで、古紙パルプの叩解隙間での詰まりを防止しつつ、所望のフィルブリル化を実現している。
【００３２】
本発明においては、一対の叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間が構成されており、例えば２段階の連続した叩解工程を実行する場合には、先行する叩解隙間で粗叩解工程が実行されるとともに、後行する叩解隙間で仕上叩解工程が実行される。
【００３３】
具体的には、上記叩解円盤間の叩解隙間が、叩解前期の第１段階叩解工程区域においては、前工程の離解工程で離解された古紙パルプの繊維の大きさに対応した間隙寸法に設定されて、古紙パルプが叩解円盤の中心部に形成された供給口からこの叩解隙間に供給されて、粗叩解が行われながら、遠心力で径方向外方へ送り出されていき、続く叩解後期の第２段階区域においては、所定の仕上寸法の古紙パルプの繊維に叩解し得るつまりフィルブリル化し得る間隙寸法に設定されて、高圧下での仕上叩解工程が行われながら、排出口から排出されて、最終的に所望の繊維サイズの古紙パルプを得ることができる。これにより、非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【００３４】
また、上記叩解工程を経た古紙は繊維レベルまで分解されて（パルプ化）、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができる。
【００３５】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には特許文献１の叩解技術と同様に大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【００３６】
（３）また、上記叩解部において、上記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されて、上記離解部および叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされていることにより、古紙パルプの叩解が目的に応じて効率よく行われて、最適な叩解効果が得られる。
【００３７】
特に、上述した什器サイズの古紙再生装置ゆえの小さく狭い工程スペースに、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路を形成することが可能となり、什器サイズのコンパクトサイズの古紙再生装置においても、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となる。
【００３８】
（４）上記叩解技術を採用した古紙再生装置は、装置構造がコンパクトで、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であり、この観点からも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の実施形態１である古紙再生装置の全体概略構成を示す正面断面図である。
【図２】同じく同古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【図３】同古紙再生装置の叩解部の主要構成を一部断面で示す拡大正面図である。
【図４】同叩解部の主要構成部である叩解機の内部構成を示す拡大正面図である。
【図５】同叩解機の主要部を分解して示す図で、図５（ａ）は回転側叩解円盤を示す正面図、図５（ｂ）は叩解槽に装着された固定側叩解円盤を一部断面で示す正面図である。
【図６】同叩解機の叩解隙間の断面構成を示し、図６（ａ）は粗叩解工程域の断面構成を、図６（ｂ）は仕上叩解工程域の断面構成をそれぞれ示す。
【図７】同叩解部の古紙パルプ循環経路構成を示す回路図である。
【図８】同古紙再生装置のパルプ濃度調整部の構成を示すブロック図である。
【図９】同古紙再生装置の制御構成を示すブロック線図である。
【図１０】同古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【図１１】本発明の実施形態３である古紙再生装置の叩解機の主要部を分解して示す図で、図１１（ａ）は回転側叩解円盤を示す正面図、図１１（ｂ）は叩解槽に装着された固定側叩解円盤を一部断面で示す正面図である。
【図１２】同叩解機の叩解隙間の断面構成を示し、図１２（ａ）は粗叩解工程域の断面構成を、図１２（ｃ）は中仕上叩解工程域の断面構成を、図１２（ｃ）は仕上叩解工程域の断面構成をそれぞれ示す。
【図１３】本発明の実施形態４である古紙再生装置における叩解機の内部構成を示す拡大正面図である。
【図１４】本発明の実施形態５である古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００４０】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【００４１】
実施形態１
本発明に係る古紙再生装置が図１〜図１０に示されており、この古紙再生装置１は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙ＵＰを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙ＵＰとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【００４２】
古紙再生装置１は、図１０に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図１および図２に示すように、パルプ製造部２、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３、抄紙部４および装置制御部５を主要部として構成され、これら装置構成部２〜５が装置ケース６内に装置収容されてなるコンパクト設計とされている。
【００４３】
この装置ケース６は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース６は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、その外周部が化粧用ケースカバー６ａで被覆されている。また、装置ケース６の底部には移動手段としてキャスター９６、９６、…が設けられて、設置床面上を方向自在に移動可能とされている。ケース６の天板部には、古紙ＵＰを投入するための投入口７が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙ＲＰ、ＲＰ、…を受け取るための再生紙受取トレー１３５が取外し可能に設けられている。この再生紙受取トレー１３５には、装置ケース６の排出口１３６が臨んで設けられており、この排出口１３６から排出される再生紙ＲＰ、ＲＰ、…が順次積層状に受け取られる。
【００４４】
パルプ製造部（パルプ製造装置）２は、古紙ＵＰを離解し叩解して古紙パルプＵＰＰを製造する工程部位で、離解部１０と叩解部１１を備えてなる。
【００４５】
離解部１０は、古紙ＵＰを攪拌破砕して離解する工程部位で、離解槽１５、攪拌装置（攪拌手段）１６および給水装置（給水手段）１７を主要部として構成されている。
【００４６】
離解槽１５は、図２に示すように、その天井壁に、古紙ＵＰを投入供給する上記投入口（古紙投入口）７が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプＵＰＰを下流側へ排出する排出口９が設けられている。離解槽１５の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙ＵＰの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約９８リットルの水を加えて、Ａ４判のＰＰＣ（plain paper copier）古紙ＵＰを５００枚程度（約２０００ｇ）一度に攪拌処理（バッチ処理）できる容積を有する離解槽１５とされている。この場合の離解される古紙パルプＵＰＰの濃度は２％程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置１７からの給水により行われ、この給水装置１７は、後述するパルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３の一部をなす。
【００４７】
上記投入口７は、装置ケース６のケースカバー６ａの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口９は、開閉弁１９により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路３９に連通可能とされている。なお、上記排出口９の部位には、古紙ＵＰ、ＵＰ、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具のなど、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ２０が設けられている。
【００４８】
上記開閉弁１９は、具体的には駆動モータ２５によりクランク機構２６がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ２５としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ２５が装置制御部５に電気的に接続されている。
【００４９】
攪拌装置１６は上記離解槽１５の内部に設けられており、攪拌インペラ３０および駆動モータ３１を備えてなる。
【００５０】
上記攪拌インペラ３０は、その回転軸３０ａが離解槽１５の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸３０ａの下端が、伝動プーリ３２ａ、伝動ベルト３２ｂおよび伝動プーリ３２ｃからなる伝動手段３２を介して、駆動モータ３１の回転軸３１ａに駆動連結されている。
【００５１】
このように攪拌インペラ３０が正逆回転されることにより、古紙ＵＰがＡ４判の大きさのままで攪拌される場合でも、攪拌インペラ３０の正回転後の逆回転による水の噴流作用により、古紙ＵＰが有効に分散させられる結果、攪拌インペラ３０に絡みつくのが有効に防止される。
【００５２】
攪拌インペラ３０の羽根形状は、正回転と逆回転とにおいて、その攪拌力（拡散効果）が異なるように設計されており、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…の均一な離解・叩解が実現する。
【００５３】
なお、攪拌インペラ３０の正回転と逆回転の切り替えタイミング、および攪拌時間などの運転条件は、予め行なった実験データに基づいて、所望の古紙ＵＰ、ＵＰ、…の離解・叩解効果が得られるように設定される。
【００５４】
給水装置１７は上記離解槽１５に水を供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３の叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）３Ａを構成する。
【００５５】
図示の実施形態の給水装置１７は、図１に示すように、白水回収槽３５、叩解濃度調整用の給水ポンプ３６および抄紙濃度調整用の給水ポンプ３７を備えてなる。白水回収槽３５は、後述するように、抄紙部４において濾過脱水される白水Ｗ（抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水）を回収するもので、この白水回収槽３５に回収された白水Ｗが、上記給水ポンプ３６により上記離解槽１５に、また上記給水ポンプ３７により後述する濃度調整槽８０にそれぞれ供給される。
【００５６】
また、これに関連して、離解槽１５の底部には、重量センサ３８が設けられて、離解槽１５内で一度にバッチ処理される古紙ＵＰ、ＵＰ、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ３８は装置制御部５に電気的に接続されている。
【００５７】
図示の実施形態の重量センサ３８はロードセルからなり、離解槽１５の重量と、この離解槽１５内に投入供給された古紙ＵＰ、ＵＰ、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
【００５８】
離解部１０における具体的な制御構成は、まず、作業者により投入口７が開放されて、離解槽１５に古紙ＵＰ、ＵＰ、…が投入されると、その重量が上記重量センサ３８により感知計測されて、所定重量（枚数）になった時点で作業者に音および/または表示により告知される。この表示に応じて作業者が投入口７を閉止すると、上記給水装置１７が駆動して、給水ポンプ３６により、白水回収槽３５の水Ｗが上記投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…の重量（枚数）に対応した量だけ離解槽１５に供給される。
【００５９】
また、作業者が、上記投入口７から離解槽１５に任意の量（上記所定重量（枚数）より少ない量）の古紙ＵＰ、ＵＰ、…を投入した後に投入口７を閉止した場合も、その重量が上記重量センサ３８により感知計測されるとともに、上記給水装置１７が駆動して、給水ポンプ３６により、上記計測結果に応じた量の水Ｗが白水回収槽３５から離解槽１５に供給される。
【００６０】
図示の実施形態においては、上述したように、最大５００枚程度（約２０００ｇ）のＡ４判のＰＰＣ古紙ＵＰが離解槽１５内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口７の閉止動作により、約９８リットルの水が給水装置１７により加えられて、あるいは任意の量（上記所定重量（枚数）より少ない量）の古紙ＵＰ、ＵＰ、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置１７により加えられて、離解される古紙パルプＵＰＰの濃度が２％程度となるように制御調整される。
【００６１】
しかして、攪拌装置１６において、装置ケース６の投入開口つまり投入口７から離解槽１５内に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、駆動モータ３１による攪拌インペラ３０の正転・逆転動作により、給水装置１７から供給された水の中で所定時間（図示の実施形態においては１０分〜２０分間）だけ攪拌混合されて、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…は離解・叩解されて古紙パルプＵＰＰとなる。
【００６２】
なお、上記離解槽１５の排出口９は、離解部１０の運転時には上記開閉弁１９により閉止されて、離解槽１５からの古紙ＵＰや古紙パルプＵＰＰの古紙パルプ循環経路３９への流入が阻止される一方、後述する叩解部１１の運転時には、開閉弁１９により投入口７が開口されて、離解槽１５からの古紙パルプＵＰＰの古紙パルプ循環経路３９への流入および循環回流が許容される。
【００６３】
叩解部１１は、上記離解部１０で離解された古紙ＵＰを叩解する工程部位で、叩解機４０を主要部として備えてなり、具体的には、上記離解部１０で離解された古紙ＵＰを加圧叩解してフィブリル化するととともに、古紙ＵＰ上の文字、図形等を形成するインキ類（各種印刷技術により古紙ＵＰ上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙ＵＰ上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる）を磨砕微細化するものである。
【００６４】
上記叩解機４０の具体的構成が図３〜図６に示されている。この叩解機４０は、相対的に回転駆動される少なくとも一対（図示の場合は一対）の叩解円盤４１、４２を主要部として備える、いわゆるディスクリファイナの形態とされ、上記叩解円盤４１、４２が、至近距離つまり微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ相対回転可能に対向配置されている。
【００６５】
図示の実施形態の叩解機４０は、装置ケース６を構成する装置機体９５に装置基台５３を介して取付固定されて、上記離解部１０の離解槽１５に隣接して設けられており、図３に示すように、離解部１０の離解槽１５に連通可能な叩解槽４５と、この叩解槽４５内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤４１、４２と、これら一対の叩解円盤４１、４２を相対的に回転動作させる回転駆動源４６を備え、上記叩解円盤４１、４２の軸心が垂直起立状に配されてなる縦型とされている。
【００６６】
叩解槽４５は、上下一対の叩解円盤４１、４２を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプＵＰＰを供給する供給口４５ａおよび叩解された古紙パルプＵＰＰを下流側へ排出する排出口４５ｂを有する。
【００６７】
具体的には、上記供給口４５ａは叩解槽４５の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口４５ｂは叩解槽４５の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口４５ａおよび排出口４５ｂは、図２および図７に示すように、それぞれ循環用配管３９ａ、３９ｂを介して、上記離解部１０の離解槽１５に連通可能に接続されるとともに、上記排出口４５ｂは、さらに排出用配管４９を介して古紙パルプ回収槽６８に連通可能とされている。
【００６８】
上下一対の叩解円盤４１、４２は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされ、図示の実施形態においては、上側の叩解円盤４１が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤４２が固定側とされてなる。叩解円盤４１、４２の構成材料は、高硬度で耐摩耗性に優れるステンレス鋼やステンレス鋳鋼が好適に用いられ、図示の実施形態においてはステンレス鋼製のものが採用されている。
【００６９】
この下側の固定側叩解円盤４２は、上記叩解槽４５の底部内側面に適宜の固定手段（図示省略）により固定的に設けられており、この固定側叩解円盤４２に対して、上側の回転側叩解円盤４１が微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。
【００７０】
この回転側叩解円盤４１は、回転主軸５４を介して、駆動モータ４６に駆動連結されている。
【００７１】
上記回転主軸５４は、叩解槽４５と一体構造の軸受部５５に、軸受５６、５６により回転可能に軸支されており、その先端部５４ａに、上記回転側叩解円盤４１が適宜の固定手段（図示省略）により同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部５４ｂが、伝動プーリ５７ａ，伝動ベルト５７ｂおよび伝動プーリ５７ｃからなる伝動手段５７により、上記回転駆動源である駆動モータ４６の回転軸４６ａに駆動連結されている。
【００７２】
上記駆動モータ４６は、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ４６が装置制御部５に電気的に接続されている。
【００７３】
また、上記回転主軸５４の先端部５４ａは、上記叩解槽４５の天部中央の開口５８を介して叩解槽４５の内部に臨んでいるところ、これら開口５８と回転主軸５４との間隙は、Ｏリング、シールリング等の適宜のシール部材５９により液密性が確保されている。
【００７４】
上下両叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に上記微小な叩解隙間Ｒが形成され、この叩解隙間Ｒは、上記固定側叩解円盤４２の中心部に形成された上記供給口４５ａに始まるとともに、上記両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された上記排出口４５ｂに終わる構成とされている。
【００７５】
つまり、この叩解隙間Ｒにおいて、上記固定側叩解円盤４２の中心部位に、上記叩解槽４５の供給口４５ａに同軸状に連通する入口５０が形成されるとともに、両叩解円盤４１、４２の外周縁部が上記叩解槽４５の排出口４５ｂに連通する出口５１とされている。
【００７６】
上記叩解隙間Ｒは、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階（図示の場合は２段階）の連続した叩解工程を実行する構成とされている。
【００７７】
すなわち、上記叩解隙間Ｒは、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に設けられた区画壁６２により、同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つ（図示の場合は２つ）の円環状叩解区域６０、６１から構成されており、最内径側の円環状叩解区域６０が上記供給口４５ａに連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域６１が上記排出口４５ｂに連通されている。
【００７８】
上記区画壁６２は円環状のリング部材からなる。このリング部材６２は、図５（ｂ）に示すように、一部に切欠部６２ａを有してなり、上記固定側叩解円盤４２の対向面４２ａに叩解円盤４２と同心状に固設されている。一方、このリング部材６２に対応した環状溝６３が上記回転側叩解円盤４１の対向面４１ａに設けられている。そして、この環状溝６３に、上記リング部材６２が相対的に摺動回転可能に嵌合されて、上記円環状叩解区域６０、６１を区画形成する区画壁が形成されるとともに、上記切欠部６２ａによりこれら両円環状叩解区域６０、６１を連通する連通口が形成される。
【００７９】
この連通口６２ａと出口５１との円周方向の配置関係は、図５（ｂ）に示されるように、叩解円盤４１、４２の相対回転により生じる古紙パルプＵＰＰの流れ方向、つまり図示の実施形態においては矢符で示される時計まわり方向に対して、相対的に反時計まわり方向へ少しずれて配置されている。
【００８０】
このような配置構成とされることにより、内径側の円環状叩解区域、つまり、円環状叩解区域６１に対する円環状叩解区域６０、および出口５１に対する円環状叩解区域６１をそれぞれ流れる古紙パルプＵＰＰは、当該叩解区域において少なくとも円周方向へ一周回流れてから外径側の叩解区域に流入することになる。
【００８１】
図示の実施形態の叩解隙間Ｒは、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域６０、６１から構成され、内径側の円環状叩解区域６０が、叩解前期の第１段階叩解工程区域として、上記供給口４５ａに連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域６１が、叩解後期の第２段階叩解工程区域として、上記排出口４５ｂに連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている。
【００８２】
粗叩解を行う粗叩解工程区域６０は、仕上叩解を行う仕上叩解工程区域６１よりも大きな容積を有するように設定されている。また、これら各円環状叩解区域６０、６１において、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａが平行な平坦面に形成されるとともに、これら対向面４１ａ、４２ａに、複数の叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなる。
【００８３】
図示の実施形態において、これら叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…は、図５（ａ）、（ｂ）に示されるように、放射方向へ直線状に延びて形成された配置構成パターンとされているが、この叩解刃の配置構成パターンは、実施条件等を含めた目的に応じて適宜設定され得る。
【００８４】
なお、図示の実施形態のような配置構成パターンの叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…は、回転側叩解円盤４１の回転により、各円環状叩解区域６０、６１に流入通過する古紙パルプＵＰＰ自体に作用する遠心力に加えて、古紙パルプＵＰＰを放射方向外方へ向けて連続的に押し出すポンプ作用をなす。
【００８５】
これら対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈは、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては粗叩解工程区域）６０における刃先間隔Ｈ１が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２が最小とされている。
