説明

可動式シャワーフック

【課題】操作アームの回動方向とシャワーフックの移動方向を一致させて、シャワーフックの移動と固定操作を容易に行うことができるようにすること。
【解決手段】浴室等の壁面に取り付けられるスライドレール10を抱持するシャワーフック本体20と、シャワーフック本体の内部に設けられ、ばね34の付勢力によってスライドレールに圧接されるストッパ部材31を有するストッパ機構30と、ストッパ機構のばねの付勢力に抗してストッパ部材をスライドレールから離す方向に移動可能な操作部材40と、操作部材に連設されてシャワーフック本体の外部に突出され、スライドレールに沿う方向に回動可能な操作アーム50と、シャワーフック本体に突設され、操作アームが回動した際にこの操作アームに当接し、操作アームの更なる回動によってシャワーフック本体をスライドレールに沿う上方向又は下方向の移動を促す上部突起61及び下部突起62と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば浴室等の壁面に設置されシャワーヘッドを係止する高さを自由に変更できる可動式シャワーフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可動式シャワーフックは、浴室等の壁面に設置されるスライドレールと、このスライドレールに摺動自在かつ固定・固定解除自在に設けられるシャワーフック本体とで主に構成されている。この可動式シャワーフックは、シャワーフック本体にシャワーヘッドを係止するフック部を備えており、シャワーフック本体の高さを変更できるので、シャワーヘッドを係止する高さを自由に変更できる。
【0003】
従来のこの種の可動式シャワーフックにおいて、シャワーフック本体の側面にレバー部材を備えており、レバー部材の先端をばねの付勢力によりスライドレールの表面に押し付けて固定し、レバー部材を押すことによりスライドレールに対する固定を解除して昇降させる構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の可動式シャワーフックとして、スライドレールの任意の位置に停止するロックレバーを有するシャワーフック本体を、スライドレールに沿う方向に対する交差方向に2分割される半筒部によって形成し、両半筒部同士を結合して組み付けるように構成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−364037号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開平9−158273号公報(特許請求の範囲、図2,図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載のものは、シャワーヘッドを係止する高さを自由に変更できるが、シャワーヘッドを係止するシャワーフック本体をシャワーヘッドの重量や水圧に抗して設定した高さに確実に保持するためには、強いばね力が必要となる。このように強いばね力を設けると、固定を解除するためにレバー部材,ロックレバーをシャワーフック本体の側面に押し込む操作にも大きな力が必要となる。また、固定を解除する力とハンガー本体を昇降させるための力を、それぞれ別の方向に作用させる必要があり、このため、シャワーフック本体をしっかり掴んで操作しなければ、レバー部材,ロックレバーを押す方向に回転したり、急激に降下したりするおそれがある。また、ばね部材をスライドレールから離れた外方位置に収容するため、ハンガー部の突出が大きくなり、邪魔になるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、操作アームの回動方向とシャワーフック本体の移動方向を一致させて、シャワーフックの移動と固定操作を容易に行うことができる可動式シャワーフックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の可動式シャワーフックは、浴室等の壁面に取り付けられるスライドレールに沿って移動可能にスライドレールを抱持するシャワーフック本体と、このシャワーフック本体の内部に設けられ、ばねの付勢力によって上記スライドレールに圧接されるストッパ部材を有するストッパ機構と、このストッパ機構のばねの付勢力に抗して上記ストッパ部材を上記スライドレールから離す方向に移動可能な操作部材と、この操作部材に連設されて上記シャワーフック本体の外部に突出され、上記スライドレールに沿う方向に回動可能な操作アームと、上記シャワーフック本体に突設され、上記操作アームが回動した際にこの操作アームに当接し、操作アームの更なる回動によってシャワーフック本体を上記スライドレールに沿う上方向又は下方向の移動を促す上部突起及び下部突起と、を具備してなる、ことを特徴とする。この場合、上記ストッパ機構は、ストッパ部材の裏面側に係合中空部を有し、かつ、係合中空部の背部にばねを背受するストッパブロックを具備し、上記操作部材を、上記係合中空部内に回転可能に貫挿し、回転に伴って係合中空部に係合して上記ばねの付勢力に抗して上記ストッパ部材をスライドレールから離す方向に移動可能に形成することができる(請求項2)。
