可動ルーバー装置
【課題】フィードバック発振音の発生を効果的に防止可能な可動ルーバー装置を提供する。
【解決手段】複数の回転羽根3Aを備え、回転羽根は、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置1Aにおいて、回転羽根の縁面9が、回転中心軸の回転中心軸線71上の2点(72;73)と表面又は裏面における両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する面(傾斜面81)を備えたことを特徴とする。
【解決手段】複数の回転羽根3Aを備え、回転羽根は、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置1Aにおいて、回転羽根の縁面9が、回転中心軸の回転中心軸線71上の2点(72;73)と表面又は裏面における両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する面(傾斜面81)を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック発振音の発生防止機能を備えた可動ルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定のルーバフィンの風上縁部や風下縁部に縁板や円柱状物体のような風切り騒音防止部を備えたルーバー装置(例えば、特許文献1乃至3など参照)や、回転可能な複数の回転羽根を備えた可動ルーバー装置(例えば、特許文献4など参照)が知られている。
【0003】
図6乃至図8を参照し、可動ルーバー装置の基本構造の一例を説明する。可動ルーバー装置1は、ルーバー枠2と、複数の回転羽根3と、回転羽根3の回転支持部4、複数の回転羽根3を連動して回転可能とする連結機構5と、風流に対する回転羽根3の表面8aや裏面8bの傾斜角度を所定の角度に固定するための角度設定手段15とを備える。
ルーバー枠2は例えば四角形枠に形成される。四角形枠は、上下に対向する一対の横桟6と左右に対向する一対の縦桟7とを備える。回転羽根3は、長尺な板に形成される。回転羽根3の長辺の長さは一対の縦桟7間の寸法に対応した長さに形成される。
回転羽根3は、例えば、長辺の長さ寸法が700mm、短辺の長さ寸法が50mm、板の厚さ寸法が10mmの横長の板材により形成される。
横方向に長尺な横長の回転羽根3は、回転羽根3の両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bよりそれぞれ突出するように設けられた回転中心軸11がルーバー枠2の左右の縦桟7に回転自在に取付けられる。ルーバー枠2の左右の縦桟7に回転自在に取付けられる複数の回転羽根3は、互いに縦方向に隣り合うように並べられて設けられる。
回転羽根3の回転支持部4は、回転羽根3の左側端面10a及び右側端面10aより突出する回転中心軸11を回転可能に支持するために縦桟7の内側板7X(図8参照)に設けられた軸受穴により形成される。
連結機構5は、例えば、一対の縦桟7のうちの一方の縦桟7aの内側に設けられる。連結機構5は、回転羽根3の回転中心軸11に連結されて回転中心軸11の回転に伴って回転中心軸11を回転中心として回転する翼片20と、上下に隣り合う複数の回転羽根3の翼片20の端部21同士を繋いで上下に隣り合う複数の回転羽根3の翼片20を連動させて回転させる連結体22とを備える。
回転羽根3の角度設定手段15(図8参照)は、例えば、縦桟7の内側板7Xを貫通する複数の貫通孔であって回転中心軸11を中心とする円の軌跡上に形成された複数の停止ピン挿入孔12と、回転羽根に連結されて縦桟7の方向に進退自在で任意の1つの停止ピン挿入孔12に出し入れ可能に形成された停止ピン13とにより形成される。
回転羽根3としては、例えば、長辺700mm×短辺50mmの長方形の面により形成された風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8b、長辺700mm×厚さ10mmの長方形の面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9b、短辺50mm×厚さ寸法10mmの長方形の面により形成された両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bを備えたものが知られている。図7に示すように、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3を回転させ、上下方向に隣り合う回転羽根3の表面8aと裏面8bとが重なり合うように回転羽根3の回転角度が設定された場合、上下方向に隣り合う複数の回転羽根3の表面8a及び裏面8bが風遮蔽面8を形成する。上下方向に隣り合う回転羽根3の表面8aと裏面8bとが重ならないように回転羽根3の回転角度が設定された場合、上下方向に隣り合う回転羽根3と回転羽根3との間に風の通過を許容する通路Sが形成される。
即ち、可動ルーバー装置1は、複数の回転羽根3を備え、回転羽根3は、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転支持部4によって回転可能に支持される回転中心軸11を有した両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転羽根3の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9bとを備え、複数の回転羽根3の縁面9同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根3が上下方向(一方向)に並べられて設けられた構成である。
尚、図7に示した回転羽根3の厚さ寸法bが小さい場合には、風遮蔽面8を平面に形成することが可能である。
【0004】