【００８６】
また、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２は、古紙パルプＵＰＰがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【００８７】
しかして、駆動源である駆動モータ４６により、回転側叩解円盤４１が固定側叩解円盤４２に対して高速（１８００ｒｐｍ〜３６００ｒｐｍ）で回転駆動されることにより、上記供給口４５ａから流入供給される古紙パルプＵＰＰは、上記叩解円盤４１、４２間の叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０および仕上叩解工程区域６１）を図５（ｂ）において時計まわり方向（矢符参照）へ流れて通過しながら、上記対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…または叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の協働作用により粗叩解工程（粗叩解工程区域６０）から仕上叩解工程（仕上叩解工程区域６１）まで少なくとも２段階（図示の実施形態においては２段階）の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【００８８】
具体的には、粗叩解工程区域６０においては、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１が、前工程の離解工程で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法（例えば１．００ｍｍ程度）に設定されており、固定側叩解円盤４２の供給口４５ａから入口５０を介して粗叩解工程区域６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…による粗叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６５ａ、６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に流入する。
【００８９】
この仕上叩解工程区域６１においては、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得る、つまりフィルブリル化し得る間隙寸法（例えば０．０５〜０．１ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…による加圧叩解作用を受けて高圧下での仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、出口５１さらには排出口４５ｂから排出されて、最終的に叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２により規定される所定のサイズまで微細化された古紙パルプＵＰＰを得ることとなる。
【００９０】
なお、上記刃先間隔Ｈ１、Ｈ２は、具体的な実施条件等を含めた目的に応じて、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…の配置構成パターンなどの他の設計条件等も加味して適宜設定される。
【００９１】
また、本実施形態の叩解部１１においては、図７に示すように、上記叩解機４０が配されてなる古紙パルプ循環経路３９が形成され、これにより、古紙パルプＵＰが上記叩解機４０を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
【００９２】
この古紙パルプ循環経路３９による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース６内という非常に小さく狭い古紙パルプ叩解工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の叩解工程経路が形成されることになり、上記構成の叩解機４０との協働作用的効果とも相まって、実質的に、古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
【００９３】
５２は方向切替弁を示しており、この方向切替弁５２の切替動作により、排出口４５ｂから排出される古紙パルプＵＰＰは、選択的に、上記離解槽１５へ還流され、または古紙パルプ回収槽６８へ回収される。方向切替弁５２は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部５に電気的に接続されている。
【００９４】
すなわち、図７に示すように、上記古紙パルプ循環経路３９は、循環用配管３９ａおよび３９ｂにより、離解部１０の離解槽１５、循環ポンプ（循環手段）６９、および叩解機４０を介して環状に形成されてなり、また、循環用配管３９ｂの途中箇所には、上記方向切替弁５２を介して、古紙パルプ回収槽６８に連通する排出用配管４９が分岐接続されている。
【００９５】
そして、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰは、上記循環ポンプ６９により古紙パルプ循環経路３９で循環されながら、上記叩解機４０による叩解工程が実行される。この場合の古紙パルプＵＰＰの循環時間は、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０により加圧叩解されて、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維となる（フィルブリル化する）のに十分な時間であり、図示の実施形態においては、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０を２度通過する時間に設定されている。
【００９６】
この所定の時間循環された古紙パルプＵＰＰは、上記方向切替弁５２の切替動作により、叩解機４０の排出口４５ｂから排出された後、古紙パルプ回収槽６８へ回収される。
【００９７】
なお、上記古紙パルプ循環経路３９に、離解部１０の離解槽１５が含まれていることに関連して、上記叩解工程が実行されるに際しては、離解部１０の攪拌装置１６が駆動制御されて、離解部１０が叩解部１１と同時に駆動する構成とされている。
【００９８】
すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽１５から古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰが流出する一方で、叩解機４０による叩解を経た古紙パルプＵＰＰが離解槽１５に流入することから、この離解槽１５内では叩解度の異なる古紙パルプＵＰＰが混在することになる。このため、攪拌装置１６による攪拌作用によって、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
【００９９】
上記古紙パルプ回収槽６８は、叩解部１１により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプＵＰＰを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプＵＰＰは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部４に送られる前に、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３によって、再生すべき再生紙ＲＰの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液ＰＳとされる。
【０１００】
上記パルプ濃度調整部３は、装置に投入される古紙ＵＰと水Ｗとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部４に供給される古紙パルプＵＰＰの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図８に示すように、叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）３Ａ、抄紙濃度調整部（抄紙濃度調整手段）３Ｂおよびパルプ濃度制御部（パルプ濃度制御手段）３Ｃを備えてなる。
【０１０１】
叩解濃度調整部３Ａは、パルプ製造部２における古紙パルプＵＰＰの叩解濃度を叩解部１１による叩解効率に対応して調整するもので、前述したように、給水装置１７の叩解濃度調整用の給水ポンプ３６と叩解濃度制御部７０を主要部として構成されている。
【０１０２】
この叩解濃度調整部３Ａの給水ポンプ３６による白水Ｗの供給量は、例えば、上記攪拌装置１６により離解・叩解された古紙パルプＵＰＰの叩解濃度が、次工程である叩解工程を実行する叩解部１１の叩解機４０の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく２％程度の叩解濃度になるように設定される。
【０１０３】
そして、叩解濃度制御部７０は、前述したように、重量センサ３８からの計測結果に応じて、離解槽１５に必要量の水を供給するように上記給水ポンプ３６を駆動制御する。この叩解濃度制御部７０は、後述するように、装置制御部５の一部を構成している。
【０１０４】
抄紙濃度調整部３Ｂは、抄紙部４における古紙パルプＵＰＰの抄紙濃度を再生すべき再生紙ＲＰの仕上紙質に対応した適正濃度に調整するもので、具体的には、上記パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部（区分抽出手段）７５、懸濁液調製部（懸濁液調製手段）７６および抄紙濃度制御部（抄紙濃度制御手段）７７を主要部として備える。
【０１０５】
区分抽出部７５は、前工程のパルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽６８の古紙パルプＵＰＰを抽出して濃度調整槽８０に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ８１を備えてなる。
【０１０６】
懸濁液調製部７６は、上記区分抽出部７５により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を調製するもので、前述の給水装置１７の給水ポンプ３７を主要部として備える。
【０１０７】
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽８０の底部には、前述した離解槽１５の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサが設けられており、濃度調整槽８０内に供給される古紙パルプＵＰＰと濃度調整用の水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサは装置制御部５に電気的に接続されている。
【０１０８】
抄紙濃度制御部７７は、上記区分抽出部７５および懸濁液調整部７６を連動して制御するもので、装置制御部５の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部７５および懸濁液調整部７６のポンプ８１、３７を連動して制御する。
【０１０９】
すなわち、まず、上記叩解部１１から古紙パルプ回収槽６８に回収される古紙パルプＵＰＰの全量（図示の実施形態においては、約２０００ｇの古紙ＵＰ＋１００リットルの水Ｗ）から、古紙パルプ供給ポンプ８１により、所定分量（図示の実施形態においては１リットル）の古紙パルプＵＰＰが区分されて、濃度調整槽８０へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサにより感知計測されて、その結果が装置制御部５へ送られる。
【０１１０】
続いて、この区分された古紙パルプＵＰＰの所定分量に対応して、給水ポンプ３７により、白水回収槽３５から濃度調整槽８０に、希釈用の水Ｗが所定量（図示の実施形態においては９リットル（実際は上記重量センサの重量計測による））だけ給水される。
【０１１１】
これにより、上記濃度調整槽８０内において、叩解濃度（図示の実施形態においては２％）の古紙パルプＵＰＰが水Ｗと混合希釈されて、所定濃度（図示の実施形態においては約０．２％濃度（目標濃度））のパルプ懸濁液ＰＳが混合調製される。
【０１１２】
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液ＰＳの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部４における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約０．２％濃度に設定されている。
【０１１３】
しかして、このように濃度調整槽８０で目標濃度の抄紙濃度（０．２％）に調製されたパルプ懸濁液ＰＳは、第１懸濁液供給ポンプ８３により濃度調整槽８０からパルプ供給槽８４へ移送供給されて、次工程の抄紙部４のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽６８の古紙パルプＵＰＰの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽８４には、パルプ懸濁液ＰＳを抄紙部４の抄紙工程部９０へ送るための第２懸濁液供給ポンプ８５が設けられている。
【０１１４】
また、パルプ供給槽８４内には攪拌装置８２が設けられており、この攪拌装置８２の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液ＰＳ全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
【０１１５】
パルプ濃度制御部３Ｃは、上記叩解濃度調整部３Ａおよび抄紙濃度調整部３Ｂを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部３Ａの叩解濃度制御部７０からのパルプ濃度制御情報（古紙ＵＰの投入量、離解槽１５への給水量、古紙パルプＵＰＰの叩解濃度等）を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの濃度を目標値（抄紙濃度）にするための抄紙濃度制御情報（古紙パルプＵＰＰの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽６８からの古紙パルプＵＰＰの区分抽出量、濃度調整槽８０への給水量等）を抄紙濃度調整部３Ｂの抄紙濃度制御部７７に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
【０１１６】
抄紙部４は、上記パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰを抄紙して再生紙ＲＰを製造する工程部位で、抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２を主要部として構成されている。
【０１１７】
抄紙工程部９０は、上記パルプ製造部２のパルプ供給槽８４から送られてくる水Ｗと古紙パルプＵＰＰが共存するスラリー状のパルプ懸濁液ＰＳを抄いて湿紙とする部位で、抄紙コンベア１００とパルプ供給部１０１を主要部として構成されている。
【０１１８】
抄紙コンベア１００は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液ＰＳを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト１０５がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
【０１１９】
具体的には、抄紙コンベア１００は、パルプ懸濁液ＰＳを抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト１０５と、この網状ベルト１０５を走行駆動する駆動モータ１０６とを備えてなる。
【０１２０】
上記網状ベルト１０５を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液ＰＳが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリアミド（ＰＡ）（一般に「ナイロン」（登録商標）と呼ばれる）あるいはステンレス鋼（ＳＵＳ）などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるＰＥＴ製網状ベルト１０５とされている。
【０１２１】
網状ベルト１０５は、図１に示すように、駆動ローラ１０７、従動ローラ１０８、支持ローラ１０９、脱水ロール１１５および予備脱水ロール１１７を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ１０７を介して、上記駆動モータ１０６に駆動連結されている。
【０１２２】
上記網状ベルト１０５の走行速度は、抄紙工程における諸条件を考慮して設定されるもので、好適には０．１ｍ／分〜１ｍ／分に設定され、図示の実施形態においては０．２ｍ／分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも１００ｍ／分以上に設定され、早いものでは１０００ｍ/分をはるかに上回る速度に設定される。
【０１２３】
網状ベルト１０５は、図１に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト１０５の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。
【０１２４】
上記網状ベルト１０５を走行駆動する駆動モータ１０６は、具体的には電動モータで、装置制御部５に電気的に接続されている。また、この駆動モータ１０６は、後述する脱水ロール部９１および乾燥工程部９２の走行駆動源としても共用される。
【０１２５】
パルプ供給部１０１は、上記網状ベルト１０５上に上記パルプ製造部２からのパルプ懸濁液ＰＳを供給する部位で、このパルプ供給部１０１により、パルプ懸濁液ＰＳが上記網状ベルト１０５上面に均一に広がり供給される構成とされている。パルプ供給部１０１は、上記抄紙コンベア１００の抄紙工程開始端位置に設けられている。
【０１２６】
パルプ供給部１０１の具体的構造については図示しないが、例えば、特開２００７−３０８８３７号公報に記載されるような基本構造を備える。
【０１２７】
そして、第２懸濁液供給ポンプ８５により、上記パルプ供給槽８４からパルプ供給部１０１に供給されるパルプ懸濁液ＰＳは、このパルプ供給部１０１で所定量だけ貯留されて、その滞留作用と網状ベルト１０５の走行作用との協働作用により、網状ベルト１０５の上面に均一に拡散される。この網状ベルト１０５上面に均一に拡散されたパルプ懸濁液ＰＳは、網状ベルト１０５の矢符方向への走行作用により、網状ベルト１０５と共に搬送されながら、網状ベルト１０５の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙ＲＰ0となる。
【０１２８】
この網状ベルト１０５により濾過脱水された白水Ｗ（抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水）は、前述したように、上記給水装置１７の白水回収槽３５に回収される。
【０１２９】
脱水ロール部９１は、上述の抄紙工程部９０と後述の乾燥工程部９２の連係部において、上記網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0を圧搾脱水する部位である。
【０１３０】
具体的には、下流側の上記乾燥工程部９２の平滑面ベルト１２５と上流側の上記抄紙工程部９０の網状ベルト１０５とが、図１に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト１２５と網状ベルト１０５の上下隣接部分が上記連係部とされて、上記脱水ロール部９１が、これら網状ベルト１０５および平滑面ベルト１２５を上下両側から挟圧状に転動圧搾する構造とされている。
【０１３１】
上記脱水ロール部９１の具体的構造については図示しないが、例えば、特開２００７−３０８８３７号公報に記載されるような基本構造を備える。つまり、脱水ロール部９１は、脱水ロール１１５、プレスロール１１６および駆動モータ１０６を主要部として備えるととともに、その補助部として、予備脱水ロール１１７およびスラリー化防止ロール１１８が設けられている。
【０１３２】
脱水ロール１１５は、網状ベルト１０５に下側から転接するもので、具体的には図示しないが、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【０１３３】
プレスロール１１６は、後述する乾燥工程部９２の平滑面ベルト１２５を上側から転動加圧するもので、具体的には、高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされている。図示の実施形態のプレスロール１１６は、ステンレス鋼製円筒ロールからなる。
【０１３４】
これら脱水ロール１１５とプレスロール１１６は、具体的には単一の駆動モータ１０６に駆動連結されて、両ロール１１５、１１６が連動して回転駆動される。この場合、これら両ロール１１５、１１６は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト１０５、平滑面ベルト１２５の接触面（網状ベルト１０５の下面および平滑面ベルト１２５の上面）に対して、両ロール１１５、１１６の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【０１３５】
具体的には、プレスロール１１６の回転速度が脱水ロール１１５の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト１２５の走行速度が、上記網状ベルト１０５の走行速度よりも大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部９１により圧搾脱水された湿紙ＲＰ0が、下側の網状ベルト１０５の上面から上側の平滑面ベルト１２５の下面に転写移転される際に、湿紙ＲＰ0にテンションがかかって、湿紙ＲＰ0に皺が発生するのを有効に防止する。
【０１３６】
また、上記駆動モータ１０６は、図示の実施形態においては、抄紙工程部９０の駆動モータと共用とされている。
【０１３７】
そして、この駆動モータ１０６の駆動により、上記両ロール１１５、１１６が、上記両ベルト１０５、１２５を上下両側から挟圧状に転動圧搾して、網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0に含まれている水分が上記網状ベルト１０５を介して上記脱水ロール１１５に吸水されて脱水される。この圧搾脱水された白水Ｗは、給水装置１７の白水回収槽３５に回収される。
【０１３８】
また、上記予備脱水ロール１１７およびスラリー化防止ロール１１８は、上記脱水ロール部９１におけるプレスロール１１６と脱水ロール１１５による圧搾脱水作用を補助するために設けられている。
【０１３９】
予備脱水ロール１１７は、図１に示すように、脱水ロール部９１の上流側において、上記網状ベルト１０５に下側から転接してテンションを与えるように配設されている。
【０１４０】
この予備脱水ロール１１７の具体的構造は具体的には図示しないが、上記脱水ロール１１５と同様であり、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【０１４１】
そして、網状ベルト１０５上面に均一に拡散されて、この網状ベルト１０５と共に搬送される湿紙ＲＰ0は、網状ベルト１０５により濾過脱水されながら、上記予備脱水ロール１１７によっても複合的に吸水脱水されて、プレスロール１１６と脱水ロール１１５による圧搾脱水作用を予備的に補助する。
【０１４２】
スラリー化防止ロール１１８は、図１に示すように、脱水ロール部９１の上流側近傍位置において、上記平滑面ベルト１２５を上側から転動加圧して、平滑面ベルト１２５を下側の網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0に押さえ付けるように配設されている。
【０１４３】
