説明

可変の高さの手術用ファスナを形成する装置

【課題】複数の手術用ステープルを適用するための手術デバイスを提供する。
【解決手段】デバイスは、手術器具に取設されるステープル固定アセンブリ100を含む。ステープル固定アセンブリは、一対の協働顎部104、140と、顎部作動機構160と、間隔センサと、を含む。複数のステープルを有するステープルマガジン120と、複数のステープルポケットを有するアンビル部材とが、顎部104に取設される。ステープルマガジンは、手術器具に動作可能に連結されるステープル挟持カムと、ステープルディンプリングカムと、を含む。顎部作動機構は、協働顎部間の組織間隔102を自動的に設定するために、顎部140を移動させるための手術器具内の駆動アセンブリに動作可能に接続される。間隔センサは、ステープル形成を制御するための顎部作動機構と協働する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術用ファスナ装置に関する。より具体的には、本開示は、手術手順中、身体組織に対し高さを変えられる手術用ファスナを形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最初に、対向する顎部構造間に組織が把持または挟持され、次いで、手術用ファスナによって結合される手術デバイスは、当技術分野において周知である。いくつかの器具では、ファスナによって結合された組織を切断するために、メスが提供される。ファスナは、典型的には、手術用ステープルの形態である。
【0003】
本目的のための器具は、2つの細長い部材を含んでもよく、それぞれ、組織を捕捉または挟持するために使用される。典型的には、部材の一方は、少なくとも2つの横列に配列される複数のステープルを格納するカートリッジを担持し、他方の部材は、ファスナがカートリッジから駆動されると、ステープル脚部を形成するための表面を規定するアンビルを含む。概して、ステープリング動作は、部材を担持するカートリッジを通して長手方向に移動するプッシャによって達成され、プッシャは、カートリッジからそれらを連続的に射出するためにステープルに作用する。メスは、ステープル列間のプッシャとともに移動し、ステープルの列間のステープリングされた組織を長手方向に切断および/または切開してもよい。
【0004】
特許文献1に開示される最近のステープラは、二重列のステープルを切開の両側に適用する。これは、カートリッジアセンブリを提供することによって達成され、カム部材は、溝を担持する2セットの交互ステープル間の細長い誘導路を通して移動する。ステープル駆動部材は、溝内に位置し、長手方向に移動するカムによって接触され、ステープルの射出を達成するように位置付けられる。ステープラの他の実施例は、特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,499,591号明細書
【特許文献2】米国特許第4,429,695号明細書
【特許文献3】米国特許第5,065,929号明細書
【特許文献4】米国特許第5,156,614号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、手術用ステープルを適用するための手術器具とともに使用するためのステープル固定アセンブリを対象とする。ステープル固定アセンブリは、協働する第1および第2の顎部と、顎部作動機構と、ステープル駆動アセンブリと、を含む。一方の顎部は、概して、細長く、ステープルマガジンを含む。ステープルマガジンは、顎部に固定して、または解除可能に取設されてもよく、少なくとも1列に配列される複数のステープルを含む。第1の組織接触表面は、ステープルマガジンの一方の面上に規定され、ステープルマガジン内に含まれるステープルの数に対応する複数の保持スロットを含む。複数列のステープルが提供され、長手方向列に配列されてもよいことが企図される。保持スロットは、長手方向に整合されるか、または互いからオフセットされてもよい。各保持スロットは、そのそれぞれのステープルを解除可能に受容するために、構成および適合される。各ステープルは、脚部のそれぞれに対して実質的に直角を形成するバックスパンによって接続される第1および第2の実質的に平行脚部を含む。
【0007】
