可動ヒンジ
【課題】軽量かつ信頼性の高い、展開構造物のための展開手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る可動ヒンジ10は、ガスが供給されることにより膨らみガスが排出されることにより萎むインフレータ12と、インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管14a、16aと、前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材(ヒンジ板)14、16とを含んで構成される。
【解決手段】本発明に係る可動ヒンジ10は、ガスが供給されることにより膨らみガスが排出されることにより萎むインフレータ12と、インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管14a、16aと、前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材(ヒンジ板)14、16とを含んで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙機に搭載される展開構造物や地上の建造物に備えられる展開構造物において、これらを展開させる際の駆動手段として利用できる可動ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙における大型の展開構造物は、宇宙機による輸送時には小さい容積内に収納し、宇宙機が宇宙に到達したあとに、大きく展開する必要がある。このような展開構造物を宇宙で展開させるための手段としてはこれまで、バネ、モータ(ステッピングモータ、超音波モータ)等が使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、バネは、構造物の展開経過をコントロールすることが難しいだけでなく、展開と収縮を繰り返し行う上で難点があった。また、モータは重量が重いため、宇宙機において厳しい制限が課せられる重量という点で不利であり、また、信頼性にも問題が残る。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決し、軽量かつ信頼性の高い、展開構造物のための展開手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る可動ヒンジは、ガスが供給されることにより膨らみ、ガスが排出されることにより萎むインフレータと、前記インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管と、前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材とを含む。
【0006】
前記通気管は、他の可動ヒンジの通気管と直接、又はチューブを用いて間接的に接続可能とされている。また、前記ガスの供給及び排出は前記通気管に接続されたポンプによって行うようにすることができる。
【0007】
前記可動ヒンジには、前記可動部材が約180度開いたときにその状態を維持するためのロック機構を設けることができる。このロック機構は、例えば、前記2つの可動板の要の部分にそれぞれの可動板ごとに設けられた互いに対して回動可能な二つの円筒部材と、前記二つの円筒部材を突き当てる方向に付勢する付勢手段と、円筒部材の一方に設けられたカムと、当該カムの形状に対応した形状となるよう他方の円筒部材に設けられたノッチとを備え、前記可動部材が完全に展開したときに前記カムとノッチが前記付勢手段の付勢力によって嵌まり合うようにされたものとすることができる。
【0008】
前記インフレータは、例えば、中空の円筒形に形成された気密性の繊維と、前記円筒の中に埋め込まれた複数のリング部材とを含み、前記円筒の両端は前記2つの可動部材と接合可能とされ、萎んだ状態から膨らんだ状態へ、又は膨らんだ状態から萎んだ状態に変化させたときに前記2つの可動部材が鞴に類似した動作をするように、前記繊維の所定部分を接着させたものである。
【0009】
前記気密性の繊維は、特に宇宙用途の場合に、カプトンを用いることが望ましい。
【0010】
前記の可動ヒンジをチューブによって複数接続するとともに各可動ヒンジの前記可動部材に展開要素を固定した展開構造物を構築することができる。これにより、前記インフレータが萎んだ状態のときは前記展開要素のすべては収納状態となり、前記インフレータが膨らんだときは前記展開要素のすべてが展開した状態となる。このような展開構造物は、特に宇宙で展開される宇宙用途に好適なものであるが、これに限らず、地上の建造物にも適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可動ヒンジは、ガスの供給により膨らみ、ガスの排出により萎むことから、電気的な部品は不要であり、また機構部品も部品点数を極めて少なく抑えられることから、これを用いた展開構造物全体の重量は大幅に軽量化することができる。また、電気的、機械的部品を使わずに済むことから動作上の信頼性を向上させることができ、展開の際に電気的手段が不要となることから、宇宙用途に適用した場合に放射線による悪影響を受けにくい。また、本発明の可動ヒンジは、その通気管を介していくつも接続することができるので、展開構造物の拡張性に優れている。