説明

可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法

【課題】運転モードの切替をより安全に行い得る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法を提供する。
【解決手段】可変ピッチプロペラ5のピッチが可変の機動性モードと、可変ピッチプロペラ5の回転速度が可変の静粛・安全モードと、を持ち、目標値設定手段11により、各モードにおける目標船速に応じた可変ピッチプロペラ5のピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機9の出力の目標値を設定して、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、モード切替制御手段13により、主機9の出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを切替後の運転モードにおける目標値にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法に係り、特に、運転モードの切替をより安全に行い得る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進方法には、プロペラピッチを前進から後進まで自由に変えることができる機構を持った可変ピッチプロペラ(CPP:Controllable Pitch Propeller)装置を利用したものがある。この可変ピッチプロペラを装備した船舶の場合、主機および可変ピッチプロペラの運転は、基本的に、下記の方法で行われている。すなわち、(1)可変ピッチプロペラのピッチを一定にして、主機の回転速度を変更する方法、(2)主機の回転速度を一定にして、可変ピッチプロペラのピッチを変更する方法、(3)主機の回転速度および可変ピッチプロペラのピッチの両方を変更する方法、の3通りである。
【0003】
例えば、特表2007−509792号公報に開示の「制御可能なピッチ航海用プロペラのための制御方法および制御システム」では、運転モードとして、可変ピッチプロペラ(主機)の回転速度を低速(約30%)に保持しつつ可変ピッチプロペラのピッチを変更することにより変速する操縦モード、並びに、可変ピッチプロペラの回転速度を最大まで使用するクルーズモードを持ち、必要に応じてこれら運転モードを切り替えて運用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−509792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術においては、操縦モードでは可変ピッチプロペラの回転速度を低速に保持することから、該操縦モードを運用可能な船速が低速に限られるという事情があった。
【0006】
また、モード切替時には、可変ピッチプロペラの回転速度を予め定められた回転速度に設定して、可変ピッチプロペラのピッチを船速に基づくピッチに設定するため、一時的に船速が増速または減速してしまうという事情もあった。
【0007】
例えば、図9に示す特性図上で、船速がV11であるときに、回転速度を一定に保持(目標値曲線62)しつつピッチを可変(目標値曲線61)とする操縦モードから、ピッチを一定に保持(目標値曲線63)しつつ回転速度を可変(目標値曲線64)とするクルーズモードに運転モードを切り替える場合について考えてみる。
【0008】
まず、回転速度を所定の回転速度(目標値曲線64上の船速V11の位置n13に相当する回転速度)に設定することから、この回転速度の増加により船は加速されて、操縦モードの第1の状態(ピッチが目標値曲線61上の船速V11の位置p11にあって、回転速度が目標値曲線62上の船速V11の位置n11にある状態)から、船速がV12の第2の状態(ピッチが位置p12にあって、回転速度が位置n12にある状態)に推移することになる。そして、ピッチを船速V11に基づくピッチ(目標値曲線63上の船速V11の位置p13に相当するピッチ)に設定することにより、第2の状態からクルーズモードの第3の状態(ピッチが目標値曲線63上の船速V11の位置p13にあって、回転速度が目標値曲線64上の船速V11の位置n13にある状態)に推移する。このような状態推移の結果、加速前進中の運転モードの切替によって一時的に船速が増速してしまうこととなる。
【0009】
このようなモード切替時の一時的な増速または減速は、運転者にとって想定外のものであり、事故等の要因となる恐れもあり、安全上の問題となる。
【0010】
また他方で、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避したいという要望もあった。
【0011】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、運転モードの切替をより安全に行い得る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法を提供することを目的としている。
【0012】
また、本発明の他の目的は、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避可能な可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置は、可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御装置であって、各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定手段と、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、前記主機出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にするモード切替制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、運転モードの切替時に、主機出力を切替後の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にし、それに伴ってプロペラの回転速度を切替後の運転モードにおける目標値に推移させるので、プロペラのピッチ変化によっても船速は殆ど変化せず、船速の変化を極力抑えて運転モードの切替を行うことができ、結果として運転モードの切替をより安全に行うことができる。また、安全な運転モード切替により、ピッチ可変の第1の運転モードの運用を、船速が低速である場合に限定することなく、低速域から高速域まで広範囲に可能とすることができる。
【0015】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置において、当該可変ピッチプロペラ船の船速を検出する船速検出手段と、前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、を有し、前記モード切替制御手段は、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、当該可変ピッチプロペラ船の船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、実測した船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、船速を確実に目標値にすることができる。