【0008】
このように構成することにより、操作アームを上方向又は下方向に回動することで、操作アームと連設されている操作部材が回動して、ストッパ機構のばねの付勢力に抗してストッパ部材をスライドレールから離す方向に移動する。更に操作アームを回動することにより、操作アームが上部突起又は下部突起に当接してシャワーフック本体をスライドレールに沿う上方向又は下方向に移動することができ、その後、操作アームの回動を停止することにより、ばねの付勢力によってストッパ部材がスライドレールに圧接することで、シャワーフック本体をスライドレールに固定することができる。
【0009】
この発明において、上記上部突起及び下部突起は、上方向又は下方向に回動する操作アームに係合するものであれば、シャワーフック本体の任意の位置に突設されていてもよいが、好ましくは、上部突起及び下部突起は、上記スライドレールの軸中心に対応する位置に設けられる方がよい(請求項3)。
【0010】
このように構成することにより、操作アームの回動によるモーメントを効率的にシャワーフック本体に伝達することができる。
【0011】
また、上記操作アームは、上記操作部材に連設されて上記シャワーフック本体の外部に突出され、シャワーフック本体に突設される上部突起又は下部突起に当接可能なものであれば、任意の形状でよいが、好ましくは、上記操作アームを、上記シャワーフック本体及びスライドレールの外方を包囲する略U字状に形成する方がよい(請求項4)。
【0012】
このように構成することにより、操作アームに手をかける範囲を広くすることができ、操作アームの回動操作を容易にすることができる。
【0013】
また、この発明において、上記シャワーフック本体の上下に、上記スライドレールに摺動可能に被嵌する一対のフィットブロックを更に配置する方が好ましい(請求項5)。この場合、上記フィットブロックを、上記スライドレールに沿う方向と交差方向に複数に分割して形成し、ばねで付勢されて上記スライドレールへ圧接する構造とする方が好ましい(請求項6)。
【0014】
このように構成することにより、シャワーフック本体の固定が解除された状態において、シャワーフック本体が急激に降下するのを防止することができると共に、シャワーフック本体をスライドレールに沿って昇降移動する際に、シャワーフック本体にモーメント作用が生じにくくすることができる。この場合、フィットブロックを、スライドレールに沿う方向と交差方向に複数に分割して形成し、ばねで付勢されてスライドレールへ圧接することにより、更にばねの付勢力によりガタツキを防止することができる。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の可動式シャワーフックにおいて、上記シャワーフック本体は、共働して上記スライドレールを抱持する凹溝を有する2つのフック半体からなり、両フック半体は、対向する開口端部に互いに摺動可能に嵌合する凹凸嵌合部を有すると共に、嵌合状態において合致する上部及び下部係止突起半体を突設してなり、上記上部及び下部突起は、上記上部及び下部係止突起半体に被嵌される一対の膨隆部を一体に有するキャップ部材にて形成されている、ことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、浴室等の壁面に取り付けられたスライドレールに対して、一方のフック半体をスライドレールの半分を抱持するように配置した状態で、このフック半体の凹凸嵌合部と他方のフック半体の凹凸嵌合部とを摺動嵌合させて、シャワーフック本体をスライドレールに取り付けることができる。また、キャップ部材の膨隆部を上部及び下部係止突起半体に被嵌して上部突起及び下部突起を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上に詳述したように、この発明の可動式シャワーフックによれば、上記のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0018】
(1)請求項1,2記載の発明によれば、操作アームの上下方向の回動操作によって容易にシャワーフック本体をスライドレールの任意の位置に昇降移動し、固定することができる。
【0019】
(2)請求項3記載の発明によれば、操作アームの回動によるモーメントを効率的にシャワーフック本体に伝達することができるので、上記(1)に加えて、更にシャワーフック本体の昇降移動を円滑にすることができる。
【0020】