また、ポンプを作動させるだけで展開構造物全体を一斉に展開させ、あるいは閉じさせることができるので、動作の集中的な管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の実施の一形態に係る可動ヒンジ10の構造とその基本的な動作を示した図であり、図2(a)〜(c)は、図1に示した各状態間の遷移の様子をイメージし易いように示した斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、可動ヒンジ10は、主として、ベローズのように折り畳むことができる袋状のインフレータ12と、このインフレータ12の両端に設けられた、可動部材である一対のヒンジ板14、16と、通気管14a、16aから構成されている。通気管14a、16aは、それぞれ、ヒンジ板14、16に固設され、インフレータ12と連通されており、これらを介してインフレータ12にガスを供給し、又は、インフレータ12内のガスを排出することができる。なお、ヒンジ板14、16については、後述の図5により分かり易く示してある。
【0014】
可動ヒンジ10は、図1(a)に示した閉じた状態のときはインフレータ12が折り畳まれて収縮し、一対のヒンジ板14、16は近接して平行な状態となっている。この状態で、通気管14a、16bを介してインフレータ12にガスを供給すると、図1(b)に示すように折り畳まれたインフレータ12が徐々に膨らんでヒンジ板14、16の下側が開いてゆき、最終的には、図1(c)に示すように完全に展開する。このときインフレータ12は最大限に膨らんで、一対のヒンジ板14、16は約180度展開した状態となる。
【0015】
また、図1(c)のように可動ヒンジ10が展開した状態でインフレータ12からガスを排出すると、インフレータ12は徐々に収縮を始め、図1(b)に示す状態を経て、最終的には図1(a)に示す元の閉じた状態に戻る。すなわち、通気管14a、16bを介してインフレータ12にガスを供給/排出することによって、可動ヒンジ10を、閉じた状態から展開状態へ、逆に、展開状態から閉じた状態へ自在に変化させることができる。この間にインフレータ12は、ちょうどパイプオルガンの鞴(ふいご)に類似した動作を行う。
【0016】
次に、可動ヒンジ10の詳しい構造について説明する。図3及び図4は、インフレータ12の構造を示した概略図である。インフレータ12の素材に要求される仕様は、用途によって大きく異なる。例えは、耐熱性、耐放射線性、耐衝撃性、高強度性、高密閉性、気密性などが要求される宇宙用途では、「カプトン」(ディポン社の商標)という商品名でディポン社から供給されるフィルム素材をベースとした材料が適合する。このような厳しい性能が要求されない地上用途でも、適用する駆動対象の重量や大きさなどによって必要とされる性能は異なるが、例えば一般的な建造物への応用であれば、例えば塩化ビニール系やゴム系の素材を利用することができる。
【0017】
図3に示すように、インフレータ12の基本形状は、両端が開放された中空の円筒形であり、この中に6個程度のリング部材30が、図3に示すように平行に埋め込まれている。この基本形状から、図4に示すように、リング部材30の部分が山折り、リング部材とリング部材の間が谷折りになるように折り畳みながら、この円筒形を左右からベローズ状に収縮させる。こうして折り畳まれたインフレータ12の一方の側(図3及び図4では下側)に接着剤を塗布して相互に接着する。このとき、反対側(図3及び図4では上側)は、折り畳まれた状態から開いた状態へ、あるいはその逆に、自在に状態を変えることができる。
【0018】
こうして得られたインフレータ12の両端部に対し、図5に示すように、例えばCFRP材などからなるヒンジ板14、16を接着剤で接着する。このとき、ヒンジ板14、16には予め通気管14a、16aを固設しておき、これをインフレータ12に漏れのないよう接着することによって、インフレータ12と通気管14a、16aとの連通を確保する。
【0019】
一対のヒンジ板14、16が展開動作をする際の軸となる部分(図3及び図4では上側部分、図5ではヒンジ板14と16が接する部分)には、図6に示すようなロック機構40が設けられている。図6(a)はロック機構40だけを取り出した図である。ここで、円筒部材60、62にはそれぞれ、取付板70、72が取り付けられている。この取付板70、72はそれぞれ、ヒンジ板14、16を固定するためのものである。
【0020】
円筒部材60、62の中には、図6(b)に示すように、円筒部材60、62の内径よりも外径が僅かに小さい円筒状の芯66が設けられており、円筒部材60、62は芯66に摺接しながらこれを軸として回動可能とされている。芯66の内部にはさらにバネ64が設けられている。このバネ64の一端は図6(a)の上端部において円筒部材60に、他端は図6(a)の下端部において円筒部材62にそれぞれ固定され、ロック機構40の中央部80において、両円筒部材60、62を芯66に沿って突き当てる方向(すなわちバネが縮む方向)に付勢している。
【0021】
図6(c)は、ロック機構40の中央部分80だけを拡大した図である。図6(c)に示すように、ロック機構40の中央部80において、円筒部材60にはカム60aが、円筒部材62にはこのカムの形状に対応したノッチ62aが形成されている。取付板70、72に取り付けられたヒンジ板14、16が閉じているときは(図1(a)の状態)、カム60aとノッチ62aは外れた状態にある。したがって、円筒部材60と62は、ロック機構40の中央部においてこのカム60aの高さ分だけ離間した状態にある。
【0022】
