説明

古紙再生装置の洗浄方法、洗浄システムおよび古紙再生装置

【課題】什器サイズの古紙再生装置の装置構成部の各所に残っている古紙パルプを確実に洗浄除去して、常時安定した古紙再生運転を確保することができる古紙再生装置における洗浄技術を提供する。
【解決手段】洗浄システムCSの洗浄方法は、古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する抄紙部4で脱水回収する白水Wを、白水洗浄部220により、古紙再生装置1を構成する装置構成部のパルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3に循環させて、これらパルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3を洗浄処理する白水洗浄工程(A)と、清浄水洗浄部221により、清浄水Wで抄紙部4を洗浄処理する清浄水洗浄工程(B)、(C)とを備えてなる。これにより、装置構成部2、3、4の各所に残っている古紙パルプUPPを確実に洗浄除去して、常時安定した古紙再生運転を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙再生装置の洗浄方法、洗浄システムおよび古紙再生装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置における洗浄技術に関する。
【背景技術】
【0002】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【0003】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【0004】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【0005】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100%再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【0006】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から、本出願人は、例えば特許文献1に記載されるような古紙再生装置を既に開発し提案している。
【0007】
この古紙再生装置は、古紙再生工場等の大規模な古紙再生技術を、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な装置技術として実現したもので、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記抄紙部は、上記パルプ製造部から送られてくる古紙パルプを抄いて湿紙とする抄紙工程部と、この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて再生紙とする乾燥工程部とを備え、これら両工程部は、上記古紙パルプ古紙パルプを処理搬送する走行ベルトを有するベルトコンベアの形態とされている。
【0008】
そして、古紙は、上記パルプ製造部で離解・叩解されて古紙パルプとなり、その後、この古紙パルプは、上記抄紙部におけるベルトコンベアの走行ベルトにより搬送されながら、濾過脱水、圧搾脱水および加熱乾燥の各工程を経て再生紙となる。この場合、上記パルプ化の段階で、古紙は繊維レベルまで分解されて、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開特許公開2007−308837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、上記古紙再生装置を構成する装置構成部を洗浄処理することにより、これら装置構成部の各所に残っている古紙パルプを確実に洗浄除去して、常時安定した古紙再生運転を確保することができる古紙再生装置における洗浄技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の古紙再生装置の洗浄方法は、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えてなる古紙再生装置において、これら古紙再生装置の装置構成部を洗浄処理する洗浄方法であって、上記抄紙部で脱水回収する白水を上記装置構成部に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理する白水洗浄工程と、清浄水により上記抄紙部を洗浄処理する清浄水洗浄工程とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記白水洗浄工程は、上記白水を少なくとも上記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に循環させて、これらパルプ製造部およびパルプ濃度調整部を洗浄する。
【0013】
(2)上記白水洗浄工程において、上記白水を上記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に少なくとも1回循環させる。
【0014】
(3)上記白水洗浄工程において、上記洗浄処理に使用した使用済みの白水を上記抄紙部により抄紙して浄化処理した後に排水する。
【0015】
(4)上記清浄水洗浄工程は、上記パルプ濃度調整部からの古紙パルプを上記抄紙部の抄紙ネットコンベアに供給するパルプ供給部を洗浄するパルプ供給部洗浄工程と、上記抄紙ネットコンベアの網状ベルトを洗浄するベルト洗浄工程とから構成される。
【0016】
(5)上記パルプ供給部洗浄工程は、噴射手段により清浄水を、上記パルプ供給部のオーバフロー堰のオーバフロー部に噴射させて行う。
【0017】
(6)上記ベルト洗浄工程は、噴射手段により清浄水を、走行する上記網状ベルトに裏面側から噴射させて行う。
【0018】
(7)上記網状ベルトは、環状に懸架支持されて回転走行する無端ベルトの形態とされ、上記ベルト洗浄工程において、上記噴射手段による清浄水の噴射は、上記網状ベルトが少なくとも1回転走行する間続けられる。
【0019】
(8)上記白水洗浄工程および清浄水洗浄工程を、各古紙再生運転の終了後に行う。
【0020】
(9)上記白水洗浄工程および清浄水洗浄工程を、一日の古紙再生装置の古紙再生運転の終了後に行う。
【0021】
(10)上記白水洗浄工程を各古紙再生運転の終了後に行うとともに、上記清浄水洗浄工程を一日の古紙再生装置の古紙再生運転の終了後に行う。
【0022】
また、本発明の洗浄システムは、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えてなる古紙再生装置において、この古紙再生装置の装置構成部を洗浄処理するものであって、上記抄紙部で脱水回収する白水を上記装置構成部に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理する白水洗浄手段と、清浄水により上記抄紙部を洗浄処理する清浄水洗浄手段とを備えてなる
ことを特徴とする。
【0023】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記白水洗浄手段は、上記白水を少なくとも上記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に循環させることにより、これらパルプ製造部およびパルプ濃度調整部を洗浄する。
【0024】
(2)上記白水洗浄手段は、上記パルプ製造部に洗浄水を供給する洗浄水給水源と、この洗浄水給水源から上記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部を介して上記給水源に帰還する洗浄水循環経路と、この洗浄水循環経路に設けられ、洗浄水を洗浄水循環経路に循環させる循環ポンプとを備えてなり、上記洗浄水給水源は、上記抄紙部において濾過脱水される白水を回収する白水回収槽と、上記パルプ製造部に上記白水回収槽の白水を洗浄水として供給する給水ポンプとを備える。
【0025】
(3)上記清浄水洗浄手段は、上記パルプ濃度調整部からの古紙パルプを上記抄紙部の抄紙ネットコンベアに供給するパルプ供給部を洗浄するパルプ供給部洗浄手段と、上記抄紙ネットコンベアの網状ベルトを洗浄するベルト洗浄手段とを備える。
【0026】
(4)上記パルプ供給部洗浄手段は、上記パルプ供給部のオーバフロー堰のオーバフロー部に向けて清浄水を噴射する第1噴射手段を備える。
【0027】
(5)上記ベルト洗浄手段は、走行する上記網状ベルトに裏面側から清浄水を噴射する第2噴射手段を備える。
【0028】
(6)上記白水洗浄手段と清浄水洗浄手段を相互に連動して制御する洗浄制御部を備え、この洗浄制御部は、上述した洗浄方法を実行するように上記白水洗浄手段と清浄水洗浄手段を制御する構成とされる。
【0029】
さらに、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えるとともに、これら装置構成部を洗浄処理する上記洗浄システムを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の古紙再生装置の古紙再生装置の洗浄方法によれば、古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部で脱水回収する白水を、古紙再生装置を構成する装置構成部に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理する白水洗浄工程と、清浄水により上記抄紙部を洗浄処理する清浄水洗浄工程とを備えてなるから、上記装置構成部の各所に残っている古紙パルプを確実に洗浄除去して、常時安定した古紙再生運転を確保することができる。
【0031】
すなわち、まず、抄紙作業に使用した多量の使用済みの白水を洗浄水として有効利用して、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部とを含む装置構成部に循環させることで、特に多量の洗浄水を必要とする上記パルプ製造部とパルプ濃度調整部の洗浄を効率よくかつ経済的に行うことができ、続いて、古紙パルプの含まれていない清浄水により上記抄紙部を洗浄処理することで、白水による洗浄だけでは取り除くことができなかった古紙パルプも完全に除去でき、これにより、残存する古紙パルプが乾燥して、この乾燥した古紙パルプによる各所の弁やポンプ等の動作不良の発生と、残存パルプによる濃度調整誤差の発生とを未然にかつ確実に防止することができる。
【0032】
この場合、多量の洗浄水を必要とする上記パルプ製造部とパルプ濃度調整部の洗浄を多量の白水を用いて行うことにより、これら装置構成部の効率的かつ経済的な洗浄が実現する。
【0033】
また、抄紙効果に大きく影響する抄紙部のパルプ供給部と網状ベルトの洗浄を水道水等の清浄水を用いて行うことにより、紙質の良好な再生紙を常に効率的にかつ経済的に再生することができる。
【0034】
その結果、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、かつ機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができ、しかも良質の再生紙を安定して製造することができる什器サイズの古紙再生装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である古紙再生装置の全体概略構成を示す正面断面図である。
【図2】同じく同古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【図3】同古紙再生装置の叩解部の古紙パルプ循環経路構成を示す回路図である。