図9に示すように、回転羽根3としては、回転羽根3の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9bに、それぞれ凹凸係合部16を備えたものも知られている。即ち、表面8a側の一方の縁部である上縁部が凸部16aとして形成されるとともに裏面8b側の一方の縁部である上縁部が凹部16bとして形成され、表面8a側の他方の縁部である下縁部が凹部16bとして形成されるとともに裏面8b側の他方の縁部である下縁部が凸部16aとして形成された形態である。図9(a)に示すように、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3を回転させ、上下に並ぶ上の回転羽根3の下縁部の凹凸係合部16と下の回転羽根3の上縁部の凹凸係合部16とが係合して表面8aと裏面8bとで風遮蔽面8が形成され、図9(b)に示すように、上下に並ぶ回転羽根3;3の凹凸係合部16;16の係合が解除された場合に上下方向に隣り合う回転羽根3と回転羽根3との間に風の通過を許容する通路Sが形成される。
尚、凹凸係合部16の凸部16aの厚さ寸法xと凹部16bの厚さ寸法yとを同じにし、かつ、凸部16aの高さ寸法eと凹部16bの深さ寸法fとを同じにすれば、上下の回転羽根3間の隙間が小さくかつ平坦な風遮蔽面8を形成できる。
【特許文献1】特開平7−238649号公報
【特許文献2】特開2001−173326号公報
【特許文献3】特開2007−23638号公報
【特許文献4】特開2007−40016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示した従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3の場合、例えば、図10に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが60°の場合において、風Fが表面8aと下縁面9b(縁面9)との境界である角部(エッジ)8tに衝突して渦F1を作り、この渦F1が表面8aに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が角部8tに伝播して次の渦を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生するという問題点があった。
図9に示した従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3の場合、例えば、図11に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが30°の場合において、風Fが凹凸係合部16の凸部16aと凹部16bとの境界である角部(エッジ)16tに衝突して渦F1を作り、この渦F1が凹部16bの壁に衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が角部16tに伝播して次の渦を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音が発生するという問題点があった。
そこで、本発明は、フィードバック発振音の発生を効果的に防止可能な可動ルーバー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る可動ルーバー装置は、複数の回転羽根を備え、回転羽根は、風遮蔽面を形成する表面及び裏面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置において、回転羽根の縁面が、回転中心軸の回転中心軸線上の2点と表面又は裏面における両方の縁面間の中央点とを含む平面に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする。
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、一端が表面又は裏面のうちの一方の面と連続して表面及び裏面に対して一定の角度で傾斜する傾斜面と、表面又は裏面のうちの他方の面と直交する面であって傾斜面と他方の面とを繋ぐ連結面とにより形成されたことも特徴とする。
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、表面と裏面とに連続する傾斜面により形成され、傾斜面と表面とのなす角度と傾斜面と裏面とのなす角度とが異なることも特徴とする。
傾斜面の端部が、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状に形成されたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の可動ルーバー装置によれば、風が縁面の傾斜面に沿って滑らかに流れるため、周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
傾斜面の端部に形成される角部を、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状にすれば、傾斜面に沿って流れる風の流れをより滑らかにでき、フィードバック発振音の発生をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
最良の形態1.
図1乃至図3は最良の形態を示す。図1(a)は可動ルーバー装置の回転羽根が風を遮蔽する状態に設定された場合を示し、図1(b)は可動ルーバー装置の回転羽根が回転羽根間に風の通過を許容する通路を形成した状態に設定された場合を示し、(c)は傾斜面の説明を示す。図2は実験により得た最良の形態1の可動ルーバー装置による音発生レベルと従来の可動ルーバー装置による音発生レベルとの差である相対音圧レベル差を示したグラフである。図3は最良の形態1の可動ルーバー装置の回転羽根及び従来の可動ルーバー装置の回転羽根の実験条件を示す。尚、図6乃至図11に示した従来例と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0009】
図1に示すように、可動ルーバー装置1Aは、回転羽根3Aを備える。回転羽根3Aは、金属、プラスチック、FRPなどの材料により形成される。回転羽根3Aは、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転支持部4(図8参照)によってルーバー枠2(図6参照)に回転可能に支持される回転中心軸11を有した両方の端面10;10と、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転羽根3Aの回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9として上縁面9a及び下縁面9bとを備える。複数の回転羽根3Aは、縁面9;9同士が互いに隣り合うように上下方向(一方向)に並べられて設けられる。表面8aと裏面8bとが互いに平行な平面により形成される。
