説明

可変容積比型圧縮機

【課題】揺動ピストン型圧縮機のような可変容積比型圧縮機において過圧縮が発生するのを抑え、運転効率が低下するのを防止する。
【解決手段】圧縮機構(40)に、圧縮機内の吐出空間(86)に一端が常に連通し、他端が圧縮機構(40)の動作の1サイクル中の過圧縮発生範囲で圧縮室(S21,S22)に連通する補助吐出通路(70)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動ピストンに一体的に設けられたブレードがシリンダに保持されて揺動しながら揺動ピストンがシリンダ室内で公転する動作を行う揺動ピストン型圧縮機のような可変容積比型圧縮機に関し、特に、過圧縮を抑えるための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、可変容積比型圧縮機として、例えば特許文献1に開示されているように、揺動ピストンを備えた揺動ピストン型圧縮機が知られている。この揺動ピストン型圧縮機は、例えば冷凍機の冷媒回路において冷媒を圧縮するのに用いられている。
【0003】
揺動ピストン型圧縮機は、ケーシング(図示せず)と、ケーシングの内部に収納される圧縮機構(200)とを備えている。揺動ピストン型の圧縮機構は、一般に、概略の横断面構造を図14に示しているように構成されている。
【0004】
圧縮機構(200)は、シリンダ室(201)を区画形成するシリンダ(202)と、シリンダ室(201)に収納された揺動ピストン(204)とを備えている。揺動ピストン(204)は、シリンダ室(201)を貫通するように配置された駆動軸(203)の偏心部(203a)に嵌め込まれている。シリンダ室(201)は断面が円形に形成されている。駆動軸(203)はシリンダ室(201)と同一中心上に配置される一方、偏心部(203a)の中心はシリンダ室(201)の中心から偏心している。
【0005】
揺動ピストン(204)にはブレード(204a)が一体に形成されており、このブレード(204a)が揺動ブッシュ(205)を介してシリンダに連結されている。具体的には、この揺動ピストン(204)はブレード(204a)が断面略半円形状の一対のブッシュ(205)に挟まれた状態で、該ブッシュ(205)とともに断面円形状のブッシュ孔(202a)に挿入されることによって、ブッシュ孔(202a)の軸心回りに揺動自在に支持されている。
【0006】
上記ブレード(204a)は、揺動ピストン(204)の径方向へブッシュ(205)に対して進退自在に支持されている。また、揺動ピストン(204)は、偏心部(203a)に摺動自在に嵌め込まれていて、この偏心部(203a)が回転することにより、シリンダ(202)の内周面に沿って自転することなく公転する。
【0007】
シリンダ室(201)は、揺動ピストン(204)とブレード(204a)とにより、低圧の冷媒が吸入される低圧室(206)と、吸入された冷媒を圧縮する高圧室(207)とに区画されている。シリンダ(202)には、低圧室(206)に連通する吸入口(208)と、高圧室(207)に連通する吐出口(209)とが形成されている。吐出口(209)の出口側には吐出弁(210)が装着され、吐出弁(210)は、高圧室(207)の圧力とケーシング内の空間(吐出空間)の圧力との圧力差が所定値に達したときに開かれる。
【0008】
以上の構成において、上記揺動ピストン型圧縮機は、偏心部(203a)の回転に伴って、ブレード(204a)が揺動しながら揺動ピストン(204)がシリンダ室(201)内で公転することにより、シリンダ室(201)に吸入したガス冷媒をその容積変化により圧縮してケーシング内へ吐出する。具体的には、上記揺動ピストン型圧縮機では揺動ピストン(204)の1回の公転動作の前段で行われる圧縮行程によりシリンダ室(201)が吐出圧に達したとき、シリンダ室(201)の内外の圧力差が所定値になることで吐出弁(210)が開いて吐出行程が開始され、冷媒がケーシング内の吐出空間へ吐出される。ケーシング内に吐出された冷媒は、ケーシングに設けられている吐出管から機外の冷媒回路に供給される。
【0009】
また、揺動ピストン型の回転式圧縮機としては、シリンダが有する環状のシリンダ室の内部に環状ピストンを配置することにより、圧縮機構に複数のシリンダ室が形成された回転式圧縮機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の圧縮機では、環状ピストンの内側と外側に2つのシリンダ室が形成されている。このタイプの圧縮機では、内側のシリンダ室と外側のシリンダ室の両方で冷媒の圧縮が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−88852号公報
【特許文献2】特開2006−307762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、揺動ピストン型圧縮機のような可変容積比型圧縮機は、例えばスクロール圧縮機のような固定圧縮比型圧縮機とは違って、圧縮機自体の設計圧縮比(固定圧縮比)を有していない。
【0012】