上記脱水ロール部９１により圧搾脱水された湿紙ＲＰ0は、脱水ロール部９１の下流側部位において、下側の網状ベルト１０５の上面から上側の平滑面ベルト１２５の下面に転写移転されて、平滑面ベルト１２５と共に搬送されて、乾燥工程部９２による乾燥工程が実施される。
【０１４４】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト１２５の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト１０５の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト１２５の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙ＲＰ0が上記平滑面ベルト１２５の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【０１４５】
乾燥工程部９２は、上記抄紙工程部９０で抄紙形成された後、脱水ロール部９１で圧搾脱水された湿紙ＲＰ0を乾燥させて再生紙ＲＰとする部位で、乾燥コンベア１２１と加熱乾燥部１２２を主要部として構成されている。
【０１４６】
乾燥コンベア１２１は、脱水ロール部９１で圧搾脱水された湿紙ＲＰ0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト１２５と、この平滑面ベルト１２５を走行駆動する上記駆動モータ１０６とを備えてなる。
【０１４７】
平滑面ベルト１２５は、湿紙ＲＰ0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙ＲＰ0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部１２２による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
【０１４８】
この平滑面ベルト１２５は、図１に示すように、駆動ローラ１２６、従動ローラ１２７、１２８、プレスロール１１６、スラリー化防止ロール１１８および平滑面仕上げロール１２９、１２９を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ１２６を介して、上記駆動モータ１０６に駆動連結されている。
【０１４９】
平滑面ベルト１２５を走行駆動する駆動モータ１０６は、前述したように、上記抄紙コンベア１００および脱水ロール部９１の走行駆動源としても共用される。
【０１５０】
加熱乾燥部１２２は、上記平滑面ベルト１２５上の湿紙ＲＰ0を加熱乾燥する部位で、上記平滑面ベルト１２５の走行経路途中箇所に配されたヒータプレート１３０を加熱部として備える。
【０１５１】
また、平滑面ベルト１２５の走行途中に、上記２つの平滑面仕上げロール１２９、１２９が配設されて、平滑面ベルト１２５上の湿紙ＲＰ0を順次転動加圧して、平滑面ベルト１２５の表面に接触する湿紙ＲＰ0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる配置構成とされている。
【０１５２】
上記平滑面ベルト１２５における上記加熱乾燥部１２２の下流側には、剥離部材１３１が設けられている。この剥離部材１３１は、具体的には耐熱性を有する弾性ヘラの形態とされており、平滑面ベルト１２５上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙ＲＰを、平滑面ベルト１２５の保持面から順次剥離する。
【０１５３】
これに関連して、この剥離部材１３１の下流側の平滑面ベルト１２５の走行経路終端位置には、定寸カッタ部１３２が設けられている。平滑面ベルト１２５から剥離された再生紙ＲＰは、この定寸カッタ部１３２により所定形状（図示の実施形態においては、Ａ４版の形状寸法）に切断されて、再使用可能な形状寸法の再生紙ＲＰとされ、装置ケース６の排出口１３６から排出される。
【０１５４】
装置制御部５は、上述したパルプ製造部２、パルプ濃度調整部３および抄紙部４の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、ＣＰＵ，ＲＯＭ，ＲＡＭおよびＩ／Ｏポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【０１５５】
この装置制御部５には、パルプ製造部２のパルプ製造工程、濃度調整部３の濃度調整工程および抄紙部４の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれており、図９に示すように、主制御部１４０、パルプ製造部２における、離解部１０（１６）の駆動源３１を制御する離解制御部１４１、および叩解部１１（４０）の駆動源４６、６９を制御する叩解制御部１４２、パルプ濃度調整部３（３Ａ、３Ｂ）の駆動源３６、３７、８１を制御するパルプ濃度制御部３Ｃ、ならびに、抄紙部４における抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２の駆動源８５、１０６、１３０、１３２を制御する抄紙制御部１４３などから構成される。
【０１５６】
主制御部１４０には、上記各駆動部２（１０、１１）、３（３Ａ、３Ｂ）、４（９０、９１、９２）の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部１０における攪拌装置１６の駆動時間、回転速度、給水装置１７の給水タイミング、給水量、叩解部１１における循環ポンプ６９の駆動時間、循環量、および叩解機４０の駆動時間、回転速度、ならびに、抄紙部４におけるコンベア１００、１２１の走行速度、加熱乾燥部１２２の駆動時間、および定寸カッタ部１３２の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されており、これらの制御データに従って、また上述した重量センサ３８、位置検出センサ等の検知結果を受け取って、上記各制御部１４１、１４２、３Ｃ、１４３を制御する。
【０１５７】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置１は、電源投入により起動して、装置制御部５により各駆動部２（１０、１１）、３（３Ａ、３Ｂ）、４（９０、９１、９２）が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース６の投入口７に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、パルプ製造部２の離解部１０および叩解部１１により離解・叩解処理されて、古紙パルプＵＰＰが製造され、さらにパルプ濃度調整部３で抄紙濃度のパルプ懸濁液ＰＳが調製された後、このパルプ懸濁液ＰＳが抄紙部４の抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２により抄紙されて、再生紙ＲＰとして再生され、装置ケース６の排出口１３６から再生紙受取トレー１３５に排出される。
【０１５８】
また、上記パルプ製造部２においては、離解制御部１４１および叩解制御部１４２により各駆動部が相互に関連して自動制御され、以下の工程を実行する。
【０１５９】
i）作業者が、前述したように、所定枚数（図示の実施形態においては５００枚程度（約２０００ｇ））のＡ４判のＰＰＣ古紙ＵＰを離解槽１５内に投入して、音および/または表示による告知がされた後、投入口７を閉止すると、約９８リットルの水が給水装置１７により加えられる。
【０１６０】
ii）攪拌装置１６が駆動して、離解槽１５内に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、駆動モータ３１による攪拌インペラ３０の正転・逆転動作により、給水装置１７から供給された水の中で所定時間だけ攪拌混合されて、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…離解・叩解されて古紙パルプＵＰＰとなる。
【０１６１】
iii）所定時間の攪拌装置１６の駆動により、古紙ＵＰ、ＵＰ、…が古紙パルプＵＰＰとなったところで、上記離解槽１５の投入口７が開閉弁１９により開口されて、離解槽１５が古紙パルプ循環経路３９に連通され、叩解部１１の循環ポンプ６９および叩解機４０が駆動開始する。
【０１６２】
また、上記離解部１０の攪拌装置１６が駆動されて、離解槽１５内に残っている古紙パルプＵＰＰと離解槽１５に還流する古紙パルプＵＰＰを攪拌して、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰの叩解度を均一化することにより、叩解処理の促進化が図られる。
【０１６３】
iv）図７において、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが、循環ポンプ６９により古紙パルプ循環経路３９で循環されながら、叩解機４０による叩解処理（叩解工程）が行われる。
【０１６４】
この古紙パルプＵＰＰの循環時間は、前述したように、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０により加圧叩解されて、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維となる（フィルブリル化する）のに十分な時間であり、図示の実施形態においては、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０を２度通過する時間に設定されている。
【０１６５】
この所定の時間循環された古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により加圧叩解されて、所定のサイズまで微細化され、フィルブリル化される。
【０１６６】
ｖ）古紙パルプ循環経路３９の方向切替弁５２が切り替わり、叩解機４０から排出された古紙パルプＵＰＰは、排出用配管４９を介して古紙パルプ回収槽６８へ排出回収される。
【０１６７】
ｘ）古紙パルプ回収槽６８に回収された古紙パルプＵＰＰは、その濃度がパルプ濃度調整部３の叩解濃度調整部３Ｂにより前述したように区分形式で目標の適正抄紙濃度に調整された後、次工程の抄紙部４へ送られて抄紙される。
【０１６８】
しかして、以上のような構成とされた古紙再生装置１においては、以下に列挙するような特有の効果が発揮され得る。
【０１６９】
（１）前工程の離解部１０で離解された古紙ＵＰを叩解する叩解部１１が、一対の叩解円盤４１、４２が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機４０を備え、この叩解機４０は、隣接して対向する上記一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程と仕上叩解工程を連続して実行する微小な叩解隙間Ｒを備えてなり、この叩解隙間Ｒは、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０に始まるとともに、上下両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された排出口５１に終わる構成とされているから、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間においても、古紙ＵＰの詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【０１７０】
すなわち、離解・叩解すべき古紙ＵＰの紙質は種々雑多で不均一である。古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置では、大型で非常に強力な動力源を備えた叩解機により、きわめて高い圧力下の高速回転により叩解が行われるため、叩解機の叩解隙間に古紙が詰まったりすることなく多量に円滑に流れて、所望のフィルブリル化した古紙パルプＵＰが製造され得る。
【０１７１】
これに対して、本実施形態の叩解機４０においては、上下一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程と仕上叩解工程を連続して実行する微小な叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０、仕上叩解工程区域６１）を備えてなり、この叩解隙間Ｒは、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０に始まるとともに、上下両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された排出口５１に終わる構成とされており、上記粗叩解工程区域６０の叩解隙間（刃先間隔Ｈ１）が、前工程の離解工程１０で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法に設定されて、古紙パルプＵＰＰが固定側叩解円盤４２の供給口５０からこの粗叩解工程区域６０に供給されて、粗叩解が行われながら、遠心力で径方向外方へ送り出されていき、続く仕上叩解工程区域６１の叩解隙間（刃先間隔Ｈ２）が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得るつまりフィルブリル化し得る間隙寸法に設定されて、高圧下での仕上叩解工程が行われながら、排出口５１から排出されるから、最終的に所望の繊維サイズの古紙パルプＵＰＰを得ることができる。この結果、非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【０１７２】
また、上記叩解工程を経た古紙ＵＰＰは繊維レベルまで分解されて（パルプ化）、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができる。
【０１７３】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【０１７４】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【０１７５】
（３）また、上記叩解部１１において、叩解機４０が配されてなる古紙パルプ循環経路３９が形成されて、上記離解部１０および叩解部１１が古紙パルプＵＰＰを所定時間循環させる循環式とされていることにより、古紙パルプＵＰＰの叩解が目的に応じて効率よく行われて、最適な叩解効果が得られる。
【０１７６】
実施形態２
本実施形態は図７の二点鎖線に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解部１１の構成が改変されたものである。
【０１７７】
すなわち、本実施形態の叩解部１１においては、古紙パルプ循環経路３９に、叩解機４０により叩解された古紙パルプＵＰＰを貯留するリザーブ槽１５０を含むバイパス経路１５１が、切替手段としての方向切替弁１５２を介して接続されてなる構成とされている。方向切替弁１５２は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部５の叩解制御部１４２に電気的に接続されている。
【０１７８】
そして、上記叩解制御部１４２は、実施形態１における上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部１０の離解槽１５と上記バイパス経路１５１のリザーブ槽１５０を選択的に切替使用するように上記方向切替弁１５２を駆動制御する構成とされている。
【０１７９】
具体的には、上述した実施形態１の叩解工程において、循環ポンプ６９により離解槽１５内から古紙パルプ循環経路３９に流出する古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により叩解処理された後、離解槽１５へは還流せずに、上記方向切替弁１５２からバイパス経路１５１のリザーブ槽１５０へ流入し、この状態は、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうまで保持される。離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうと、上記方向切替弁１５２が切り替わって、今度は、リザーブ槽１５０から古紙パルプ循環経路３９に流出する古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により叩解処理された後、リザーブ槽１５０へは還流せずに、上記方向切替弁１５２から古紙パルプ循環経路３９の離解槽１５へ流入し、この状態は、リザーブ槽１５０内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうまで保持される。以後、この方向切替弁１５２の切替動作が繰り返される。
【０１８０】
このような二つの貯留槽１５、１５０が交互に使用されることで、本実施形態のような循環式叩解工程においても、離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）から古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰが流出する一方で、叩解機４０による叩解を経た古紙パルプＵＰＰが離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）に流入するといった状態は回避され、この結果、離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）内で叩解度の異なる古紙パルプＵＰＰが混在することはなく、実施形態１におけるように、攪拌装置１６を駆動させる必要がないばかりか、実施形態１の叩解工程に比較して、叩解処理効率の向上が図られる。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０１８１】
実施形態３
本実施形態は図１１および図１２に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解機４０の構成が改変されたものである。
【０１８２】
すなわち、本実施形態の叩解機４０は、実施形態１と同様に、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤４１、４２を主要部として備え、これら叩解円盤４１、４２が、微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ相対回転可能に対向配置されている。
【０１８３】
上下両叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に形成される上記叩解隙間Ｒは、上記固定側叩解円盤４２の中心部に形成された上記供給口４５ａに始まるとともに、上記両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された上記排出口４５ｂに終わる構成とされている。
【０１８４】
上記叩解隙間Ｒは、粗叩解工程から仕上叩解工程まで３段階の連続した叩解工程を実行する構成とされている。
【０１８５】
具体的には、前記叩解隙間Ｒは、対向する上記一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に設けられた２つの区画壁６２、１６２により、同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域６０、１６０、６１から構成され，最内径側の円環状叩解区域６０が上記供給口４５ａに連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域６１が上記排出口４５ｂに連通されている。
【０１８６】
上記区画壁６２，１６２は円環状のリング部材からなり、これらリング部材６２、１６２は、図１１（ｂ）に示すように、一部に切欠部６２ａ、１６２ａを有してなり、上記固定側叩解円盤４２の対向面４２ａに叩解円盤４２と同心状に固設されている。
【０１８７】
一方、これらリング部材６２、１６２に対応した環状溝６３，１６３が上記回転側叩解円盤４１の対向面４１ａに設けられている。そして、これら環状溝６３、１６３に、上記リング部材６２、１６２がそれぞれ相対的に摺動回転可能に嵌合されて、上記円環状叩解区域６０、１６０、６１を区画形成する区画壁が形成されるとともに、上記切欠部６２ａ、１６２ａにより、これら３つの円環状叩解区域６０、１６０、６１を連通する連通口がそれぞれ形成される。
【０１８８】
これら連通口６２ａ、１６２ａと出口５１との円周方向の配置関係は、図１１（ｂ）に示されるように、叩解円盤４１、４２の相対回転により生じる古紙パルプＵＰＰの流れ方向、つまり図示の実施形態においては矢符で示される時計まわり方向に対して、相対的に順次反時計まわり方向へ少しずつずれて配置されている。
【０１８９】
このような配置構成とされることにより、内径側の円環状叩解区域、つまり、円環状叩解区域１６０に対する円環状叩解区域６０、円環状叩解区域６１に対する円環状叩解区域１６０、および出口５１に対する円環状叩解区域６１をそれぞれ流れる古紙パルプＵＰＰは、当該叩解区域において少なくとも円周方向へ一周回流れてから外径側の叩解区域に流入することになる。
【０１９０】
図示の実施形態の叩解隙間Ｒは、最内径側の円環状叩解区域６０が、叩解初期の第１段階叩解工程区域として、上記記供給口４５ａに連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域６１が、叩解最後期の第３段階叩解工程区域として、上記排出口４５ｂに連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域６０、６１間に介在する円環状叩解区域１６０が、上記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている。
【０１９１】
粗叩解を行う粗叩解工程区域６０は、粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域１６０よりも大きな容積を有するように設定され、また粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域１６０は、仕上叩解を行う仕上叩解工程区域６１よりも大きな容積を有するように設定されている。
【０１９２】
また、これら各円環状叩解区域６０、１６０、６１において、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａが平行な平坦面に形成されるとともに、これら対向面４１ａ、４２ａに、複数の叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなる。
【０１９３】
図示の実施形態において、これら叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…は、実施形態１と同様、図１１（ａ）、（ｂ）に示されるように放射方向へ直線状に延びて形成された配置構成パターンとされているが、この叩解刃の配置構成パターンは、実施条件等を含めた目的に応じて適宜設定され得る。
【０１９４】
なお、図示の実施形態のような配置構成パターンの叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…は、回転側叩解円盤４１の回転により、各円環状叩解区域６０、６１に流入通過する古紙パルプＵＰＰ自体に作用する遠心力に加えて、古紙パルプＵＰＰを放射方向外方へ向けて連続的に押し出すポンプ作用をなす。
【０１９５】
これら対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈは、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては粗叩解工程区域）６０における刃先間隔Ｈ１が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２が最小とされ、これら両円環状叩解区域６０、６１の間に介在する円環状叩解区域（本実施形態においては粗仕上叩解工程区域）１６０における刃先間隔Ｈ３がその中間とされている。
【０１９６】
また、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２は、古紙パルプＵＰＰがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【０１９７】