【0017】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置において、前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、を有し、前記モード切替制御手段は、前記プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、前記プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、プロペラのピッチ変化により、プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、プロペラの回転速度を確実に目標値にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置は、可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御装置であって、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定手段と、前記プロペラの回転速度のスキップ範囲を設定するスキップ範囲設定手段と、前記スキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第1ピッチ変化量を設定するピッチ変化量設定手段と、前記第2の運転モードによる加速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、前記主機出力を第1の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第1ピッチ変化量分変化させて、前記第1の運転モードに移行し、前記プロペラのピッチが前記第2の運転モードにおける目標値に達したときに、前記第2の運転モードに移行するモード切替制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第2の運転モードによる加速中にプロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、主機出力を第1の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを第1ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えてプロペラの回転速度をスキップ範囲の上端に推移させることができ、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置において、前記ピッチ変化量設定手段は、前記スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第2ピッチ変化量を設定し、前記モード切替制御手段は、前記第2の運転モードによる減速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに前記第1の運転モードに移行し、該第1の運転モードにおける前記プロペラのピッチ変化量が前記第2ピッチ変化量に達したときに、前記主機出力を第2の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第2ピッチ変化量分変化させ、前記第2の運転モードに移行することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、第2の運転モードによる減速中にプロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに第1の運転モードに移行して、該第1の運転モードにおけるプロペラのピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したときに、主機出力を第1の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを第2ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えてプロペラの回転速度をスキップ範囲の下端に推移させることができ、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置において、前記スキップ範囲をスキップさせるために必要な第1の運転モードの運転継続時間を推定する継続時間推定手段を有し、前記モード切替制御手段は、前記第1の運転モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で、前記第2の運転モードへの移行が完了していない場合には、該第2の運転モードに戻すことを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、運転モードの切替が滞った場合であっても確実に運転モードを移行させて、より安全な推進制御を行うことができると共に、船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避する手順をプログラム化することができ、自動運転プログラムに取り入れることができる。
【0025】
本発明に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御方法は、可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定ステップと、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、前記主機出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にするモード切替制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、運転モードの切替時に、主機出力を切替後の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にし、それに伴ってプロペラの回転速度を切替後の運転モードにおける目標値に推移させるので、プロペラのピッチ変化によっても船速は殆ど変化せず、船速の変化を極力抑えて運転モードの切替を行うことができ、結果として運転モードの切替をより安全に行うことができる。また、安全な運転モード切替により、ピッチ可変の第1の運転モードの運用を、船速が低速である場合に限定することなく、低速域から高速域まで広範囲に可能とすることができる。
【0027】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、当該可変ピッチプロペラ船の船速を検出する船速検出手段と、前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、を有する上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、前記モード切替制御ステップは、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、当該可変ピッチプロペラ船の船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、実測した船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、船速を確実に目標値にすることができる。
【0029】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、を有する上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、前記モード切替制御ステップは、前記プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、前記プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、プロペラのピッチ変化により、プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、プロペラの回転速度を確実に目標値にすることができる。
【0031】