可変容積比型の圧縮機では、上述のように駆動軸の1回転毎に開閉する吐出弁が圧縮機構に設けられていて、該圧縮機を冷媒回路に用いる場合は、冷媒回路の運転条件に応じて変化するケーシング内の圧力よりも高圧室の圧力が所定の圧力差だけ高くなったときに吐出弁が開くので、冷媒回路の運転状態に応じて圧縮機構の圧縮比が変化する。
【0013】
このように吐出弁を用いる構造では、例えば駆動軸が高速回転する運転時には、吐出弁の動きが圧縮機構の動作に追随できず、吐出弁が開き遅れることがあった。そうすると、シリンダ室の圧力が所定値以上に上昇してしまい、冷媒が過圧縮されることになる。その結果、圧縮動力が必要以上に消費されることになり、圧縮機の運転効率が低下する。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、可変容積比型圧縮機において過圧縮が発生するのを抑え、運転効率が低下するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、ケーシング(11)と、ケーシング(11)内に収納された圧縮機構(40)(119)と、圧縮機構(40)(119)を駆動する駆動機構(20)とを備え、上記圧縮機構(40)(119)が、作動流体を圧縮する圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と、上記ケーシング(11)の内部に形成される吐出空間(86)へ圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)から作動流体を吐出する吐出口(45,46)(142)と、吐出口(45,46)(142)を開閉する吐出弁(47,48)(143)とを有する可変容積比型圧縮機を前提としている。
【0016】
そして、この可変容積比型圧縮機は、圧縮機構(40)(119)が、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中の過圧縮発生範囲で圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)に連通する補助吐出通路(70)(170)を有することを特徴としている。上記の補助吐出通路(70)(170)が圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)に連通する「過圧縮発生範囲」は、過圧縮が始まるタイミングに合わせて設定するのが好ましいが、過圧縮が始まるタイミングと若干前後してもよい。
【0017】
この第1の発明では、圧縮機構(40)(119)の動作による圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)内の圧力変化に伴い、吐出弁(47,48)(143)が開閉する。具体的には、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力が吐出空間(86)の圧力よりも所定の圧力差の分だけ高くなるまでは吐出弁(47,48)(143)は閉じており、その間は冷媒などの作動流体が圧縮される。また、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力が吐出空間(86)のよりも所定の圧力差の分だけ高くなると、吐出弁(47,48)(143)が開いて作動流体がケーシング(11)の吐出空間(86)へ吐出される。上記圧縮機構(40)(119)では、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力変化に伴って冷媒の圧縮と吐出が繰り返される。
【0018】
ここで、上記圧縮機構(40)(119)では、補助吐出通路(70)(170)により、圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中の過圧縮発生範囲で圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と吐出空間(86)とが連通する。したがって、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)で過圧縮が発生するタイミングになると、圧力の上昇しすぎた冷媒を吐出空間(86)に逃がすことができ、圧力のピーク値を下げることができる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、上記圧縮機構(40)(119)が、上記作動流体である冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(1)に接続され、上記補助吐出通路(70)(170)が圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)に連通する上記過圧縮発生範囲は、冷凍サイクルの定格圧力比の運転条件で、圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力が最初に吐出空間(86)の圧力を超える領域に対応する範囲であることを特徴としている。