しかして、駆動源である駆動モータ４６により、回転側叩解円盤４１が固定側叩解円盤４２に対して高速（１８００ｒｐｍ〜３６００ｒｐｍ）で回転駆動されることにより、上記供給口４５ａから流入供給される古紙パルプＵＰＰは、上記叩解円盤４１、４２間の叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０、粗仕上叩解工程区域１６０および仕上叩解工程区域６１）を図１１（ｂ）において時計まわり方向（矢符方向）へ流れて通過しながら、上記対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…または叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の協働作用により、粗叩解工程（粗叩解工程区域６０）から粗仕上叩解工程（粗仕上叩解工程区域１６０）を経て仕上叩解工程（仕上叩解工程区域６１）まで３段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【０１９８】
具体的には、粗叩解工程区域６０においては、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１が、前工程の離解工程で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法（例えば１．００ｍｍ程度）に設定されており、固定側叩解円盤４２の供給口４５ａから入口５０を介して粗叩解工程区域６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…による粗叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６５ａ、６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口６２ａを介して粗仕上叩解工程区域１６０に流入する。
【０１９９】
この粗仕上叩解工程区域１６０においては、叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ３が、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２の中間間隙寸法（例えば０．２０〜０．５０ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して粗仕上叩解工程区域１６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…による粗仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口１６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に流入する。
【０２００】
この仕上叩解工程区域６１においては、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得る、つまりフィルブリル化し得る間隙寸法（例えば０．０５〜０．１ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…による加圧叩解作用を受けて高圧下での仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、出口５１さらには排出口４５ｂから排出されて、最終的に叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２により規定される所定のサイズまで微細化された古紙パルプＵＰＰを得ることとなる。
【０２０１】
なお、上記刃先間隔Ｈ１、Ｈ２、Ｈ３は、具体的な実施条件等を含めた目的に応じて、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…の配置構成パターンなどの他の設計条件等も加味して適宜設定される。
【０２０２】
以上から明らかなように、本実施形態における叩解工程は、粗叩解工程から仕上叩解工程まで３段階の連続した円環状叩解工程区域６０、１６０および６１からなる叩解隙間Ｒにより実行されることにより、実施形態１に比較して古紙パルプＵＰＰがより詰まり難く、円滑な叩解が行われ得る。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２０３】
実施形態４
本実施形態は図１３に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解機４０の構成が改変されたものである。
【０２０４】
すなわち、本実施形態の叩解機４０は、２つの固定側叩解円盤４２、４２と、これら両叩解円盤４２、４２間に介装される回転側叩解円盤４１とからなるいわゆるダブルディスクリファイナの形態とされている。
【０２０５】
具体的には、上記叩解機４０において、叩解槽４５の対向する上下両内側面に一対の固定側叩解円盤４２、４２がそれぞれ固定的に設けられるとともに、これら両固定側叩解円盤４２、４２間において、回転側叩解円盤４１が両固定側叩解円盤４２、４２に対して微小な叩解隙間Ｒ，Ｒをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されてなり、具体的には図示しないが、上記回転側叩解円盤４１が、回転主軸５４を介して、図外の駆動モータ４６に駆動連結されている。
両固定側叩解円盤４２、４２の中心部位に、上記叩解槽４５の供給口４５ａに連通する入口５０、５０が形成されるとともに、３つの叩解円盤４２、４２、４１の外周縁部が上叩解槽４５の排出口４５ｂに連通する出口５１とされている。なお、上側の固定側叩解円盤４２の入り口５０は、叩解槽４５の連通路４５ｃを介して上記供給口４５ａに連通されている。
【０２０６】
上下両叩解隙間Ｒ、Ｒの具体的構成は、実施形態１における叩解隙間Ｒの構成と同様である。
【０２０７】
しかして、以上のような構成とされた叩解機４０においては、回転側叩解円盤４１の上下に２つの叩解隙間Ｒ、Ｒが形成されることから、実施形態１に比較して大容量の古紙パルプＵＰＰの叩解が可能となる。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２０８】
実施形態５
本実施形態は図１４に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の離解部１０の構成が改変されたものである。
【０２０９】
すなわち、本実施形態の古紙再生装置１においては、離解部１０の離解槽１５の投入口７に、シュレッダ部（シュレッダ手段）１６０が設けられて、上記投入口７に投入された古紙ＵＰが上記シュレッダ部１６０により予備的に裁断されて、攪拌装置１６による離解・叩解の高効率化が図られる構成とされている。このシュレッダ部１６０の具体的構造は、従来周知のシュレッダと同様、古紙ＵＰを小さな紙片に裁断する基本的構造（ダブルカット方式やクロスカット方式等）を備えている。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２１０】
なお、上述した実施形態１〜５はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【０２１１】
例えば、図示の実施形態においては、叩解部１１の古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰを強制的に循環させて叩解機４０に供給するための循環ポンプ６９が設けられているが、叩解機４０が離解槽１５よりも下側位置に配置される構成とされて、古紙パルプＵＰＰが自重で叩解機４０に供給される構成を採ることができる場合には、循環ポンプ６９を省略することも可能である。
【０２１２】
また、図示の実施形態の叩解機４０は、一対の叩解円盤４１、４２の軸心が垂直起立状に配されてなる縦型とされているが、上記軸心が水平に配されてなる横型とされても良い。
【符号の説明】
【０２１３】
ＵＰ 古紙
ＵＰＰ 古紙パルプ
ＰＳ パルプ懸濁液
ＲＰ 再生紙
Ｒ 叩解隙間
Ｂ 叩解空間
Ｈ（Ｈ１、Ｈ２、Ｈ３） 刃先間隔
１ 古紙再生装置
２ パルプ製造部（パルプ製造装置）
３ パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）
３Ａ 叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）
３Ｂ 抄紙濃度調整部（抄紙濃度調整手段）
３Ｃ パルプ濃度制御部（パルプ濃度制御手段）
４ 抄紙部
５ 装置制御部
１０ 離解部
１１ 叩解部
１５ 離解槽
１６ 攪拌装置（攪拌手段）
１７ 給水装置（給水手段）
３１ 駆動モータ
３Ａ 叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）
３５ 白水回収槽
３６、３７ 給水ポンプ
３９ 古紙パルプ循環経路
４０ 叩解機
４１、４２ 叩解円盤
４１ａ、４２ａ 対向面
４５ 叩解槽
４５ａ 供給口
４５ｂ 排出口
４６ 駆動モータ（回転駆動源）
５０ 入口
５１ 出口
６０ 粗叩解工程区域（円環状叩解区域）
６１ 仕上叩解工程区域（円環状叩解区域）
６２ 区画壁
６２ａ 連通口
６５ａ、６５ｂ 叩解刃
６６ａ、６６ｂ 叩解刃
６９ 循環ポンプ
９０ 抄紙工程部
９１ 脱水ロール部
９２ 乾燥工程部
１００ 抄紙コンベア
１０１ パルプ供給部
１２１ 乾燥コンベア
１２２ 加熱乾燥部
１６０ 粗仕上叩解工程区域（円環状叩解区域）
１６２ 区画壁
１６２ａ 連通口
【技術分野】
【０００１】
本発明は古紙再生装置のパルプ製造装置および古紙再生装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置におけるパルプ製造技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【０００３】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【０００４】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【０００５】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100％再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【０００６】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から、本出願人は例えば特許文献１に記載されるような古紙再生装置を既に開発し提案している。
【０００７】
この古紙再生装置は、古紙再生工場等の大規模な古紙再生技術を、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な装置技術として実現したもので、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記パルプ製造部は、古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とからなる。
【０００８】
この叩解部においては、古紙パルプを叩解する摩砕機を配してなる古紙パルプ循環経路が形成されている。摩砕機は、叩解作用面を微小な叩解隙間をもって対向配置されるとともに、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤を備えてなる摩砕機の形態とされ、これら一対の叩解円盤の叩解隙間を調整する隙間調整手段を備える。
【０００９】
そして、古紙は、上記パルプ製造部の離解部による攪拌により離解・叩解されてパルプ化された後、上記叩解部によりさらに叩解されて微細化され、所望の古紙パルプとなり、その後上記抄紙部で抄紙されて再生紙となる。この場合、上記叩解部においては、摩砕機による叩解を経た古紙パルプを上記古紙パルプ循環経路で循環させながら叩解工程を行い、この叩解工程において、上記叩解円盤の叩解隙間を、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるようにすることで、叩解工程の初期から終期に至るまで一貫して円滑でかつ高効率な叩解を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１０】
【特許文献１】特開２０１０−１８０５１２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特に、上記古紙再生装置におけるパルプ製造部の構成技術をさらに改良して小型簡素化することにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現するパルプ製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
この目的を達成するため、本発明の古紙再生装置のパルプ製造装置は、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置において、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するものであって、古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とを備えてなり、この叩解部は、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、隣接して対向する一対の上記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、この叩解隙間は、上記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、上記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされていることを特徴とする。
【００１３】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
（１）上記叩解隙間は、上記対向する一対の上記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つの円環状叩解区域から構成され、最内径側の円環状叩解区域が上記供給口に連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域が上記排出口に連通されている。
【００１４】
（２）前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域から構成され、
内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている。
【００１５】
（３）前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域間に介在する円環状叩解区域が、前記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている。
【００１６】
（４）上記各円環状叩解区域において、対向する一対の上記叩解円盤の対向面に、複数の叩解刃が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなり、これら対向する叩解刃の刃先間隔は、上記最内径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最小とされている。
【００１７】
（５）上記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔は、上記パルプがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【００１８】
（６）上記叩解機は、上流側からの古紙パルプを供給する上記供給口および叩解された古紙パルプを下流側へ排出する上記排出口を有する叩解槽と、この叩解槽内に相対的に回転可能に設けられた上記少なくとも一対の叩解円盤と、これら叩解円盤を相対的に回転動作させる回転駆動源とを備えてなり、上記供給口から供給される古紙パルプが、上記叩解円盤間の叩解隙間を通過しながら、上記対向する叩解刃の協働作用により粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【００１９】
（７）上記叩解機は、上記叩解槽の内側面に固定的に設けられた固定側叩解円盤と、この固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、上記固定側叩解円盤の中心部位に、上記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、両叩解円盤間の叩解隙間の外周縁部が上記叩解槽の排出口に連通する出口とされている。
【００２０】
（８）上記叩解機は、上記叩解槽の対向する両内側面にそれぞれ固定的に設けられた一対の固定側叩解円盤と、これら両固定側叩解円盤間において、両固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、上記両固定側叩解円盤の中心部位に、上記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、上記３つの叩解円盤の外周縁部が上記叩解槽の排出口に連通する出口とされている。
【００２１】
（９）上記叩解部において、古紙パルプを叩解する上記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されるとともに、この古紙パルプ循環経路に古紙パルプを循環させる循環手段と、上記叩解機および循環手段を相互に連動して制御する叩解制御手段とを備えてなり、上記叩解制御手段により、上記叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされている。
【００２２】
（１０）上記離解部は、古紙を投入供給する古紙投入口および離解された古紙パルプを下流側へ排出する排出口を有する離解槽と、この離解槽内に回転可能に設けられた攪拌手段とを備え、上記古紙投入口から供給される古紙が、上記攪拌手段により水と混合攪拌されて、離解・叩解される構成とされている。
【００２３】
（１１）上記離解部は、上記離解槽内に水を供給する給水手段を備える。
【００２４】
（１２）上記離解槽の古紙投入口にシュレッダ手段が設けられて、上記古紙投入口から投入する上記古紙が、上記シュレッダ手段により予備的に裁断した後、上記攪拌手段により攪拌される。
【００２５】
（１３）上記古紙パルプ循環経路に、上記離解部の離解槽が含まれてなり、上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部の攪拌手段が駆動制御される構成とされている。
【００２６】
（１４）上記古紙パルプ循環経路に、上記叩解機により叩解された古紙パルプを貯留するリザーブ槽を含むバイパス経路が切替手段を介して接続されてなり、上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部の離解槽と上記バイパス経路のリザーブ槽を選択的に切替使用するように上記切替手段が駆動制御される構成とされている。
【００２７】
さらに、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、上記パルプ製造部は、前述したパルプ製造装置から構成されている。
【００２８】
好適な実施態様として、装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、上記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整手段を備え、このパルプ濃度調整手段は、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を上記叩解機による叩解効率に対応して調整する叩解濃度調整手段と、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を再生すべき再生紙の仕上紙質に対応して調整する抄紙濃度調整手段と、これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなる。
【発明の効果】
【００２９】
（１）本発明によれば、前工程の離解部で離解された古紙を叩解する叩解部が、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、この叩解機は、隣接して対向する一対の上記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、この叩解隙間は、上記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、上記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされているから、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【００３０】
すなわち、離解・叩解すべき古紙の紙質は種々雑多で不均一である。古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置では、大型で非常に強力な動力源を備えた叩解機により、きわめて高い圧力下の高速回転により叩解が行われるため、叩解機の叩解隙間に古紙が詰まったりすることなく多量に円滑に流れて、所望のフィルブリル化した古紙パルプが製造され得る。
【００３１】
これに対して、什器サイズの古紙再生装置における叩解機では、求められる古紙パルプのフィルブリル化度が上記大規模な古紙再生プラントと同等に要求される一方で、叩解機の駆動源は自ずと小型で、古紙パルプを叩解隙間に送り込み通過させる推進力も小さく、このような条件下での叩解では、古紙パルプの叩解隙間で詰まり生じてしまうという問題があり、これを防止するため、例えば特許文献１に開示される叩解技術においては、前述したように、叩解部の摩砕機における叩解円盤の叩解隙間を、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるようにすることで、つまり、古紙パルプを摩砕機の叩解隙間に複数回循環流通させながら、この叩解隙間を徐々に狭くなるように制御することで、古紙パルプの叩解隙間での詰まりを防止しつつ、所望のフィルブリル化を実現している。
【００３２】
本発明においては、一対の叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間が構成されており、例えば２段階の連続した叩解工程を実行する場合には、先行する叩解隙間で粗叩解工程が実行されるとともに、後行する叩解隙間で仕上叩解工程が実行される。
【００３３】
具体的には、上記叩解円盤間の叩解隙間が、叩解前期の第１段階叩解工程区域においては、前工程の離解工程で離解された古紙パルプの繊維の大きさに対応した間隙寸法に設定されて、古紙パルプが叩解円盤の中心部に形成された供給口からこの叩解隙間に供給されて、粗叩解が行われながら、遠心力で径方向外方へ送り出されていき、続く叩解後期の第２段階区域においては、所定の仕上寸法の古紙パルプの繊維に叩解し得るつまりフィルブリル化し得る間隙寸法に設定されて、高圧下での仕上叩解工程が行われながら、排出口から排出されて、最終的に所望の繊維サイズの古紙パルプを得ることができる。これにより、非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【００３４】
また、上記叩解工程を経た古紙は繊維レベルまで分解されて（パルプ化）、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができる。
【００３５】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には特許文献１の叩解技術と同様に大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【００３６】
（３）また、上記叩解部において、上記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されて、上記離解部および叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされていることにより、古紙パルプの叩解が目的に応じて効率よく行われて、最適な叩解効果が得られる。
【００３７】