また、本発明に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御方法は、可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持ち、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段を備えた可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定ステップと、前記プロペラの回転速度のスキップ範囲を設定するスキップ範囲設定ステップと、前記スキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第1ピッチ変化量を設定するピッチ変化量設定ステップと、前記第2の運転モードによる加速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、前記主機出力を第1の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第1ピッチ変化量分変化させて、前記第1の運転モードに移行し、前記プロペラのピッチが前記第2の運転モードにおける目標値に達したときに、前記第2の運転モードに移行するモード切替制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、第2の運転モードによる加速中にプロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、主機出力を第1の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを第1ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えてプロペラの回転速度をスキップ範囲の上端に推移させることができ、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、前記ピッチ変化量設定ステップは、前記スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第2ピッチ変化量を設定し、前記モード切替制御ステップは、前記第2の運転モードによる減速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに前記第1の運転モードに移行し、該第1の運転モードにおける前記プロペラのピッチ変化量が前記第2ピッチ変化量に達したときに、前記主機出力を第2の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第2ピッチ変化量分変化させ、前記第2の運転モードに移行することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、第2の運転モードによる減速中にプロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに第1の運転モードに移行して、該第1の運転モードにおけるプロペラのピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したときに、主機出力を第1の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを第2ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えてプロペラの回転速度をスキップ範囲の下端に推移させることができ、主機の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0035】
また、本発明は、上記記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法において、前記スキップ範囲をスキップさせるために必要な第1の運転モードの運転継続時間を推定する継続時間推定ステップを有し、前記モード切替制御ステップは、前記第1の運転モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で、前記第2の運転モードへの移行が完了していない場合には、該第2の運転モードに戻すことを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、運転モードの切替が滞った場合であっても確実に運転モードを移行させて、より安全な推進制御を行うことができると共に、船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避する手順をプログラム化することができ、自動運転プログラムに取り入れることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、運転モードの切替時に、主機出力を切替後の運転モードにおける目標値に保持したまま、プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にし、それに伴ってプロペラの回転速度を切替後の運転モードにおける目標値に推移させるので、プロペラのピッチ変化によっても船速は殆ど変化せず、船速の変化を極力抑えて運転モードの切替を行うことができ、結果として運転モードの切替をより安全に行うことができる。また、安全な運転モード切替により、ピッチ可変の第1の運転モードの運用を、船速が低速である場合に限定することなく、低速域から高速域まで広範囲に可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】機動性モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図である。
【図4】静粛・安全モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図(軸回転の停止・逆転可)である。
【図5】静粛・安全モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図(軸回転の停止・逆転不可)である。
【図6】第1実施形態の運転モード切替時の回転速度およびピッチの状態推移を特性図上に例示する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置の構成図である。
【図8】第2実施形態の静粛・安全モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図(軸回転の停止・逆転不可)である。
【図9】従来の運転モード切替時の回転速度およびピッチの状態推移を特性図上に例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法の実施形態について、第1実施形態、第2実施形態の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置の構成図である。同図において、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置1は、可変ピッチプロペラ5と、可変ピッチプロペラ制御機構7と、主機9と、制御器3と、を備えて構成されている。
【0041】
主機9は、船舶の内部に配置され、可変ピッチプロペラ5を回転駆動させる回転駆動力を発生する。主機9の回転軸は中間軸を介してプロペラ軸と連結されており、これら、中間軸およびプロペラ軸を介して回転駆動力を可変ピッチプロペラ5に伝達する。主機9の運転は制御器3によって制御されており、出力(トルク)は制御器3の主機主力指令により制御される。なお、主機9としては、例えばディーゼルエンジン等の公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0042】
また、可変ピッチプロペラ5は、制御器3のピッチ指令に応じて可変ピッチプロペラ制御機構7により、プロペラピッチを前進から後進まで自由に変えることができる機構を持つ。また、可変ピッチプロペラ制御機構7は、可変ピッチプロペラ5の本体に対して回動可能に取り付けられた複数枚のプロペラ羽根のピッチ(ピッチ角)を、変節油ポンプから供給された作動油の圧力等の動力で作動する変節装置を用いて変えるもので、例えば、特開昭60−76499号公報や特開2010−105437号公報などで開示されているものを用いれば良い。