【図4】同古紙再生装置のパルプ濃度調整部の制御構成を示すブロック図である。
【図5】同古紙再生装置の抄紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図6】同抄紙部の抄紙コンベア部における洗浄構成を一部断面で示す正面図である。
【図7】同じく同抄紙コンベア部における洗浄構成を示し、図7(a)はパルプ供給部の洗浄構成を示す図6のA−A線方向から見た平面図、図7(b)は抄紙ネットベルトの洗浄構成を図6のB−B線方向から見た側面図である。
【図8】同古紙再生装置における洗浄システムの全体構成を示す概略構成図である。
【図9】同洗浄システムの洗浄工程の流れを示すフローチャートである。
【図10】同古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0037】
本発明に係る古紙再生装置が図1〜図10に示されており、この古紙再生装置1は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙UPを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙UPとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【0038】
古紙再生装置1は、図10に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図1に示すように、パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3、抄紙部4および装置制御部(制御部)5を主要部として構成されるとともに、上記装置構成部2〜4を洗浄処理する洗浄システムCSを備えてなる。
【0039】
上記装置構成部2〜4は装置ケース6内に装置収容されてなるコンパクト設計とされる。この装置ケース6は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース6は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、装置ケース6の天板部には、古紙UPを投入するための投入口7が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙RP、RP、…を排出する排出口8が設けられている。また、この排出口8の下縁部位には、排出口8から排出される再生紙RP、RP、…を受け取るための再生紙受取トレー9が取外し可能に設けられている。
【0040】
パルプ製造部2は、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプを製造する工程部位で、古紙UPを攪拌破砕して離解する離解部20と、この離解部20で離解された古紙UPを叩解する叩解部21とからなる。
【0041】
離解槽25は、図2に示すように、その天井壁に、古紙UPを投入供給する上記投入口7が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口28が設けられている。離解槽25の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙UPの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約98リットルの水を加えて、A4判のPPC(plain paper copier)古紙UPを500枚程度(約2000g)一度に攪拌処理(バッチ処理)できる容積を有する離解槽25とされている。この場合の離解される古紙パルプUPPの濃度は2%程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置27からの給水により行われ、この給水装置27は、後述するパルプ濃度調整部3の一部をなす。
【0042】
上記投入口7は、装置ケース6のケースカバー6aの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口28は、開閉弁29により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路49に連通可能とされている。なお、上記排出口28の部位には、古紙UP、UP、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具のなど、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ30が設けられている。
【0043】
上記開閉弁29は、具体的には駆動モータ35によりクランク機構36がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ35としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ35が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0044】
攪拌装置26は上記離解槽25の内部に設けられており、攪拌インペラ40および駆動モータ41を備えてなる。
【0045】
上記攪拌インペラ40は、その回転軸40aが離解槽25の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸40aの下端が、伝動プーリ42a、伝動ベルト42bおよび伝動プーリ42cからなる伝動手段42を介して、駆動モータ41の回転軸41aに駆動連結されている。
【0046】
給水装置27は上記離解槽25に水Wを供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部3の叩解濃度調整部3Aを構成する。
【0047】
図示の実施形態の給水装置27は、図1に示すように、白水回収槽45、叩解濃度調整用の給水ポンプ46および抄紙濃度調整用の給水ポンプ47を備えてなる。白水回収槽45は、後述するように、抄紙部4において濾過脱水される白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)を回収するもので、この白水回収槽45に回収された白水Wが、上記給水ポンプ46により上記離解槽25に、また上記給水ポンプ47により後述する濃度調整槽85にそれぞれ供給される。
【0048】
また、この給水装置27は、後述するように、洗浄システムCSの洗浄水供給源としての機能も兼備し、上記両給水ポンプ46、47が上記洗浄システムCSの給水ポンプとして機能する。
【0049】
また、離解槽25の底部には、重量センサ48が設けられて、離解槽25内で一度にバッチ処理される古紙UP、UP、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ48は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0050】
図示の実施形態の重量センサ48はロードセルからなり、離解槽25の重量と、この離解槽25内に投入供給された古紙UP、UP、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
【0051】
給水装置27の給水源は、白水回収槽45に回収される抄紙部4で脱水された白水Wであり、換言すれば、抄紙部4で脱水回収される白水Wは、すべて古紙再生装置1の装置構成部、具体的には上記パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および洗浄システムCSで帰還利用される水循環方式とされている。
【0052】
図示の実施形態においては、上述したように、最大500枚程度(約2000g)のA4判のPPC古紙UPが離解槽25内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口7の閉止動作により、約98リットルの水が給水装置27により加えられて、あるいは任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置27により加えられて、離解される古紙パルプUPPの濃度が2%程度となるように制御調整される。
【0053】
しかして、攪拌装置26において、装置ケース6の投入開口つまり投入口7から離解槽25内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ41による攪拌インペラ40の正転・逆転動作により、給水装置27から供給された水の中で所定時間(図示の実施形態においては10分〜20分間)だけ攪拌混合されて、これにより、古紙UP、UP、…は離解・叩解されて古紙パルプUPPとなる。
【0054】
なお、上記離解槽25の排出口28は、離解部20の運転時には上記開閉弁29により閉止されて、離解槽25からの古紙UPや古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入が阻止される一方、後述する叩解部21の運転時には、開閉弁29により排出口28が開口されて、離解槽25からの古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入および循環回流が許容される。
【0055】
叩解部21は、上記離解部20で離解された古紙UPを叩解する工程部位で、具体的には、上記離解部20で離解された古紙UPを加圧叩解するとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類(各種印刷技術により古紙UP上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙UP上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる)を磨砕微細化(マイクロファイバ化)するものである。
【0056】
この叩解部21は、摩砕機50を主要部として備えてなる。この摩砕機50は、図3に示すように、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤51、52を主要部として備えてなり、これら一対の叩解円盤51、52は、叩解作用面51a、52aを微小な叩解隙間Gをもって同心状に対向配置されている。
【0057】
また、上記摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、後述するように、叩解工程の初期用の摩砕機50から終期用の摩砕機50に向けて徐々に狭くなるように設定されている。
【0058】
本実施形態の叩解部21においては、図3に示すように、一台の摩砕機50が配されてなる古紙パルプ循環経路49が形成され、これにより、古紙パルプUPが摩砕機50を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
【0059】
この古紙パルプ循環経路49による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース6内という小さく狭い工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路が形成されることになり、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
【0060】
また、一台の摩砕機50が叩解工程の全工程を通じて叩解処理を行うことに関連して、この一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備する。具体的には、この摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0061】