特に、上述した什器サイズの古紙再生装置ゆえの小さく狭い工程スペースに、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路を形成することが可能となり、什器サイズのコンパクトサイズの古紙再生装置においても、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となる。
【００３８】
（４）上記叩解技術を採用した古紙再生装置は、装置構造がコンパクトで、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などにも設置可能であり、この観点からも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の実施形態１である古紙再生装置の全体概略構成を示す正面断面図である。
【図２】同じく同古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【図３】同古紙再生装置の叩解部の主要構成を一部断面で示す拡大正面図である。
【図４】同叩解部の主要構成部である叩解機の内部構成を示す拡大正面図である。
【図５】同叩解機の主要部を分解して示す図で、図５（ａ）は回転側叩解円盤を示す正面図、図５（ｂ）は叩解槽に装着された固定側叩解円盤を一部断面で示す正面図である。
【図６】同叩解機の叩解隙間の断面構成を示し、図６（ａ）は粗叩解工程域の断面構成を、図６（ｂ）は仕上叩解工程域の断面構成をそれぞれ示す。
【図７】同叩解部の古紙パルプ循環経路構成を示す回路図である。
【図８】同古紙再生装置のパルプ濃度調整部の構成を示すブロック図である。
【図９】同古紙再生装置の制御構成を示すブロック線図である。
【図１０】同古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【図１１】本発明の実施形態３である古紙再生装置の叩解機の主要部を分解して示す図で、図１１（ａ）は回転側叩解円盤を示す正面図、図１１（ｂ）は叩解槽に装着された固定側叩解円盤を一部断面で示す正面図である。
【図１２】同叩解機の叩解隙間の断面構成を示し、図１２（ａ）は粗叩解工程域の断面構成を、図１２（ｃ）は中仕上叩解工程域の断面構成を、図１２（ｃ）は仕上叩解工程域の断面構成をそれぞれ示す。
【図１３】本発明の実施形態４である古紙再生装置における叩解機の内部構成を示す拡大正面図である。
【図１４】本発明の実施形態５である古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００４０】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【００４１】
実施形態１
本発明に係る古紙再生装置が図１〜図１０に示されており、この古紙再生装置１は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙ＵＰを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙ＵＰとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【００４２】
古紙再生装置１は、図１０に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図１および図２に示すように、パルプ製造部２、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３、抄紙部４および装置制御部５を主要部として構成され、これら装置構成部２〜５が装置ケース６内に装置収容されてなるコンパクト設計とされている。
【００４３】
この装置ケース６は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース６は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、その外周部が化粧用ケースカバー６ａで被覆されている。また、装置ケース６の底部には移動手段としてキャスター９６、９６、…が設けられて、設置床面上を方向自在に移動可能とされている。ケース６の天板部には、古紙ＵＰを投入するための投入口７が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙ＲＰ、ＲＰ、…を受け取るための再生紙受取トレー１３５が取外し可能に設けられている。この再生紙受取トレー１３５には、装置ケース６の排出口１３６が臨んで設けられており、この排出口１３６から排出される再生紙ＲＰ、ＲＰ、…が順次積層状に受け取られる。
【００４４】
パルプ製造部（パルプ製造装置）２は、古紙ＵＰを離解し叩解して古紙パルプＵＰＰを製造する工程部位で、離解部１０と叩解部１１を備えてなる。
【００４５】
離解部１０は、古紙ＵＰを攪拌破砕して離解する工程部位で、離解槽１５、攪拌装置（攪拌手段）１６および給水装置（給水手段）１７を主要部として構成されている。
【００４６】
離解槽１５は、図２に示すように、その天井壁に、古紙ＵＰを投入供給する上記投入口（古紙投入口）７が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプＵＰＰを下流側へ排出する排出口９が設けられている。離解槽１５の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙ＵＰの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約９８リットルの水を加えて、Ａ４判のＰＰＣ（plain paper copier）古紙ＵＰを５００枚程度（約２０００ｇ）一度に攪拌処理（バッチ処理）できる容積を有する離解槽１５とされている。この場合の離解される古紙パルプＵＰＰの濃度は２％程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置１７からの給水により行われ、この給水装置１７は、後述するパルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３の一部をなす。
【００４７】
上記投入口７は、装置ケース６のケースカバー６ａの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口９は、開閉弁１９により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路３９に連通可能とされている。なお、上記排出口９の部位には、古紙ＵＰ、ＵＰ、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具のなど、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ２０が設けられている。
【００４８】
上記開閉弁１９は、具体的には駆動モータ２５によりクランク機構２６がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ２５としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ２５が装置制御部５に電気的に接続されている。
【００４９】
攪拌装置１６は上記離解槽１５の内部に設けられており、攪拌インペラ３０および駆動モータ３１を備えてなる。
【００５０】
上記攪拌インペラ３０は、その回転軸３０ａが離解槽１５の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸３０ａの下端が、伝動プーリ３２ａ、伝動ベルト３２ｂおよび伝動プーリ３２ｃからなる伝動手段３２を介して、駆動モータ３１の回転軸３１ａに駆動連結されている。
【００５１】
このように攪拌インペラ３０が正逆回転されることにより、古紙ＵＰがＡ４判の大きさのままで攪拌される場合でも、攪拌インペラ３０の正回転後の逆回転による水の噴流作用により、古紙ＵＰが有効に分散させられる結果、攪拌インペラ３０に絡みつくのが有効に防止される。
【００５２】
攪拌インペラ３０の羽根形状は、正回転と逆回転とにおいて、その攪拌力（拡散効果）が異なるように設計されており、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…の均一な離解・叩解が実現する。
【００５３】
なお、攪拌インペラ３０の正回転と逆回転の切り替えタイミング、および攪拌時間などの運転条件は、予め行なった実験データに基づいて、所望の古紙ＵＰ、ＵＰ、…の離解・叩解効果が得られるように設定される。
【００５４】
給水装置１７は上記離解槽１５に水を供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３の叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）３Ａを構成する。
【００５５】
図示の実施形態の給水装置１７は、図１に示すように、白水回収槽３５、叩解濃度調整用の給水ポンプ３６および抄紙濃度調整用の給水ポンプ３７を備えてなる。白水回収槽３５は、後述するように、抄紙部４において濾過脱水される白水Ｗ（抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水）を回収するもので、この白水回収槽３５に回収された白水Ｗが、上記給水ポンプ３６により上記離解槽１５に、また上記給水ポンプ３７により後述する濃度調整槽８０にそれぞれ供給される。
【００５６】
また、これに関連して、離解槽１５の底部には、重量センサ３８が設けられて、離解槽１５内で一度にバッチ処理される古紙ＵＰ、ＵＰ、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ３８は装置制御部５に電気的に接続されている。
【００５７】
図示の実施形態の重量センサ３８はロードセルからなり、離解槽１５の重量と、この離解槽１５内に投入供給された古紙ＵＰ、ＵＰ、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
【００５８】
離解部１０における具体的な制御構成は、まず、作業者により投入口７が開放されて、離解槽１５に古紙ＵＰ、ＵＰ、…が投入されると、その重量が上記重量センサ３８により感知計測されて、所定重量（枚数）になった時点で作業者に音および/または表示により告知される。この表示に応じて作業者が投入口７を閉止すると、上記給水装置１７が駆動して、給水ポンプ３６により、白水回収槽３５の水Ｗが上記投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…の重量（枚数）に対応した量だけ離解槽１５に供給される。
【００５９】
また、作業者が、上記投入口７から離解槽１５に任意の量（上記所定重量（枚数）より少ない量）の古紙ＵＰ、ＵＰ、…を投入した後に投入口７を閉止した場合も、その重量が上記重量センサ３８により感知計測されるとともに、上記給水装置１７が駆動して、給水ポンプ３６により、上記計測結果に応じた量の水Ｗが白水回収槽３５から離解槽１５に供給される。
【００６０】
図示の実施形態においては、上述したように、最大５００枚程度（約２０００ｇ）のＡ４判のＰＰＣ古紙ＵＰが離解槽１５内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口７の閉止動作により、約９８リットルの水が給水装置１７により加えられて、あるいは任意の量（上記所定重量（枚数）より少ない量）の古紙ＵＰ、ＵＰ、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置１７により加えられて、離解される古紙パルプＵＰＰの濃度が２％程度となるように制御調整される。
【００６１】
しかして、攪拌装置１６において、装置ケース６の投入開口つまり投入口７から離解槽１５内に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、駆動モータ３１による攪拌インペラ３０の正転・逆転動作により、給水装置１７から供給された水の中で所定時間（図示の実施形態においては１０分〜２０分間）だけ攪拌混合されて、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…は離解・叩解されて古紙パルプＵＰＰとなる。
【００６２】
なお、上記離解槽１５の排出口９は、離解部１０の運転時には上記開閉弁１９により閉止されて、離解槽１５からの古紙ＵＰや古紙パルプＵＰＰの古紙パルプ循環経路３９への流入が阻止される一方、後述する叩解部１１の運転時には、開閉弁１９により投入口７が開口されて、離解槽１５からの古紙パルプＵＰＰの古紙パルプ循環経路３９への流入および循環回流が許容される。
【００６３】
叩解部１１は、上記離解部１０で離解された古紙ＵＰを叩解する工程部位で、叩解機４０を主要部として備えてなり、具体的には、上記離解部１０で離解された古紙ＵＰを加圧叩解してフィブリル化するととともに、古紙ＵＰ上の文字、図形等を形成するインキ類（各種印刷技術により古紙ＵＰ上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙ＵＰ上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる）を磨砕微細化するものである。
【００６４】
上記叩解機４０の具体的構成が図３〜図６に示されている。この叩解機４０は、相対的に回転駆動される少なくとも一対（図示の場合は一対）の叩解円盤４１、４２を主要部として備える、いわゆるディスクリファイナの形態とされ、上記叩解円盤４１、４２が、至近距離つまり微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ相対回転可能に対向配置されている。
【００６５】
図示の実施形態の叩解機４０は、装置ケース６を構成する装置機体９５に装置基台５３を介して取付固定されて、上記離解部１０の離解槽１５に隣接して設けられており、図３に示すように、離解部１０の離解槽１５に連通可能な叩解槽４５と、この叩解槽４５内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤４１、４２と、これら一対の叩解円盤４１、４２を相対的に回転動作させる回転駆動源４６を備え、上記叩解円盤４１、４２の軸心が垂直起立状に配されてなる縦型とされている。
【００６６】
叩解槽４５は、上下一対の叩解円盤４１、４２を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプＵＰＰを供給する供給口４５ａおよび叩解された古紙パルプＵＰＰを下流側へ排出する排出口４５ｂを有する。
【００６７】
具体的には、上記供給口４５ａは叩解槽４５の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口４５ｂは叩解槽４５の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口４５ａおよび排出口４５ｂは、図２および図７に示すように、それぞれ循環用配管３９ａ、３９ｂを介して、上記離解部１０の離解槽１５に連通可能に接続されるとともに、上記排出口４５ｂは、さらに排出用配管４９を介して古紙パルプ回収槽６８に連通可能とされている。
【００６８】
上下一対の叩解円盤４１、４２は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされ、図示の実施形態においては、上側の叩解円盤４１が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤４２が固定側とされてなる。叩解円盤４１、４２の構成材料は、高硬度で耐摩耗性に優れるステンレス鋼やステンレス鋳鋼が好適に用いられ、図示の実施形態においてはステンレス鋼製のものが採用されている。
【００６９】
この下側の固定側叩解円盤４２は、上記叩解槽４５の底部内側面に適宜の固定手段（図示省略）により固定的に設けられており、この固定側叩解円盤４２に対して、上側の回転側叩解円盤４１が微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。
【００７０】
この回転側叩解円盤４１は、回転主軸５４を介して、駆動モータ４６に駆動連結されている。
【００７１】
上記回転主軸５４は、叩解槽４５と一体構造の軸受部５５に、軸受５６、５６により回転可能に軸支されており、その先端部５４ａに、上記回転側叩解円盤４１が適宜の固定手段（図示省略）により同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部５４ｂが、伝動プーリ５７ａ，伝動ベルト５７ｂおよび伝動プーリ５７ｃからなる伝動手段５７により、上記回転駆動源である駆動モータ４６の回転軸４６ａに駆動連結されている。
【００７２】
上記駆動モータ４６は、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ４６が装置制御部５に電気的に接続されている。
【００７３】
また、上記回転主軸５４の先端部５４ａは、上記叩解槽４５の天部中央の開口５８を介して叩解槽４５の内部に臨んでいるところ、これら開口５８と回転主軸５４との間隙は、Ｏリング、シールリング等の適宜のシール部材５９により液密性が確保されている。
【００７４】
上下両叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に上記微小な叩解隙間Ｒが形成され、この叩解隙間Ｒは、上記固定側叩解円盤４２の中心部に形成された上記供給口４５ａに始まるとともに、上記両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された上記排出口４５ｂに終わる構成とされている。
【００７５】
つまり、この叩解隙間Ｒにおいて、上記固定側叩解円盤４２の中心部位に、上記叩解槽４５の供給口４５ａに同軸状に連通する入口５０が形成されるとともに、両叩解円盤４１、４２の外周縁部が上記叩解槽４５の排出口４５ｂに連通する出口５１とされている。
【００７６】
上記叩解隙間Ｒは、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階（図示の場合は２段階）の連続した叩解工程を実行する構成とされている。
【００７７】
すなわち、上記叩解隙間Ｒは、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に設けられた区画壁６２により、同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つ（図示の場合は２つ）の円環状叩解区域６０、６１から構成されており、最内径側の円環状叩解区域６０が上記供給口４５ａに連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域６１が上記排出口４５ｂに連通されている。
【００７８】
上記区画壁６２は円環状のリング部材からなる。このリング部材６２は、図５（ｂ）に示すように、一部に切欠部６２ａを有してなり、上記固定側叩解円盤４２の対向面４２ａに叩解円盤４２と同心状に固設されている。一方、このリング部材６２に対応した環状溝６３が上記回転側叩解円盤４１の対向面４１ａに設けられている。そして、この環状溝６３に、上記リング部材６２が相対的に摺動回転可能に嵌合されて、上記円環状叩解区域６０、６１を区画形成する区画壁が形成されるとともに、上記切欠部６２ａによりこれら両円環状叩解区域６０、６１を連通する連通口が形成される。
【００７９】
この連通口６２ａと出口５１との円周方向の配置関係は、図５（ｂ）に示されるように、叩解円盤４１、４２の相対回転により生じる古紙パルプＵＰＰの流れ方向、つまり図示の実施形態においては矢符で示される時計まわり方向に対して、相対的に反時計まわり方向へ少しずれて配置されている。
【００８０】
このような配置構成とされることにより、内径側の円環状叩解区域、つまり、円環状叩解区域６１に対する円環状叩解区域６０、および出口５１に対する円環状叩解区域６１をそれぞれ流れる古紙パルプＵＰＰは、当該叩解区域において少なくとも円周方向へ一周回流れてから外径側の叩解区域に流入することになる。
【００８１】
図示の実施形態の叩解隙間Ｒは、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域６０、６１から構成され、内径側の円環状叩解区域６０が、叩解前期の第１段階叩解工程区域として、上記供給口４５ａに連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域６１が、叩解後期の第２段階叩解工程区域として、上記排出口４５ｂに連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている。
【００８２】
粗叩解を行う粗叩解工程区域６０は、仕上叩解を行う仕上叩解工程区域６１よりも大きな容積を有するように設定されている。また、これら各円環状叩解区域６０、６１において、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａが平行な平坦面に形成されるとともに、これら対向面４１ａ、４２ａに、複数の叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなる。
【００８３】
図示の実施形態において、これら叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…は、図５（ａ）、（ｂ）に示されるように、放射方向へ直線状に延びて形成された配置構成パターンとされているが、この叩解刃の配置構成パターンは、実施条件等を含めた目的に応じて適宜設定され得る。
【００８４】
なお、図示の実施形態のような配置構成パターンの叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…は、回転側叩解円盤４１の回転により、各円環状叩解区域６０、６１に流入通過する古紙パルプＵＰＰ自体に作用する遠心力に加えて、古紙パルプＵＰＰを放射方向外方へ向けて連続的に押し出すポンプ作用をなす。
【００８５】
これら対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈは、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては粗叩解工程区域）６０における刃先間隔Ｈ１が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２が最小とされている。
【００８６】
また、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２は、古紙パルプＵＰＰがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【００８７】
しかして、駆動源である駆動モータ４６により、回転側叩解円盤４１が固定側叩解円盤４２に対して高速（１８００ｒｐｍ〜３６００ｒｐｍ）で回転駆動されることにより、上記供給口４５ａから流入供給される古紙パルプＵＰＰは、上記叩解円盤４１、４２間の叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０および仕上叩解工程区域６１）を図５（ｂ）において時計まわり方向（矢符参照）へ流れて通過しながら、上記対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…または叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の協働作用により粗叩解工程（粗叩解工程区域６０）から仕上叩解工程（仕上叩解工程区域６１）まで少なくとも２段階（図示の実施形態においては２段階）の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【００８８】
具体的には、粗叩解工程区域６０においては、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１が、前工程の離解工程で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法（例えば１．００ｍｍ程度）に設定されており、固定側叩解円盤４２の供給口４５ａから入口５０を介して粗叩解工程区域６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…による粗叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６５ａ、６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に流入する。