【0010】
最良の形態1による可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aは、上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)が、傾斜面81を備える。図1(c)に示すように、傾斜面81は、回転中心軸11の回転中心軸線71上の互いに離れた2点(72;73)と表面8a又は裏面8bにおける両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する面である。
【0011】
さらに具体的には、上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)は、傾斜面81と連結面82とにより形成される。即ち、傾斜面81は、一端83が表面8a又は裏面8bのうちの一方の面と連続して表面8a及び裏面8bに対して一定の角度で傾斜する面である。連結面82は、表面8a又は裏面8bのうちの他方の面と直交する面であって、かつ、当該他方の面と傾斜面81とを繋ぐ面である。
【0012】
従って、傾斜面81と表面8aとのなす角度α、傾斜面81と裏面8bとのなす角α、連結面82と傾斜面81とのなす角度βは、すべて鈍角度に形成される。
【0013】
回転羽根3Aの厚さ寸法A(表面8aと裏面8bとを結ぶ最短距離寸法)は、連結面82の厚さ寸法a(回転羽根3Aの厚さ方向と同方向の寸法)及び傾斜面81の厚さ寸法b(回転羽根3Aの厚さ方向と同方向の寸法)とを足した寸法であり、例えば、a=b=1/2Aに形成される。
【0014】
上記角度α及びβが鈍角度に形成され、かつ、傾斜面81の厚さ寸法bを1/2A以上に形成されれば、傾斜面81の傾斜長さを長くでき、風が傾斜面81に沿ってより滑らかに流れるようになるので、好ましい。
【0015】
回転羽根3Aの上縁面9a(9)と下縁面9b(9)とが、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3Aを回転させた場合に回転対称となるように形成される。
【0016】
最良の形態によれば、図1(a)に示すように、上下方向に隣り合う回転羽根3A;3Aの表面8aと裏面8bとが重なり合って風遮蔽面8が形成されて縁面9;9間の風の通過を遮断する状態から、図1(b)に示すように、上述した角度設定手段15(図8参照)が、上下方向(一方向)に隣り合う回転羽根3Aと回転羽根3Aとの間に風の通過を許容する通路Sを形成するように回転羽根3Aの表面8aや裏面8bの傾斜角度を固定した場合、例えば、図3(a)に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが30°の場合において、風Fが縁面9に向けて流れた場合、風Fが縁面9の傾斜面81に沿って滑らかに流れるため、図10;図11で説明した周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
尚、特許文献1乃至特許文献3などで開示された固定ルーバー装置のように、固定のルーバフィンの風上縁部や風下縁部に縁板や円柱状物体のような風切り騒音防止部を備えた構成の場合、固定されたルーバフィンの角度にて想定された一定の風向きの場合には風切り騒音防止部によりフィードバック発振音の発生を抑えることができるが、一定の風向き以外の場合にはフィードバック発振音の発生を防止できない。
一方、最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによれば、回転羽根3Aの角度設定手段15を操作することで回転羽根3Aの角度を変えることが可能となり、回転羽根3Aが任意の角度に設定された場合においては、どのような風向きの風であっても風が縁面9の傾斜面81に沿って滑らかに流れるため、周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
【0017】
図2は実験により求められた最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによる音発生レベルと図9;図11に示した従来の可動ルーバー装置1による音発生レベルとの差である相対音圧レベル差をグラフで示したものである。実験は、図3(a)に示すように、風Fの流れる方向と最良の形態1の可動ルーバー装置1Aの回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αを30°となるように設定した後に、回転羽根3に風速7m/sの風を送って発生した音圧レベルを測定した。また、図3(b)に示すように、従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3(図9;図11参照)を図3(a)に示した最良の形態1の可動ルーバー装置1Aの回転羽根3と同じ条件下において実験してその音圧レベルを測定した。
図2から解かるように、最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによれば、従来の可動ルーバー装置1と比べて、特に、2500Hz帯域で26.8dBの音低減効果が得られた。
【0018】
図示しないが、傾斜面81と一方の面との境界部分(傾斜面81の端部)に形成される一方角部85と、傾斜面81と連結面82との境界部分(傾斜面81の端部)に形成される他方角部86とのうちの全部、又は、少なくとも1つの角部は、面取り加工により角部の角を落とした形状、又は、角部の角を丸めた形状、つまり、角削除部に形成しておくことが好ましい。このような角削除部を設けることで、上縁面9a(9)や下縁面9b(9)上を流れる風の流れをより滑らかにでき、フィードバック発振音の発生をより効果的に防止できる。
【0019】
最良の形態2.