図示の実施形態の摩砕機50は、図2に示すように、装置ケース6を構成する装置機体54に、上記離解部20の離解槽25に隣接して設けられており、また図3に示すように、離解部20の離解槽25に連通可能な叩解槽55と、この叩解槽55内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤51、52と、これら一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させる回転駆動源56と、一対の叩解円盤51、52の叩解隙間Gを調整する隙間調整手段57を備える。
【0062】
叩解槽55は、上記一対の叩解円盤51、52を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプUPPを供給する供給口55aおよび叩解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口55bを有する。
【0063】
具体的には、上記供給口55aは叩解槽55の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口55bは叩解槽55の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口55aおよび排出口55bは、図3に示すように、それぞれ循環用配管49a、49bを介して、上記離解部20の離解槽25に連通可能に接続されるとともに、上記排出口55bは、さらに排出用配管59を介して古紙パルプ回収槽60に連通可能とされている。
【0064】
61は方向切替弁を示しており、この方向切替弁61の切替動作により、排出口55bから排出される古紙パルプUPPは、選択的に、上記離解槽25へ還流され、または古紙パルプ回収槽60へ回収される。方向切替弁61は、具体的には電磁弁からなり、上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0065】
一対の叩解円盤51、52は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされる。図示の実施形態においては、上側の叩解円盤51が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤52が固定側とされてなり、この下側の固定側叩解円盤52に対して、上側の回転側叩解円盤51が微小な叩解隙間Gをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。この回転側叩解円盤51は、装置機体54の固定側に回転可能にかつ軸線方向へ移動可能に軸支された回転主軸64を介して、駆動モータ56に駆動連結されている。
【0066】
上記回転主軸64は、具体的には図示しないが、上記隙間調整手段57の昇降部材に回転可能に軸支されており、その先端部に、上記回転側叩解円盤51が同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部が、上記駆動モータ56の回転軸に回転方向へ一体的にかつ軸線方向へ相対的に移動可能に駆動連結されている。
【0067】
回転駆動源である上記駆動モータ56は、上記一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させるもので、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ56が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0068】
上記微小な叩解隙間Gを形成する両叩解円盤51、52の対向面51a、52a同士は協働して叩解作用面を形成する。これら対向する叩解作用面51a、52aは、多数の砥粒が結合材により結合されてなる砥石面の形態とされている。また、上記両叩解作用面51a、52aは、図3に示すように、その径寸法が互いの対向方向へ連続的に大きくなるテーパ面形状とされて、最外周縁部が互いに平行する環状平坦面とされ、これら環状平坦面が上記叩解隙間Gを形成している。
【0069】
換言すれば、上記一対の叩解円盤51、52において、固定側叩解円盤52の叩解作用面52aの中心部位に、上記叩解槽の供給口55aに同軸状に連通する入口70が形成されるとともに、上記一対の叩解円盤51、52の叩解作用面51a、52aの外周縁部に形成される二つの環状平坦面が、上記叩解槽55の排出口55bに連通しかつ上記叩解隙間Gを有する出口71を形成している。
【0070】
また、回転側叩解円盤51の外周には複数のブレード72、72、…が周方向へ所定間隔をもって設けられており、これらブレード72、72、…は、回転側叩解円盤51の回転により、上記出口71から排出される古紙パルプUPPを、遠心力で上記叩解槽55の排出口55bへ向けて押出すポンプ作用をなす。
【0071】
しかして、駆動源である駆動モータ56により、回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して回転駆動された状態において、上記離解部20の離解槽25から叩解槽55の供給口55a、入口70を介して叩解空間Bに供給される古紙パルプUPPは、上記入口70から叩解空間Bに流入して、この叩解空間Bを通過しながら、相対的に回転する叩解作用面51a、52aによる加圧叩解作用を受けるとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類が磨砕微細化され、この後、上記出口71から叩解槽55の排出口55bを介して排出される。
【0072】
この出口71から排出される際、古紙パルプUPPは、上記叩解隙間Gを有する出口71の部位でさらに加圧叩解作用を受けて、この叩解隙間Gにより規定される所定のミクロンサイズまで微細化(マイクロファイバ化)されることとなる。
【0073】
この点に関して、本実施形態においては、前述したように、古紙パルプ循環経路49に一台の摩砕機50が配されてなる循環式叩解工程(図3参照)が採用されることに関連して、つまり、上記一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備することに関連して、この摩砕機50の叩解隙間Gが、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0074】
隙間調整手段57は、具体的には図示しないが、上記一対の叩解円盤51、52を回転軸線方向へ相対的に移動させて、これら叩解円盤51、52の叩解隙間Gを制御調整する構成とされ、回転側叩解円盤51を回転軸線方向つまり回転主軸64の軸線方向へ移動させる移動手段(図示省略)と、この移動手段を駆動させる駆動源66とを主要部として構成されている。この駆動源としては具体的には電動モータが用いられ、この駆動モータ66が上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0075】
そして、この電動モータ66の回転により、上記移動手段を介して上記回転主軸64が昇降動作し、これにより、回転主軸64と一体の回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して上下方向つまり回転軸線方向へ移動して、両叩解円盤51、52の叩解隙間Gが制御調整される。
【0076】
この目的のため、上記回転側叩解円盤51の昇降位置を検出する位置検出センサ(図示省略)が設けられ、この位置検出センサの検出結果により上記駆動モータ66が駆動制御される。上記位置検出センサは装置制御部5に電気的に接続されている。
【0077】
隙間調整手段57による叩解円盤51、52の叩解隙間Gの制御調整は、図3に示される古紙パルプ循環経路49における循環式叩解工程において、循環手段である循環ポンプ69と相互に連動して行われる。
【0078】
すなわち、図3において、離解部20により離解処理された古紙パルプUPPは、上記循環ポンプ69により古紙パルプ循環経路49で循環されながら、上記摩砕機50による叩解工程が実行され、この際、摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
【0079】
また、上記古紙パルプ循環経路49に、上記離解部20の離解槽25が含まれていることに関連して、上記叩解工程において、上記離解部20の攪拌装置26が駆動制御されて、離解部20が叩解部21と同時に駆動する構成とされている。すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽25から古紙パルプ循環経路49に古紙パルプUPPが流出する一方、摩砕機50による叩解を経た古紙パルプUPPが離解槽25に流入することになり、離解槽25内では叩解度の異なる古紙パルプUPPが混在するため、攪拌装置26による攪拌作用によって、離解槽25内の古紙パルプUPPの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
【0080】
上記古紙パルプ回収槽60は、叩解部21により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプUPPを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプUPPは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部4に送られる前に、パルプ濃度調整部3によって、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液PSとされる。
【0081】
上記パルプ濃度調整部3は、装置に投入される古紙UPと水Wとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部4に供給される古紙パルプUPPの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図4に示すように、叩解濃度調整部3A、抄紙濃度調整部3Bおよびパルプ濃度制御部3Cとを備えてなる。
【0082】
叩解濃度調整部3Aは、パルプ製造部2における古紙パルプUPPの叩解濃度を叩解部21による叩解効率に対応して調整するもので、前述したように、給水装置27の叩解濃度調整用の給水ポンプ46と叩解濃度制御部75を主要部として構成されている。
【0083】
この叩解濃度調整部3Aの給水ポンプ46による白水Wの供給量は、例えば、上記攪拌装置26により離解・叩解された古紙パルプUPPの叩解濃度が、次工程である叩解工程を実行する叩解部21の摩砕機50の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく2%程度の叩解濃度になるように設定される。
【0084】
そして、叩解濃度制御部75は、前述したように、重量センサ48からの計測結果に応じて、離解槽25に必要量の水Wを供給するように上記給水ポンプ46を駆動制御する。この叩解濃度制御部75は、後述するように、装置制御部5の一部を構成している。
【0085】
抄紙濃度調整部3Bは、抄紙部4における古紙パルプUPPの抄紙濃度を再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度に調整するもので、具体的には、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部80、懸濁液調製部114および抄紙濃度制御部82を主要部として備える。
【0086】