【００８９】
この仕上叩解工程区域６１においては、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得る、つまりフィルブリル化し得る間隙寸法（例えば０．０５〜０．１ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…による加圧叩解作用を受けて高圧下での仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、出口５１さらには排出口４５ｂから排出されて、最終的に叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２により規定される所定のサイズまで微細化された古紙パルプＵＰＰを得ることとなる。
【００９０】
なお、上記刃先間隔Ｈ１、Ｈ２は、具体的な実施条件等を含めた目的に応じて、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…および６６ａ、６６ｂ、…の配置構成パターンなどの他の設計条件等も加味して適宜設定される。
【００９１】
また、本実施形態の叩解部１１においては、図７に示すように、上記叩解機４０が配されてなる古紙パルプ循環経路３９が形成され、これにより、古紙パルプＵＰが上記叩解機４０を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
【００９２】
この古紙パルプ循環経路３９による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース６内という非常に小さく狭い古紙パルプ叩解工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の叩解工程経路が形成されることになり、上記構成の叩解機４０との協働作用的効果とも相まって、実質的に、古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
【００９３】
５２は方向切替弁を示しており、この方向切替弁５２の切替動作により、排出口４５ｂから排出される古紙パルプＵＰＰは、選択的に、上記離解槽１５へ還流され、または古紙パルプ回収槽６８へ回収される。方向切替弁５２は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部５に電気的に接続されている。
【００９４】
すなわち、図７に示すように、上記古紙パルプ循環経路３９は、循環用配管３９ａおよび３９ｂにより、離解部１０の離解槽１５、循環ポンプ（循環手段）６９、および叩解機４０を介して環状に形成されてなり、また、循環用配管３９ｂの途中箇所には、上記方向切替弁５２を介して、古紙パルプ回収槽６８に連通する排出用配管４９が分岐接続されている。
【００９５】
そして、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰは、上記循環ポンプ６９により古紙パルプ循環経路３９で循環されながら、上記叩解機４０による叩解工程が実行される。この場合の古紙パルプＵＰＰの循環時間は、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０により加圧叩解されて、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維となる（フィルブリル化する）のに十分な時間であり、図示の実施形態においては、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０を２度通過する時間に設定されている。
【００９６】
この所定の時間循環された古紙パルプＵＰＰは、上記方向切替弁５２の切替動作により、叩解機４０の排出口４５ｂから排出された後、古紙パルプ回収槽６８へ回収される。
【００９７】
なお、上記古紙パルプ循環経路３９に、離解部１０の離解槽１５が含まれていることに関連して、上記叩解工程が実行されるに際しては、離解部１０の攪拌装置１６が駆動制御されて、離解部１０が叩解部１１と同時に駆動する構成とされている。
【００９８】
すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽１５から古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰが流出する一方で、叩解機４０による叩解を経た古紙パルプＵＰＰが離解槽１５に流入することから、この離解槽１５内では叩解度の異なる古紙パルプＵＰＰが混在することになる。このため、攪拌装置１６による攪拌作用によって、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
【００９９】
上記古紙パルプ回収槽６８は、叩解部１１により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプＵＰＰを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプＵＰＰは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部４に送られる前に、パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）３によって、再生すべき再生紙ＲＰの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液ＰＳとされる。
【０１００】
上記パルプ濃度調整部３は、装置に投入される古紙ＵＰと水Ｗとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部４に供給される古紙パルプＵＰＰの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図８に示すように、叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）３Ａ、抄紙濃度調整部（抄紙濃度調整手段）３Ｂおよびパルプ濃度制御部（パルプ濃度制御手段）３Ｃを備えてなる。
【０１０１】
叩解濃度調整部３Ａは、パルプ製造部２における古紙パルプＵＰＰの叩解濃度を叩解部１１による叩解効率に対応して調整するもので、前述したように、給水装置１７の叩解濃度調整用の給水ポンプ３６と叩解濃度制御部７０を主要部として構成されている。
【０１０２】
この叩解濃度調整部３Ａの給水ポンプ３６による白水Ｗの供給量は、例えば、上記攪拌装置１６により離解・叩解された古紙パルプＵＰＰの叩解濃度が、次工程である叩解工程を実行する叩解部１１の叩解機４０の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく２％程度の叩解濃度になるように設定される。
【０１０３】
そして、叩解濃度制御部７０は、前述したように、重量センサ３８からの計測結果に応じて、離解槽１５に必要量の水を供給するように上記給水ポンプ３６を駆動制御する。この叩解濃度制御部７０は、後述するように、装置制御部５の一部を構成している。
【０１０４】
抄紙濃度調整部３Ｂは、抄紙部４における古紙パルプＵＰＰの抄紙濃度を再生すべき再生紙ＲＰの仕上紙質に対応した適正濃度に調整するもので、具体的には、上記パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部（区分抽出手段）７５、懸濁液調製部（懸濁液調製手段）７６および抄紙濃度制御部（抄紙濃度制御手段）７７を主要部として備える。
【０１０５】
区分抽出部７５は、前工程のパルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽６８の古紙パルプＵＰＰを抽出して濃度調整槽８０に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ８１を備えてなる。
【０１０６】
懸濁液調製部７６は、上記区分抽出部７５により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を調製するもので、前述の給水装置１７の給水ポンプ３７を主要部として備える。
【０１０７】
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽８０の底部には、前述した離解槽１５の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサが設けられており、濃度調整槽８０内に供給される古紙パルプＵＰＰと濃度調整用の水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサは装置制御部５に電気的に接続されている。
【０１０８】
抄紙濃度制御部７７は、上記区分抽出部７５および懸濁液調整部７６を連動して制御するもので、装置制御部５の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部７５および懸濁液調整部７６のポンプ８１、３７を連動して制御する。
【０１０９】
すなわち、まず、上記叩解部１１から古紙パルプ回収槽６８に回収される古紙パルプＵＰＰの全量（図示の実施形態においては、約２０００ｇの古紙ＵＰ＋１００リットルの水Ｗ）から、古紙パルプ供給ポンプ８１により、所定分量（図示の実施形態においては１リットル）の古紙パルプＵＰＰが区分されて、濃度調整槽８０へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサにより感知計測されて、その結果が装置制御部５へ送られる。
【０１１０】
続いて、この区分された古紙パルプＵＰＰの所定分量に対応して、給水ポンプ３７により、白水回収槽３５から濃度調整槽８０に、希釈用の水Ｗが所定量（図示の実施形態においては９リットル（実際は上記重量センサの重量計測による））だけ給水される。
【０１１１】
これにより、上記濃度調整槽８０内において、叩解濃度（図示の実施形態においては２％）の古紙パルプＵＰＰが水Ｗと混合希釈されて、所定濃度（図示の実施形態においては約０．２％濃度（目標濃度））のパルプ懸濁液ＰＳが混合調製される。
【０１１２】
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液ＰＳの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部４における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約０．２％濃度に設定されている。
【０１１３】
しかして、このように濃度調整槽８０で目標濃度の抄紙濃度（０．２％）に調製されたパルプ懸濁液ＰＳは、第１懸濁液供給ポンプ８３により濃度調整槽８０からパルプ供給槽８４へ移送供給されて、次工程の抄紙部４のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽６８の古紙パルプＵＰＰの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽８４には、パルプ懸濁液ＰＳを抄紙部４の抄紙工程部９０へ送るための第２懸濁液供給ポンプ８５が設けられている。
【０１１４】
また、パルプ供給槽８４内には攪拌装置８２が設けられており、この攪拌装置８２の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液ＰＳ全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
【０１１５】
パルプ濃度制御部３Ｃは、上記叩解濃度調整部３Ａおよび抄紙濃度調整部３Ｂを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部３Ａの叩解濃度制御部７０からのパルプ濃度制御情報（古紙ＵＰの投入量、離解槽１５への給水量、古紙パルプＵＰＰの叩解濃度等）を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰの濃度を目標値（抄紙濃度）にするための抄紙濃度制御情報（古紙パルプＵＰＰの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽６８からの古紙パルプＵＰＰの区分抽出量、濃度調整槽８０への給水量等）を抄紙濃度調整部３Ｂの抄紙濃度制御部７７に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
【０１１６】
抄紙部４は、上記パルプ製造部２で製造された古紙パルプＵＰＰを抄紙して再生紙ＲＰを製造する工程部位で、抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２を主要部として構成されている。
【０１１７】
抄紙工程部９０は、上記パルプ製造部２のパルプ供給槽８４から送られてくる水Ｗと古紙パルプＵＰＰが共存するスラリー状のパルプ懸濁液ＰＳを抄いて湿紙とする部位で、抄紙コンベア１００とパルプ供給部１０１を主要部として構成されている。
【０１１８】
抄紙コンベア１００は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液ＰＳを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト１０５がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
【０１１９】
具体的には、抄紙コンベア１００は、パルプ懸濁液ＰＳを抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト１０５と、この網状ベルト１０５を走行駆動する駆動モータ１０６とを備えてなる。
【０１２０】
上記網状ベルト１０５を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液ＰＳが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリアミド（ＰＡ）（一般に「ナイロン」（登録商標）と呼ばれる）あるいはステンレス鋼（ＳＵＳ）などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるＰＥＴ製網状ベルト１０５とされている。
【０１２１】
網状ベルト１０５は、図１に示すように、駆動ローラ１０７、従動ローラ１０８、支持ローラ１０９、脱水ロール１１５および予備脱水ロール１１７を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ１０７を介して、上記駆動モータ１０６に駆動連結されている。
【０１２２】
上記網状ベルト１０５の走行速度は、抄紙工程における諸条件を考慮して設定されるもので、好適には０．１ｍ／分〜１ｍ／分に設定され、図示の実施形態においては０．２ｍ／分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも１００ｍ／分以上に設定され、早いものでは１０００ｍ/分をはるかに上回る速度に設定される。
【０１２３】
網状ベルト１０５は、図１に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト１０５の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。
【０１２４】
上記網状ベルト１０５を走行駆動する駆動モータ１０６は、具体的には電動モータで、装置制御部５に電気的に接続されている。また、この駆動モータ１０６は、後述する脱水ロール部９１および乾燥工程部９２の走行駆動源としても共用される。
【０１２５】
パルプ供給部１０１は、上記網状ベルト１０５上に上記パルプ製造部２からのパルプ懸濁液ＰＳを供給する部位で、このパルプ供給部１０１により、パルプ懸濁液ＰＳが上記網状ベルト１０５上面に均一に広がり供給される構成とされている。パルプ供給部１０１は、上記抄紙コンベア１００の抄紙工程開始端位置に設けられている。
【０１２６】
パルプ供給部１０１の具体的構造については図示しないが、例えば、特開２００７−３０８８３７号公報に記載されるような基本構造を備える。
【０１２７】
そして、第２懸濁液供給ポンプ８５により、上記パルプ供給槽８４からパルプ供給部１０１に供給されるパルプ懸濁液ＰＳは、このパルプ供給部１０１で所定量だけ貯留されて、その滞留作用と網状ベルト１０５の走行作用との協働作用により、網状ベルト１０５の上面に均一に拡散される。この網状ベルト１０５上面に均一に拡散されたパルプ懸濁液ＰＳは、網状ベルト１０５の矢符方向への走行作用により、網状ベルト１０５と共に搬送されながら、網状ベルト１０５の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙ＲＰ0となる。
【０１２８】
この網状ベルト１０５により濾過脱水された白水Ｗ（抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水）は、前述したように、上記給水装置１７の白水回収槽３５に回収される。
【０１２９】
脱水ロール部９１は、上述の抄紙工程部９０と後述の乾燥工程部９２の連係部において、上記網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0を圧搾脱水する部位である。
【０１３０】
具体的には、下流側の上記乾燥工程部９２の平滑面ベルト１２５と上流側の上記抄紙工程部９０の網状ベルト１０５とが、図１に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト１２５と網状ベルト１０５の上下隣接部分が上記連係部とされて、上記脱水ロール部９１が、これら網状ベルト１０５および平滑面ベルト１２５を上下両側から挟圧状に転動圧搾する構造とされている。
【０１３１】
上記脱水ロール部９１の具体的構造については図示しないが、例えば、特開２００７−３０８８３７号公報に記載されるような基本構造を備える。つまり、脱水ロール部９１は、脱水ロール１１５、プレスロール１１６および駆動モータ１０６を主要部として備えるととともに、その補助部として、予備脱水ロール１１７およびスラリー化防止ロール１１８が設けられている。
【０１３２】
脱水ロール１１５は、網状ベルト１０５に下側から転接するもので、具体的には図示しないが、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【０１３３】
プレスロール１１６は、後述する乾燥工程部９２の平滑面ベルト１２５を上側から転動加圧するもので、具体的には、高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされている。図示の実施形態のプレスロール１１６は、ステンレス鋼製円筒ロールからなる。
【０１３４】
これら脱水ロール１１５とプレスロール１１６は、具体的には単一の駆動モータ１０６に駆動連結されて、両ロール１１５、１１６が連動して回転駆動される。この場合、これら両ロール１１５、１１６は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト１０５、平滑面ベルト１２５の接触面（網状ベルト１０５の下面および平滑面ベルト１２５の上面）に対して、両ロール１１５、１１６の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【０１３５】
具体的には、プレスロール１１６の回転速度が脱水ロール１１５の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト１２５の走行速度が、上記網状ベルト１０５の走行速度よりも大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部９１により圧搾脱水された湿紙ＲＰ0が、下側の網状ベルト１０５の上面から上側の平滑面ベルト１２５の下面に転写移転される際に、湿紙ＲＰ0にテンションがかかって、湿紙ＲＰ0に皺が発生するのを有効に防止する。
【０１３６】
また、上記駆動モータ１０６は、図示の実施形態においては、抄紙工程部９０の駆動モータと共用とされている。
【０１３７】
そして、この駆動モータ１０６の駆動により、上記両ロール１１５、１１６が、上記両ベルト１０５、１２５を上下両側から挟圧状に転動圧搾して、網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0に含まれている水分が上記網状ベルト１０５を介して上記脱水ロール１１５に吸水されて脱水される。この圧搾脱水された白水Ｗは、給水装置１７の白水回収槽３５に回収される。
【０１３８】
また、上記予備脱水ロール１１７およびスラリー化防止ロール１１８は、上記脱水ロール部９１におけるプレスロール１１６と脱水ロール１１５による圧搾脱水作用を補助するために設けられている。
【０１３９】
予備脱水ロール１１７は、図１に示すように、脱水ロール部９１の上流側において、上記網状ベルト１０５に下側から転接してテンションを与えるように配設されている。
【０１４０】
この予備脱水ロール１１７の具体的構造は具体的には図示しないが、上記脱水ロール１１５と同様であり、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【０１４１】
そして、網状ベルト１０５上面に均一に拡散されて、この網状ベルト１０５と共に搬送される湿紙ＲＰ0は、網状ベルト１０５により濾過脱水されながら、上記予備脱水ロール１１７によっても複合的に吸水脱水されて、プレスロール１１６と脱水ロール１１５による圧搾脱水作用を予備的に補助する。
【０１４２】
スラリー化防止ロール１１８は、図１に示すように、脱水ロール部９１の上流側近傍位置において、上記平滑面ベルト１２５を上側から転動加圧して、平滑面ベルト１２５を下側の網状ベルト１０５上の湿紙ＲＰ0に押さえ付けるように配設されている。
【０１４３】
上記脱水ロール部９１により圧搾脱水された湿紙ＲＰ0は、脱水ロール部９１の下流側部位において、下側の網状ベルト１０５の上面から上側の平滑面ベルト１２５の下面に転写移転されて、平滑面ベルト１２５と共に搬送されて、乾燥工程部９２による乾燥工程が実施される。
【０１４４】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト１２５の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト１０５の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト１２５の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙ＲＰ0が上記平滑面ベルト１２５の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【０１４５】
乾燥工程部９２は、上記抄紙工程部９０で抄紙形成された後、脱水ロール部９１で圧搾脱水された湿紙ＲＰ0を乾燥させて再生紙ＲＰとする部位で、乾燥コンベア１２１と加熱乾燥部１２２を主要部として構成されている。
【０１４６】
乾燥コンベア１２１は、脱水ロール部９１で圧搾脱水された湿紙ＲＰ0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト１２５と、この平滑面ベルト１２５を走行駆動する上記駆動モータ１０６とを備えてなる。
【０１４７】
平滑面ベルト１２５は、湿紙ＲＰ0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙ＲＰ0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部１２２による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
【０１４８】
この平滑面ベルト１２５は、図１に示すように、駆動ローラ１２６、従動ローラ１２７、１２８、プレスロール１１６、スラリー化防止ロール１１８および平滑面仕上げロール１２９、１２９を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ１２６を介して、上記駆動モータ１０６に駆動連結されている。
【０１４９】
平滑面ベルト１２５を走行駆動する駆動モータ１０６は、前述したように、上記抄紙コンベア１００および脱水ロール部９１の走行駆動源としても共用される。
【０１５０】