第2の顎部は、概して、細長く、開放位置と閉鎖位置との間の複数の位置を通して可動である。アンビル部材は、第2の顎部上に配置され、第2の組織接触表面を含む。第2の組織接触表面は、複数のステープルポケットを含み、ステープルポケットの数および配列は、ステープルマガジン内の保持スロットの数および配列に対応する。第2の組織接触表面は、第1の組織接触表面と並列となるように配向され、その間の組織間隔を規定する。
【0008】
各ステープルポケットは、各ステープルの脚部を捕捉するための一対のステープル形成溝を含む。ステープル形成溝は、中間点を中心に実質的に対称であって、対向する傾斜表面を有する。実質的にレムニスケート(lemniscate)チャネリング表面は、各ステープルポケットの周縁を中心に形成される。各ステープル形成溝は、各ステープルの一方の脚部を他方の脚部へ付勢する一方、ステープル形成中および後の脚部の側方分離を維持する。
【0009】
顎部作動機構は、ステープル固定アセンブリの近位部分に取設される筐体内に配置される。顎部作動機構は、筐体に回転可能に搭載されるカムと、ケーブルと、互いに協働可能に連結されるバネと、を含む。手術器具内の近接機構は、顎部作動機構に動作可能に連結され、バネの近位運動を生じさせる。バネの近位移動は、ケーブルを介して、カムに連結される。一実施形態では、カムは、カムの外側表面の少なくとも一部と第2の顎部の外側表面との間の接触を維持するための偏心外側表面を有する。カムは、反転防止アセンブリ(すなわち、自動ロック)を含み、カムの反時計回りの回転を許容する一方、カムの時計回りの回転を抑制してもよい。そのように構成されることによって、偏心カムの反時計回りの回転は、バネの近位移動の際、第2の顎部を第1の顎部へ継続的に付勢する。カムおよびケーブルの寸法、ならびにバネに対し選択される寸法および材料は、顎部作動機構の組織捕捉特徴に寄与する。顎部は、組織を捕捉し、定位置に保持する一方、組織への外傷を最小限にすることが望ましい。有利には、カム、ケーブル、およびバネの組み合わせは、ステープリング動作の際、異なる厚さの組織に適応するように、組織間隔の自動調節を可能にする。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
作動機構を含む筐体と、
該筐体から遠位に延びる細長い管状部材と、
該細長い管状部材の遠位端に位置するステープル固定アセンブリであって、第1の顎部および第2の顎部を含み、該第1の顎部は、複数のファスナおよび駆動アセンブリを含み、該第2の顎部は、アンビルを含む、ステープル固定アセンブリと、
顎部駆動アセンブリであって、該作動機構の作動によって、該第1および第2の顎部のうちの一方を該第1および第2の顎部のもう一方に向けて移動させるように、該作動機構に動作可能に連結され、該第1の顎部の組織接触表面は、該顎部間の距離が変動するとき、該第2の顎部の組織接触表面と実質的に平行のままである、顎部駆動アセンブリと
を備える、手術装置。
(項目2)
前記顎部駆動アセンブリは、前記第2の顎部に動作可能に連結され、該顎部駆動アセンブリは、カムを含み、該カムの回転によって、該第2の顎部を前記第1の顎部に向けて付勢するように、該カムの少なくとも一部は、該第2の顎部の外側表面と接触する、項目1に記載の手術装置。
(項目3)
前記顎部駆動アセンブリは、前記カムと前記作動機構とを動作可能に連結するバネをさらに含む、項目2に記載の手術装置。
(項目4)
第1の方向への前記バネの移動は、第1の方向に前記カムを回転させ、前記第2の顎部を前記第1の顎部に向けて付勢する、項目3に記載の手術装置。
(項目5)
リンキング部材は、前記カムと前記バネとを動作可能に接続する、項目3に記載の手術装置。
(項目6)
作動機構を含む筐体と、
該筐体から遠位に延びる細長い管状部材と、
該細長い管状部材の遠位端に位置するステープル固定アセンブリであって、該ステープル固定アセンブリは、第1の顎部および第2の顎部を含み、該第1の顎部は、複数のファスナおよび駆動アセンブリを含み、該第2の顎部は、アンビルを含み、該第1の顎部は、その中に配置された少なくとも1つの可動部材を含み、該少なくとも1つの可動部材は、手術用ファスナの一部と相互作用するために選択的に作動される、ステープル固定アセンブリと、
顎部駆動アセンブリであって、該顎部駆動アセンブリは、該作動機構の作動によって、該第1および第2の顎部のうちの一方を該第1および第2の顎部のもう一方に向けて移動させるように、該作動機構に動作可能に連結される、顎部駆動アセンブリと
を備える、手術装置。
(項目7)
少なくとも1つの滑動アセンブリをさらに含み、該滑動アセンブリは、第1および第2の滑動部を含む、項目6に記載の手術装置。