区分抽出部80は、前工程のパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPを抽出して濃度調整槽85に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ86を備えてなる。
【0087】
懸濁液調製部114は、上記区分抽出部80により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水Wを所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液PSを調製するもので、前述の給水装置27の給水ポンプ47を主要部として備える。
【0088】
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽85の底部には、前述した離解槽25の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサ87が設けられており、濃度調整槽85内に供給される古紙パルプUPPと濃度調整用の水Wの量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ87は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0089】
抄紙濃度制御部82は、上記区分抽出部80および懸濁液調製部114を連動して制御するもので、装置制御部5の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部80および懸濁液調製部114のポンプ86、47を連動して制御する。
【0090】
すなわち、まず、上記叩解部21から古紙パルプ回収槽60に回収される古紙パルプUPPの全量(図示の実施形態においては、約2000gの古紙UP+100lの水W)から、古紙パルプ供給ポンプ86により、所定分量(図示の実施形態においては1l)の古紙パルプUPPが区分されて、濃度調整槽85へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサ87により感知計測されて、その結果が装置制御部5へ送られる。
【0091】
続いて、この区分された古紙パルプUPPの所定分量に対応して、給水ポンプ47により、白水回収槽45から濃度調整槽85に、希釈用の水Wが所定量(図示の実施形態においては9l(実際は上記重量センサ87の重量計測による))だけ給水される。
【0092】
これにより、上記濃度調整槽85内において、叩解濃度(図示の実施形態においては2%)の古紙パルプUPPが水Wと混合希釈されて、所定濃度(図示の実施形態においては約0.2%濃度(目標濃度))のパルプ懸濁液PSが混合調製される。
【0093】
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液PSの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部4における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約0.2%濃度に設定されている。
【0094】
しかして、このように濃度調整槽85で目標濃度の抄紙濃度(0.2%)に調製されたパルプ懸濁液PSは、第1懸濁液供給ポンプ88により濃度調整槽85からパルプ供給槽89へ移送供給されて、次工程の抄紙部4のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽89には、パルプ懸濁液PSを抄紙部4の抄紙コンベア部95へ送るための第2懸濁液供給ポンプ90が設けられている。
【0095】
また、パルプ供給槽89内には攪拌装置91が設けられており、この攪拌装置87の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液PS全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
【0096】
上記のように、抄紙濃度調整部3による濃度調整が全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行われることにより、使用水量が大幅に減少されるばかりか、濃度調整槽85の形状寸法の大幅な縮小化も可能となり、さらには古紙再生装置1全体のコンパクト化が図られ得る。
【0097】
パルプ濃度制御部3Cは、上記叩解濃度調整部3Aおよび抄紙濃度調整部3Bを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部3Aの叩解濃度制御部75からのパルプ濃度制御情報(古紙UPの投入量、離解槽25への給水量、古紙パルプUPPの叩解濃度等)を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を目標値(抄紙濃度)にするための抄紙濃度制御情報(古紙パルプUPPの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽60からの古紙パルプUPPの区分抽出量、濃度調整槽85への給水量等)を抄紙濃度調整部3Bの抄紙濃度制御部82に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
【0098】
抄紙部4は、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する工程部位で、図1および図5に示すように、抄紙コンベア部95、脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97を主要部として構成されている。
【0099】
抄紙コンベア部95は、上記パルプ製造部2のパルプ供給槽89から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする部位で、抄紙ネットコンベア100とパルプ供給部101を主要部として構成されている。
【0100】
抄紙ネットコンベア100は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト105がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
【0101】
具体的には、抄紙ネットコンベア100は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送走行する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト105と、この網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106とを備えてなる。
【0102】
上記網状ベルト105を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液PSが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる。)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト105とされている。
【0103】
網状ベルト105は、図1、図5および図6に示すように、駆動ローラ107、脱水ロール部96、従動ローラ108および支持ローラ109を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ107を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0104】
そして、上記網状ベルト105における抄紙工程長さは、上記什器サイズの装置ケース6内における網状ベルト105の上側走行方向長さ(図示の場合は図1におけるパルプ供給部101から脱水ロール部96までの左右方向長さ)の範囲内に設定されている。
【0105】
また、上記網状ベルト105の走行速度は、抄紙工程における諸条件を考慮して設定されるもので、好適には0.1m/分〜1m/分に設定され、図示の実施形態においては0.2m/分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも100m/分以上に設定され、早いものでは1000m/分をはるかに上回る速度に設定される。
【0106】
網状ベルト105は、図1、図5および図6に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト105の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。
【0107】
また、網状ベルト105の環状走行経路の内側部位には、図1および図6に示すように、後述する洗浄システムCSのベルト洗浄手段を構成する高圧洗浄ノズル205が設けられており、この高圧洗浄ノズル205には、洗浄水供給槽230に貯留されている清浄水Wが給水ポンプ235により供給される。
【0108】
上記網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106は、具体的には電動モータで、装置制御部5に電気的に接続されている。また、この駆動モータ106は、後述する脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97の走行駆動源としても共用される。
【0109】
パルプ供給部101は、上記網状ベルト105上に上記パルプ製造部2からのパルプ懸濁液PSを供給する部位で、上記抄紙ネットコンベア100の抄紙工程開始端位置に設けられており、このパルプ供給部101により、パルプ懸濁液PSが上記網状ベルト105上面に均一に広がり供給される構成とされている。
【0110】
図示の実施形態のパルプ供給部101の具体的構造が図6に示されている。すなわち、このパルプ供給部101において、上記網状ベルト105が上述のごとく走行方向へ向けて上向き傾斜状に配置されるとともに、この網状ベルト105の上下両側位置に、抄き枠体110および仕切り部材111がそれぞれ配置されてなる。
【0111】
抄き枠体110は、網状ベルト105の上面に摺接可能に配設されるもので、図6に示すように、先端部つまり網状ベルト105の走行方向側端部が開放された本体枠112と、この本体枠112の後端部に設けられたオーバフロー槽113とを備える。
【0112】
上記本体枠112は、その下端面112aが傾斜走行する上記網状ベルト105の上面に摺接するように配されるとともに、本体枠112の枠内幅寸法が製造すべき再生紙RPの幅寸法に設定されている。
【0113】
上記オーバフロー槽113は、上記本体枠112の後端部に一体的に固設されており、その前壁がオーバフロー堰114とされるとともに、このオーバフロー堰114の水平直線状でかつ尖頭形状断面を有する上端縁114aがオーバフロー部を形成してなる。このオーバフロー槽113内には、前記パルプ供給槽89のパルプ懸濁液PSが底面開口115から供給される。
【0114】
なお、オーバフロー槽113内には、小径の連通孔116a、116a、…が幅方向へ所定間隔をもって開設された仕切部材116が設けられており、これにより、オーバフロー部114aからオーバフローするパルプ懸濁液PSが、上記複数の連通孔116a、116a、…を通過する際に、オーバフロー部114a全幅に均等に分散されて、オーバフロー量がオーバフロー部114a全幅にわたって均一になるように調整される。
【0115】
そして、パルプ懸濁液PSが上記パルプ供給槽89からオーバフロー槽113内に供給され貯留されて、オーバフロー槽113がパルプ懸濁液PSで満杯になると、さらなるパルプ懸濁液PSの供給により、パルプ懸濁液PSは、オーバフロー槽113のオーバフロー部114aから図6に矢符にて示されるようにオーバフローして、底板を兼務する滞留板117上に流下することとなる。