加熱乾燥部１２２は、上記平滑面ベルト１２５上の湿紙ＲＰ0を加熱乾燥する部位で、上記平滑面ベルト１２５の走行経路途中箇所に配されたヒータプレート１３０を加熱部として備える。
【０１５１】
また、平滑面ベルト１２５の走行途中に、上記２つの平滑面仕上げロール１２９、１２９が配設されて、平滑面ベルト１２５上の湿紙ＲＰ0を順次転動加圧して、平滑面ベルト１２５の表面に接触する湿紙ＲＰ0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる配置構成とされている。
【０１５２】
上記平滑面ベルト１２５における上記加熱乾燥部１２２の下流側には、剥離部材１３１が設けられている。この剥離部材１３１は、具体的には耐熱性を有する弾性ヘラの形態とされており、平滑面ベルト１２５上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙ＲＰを、平滑面ベルト１２５の保持面から順次剥離する。
【０１５３】
これに関連して、この剥離部材１３１の下流側の平滑面ベルト１２５の走行経路終端位置には、定寸カッタ部１３２が設けられている。平滑面ベルト１２５から剥離された再生紙ＲＰは、この定寸カッタ部１３２により所定形状（図示の実施形態においては、Ａ４版の形状寸法）に切断されて、再使用可能な形状寸法の再生紙ＲＰとされ、装置ケース６の排出口１３６から排出される。
【０１５４】
装置制御部５は、上述したパルプ製造部２、パルプ濃度調整部３および抄紙部４の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、ＣＰＵ，ＲＯＭ，ＲＡＭおよびＩ／Ｏポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【０１５５】
この装置制御部５には、パルプ製造部２のパルプ製造工程、濃度調整部３の濃度調整工程および抄紙部４の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれており、図９に示すように、主制御部１４０、パルプ製造部２における、離解部１０（１６）の駆動源３１を制御する離解制御部１４１、および叩解部１１（４０）の駆動源４６、６９を制御する叩解制御部１４２、パルプ濃度調整部３（３Ａ、３Ｂ）の駆動源３６、３７、８１を制御するパルプ濃度制御部３Ｃ、ならびに、抄紙部４における抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２の駆動源８５、１０６、１３０、１３２を制御する抄紙制御部１４３などから構成される。
【０１５６】
主制御部１４０には、上記各駆動部２（１０、１１）、３（３Ａ、３Ｂ）、４（９０、９１、９２）の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部１０における攪拌装置１６の駆動時間、回転速度、給水装置１７の給水タイミング、給水量、叩解部１１における循環ポンプ６９の駆動時間、循環量、および叩解機４０の駆動時間、回転速度、ならびに、抄紙部４におけるコンベア１００、１２１の走行速度、加熱乾燥部１２２の駆動時間、および定寸カッタ部１３２の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されており、これらの制御データに従って、また上述した重量センサ３８、位置検出センサ等の検知結果を受け取って、上記各制御部１４１、１４２、３Ｃ、１４３を制御する。
【０１５７】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置１は、電源投入により起動して、装置制御部５により各駆動部２（１０、１１）、３（３Ａ、３Ｂ）、４（９０、９１、９２）が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース６の投入口７に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、パルプ製造部２の離解部１０および叩解部１１により離解・叩解処理されて、古紙パルプＵＰＰが製造され、さらにパルプ濃度調整部３で抄紙濃度のパルプ懸濁液ＰＳが調製された後、このパルプ懸濁液ＰＳが抄紙部４の抄紙工程部９０、脱水ロール部９１および乾燥工程部９２により抄紙されて、再生紙ＲＰとして再生され、装置ケース６の排出口１３６から再生紙受取トレー１３５に排出される。
【０１５８】
また、上記パルプ製造部２においては、離解制御部１４１および叩解制御部１４２により各駆動部が相互に関連して自動制御され、以下の工程を実行する。
【０１５９】
i）作業者が、前述したように、所定枚数（図示の実施形態においては５００枚程度（約２０００ｇ））のＡ４判のＰＰＣ古紙ＵＰを離解槽１５内に投入して、音および/または表示による告知がされた後、投入口７を閉止すると、約９８リットルの水が給水装置１７により加えられる。
【０１６０】
ii）攪拌装置１６が駆動して、離解槽１５内に投入された古紙ＵＰ、ＵＰ、…は、駆動モータ３１による攪拌インペラ３０の正転・逆転動作により、給水装置１７から供給された水の中で所定時間だけ攪拌混合されて、これにより、古紙ＵＰ、ＵＰ、…離解・叩解されて古紙パルプＵＰＰとなる。
【０１６１】
iii）所定時間の攪拌装置１６の駆動により、古紙ＵＰ、ＵＰ、…が古紙パルプＵＰＰとなったところで、上記離解槽１５の投入口７が開閉弁１９により開口されて、離解槽１５が古紙パルプ循環経路３９に連通され、叩解部１１の循環ポンプ６９および叩解機４０が駆動開始する。
【０１６２】
また、上記離解部１０の攪拌装置１６が駆動されて、離解槽１５内に残っている古紙パルプＵＰＰと離解槽１５に還流する古紙パルプＵＰＰを攪拌して、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰの叩解度を均一化することにより、叩解処理の促進化が図られる。
【０１６３】
iv）図７において、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが、循環ポンプ６９により古紙パルプ循環経路３９で循環されながら、叩解機４０による叩解処理（叩解工程）が行われる。
【０１６４】
この古紙パルプＵＰＰの循環時間は、前述したように、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０により加圧叩解されて、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維となる（フィルブリル化する）のに十分な時間であり、図示の実施形態においては、離解部１０により離解処理された古紙パルプＵＰＰが叩解機４０を２度通過する時間に設定されている。
【０１６５】
この所定の時間循環された古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により加圧叩解されて、所定のサイズまで微細化され、フィルブリル化される。
【０１６６】
ｖ）古紙パルプ循環経路３９の方向切替弁５２が切り替わり、叩解機４０から排出された古紙パルプＵＰＰは、排出用配管４９を介して古紙パルプ回収槽６８へ排出回収される。
【０１６７】
ｘ）古紙パルプ回収槽６８に回収された古紙パルプＵＰＰは、その濃度がパルプ濃度調整部３の叩解濃度調整部３Ｂにより前述したように区分形式で目標の適正抄紙濃度に調整された後、次工程の抄紙部４へ送られて抄紙される。
【０１６８】
しかして、以上のような構成とされた古紙再生装置１においては、以下に列挙するような特有の効果が発揮され得る。
【０１６９】
（１）前工程の離解部１０で離解された古紙ＵＰを叩解する叩解部１１が、一対の叩解円盤４１、４２が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機４０を備え、この叩解機４０は、隣接して対向する上記一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程と仕上叩解工程を連続して実行する微小な叩解隙間Ｒを備えてなり、この叩解隙間Ｒは、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０に始まるとともに、上下両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された排出口５１に終わる構成とされているから、什器サイズの装置空間に収められた非常に小さな叩解工程空間においても、古紙ＵＰの詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【０１７０】
すなわち、離解・叩解すべき古紙ＵＰの紙質は種々雑多で不均一である。古紙再生工場等の大規模な古紙再生プラントまたは大規模古紙再生装置では、大型で非常に強力な動力源を備えた叩解機により、きわめて高い圧力下の高速回転により叩解が行われるため、叩解機の叩解隙間に古紙が詰まったりすることなく多量に円滑に流れて、所望のフィルブリル化した古紙パルプＵＰが製造され得る。
【０１７１】
これに対して、本実施形態の叩解機４０においては、上下一対の叩解円盤４１、４２間に、粗叩解工程と仕上叩解工程を連続して実行する微小な叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０、仕上叩解工程区域６１）を備えてなり、この叩解隙間Ｒは、固定側叩解円盤４２の中心部に形成された供給口５０に始まるとともに、上下両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された排出口５１に終わる構成とされており、上記粗叩解工程区域６０の叩解隙間（刃先間隔Ｈ１）が、前工程の離解工程１０で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法に設定されて、古紙パルプＵＰＰが固定側叩解円盤４２の供給口５０からこの粗叩解工程区域６０に供給されて、粗叩解が行われながら、遠心力で径方向外方へ送り出されていき、続く仕上叩解工程区域６１の叩解隙間（刃先間隔Ｈ２）が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得るつまりフィルブリル化し得る間隙寸法に設定されて、高圧下での仕上叩解工程が行われながら、排出口５１から排出されるから、最終的に所望の繊維サイズの古紙パルプＵＰＰを得ることができる。この結果、非常に小さな叩解工程空間においても、古紙の詰まりを発生することなく、円滑でかつ高効率な高い処理能力を有する叩解が実現する。
【０１７２】
また、上記叩解工程を経た古紙ＵＰＰは繊維レベルまで分解されて（パルプ化）、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができ、高い機密性を保持することができる。
【０１７３】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【０１７４】
（２）しかも、このような円滑かつ高効率な叩解には大きな動力を必要としないため、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置に最適であり、一般家庭等における私的文書等の個人レベルから官公庁・一般企業の機密文書等の公的レベルまでの各種書類に記載された各種情報の漏洩・流出を有効かつ確実に防止することができ、ランニングコストも低く抑えることができる。
【０１７５】
（３）また、上記叩解部１１において、叩解機４０が配されてなる古紙パルプ循環経路３９が形成されて、上記離解部１０および叩解部１１が古紙パルプＵＰＰを所定時間循環させる循環式とされていることにより、古紙パルプＵＰＰの叩解が目的に応じて効率よく行われて、最適な叩解効果が得られる。
【０１７６】
実施形態２
本実施形態は図７の二点鎖線に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解部１１の構成が改変されたものである。
【０１７７】
すなわち、本実施形態の叩解部１１においては、古紙パルプ循環経路３９に、叩解機４０により叩解された古紙パルプＵＰＰを貯留するリザーブ槽１５０を含むバイパス経路１５１が、切替手段としての方向切替弁１５２を介して接続されてなる構成とされている。方向切替弁１５２は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部５の叩解制御部１４２に電気的に接続されている。
【０１７８】
そして、上記叩解制御部１４２は、実施形態１における上記叩解工程を実行するに際して、上記離解部１０の離解槽１５と上記バイパス経路１５１のリザーブ槽１５０を選択的に切替使用するように上記方向切替弁１５２を駆動制御する構成とされている。
【０１７９】
具体的には、上述した実施形態１の叩解工程において、循環ポンプ６９により離解槽１５内から古紙パルプ循環経路３９に流出する古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により叩解処理された後、離解槽１５へは還流せずに、上記方向切替弁１５２からバイパス経路１５１のリザーブ槽１５０へ流入し、この状態は、離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうまで保持される。離解槽１５内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうと、上記方向切替弁１５２が切り替わって、今度は、リザーブ槽１５０から古紙パルプ循環経路３９に流出する古紙パルプＵＰＰは、叩解機４０により叩解処理された後、リザーブ槽１５０へは還流せずに、上記方向切替弁１５２から古紙パルプ循環経路３９の離解槽１５へ流入し、この状態は、リザーブ槽１５０内の古紙パルプＵＰＰがすべて流出してしまうまで保持される。以後、この方向切替弁１５２の切替動作が繰り返される。
【０１８０】
このような二つの貯留槽１５、１５０が交互に使用されることで、本実施形態のような循環式叩解工程においても、離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）から古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰが流出する一方で、叩解機４０による叩解を経た古紙パルプＵＰＰが離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）に流入するといった状態は回避され、この結果、離解槽１５（またはリザーブ槽１５０）内で叩解度の異なる古紙パルプＵＰＰが混在することはなく、実施形態１におけるように、攪拌装置１６を駆動させる必要がないばかりか、実施形態１の叩解工程に比較して、叩解処理効率の向上が図られる。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０１８１】
実施形態３
本実施形態は図１１および図１２に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解機４０の構成が改変されたものである。
【０１８２】
すなわち、本実施形態の叩解機４０は、実施形態１と同様に、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤４１、４２を主要部として備え、これら叩解円盤４１、４２が、微小な叩解隙間Ｒをもって同心状にかつ相対回転可能に対向配置されている。
【０１８３】
上下両叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に形成される上記叩解隙間Ｒは、上記固定側叩解円盤４２の中心部に形成された上記供給口４５ａに始まるとともに、上記両叩解円盤４１、４２の外周縁部に形成された上記排出口４５ｂに終わる構成とされている。
【０１８４】
上記叩解隙間Ｒは、粗叩解工程から仕上叩解工程まで３段階の連続した叩解工程を実行する構成とされている。
【０１８５】
具体的には、前記叩解隙間Ｒは、対向する上記一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａ間に設けられた２つの区画壁６２、１６２により、同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域６０、１６０、６１から構成され，最内径側の円環状叩解区域６０が上記供給口４５ａに連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域６１が上記排出口４５ｂに連通されている。
【０１８６】
上記区画壁６２，１６２は円環状のリング部材からなり、これらリング部材６２、１６２は、図１１（ｂ）に示すように、一部に切欠部６２ａ、１６２ａを有してなり、上記固定側叩解円盤４２の対向面４２ａに叩解円盤４２と同心状に固設されている。
【０１８７】
一方、これらリング部材６２、１６２に対応した環状溝６３，１６３が上記回転側叩解円盤４１の対向面４１ａに設けられている。そして、これら環状溝６３、１６３に、上記リング部材６２、１６２がそれぞれ相対的に摺動回転可能に嵌合されて、上記円環状叩解区域６０、１６０、６１を区画形成する区画壁が形成されるとともに、上記切欠部６２ａ、１６２ａにより、これら３つの円環状叩解区域６０、１６０、６１を連通する連通口がそれぞれ形成される。
【０１８８】
これら連通口６２ａ、１６２ａと出口５１との円周方向の配置関係は、図１１（ｂ）に示されるように、叩解円盤４１、４２の相対回転により生じる古紙パルプＵＰＰの流れ方向、つまり図示の実施形態においては矢符で示される時計まわり方向に対して、相対的に順次反時計まわり方向へ少しずつずれて配置されている。
【０１８９】
このような配置構成とされることにより、内径側の円環状叩解区域、つまり、円環状叩解区域１６０に対する円環状叩解区域６０、円環状叩解区域６１に対する円環状叩解区域１６０、および出口５１に対する円環状叩解区域６１をそれぞれ流れる古紙パルプＵＰＰは、当該叩解区域において少なくとも円周方向へ一周回流れてから外径側の叩解区域に流入することになる。
【０１９０】
図示の実施形態の叩解隙間Ｒは、最内径側の円環状叩解区域６０が、叩解初期の第１段階叩解工程区域として、上記記供給口４５ａに連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域６１が、叩解最後期の第３段階叩解工程区域として、上記排出口４５ｂに連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域６０、６１間に介在する円環状叩解区域１６０が、上記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている。
【０１９１】
粗叩解を行う粗叩解工程区域６０は、粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域１６０よりも大きな容積を有するように設定され、また粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域１６０は、仕上叩解を行う仕上叩解工程区域６１よりも大きな容積を有するように設定されている。
【０１９２】
また、これら各円環状叩解区域６０、１６０、６１において、対向する一対の叩解円盤４１、４２の対向面４１ａ、４２ａが平行な平坦面に形成されるとともに、これら対向面４１ａ、４２ａに、複数の叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなる。
【０１９３】
図示の実施形態において、これら叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…は、実施形態１と同様、図１１（ａ）、（ｂ）に示されるように放射方向へ直線状に延びて形成された配置構成パターンとされているが、この叩解刃の配置構成パターンは、実施条件等を含めた目的に応じて適宜設定され得る。
【０１９４】
なお、図示の実施形態のような配置構成パターンの叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…は、回転側叩解円盤４１の回転により、各円環状叩解区域６０、６１に流入通過する古紙パルプＵＰＰ自体に作用する遠心力に加えて、古紙パルプＵＰＰを放射方向外方へ向けて連続的に押し出すポンプ作用をなす。
【０１９５】
これら対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈは、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては粗叩解工程区域）６０における刃先間隔Ｈ１が最大とされるとともに、上記最外径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２が最小とされ、これら両円環状叩解区域６０、６１の間に介在する円環状叩解区域（本実施形態においては粗仕上叩解工程区域）１６０における刃先間隔Ｈ３がその中間とされている。
【０１９６】
また、上記最内径側の円環状叩解区域（本実施形態においては仕上叩解工程区域）６１における刃先間隔Ｈ２は、古紙パルプＵＰＰがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている。
【０１９７】
しかして、駆動源である駆動モータ４６により、回転側叩解円盤４１が固定側叩解円盤４２に対して高速（１８００ｒｐｍ〜３６００ｒｐｍ）で回転駆動されることにより、上記供給口４５ａから流入供給される古紙パルプＵＰＰは、上記叩解円盤４１、４２間の叩解隙間Ｒ（粗叩解工程区域６０、粗仕上叩解工程区域１６０および仕上叩解工程区域６１）を図１１（ｂ）において時計まわり方向（矢符方向）へ流れて通過しながら、上記対向する叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…または叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の協働作用により、粗叩解工程（粗叩解工程区域６０）から粗仕上叩解工程（粗仕上叩解工程区域１６０）を経て仕上叩解工程（仕上叩解工程区域６１）まで３段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される。
【０１９８】
具体的には、粗叩解工程区域６０においては、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１が、前工程の離解工程で離解された古紙パルプＵＰＰの繊維の大きさに対応した間隙寸法（例えば１．００ｍｍ程度）に設定されており、固定側叩解円盤４２の供給口４５ａから入口５０を介して粗叩解工程区域６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…による粗叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６５ａ、６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口６２ａを介して粗仕上叩解工程区域１６０に流入する。
【０１９９】
この粗仕上叩解工程区域１６０においては、叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ３が、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…の刃先間隔Ｈ１と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２の中間間隙寸法（例えば０．２０〜０．５０ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して粗仕上叩解工程区域１６０に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…による粗仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃１６５ａ、１６５ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、連通口１６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に流入する。
【０２００】
