説明

可動機械部分間の機械的リンク機構

自転車ハンドルバーに取り付けられた制御機構とリアブレーキ及びギアとの間の従来のリンク機構は、いくつかのいわゆる「フリースタイル」自転車で必要とされるようなハンドルバーの無制限の回転に適合することができない。この問題を解決しようとする従来の試みは、軸を中心として相対的に回転可能な2つの部分を有するベアリングを備えたリンク機構を利用する。しかし、この問題は、制御される2つ以上の機構、例えば、リアブレーキ及びギアがある状況に対処することができない。別の問題は、ベアリング表面間の砂埃がベアリングの詰まりを生じさせる恐れがあることである。本発明は、スロット(8A)に嵌り、第1のベアリング部分(15A)のハンドルバーに対する回転を制限するピン(15C)と、スロット(9A)に嵌り、第2のベアリング部分(15B)の自転車フレームに対する回転を制限するピン(15F)とを提供する。上記スロットは、図5では見えない円筒形案内壁内に形成される。ベアリング(15)の使用により、ボーデンケーブル(7A、7B)又は従来のリンク機構に使用されるような同様のもののいかなる捻れも回避され、仮に任意の土埃がベアリングの2つの部分(15A、15B)の間に進入したとしても、それにもかかわらず、ベアリングは互いに相対して回転するように強制され、それにより、ベアリングの焼き付きが回避される。本発明は、排他的に自転車に適用可能なわけではなく、ロボット機械及び他の機器の部分間のリンク機構に使用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回転する機械部分間、例えば、自転車のフレームと、ハンドルバー及び前輪フォークを支持するステムとの間で動作するように設計された機械的リンク機構に関する。より詳細には、本発明は、機械部分のうちの1つに対して固定された制御機構及び他の機械部分に対して固定された被制御機構に関する。上述した自転車の例では、「制御機構」は通常、何等かの形態のレバーを含む一方で、「被制御機構」は通常、ブレーキ又はギアである。
【背景技術】
【0002】
自転車の前輪は、フレームに対して回転する必要があるため、リンク機構はこの回転移動に適合しなければならない。(特許文献1)には、自転車のステアリングステムを囲む回転式ベアリングを利用することにより、シングルリアブレーキに対してこれを行うことができる一方法が記載されている。これにより、ハンドルバーの無制限の回転が可能である。この技法に伴う問題は、2つ以上の制御機構、例えば、リアブレーキ及びギア又はリアブレーキ及び2つのギアを使用する可能性を提供しないことである。さらに、ベアリング表面間への砂埃又は他の不要物質の進入は、ベアリングの詰まりを生じさせ、リアブレーキの非意図的な操作に繋がる危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4653768号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、互いに対して軸を中心として旋回する第1及び第2の機械部分を有する機械のための制御装置であって、第1の部分に対して固定された制御機構と第2の部分に対して固定された被制御機構との間で動作するように設計された機械的リンク機構を備え、リンク機構は、軸を中心として相対的に回転可能であり、制御機構及び被制御機構にそれぞれ接続された2つの部分を有するベアリングを備え、制御機構に接続された第1のベアリング部分の第1の機械部分に対する回転を制限する手段及び被制御機構に接続された第2のベアリング部分の第2の機械部分に対する回転を制限する手段を特徴とする、制御装置が提供される。
【0005】
このようにして各機械部分に対するベアリング部分の回転を制限することにより、これら2つの部分が、対応する2つの機械部分の相対的な回転に伴って回転することが制限されるため、ベアリングがより詰まりにくくなるか、又は詰まり得なくなる。
【0006】
対応する機械部分に対するベアリング部分の望ましくない回転は、ベアリング部分上の対応するピンを受ける、軸方向を向いたスロットを有するガイドの使用により回避することができる。これらスロット内にピンを配置することにより、ステアリングステム及びフレームと共にそれぞれ回転することを保証しながら、ベアリングが軸方向に移動することができる。その結果、装置のスムーズな動作を邪魔しがちなボーデンケーブル又は同等のリンク機構の撓みがない。また、仮に任意の砂埃が2つの部分間に進入したとしても、それにもかかわらず、互いに相対して回転するように強制され、それにより、ベアリングの焼き付きが回避される。