この状態から前述のようにインフレータ12が膨張してヒンジ板14、16が開くに従って、円筒部材60、62は芯66に摺接しながらこれを軸として回動する。そして、ヒンジ板14、16が180度近くまで展開すると、図6(c)の上段に示すように、カム60aがノッチ62aに嵌まり始め、最終的に180度まで展開すると、その下段のように、カム60aとノッチ62aは完全に嵌まり合ってロック状態となる。これによりヒンジ板14、16はこれ以上開くことはできなくなる。
【0023】
逆に、ヒンジ板14、16を閉じるときは、インフレータ12からガスを排出する際に、カム60aがバネ64の付勢力に抗してノッチ62aから外れるだけの負圧を初期段階のみ加えれば、カム60aはノッチ62aから外れ、その後はスムーズにヒンジ板14、16を閉じる動作を行うことができる。
【0024】
なお、図6(c)に示したカム60aとノッチ62aの形状を若干変えることによって、嵌まり合った両者が簡単に外れないようにすることもできる。例えば宇宙用途において、一端展開した構造物を閉じる必要がなく、むしろヒンジ板14、16が開いた状態を長期間にわたって確実に維持したい場合には、カム60a、ノッチ62aをこのような形状にすることもできる。
【0025】
図7は、これまで説明した可動ヒンジ10のヒンジ板14、16に、大きな面積のパドル20、22を取り付けた状態を示している。このようにパドルを取り付けた状態で可動ヒンジ10を駆動させると、パドル20、22は、可動ヒンジ10の動作に合わせて、閉じた状態から展開状態へ、あるいは展開状態から閉じた状態へと遷移する。また、展開状態でパドルを固定する必要がある場合には、図6に示したロック機構40でヒンジ板14、16を固定する。
【0026】
図8は、これまで説明した可動ヒンジをn個(101〜10n)直列に連結した状態を示した図であり、1番目の可動ヒンジ101の通気管14aにはガスの供給/排出を行うポンプ42が接続され、n番目の可動ヒンジ10nの通気管16aにはガス系統を封止するためのエンダ44が取り付けられている。このように複数の可動ヒンジを連結してそれぞれのインフレータ12を互いに連通させた状態でポンプ42を作動させることによって、すべての可動ヒンジ101〜10nを一斉に駆動させることができる。
【0027】
インフレータ12に対するガスの供給及び排出は、例えば地上用途であれば一般的なポンプを利用することができる。一方、宇宙用途の場合には、一般的なポンプの他に、窒素などを媒体としたヒートポンプを利用することができる。ヒートポンプは、閉じた系の中に流体を封入し、これを加熱することによって液体状態の窒素を気体に相変化させることによって加圧し、逆に気体状態の窒素を冷却して液体に相変化させることによって減圧することができるポンプである。
【0028】
図9乃至図11は、これまで説明した可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。この実証実験では、8個の可動ヒンジ101〜108と8枚のパドル201〜204、221〜224を用いて、直線的に展開される展開構造物を作製した。ここでは符号50で示した部分が、宇宙機の本体として想定している部分である。宇宙機に適用する場合、201〜204、221〜224には、ソーラーパネルやアンテナの部品を装着し、可動ヒンジ101〜108を閉じた状態で宇宙機に収納して宇宙へ打ち上げ、その後十分な時間をかけて可動ヒンジ101〜108を展開させる。
【0029】
図9は、すべての可動ヒンジ10が閉じた状態であり、この状態でポンプ42からインフレータにガスを供給することによって、図10に示すようにパドルが徐々に展開し、最終的には図11に示すようにパドルが完全に開いた状態となる。この図11を見ると分かるように、紙面表側に可動ヒンジ101、103、105、107が、また、紙面裏側に可動ヒンジ102、104、106、108が設けられている。各可動ヒンジのインフレータは、チューブ46によって相互に連通されているとともに、ポンプ42とも接続されている。図9乃至図11では、実験用の装置だったため、ポンプ42を本体の外部に置いたが、実際の宇宙機では、図12に示すように、ポンプとして前述のヒートポンプを用い、これを宇宙機の内部に装備することとなろう。
【0030】
図9乃至11の実証実験の結果から、本実施形態に係る可動ヒンジを宇宙用途に用いた場合には、かなりの規模の展開構造物への応用が可能であると考えられる。また、本実施形態の可動ヒンジの動力源はガスであるため、従来のモータ駆動の装置と比較して小型・軽量化が図られる。具体的には、現在、宇宙用の展開構造物に利用されている超音波モータは50g程度であるが、本実施形態の可動ヒンジは、カプトンフィルムをベースとした場合には、2g程度の重量に抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態の可動ヒンジは、超音波モータなどと異なり電気的な部品を使用しておらず、また機械的構造も極めて単純であるため、宇宙用途においては特に重要な高い信頼性が期待できる。また、電気的部品を使用していないことから、宇宙用途に特有の放射線に対する耐性も高い。さらに、可動ヒンジは、それを一つのノードとして簡単にノード接続が可能であるため、展開構造物の規模の拡張が必要な場合も比較的簡単に対応できる。また、可動ヒンジの駆動源は、ヒートポンプの場合であればその中の気化液化剤であり、その圧力をチューブで宇宙機本体に設置したヒートポンプから伝達できるので、すべての駆動ヒンジを集中的に管理することが可能である。