【0116】
仕切り部材111は、網状ベルト105の下面に摺接可能に配設されるもので、図6に示すように、複数本の骨組み部材111a、111a、…からなる水切り可能なスノコ構造を備え、上記網状ベルト105の下面全幅を摺接支持する形状寸法を有するとともに、上記スノコ構造の基端側部位が平板部材118により閉塞されている。
【0117】
平板部材118は、図6に示すように、上記抄き枠体110の滞留板117に対応した位置に設けられ、具体的には、滞留板117と連続するように配置され、これにより、網状ベルト105におけるパルプ懸濁液PSの滞留供給部位の網目が平板部材118により閉塞状態に支持されている。
【0118】
また、上記滞留板117の先端縁には、上記網状ベルト105上へのパルプ懸濁液PSの円滑な流れを確保するための薄い案内シート119が設けられている。この案内シート119の先端縁119aは、上記仕切り部材111のスノコ構造を形成する桟つまり上記骨組み部材111a、111a、…の一つ(本実施形態においては最後部から2番目の桟111a)に対応した位置に設定され、具体的には、この桟111aにより支持される網状ベルト105の上面部位に摺接配置されている。
【0119】
また、パルプ供給部101の抄き枠体110内には、後述する洗浄システムCSのパルプ供給部洗浄手段を構成する噴射ノズル232が設けられており、この噴射ノズル232には、洗浄水供給槽230に貯留されている水道水等の清浄水Wが給水ポンプ231により供給される。
【0120】
しかして、第2懸濁液供給ポンプ90により、上記パルプ供給槽89からパルプ供給部101のオーバフロー槽113内へ供給されパルプ懸濁液PSは、オーバフロー槽113のオーバフロー部114aからオーバフローした後、滞留板117上に流下する。
【0121】
そして、パルプ懸濁液PSは、抄き枠体110の本体枠112と仕切り部材111との協働による滞留作用により、網状ベルト105上面に均一に拡散されるとともに、網状ベルト105の矢符方向への走行作用により、上記本体枠112により規定された幅寸法を保持しつつ網状ベルト105と共に搬送されながら、網状ベルト105の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙RP0(図示の実施形態においては、含水率90〜85%)となる。
【0122】
この網状ベルト105により濾過脱水された白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)は、前述したように、上記給水装置27の白水回収槽45に回収される。
【0123】
脱水ロール部96は、上述の抄紙コンベア部95と後述の乾燥ベルトコンベア部97の連係部において、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を圧搾脱水する部位を構成している。
【0124】
具体的には、下流側の上記乾燥ベルトコンベア部97の後述する平滑面ベルト145と上流側の上記抄紙コンベア部95の網状ベルト105とが、図1および図5に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト145と網状ベルト105の上下隣接部分が上記連係部とされて、この連係部において、上記脱水ロール部96が、これら網状ベルト105および平滑面ベルト145を上下両側から挟圧状に転動圧搾して脱水する構造とされている。
【0125】
脱水ロール部96は、少なくとも、予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bを主要部として備えてなる。
【0126】
図示の脱水ロール部96は、図1に具体的に示すように、予備脱水ロール部96A、本脱水ロール部96B、および補助手段としての角度規定ロール部96Cを主要部として構成されている。
【0127】
予備脱水ロール部96Aは、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する予備脱水ロール120と、この予備脱水ロール120に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する予備プレスロール121とからなる予備圧搾ロール対122を備えてなる。
【0128】
そして、これら予備脱水ロール120および予備プレスロール121からなる予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145は上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される。
【0129】
この場合の予備圧力、つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水する上記予備脱水ロール部96Aの予備圧搾力は、多量の水分を含む湿紙RP0が潰れてしまわない程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、予備脱水後の上記網状ベルト105上の湿紙の含水率が80〜75%の範囲になるように、上記予備圧搾力が設定されている。
【0130】
本脱水ロール部96Bは、上記予備脱水ロール部96Aで予備脱水された網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水して所定の含水率の乾紙(再生紙)RPとするもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する本脱水ロール125と、この本脱水ロール125に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する本プレスロール126とからなる本圧搾ロール対127の組を少なくとも1組を備えてなる。
【0131】
そして、これら本脱水ロール125および本プレスロール126からなる本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる。
【0132】
この場合の本圧力つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水する上記本脱水ロール部96Bの本圧搾力は、予備脱水された湿紙RP0について確実に所定の脱水効果が得られる程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、本脱水後の網状ベルト105上の乾紙(再生紙)RPの含水率が70〜65%の範囲になるように設定される。
【0133】
これら脱水ロール部96におけるロール120、121、125、126は、具体的には図示しないが、歯車機構からなる駆動連結手段により単一の駆動モータ106に駆動連結されて、すべてのロール120、121、125、126が互いに連動して回転駆動される。
【0134】
この場合、これらロール120、121、125、126は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト105、平滑面ベルト145の接触面(網状ベルト105の下面および平滑面ベルト145の上面)に対して、上下のロール120、125の外周面と121、126の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【0135】
具体的には、上側の予備および本プレスロール121、126の回転速度が下側の予備および本脱水ロール120、125の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト145の走行速度が、上記網状ベルト105の走行速度よりも僅かに大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転される際に、湿紙RP0にテンションがかかって、湿紙RP0に皺が発生するのを有効に防止する。
【0136】
角度規定ロール部(角度規定手段)96Cは、上記予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bによる圧搾脱水作用を補助して有効にするためのもので、上記予備脱水ロール部96Aの上流側に設けられて、予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定する。
【0137】
角度規定ロール部96Cは、具体的には、上記予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度を規定する網状ベルト案内ロール130と、上記平滑面ベルト145に上側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度を規定する平滑面ベルト案内ロール131とを備えてなる。
【0138】
そして、上記網状ベルト案内ロール130によって予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度が規定されるとともに、上記平滑面ベルト案内ロール131によって予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度が規定されることにより、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度が間接的に所定の範囲内に設定されることになる。
【0139】
網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度は、予備脱水ロール部96Aによる予備脱水作用により、湿紙RP0に含まれる水分が予備脱水ロール部96Aの上流側に多量に搾り出されるところ、この搾り出された多量の水分が湿紙RP0に再吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうのを有効に防止するように設定される。
【0140】
すなわち、予備脱水ロール部96Aの予備脱水ロール120と予備プレスロール121により、上面に湿紙RP0を載置した網状ベルト105と平滑面ベルト145が上下両側から挟圧状に転動圧搾されると、湿紙RP0に含まれている水分は、両ロール120、121の上流側へ搾り出される。
【0141】
この場合、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが大きいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置においては、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に対して離隔した状態にあり、このため、搾り出された上記湿紙RP0に含まれている多量の水分の一部が湿紙RP0に再び吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうおそれがある。
【0142】
これに対して、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが小さいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置において、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に押さえ付けられた状態となり、このため、上記湿紙RP0から搾り出された水分のすべてが、上記網状ベルト105を介して下側へ落下して、湿紙RP0に再吸収されることがなく、湿紙RP0の再スラリー化を確実に防止することができる。