(3)請求項4記載の発明によれば、操作アームに手をかける範囲を広くすることができ、操作アームの回動操作を容易にすることができるので、上記(1),(2)に加えて、更にシャワーフック本体の昇降移動を容易にすることができる。
【0021】
(4)請求項5記載の発明によれば、シャワーフック本体の固定が解除された状態において、シャワーフック本体が急激に降下するのを防止することができると共に、シャワーフック本体をスライドレールに沿って昇降移動する際に、シャワーフック本体にモーメント作用が生じにくくすることができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更にシャワーフック本体のガタツキがない移動を保証することができる。この場合、フィットブロックを、スライドレールに沿う方向と交差方向に複数に分割して形成し、ばねで付勢されてスライドレールへ圧接することにより、更にばねの付勢力によりガタツキを防止することができる(請求項6)。
【0022】
(5)請求項7記載の発明によれば、上記(1)〜(4)に加えて、更にシャワーフック本体の取り付けを容易にすることができると共に、既存のスライドレールに後付によってシャワーフック本体を組み付けることができる。また、キャップ部材の膨隆部を上部及び下部係止突起半体に被嵌して上部突起及び下部突起を形成することで、両フック半体を固定するので、シャワーフック本体の組み付けを確実にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の最良の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る可動式シャワーフックの使用状態を示す斜視図、図2は、シャワーフックを示す斜視図、図3は、シャワーフックの固定状態及び上昇移動状態を示す側面図、図4は、シャワーフックの固定状態及び上昇移動状態を示す断面図、図5は、シャワーフックの下降状態を示す側面図及びその断面図である。
【0025】
この発明に係るシャワーフック100は、浴室等の壁面に上下方向に取り付けられるスライドレール10を抱持するシャワーフック本体20と、このシャワーフック本体20の内部に設けられ、ばね34の付勢力によってスライドレール10に圧接されるストッパ部材31を有するストッパ機構30と、このストッパ機構30のばね34の付勢力に抗してストッパ部材31をスライドレール10から離す方向に移動可能な操作部材40と、この操作部材40に連設されてシャワーフック本体20の外部に突出され、スライドレール10に沿う方向に回動可能な操作アーム50と、操作アーム50が回動した際にこの操作アーム50に当接してシャワーフック本体20をスライドレール10に沿う上方向又は下方向の移動(昇降移動)を促す上部突起61及び下部突起62と、シャワーフック本体20の上下に配置され、スライドレール10に摺動可能に被嵌する一対のフィットブロック70と、を具備している。また、シャワーフック本体20に設けられたフック部80にシャワーヘッドSHを着脱可能に係止するように構成されている。
【0026】
上記スライドレール10は手摺の機能を有しており、例えば、ステンレス製のパイプ材にて形成されている。スライドレール10は、浴室等の壁面にねじにより上下配置に固定される一対のブラケット11,12に上下端部を固定されることにより、浴室等の壁面より平行に離れて設けられる。そして、スライドレール10の上下端には化粧キャップ13,14が被嵌される。ブラケット11,12及び化粧キャップ13,14は、例えば、合成樹脂製又はアルミダイキャスト製の成形品にて形成されている。
【0027】
上記シャワーフック本体20は、共働してスライドレール10を抱持する凹溝21a,22aを有する2つのフック半体すなわちフック部80とストッパ機構30を有する第1のフック半体21と、この第1のフック半体21の凹溝21aと共働してスライドレール10を抱持する凹溝22aを有する略半円筒状の第2のフック半体22とで構成されている。
【0028】
この場合、両フック半体21,22は例えば合成樹脂製にて形成されており、凹溝21a,22aの開口端部に、互いに摺動可能に嵌合可能な凹凸嵌合部21b,22bが設けられ、嵌合状態において合致する上部係止突起半体23及び下部係止突起半体24が突設されている。なお、一方のフック半体例えば第1のフック半体21の上端部には、外方に延在する係止突片21cが突設され、他方の第2のフック半体22の上端部には、係止突片21cと係合可能な係止段部22cが設けられている。このように係止突片21cと係止段部22cを設けることにより、フック半体21,22の上端面を同一平面上に連結することができる。なお、合致した状態の上部係止突起半体23及び下部係止突起半体24に、後述するキャップ部材65を被嵌して上部突起61及び下部突起62が形成されている。