(項目8)
前記第1の滑動部は、前記第2の滑動部を摺動可能に受容するために、そこを通る長手方向通路を含む、項目7に記載の手術装置。
(項目9)
前記複数のファスナを通る前記第1の滑動部の長手方向の平行移動によって、前記手術用ファスナを連続的に射出する、項目8に記載の手術装置。
(項目10)
前記複数のファスナを通る前記第2の滑動部の長手方向の平行移動は、前記少なくとも1つの可動部材を前記第1の顎部の組織接触表面に向けて移動させ、該少なくとも1つの可動部材は、該第1の顎部の長手方向軸を横断する方向に移動する、項目9に記載の手術装置。
(項目11)
前記少なくとも1つの可動部材の前記横断方向の移動によって、前記手術用ファスナの一部と接触する、項目10に記載の手術装置。
(項目12)
前記第1の滑動部の長手方向の平行移動は、遅延を規定する前記第2の滑動部の長手方向の平行移動に先行する、項目10に記載の手術装置。
(項目13)
前記第2の滑動部の一部は、前記第1および該第2の滑動部の長手方向の平行移動の間に、該第1の滑動部の前記通路との接触を維持する、項目10に記載の手術装置。
(項目14)
各ファスナは、前記アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、前記第1および第2の顎部の組織接触表面の間の間隔に比例するサイズを有し、前記可動部材はそれぞれ、前記間隔が所定の量未満であるとき、対応するファスナのバックスパンを変形させる、項目6に記載の手術装置。
(項目15)
作動機構を含む筐体と、
該筐体から遠位に延びる細長い管状部材と、
該細長い管状部材の遠位端に位置するステープル固定アセンブリであって、該ステープル固定アセンブリは、第1および第2の顎部を含み、該第1の顎部は、該作動機構に動作可能に関連付けられるファスナ駆動アセンブリを含み、該ファスナ駆動アセンブリは、第1および第2の滑動部を有し、該第1の滑動部は、該第2の滑動部を摺動可能に受容するために、そこを通る長手方向通路を有し、該第2の顎部は、アンビルを含む、ステープル固定アセンブリと、
該第1の顎部内に配置される複数のファスナおよび対応する数の射出アセンブリであって、各射出アセンブリは、ファスナ射出器および可動部材を含み、該第1の滑動部は、該ファスナ駆動アセンブリの作動に応答して、遠位に平行移動し、該第2の滑動部は、静止したままである、複数のファスナおよび対応する数の射出アセンブリと、
該作動機構に動作可能に連結される顎部駆動アセンブリと
を備える、手術装置。
(項目16)
間隔は、前記第1および第2の顎部の組織接触表面間で規定され、該間隔は、該第1および第2の顎部間に捕捉される組織に比例する、項目15に記載の手術装置。
(項目17)
前記第1の滑動部の遠位移動は、前記第1の顎部の長手方向軸を横断する方向に前記射出器を移動させ、それによって、前記ファスナを前記アンビルに向けて駆動する、項目16に記載の手術装置。
(項目18)
各ファスナは、前記アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、前記間隔に比例するサイズを有する、項目17に記載の手術装置。
(項目19)
前記第2の滑動部は、前記複数のファスナを通って遠位に平行移動し、前記第2の滑動部は、前記可動部材に係合し、前記第1の顎部の長手方向軸に対して直角の方向に前記可動部材を駆動させる、項目17に記載の手術装置。
(項目20)
前記可動部材はそれぞれ、その対応するファスナのバックスパンに接触する、項目19に記載の手術装置。
(項目21)
各ファスナは、前記アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、前記第1および第2の顎部の組織接触表面間の間隔に比例するサイズを有し、前記可動部材はそれぞれ、該間隔が所定の量未満であるとき、対応するファスナのバックスパンを変形させる、項目20に記載の手術装置。
本開示される手術器具の実施形態は、図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、開放位置にある、本開示の実施形態によるステープル固定アセンブリの側断面図である。
【図2】図2は、中間位置にある、図1のステープル固定アセンブリの側断面図である。
【図3】図3は、閉鎖位置にある、図1のステープル固定アセンブリの側断面図である。
【図4】図4は、図1のステープル固定アセンブリのステープルマガジンの上平面図である。