図4に示すように、最良の形態2による可動ルーバー装置1の回転羽根3Aは、回転羽根の上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)が、表面8a及び裏面8bに対して傾斜する傾斜面90に形成される。傾斜面90と表面8a及び裏面8bとのなす角度は、例えば、鋭角度及び鈍角度に形成される。例えば、表面8aと上縁面9aとのなす角度α及び裏面8bと下縁面9bとのなす角度αが45°(鋭角度)に形成され、表面8aと下縁面9bとのなす角度β及び裏面8bと上縁面9aとのなす角度βが135°(鈍角度)に形成される。傾斜面90は、上述した平面76に対して傾斜する傾斜面でもある。
縁面9と表面8aとの境界部分(傾斜面90の端部)である鋭角部及び鈍角部、縁面9と裏面8bとの境界部分(傾斜面90の端部)である鋭角部及び鈍角部のうちの全部、又は、少なくとも1つの角部は、面取り加工により角部の角を落とした形状、又は、角部の角を丸めた形状、つまり、角削除部91に形成しておくことが好ましい。
【0020】
最良の形態2によれば、最良の形態1と同様に、風Fが縁面9を形成する傾斜面90に沿って滑らかに流れるため、図10;図11で説明した周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。特に、傾斜面90の長さを最良の形態1の傾斜面81の傾斜長さより長くできるので、風Fの流れをより滑らかにできる。
【0021】
最良の形態2のように、回転羽根3Aの縁面9が、表面8a及び裏面8bに対して傾斜する傾斜面90に形成された構成とすれば、回転羽根3Aの厚さ寸法A(図4参照)を大きくした場合でも、風遮蔽面8を平面に形成することが可能となる。
【0022】
最良の形態1;2の可動ルーバー装置1Aを連結機構5も含めて図5に斜視図で示した。図5(a)は可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aが風を遮蔽する状態に設定された場合を斜視図で示し、図5(b)は可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aが回転羽根3A間に風の通過を許容する通路Sを形成した状態に設定された場合を斜視図で示す。
【産業上の利用可能性】
【0023】
表面8a及び裏面8bは、中央部が湾曲状に隆起したような形状でもよい。即ち、表面8aと裏面8bとが互いに平行な平面でなくても、回転羽根3Aの縁面9が、回転中心軸11の回転中心軸線71上の互いに離れた2点(72;73)と表面8a又は裏面8bにおける両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する傾斜面81を備えていればよい。
連結面82は、表面8a又は裏面8bのうちの他方の面と直交する面でなくてもよい。
連結面82の厚さ寸法aと傾斜面81の厚さ寸法bとの比率は、1:1でなくともよい。
最良の形態1の回転羽根3Aの傾斜面81の幅寸法m(図1(b)参照)や傾斜面81の傾斜長さ寸法は限定されず、例えば、裏面8b(表面8a)において上縁面9a(下縁面9b)から回転中心軸11を超えた位置まで延長する傾斜面であってもよい。最良の形態2の回転羽根3Aの傾斜面90の幅寸法や傾斜面90の傾斜長さ寸法についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は可動ルーバー装置の回転羽根の遮蔽状態を示し、(b)は通路形成状態を示し、(c)は傾斜面を説明する図(最良の形態1)。
【図2】実験結果を示すグラフ(最良の形態1)。
【図3】実験条件を示す図であって、(a)は最良の形態1の回転羽根の実験条件を示し、(b)は従来の回転羽根の実験条件を示す図(最良の形態1)。
【図4】可動ルーバー装置の回転羽根の遮蔽状態、通路形成状態を示す図(最良の形態2)。
【図5】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す斜視図(最良の形態1;2)。
【図6】可動ルーバー装置を示す斜視図(従来)。
【図7】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す図(従来)。
【図8】回転支持部、連結機構、角度設定手段の詳細を示す斜視図(従来)。
【図9】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す図(従来)。
【図10】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【図11】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【符号の説明】
【0025】
1A 可動ルーバー装置、2 ルーバー枠(枠)、3A 回転羽根、4 回転支持部、
8 風遮蔽面、8a 表面、8b 裏面、9 縁面、9a 上縁面、9b 下縁面、
10 端面、11 回転中心軸、71 回転中心軸線、72;73 2点、
74 中央点、76 平面、81 傾斜面(平面76に対して傾斜する傾斜面)、
82 連結面、90 傾斜面(平面76に対して傾斜する傾斜面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック発振音の発生防止機能を備えた可動ルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定のルーバフィンの風上縁部や風下縁部に縁板や円柱状物体のような風切り騒音防止部を備えたルーバー装置(例えば、特許文献1乃至3など参照)や、回転可能な複数の回転羽根を備えた可動ルーバー装置(例えば、特許文献4など参照)が知られている。
【0003】
図6乃至図8を参照し、可動ルーバー装置の基本構造の一例を説明する。可動ルーバー装置1は、ルーバー枠2と、複数の回転羽根3と、回転羽根3の回転支持部4、複数の回転羽根3を連動して回転可能とする連結機構5と、風流に対する回転羽根3の表面8aや裏面8bの傾斜角度を所定の角度に固定するための角度設定手段15とを備える。
ルーバー枠2は例えば四角形枠に形成される。四角形枠は、上下に対向する一対の横桟6と左右に対向する一対の縦桟7とを備える。回転羽根3は、長尺な板に形成される。回転羽根3の長辺の長さは一対の縦桟7間の寸法に対応した長さに形成される。
回転羽根3は、例えば、長辺の長さ寸法が700mm、短辺の長さ寸法が50mm、板の厚さ寸法が10mmの横長の板材により形成される。
横方向に長尺な横長の回転羽根3は、回転羽根3の両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bよりそれぞれ突出するように設けられた回転中心軸11がルーバー枠2の左右の縦桟7に回転自在に取付けられる。ルーバー枠2の左右の縦桟7に回転自在に取付けられる複数の回転羽根3は、互いに縦方向に隣り合うように並べられて設けられる。
回転羽根3の回転支持部4は、回転羽根3の左側端面10a及び右側端面10aより突出する回転中心軸11を回転可能に支持するために縦桟7の内側板7X(図8参照)に設けられた軸受穴により形成される。
連結機構5は、例えば、一対の縦桟7のうちの一方の縦桟7aの内側に設けられる。連結機構5は、回転羽根3の回転中心軸11に連結されて回転中心軸11の回転に伴って回転中心軸11を回転中心として回転する翼片20と、上下に隣り合う複数の回転羽根3の翼片20の端部21同士を繋いで上下に隣り合う複数の回転羽根3の翼片20を連動させて回転させる連結体22とを備える。
回転羽根3の角度設定手段15(図8参照)は、例えば、縦桟7の内側板7Xを貫通する複数の貫通孔であって回転中心軸11を中心とする円の軌跡上に形成された複数の停止ピン挿入孔12と、回転羽根に連結されて縦桟7の方向に進退自在で任意の1つの停止ピン挿入孔12に出し入れ可能に形成された停止ピン13とにより形成される。