【0043】
また、船体には船速センサ23が設置されており、当該可変ピッチプロペラ船の船速を検出して制御器3に通知する。また、主機9には回転速度センサ22が設置されており、主機9の回転速度(回転数)を検出して制御器3に通知する。また、可変ピッチプロペラ制御機構7にはピッチセンサ21が設置されており、可変ピッチプロペラ5のピッチを検出して制御器3に通知する。なお、制御器3では、これらの実測値を船の推進状況のモニタリングや後述のフィードバック制御に使用する。ここで、フィードバック制御は本発明に必須の機能ではなく、従って各種センサも必須の構成要素ではない。
【0044】
また、制御器3は、運転者の船速指示または回転速度指示並びに運転モード指示に従って、主機9の出力、並びに可変ピッチプロペラ5のピッチを制御する。制御器3は、目標値設定手段11、モード切替制御手段13、主機出力制御手段15、プロペラピッチ制御手段17およびプロペラ回転速度制御手段19を備えた構成である。なお、これらの構成要素は、制御器3内に持つMPUやDSP等のプロセッサ上で実行されるプログラムの機能的まとまりとして具現されるものである。
【0045】
本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置1は、可変ピッチプロペラ5の回転速度を一定として可変ピッチプロペラ5のピッチを可変とする機動性モード(第1の運転モード)と、可変ピッチプロペラ5のピッチを一定として可変ピッチプロペラ5の回転速度を可変とする静粛・安全モード(第2の運転モード)と、を持つ。これらの運転モードは、自動運転を行う航行制御プログラム内で自動設定されるか、或いは、運転者のモード指示に従って手動設定される。
【0046】
目標値設定手段11では、各運転モードにおける目標船速に応じた可変ピッチプロペラ5のピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機9の出力の目標値を設定する。目標値設定手段11により設定される船速に応じたピッチ、回転速度および主機出力の目標値について、運転モード別に図3〜図5に例示する。なお、図3〜図5において、目標船速に応じた各目標値を簡易的に直線で表現しているが、これに限定されることなく船の特性に合わせた曲線的な設定であっても良い。
【0047】
図3は機動性モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図である。目標船速に応じて、可変ピッチプロペラ5の回転速度(図中、実線52)は一定に保持され、可変ピッチプロペラ5のピッチ(図中、破線51)は右肩上がりに設定される。なお、可変ピッチプロペラ5のピッチ(ピッチ角)は、正方向(前進)では図面に対して上に行くほど深く、下に行くほど浅くなる表記となっており、また、逆方向(後進)では図面に対して上に行くほど浅く、下に行くほど深い。また、これらを実現するため主機9の出力(図中、一点鎖線71)はV字状に設定されている。
【0048】
また、図4は静粛・安全モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図である。目標船速に応じて、可変ピッチプロペラ5のピッチ(図中、破線53)は一定に保持され、可変ピッチプロペラ5の回転速度(図中、実線54)は右肩上がりに設定される。また、これらを実現するため主機9の出力(図中、一点鎖線72)はV字状に設定されている。なお、図4に例示したものは、プロペラ軸の軸回転を停止・逆転させることが可能な可変ピッチプロペラ機構を備えた場合のものである。
【0049】
プロペラ軸の軸回転を停止・逆転させることが不可能な機構の場合には、図5に例示するように、船速が微速の箇所では機動性モードと同等の設定としている。すなわち、船速がV1からV2の範囲では、可変ピッチプロペラ5の回転速度を一定(図中、位置nm1からnp1に回転速度一定で推移する)とし、可変ピッチプロペラ5のピッチを可変(図中、位置pm1からpp1にピッチが変化して推移する)とする。これ以外の船速範囲では、可変ピッチプロペラ5のピッチ(図中、破線55)は正方向および逆方向でそれぞれ正値および負値の一定値に保持され、可変ピッチプロペラ5の回転速度(図中、実線56)はV字状に設定される。また、これらを実現するため主機9の出力(図中、一点鎖線73)はV字状に設定されている。なお、船速V1およびV2の時点で運転モードが切り替わるが、切替前後のピッチおよび回転速度の目標値はそれぞれ同一であるため、このモード切替において本発明が特徴とするモード切替時の制御を行う必要はない。
【0050】
また、モード切替制御手段13では、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、主機9の出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを切替後の運転モードにおける目標値にする。すなわち、機動性モードから静粛・安全モードへのモード切替の指示があったときには、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを静粛・安全モードにおける目標値にする。また、静粛・安全モードから機動性モードへのモード切替の指示があったときには、主機9の出力を機動性モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを機動性モードにおける目標値にする。
【0051】
また、プロペラピッチ制御手段17では、静粛・安全モードではピッチが一定となるように、また、機動性モードではモード切替制御手段13が指示する目標値となるように、ピッチ指令を可変ピッチプロペラ制御機構7に与えて可変ピッチプロペラ5のピッチを制御する。
【0052】
また、プロペラ回転速度制御手段19では、機動性モードでは回転速度が一定となるように、また、静粛・安全モードではモード切替制御手段13が指示する目標値となるように、回転速度を増減する指令をモード切替制御手段13(を介して主機出力制御手段15)に与えて可変ピッチプロペラ5の回転速度を制御する。なお、可変ピッチプロペラ5の回転速度と主機9の回転速度とは比例関係にあり、可変ピッチプロペラ5の回転速度を主機9の回転速度(回転数)で代替しても良く、制御パラメータとしては何れか一方を使用すれば良い。また、何れか一方を検出して他方を換算により求める構成として良い。
【0053】
また、主機出力制御手段15では、モード切替制御手段13が指示する目標値となるように、主機出力指令を主機9に与えて主機9の出力(トルク)を制御する。
【0054】
また、モード切替制御手段13では、可変ピッチプロペラ5のピッチ変化により、可変ピッチプロペラ5の回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、可変ピッチプロペラ5の回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行う。すなわち、主機9の回転速度センサ22によって主機9の回転速度(回転数)を検出し、プロペラ回転速度制御手段19によって、該検出値に基づく可変ピッチプロペラ5の回転速度換算値と、切替後の運転モードにおける可変ピッチプロペラ5の回転速度の目標値との公差を求め、該公差が零となるようフィードバック制御により主機9の出力を調整する。
【0055】
なお、可変ピッチプロペラ5の回転速度の代替として船速を用いる構成としても良い。つまり、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、当該可変ピッチプロペラ船の船速が目標船速になるようフィードバック制御を行う構成である。この場合、船速センサ23によって船速を検出して目標船速との公差を求め、該公差が零となるように、フィードバック制御により機動性モードの場合には可変ピッチプロペラ5のピッチを、また静粛・安全モードの場合には可変ピッチプロペラ5の回転速度(即ち、主機9の出力)を、それぞれ調整する。このようなフィードバック制御は、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消するためのものである。