【0143】
上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αは、各種試験の結果、好ましくは1〜20°に設定され、より好ましくは3〜7°に設定され、図示の実施形態においては、5°に設定されている。
【0144】
しかして、駆動モータ106の駆動により、脱水ロール部96における予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bの各ロール120、121、125、126が回転して、まず、予備脱水ロール部96Aにおける予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される(図示の実施形態においては、湿紙RP0の含水率は90〜85%から80〜75%に減少する)。
【0145】
続いて、本脱水ロール部96Bにおける本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる(図示の実施形態においては、含水率80〜75%の湿紙RP0が含水率70〜65%の乾紙RPとなる)。この一連の工程により湿紙RP0から圧搾脱水された白水Wは、給水装置27の白水回収槽45に回収される。
【0146】
上記脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0は、脱水ロール部96の下流側部位において、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転されて、平滑面ベルト145と共に搬送されて、乾燥ベルトコンベア部97による乾燥工程が実施される。
【0147】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト145の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト105の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト145の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙RP0が上記平滑面ベルト145の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【0148】
乾燥ベルトコンベア部97は、上記抄紙コンベア部95で抄紙形成された後、脱水ロール部96で圧搾脱水された乾紙RPをさらに加熱乾燥させて再生紙RPとする部位で、乾燥コンベア170および加熱乾燥部171を主要部として構成されている。
【0149】
乾燥コンベア170は、脱水ロール部96で圧搾脱水された湿紙RP0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト145と、この平滑面ベルト145を走行駆動する上記駆動モータ106とを備えてなる。
【0150】
平滑面ベルト145は、湿紙RP0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙RP0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部171による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
【0151】
この平滑面ベルト145は、図1に示すように、駆動ローラ176、従動ローラ177、脱水ロール部96および従動ローラ178を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ176を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0152】
平滑面ベルト145を走行駆動する駆動モータ106は、前述したように、上記抄紙ネットコンベア100および脱水ロール部96、さらには、後述する被覆ベルト200の走行駆動源としても共用される。
【0153】
加熱乾燥部171は、上記平滑面ベルト145と後述する再生紙平滑化処理部10の被覆ベルト200に挟持搬送される湿紙RP0を加熱乾燥する部位で、具体的には、湿紙RP0の下側面を搬送支持する上記平滑面ベルト145が、その走行経路途中箇所に配された加熱ヒータ180により下側から加熱される構成とされている。
【0154】
図示の実施形態の加熱ヒータ180は、平滑面ベルト145における湿紙RP0の搬送支持面と反対側面に摺接するヒータプレートの形態とされるとともに、平滑面ベルト145の走行経路における水平走行部分に設けられており、平滑面ベルト145における上記湿紙RP0の保持面である上面と反対側面つまり下面に摺接して設けられている。これにより、上記平滑面ベルト145上の湿紙RP0は、上記ヒータプレート180により加熱された平滑面ベルト145により間接的に加熱乾燥されることとなる。
【0155】
また、平滑面ベルト145の走行途中に、上記2つの平滑面仕上げロール149、149が配設されて、平滑面ベルト145上の湿紙RP0を順次転動加圧して、平滑面ベルト145の表面に接触する湿紙RP0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる配置構成とされている。
【0156】
上記平滑面ベルト145における上記加熱乾燥部171の下流側には、剥離部材210が設けられており、平滑面ベルト145上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙RP(含水率10〜7%)を、平滑面ベルト145の保持面から順次剥離する。
【0157】
これに関連して、この剥離部材210の下流側の平滑面ベルト145の走行経路終端位置には、定寸カッタ部211が設けられており、平滑面ベルト145から剥離された再生紙RPは、ここで所定形状(図示の実施形態においては、A4版の形状寸法)に切断されて、装置ケース6の排出口8から排出される。
【0158】
洗浄システムCSは、上記装置構成部、具体的にはパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4を洗浄処理するものである。
【0159】
この洗浄システムCSは、図8に示すように、白水洗浄部(白水洗浄手段)220、清浄水洗浄部(清浄水洗浄手段)221および洗浄制御部222を主要部として構成されている。
【0160】
白水洗浄部(白水洗浄手段)220は、上記抄紙部4で脱水回収する白水Wを上記装置構成部、少なくとも、パルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理するもので、図8に示すように、洗浄水給水源である前記給水装置27、洗浄水循環経路R1〜R7および循環ポンプ(給水ポンプ46、循環ポンプ69、供給ポンプ86、給水ポンプ47、供給ポンプ88、供給ポンプ90)を主要部として構成されている。
【0161】
給水装置27の給水源は、前述したように、白水回収槽45に回収される抄紙部3で脱水された白水Wであり、この抄紙部3で脱水回収される白水Wは、すべて上記離解部20の攪拌装置26およびパルプ濃度調整部3で帰還利用される水循環方式とされている。
【0162】
洗浄水循環経路R1〜R7は、上記給水装置27から上記パルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3を介して再び上記給水装置27に帰還する構成とされ、具体的には、白水回収槽45から攪拌槽25に至る経路R1、攪拌槽25から叩解槽55に至る経路R2(古紙パルプ循環経路49の配管49a)、叩解槽55から攪拌槽25に至る経路R3(古紙パルプ循環経路49の配管49b)、古紙パルプ回収槽60から濃度調整槽85に至る経路R4、濃度調整槽85からパルプ供給槽89に至る経路R5、白水回収槽45から濃度調整槽85に至る経路R6、およびパルプ供給槽89からパルプ供給部101に至る経路R7で構成されている。
【0163】
循環ポンプ46、69、86、47、88、90は、上記洗浄水循環経路R1〜R7具体的には上記各槽45、25、86、85、89に設けられた前記各供給ポンプからなり、洗浄水(白水)Wを上記洗浄水循環経路R1〜R7に循環させるもので、それぞれ後述する洗浄制御部222に電気的に接続されて、互いに連動して駆動制御される。
【0164】
清浄水洗浄部(清浄水洗浄手段)221は、清浄水Wにより上記抄紙部4を洗浄処理するもので、図8に示すように、パルプ供給部101を洗浄するパルプ供給部洗浄部(パルプ供給部洗浄手段)221aと、上記抄紙ネットコンベア100の網状ベルト105を洗浄するベルト洗浄部(ベルト洗浄手段)221bとから構成される。
【0165】
パルプ供給部洗浄部221aは、洗浄水給水源である洗浄水供給槽230、給水ポンプ231、洗浄水供給路R8および第1噴射ノズル装置(第1噴射手段)232を主要部として構成されている。
【0166】
第1噴射ノズル装置232は、図6および図7(a)に示すように、上記パルプ供給部101のオーバフロー堰114のオーバフロー部114aに向けて洗浄水(清浄水)Wを噴射するものである。この部分を清浄水Wで噴射洗浄するのは、以下の理由による。
【0167】
すなわち、オーバフロー部114aの先端エッジは、前述したように、水平直線状でかつ尖頭形状断面(図6参照)を有しており、オーバフローするパルプ懸濁液PSの量は、このオーバフロー部114a全幅にわたって均一になるように構成されている。ところが、複数回(例えば、一日の稼動時間)にわたる抄紙作業により、このオーバフロー部114aの先端エッジにはパルプ懸濁液PS中の古紙パルプUPPが不均一に残存堆積しやすく、これを放置しておくと、上記オーバフロー部114aをオーバフローするパルプ懸濁液PSの量は、オーバフロー部114aの幅方向位置によって不均一となり、この結果、続く網状ベルト105上面へのパルプ懸濁液PSの均一な拡散ができなくなってしまう。このため、清浄水Wの噴射洗浄によりオーバフロー部114aの先端エッジに残存堆積する古紙パルプUPPを除去する必要がある。
【0168】
第1噴射ノズル装置232の具体的構造は、図示のごとく、円筒状の装置本体232aに、複数(図示の場合は5つ)の噴射ノズル232b、232b、…が等間隔をもって配設され、これら噴射ノズル232b、232b、…の噴射口が上記オーバフロー部114aに向けられている。そして、噴射ノズル232b、232b、…の噴射口から噴射される洗浄水(清浄水)Wが図示のごとく、上記オーバフロー部114aの全幅にわたって漏れなく当たるように構成されている。
【0169】
なお、パルプ供給部101の具体的構造は、対象装置の具体的な目的および条件等に応じて種々改変され得るが、この場合、上記オーバフロー堰114のオーバフロー部114aと同様な現象(パルプ懸濁液PS中の古紙パルプUPPが不均一に残存堆積しやすく、これを放置しておくと、続く網状ベルト105上面へのパルプ懸濁液PSの均一な拡散ができなるなど)が生じる箇所については、上記第1噴射ノズル装置232により洗浄水(清浄水)Wを噴射される構成とされる。
【0170】
ベルト洗浄部221bは、洗浄水給水源である上記洗浄水供給槽230、給水ポンプ235、洗浄水供給路R9および第2噴射ノズル(第2噴射手段)236を主要部として構成されている。
【0171】
第2噴射ノズル236は、図6および図7(b)に示すように、走行する上記網状ベルト105に裏面105b側から洗浄水(清浄水)Wを噴射するものである。この部分を清浄水Wで噴射洗浄するのは、複数回(例えば、一日の稼動時間)にわたる抄紙作業により、網状ベルト105の網目には濾過脱水により古紙パルプUPPが残存し、これら残存する古紙パルプUPPにより網状ベルト105が目詰まりを起こして、本来の濾過脱水能力が低下して発揮できなくなるからである。また、上述の白水洗浄部220による白水洗浄では、上記網状ベルト105に残存する古紙パルプUPPを十分に洗浄除去することができないので、清浄水Wの強力な噴射洗浄により除去する必要がある。