【0029】
上記ストッパ機構30は、ストッパ部材31の裏面側に位置する係合中空部32を有し、かつ、係合中空部32の背部にばね34を背受するストッパブロック33を具備し、操作部材40は、係合中空部32内に回転可能に貫挿され、回転に伴って係合中空部32に係合してばね34の付勢力に抗してストッパ部材31をスライドレール10から離れる方向に移動可能に形成されている。
【0030】
この場合、ストッパ部材31は、パイプ部材によって形成されるスライドレール10の外周面に当接すべく円弧状の当接面31aを有する合成ゴム製部材にて形成されている。
【0031】
また、ストッパブロック33は合成樹脂製にて形成されており、ストッパ部材31の裏面側に位置する係合中空部32は略矩形状に形成され、係合中空部32の背部に設けられたばね受け部35と第1のフック半体21に設けられたばね受け凹所36との間に、例えばコイルスプリングにて形成されるばね34が縮設されている。なお、ストッパ部材31は、例えばねじや接着剤等の固定手段によってストッパブロック33に固定されている。
【0032】
操作部材40は、係合中空部32内に回転可能に貫挿される、例えばステンレス製の四角筒体にて形成されている。この操作部材40の中空部41内に操作アーム50の取付基部51が貫挿され、係合中空部32のストッパ部材31側面に設けられた貫通孔37を介して挿入される固定ねじ38によって操作部材40と取付基部51が固定されている。
【0033】
このように四角筒体にて形成される操作部材40は、操作アーム50の回動操作によって回転することにより、角部が係合中空部32の側面すなわちストッパ部材31側面と対向する面に当接係合して、ばね34の付勢力に抗してストッパ部材31をスライドレール10から離れる方向に移動することができる。なお、ストッパブロック33の係合中空部32における操作部材40が当接係合する面にはステンレス製の補強板39が固定ねじ(図示せず)によって固定されている。
【0034】
なお、上記説明では、操作部材40が四角筒体にて形成される場合について説明したが、操作部材40は必ずしも四角筒体にて形成する必要はなく、回転により係合中空部32の側面に当接係合する形状例えば四角以外の多角形状や楕円形状等であってもよい。
【0035】
上記操作アーム50は、図2,図6及び図8に示すように、操作部材40に貫挿固定される取付基部51の両端突出部に一端部が例えば凹凸嵌合によって連設される一対の矩形棒状のアーム基部52と、このアーム基部52の先端面に設けられた係止凹所53にスナップ嵌合可能な係止爪54を有し、第2のフック半体22及びスライドレール10の外方を包囲する略U字状のアーム操作部55とで構成されている。この場合、操作アーム50を構成する取付基部51、アーム基部52及びアーム操作部55は、それぞれ合成樹脂製にて形成されている。
【0036】
上記上部突起61及び下部突起62は、図8及び図9に示すように、板状の連結部63の両端に突設される例えば略円柱状の膨隆部64a,64bを有する合成樹脂製のキャップ部材65にて形成されている。この場合、図9に示すように、膨隆部64a,64bの一端面の中央部には、内周の一部に係止突起66を有する嵌合穴67が設けられている。また、上部係止突起半体23及び下部係止突起半体24の外周面には係止溝25が設けられている。なお、膨隆部64a,64bは必ずしも円柱状である必要はなく、例えば截頭円錐状や三角柱状等任意の形状であってもよい。
【0037】
すなわち、上部突起61及び下部突起62を形成するには、第1のフック半体21と第2のフック半体22が嵌合された状態で合致する上部係止突起半体23と下部係止突起半体24に膨隆部64a,64bの嵌合穴67を被嵌し、嵌合穴67に設けられた係止突起66を、上部係止突起半体23及び下部係止突起半体24の外周面に設けられた係止溝25に係合させた状態で被嵌することで、シャワーフック本体20の外部におけるスライドレールの軸中心に対応する位置に上部突起61及び下部突起62を形成する。
【0038】
このように、上部突起61及び下部突起62を、シャワーフック本体20の外部におけるスライドレールの軸中心に対応する位置に設けることによって、操作アーム50の回動によるモーメントを効率的にシャワーフック本体20に伝達することができる。つまり、操作アーム50の回動によってシャワーフック本体20がスライドレール10に対して回転するモーメント作用を抑制し、操作アーム50の回動によるモーメントをシャワーフック本体20がスライドレール10に沿う方向に寄与して、シャワーフック本体20の昇降を円滑にすることができる。
【0039】