この仕上叩解工程区域６１においては、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２が、所定の仕上寸法の古紙パルプＵＰＰの繊維に叩解し得る、つまりフィルブリル化し得る間隙寸法（例えば０．０５〜０．１ｍｍ程度）に設定されおり、上記粗叩解工程区域６０から連通口６２ａを介して仕上叩解工程区域６１に供給される古紙パルプＵＰＰは、叩解刃６６ａ、６６ｂ、…による加圧叩解作用を受けて高圧下での仕上叩解が行われながら、遠心力の作用と叩解刃６６ａ、６６ｂ、…のポンプ作用により径方向外方へ送り出されていき、出口５１さらには排出口４５ｂから排出されて、最終的に叩解刃６６ａ、６６ｂ、…の刃先間隔Ｈ２により規定される所定のサイズまで微細化された古紙パルプＵＰＰを得ることとなる。
【０２０１】
なお、上記刃先間隔Ｈ１、Ｈ２、Ｈ３は、具体的な実施条件等を含めた目的に応じて、叩解刃６５ａ、６５ｂ、…、１６５ａ、１６５ｂ、…、および６６ａ、６６ｂ、…の配置構成パターンなどの他の設計条件等も加味して適宜設定される。
【０２０２】
以上から明らかなように、本実施形態における叩解工程は、粗叩解工程から仕上叩解工程まで３段階の連続した円環状叩解工程区域６０、１６０および６１からなる叩解隙間Ｒにより実行されることにより、実施形態１に比較して古紙パルプＵＰＰがより詰まり難く、円滑な叩解が行われ得る。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２０３】
実施形態４
本実施形態は図１３に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の叩解機４０の構成が改変されたものである。
【０２０４】
すなわち、本実施形態の叩解機４０は、２つの固定側叩解円盤４２、４２と、これら両叩解円盤４２、４２間に介装される回転側叩解円盤４１とからなるいわゆるダブルディスクリファイナの形態とされている。
【０２０５】
具体的には、上記叩解機４０において、叩解槽４５の対向する上下両内側面に一対の固定側叩解円盤４２、４２がそれぞれ固定的に設けられるとともに、これら両固定側叩解円盤４２、４２間において、回転側叩解円盤４１が両固定側叩解円盤４２、４２に対して微小な叩解隙間Ｒ，Ｒをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されてなり、具体的には図示しないが、上記回転側叩解円盤４１が、回転主軸５４を介して、図外の駆動モータ４６に駆動連結されている。
両固定側叩解円盤４２、４２の中心部位に、上記叩解槽４５の供給口４５ａに連通する入口５０、５０が形成されるとともに、３つの叩解円盤４２、４２、４１の外周縁部が上叩解槽４５の排出口４５ｂに連通する出口５１とされている。なお、上側の固定側叩解円盤４２の入り口５０は、叩解槽４５の連通路４５ｃを介して上記供給口４５ａに連通されている。
【０２０６】
上下両叩解隙間Ｒ、Ｒの具体的構成は、実施形態１における叩解隙間Ｒの構成と同様である。
【０２０７】
しかして、以上のような構成とされた叩解機４０においては、回転側叩解円盤４１の上下に２つの叩解隙間Ｒ、Ｒが形成されることから、実施形態１に比較して大容量の古紙パルプＵＰＰの叩解が可能となる。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２０８】
実施形態５
本実施形態は図１４に示されており、実施形態１におけるパルプ製造部２の離解部１０の構成が改変されたものである。
【０２０９】
すなわち、本実施形態の古紙再生装置１においては、離解部１０の離解槽１５の投入口７に、シュレッダ部（シュレッダ手段）１６０が設けられて、上記投入口７に投入された古紙ＵＰが上記シュレッダ部１６０により予備的に裁断されて、攪拌装置１６による離解・叩解の高効率化が図られる構成とされている。このシュレッダ部１６０の具体的構造は、従来周知のシュレッダと同様、古紙ＵＰを小さな紙片に裁断する基本的構造（ダブルカット方式やクロスカット方式等）を備えている。
その他の構成および作用は実施形態１と同様である。
【０２１０】
なお、上述した実施形態１〜５はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【０２１１】
例えば、図示の実施形態においては、叩解部１１の古紙パルプ循環経路３９に古紙パルプＵＰＰを強制的に循環させて叩解機４０に供給するための循環ポンプ６９が設けられているが、叩解機４０が離解槽１５よりも下側位置に配置される構成とされて、古紙パルプＵＰＰが自重で叩解機４０に供給される構成を採ることができる場合には、循環ポンプ６９を省略することも可能である。
【０２１２】
また、図示の実施形態の叩解機４０は、一対の叩解円盤４１、４２の軸心が垂直起立状に配されてなる縦型とされているが、上記軸心が水平に配されてなる横型とされても良い。
【符号の説明】
【０２１３】
ＵＰ 古紙
ＵＰＰ 古紙パルプ
ＰＳ パルプ懸濁液
ＲＰ 再生紙
Ｒ 叩解隙間
Ｂ 叩解空間
Ｈ（Ｈ１、Ｈ２、Ｈ３） 刃先間隔
１ 古紙再生装置
２ パルプ製造部（パルプ製造装置）
３ パルプ濃度調整部（パルプ濃度調整手段）
３Ａ 叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）
３Ｂ 抄紙濃度調整部（抄紙濃度調整手段）
３Ｃ パルプ濃度制御部（パルプ濃度制御手段）
４ 抄紙部
５ 装置制御部
１０ 離解部
１１ 叩解部
１５ 離解槽
１６ 攪拌装置（攪拌手段）
１７ 給水装置（給水手段）
３１ 駆動モータ
３Ａ 叩解濃度調整部（叩解濃度調整手段）
３５ 白水回収槽
３６、３７ 給水ポンプ
３９ 古紙パルプ循環経路
４０ 叩解機
４１、４２ 叩解円盤
４１ａ、４２ａ 対向面
４５ 叩解槽
４５ａ 供給口
４５ｂ 排出口
４６ 駆動モータ（回転駆動源）
５０ 入口
５１ 出口
６０ 粗叩解工程区域（円環状叩解区域）
６１ 仕上叩解工程区域（円環状叩解区域）
６２ 区画壁
６２ａ 連通口
６５ａ、６５ｂ 叩解刃
６６ａ、６６ｂ 叩解刃
６９ 循環ポンプ
９０ 抄紙工程部
９１ 脱水ロール部
９２ 乾燥工程部
１００ 抄紙コンベア
１０１ パルプ供給部
１２１ 乾燥コンベア
１２２ 加熱乾燥部
１６０ 粗仕上叩解工程区域（円環状叩解区域）
１６２ 区画壁
１６２ａ 連通口
【特許請求の範囲】
【請求項１】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置において、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造装置であって、
古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とを備えてなり、
この叩解部は、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、
この叩解機は、隣接して対向する一対の前記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、
この叩解隙間は、前記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、前記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされている
ことを特徴とする古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項２】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が前記供給口に連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域が前記排出口に連通されている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項３】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域から構成され、
内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項４】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域間に介在する円環状叩解区域が、前記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項５】
前記各円環状叩解区域において、対向する一対の前記叩解円盤の対向面に、複数の叩解刃が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなり、
これら対向する叩解刃の刃先間隔は、前記最内径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最大とされるとともに、前記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最小とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項６】
前記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔は、前記パルプがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている
ことを特徴とする請求項５に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置
【請求項７】
前記叩解機は、上流側からの古紙パルプを供給する前記供給口および叩解された古紙パルプを下流側へ排出する前記排出口を有する叩解槽と、この叩解槽内に相対的に回転可能に設けられた前記少なくとも一対の叩解円盤と、これら叩解円盤を相対的に回転動作させる回転駆動源とを備えてなり、
前記供給口から供給される古紙パルプが、前記叩解円盤間の叩解隙間を通過しながら、前記対向する叩解刃の協働作用により粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される
ことを特徴とする請求項６に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項８】
前記叩解機は、前記叩解槽の内側面に固定的に設けられた固定側叩解円盤と、この固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、
前記固定側叩解円盤の中心部位に、前記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、両叩解円盤間の叩解隙間の外周縁部が前記叩解槽の排出口に連通する出口とされている
ことを特徴とする請求項７に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項９】
前記叩解機は、前記叩解槽の対向する両内側面にそれぞれ固定的に設けられた一対の固定側叩解円盤と、これら両固定側叩解円盤間において、両固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、
前記両固定側叩解円盤の中心部位に、前記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、前記３つの叩解円盤の外周縁部が前記叩解槽の排出口に連通する出口とされている
ことを特徴とする請求項７に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１０】
前記叩解部において、古紙パルプを叩解する前記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されるとともに、この古紙パルプ循環経路に古紙パルプを循環させる循環手段と、前記叩解機および循環手段を相互に連動して制御する叩解制御手段とを備えてなり、
前記叩解制御手段により、前記叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１１】
前記離解部は、古紙を投入供給する古紙投入口および離解された古紙パルプを下流側へ排出する排出口を有する離解槽と、この離解槽内に回転可能に設けられた攪拌手段とを備え、上記古紙投入口から供給される古紙が、上記攪拌手段により水と混合攪拌されて、離解・叩解される構成とされている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１２】
前記離解部は、前記離解槽内に水を供給する給水手段を備える
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１３】
前記離解槽の古紙投入口にシュレッダ手段を設けて、前記古紙投入口から投入する前記古紙を、前記シュレッダ手段により予備的に裁断した後、前記攪拌手段により攪拌するようにした
ことを特徴とする請求項１１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１４】
前記古紙パルプ循環経路に、前記離解部の離解槽が含まれてなり、
前記叩解工程を実行するに際して、前記離解部の攪拌手段が駆動制御される構成とされている
ことを特徴とする請求項１１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１５】
前記古紙パルプ循環経路に、前記叩解機により叩解された古紙パルプを貯留するリザーブ槽を含むバイパス経路が切替手段を介して接続されてなり、
前記叩解工程を実行するに際して、前記離解部の離解槽と前記バイパス経路のリザーブ槽を選択的に切替使用するように前記切替手段が駆動制御される構成とされている
ことを特徴とする請求項１４に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１６】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、
前記パルプ製造部は、請求項１から１５のいずれか一つに記載のパルプ製造装置から構成されている
ことを特徴とする古紙再生装置。
【請求項１７】
装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、前記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整手段を備え、
このパルプ濃度調整手段は、前記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を前記叩解機による叩解効率に対応して調整する叩解濃度調整手段と、前記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を再生すべき再生紙の仕上紙質に対応して調整する抄紙濃度調整手段と、これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなる
ことを特徴とする請求項１６に記載の古紙再生装置。
【請求項１】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置において、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造装置であって、
古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とを備えてなり、
この叩解部は、少なくとも一対の叩解円盤が至近距離をもって相対回転可能に対向配置されてなる叩解機を備え、
この叩解機は、隣接して対向する一対の前記叩解円盤間に、粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を実行する微小な叩解隙間を備えてなり、
この叩解隙間は、前記叩解円盤の中心部に形成された供給口に始まるとともに、前記叩解円盤の外周縁部に形成された排出口に終わる構成とされている
ことを特徴とする古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項２】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された少なくとも２つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が前記供給口に連通されるとともに、最外径側の円環状叩解区域が前記排出口に連通されている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項３】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された２つの円環状叩解区域から構成され、
内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされるとともに、外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項４】
前記叩解隙間は、前記対向する一対の前記叩解円盤の対向面間に同心状にかつ径方向に分離して配された３つの円環状叩解区域から構成され、
最内径側の円環状叩解区域が、前記供給口に連通されて粗叩解を行う粗叩解工程区域とされ、最外径側の円環状叩解区域が、前記排出口に連通されて仕上叩解を行う仕上叩解工程区域とされ、これら最内外径側の円環状叩解区域間に介在する円環状叩解区域が、前記両叩解区域に連通されて粗仕上叩解を行う粗仕上叩解工程区域とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項５】
前記各円環状叩解区域において、対向する一対の前記叩解円盤の対向面に、複数の叩解刃が円周方向へ所定の配列ピッチをもってそれぞれ配設されてなり、
これら対向する叩解刃の刃先間隔は、前記最内径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最大とされるとともに、前記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔が最小とされている
ことを特徴とする請求項２に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項６】
前記最外径側の円環状叩解区域における刃先間隔は、前記パルプがフィブリル化され得る仕上叩解寸法に設定されている
ことを特徴とする請求項５に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置
【請求項７】
前記叩解機は、上流側からの古紙パルプを供給する前記供給口および叩解された古紙パルプを下流側へ排出する前記排出口を有する叩解槽と、この叩解槽内に相対的に回転可能に設けられた前記少なくとも一対の叩解円盤と、これら叩解円盤を相対的に回転動作させる回転駆動源とを備えてなり、
前記供給口から供給される古紙パルプが、前記叩解円盤間の叩解隙間を通過しながら、前記対向する叩解刃の協働作用により粗叩解工程から仕上叩解工程まで少なくとも２段階の連続した叩解工程を経て加圧叩解される
ことを特徴とする請求項６に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項８】
前記叩解機は、前記叩解槽の内側面に固定的に設けられた固定側叩解円盤と、この固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、
前記固定側叩解円盤の中心部位に、前記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、両叩解円盤間の叩解隙間の外周縁部が前記叩解槽の排出口に連通する出口とされている
ことを特徴とする請求項７に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項９】
前記叩解機は、前記叩解槽の対向する両内側面にそれぞれ固定的に設けられた一対の固定側叩解円盤と、これら両固定側叩解円盤間において、両固定側叩解円盤に対して回転可能に対向配置された回転側叩解円盤と、この回転側叩解円盤を回転駆動する回転駆動源とを備え、
前記両固定側叩解円盤の中心部位に、前記叩解槽の供給口に連通する入口が形成されるとともに、前記３つの叩解円盤の外周縁部が前記叩解槽の排出口に連通する出口とされている
ことを特徴とする請求項７に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１０】
前記叩解部において、古紙パルプを叩解する前記叩解機が配されてなる古紙パルプ循環経路が形成されるとともに、この古紙パルプ循環経路に古紙パルプを循環させる循環手段と、前記叩解機および循環手段を相互に連動して制御する叩解制御手段とを備えてなり、
前記叩解制御手段により、前記叩解部が古紙パルプを所定時間循環させる循環式とされている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１１】
前記離解部は、古紙を投入供給する古紙投入口および離解された古紙パルプを下流側へ排出する排出口を有する離解槽と、この離解槽内に回転可能に設けられた攪拌手段とを備え、上記古紙投入口から供給される古紙が、上記攪拌手段により水と混合攪拌されて、離解・叩解される構成とされている
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１２】
前記離解部は、前記離解槽内に水を供給する給水手段を備える
ことを特徴とする請求項１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１３】
前記離解槽の古紙投入口にシュレッダ手段を設けて、前記古紙投入口から投入する前記古紙を、前記シュレッダ手段により予備的に裁断した後、前記攪拌手段により攪拌するようにした
ことを特徴とする請求項１１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１４】
前記古紙パルプ循環経路に、前記離解部の離解槽が含まれてなり、
前記叩解工程を実行するに際して、前記離解部の攪拌手段が駆動制御される構成とされている
ことを特徴とする請求項１１に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１５】
前記古紙パルプ循環経路に、前記叩解機により叩解された古紙パルプを貯留するリザーブ槽を含むバイパス経路が切替手段を介して接続されてなり、
前記叩解工程を実行するに際して、前記離解部の離解槽と前記バイパス経路のリザーブ槽を選択的に切替使用するように前記切替手段が駆動制御される構成とされている
ことを特徴とする請求項１４に記載の古紙再生装置のパルプ製造装置。
【請求項１６】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、
前記パルプ製造部は、請求項１から１５のいずれか一つに記載のパルプ製造装置から構成されている
ことを特徴とする古紙再生装置。
【請求項１７】
装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、前記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整手段を備え、
このパルプ濃度調整手段は、前記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を前記叩解機による叩解効率に対応して調整する叩解濃度調整手段と、前記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を再生すべき再生紙の仕上紙質に対応して調整する抄紙濃度調整手段と、これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなる
ことを特徴とする請求項１６に記載の古紙再生装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【公開番号】特開２０１２−１２２１５６（Ｐ２０１２−１２２１５６Ａ）
【公開日】平成２４年６月２８日（２０１２．６．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２７２０８１（Ｐ２０１０−２７２０８１）
【出願日】平成２２年１２月６日（２０１０．１２．６）
【出願人】（０００１０６７８２）株式会社シード (52)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年６月２８日（２０１２．６．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１２月６日（２０１０．１２．６）
【出願人】（０００１０６７８２）株式会社シード (52)
【Ｆターム（参考）】
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