【0032】
さらに、本実施形態の駆動ヒンジは、動作のコントロールをガスの圧力を利用して行うため動作の微妙なコントロールが可能である。このため、バネなどを使った場合に従来から問題となっていた、展開時の動作における衝撃を軽減することができると考えられる上、チューブを介して圧力をすべての駆動ヒンジに同時に供給することができるため、すべての駆動ヒンジを同時に駆動させ、パドルを一斉に展開させることができるという利点がある。
【0033】
本実施形態の可動ヒンジは、上述の宇宙用途だけでなく、地上においても様々な用途が想定される。例えば、競技場を全天候型とするために設けられる天井を開閉可能とするための駆動機構としての用途が考える。また、本実施形態の可動ヒンジは、ロボットアームの間接機構、電気ノイズ(電磁波等)を嫌う医療機器や航空機等のアクチュエータ、非常に微妙な握力コントロールを要する薬品用のマニピュレータにおける利用が考えられる他、小型、軽量、低ノイズ、微細コントロール性といった特徴を活かして生体の気管・血管等の内部におけるアクチュエータとしての利用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態に係る可動ヒンジ10の構造とその基本的な動作を示した図である。
【図2】図1に示した各状態間の遷移の様子をイメージし易いように示した斜視図である。
【図3】インフレータ12の構造を示した概略図である。
【図4】インフレータ12の構造を示した概略図である。
【図5】可動ヒンジの詳しい構造を示した図である。
【図6】可動ヒンジのロック機構を示した図である。
【図7】可動ヒンジ10のヒンジ板14、16に、大きな面積のパドル20、22を取り付けた状態を示した図である。
【図8】n個の可動ヒンジを直列に連結した状態を示した図である。
【図9】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図10】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図11】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図12】ポンプとしてヒートポンプを用い、これを宇宙機の内部に装備した状態を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
10 可動ヒンジ
12 インフレータ
14、16 ヒンジ板
14a、16a 通気管
30 リング部材
40 ロック機構
42 ポンプ
44 エンダ
46 チューブ
50 宇宙機本体
60、62 円筒部材
60a カム
62a ノッチ
64 バネ
66 芯
70、72 取付板
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙機に搭載される展開構造物や地上の建造物に備えられる展開構造物において、これらを展開させる際の駆動手段として利用できる可動ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙における大型の展開構造物は、宇宙機による輸送時には小さい容積内に収納し、宇宙機が宇宙に到達したあとに、大きく展開する必要がある。このような展開構造物を宇宙で展開させるための手段としてはこれまで、バネ、モータ(ステッピングモータ、超音波モータ)等が使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、バネは、構造物の展開経過をコントロールすることが難しいだけでなく、展開と収縮を繰り返し行う上で難点があった。また、モータは重量が重いため、宇宙機において厳しい制限が課せられる重量という点で不利であり、また、信頼性にも問題が残る。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決し、軽量かつ信頼性の高い、展開構造物のための展開手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る可動ヒンジは、ガスが供給されることにより膨らみ、ガスが排出されることにより萎むインフレータと、前記インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管と、前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材とを含む。
【0006】
前記通気管は、他の可動ヒンジの通気管と直接、又はチューブを用いて間接的に接続可能とされている。また、前記ガスの供給及び排出は前記通気管に接続されたポンプによって行うようにすることができる。
【0007】
前記可動ヒンジには、前記可動部材が約180度開いたときにその状態を維持するためのロック機構を設けることができる。このロック機構は、例えば、前記2つの可動板の要の部分にそれぞれの可動板ごとに設けられた互いに対して回動可能な二つの円筒部材と、前記二つの円筒部材を突き当てる方向に付勢する付勢手段と、円筒部材の一方に設けられたカムと、当該カムの形状に対応した形状となるよう他方の円筒部材に設けられたノッチとを備え、前記可動部材が完全に展開したときに前記カムとノッチが前記付勢手段の付勢力によって嵌まり合うようにされたものとすることができる。
【0008】