【図5】図5は、いくつかの構成要素間の関係を示す、ステープル駆動アセンブリの分解斜視図である。
【図6】図6は、アンビル部材の底平面図である。
【図6A】図6Aは、ステープルポケットの上平面図である。
【図7】図7Aは、未形成ステープルの側面図である。図7Bは、本開示による、第1の構成に形成される図7Aのステープルの側面図である。図7Cは、本開示による、第2の構成に形成される図7Aのステープルの側面図である。図7Dは、本開示による、第3の構成に形成される図7Aのステープルの側面図である。図7Eは、本開示による、第4の構成に形成される図7Aのステープルの側面図である。図7Fは、ステープルの第1と第2の脚部との間に重複を示す、図7Bのステープルの平面図である。
【図8】図8Aは、ステープルポケット、未形成ステープル、ステープル滑動部、およびロッド滑動部の拡大側面図である。図8Bは、第1の構成に形成されるステープルを示す、図8Aの構成要素の拡大側面図である。図8Cは、ディンプリングロッドによってディンプリングされるステープルのバックスパンを示す、図8Bの構成要素の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本開示される手術器具の実施形態を説明するが、同一参照番号は、いくつかの図面のそれぞれにおける同等または対応する要素を指す。本明細書で使用されるように、用語「遠位」は、ユーザからより遠い器具の部分またはその構成要素を指し、用語「近位」は、ユーザにより近い器具の部分またはその構成要素を指す。
【0012】
手術用ステープリング装置の実施例は、Blewettの米国特許第5,480,089号(現在は、Tyco Healthcareの子会社であるUnited States Surgicalに所有および譲渡されている)に開示されており、その内容は、参照することによって全体として本明細書に援用される。図1を参照すると、概して、100と示されるステープル固定アセンブリは、固定された第1の顎部104と、可動である第2の顎部140と、顎部作動機構160と、を含む。一実施形態では、ステープル固定アセンブリ100は、当技術分野において周知のように、内視鏡下または腹腔鏡下ステープリング器具と併用するために適合される。
【0013】
第1の顎部104は、第1の組織接触表面122を有するステープルマガジン120を含む。複数の保持スロット124は、ステープルマガジン120内に含められ、第1の組織接触表面122上の列126に配列される(図4参照)。各列126は、概して、第1の顎部104の長手方向軸に沿って延びる。第1の組織接触表面122は、実質的に細長い。各保持スロット124は、ステープル110と、ステープル射出アセンブリとを受容するために構成される。ステープル射出アセンブリは、ステープル射出器132と、ディンプリングロッド138(図5参照)と、ステープル滑動部134と、ロッド滑動部136と、を含む。ステープルマガジン120は、第1の顎部104に可撤的に取設されてもよいことが企図される。ステープルマガジン120が取り外し可能な構造である構成では、ステープル110のその補充が使い果たされると、除去され、新しいステープルマガジン120が第1の顎部104に取設されてもよい。各ステープルマガジン120は、完全補充ステープル110と、少なくとも1つのステープル駆動アセンブリ130(図5に図示され、以下に詳述される)とを含む。
【0014】
ステープルマガジン120は、ステープル滑動部134およびロッド滑動部136を摺動可能に受容するために適合される複数の長手方向チャネル128(図3および4参照)を含む。チャネル128の数は、ステープルマガジン120内に含まれるステープル110の列126の数に対応する。一実施形態では、ステープルマガジン120は、ステープル110の少なくとも2つの列126を含むが、施行される手順、固定される組織の特徴、および他の配慮事項、ならびに各ステープルマガジン120内に含まれるステープル110の数は、列126の数を決定する際の要因となる。複数の列内の各列126は、同等数量のステープル110を有する。
【0015】