上記フィットブロック70は、図6に示すように、シャワーフック本体20を構成する第1のフック半体21及び第2のフック半体22に設けられた凹溝21a,22aによって形成された空間26内に収容されている。フィットブロック70は、それぞれ半円状の内面に平行な複数の摺接リブ71を有すると共に、第1のフック半体21側に位置する、スライドレール10に沿う方向と交差方向に二分割に形成される第1及び第2のブロック片72a,72bと、第2のフック半体22側に位置する一つの第3のブロック片72cとを具備している。そして、第1及び第2のブロック片72a,72bは、第1のフック半体21側に設けられたばね受け凹所73内に縮設される圧接ばね74の付勢力によってスライドレール10に圧接されている。
【0040】
なお、上記説明では、フィットブロック70がシャワーフック本体20の上下部に配置される第1ないし第3のブロック片72a,72b,72cからなる場合について説明したが、第2のフック半体22側に配置される上下の第3のブロック片72c同士を連結して一体に形成してもよい。このように、上下の第3のブロック片72c同士を連結することにより、構成部材の削減が図れると共に、部材の生産性の向上が図れる。
【0041】
フィットブロック70は、圧接ばね74の付勢によりガタツキを防止することができると共に、シャワーフック本体20を昇降させる際には、内面に設けられた摺接リブ71によりスライドレール10との摩擦を少なくできるので、円滑に昇降させることができる。これにより、シャワーフック本体20の移動機能が低下せずガタツキがない移動が保証される。
【0042】
また、シャワーフック本体20は、第1のフック半体21の外面一側にフック部80を備えている。このフック部80は、シャワーフック本体20の外面一側に突設された一対のブラケット81,82により両端支持されると共に、垂直面内に回動可能に形成されている(図1,図2及び図8参照)。
【0043】
また、フック部80は、横軸円筒体の中央に上側が大径で下側が小径のテーパ空間を貫通形成し、かつ前側が開いているシャワーヘッド係止面83を備え、このシャワーヘッド係止面83にシャワーヘッドSHを上方から挿し込んで引っ掛けて係止できる(図1参照)。また、フック部80は、図6に示すように、両側の端面を一対のブラケット81,82間に密着するように挟入され、両端を止めねじ84で止められている。止めねじ84は、各ブラケット81,82の外方から各ブラケット81,82に設けた透孔85を貫通して、フック部80の端面に設けられたねじ孔86に堅く締め付けられている。止めねじ84とブラケット81,82は、軸と軸受の関係に嵌合していることにより、フック部80は、止めねじ84と一体に垂直面内に回動可能である。また、フック部80は、背面の側円筒面に側方から見て波形状に連なる係止溝87を備え、この係止溝87の一つの谷部に、シャワーフック本体20の外面に、係止ばね88の付勢力によって突設される係止部材89が位置して鉛直軸に対して角度変位可能に係止されるようになっている(図4,図5参照)。
【0044】
したがって、フック部80は、垂直面内に揺動されるとき、内部より係止ばね88によって付勢されている係止部材89が係止溝87の一つの谷部から他の谷部へ移るときに操作者の手にクリック感を与えつつ、例えば10°の分割角度で位置決めされてシャワーヘッドSHの傾き角度を調整できる。
【0045】
上記のように構成されるシャワーフック100を組み付けるには、まず、予め第1のフック半体21にストッパ機構30を組み込むと共に、第1及び第2のフック半体21,22にフィットブロック70の第1,第2及び第3のブロック片72a,72b,72cを組み込む。ストッパ機構30を第1のフック半体21に組み込むには、第1のフック半体21の凹溝21a内にばね34を介してストッパブロック33を挿入し、ばね34を圧縮した状態で、ストッパブロック33の係合中空部32内に嵌挿されている操作部材40内に操作アーム50の取付基部51を挿入し、係合中空部32に設けられた貫通孔37から挿入される固定ねじ38によって操作部材40と取付基部51を固定する。そして、ストッパブロック33の表面側にストッパ部材31を固着する。なお、第1のフック半体21の上下部の凹溝21a内の空間26に、圧接ばね74を介して第1及び第2のブロック片72a,72bを組み込む。
【0046】
上記のようにしてストッパ機構30とフィットブロック70の第1及び第2のブロック片72a,72bを組み込んだ後、第1のフック半体21を、浴室等の壁面に取り付けられたスライドレール10の左右方向の半分例えば右半分を抱持するように組み付ける。
【0047】
次に、予めフィットブロック70の第3のブロック片72cを組み込んだ第2のフック半体22を、第1のフック半体21の下方側におけるスライドレール10の残りの半分例えば左半分を抱持するように配置した状態で、第1のフック半体21と第2のフック半体22を相対的に上下方向に移動して、第1のフック半体21及び第2のフック半体22の凹溝21a,22aの先端部に設けられた凹凸嵌合部21b,22bを摺動嵌合し、係止突片21cと係止段部22cを係合する。これにより、第1のフック半体21と第2のフック半体22が、上端面が同一面上に組み付けられる。