【0056】
次に、以上のような構成要素を備えた可変ピッチプロペラ船の推進制御方法について、図2および図6を参照して説明する。ここで、図2は本発明に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御方法を説明するフローチャート、図6は本実施形態の運転モード切替時の回転速度およびピッチの状態推移を特性図上に例示する説明図である。
【0057】
運転者による機動性モードから静粛・安全モードへのモード切替の指示、或いは静粛・安全モードから機動性モードへのモード切替の指示があったときには、図2に沿った処理プログラムが起動する。
【0058】
まず、静粛・安全モードへのモード切替指示の場合には、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値まで変化させ(ステップS101)、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを静粛・安全モードにおける目標値まで変化させる(ステップS102)。また、機動性モードへのモード切替指示の場合には、主機9の出力を機動性モードにおける目標値まで変化させ(ステップS101)、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを機動性モードにおける目標値まで変化させる(ステップS102)。
【0059】
次に、主機9の回転速度センサ22から回転速度(回転数)の実測値を受け取り、該検出値に基づく可変ピッチプロペラ5の回転速度換算値と、切替後の運転モードにおける可変ピッチプロペラ5の回転速度の目標値との公差を求め、該公差が所定公差内となったか否かを判断する(ステップS103)。ここでの判断は、可変ピッチプロペラ5のピッチ変化により、可変ピッチプロペラ5の回転速度が切替後の運転モードにおける目標値近傍に推移したかどうかを判断するもので、所定公差の範囲は経験的に設定される。
【0060】
そして、ステップS103で可変ピッチプロペラ5の回転速度の実測・換算値と目標値との公差が所定公差内となったときには、該公差が零となるようフィードバック制御により可変ピッチプロペラ5のピッチを調整する(ステップS104)。
【0061】
これらステップS103およびS104は、可変ピッチプロペラ5の回転速度の代替として船速を用いても良い。つまり、船速センサ23による船速を受け取り、実測した船速と目標船速との公差を求めて該公差が所定公差内となったか否かを判断し(ステップS103)、該公差が所定公差内となったときには、該公差が零となるようフィードバック制御により可変ピッチプロペラ5のピッチを調整する(ステップS104)ものである。
【0062】
次に、図6を参照して、本実施形態の運転モード切替時の回転速度およびピッチの状態推移を検証する。同図は上述した従来技術によるもの(図9参照)と対比するため、図9と同じ状況設定となっている。すなわち、船速がV11であるときに、回転速度を一定に保持(目標値曲線62)しつつピッチを可変(目標値曲線61)とする機動性モードから、ピッチを一定に保持(目標値曲線63)しつつ回転速度を可変(目標値曲線64)とする静粛・安全モードに運転モードを切り替える場合である。
【0063】
本実施形態では、まず、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値まで変化させ、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを静粛・安全モードにおける目標値(目標値曲線63上の船速V11の位置p13に相当するピッチ)まで変化させる。この可変ピッチプロペラ5のピッチ変化によっても、主機出力は一定に保持されているから、船速は(V11のまま)殆ど変化しない。
【0064】
したがって、可変ピッチプロペラ5のピッチは、機動性モードの第1の状態(目標値曲線61上の船速V11の位置p11にある状態)から、静粛・安全モードの第2の状態(目標値曲線63上の殆ど変わらない船速V11での位置p13にある状態)に推移することになる。この可変ピッチプロペラ5のピッチ変化に伴って、可変ピッチプロペラ5の回転速度は、機動性モードの第1の状態(目標値曲線62上の船速V11の位置n11にある状態)から、静粛・安全モードの第2の状態(目標値曲線64上の殆ど変わらない船速V11での位置n13にある状態)に推移する。
【0065】
従来技術(図9参照)では、モード切替時に一時的に増速または減速するという船速の変化があったのに対して、本実施形態では、主機出力を一定に保持したままの可変ピッチプロペラ5のピッチ変化によって、船速の変化を極力抑えて運転モードの切替を行うことができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、可変ピッチプロペラ5を装備し、該プロペラ5の回転速度を一定として該プロペラ5のピッチを可変とする機動性モード(第1の運転モード)と、該プロペラ5のピッチを一定として該プロペラ5の回転速度を可変とする静粛・安全モード(第2の運転モード)と、を持つときに、目標値設定手段11により、各モードにおける目標船速に応じた可変ピッチプロペラ5のピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機9の出力の目標値を設定して、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、モード切替制御手段13により、主機9の出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを切替後の運転モードにおける目標値にする。
【0067】
このように、運転モードの切替時に、主機9の出力を切替後の運転モードにおける目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを切替後の運転モードにおける目標値にし、それに伴って可変ピッチプロペラ5の回転速度を切替後の運転モードにおける目標値に推移させるので、可変ピッチプロペラ5のピッチ変化によっても船速は殆ど変化せず、船速の変化を極力抑えて運転モードの切替を行うことができ、結果として運転モードの切替をより安全に行い得る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法を提供することができる。
【0068】
また、このような安全な運転モード切替により、ピッチ可変の機動性モード(第1の運転モード)の運用を、従来技術のように船速が低速である場合に限定することなく、図3に示す如く船速が高速である場合でも可能として、低速域から高速域まで広範囲に可能とすることができる。
【0069】
また、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、モード切替制御手段11により、可変ピッチプロペラ5の回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、可変ピッチプロペラ5の回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、プロペラの回転速度を確実に目標値にすることができる。
【0070】
また、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、モード切替制御手段11により、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うので、船の汚れや気象・海象等によって発生し得る誤差を解消して、船速を確実に目標値にすることができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法について説明する。船舶の船体は構造物であることから固有振動数を持つ。他方で、可変ピッチプロペラ5の回転に基づいて船体起振力が誘導される。この可変ピッチプロペラ5の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数とが一致すると共振(共鳴)を起こし、船体の振動が増大して金属疲労による安全性の低下や居住性の悪化を招くため、この共振点となる可変ピッチプロペラ5の回転速度での運転を回避したいという要望がある。そこで、本実施形態では、第1実施形態で用いた技法、即ち、主機出力を一定に保持したままの可変ピッチプロペラ5のピッチ変化によって、船速の変化を極力抑えて可変ピッチプロペラ5の回転速度を目標値に移行させる技法を用いて、固有振動数に相当する可変ピッチプロペラ5の回転速度での運転を回避することとした。