前記インフレータは、例えば、中空の円筒形に形成された気密性の繊維と、前記円筒の中に埋め込まれた複数のリング部材とを含み、前記円筒の両端は前記2つの可動部材と接合可能とされ、萎んだ状態から膨らんだ状態へ、又は膨らんだ状態から萎んだ状態に変化させたときに前記2つの可動部材が鞴に類似した動作をするように、前記繊維の所定部分を接着させたものである。
【0009】
前記気密性の繊維は、特に宇宙用途の場合に、カプトンを用いることが望ましい。
【0010】
前記の可動ヒンジをチューブによって複数接続するとともに各可動ヒンジの前記可動部材に展開要素を固定した展開構造物を構築することができる。これにより、前記インフレータが萎んだ状態のときは前記展開要素のすべては収納状態となり、前記インフレータが膨らんだときは前記展開要素のすべてが展開した状態となる。このような展開構造物は、特に宇宙で展開される宇宙用途に好適なものであるが、これに限らず、地上の建造物にも適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可動ヒンジは、ガスの供給により膨らみ、ガスの排出により萎むことから、電気的な部品は不要であり、また機構部品も部品点数を極めて少なく抑えられることから、これを用いた展開構造物全体の重量は大幅に軽量化することができる。また、電気的、機械的部品を使わずに済むことから動作上の信頼性を向上させることができ、展開の際に電気的手段が不要となることから、宇宙用途に適用した場合に放射線による悪影響を受けにくい。また、本発明の可動ヒンジは、その通気管を介していくつも接続することができるので、展開構造物の拡張性に優れている。また、ポンプを作動させるだけで展開構造物全体を一斉に展開させ、あるいは閉じさせることができるので、動作の集中的な管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の実施の一形態に係る可動ヒンジ10の構造とその基本的な動作を示した図であり、図2(a)〜(c)は、図1に示した各状態間の遷移の様子をイメージし易いように示した斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、可動ヒンジ10は、主として、ベローズのように折り畳むことができる袋状のインフレータ12と、このインフレータ12の両端に設けられた、可動部材である一対のヒンジ板14、16と、通気管14a、16aから構成されている。通気管14a、16aは、それぞれ、ヒンジ板14、16に固設され、インフレータ12と連通されており、これらを介してインフレータ12にガスを供給し、又は、インフレータ12内のガスを排出することができる。なお、ヒンジ板14、16については、後述の図5により分かり易く示してある。
【0014】
可動ヒンジ10は、図1(a)に示した閉じた状態のときはインフレータ12が折り畳まれて収縮し、一対のヒンジ板14、16は近接して平行な状態となっている。この状態で、通気管14a、16bを介してインフレータ12にガスを供給すると、図1(b)に示すように折り畳まれたインフレータ12が徐々に膨らんでヒンジ板14、16の下側が開いてゆき、最終的には、図1(c)に示すように完全に展開する。このときインフレータ12は最大限に膨らんで、一対のヒンジ板14、16は約180度展開した状態となる。
【0015】
また、図1(c)のように可動ヒンジ10が展開した状態でインフレータ12からガスを排出すると、インフレータ12は徐々に収縮を始め、図1(b)に示す状態を経て、最終的には図1(a)に示す元の閉じた状態に戻る。すなわち、通気管14a、16bを介してインフレータ12にガスを供給/排出することによって、可動ヒンジ10を、閉じた状態から展開状態へ、逆に、展開状態から閉じた状態へ自在に変化させることができる。この間にインフレータ12は、ちょうどパイプオルガンの鞴(ふいご)に類似した動作を行う。
【0016】
次に、可動ヒンジ10の詳しい構造について説明する。図3及び図4は、インフレータ12の構造を示した概略図である。インフレータ12の素材に要求される仕様は、用途によって大きく異なる。例えは、耐熱性、耐放射線性、耐衝撃性、高強度性、高密閉性、気密性などが要求される宇宙用途では、「カプトン」(ディポン社の商標)という商品名でディポン社から供給されるフィルム素材をベースとした材料が適合する。このような厳しい性能が要求されない地上用途でも、適用する駆動対象の重量や大きさなどによって必要とされる性能は異なるが、例えば一般的な建造物への応用であれば、例えば塩化ビニール系やゴム系の素材を利用することができる。
【0017】
図3に示すように、インフレータ12の基本形状は、両端が開放された中空の円筒形であり、この中に6個程度のリング部材30が、図3に示すように平行に埋め込まれている。この基本形状から、図4に示すように、リング部材30の部分が山折り、リング部材とリング部材の間が谷折りになるように折り畳みながら、この円筒形を左右からベローズ状に収縮させる。こうして折り畳まれたインフレータ12の一方の側(図3及び図4では下側)に接着剤を塗布して相互に接着する。このとき、反対側(図3及び図4では上側)は、折り畳まれた状態から開いた状態へ、あるいはその逆に、自在に状態を変えることができる。
【0018】
こうして得られたインフレータ12の両端部に対し、図5に示すように、例えばCFRP材などからなるヒンジ板14、16を接着剤で接着する。このとき、ヒンジ板14、16には予め通気管14a、16aを固設しておき、これをインフレータ12に漏れのないよう接着することによって、インフレータ12と通気管14a、16aとの連通を確保する。