【0172】
第2噴射ノズル装置236の具体的構造は、図示のごとく、円筒状の装置本体236aに、複数(図示の場合は6つ)の噴射ノズル236b、236b、…が等間隔をもって配設され、これら噴射ノズル236b、236b、…の噴射口が上記網状ベルト105の裏面105bに向けられている。そして、噴射ノズル262b、262b、…の噴射口から噴射される洗浄水(清浄水)Wが図示のごとく、上記網状ベルト105の全幅にわたって漏れなく当たるように構成されている。
【0173】
また、第2噴射ノズル装置236の噴射圧力は、上記目的のため、第1噴射ノズル装置232の噴射圧力に比較してはるかに大きく(例えば20〜40倍程度)設定されており、図示の実施形態においては、第2噴射ノズル装置236の噴射圧力が好ましくは1メガパスカル(MPa)以上の大きさに設定され、また、第1噴射ノズル装置232の噴射圧力がその1/30程度の大きさに設定される。
【0174】
洗浄制御部222は、白水洗浄部220と清浄水洗浄部221(パルプ供給部洗浄部221a、ベルト洗浄部221b)を相互に連動して制御するもので、具体的には、装置制御部5の一部を構成しており、以下の洗浄工程(A)〜(C)を実行するように、上記白水洗浄部220の循環ポンプ46、69、86、47、88、90と、清浄水洗浄部221(221a、221b)の給水ポンプ231、235を連動制御する構成とされており、またこの洗浄工程において、これらポンプ46、69、86、47、88、90、231、235の駆動に連動して、洗浄処理される上記パルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3、さらには抄紙部4を駆動制御する構成とされている。
【0175】
すなわち、一日の古紙再生運転が完了後すると洗浄運転が開始されて、以下の洗浄工程(A)〜(C)が順次連続して行われる(図9参照)。
【0176】
(A)白水洗浄工程
まず、白水洗浄部220により、抄紙部4で脱水回収する白水Wを装置構成部であるパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4に順次循環させて、以下の(1)〜(6)のように、パルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3を洗浄するとともに、この洗浄処理に使用した使用済みの白水Wは、抄紙部4により抄紙して浄化処理した後に排水される。
【0177】
(1)白水回収槽45内に脱水回収されている白水Wが、給水ポンプ46により、経路R1を介してパルプ製造部2の離解槽25に供給され、さらに循環ポンプ69により、経路R2を介して叩解槽55に入る。
【0178】
これと連動して、離解槽25の攪拌装置26および叩解槽55の叩解円盤51、52が相対的に回転駆動し、これにより、洗浄水Wは、離解槽25から叩解槽55、さらには経路R3を介して再び離解槽25へと循環して、これら両槽25、55内の洗浄が行われる。
【0179】
(2)これら両槽25、55の洗浄後、離解槽25の洗浄水W全量が古紙パルプ回収槽60へ供給され、この古紙パルプ回収槽60内が洗浄される。
【0180】
(3)この古紙パルプ回収槽60の洗浄後、古紙パルプ回収槽60の洗浄水Wが、古紙パルプ供給ポンプ86により、経路R4を介して濃度調整槽85へ供給される。一方、この濃度調整槽85には、給水ポンプ47により、白水回収槽45から別途洗浄水Wが経路R6を介して供給される。これらの洗浄水Wにより、濃度調整槽85内が洗浄される。
【0181】
(4)この濃度調整槽85内の洗浄が済むと、洗浄水Wは、第1懸濁液供給ポンプ88により経路R5を介してパルプ供給槽89へ供給され、このパルプ供給槽89内が洗浄される。
【0182】
(5)パルプ供給槽89内の洗浄が済むと、このパルプ供給槽89内に収容される使用済みの洗浄液Wは、第2懸濁液供給ポンプ90により、経路R7を介して抄紙部4のパルプ供給部101へ供給され、網状ベルト105による抄紙工程を経て、上記洗浄液Wに含まれる古紙パルプUPPが再生紙RP(湿紙RP0)として除去(浄化処理)されて、再び上記白水回収槽45に回収される。
【0183】
すなわち、上記パルプ供給槽89に収容された使用済みの洗浄水Wは、そのパルプ濃度が不明ではあるが(通常運転時に得られるパルプ濃度より一般的に低濃度)、低濃度でもスラッジが微量含有されたパルプであることから、網状ベルト105を低速で走行運転することで、抄紙できるので再生紙RPとして排出する。
【0184】
パルプ供給槽89内の使用済み洗浄水Wがなくなったところで、白水洗浄処理工程1工程が完了する。
【0185】
(6)上記(1)〜(5)の工程を少なくとも1回繰り返す。つまり、白水回収槽45内に脱水回収されている白水Wが、パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4のパルプ供給部101に少なくとも1回循環される。
【0186】
白水洗浄処理工程が完了して、白水回収槽45に濾過回収(浄化処理)された白水Wは最終的に排水除去されて、次回の古紙再生運転時からは新しい水Wが供給され使用される。
【0187】
本実施形態においては、上記(1)〜(5)の工程を1回繰り返した後、白水回収槽45内の白水Wが排水除去されて、新しい水Wが供給される。
【0188】
(B)パルプ供給部洗浄工程
白水洗浄工程(A)に続いて、清浄水洗浄部221のパルプ供給部洗浄部221aによりパルプ供給部101を洗浄する。
【0189】
具体的には、洗浄水供給槽230内に供給貯留される清浄水Wが、給水ポンプ231により経路R8を介して第1噴射ノズル装置232に供給され、この第1噴射ノズル装置232の噴射ノズル232b、232b、…から、パルプ供給部101のオーバフロー堰114の上端縁であるオーバフロー部114aに噴射されて、オーバフロー部114aを洗浄する(図6および図7(a)参照)。洗浄後の洗浄水Wは、図外の排水管を介して白水回収槽45に回収されて、最終的に白水Wと共に排水除去される。
【0190】
(C)ベルト洗浄工程
パルプ供給部洗浄工程(B)に続いて、最後に、清浄水洗浄部221のベルト洗浄部221bにより抄紙ネットコンベア100の網状ベルト105を洗浄する。
【0191】
具体的には、洗浄水供給槽230内の清浄水Wが、給水ポンプ235により経路R9を介して第2噴射ノズル装置236に供給され、この第2噴射ノズル装置236の噴射ノズル236b、236b、…から上記網状ベルト105の裏面105bに向け噴射される。網状ベルト105の裏面105bに噴射される洗浄水Wは、図6および図7(b)に示すように網状ベルト105の裏面105bから表面105a側へ無数の網目を介して通過しながら、これら網目に詰まっている古紙パルプUPPおよび網状ベルト105の表面105a上に残存する古紙パルプUPPを洗浄除去する。洗浄後の洗浄水Wは白水回収槽45に回収されて、上記白水洗浄工程の使用済み洗浄水と共に排水される。
【0192】
この洗浄は、網状ベルト105を低速で走行運転しながら、清浄水Wをこの走行する網状ベルト105に裏面側105bから噴射させて行い、第2噴射ノズル装置236による清浄水Wの噴射は、環状懸架支持されて回転走行する上記網状ベルト105が少なくとも1回転走行する間続けられる。本実施形態においては、上記網状ベルト105が1回転走行する間続けられる。
【0193】
洗浄システムCSによるこれら洗浄工程は、本実施形態においては一日の古紙再生装置1の古紙再生運転の終了後に行う構成とされている。
【0194】
装置制御部5は、上述した洗浄システムCSの洗浄制御部222を備えるほか、上述したパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU、ROM、RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0195】
この装置制御部5には、上述した洗浄システムCSの洗浄制御部222のための制御プラグラムおよび制御情報のほか、パルプ製造部2のパルプ製造工程、濃度調整部3の濃度調整工程および抄紙部4の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれるとともに、上記各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、96、97、10)の駆動に必要な種々の制御情報、例えば、離解部20における攪拌装置26の駆動時間および回転速度、給水装置27の給水タイミングおよび給水量、叩解部21における循環ポンプ69の駆動時間および循環量、摩砕機50の駆動時間および回転速度、ならびに隙間調整手段57の調整タイミングおよび叩解隙間G調整量、ならびに、抄紙部4におけるコンベア100、170の走行速度、加熱乾燥部171の駆動時間、および定寸カッタ部211の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されている。
【0196】
また、上記装置制御部5には、前述したように、重量センサ48、87、ならびに各駆動部35、41、56、61、66、106が電気的に接続されており、装置制御部5は、これらの各種実測値および制御データに従って、上記各駆動部35、41、56、61、66、106を制御する。
【0197】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置1は、電源投入により起動して、装置制御部5により各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、10、96)が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース6の投入口7に投入された古紙UP、UP、…は、パルプ製造部2の離解部20および叩解部21により離解・叩解処理されて、古紙パルプUPPが製造され、さらにパルプ濃度調整部3で抄紙濃度のパルプ懸濁液PSが調製された後、このパルプ懸濁液PSが抄紙部4の抄紙コンベア部95、脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97により抄紙されて、再生紙RPとして再生され、装置ケース6の排出口8から再生紙受取トレー9に排出される。
【0198】
また、上述したように、所定のタイミングまたはインターバルをもって、洗浄システムCSによる洗浄工程が実行される。
【0199】
以上のように構成された古紙再生装置1において、洗浄システムCSが、古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する抄紙部4で脱水回収する白水Wを、古紙再生装置1を構成する装置構成部のパルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3に循環させて、これらパルプ製造部2およびパルプ濃度調整部3を洗浄処理する白水洗浄工程(A)と、清浄水Wにより上記抄紙部4を洗浄処理する清浄水洗浄工程(B)、(C)とを備えてなるから、上記装置構成部2、3、4の各所に残っている古紙パルプUPPを確実に洗浄除去して、常時安定した古紙再生運転を確保することができる。
【0200】