【0048】
第1のフック半体21と第2のフック半体22が組み付けられると、第1のフック半体21及び第2のフック半体22に設けられた上部係止突起半体23と下部係止突起半体24が合致した状態となる。この状態で、上部突起61及び下部突起62を有するキャップ部材65の膨隆部64a,64bに設けられた嵌合穴67を、上部係止突起半体23と下部係止突起半体24に被嵌し、嵌合穴67に設けられた係止突起66を、上部係止突起半体23及び下部係止突起半体24に設けられた係止溝25に係合させて、シャワーフック本体20の外部におけるスライドレールの軸中心に対応する位置に上部突起61と下部突起62を形成する。これにより、第1のフック半体21と第2のフック半体22が強固に連結・固定される。
【0049】
次に、シャワーフック本体20の両側に突出する取付基部51の端部に連設するアーム基部52の先端面に設けられた係止凹所53に、アーム操作部55の係止爪54をスナップ嵌合させて操作アーム50を組み付けてシャワーフック100の組み付けを完了する。
【0050】
上記のように構成されるシャワーフック100によれば、シャワーフック本体20が、スライドレール10に対して昇降可能かつ回動可能に係合している(図1参照)。
【0051】
シャワーヘッドSHの傾きを変えるには、シャワーヘッドSHを係止するフック部80の傾きを変える。この場合、シャワーヘッドSHを掴んでフック部80の傾きを変えることができる。また、シャワーヘッドSHの高さを変えるには、シャワーフック本体20の高さを変えることによって行う。例えば、シャワーフック本体20を上方へ移動(上昇)させる場合は、操作アーム50を上方に回動させる。この操作アーム50の回動によって操作部材40が回転して、ストッパ機構30のばね34の付勢力に抗してストッパ部材31をスライドレール10から離れる方向に移動し、更に操作アーム50を回動することにより、操作アーム50が上部突起61に当接してシャワーフック本体20をスライドレール10に沿う上方向に移動する(図3(b),図4(b)参照)。このとき、上下一対のフィットブロック70がスライドレール10にガタツキなく圧接するので、シャワーフック本体20がガタツキなく上方へ押し下げられる。その後、操作アーム50の回動を停止して解除すると、ばね34の付勢力によってストッパ部材31がスライドレール10に圧接するので、シャワーフック本体20はスライドレール10にガタツキなく確実に固定される(図3(a),図4(a)参照)。
【0052】
シャワーフック本体20を下方へ移動(下降)させる場合は、操作アーム50を下方に回動させる。この操作アーム50の回動によって操作部材40が回転して、ストッパ機構30のばね34の付勢力に抗してストッパ部材31をスライドレール10から離れる方向に移動し、更に操作アーム50を回動することにより、操作アーム50が下部突起62に当接してシャワーフック本体20をスライドレール10に沿う下方向に移動する(図5(a),(b)参照)。このとき、上下一対のフィットブロック70がスライドレール10にガタツキなく圧接するので、シャワーフック本体20がガタツキなく下方へ押し下げられる。その後、操作アーム50の回動を停止して解除すると、ばね34の付勢力によってストッパ部材31がスライドレール10に圧接するので、シャワーフック本体20はスライドレール10にガタツキなく確実に固定される(図3(a),図4(a)参照)。
【0053】
上記実施形態によれば、シャワーフック本体20の固定を解除する力と昇降させるための力を一致する方向に作用させることができるので、シャワーフック本体20の固定を解除する操作力が小さくて足り、シャワーフック本体20をしっかり掴んで操作しなくても、シャワーフック本体20がスライドレール10の周方向に回転したり、急激に降下したりするおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明に係る可動式シャワーフックにシャワーヘッドを掛けた使用状態を示す斜視図である。
【図2】上記シャワーフックを示す斜視図である。
【図3】上記シャワーフックの固定状態を示す側面図(a)及びシャワーフックの上昇状態を示す側面図(b)である。
【図4】上記シャワーフックの固定状態を示す断面図(a)、シャワーフックの上昇状態を示す断面図(b)及びこの発明におけるストッパ機構を示す拡大断面図(c)である。
【図5】上記シャワーフックの下降状態を示す側面図(a)及び下降状態を示す断面図(b)である。
【図6】図4(a)のI−I線に沿う断面図である。