【0007】
本発明による一構成では、ガイドが、一方が他方内にあり、間に管状断面のチャネルを画定する同軸シリンダにより形成される。3つ以上のこのようなシリンダを利用することにより、各ベアリングを受ける2つ以上のこのようなガイドチャネルを画定することが可能になる。これにより、ブレーキ及びギア等の2つ以上の異なる機構の制御が可能になる。これらシリンダはすべて、自転車のヘッドチューブ内に配置することができ、この特徴は特に整然とした構成に役立つ。
【0008】
本発明を実施し得る一方法について、添付図面を参照して例としてこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】前輪フォーク及びステムの部分を示す、本発明により構築された制御装置を有する自転車のヘッドチューブの斜視図である。
【図2】図1の軸X−X及び線II−IIを通る断面として部分的に示される図1のヘッドチューブの内部の斜視図である。
【図3】図2に示す部品の平面図であり、上部ベアリング支持体が取り外されて、内部支持シリンダが明らかになっており、他の内部部品はこの図には示されていない。
【図4】図3の内部支持シリンダのみの斜視図である。
【図5】図2ではあまり詳細には見えないリンクベアリングのうちの1つを通る詳細な軸方向断面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず図1を参照すると、図示の自転車は、上部主要ベアリング組立体2A及び下部主要ベアリング組立体2Bを担持するヘッドチューブ2を含むフレーム1を備える。ステアリングステム3がヘッドチューブを通り、軸X−Xを中心としてこれら主要ベアリング内で回転する。ステム3は、前輪フォーク4及びハンドルバー(図示せず)を担持する。
【0011】
リアブレーキリンク機構が、ハンドルバーに取り付けられ、上部ボーデンケーブル7Aに接続された手動制御機構(図示せず)を備える。これは、後述するリンク機構ベアリングを介して下部ボーデンケーブル7Bにリンクされ、下部ボーデンケーブル7Bは、自転車のリアブレーキ機構に繋がる。
【0012】
ギアリンク機構が、これも又はンドルバーに取り付けられ、上部ボーデンケーブル6Aに接続された手動制御機構(図示せず)を備える。これは、後述するリンク機構ベアリングを介して下部ボーデンケーブル6Bにリンクされ、下部ボーデンケーブル6Bはギア機構に繋がる。
【0013】
第2のギアリンク機構が、これも又はンドルバーに取り付けられ、上部ボーデンケーブル5Aに接続された手動制御機構(図示せず)を備える。これは、後述するリンク機構ベアリングを介して下部ボーデンケーブル5Bにリンクされ、下部ボーデンケーブル5Bは第2のギア機構に繋がる。
【0014】
これより図2、図3、及び図4を参照すると、上部主要ベアリング2Aは、上部ボーデンケーブル5A、6A、及び7Aを受ける部分2Dを有し、部分2Dは円錐中央開口部を有し、上部主要ベアリング2Aは、円錐中央開口部により、図示されていない圧縮嵌めによりステム3(図2には示されず)に把持される。ヘッドチューブの下部円錐ケース2Eが、下部ボーデンケーブル5B、6B、及び7B(6Bは図示せず)を受ける。部分2D及び2Eには、ヘッドチューブに対して同軸に、直径が徐々に増大する4つの円筒形ガイド8、9、10、及び11を配置するように機能する円形溝2F、リブ2G、及びリセス2Hが形成される。ガイド8及び10は部分2Dに対して固定され、そのため、ハンドルバーと共に回転する一方で、ガイド9及び11は部分2Eに固定され、そのため、自転車のヘッドチューブ及びフレームに対して固定される。ガイド11はヘッドチューブ2内部にぴったりと嵌る。
【0015】
円筒形支持体8、9、10、及び11は、それらの間に、内部で3つの軸方向管状ボールベアリング15、16、及び17が案内される管状断面の3つの垂直チャネル12、13、及び14を画定する。ベアリング15、16、及び17はすべて、運動の両極端の中間にあるとき、同じ軸方向位置を有する。図2は、制御機構のうちの1つ又は複数を操作した結果、他のベアリングよりも低いベアリング16を示す。これらベアリングはすべて、主に軸方向の力を伝達するように設計される。
【0016】