【0019】
一対のヒンジ板14、16が展開動作をする際の軸となる部分(図3及び図4では上側部分、図5ではヒンジ板14と16が接する部分)には、図6に示すようなロック機構40が設けられている。図6(a)はロック機構40だけを取り出した図である。ここで、円筒部材60、62にはそれぞれ、取付板70、72が取り付けられている。この取付板70、72はそれぞれ、ヒンジ板14、16を固定するためのものである。
【0020】
円筒部材60、62の中には、図6(b)に示すように、円筒部材60、62の内径よりも外径が僅かに小さい円筒状の芯66が設けられており、円筒部材60、62は芯66に摺接しながらこれを軸として回動可能とされている。芯66の内部にはさらにバネ64が設けられている。このバネ64の一端は図6(a)の上端部において円筒部材60に、他端は図6(a)の下端部において円筒部材62にそれぞれ固定され、ロック機構40の中央部80において、両円筒部材60、62を芯66に沿って突き当てる方向(すなわちバネが縮む方向)に付勢している。
【0021】
図6(c)は、ロック機構40の中央部分80だけを拡大した図である。図6(c)に示すように、ロック機構40の中央部80において、円筒部材60にはカム60aが、円筒部材62にはこのカムの形状に対応したノッチ62aが形成されている。取付板70、72に取り付けられたヒンジ板14、16が閉じているときは(図1(a)の状態)、カム60aとノッチ62aは外れた状態にある。したがって、円筒部材60と62は、ロック機構40の中央部においてこのカム60aの高さ分だけ離間した状態にある。
【0022】
この状態から前述のようにインフレータ12が膨張してヒンジ板14、16が開くに従って、円筒部材60、62は芯66に摺接しながらこれを軸として回動する。そして、ヒンジ板14、16が180度近くまで展開すると、図6(c)の上段に示すように、カム60aがノッチ62aに嵌まり始め、最終的に180度まで展開すると、その下段のように、カム60aとノッチ62aは完全に嵌まり合ってロック状態となる。これによりヒンジ板14、16はこれ以上開くことはできなくなる。
【0023】
逆に、ヒンジ板14、16を閉じるときは、インフレータ12からガスを排出する際に、カム60aがバネ64の付勢力に抗してノッチ62aから外れるだけの負圧を初期段階のみ加えれば、カム60aはノッチ62aから外れ、その後はスムーズにヒンジ板14、16を閉じる動作を行うことができる。
【0024】
なお、図6(c)に示したカム60aとノッチ62aの形状を若干変えることによって、嵌まり合った両者が簡単に外れないようにすることもできる。例えば宇宙用途において、一端展開した構造物を閉じる必要がなく、むしろヒンジ板14、16が開いた状態を長期間にわたって確実に維持したい場合には、カム60a、ノッチ62aをこのような形状にすることもできる。
【0025】
図7は、これまで説明した可動ヒンジ10のヒンジ板14、16に、大きな面積のパドル20、22を取り付けた状態を示している。このようにパドルを取り付けた状態で可動ヒンジ10を駆動させると、パドル20、22は、可動ヒンジ10の動作に合わせて、閉じた状態から展開状態へ、あるいは展開状態から閉じた状態へと遷移する。また、展開状態でパドルを固定する必要がある場合には、図6に示したロック機構40でヒンジ板14、16を固定する。
【0026】
図8は、これまで説明した可動ヒンジをn個(101〜10n)直列に連結した状態を示した図であり、1番目の可動ヒンジ101の通気管14aにはガスの供給/排出を行うポンプ42が接続され、n番目の可動ヒンジ10nの通気管16aにはガス系統を封止するためのエンダ44が取り付けられている。このように複数の可動ヒンジを連結してそれぞれのインフレータ12を互いに連通させた状態でポンプ42を作動させることによって、すべての可動ヒンジ101〜10nを一斉に駆動させることができる。
【0027】
インフレータ12に対するガスの供給及び排出は、例えば地上用途であれば一般的なポンプを利用することができる。一方、宇宙用途の場合には、一般的なポンプの他に、窒素などを媒体としたヒートポンプを利用することができる。ヒートポンプは、閉じた系の中に流体を封入し、これを加熱することによって液体状態の窒素を気体に相変化させることによって加圧し、逆に気体状態の窒素を冷却して液体に相変化させることによって減圧することができるポンプである。
【0028】
図9乃至図11は、これまで説明した可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。この実証実験では、8個の可動ヒンジ101〜108と8枚のパドル201〜204、221〜224を用いて、直線的に展開される展開構造物を作製した。ここでは符号50で示した部分が、宇宙機の本体として想定している部分である。宇宙機に適用する場合、201〜204、221〜224には、ソーラーパネルやアンテナの部品を装着し、可動ヒンジ101〜108を閉じた状態で宇宙機に収納して宇宙へ打ち上げ、その後十分な時間をかけて可動ヒンジ101〜108を展開させる。
【0029】