回転羽根3としては、例えば、長辺700mm×短辺50mmの長方形の面により形成された風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8b、長辺700mm×厚さ10mmの長方形の面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9b、短辺50mm×厚さ寸法10mmの長方形の面により形成された両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bを備えたものが知られている。図7に示すように、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3を回転させ、上下方向に隣り合う回転羽根3の表面8aと裏面8bとが重なり合うように回転羽根3の回転角度が設定された場合、上下方向に隣り合う複数の回転羽根3の表面8a及び裏面8bが風遮蔽面8を形成する。上下方向に隣り合う回転羽根3の表面8aと裏面8bとが重ならないように回転羽根3の回転角度が設定された場合、上下方向に隣り合う回転羽根3と回転羽根3との間に風の通過を許容する通路Sが形成される。
即ち、可動ルーバー装置1は、複数の回転羽根3を備え、回転羽根3は、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転支持部4によって回転可能に支持される回転中心軸11を有した両方の端面10としての左側端面10a及び右側端面10bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転羽根3の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9bとを備え、複数の回転羽根3の縁面9同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根3が上下方向(一方向)に並べられて設けられた構成である。
尚、図7に示した回転羽根3の厚さ寸法bが小さい場合には、風遮蔽面8を平面に形成することが可能である。
【0004】
図9に示すように、回転羽根3としては、回転羽根3の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9としての上縁面9a及び下縁面9bに、それぞれ凹凸係合部16を備えたものも知られている。即ち、表面8a側の一方の縁部である上縁部が凸部16aとして形成されるとともに裏面8b側の一方の縁部である上縁部が凹部16bとして形成され、表面8a側の他方の縁部である下縁部が凹部16bとして形成されるとともに裏面8b側の他方の縁部である下縁部が凸部16aとして形成された形態である。図9(a)に示すように、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3を回転させ、上下に並ぶ上の回転羽根3の下縁部の凹凸係合部16と下の回転羽根3の上縁部の凹凸係合部16とが係合して表面8aと裏面8bとで風遮蔽面8が形成され、図9(b)に示すように、上下に並ぶ回転羽根3;3の凹凸係合部16;16の係合が解除された場合に上下方向に隣り合う回転羽根3と回転羽根3との間に風の通過を許容する通路Sが形成される。
尚、凹凸係合部16の凸部16aの厚さ寸法xと凹部16bの厚さ寸法yとを同じにし、かつ、凸部16aの高さ寸法eと凹部16bの深さ寸法fとを同じにすれば、上下の回転羽根3間の隙間が小さくかつ平坦な風遮蔽面8を形成できる。
【特許文献1】特開平7−238649号公報
【特許文献2】特開2001−173326号公報
【特許文献3】特開2007−23638号公報
【特許文献4】特開2007−40016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示した従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3の場合、例えば、図10に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが60°の場合において、風Fが表面8aと下縁面9b(縁面9)との境界である角部(エッジ)8tに衝突して渦F1を作り、この渦F1が表面8aに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が角部8tに伝播して次の渦を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生するという問題点があった。
図9に示した従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3の場合、例えば、図11に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが30°の場合において、風Fが凹凸係合部16の凸部16aと凹部16bとの境界である角部(エッジ)16tに衝突して渦F1を作り、この渦F1が凹部16bの壁に衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が角部16tに伝播して次の渦を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音が発生するという問題点があった。
そこで、本発明は、フィードバック発振音の発生を効果的に防止可能な可動ルーバー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る可動ルーバー装置は、複数の回転羽根を備え、回転羽根は、風遮蔽面を形成する表面及び裏面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置において、回転羽根の縁面が、回転中心軸の回転中心軸線上の2点と表面又は裏面における両方の縁面間の中央点とを含む平面に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする。
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、一端が表面又は裏面のうちの一方の面と連続して表面及び裏面に対して一定の角度で傾斜する傾斜面と、表面又は裏面のうちの他方の面と直交する面であって傾斜面と他方の面とを繋ぐ連結面とにより形成されたことも特徴とする。
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、表面と裏面とに連続する傾斜面により形成され、傾斜面と表面とのなす角度と傾斜面と裏面とのなす角度とが異なることも特徴とする。
傾斜面の端部が、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状に形成されたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の可動ルーバー装置によれば、風が縁面の傾斜面に沿って滑らかに流れるため、周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
傾斜面の端部に形成される角部を、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状にすれば、傾斜面に沿って流れる風の流れをより滑らかにでき、フィードバック発振音の発生をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
最良の形態1.