すなわち、まず、抄紙作業に使用した多量の使用済みの白水Wを洗浄水として有効利用して、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプUPPを製造するパルプ製造部2と、このパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を調整するパルプ濃度調整部3とを含む装置構成部に循環させることで、特に多量の洗浄水を必要とする上記パルプ製造部2とパルプ濃度調整部3の洗浄を効率よくかつ経済的に行うことができ、続いて、古紙パルプUPPの含まれていない清浄水Wにより上記抄紙部4を洗浄処理することで、白水Wによる洗浄だけでは取り除くことができなかった古紙パルプUPPも完全に除去でき、これにより、残存する古紙パルプUPPが乾燥して、この乾燥した古紙パルプUPPによる各所の弁やポンプ等の動作不良の発生と、残存パルプUPPによる濃度調整誤差の発生とを未然にかつ確実に防止することができる。
【0201】
この場合、多量の洗浄水Wを必要とする上記パルプ製造部2とパルプ濃度調整部3の洗浄を多量の白水Wを用いて行うことにより、これら装置構成部2、3の効率的かつ経済的な洗浄が実現する。
【0202】
また、抄紙効果に大きく影響する抄紙部4のパルプ供給部101と網状ベルト105の洗浄を水道水等の清浄水Wを用いて行うことにより、紙質の良好な再生紙RPを常に効率的にかつ経済的に再生することができる。
【0203】
また、上記洗浄システムCSを備える古紙再生装置1にあっては、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、かつ機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができ、しかも良質の再生紙を安定して製造することができる什器サイズの古紙再生装置1を実現し提供することができる。
【0204】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0205】
例えば、本発明に係る洗浄システムCS(白水洗浄部(白水洗浄手段)220、清浄水洗浄部(清浄水洗浄手段)221、洗浄制御部222等)の具体的構成は、図示の実施形態に限定されず、同様な機能を有する他の構成を採用することが可能である。一例として、洗浄制御部222の制御構成は、以下のような改変が可能である。
【0206】
(1)図示の実施形態においては、白水洗浄工程(A)において、白水Wを上記パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4に1回のみ循環させているが、複数回循環させる構成とされてもよい。
【0207】
(2)図示の実施形態においては、ベルト洗浄工程(B)において、第2噴射ノズル装置236による清浄水Wの噴射が、網状ベルト105が1回転走行する間続けられるが、複数回転走行する間続けられる構成とされてもよい。
【0208】
(3)図示の実施形態においては、洗浄システムCSによる洗浄工程(A)〜(C)は、本実施形態においては一日の古紙再生装置1の古紙再生運転の終了後に行う構成とされているが、各古紙再生運転(パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4の通常運転)の終了毎に行う構成とされてもよい。
【0209】
さらに、白水洗浄工程(A)を各古紙再生運転の終了後に行うとともに、清浄水洗浄工程(B)および(C)を、一日の古紙再生装置の古紙再生運転の終了後に行う構成とされてもよい。
【0210】
(4)図示の実施形態においては、白水洗浄工程(A)、清浄水洗浄工程(B)、(C)が連続して行われる構成とされているが、これら洗浄工程(A)、(B)、(C)がそれぞれ別個独立して、適宜実行される構成が追加されても良い。
【符号の説明】
【0211】
UP 古紙
UPP 古紙パルプ
PS パルプ懸濁液
RP 再生紙
CS 洗浄システム
1 古紙再生装置
2 パルプ製造部
3 パルプ濃度調整部
4 抄紙部
5 装置制御部(制御部)
27 給水装置
45 白水回収槽
46 給水ポンプ
47 給水ポンプ
100 抄紙ネットコンベア
101 パルプ供給部
105 網状ベルト
113 オーバフロー槽
114 オーバフロー堰
114a オーバフロー部
220 白水洗浄部(白水洗浄手段)
221 清浄水洗浄部(清浄水洗浄手段)
221a パルプ供給部洗浄部(パルプ供給部洗浄手段)
221b ベルト洗浄部(ベルト洗浄手段)
222 洗浄制御部
232 第1噴射ノズル装置(第1噴射手段)
236 第2噴射ノズル装置(第2噴射手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えてなる古紙再生装置において、これら古紙再生装置の装置構成部を洗浄処理する洗浄方法であって、
前記抄紙部で脱水回収する白水を前記装置構成部に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理する白水洗浄工程と、
清浄水により前記抄紙部を洗浄処理する清浄水洗浄工程とを備えてなる
ことを特徴とする古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項2】
前記白水洗浄工程は、前記白水を少なくとも前記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に循環させて、これらパルプ製造部およびパルプ濃度調整部を洗浄する
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記白水洗浄工程において、前記白水を前記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に少なくとも1回循環させる
ことを特徴とする請求項2に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記白水洗浄工程において、前記洗浄処理に使用した使用済みの白水を前記抄紙部により抄紙して浄化処理した後に排水する
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記清浄水洗浄工程は、前記パルプ濃度調整部からの古紙パルプを前記抄紙部の抄紙ネットコンベアに供給するパルプ供給部を洗浄するパルプ供給部洗浄工程と、前記抄紙ネットコンベアの網状ベルトを洗浄するベルト洗浄工程とから構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記パルプ供給部洗浄工程は、噴射手段により清浄水を、前記パルプ供給部のオーバフロー堰のオーバフロー部に噴射させて行う
ことを特徴とする請求項5に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記ベルト洗浄工程は、噴射手段により清浄水を、走行する前記網状ベルトに裏面側から噴射させて行う
ことを特徴とする請求項5に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記網状ベルトは、環状に懸架支持されて回転走行する無端ベルトの形態とされ、
前記ベルト洗浄工程において、前記噴射手段による清浄水の噴射は、前記網状ベルトが少なくとも1回転走行する間続けられる
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記白水洗浄工程および清浄水洗浄工程を、各古紙再生運転の終了後に行う
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項10】
前記白水洗浄工程および清浄水洗浄工程を、一日の古紙再生装置の古紙再生運転の終了後に行う
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項11】
前記白水洗浄工程を各古紙再生運転の終了後に行うとともに、前記清浄水洗浄工程を、一日の古紙再生装置の古紙再生運転の終了後に行う
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の古紙再生装置の洗浄方法。
【請求項12】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えてなる古紙再生装置において、この古紙再生装置の装置構成部を洗浄処理する洗浄システムであって、
前記抄紙部で脱水回収する白水を前記装置構成部に循環させて、これら装置構成部を洗浄処理する白水洗浄手段と、
清浄水により前記抄紙部を洗浄処理する清浄水洗浄手段とを備えてなる
ことを特徴とする古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項13】
前記白水洗浄手段は、前記白水を少なくとも前記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部に循環させることにより、これらパルプ製造部およびパルプ濃度調整部を洗浄する
ことを特徴とする請求項12に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項14】
前記白水洗浄手段は、前記パルプ製造部に洗浄水を供給する洗浄水給水源と、この洗浄水給水源から前記パルプ製造部およびパルプ濃度調整部を介して前記給水源に帰還する洗浄水循環経路と、この洗浄水循環経路に設けられ、洗浄水を洗浄水循環経路に循環させる循環ポンプとを備えてなり、
前記洗浄水給水源は、前記抄紙部において濾過脱水される白水を回収する白水回収槽と、前記パルプ製造部に前記白水回収槽の白水を洗浄水として供給する給水ポンプとを備える
ことを特徴とする請求項12に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項15】
前記清浄水洗浄手段は、前記パルプ濃度調整部からの古紙パルプを前記抄紙部の抄紙ネットコンベアに供給するパルプ供給部を洗浄するパルプ供給部洗浄手段と、前記抄紙ネットコンベアの網状ベルトを洗浄するベルト洗浄手段とを備える
ことを特徴とする請求項12に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項16】
前記パルプ供給部洗浄手段は、前記パルプ供給部のオーバフロー堰のオーバフロー部に向けて清浄水を噴射する第1噴射手段を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項17】
前記ベルト洗浄手段は、走行する前記網状ベルトに裏面側から清浄水を噴射する第2噴射手段を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項18】
前記白水洗浄手段と清浄水洗浄手段を相互に連動して制御する洗浄制御部を備え、
この洗浄制御部は、請求項1から11のいずれか一つの洗浄方法を実行するように前記白水洗浄手段と清浄水洗浄手段を制御する構成とされている
ことを特徴とする請求項12に記載の古紙再生装置の洗浄システム。
【請求項19】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、このパルプ濃度調整部で濃度調整された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えるとともに、これら装置構成部を洗浄処理する請求項12から18のいずれか一つに記載の洗浄システムを備える
ことを特徴とする古紙再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−38199(P2011−38199A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185290(P2009−185290)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【Fターム(参考)】