図9は、すべての可動ヒンジ10が閉じた状態であり、この状態でポンプ42からインフレータにガスを供給することによって、図10に示すようにパドルが徐々に展開し、最終的には図11に示すようにパドルが完全に開いた状態となる。この図11を見ると分かるように、紙面表側に可動ヒンジ101、103、105、107が、また、紙面裏側に可動ヒンジ102、104、106、108が設けられている。各可動ヒンジのインフレータは、チューブ46によって相互に連通されているとともに、ポンプ42とも接続されている。図9乃至図11では、実験用の装置だったため、ポンプ42を本体の外部に置いたが、実際の宇宙機では、図12に示すように、ポンプとして前述のヒートポンプを用い、これを宇宙機の内部に装備することとなろう。
【0030】
図9乃至11の実証実験の結果から、本実施形態に係る可動ヒンジを宇宙用途に用いた場合には、かなりの規模の展開構造物への応用が可能であると考えられる。また、本実施形態の可動ヒンジの動力源はガスであるため、従来のモータ駆動の装置と比較して小型・軽量化が図られる。具体的には、現在、宇宙用の展開構造物に利用されている超音波モータは50g程度であるが、本実施形態の可動ヒンジは、カプトンフィルムをベースとした場合には、2g程度の重量に抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態の可動ヒンジは、超音波モータなどと異なり電気的な部品を使用しておらず、また機械的構造も極めて単純であるため、宇宙用途においては特に重要な高い信頼性が期待できる。また、電気的部品を使用していないことから、宇宙用途に特有の放射線に対する耐性も高い。さらに、可動ヒンジは、それを一つのノードとして簡単にノード接続が可能であるため、展開構造物の規模の拡張が必要な場合も比較的簡単に対応できる。また、可動ヒンジの駆動源は、ヒートポンプの場合であればその中の気化液化剤であり、その圧力をチューブで宇宙機本体に設置したヒートポンプから伝達できるので、すべての駆動ヒンジを集中的に管理することが可能である。
【0032】
さらに、本実施形態の駆動ヒンジは、動作のコントロールをガスの圧力を利用して行うため動作の微妙なコントロールが可能である。このため、バネなどを使った場合に従来から問題となっていた、展開時の動作における衝撃を軽減することができると考えられる上、チューブを介して圧力をすべての駆動ヒンジに同時に供給することができるため、すべての駆動ヒンジを同時に駆動させ、パドルを一斉に展開させることができるという利点がある。
【0033】
本実施形態の可動ヒンジは、上述の宇宙用途だけでなく、地上においても様々な用途が想定される。例えば、競技場を全天候型とするために設けられる天井を開閉可能とするための駆動機構としての用途が考える。また、本実施形態の可動ヒンジは、ロボットアームの間接機構、電気ノイズ(電磁波等)を嫌う医療機器や航空機等のアクチュエータ、非常に微妙な握力コントロールを要する薬品用のマニピュレータにおける利用が考えられる他、小型、軽量、低ノイズ、微細コントロール性といった特徴を活かして生体の気管・血管等の内部におけるアクチュエータとしての利用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態に係る可動ヒンジ10の構造とその基本的な動作を示した図である。
【図2】図1に示した各状態間の遷移の様子をイメージし易いように示した斜視図である。
【図3】インフレータ12の構造を示した概略図である。
【図4】インフレータ12の構造を示した概略図である。
【図5】可動ヒンジの詳しい構造を示した図である。
【図6】可動ヒンジのロック機構を示した図である。
【図7】可動ヒンジ10のヒンジ板14、16に、大きな面積のパドル20、22を取り付けた状態を示した図である。
【図8】n個の可動ヒンジを直列に連結した状態を示した図である。
【図9】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図10】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図11】可動ヒンジ10を実際に宇宙用途で利用することを想定した実証実験を行ったときの様子を示した図である。
【図12】ポンプとしてヒートポンプを用い、これを宇宙機の内部に装備した状態を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
10 可動ヒンジ
12 インフレータ
14、16 ヒンジ板
14a、16a 通気管
30 リング部材
40 ロック機構
42 ポンプ
44 エンダ
46 チューブ
50 宇宙機本体
60、62 円筒部材
60a カム
62a ノッチ
64 バネ
66 芯
70、72 取付板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが供給されることにより膨らみ、ガスが排出されることにより萎むインフレータと、
前記インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管と、
前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材と、
を含むことを特徴とする可動ヒンジ。
【請求項2】
前記通気管は、他の可動ヒンジの通気管と直接、又はチューブを用いて間接的に接続可能とされている請求項1に記載の可動ヒンジ。
【請求項3】