【0072】
図7は本発明の第2実施形態に係る可変ピッチプロペラ船の推進制御装置の構成図である。同図において、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置2は、可変ピッチプロペラ5と、可変ピッチプロペラ制御機構7と、主機9と、制御器4と、を備えて構成されている。本実施形態の構成は、第1実施形態の構成(図1)における制御器3に別の機能が付加されたものであり、以下では、制御器4に付加された機能について詳細に説明し、他の構成要素については説明を省略する。
【0073】
制御器4は、第1実施形態と同様に、運転者の船速指示および運転モード指示に従って、主機9の出力、並びに可変ピッチプロペラ5のピッチを制御する。制御器4は、目標値設定手段11、スキップ範囲設定手段31、ピッチ変化量設定手段33、モード切替制御手段14、主機出力制御手段15、プロペラピッチ制御手段17およびプロペラ回転速度制御手段19を備えた構成である。なお、これらの構成要素は、制御器4内に持つMPUやDSP等のプロセッサ上で実行されるプログラムの機能的まとまりとして具現されるものである。なお、主機出力制御手段15、プロペラピッチ制御手段17およびプロペラ回転速度制御手段19については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置2においても、可変ピッチプロペラ5の回転速度を一定として可変ピッチプロペラ5のピッチを可変とする機動性モード(第1の運転モード)と、可変ピッチプロペラ5のピッチを一定として可変ピッチプロペラ5の回転速度を可変とする静粛・安全モード(第2の運転モード)と、を持つ。
【0075】
目標値設定手段11では、第1実施形態と同様に、各運転モードにおける目標船速に応じた可変ピッチプロペラ5のピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機9の出力の目標値を設定する。
【0076】
また、スキップ範囲設定手段は、可変ピッチプロペラ5の回転速度のスキップ範囲を設定する。ここで、可変ピッチプロペラ5の回転速度のスキップ範囲は、船体の固有振動数に相当する可変ピッチプロペラ5の回転速度を中心とした一定幅の範囲である。なお、一定幅は船舶の種類や規模等に応じて設定すれば良い。
【0077】
また、ピッチ変化量設定手段は、設定されたスキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な可変ピッチプロペラ5の第1ピッチ変化量を設定する。また、スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な可変ピッチプロペラ5の第2ピッチ変化量についても設定する。ここで、第1ピッチ変化量は静粛・安全モード下の加速中にスキップ範囲での運転回避に使用し、また、第2ピッチ変化量は静粛・安全モード下の減速中にスキップ範囲での運転回避に使用する。なお、第1ピッチ変化量および第2ピッチ変化量を同値に設定しても良い。
【0078】
また、モード切替制御手段14では、第1実施形態と同様に、一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、主機9の出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを切替後の運転モードにおける目標値にする。
【0079】
また、モード切替制御手段14では、静粛・安全モードによる加速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、主機9の出力を機動性モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第1ピッチ変化量分だけ変化させて機動性モードに移行し、可変ピッチプロペラ5のピッチが静粛・安全モードにおける目標値に達したときに、静粛・安全運転モードに移行する。また、モード切替制御手段14では、静粛・安全モードによる減速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに機動性モードに移行し、該機動性モードにおける可変ピッチプロペラ5のピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したときに、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第2ピッチ変化量分だけ変化させ、静粛・安全運転モードに移行する。
【0080】
また、モード切替制御手段14には、スキップ範囲をスキップさせるために必要な第1の運転モードの運転継続時間を推定する(継続時間推定手段の)機能を備え、機動性モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で、静粛・安全モードへの移行が完了していない場合には、該静粛・安全モードに戻す。
【0081】
次に、以上のような構成要素を備えた可変ピッチプロペラ船の推進制御方法について、図8を参照して説明する。ここで、図8は軸回転の停止・逆転が不可能な場合の静粛・安全モードにおける目標船速に応じた各目標値を例示する説明図である。
【0082】
図8において、各目標値の設定は、スキップ範囲(図中、回転速度N01〜N02の範囲)近傍を除いて、第1実施形態の図5と同様である。すなわち、船速がV1からV2の範囲では、可変ピッチプロペラ5の回転速度を一定とし、可変ピッチプロペラ5のピッチを可変とする。これ以外の船速範囲(スキップ範囲近傍を除く)では、可変ピッチプロペラ5のピッチ(図中、破線57)は正方向および逆方向でそれぞれ正値および負値の一定値に保持され、可変ピッチプロペラ5の回転速度(図中、実線58)はV字状に設定される。なお、主機9の出力については省略している。
【0083】
次に、図8を参照して、加速時におけるスキップ範囲近傍の各目標値の設定について説明する。静粛・安全モードによる加速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の下端に達したとき、同図においては、可変ピッチプロペラ5の回転速度(目標値)がスキップ範囲の下端(N01近傍)に達して、目標値曲線58上の船速V3の位置np21にある状態となる。このとき、モード切替制御手段14によって、主機9の出力を機動性モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第1ピッチ変化量分だけ変化させることにより、可変ピッチプロペラ5のピッチ(目標値)は位置pp21から位置pp22に推移し、これに伴って、可変ピッチプロペラ5の回転速度は位置np21から位置np22へ(スキップ範囲N01〜N02をスキップして)推移することになる。
【0084】
そして、モード切替制御手段14によって機動性モードに移行し、可変ピッチプロペラ5のピッチが静粛・安全モードにおける目標値(目標値P1:位置pp3)に達したときに、静粛・安全運転モードに移行する。なお、機動性モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で静粛・安全モードへの移行が完了していない場合にも、該静粛・安全モードに戻す。
【0085】