図1乃至図3は最良の形態を示す。図1(a)は可動ルーバー装置の回転羽根が風を遮蔽する状態に設定された場合を示し、図1(b)は可動ルーバー装置の回転羽根が回転羽根間に風の通過を許容する通路を形成した状態に設定された場合を示し、(c)は傾斜面の説明を示す。図2は実験により得た最良の形態1の可動ルーバー装置による音発生レベルと従来の可動ルーバー装置による音発生レベルとの差である相対音圧レベル差を示したグラフである。図3は最良の形態1の可動ルーバー装置の回転羽根及び従来の可動ルーバー装置の回転羽根の実験条件を示す。尚、図6乃至図11に示した従来例と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0009】
図1に示すように、可動ルーバー装置1Aは、回転羽根3Aを備える。回転羽根3Aは、金属、プラスチック、FRPなどの材料により形成される。回転羽根3Aは、風遮蔽面8を形成する表面8a及び裏面8bと、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転支持部4(図8参照)によってルーバー枠2(図6参照)に回転可能に支持される回転中心軸11を有した両方の端面10;10と、表面8aと裏面8bとを繋ぐとともに回転羽根3Aの回転中心に沿った面により形成された両方の縁面9として上縁面9a及び下縁面9bとを備える。複数の回転羽根3Aは、縁面9;9同士が互いに隣り合うように上下方向(一方向)に並べられて設けられる。表面8aと裏面8bとが互いに平行な平面により形成される。
【0010】
最良の形態1による可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aは、上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)が、傾斜面81を備える。図1(c)に示すように、傾斜面81は、回転中心軸11の回転中心軸線71上の互いに離れた2点(72;73)と表面8a又は裏面8bにおける両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する面である。
【0011】
さらに具体的には、上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)は、傾斜面81と連結面82とにより形成される。即ち、傾斜面81は、一端83が表面8a又は裏面8bのうちの一方の面と連続して表面8a及び裏面8bに対して一定の角度で傾斜する面である。連結面82は、表面8a又は裏面8bのうちの他方の面と直交する面であって、かつ、当該他方の面と傾斜面81とを繋ぐ面である。
【0012】
従って、傾斜面81と表面8aとのなす角度α、傾斜面81と裏面8bとのなす角α、連結面82と傾斜面81とのなす角度βは、すべて鈍角度に形成される。
【0013】
回転羽根3Aの厚さ寸法A(表面8aと裏面8bとを結ぶ最短距離寸法)は、連結面82の厚さ寸法a(回転羽根3Aの厚さ方向と同方向の寸法)及び傾斜面81の厚さ寸法b(回転羽根3Aの厚さ方向と同方向の寸法)とを足した寸法であり、例えば、a=b=1/2Aに形成される。
【0014】
上記角度α及びβが鈍角度に形成され、かつ、傾斜面81の厚さ寸法bを1/2A以上に形成されれば、傾斜面81の傾斜長さを長くでき、風が傾斜面81に沿ってより滑らかに流れるようになるので、好ましい。
【0015】
回転羽根3Aの上縁面9a(9)と下縁面9b(9)とが、回転中心軸11を回転中心として回転羽根3Aを回転させた場合に回転対称となるように形成される。
【0016】
最良の形態によれば、図1(a)に示すように、上下方向に隣り合う回転羽根3A;3Aの表面8aと裏面8bとが重なり合って風遮蔽面8が形成されて縁面9;9間の風の通過を遮断する状態から、図1(b)に示すように、上述した角度設定手段15(図8参照)が、上下方向(一方向)に隣り合う回転羽根3Aと回転羽根3Aとの間に風の通過を許容する通路Sを形成するように回転羽根3Aの表面8aや裏面8bの傾斜角度を固定した場合、例えば、図3(a)に示すように、風Fの流れる方向と回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αが30°の場合において、風Fが縁面9に向けて流れた場合、風Fが縁面9の傾斜面81に沿って滑らかに流れるため、図10;図11で説明した周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
尚、特許文献1乃至特許文献3などで開示された固定ルーバー装置のように、固定のルーバフィンの風上縁部や風下縁部に縁板や円柱状物体のような風切り騒音防止部を備えた構成の場合、固定されたルーバフィンの角度にて想定された一定の風向きの場合には風切り騒音防止部によりフィードバック発振音の発生を抑えることができるが、一定の風向き以外の場合にはフィードバック発振音の発生を防止できない。
一方、最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによれば、回転羽根3Aの角度設定手段15を操作することで回転羽根3Aの角度を変えることが可能となり、回転羽根3Aが任意の角度に設定された場合においては、どのような風向きの風であっても風が縁面9の傾斜面81に沿って滑らかに流れるため、周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。