次に、図1−3と併せて、図5および8A−8Cを参照すると、ステープル駆動アセンブリ130が示され、ステープル射出器132と、ステープル滑動部134と、ロッド滑動部136と、ディンプリングロッド138と、を含む。各ステープル滑動部134は、当技術分野において周知の構造を使用する手術用ステープリング器具の駆動機構(図示せず)に動作可能に連結される。駆動機構および作動機構を含むそのような器具の実施例は、Millimanらの米国特許第6,669,073号(現在は、Tyco Healthcareの子会社であるUnited States Surgicalに所有および譲渡されている)に開示されており、その内容は、参照することによって全体として本明細書に援用される。複数の列126を含む実施形態では、作動シーケンスの際、実質的に同時にステープル110の長手方向列127(図4参照)を射出するために、その長手方向移動が同期するように、ステープル滑動部134は、駆動機構に動作可能に連結される。駆動機構の動作は、作動機構の作動に応答して、それぞれのカムの近位および遠位移動をもたらす。
【0016】
ステープル滑動部134は、ステープルマガジン120の遠位端へ配向される一対の傾斜表面135a、135bを有する概して細長い構造である。傾斜表面135a、135bは、側方に離間し、その間に通路135cを規定する。通路135cは、実質的に平坦であって、ロッド滑動部136を摺動可能に受容するために定寸される。ロッド滑動部136は、ステープル滑動部134と実質的に類似傾斜を有する略傾斜構造である。さらになお、ステープル射出器132は、傾斜表面135a、135bに容易に係合するために、側方に離間し、その遠位端で角度を成す一対の脚部132a、132bを含む。貫通孔132cは、ステープル射出器132の本体132d内の中心に配置され、ディンプリングロッド138を摺動可能に受容するために定寸される。
【0017】
作動機構の作動に応じて、ステープル滑動部134は、駆動機構によって、ステープルマガジン120を通して、概して、遠位方向に駆動される。ステープルマガジン120を通る平行移動に伴って、ステープル滑動部134は、各ステープル射出器132に連続的に係合する。ステープル滑動部134の遠位水平運動によって、ステープル射出器132の垂直運動が生じ、順に、アンビル部材142へステープル110をほぼ垂直方向に駆動するように、ステープル滑動部134およびステープル射出器132は、余角を伴う係合表面を有する。ステープル滑動部134の遠位移動の際、ロッド滑動部136は、マガジンの近位領域内に静止したままである。組織間隔102によって判断されるように、約2.5mm未満のステープルの高さが望ましい場合、以下に詳述されるように、作動機構は、駆動機構を作動し、ロッド滑動部136を遠位に駆動する。
【0018】
図2および3を参照すると、間隔センサ106は、ステープル固定アセンブリ100の近位部分に配置される。間隔センサ106は、一端近傍に配置される貫通孔109を有する概して細長い構造である。さらになお、間隔センサ106は、第2の顎部140に固定して取設され、開口部105内に摺動可能に受容される。ディンプリング窓103は、第1の顎部104の近位部分近傍に配置され、ディンプリングロッド駆動部107を摺動可能に受容するために構成される。ディンプリングロッド駆動部107は、作動機構に動作可能に連結され、ディンプリング窓103がディンプリングロッド駆動部107と整合されると、ステープルディンプリングカム136に係合する。組織間隔102が、約2.5mm未満のステープルの高さが望ましいことを示す場合のみ、ディンプリング窓103がディンプリングロッド駆動部107と整合するように、間隔センサ106は、構成および定寸される。
【0019】
約2.5mm未満のステープルの高さを有する実施形態では、ステープル滑動部134は、ステープルマガジン120を通るその移動の際、ロッド滑動部136(図5)を誘導する。ステープル滑動部134がステープルマガジン120を通して遠位に平行移動すると、ロッド滑動部136は、所定の時間遅延後、それに追従する。ロッド滑動部136は、ステープル滑動部134の通路135cによって、その経路に沿って誘導される。したがって、ステープル滑動部134は、ステープル110を射出し、それをアンビル部材142に対し駆動し、前述のように、約2.5mm未満の高さを有するステープルを形成する。ステープル110がステープルポケット150内に駆動され、ステープル滑動部134がステープル射出器132を通過する前に(すなわち、滑動部間の遅延)、滑動部136は、ディンプリングロッド138に係合する。ロッド滑動部136がステープル滑動部l34とともに遠位に平行移動すると、ディンプリングロッド138と接触し、その垂直運動によって、バックスパン116に係合させる。バックスパン116の中心に陥没を形成し、形成されたステープル110の保持強度をさらに向上させるように、ロッド滑動部136は、ディンプリングロッド138を駆動する。