【図7】図4(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図8】上記シャワーフックの分解斜視図である。
【図9】この発明における上部突起及び下部突起を構成するキャップ部材の正面斜視図(a)、裏面斜視図(b)及び取付状態を示す断面図(c)である。
【符号の説明】
【0055】
100 シャワーフック
SH シャワーヘッド
10 スライドレール
20 シャワーフック本体
21 第1のフック半体
21a 凹溝
22 第2のフック半体
22a 凹溝
23 上部係止突起半体
24 下部係止突起半体
30 ストッパ機構
31 ストッパ部材
32 係合中空部
33 ストッパブロック
34 ばね
40 操作部材
50 操作アーム
51 取付基部
52 アーム基部
55 アーム操作部
61 上部突起
62 下部突起
64a,64b 膨隆部
65 キャップ部材
70 フィットブロック
72a,72b,72c 第1,第2,第3のブロック片
80 フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室等の壁面に取り付けられるスライドレールに沿って移動可能な可動式シャワーフックであって、
上記スライドレールを抱持するシャワーフック本体と、このシャワーフック本体の内部に設けられ、ばねの付勢力によって上記スライドレールに圧接されるストッパ部材を有するストッパ機構と、このストッパ機構のばねの付勢力に抗して上記ストッパ部材を上記スライドレールから離す方向に移動可能な操作部材と、この操作部材に連設されて上記シャワーフック本体の外部に突出され、上記スライドレールに沿う方向に回動可能な操作アームと、上記シャワーフック本体に突設され、上記操作アームが回動した際にこの操作アームに当接し、操作アームの更なる回動によってシャワーフック本体を上記スライドレールに沿う上方向又は下方向の移動を促す上部突起及び下部突起と、を具備してなる、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項2】
請求項1記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記ストッパ機構は、ストッパ部材の裏面側に係合中空部を有し、かつ、係合中空部の背部にばねを背受するストッパブロックを具備し、上記操作部材は、上記係合中空部内に回転可能に貫挿され、回転に伴って係合中空部に係合して上記ばねの付勢力に抗して上記ストッパ部材をスライドレールから離す方向に移動可能に形成されている、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記上部突起及び下部突起は、上記スライドレールの軸中心に対応する位置に設けられている、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記操作アームは、上記シャワーフック本体及びスライドレールの外方を包囲する略U字状に形成されている、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記シャワーフック本体の上下に配置され、上記スライドレールに摺動可能に被嵌する一対のフィットブロックを更に具備してなる、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項6】
請求項5記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記フィットブロックがスライドレールに沿う方向と交差方向に複数に分割して形成され、ばねで付勢されて上記スライドレールへ圧接されている、ことを特徴とする可動式シャワーフック。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の可動式シャワーフックにおいて、
上記シャワーフック本体は、共働して上記スライドレールを抱持する凹溝を有する2つのフック半体からなり、両フック半体は、対向する開口端部に互いに摺動可能に嵌合する凹凸嵌合部を有すると共に、嵌合状態において合致する上部及び下部係止突起半体を突設してなり、上記上部及び下部突起は、上記上部及び下部係止突起半体に被嵌される一対の膨隆部を一体に有するキャップ部材にて形成されている、ことを特徴とする可動式シャワーフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−267054(P2008−267054A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113862(P2007−113862)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】