【0017】
図2は実験により求められた最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによる音発生レベルと図9;図11に示した従来の可動ルーバー装置1による音発生レベルとの差である相対音圧レベル差をグラフで示したものである。実験は、図3(a)に示すように、風Fの流れる方向と最良の形態1の可動ルーバー装置1Aの回転羽根3の互いに平行な表面8a及び裏面8bとのなす角度αを30°となるように設定した後に、回転羽根3に風速7m/sの風を送って発生した音圧レベルを測定した。また、図3(b)に示すように、従来の可動ルーバー装置1の回転羽根3(図9;図11参照)を図3(a)に示した最良の形態1の可動ルーバー装置1Aの回転羽根3と同じ条件下において実験してその音圧レベルを測定した。
図2から解かるように、最良の形態1の可動ルーバー装置1Aによれば、従来の可動ルーバー装置1と比べて、特に、2500Hz帯域で26.8dBの音低減効果が得られた。
【0018】
図示しないが、傾斜面81と一方の面との境界部分(傾斜面81の端部)に形成される一方角部85と、傾斜面81と連結面82との境界部分(傾斜面81の端部)に形成される他方角部86とのうちの全部、又は、少なくとも1つの角部は、面取り加工により角部の角を落とした形状、又は、角部の角を丸めた形状、つまり、角削除部に形成しておくことが好ましい。このような角削除部を設けることで、上縁面9a(9)や下縁面9b(9)上を流れる風の流れをより滑らかにでき、フィードバック発振音の発生をより効果的に防止できる。
【0019】
最良の形態2.
図4に示すように、最良の形態2による可動ルーバー装置1の回転羽根3Aは、回転羽根の上縁面9a(9)及び下縁面9b(9)が、表面8a及び裏面8bに対して傾斜する傾斜面90に形成される。傾斜面90と表面8a及び裏面8bとのなす角度は、例えば、鋭角度及び鈍角度に形成される。例えば、表面8aと上縁面9aとのなす角度α及び裏面8bと下縁面9bとのなす角度αが45°(鋭角度)に形成され、表面8aと下縁面9bとのなす角度β及び裏面8bと上縁面9aとのなす角度βが135°(鈍角度)に形成される。傾斜面90は、上述した平面76に対して傾斜する傾斜面でもある。
縁面9と表面8aとの境界部分(傾斜面90の端部)である鋭角部及び鈍角部、縁面9と裏面8bとの境界部分(傾斜面90の端部)である鋭角部及び鈍角部のうちの全部、又は、少なくとも1つの角部は、面取り加工により角部の角を落とした形状、又は、角部の角を丸めた形状、つまり、角削除部91に形成しておくことが好ましい。
【0020】
最良の形態2によれば、最良の形態1と同様に、風Fが縁面9を形成する傾斜面90に沿って滑らかに流れるため、図10;図11で説明した周期的な渦の発生を防止でき、フィードバック発振音の発生を効果的に防止できる。特に、傾斜面90の長さを最良の形態1の傾斜面81の傾斜長さより長くできるので、風Fの流れをより滑らかにできる。
【0021】
最良の形態2のように、回転羽根3Aの縁面9が、表面8a及び裏面8bに対して傾斜する傾斜面90に形成された構成とすれば、回転羽根3Aの厚さ寸法A(図4参照)を大きくした場合でも、風遮蔽面8を平面に形成することが可能となる。
【0022】
最良の形態1;2の可動ルーバー装置1Aを連結機構5も含めて図5に斜視図で示した。図5(a)は可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aが風を遮蔽する状態に設定された場合を斜視図で示し、図5(b)は可動ルーバー装置1Aの回転羽根3Aが回転羽根3A間に風の通過を許容する通路Sを形成した状態に設定された場合を斜視図で示す。
【産業上の利用可能性】
【0023】
表面8a及び裏面8bは、中央部が湾曲状に隆起したような形状でもよい。即ち、表面8aと裏面8bとが互いに平行な平面でなくても、回転羽根3Aの縁面9が、回転中心軸11の回転中心軸線71上の互いに離れた2点(72;73)と表面8a又は裏面8bにおける両方の縁面9;9間の中央点74とを含む平面76に対して傾斜する傾斜面81を備えていればよい。
連結面82は、表面8a又は裏面8bのうちの他方の面と直交する面でなくてもよい。
連結面82の厚さ寸法aと傾斜面81の厚さ寸法bとの比率は、1:1でなくともよい。
最良の形態1の回転羽根3Aの傾斜面81の幅寸法m(図1(b)参照)や傾斜面81の傾斜長さ寸法は限定されず、例えば、裏面8b(表面8a)において上縁面9a(下縁面9b)から回転中心軸11を超えた位置まで延長する傾斜面であってもよい。最良の形態2の回転羽根3Aの傾斜面90の幅寸法や傾斜面90の傾斜長さ寸法についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は可動ルーバー装置の回転羽根の遮蔽状態を示し、(b)は通路形成状態を示し、(c)は傾斜面を説明する図(最良の形態1)。
【図2】実験結果を示すグラフ(最良の形態1)。
【図3】実験条件を示す図であって、(a)は最良の形態1の回転羽根の実験条件を示し、(b)は従来の回転羽根の実験条件を示す図(最良の形態1)。