図5は、例として、ベアリング15及び直径以外は同様の他のベアリングを示す。このベアリング15は、ケーブル7Aに取り付けられ、円筒形外面にリセスが形成された上部リング15Aを有し、リセス内に、ボールレール15Bが嵌る。部分15A及び15Bはボアを有し、これらボアを通る3つのロールピン15Cにより一緒にロックされて、ベアリングの上部を形成する。ベアリングは下部リング15Dも有し、下部リング15Dはケーブル7Bに取り付けられ、内面にリセスが形成され、リセス内にボールレース15Eが嵌る。部分15D及び部分15Eは、3つのロールピン15Fにより一緒にロックされて、ベアリングの下部を形成する。ボール15Gはレース15Bと15Eとの間に保持され、座金15Hが、上部15Bと下部15Dとの間に嵌り、ベアリングを通して圧縮力を伝達する。
【0017】
ロールピン15Cは、リング15Aの内面からガイド円筒形8内の3つそれぞれのスロット8A内に内側に突出する。ガイド円筒形8はハンドルバーに対して固定されるため、これにより、部分15A及び15Bを備えるベアリング15の上半分が、ハンドルバーと共に回転し、空間12内でぶつからないことが保証される。
【0018】
ロールピン15Fは、リング15Dの外面からガイド円筒形9内の3つそれぞれのスロット9A内に外側に突出する。ガイド円筒形9はフレームに対して固定されるため、これにより、部分15D及び15Eを含むベアリング15の下半分がフレームに対して回転せず、空間12内でぶつからないことが保証される。
【0019】
ベアリング16及び17の構造並びにベアリング16及び17が空間13及び14内でぶつからずに案内される方法は、ベアリング15と同様である。唯一の違いはベアリングの直径並びにどのロールピンが内側及び外側に突出するかの選択であり、これは常に、下部ベアリング部分(制御されるブレーキ又はギアに接続される)が、フレームに対して固定されたシリンダのスロット内に突出するピンを有する一方で、上部ベアリング部分(手動で操作可能な制御機構に接続される)が、ステアリングステムに対して固定されたシリンダのスロット内に突出するように選択される。内側及び外側のシリンダ8及び11が、ベアリング15及び17のそれぞれの上部及び上部のピンを受ける3つのみのスロットを必要とする一方で、中間シリンダ9は、ベアリング15及び16の下部を案内する6つのスロットを必要とし、中間シリンダ10も同様に、ベアリング16及び17の上部を案内する6つのスロットを必要とすることに留意する。
【0020】
動作に際して、張力がブレーキケーブル7Aに加えられると、ベアリング部分15Aが、チャネル12の壁及び対応するスロット8A内のピン15Cの動作により案内されて、持ち上げられ、ピン15Cの動作により、ピン15Cがない場合には部分15の摩擦のない回転に干渉する任意の砂埃又は他の不要な物質又は影響が存在する場合であっても、軸方向移動を許しながら、部分15Aがハンドルバーと共に回転することが制限される。換言すれば、ハンドルバーに対する部分15Aの回転は、スロット8Aにより回避される。この動作により、ハンドルバーの回転中にボーデンケーブル7Aの撓みがない。この回転防止動作がなければ発生し得るこの撓みは、ベアリングの傾斜、結果としてのチャネル12内のベアリング15の詰まり又は衝突を発生させる力を加えるという影響を有し得る。これにより、ブレーキを不注意で操作してしまうことも回避される。
【0021】
ベアリング部分15A及び15Bの上方移動により、部分15E及び15Dもチャネル12内で上昇し、ボーデンケーブル7Bに張力をかけ、それにより、リアブレーキを動作させる。スロット9A内のピン15Fの動作により、ピン15Fの動作がなければ部分15Dの摩擦なしの回転に干渉する任意の砂埃又は他の不要な物質又は影響が存在する場合であっても、部分15Dがフレームに対して回転することが防止される。この動作により、ハンドルバーの回転中にボーデンケーブル7Bの撓みがない。この回転防止動作がなければ発生し得るこの撓みは、ベアリングの傾斜、結果としてのチャネル12内のベアリングの詰まり又は衝突を発生させる力を加えるという影響を有し得る。この動作は、ハンドルバーの回転により、不注意にブレーキを操作してしまう危険性も回避する。
【0022】
両組のギアの動作は、リアブレーキシステムについて説明した原理と同じ原理に従う。
【0023】
同心ガイドシリンダの使用により、ヘッドチューブ内に嵌り、砂埃又は土埃が存在する場合であってもベアリングを詰まらせる危険性なく、制御機構の信頼できる独立したスムーズな動作を行えることを保証しながら、ステアリングコラムの360度以上の回転を可能にする、コンパクトな構成で入れ子式に配置された2つ以上のベアリングの利用が可能になる。ケーブルの撓みが発生しないため、代替の構築では、ボーデンケーブルに代えて、機械式、電気機械式、水圧又は油圧式部品を含み得る撓まない連結部を利用することが可能である。