さらに、前記可動部材が約180度開いたときにその状態を維持するためのロック機構を設けた請求項1又は2に記載の可動ヒンジ。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記2つの可動板の要の部分にそれぞれの可動板ごとに設けられた互いに対して回動可能な二つの円筒部材と、前記二つの円筒部材を突き当てる方向に付勢する付勢手段と、円筒部材の一方に設けられたカムと、当該カムの形状に対応した形状となるよう他方の円筒部材に設けられたノッチとを含んでおり、前記可動部材が完全に展開したときに前記カムとノッチが前記付勢手段の付勢力によって嵌まり合うようにされたものである、請求項3に記載の可動ヒンジ。
【請求項5】
前記ガスの供給及び排出は前記通気管に接続されたポンプによって行うようにした、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項6】
前記インフレータは、中空の円筒形に形成された気密性の繊維と、前記円筒の中に埋め込まれた複数のリング部材とを含み、前記円筒の両端は前記2つの可動部材と接合可能とされ、萎んだ状態から膨らんだ状態へ、又は膨らんだ状態から萎んだ状態に変化させたときに前記2つの可動部材が鞴に類似した動作をするように、前記繊維の所定部分を接着させたものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項7】
前記気密性の繊維はカプトンとされた、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の可動ヒンジをチューブによって複数接続するとともに各可動ヒンジの前記可動部材に展開要素を固定した展開構造部であって、前記インフレータが萎んだ状態のときは前記展開要素のすべては収納状態となり、前記インフレータが膨らんだときは前記展開要素のすべてが展開した状態となることを特徴とする、展開構造物。
【請求項9】
前記各展開要素は宇宙で展開されるものである、請求項8に記載の展開構造物。
【請求項1】
ガスが供給されることにより膨らみ、ガスが排出されることにより萎むインフレータと、
前記インフレータに連通し、インフレータに対してガスの供給及び排出を可能とする通気管と、
前記インフレータが萎んだときは重なり合い、前記インフレータにガスが膨らむに従ってベローズ状に徐々に展開し、前記インフレータが完全に最大限に膨らんだときに約180度展開されるよう前記インフレータに取り付けられた2つの可動部材と、
を含むことを特徴とする可動ヒンジ。
【請求項2】
前記通気管は、他の可動ヒンジの通気管と直接、又はチューブを用いて間接的に接続可能とされている請求項1に記載の可動ヒンジ。
【請求項3】
さらに、前記可動部材が約180度開いたときにその状態を維持するためのロック機構を設けた請求項1又は2に記載の可動ヒンジ。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記2つの可動板の要の部分にそれぞれの可動板ごとに設けられた互いに対して回動可能な二つの円筒部材と、前記二つの円筒部材を突き当てる方向に付勢する付勢手段と、円筒部材の一方に設けられたカムと、当該カムの形状に対応した形状となるよう他方の円筒部材に設けられたノッチとを含んでおり、前記可動部材が完全に展開したときに前記カムとノッチが前記付勢手段の付勢力によって嵌まり合うようにされたものである、請求項3に記載の可動ヒンジ。
【請求項5】
前記ガスの供給及び排出は前記通気管に接続されたポンプによって行うようにした、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項6】
前記インフレータは、中空の円筒形に形成された気密性の繊維と、前記円筒の中に埋め込まれた複数のリング部材とを含み、前記円筒の両端は前記2つの可動部材と接合可能とされ、萎んだ状態から膨らんだ状態へ、又は膨らんだ状態から萎んだ状態に変化させたときに前記2つの可動部材が鞴に類似した動作をするように、前記繊維の所定部分を接着させたものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項7】
前記気密性の繊維はカプトンとされた、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の可動ヒンジ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の可動ヒンジをチューブによって複数接続するとともに各可動ヒンジの前記可動部材に展開要素を固定した展開構造部であって、前記インフレータが萎んだ状態のときは前記展開要素のすべては収納状態となり、前記インフレータが膨らんだときは前記展開要素のすべてが展開した状態となることを特徴とする、展開構造物。
【請求項9】
前記各展開要素は宇宙で展開されるものである、請求項8に記載の展開構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−100652(P2008−100652A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286401(P2006−286401)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(506353644)JASPA株式会社 (1)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(506353644)JASPA株式会社 (1)
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