【図4】可動ルーバー装置の回転羽根の遮蔽状態、通路形成状態を示す図(最良の形態2)。
【図5】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す斜視図(最良の形態1;2)。
【図6】可動ルーバー装置を示す斜視図(従来)。
【図7】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す図(従来)。
【図8】回転支持部、連結機構、角度設定手段の詳細を示す斜視図(従来)。
【図9】回転羽根の遮蔽状態及び通路形成状態を示す図(従来)。
【図10】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【図11】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【符号の説明】
【0025】
1A 可動ルーバー装置、2 ルーバー枠(枠)、3A 回転羽根、4 回転支持部、
8 風遮蔽面、8a 表面、8b 裏面、9 縁面、9a 上縁面、9b 下縁面、
10 端面、11 回転中心軸、71 回転中心軸線、72;73 2点、
74 中央点、76 平面、81 傾斜面(平面76に対して傾斜する傾斜面)、
82 連結面、90 傾斜面(平面76に対して傾斜する傾斜面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転羽根を備え、回転羽根は、風遮蔽面を形成する表面及び裏面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置において、
回転羽根の縁面が、回転中心軸の回転中心軸線上の2点と表面又は裏面における両方の縁面間の中央点とを含む平面に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする可動ルーバー装置。
【請求項2】
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、一端が表面又は裏面のうちの一方の面と連続して表面及び裏面に対して一定の角度で傾斜する傾斜面と、表面又は裏面のうちの他方の面と直交する面であって傾斜面と他方の面とを繋ぐ連結面とにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載の可動ルーバー装置。
【請求項3】
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、表面と裏面とに連続する傾斜面により形成され、傾斜面と表面とのなす角度と傾斜面と裏面とのなす角度とが異なることを特徴とする請求項1に記載の可動ルーバー装置。
【請求項4】
傾斜面の端部が、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可動ルーバー装置。
【請求項1】
複数の回転羽根を備え、回転羽根は、風遮蔽面を形成する表面及び裏面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転支持部によって回転可能に支持される回転中心軸を有した両方の端面と、表面と裏面とを繋ぐとともに回転羽根の回転中心に沿った面により形成された両方の縁面とを備え、複数の回転羽根の縁面同士が互いに隣り合うように複数の回転羽根が一方向に並べられて設けられた可動ルーバー装置において、
回転羽根の縁面が、回転中心軸の回転中心軸線上の2点と表面又は裏面における両方の縁面間の中央点とを含む平面に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする可動ルーバー装置。
【請求項2】
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、一端が表面又は裏面のうちの一方の面と連続して表面及び裏面に対して一定の角度で傾斜する傾斜面と、表面又は裏面のうちの他方の面と直交する面であって傾斜面と他方の面とを繋ぐ連結面とにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載の可動ルーバー装置。
【請求項3】
表面と裏面とが互いに平行な平面により形成され、回転羽根の縁面は、表面と裏面とに連続する傾斜面により形成され、傾斜面と表面とのなす角度と傾斜面と裏面とのなす角度とが異なることを特徴とする請求項1に記載の可動ルーバー装置。
【請求項4】
傾斜面の端部が、角を落とした形状、又は、角を丸めた形状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可動ルーバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−228256(P2009−228256A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73377(P2008−73377)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
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