【0020】
図4に示されるように、ステープルマガジン120は、複数の列126を有してもよく、各列126内の保持スロット124は、隣接する列126内の保持スロット124から長手方向にオフセットされてもよい。保持スロット124が長手方向にオフセットされるため、ステープル挟持カム134は、動作可能に配列および同期され、第1のステープル110を各列126から射出し、ステープルマガジン120の遠位端へ連続的に前進させ、ステープル110を各列126から連続的に射出する。
【0021】
図1−3に示されるように、第2の顎部140は、第1の顎部104から離間して、その間の組織間隔102を規定する。第2の顎部140は、開放位置と閉鎖位置との間の複数の位置を通して可動である。一実施形態では、第1の顎部104および第2の顎部140は、複数の位置を通して互いに実質的に平行である。以下に詳述されるように、ステープル固定アセンブリ100の動作の際、第2の顎部140は、顎部104と140との間の実質的に平行な関係を維持する顎部作動機構160によって、第1の顎部104へ移動される。
【0022】
図1を参照すると、顎部作動機構160は、筐体170内に配置され、カム162と、ケーブル164と、バネ166と、を含む。カム162、ケーブル164、およびバネ166は、互いに動作可能に接続される。第2の顎部140の近位部分は、筐体170内に配置され、そこに固着される。特に、バネ166は、当技術分野において周知の構造によって、ステープリング器具の近接機構(図示せず)に動作可能に連結される。近接機構は、バネ166を近位に移動させる。ケーブル164がバネ166に動作可能に接続されるため、バネ166のこの近位移動は、ケーブル164の近位移動およびカム162の反時計回りの回転をもたらす。
【0023】
カム162の少なくとも一部は、第2の顎部140の外側表面146と接触し、反時計回り方向の回転に自動ロックする。カム162は、筐体170に回転可能に取設するために、中心に配置されるオリフィス163を有する。オリフィス163は、実質的に円形であるが、カムl62の反時計回りの回転によって、カム162の少なくとも一部が外側表面146との接触を維持し、それによって、反時計回りの回転の際、第2の顎部140を第1の顎部104へ付勢するように、カム162は、特に外側表面に沿って、ほぼ偏心形状を有する。カム162が所望の量だけ回転した後、時計回りの回転が不可能となるように(すなわち、自動ロック)、定位置にロックされるが、付加的反時計回りの回転は可能である。当技術分野において周知の解放機構は、顎部作動機構160を手術用ステープリング器具に動作可能に連結する。完全作動シーケンス後、解放機構が作動され、カム162のロックを解除し、カム162の時計回りの回転を可能にする。したがって、第2の顎部140は、当技術分野において周知の偏向機構によって、第1の顎部104から付勢され、顎部を分離し、手術用ステープリング器具の除去を可能にする。
【0024】
一実施形態では、印加される圧力の最小量を使用して、組織Tが捕捉され顎部104、140間に維持されるように、カム162、ケーブル164、およびバネ166は選択される。カム162、ケーブル164、およびバネ166の有利な組み合わせは、異なる厚さの組織T(すなわち、各組織厚は、特定の組織間隔102に対応)を捕捉する一方、顎部104、140がその間の組織Tを捕捉するための組織Tへの外傷を最小限にする。
【0025】
次に、図6を参照すると、アンビル部材142が示される。アンビル部材142は、概して、細長く、第2の組織接触表面144上に配置される複数のステープルポケット150(図6A参照)を含み、ステープルポケット150の数および配列は、第1の組織接触表面122内の保持スロット124の数および配列に対応する。ステープルポケットの実施例は、Blewettの米国特許第5,480,089号に開示される。次に、図6Aを参照すると、各ステープルポケット150は、ステープル110のそれぞれの脚部112、114(図7A参照)を形成するために、第1のステープル脚部形成溝152と、第2のステープル脚部形成溝154と、を有する。各ステープル形成溝152、154は、それぞれ、脚部112、114に適応するように定寸される。
【0026】