次に、図8を参照して、減速時におけるスキップ範囲近傍の各目標値の設定について説明する。静粛・安全モードによる加速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の上端に達したとき、同図においては、可変ピッチプロペラ5の回転速度(目標値)がスキップ範囲の下端(N02近傍)に達して、目標値曲線58上の船速V4の位置np3にある状態となる。このとき、モード切替制御手段14によって機動性モードに移行し、該機動性モードにおける可変ピッチプロペラ5のピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したとき(位置pp22に推移したとき)に、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第2ピッチ変化量分だけ変化させる。これにより、可変ピッチプロペラ5のピッチ(目標値)は位置pp22から位置pp21に推移し、それに伴って、可変ピッチプロペラ5の回転速度は位置np22から位置np21へ(スキップ範囲N01〜N02をスキップして)推移することになる。
【0086】
そして、モード切替制御手段13によって静粛・安全モードに移行する。なお、機動性モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で静粛・安全モードへの移行が完了していない場合にも、該静粛・安全モードに戻す。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、可変ピッチプロペラ5を装備し、該プロペラ5の回転速度を一定として該プロペラ5のピッチを可変とする機動性モード(第1の運転モード)と、該プロペラ5のピッチを一定として該プロペラ5の回転速度を可変とする静粛・安全モード(第2の運転モード)と、を持つときに、目標値設定手段11により、各モードにおける目標船速に応じた可変ピッチプロペラ5のピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機9の出力の目標値を設定して、またスキップ範囲設定手段31により可変ピッチプロペラ5の回転速度のスキップ範囲を設定し、さらにピッチ変化量設定手段33により、スキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な可変ピッチプロペラ5の第1ピッチ変化量を設定して、静粛・安全モードによる加速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の下端に達したとき、モード切替制御手段14により、主機9の出力を機動性モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第1ピッチ変化量分変化させ、機動性モードに移行し、可変ピッチプロペラ5のピッチが静粛・安全モードにおける目標値に達したときに、静粛・安全運転モードに移行する。
【0088】
このように、静粛・安全モードによる加速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の下端に達したときには、主機9の出力を機動性モードにおける目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第1ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えて可変ピッチプロペラ5の回転速度をスキップ範囲の上端に推移させることができ、主機9の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、ピッチ変化量設定手段33により、スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な可変ピッチプロペラ5の第2ピッチ変化量を設定し、モード切替制御手段14により、静粛・安全モードによる減速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに機動性モードに移行し、該機動性モードにおける可変ピッチプロペラ5のピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したときに、主機9の出力を静粛・安全モードにおける目標値にし、主機9の出力を該目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第2ピッチ変化量分変化させ、静粛・安全モードに移行する。
【0090】
このように、静粛・安全モードによる減速中に可変ピッチプロペラ5の回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに機動性モードに移行して、該機動性モードにおける可変ピッチプロペラ5のピッチ変化量が第2ピッチ変化量に達したときに、主機9の出力を機動性モードにおける目標値に保持したまま、可変ピッチプロペラ5のピッチを第2ピッチ変化量分変化させることにより、船速の変化を極力抑えて可変ピッチプロペラ5の回転速度をスキップ範囲の下端に推移させることができ、主機9の回転に基づき誘導される船体起振力の起振周波数と船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避することができ、結果として船舶の安全性や居住性を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置および推進制御方法では、モード切替制御手段14の継続時間推定手段の機能により、スキップ範囲をスキップさせるために必要な機動性モードの運転継続時間を推定することとしたので、運転モードの切替が滞った場合であっても確実に運転モードを移行させて、より安全な推進制御を行うことができると共に、船体が持つ固有振動数との共振点となるプロペラの回転速度での運転を回避する手順をプログラム化することができ、自動運転プログラムに取り入れることができる。
【符号の説明】
【0092】
1,2 可変ピッチプロペラ船の推進制御装置
3,4 制御器
5 可変ピッチプロペラ
7 可変ピッチプロペラ制御機構
9 主機
11 目標値設定手段
13,14 モード切替制御手段
15 主機出力制御手段
17 プロペラピッチ制御手段
19 プロペラ回転速度制御手段
21 ピッチセンサ(ピッチ検出手段)
22 回転速度センサ(回転速度検出手段)
23 船速センサ(船速検出手段)
31 スキップ範囲設定手段
33 ピッチ変化量設定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御装置であって、
各運転モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定手段と、
一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、前記主機出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にするモード切替制御手段と、
を有することを特徴とする可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項2】
当該可変ピッチプロペラ船の船速を検出する船速検出手段と、
前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、を有し、
前記モード切替制御手段は、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、当該可変ピッチプロペラ船の船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項3】
前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、
前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、を有し、
前記モード切替制御手段は、前記プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、前記プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項4】