【0024】
本発明について、特に自転車に関連して説明したが、同じ原理は、2つ以上の機械的制御リンク機構を2つの相対的に回転する部分間を通す必要があるロボット機械及び農業機械を含む他の機械でも同等に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して軸を中心として旋回する第1及び第2の機械部分を有する機械のための制御装置であって、前記第1の部分に対して固定された制御機構と前記第2の部分に対して固定された被制御機構との間で動作するように設計された機械的リンク機構を備え、前記リンク機構は、前記軸を中心として相対的に回転可能であり、前記制御機構及び前記被制御機構にそれぞれ接続された2つの部分を有するベアリングを備え、前記制御機構に接続された第1のベアリング部分の前記第1の機械部分に対する回転を制限する手段及び前記被制御機構に接続された第2のベアリング部分の前記第2の機械部分に対する回転を制限する手段を特徴とする、制御装置。
【請求項2】
前記機械が自転車であり、前記第1の機械部分が前記自転車の前輪支持体を含み、前記第2の機械部分が前記自転車のフレームを含むことを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
各ベアリング部分が突起を有し、前記装置が、前記第1の機械部分に対する回転を制限する前記第1のベアリング部分の前記突起を受けるスロットを有する第1のガイドと、前記第2の機械部分に対する回転を制限する前記第2のベアリング部分の前記突起を受けるスロットを有する第2のガイドとを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ガイドが、前記軸と同軸の円筒形部材により画定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車制御装置。
【請求項5】
前記軸を中心として相対的に回転可能であり、前記制御機構及び前記被制御機構にそれぞれ接続された2つの部分を有する少なくとも1つの第2のベアリングと、前記制御機構に接続された前記第2のベアリングの第1のベアリング部分の前記第1の機械部分に対する回転を制限する手段と、前記第2の機械部分に接続された前記第2のベアリングの第2のベアリング部分の前記第2の機械部分に対する回転を制限する手段とを特徴とし、前記ベアリングは前記軸から異なる半径方向距離のところに配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自転車制御構機。
【請求項6】
前記円筒形部材が間にチャネルを画定し、前記チャネル内で、前記ベアリングが軸方向移動に関して案内されることを特徴とする、請求項3に従属する場合の請求項4に記載の自転車。
【請求項7】
最も内側又は最も外側ではない前記又は各円筒形部材が、前記円筒形部材の内側及び外側にそれぞれ配置されたベアリング上の突起を受ける少なくとも2つのスロットを有することを特徴とする、請求項5に記載の自転車。
【請求項8】
前記又は各ベアリングが前記軸を囲む管を画定することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自転車制御機構。
【請求項9】
前記又は各ベアリングが、ステアリングステムが内部に回転可能に取り付けられた前記自転車のヘッドチューブ内に囲まれることを特徴とする、請求項2、又は請求項2に従属する場合は請求項3〜8のいずれか一項に記載の自転車制御装置。
【請求項10】
前記被制御機構が、1つ又は複数のリアブレーキ及び/又はギアであることを特徴とする、請求項2若しくは9又は請求項2に従属する場合は請求項3〜8のいずれか一項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540319(P2010−540319A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526370(P2010−526370)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050835
【国際公開番号】WO2009/044184
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510070256)
【Fターム(参考)】