ステープル脚部形成溝152および154は、中間点156を中心として対称である。また、実質的にレムニスケート(8の字形形状湾曲)チャネリング表面158は、ステープルポケット150の周縁の周囲の第2の組織接触表面144内に形成される。各チャネリング表面158は、第2の組織接触表面144によって規定される平面に対し、角度θを形成し、ここでは、0°<θ<90°である。各ステープル形成溝152、154は、隣接するチャネリング表面158と異なる勾配を有する。より具体的には、各ステープル形成溝152、154は、勾配端152a、154aを有し、対応するステープル脚部112、114をステープル110のバックスパン116へ指向する。勾配端152a、154aは、互いに長手方向に対向する。
【0027】
作動シーケンスの際、ステープル110は、保持スロット124から射出されて、アンビル部材142へ指向され、それによって、組織Tを通して脚部112および114を駆動し、それぞれ、ステープル形成溝152、154に進入する。ステープル110がステープルポケット150と接触すると、ステープル形成溝152、154は、脚部112、114を互いに向かって指向する一方、図7Fに示されるように、互いに重複するように、脚部112、114の側方分離を維持する。特に、図7B−7Dを参照すると、ステープル110の形成の際、ステープル形成溝152は、チャネリング表面158と協働して、脚部114の未形成部分に沿って、かつ実質的に平行に、脚部112をバックスパン116へ指向する。同様に、ステープル形成溝154は、チャネリング表面158と協働して、脚部112の未形成部分に沿って、かつ実質的に平行に、脚部114をバックスパン116へ指向する。脚部112と脚部114の未形成部分との平行重複量は、組織間隔102に応じる。同様に、脚部114と脚部112の未形成部分との平行重複量もまた、組織Tの厚さおよび顎部作動機構160の動作によって制御される組織間隔102に応じる。
【0028】
したがって、組織間隔102が大きい程、ステープル110の高さは高くなる(例えば、図7Bに示されるように、約4.8mm)一方、組織間隔102が小さい程、ステープル110の高さは低くなる(例えば、図7Dに示されるように、約2.5mm)。一実施形態では、作動機構は、ステープルマガジン120およびアンビル部材142と協働して、組織Tの厚さおよび組織間隔102によって判断されるように、約4.8mm(すなわち、第2の顎部140の開放位置)〜約2.5mm(すなわち、第2の顎部140の閉鎖位置)の高さを有するステープル110を形成する。ことを理解されたいステープル110は、組織Tの厚さによって判断されるように、約4.8mm〜約2.5mmの範囲の任意の高さを有するように形成されてもよい(実施例は、図7Cに示される)。組織T厚が、より低いステープル110の高さ(すなわち、約2.5mm未満または図7Eに示されるディンプリング位置)の必要性を示す場合、上述のように、ステープリング器具の作動機構は、ロッド滑動部136に動作可能に連結される第2の駆動部材を作動する。
【0029】
種々の修正が、本明細書に開示される実施形態に成され得ることを理解されるであろう。したがって、上述の説明は、制限として解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例証として解釈されたい。例えば、本明細書に開示される構造を形成するステープルは、類似効果を有するEEA、TA、および内視鏡下ステープラにおける使用のために適合および構成されることが可能である。当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲および精神内で他の修正を想定するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動機構を含む筐体と、
該筐体から遠位に延びる細長い管状部材と、
該細長い管状部材の遠位端に位置するステープル固定アセンブリであって、該ステープル固定アセンブリは、第1の顎部および第2の顎部を含み、該第1の顎部は、複数のファスナおよび駆動アセンブリを含み、該第2の顎部は、アンビルを含み、該第1の顎部は、その中に配置された少なくとも1つの可動部材を含み、該少なくとも1つの可動部材は、手術用ファスナの一部と相互作用するために選択的に作動される、ステープル固定アセンブリと、