可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御装置であって、
前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定手段と、
前記プロペラの回転速度のスキップ範囲を設定するスキップ範囲設定手段と、
前記スキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第1ピッチ変化量を設定するピッチ変化量設定手段と、
前記第2の運転モードによる加速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、前記主機出力を第1の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第1ピッチ変化量分変化させて、前記第1の運転モードに移行し、前記プロペラのピッチが前記第2の運転モードにおける目標値に達したときに、前記第2の運転モードに移行するモード切替制御手段と、
を有することを特徴とする可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項5】
前記ピッチ変化量設定手段は、前記スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第2ピッチ変化量を設定し、
前記モード切替制御手段は、前記第2の運転モードによる減速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに前記第1の運転モードに移行し、該第1の運転モードにおける前記プロペラのピッチ変化量が前記第2ピッチ変化量に達したときに、前記主機出力を第2の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第2ピッチ変化量分変化させ、前記第2の運転モードに移行することを特徴とする請求項4に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項6】
前記スキップ範囲をスキップさせるために必要な第1の運転モードの運転継続時間を推定する継続時間推定手段を有し、
前記モード切替制御手段は、前記第1の運転モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で、前記第2の運転モードへの移行が完了していない場合には、該第2の運転モードに戻すことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御装置。
【請求項7】
可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持つ可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、
各運転モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定ステップと、
一の運転モードから他の運転モードへの切替を行う際に、前記主機出力を切替後の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを切替後の運転モードにおける目標値にするモード切替制御ステップと、
を有することを特徴とする可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。
【請求項8】
当該可変ピッチプロペラ船の船速を検出する船速検出手段と、前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、を有する可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、
前記モード切替制御ステップは、当該可変ピッチプロペラ船の船速と目標船速との差が所定公差内に入ったとき、当該可変ピッチプロペラ船の船速が目標船速になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。
【請求項9】
前記プロペラのピッチを検出するピッチ検出手段と、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段と、を有する可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、
前記モード切替制御ステップは、前記プロペラの回転速度と目標値との差が所定公差内に入ったとき、前記プロペラの回転速度が目標値になるようフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。
【請求項10】
可変ピッチプロペラを装備し、該プロペラの回転速度を一定として該プロペラのピッチを可変とする第1の運転モードと、該プロペラのピッチを一定として該プロペラの回転速度を可変とする第2の運転モードと、を持ち、前記プロペラの回転速度を検出する回転速度検出手段を備えた可変ピッチプロペラ船の推進制御方法であって、
各モードにおける目標船速に応じた前記プロペラのピッチおよび回転速度の目標値、並びにこれらを実現するための主機出力の目標値を設定する目標値設定ステップと、
前記プロペラの回転速度のスキップ範囲を設定するスキップ範囲設定ステップと、
前記スキップ範囲の下端から上端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第1ピッチ変化量を設定するピッチ変化量設定ステップと、
前記第2の運転モードによる加速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の下端に達したときに、前記主機出力を第1の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第1ピッチ変化量分変化させて、前記第1の運転モードに移行し、前記プロペラのピッチが前記第2の運転モードにおける目標値に達したときに、前記第2の運転モードに移行するモード切替制御ステップと、
を有することを特徴とする可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。
【請求項11】
前記ピッチ変化量設定ステップは、前記スキップ範囲の上端から下端まで回転速度をスキップさせるために必要な前記プロペラの第2ピッチ変化量を設定し、
前記モード切替制御ステップは、前記第2の運転モードによる減速中に前記プロペラの回転速度がスキップ範囲の上端に達したときに前記第1の運転モードに移行し、該第1の運転モードにおける前記プロペラのピッチ変化量が前記第2ピッチ変化量に達したときに、前記主機出力を第2の運転モードにおける目標値にし、前記主機出力を該目標値に保持したまま、前記プロペラのピッチを前記第2ピッチ変化量分変化させ、前記第2の運転モードに移行することを特徴とする請求項10に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。
【請求項12】
前記スキップ範囲をスキップさせるために必要な第1の運転モードの運転継続時間を推定する継続時間推定ステップを有し、
前記モード切替制御ステップは、前記第1の運転モードへ移行してから推定した運転継続時間が経過した時点で、前記第2の運転モードへの移行が完了していない場合には、該第2の運転モードに戻すことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の可変ピッチプロペラ船の推進制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76560(P2012−76560A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222504(P2010−222504)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)