顎部駆動アセンブリであって、該顎部駆動アセンブリは、該作動機構の作動該第1の顎部および第2の顎部のうちの一方を該第1の顎部および第2の顎部のうちの他方に向けて移動させるように、該作動機構に動作可能に結合されている、顎部駆動アセンブリと
少なくとも1つの滑動アセンブリであって、該滑動アセンブリは、第1の滑動部および第2の滑動部を含む、少なくとも1つの滑動アセンブリと
を備える、手術装置。
【請求項2】
前記第1の滑動部は、前記第2の滑動部を摺動可能に受容するための該第1の滑動部を通る長手方向通路を含み、前記複数のファスナを通る該第1の滑動部の長手方向の平行移動は、前記手術用ファスナを連続的に射出する、請求項に記載の手術装置。
【請求項3】
前記複数のファスナを通る前記第2の滑動部の長手方向の平行移動は、前記少なくとも1つの可動部材を前記第1の顎部の組織接触表面に向けて移動させ、該少なくとも1つの可動部材は、該第1の顎部の長手方向軸を横断する方向に移動し、該少なくとも1つの可動部材の該横断する方向の移動によって、前記手術用ファスナの一部と接触する、請求項またはに記載の手術装置。
【請求項4】
前記第1の滑動部の長手方向の平行移動は、遅延を規定する前記第2の滑動部の長手方向の平行移動に先行する、請求項またはに記載の手術装置。
【請求項5】
各ファスナは、前記アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、前記第1の顎部および前記第2の顎部の組織接触表面の間の間隔に比例するサイズを有し、前記可動部材はそれぞれ、前記間隔が所定の量未満であるとき、対応するファスナのバックスパンを変形させる、請求項、またはに記載の手術装置。
【請求項6】
作動機構を含む筐体と、
該筐体から遠位に延びる細長い管状部材と、
該細長い管状部材の遠位端に位置するステープル固定アセンブリであって、該ステープル固定アセンブリは、第1の顎部および第2の顎部を含み、該第1の顎部は、該作動機構に動作可能に関連付けられるファスナ駆動アセンブリを含み、該ファスナ駆動アセンブリは、第1の滑動部および第2の滑動部を有し、該第1の滑動部は、該第2の滑動部を摺動可能に受容するために、そこを通る長手方向通路を有し、該第2の顎部は、アンビルを含む、ステープル固定アセンブリと、
該第1の顎部内に配置される複数のファスナおよび対応する数の射出アセンブリであって、各射出アセンブリは、ファスナ射出器および可動部材を含み、該第1の滑動部は、該ファスナ駆動アセンブリの作動に応答して、遠位に平行移動し、該第2の滑動部は、静止したままである、複数のファスナおよび対応する数の射出アセンブリと、
該作動機構に動作可能に結合されている顎部駆動アセンブリと
を備える、手術装置。
【請求項7】
間隔は、前記第1の顎部および前記第2の顎部の組織接触表面間で規定され、該間隔は、該第1の顎部および第2の顎部間に捕捉される組織に比例し、前記第1の滑動部の遠位移動は、該第1の顎部の長手方向軸を横断する方向に前記射出器を移動させ、それによって、前記ファスナを前記アンビルに向けて駆動し、各ファスナは、該アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、該間隔に比例するサイズを有する、請求項に記載の手術装置。
【請求項8】
前記第2の滑動部は、前記複数のファスナを通って遠位に平行移動し、前記第2の滑動部は、前記可動部材に係合し、前記第1の顎部の長手方向軸を横断する方向に前記可動部材を駆動させ、該可動部材はそれぞれ、対応するファスナのバックスパンに接触する、請求項またはに記載の手術装置。
【請求項9】
各ファスナは、前記アンビルと相互作用し、完全なファスナを形成し、該完全なファスナは、前記第1の顎部および前記第2の顎部の組織接触表面間の間隔に比例するサイズを有し、前記可動部材はそれぞれ、該間隔が所定の量未満であるとき、対応するファスナのバックスパンを変形させる、請求項またはに記載の手術装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78621(P2013−78621A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−282273(P2012−282273)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−554726(P2009−554726)の分割
【原出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】