【0020】
この第2の発明では、冷凍サイクルを定格圧力比で運転しているときに、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力が最初に吐出空間(86)の圧力を超えるタイミングで、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と吐出空間(86)とが補助吐出通路(70)(170)により連通する。上記タイミングは言い換えると冷媒圧力のピーク値が生じるタイミング(過圧縮が生じるタイミング)であるから、確実にそのピーク値を抑えて過圧縮を抑制できる。
【0021】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記圧縮機構(40)(119)が、環状のシリンダ室(S21,S22)を有するシリンダ(41)と、該シリンダ(41)に対して偏心してシリンダ室(S21,S22)に収納され、シリンダ室(S21,S22)を外側シリンダ室(S21)と内側シリンダ室(S22)とに区画する環状ピストン(42)と、該シリンダ(41)と一体的に形成されて上記各シリンダ室(S21,S22)を第1室(S21H,S22H)と第2室(S21L,S22L)とに区画するブレード(43)と、ブレード(43)を揺動可能に支持する揺動支持部材(44)とを有し、シリンダ(41)と環状ピストン(42)とが相対的に偏心回転運動をするように構成され、さらに、上記補助吐出通路(70)は、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に上記過圧縮発生範囲で内側シリンダ室(S22)に連通する内側補助吐出通路(72,74)と、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に上記過圧縮発生範囲で外側シリンダ室(S21)に連通する外側補助吐出通路(71,73)とを有していることを特徴としている。
【0022】
この第3の発明では、環状ピストン(42)の内側と外側にシリンダ室(S21,S22)が形成されるタイプの揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(40)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、両方のシリンダ室(S21,S22)から内側補助吐出通路(72,74)と外側補助吐出通路(71,73)を通じて吐出空間(86)に逃がすことができ、圧力のピーク値を下げることができる。
【0023】
第4の発明は、第3の発明において、上記補助吐出通路(70)が、上記シリンダ(41)と環状ピストン(42)のうちの固定側部材を貫通して上記吐出空間(86)に連通するリリーフポート(71,72)と、該シリンダ(41)と環状ピストン(42)の内の可動側部材に形成されてシリンダ室(S21,S22)と上記リリーフポート(71,72)とを上記過圧縮発生範囲で連通する凹陥部(73,74)とを含み、上記リリーフポート(71,72)及び凹陥部(73,74)が、内側シリンダ室(S22)と吐出空間(86)とを上記過圧縮発生範囲で連通させる内側リリーフポート(72)及び内側凹陥部(74)と、外側シリンダ室(S21)と吐出空間(86)とを上記過圧縮発生範囲で連通させる外側リリーフポート(71)及び外側凹陥部(73)とを含むことを特徴としている。
【0024】
第5の発明は、第4の発明において、上記圧縮機構(40)は、上記シリンダ(41)がケーシング(11)に固定される固定側として構成されるとともに、上記環状ピストン(42)がシリンダ(41)に対して偏心回転動作をする可動側として構成され、上記内側リリーフポート(72)は、上記シリンダ(41)が有する内側シリンダ部(41c)を内側シリンダ室(S22)側から上記吐出空間(86)へ貫通して形成され、上記内側凹陥部(74)は、上記内側リリーフポート(72)と内側シリンダ室(S22)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように構成され、上記外側リリーフポート(71)は、上記シリンダ(41)が有する外側シリンダ部(41b)を外側シリンダ室(S21)側から上記吐出空間(86)へ貫通して形成され、上記外側凹陥部(73)は、上記外側リリーフポート(71)と外側シリンダ室(S21)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように構成されていることを特徴としている。
【0025】
上記第4,第5の発明では、環状ピストン(42)の内側と外側にシリンダ室(S21,S22)が形成されるタイプの揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(40)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、両方のシリンダ室(S21,S22)からリリーフポート(71,72)と凹陥部(73,74)を通じて吐出空間(86)に逃がすことができ、圧力のピーク値を下げることができる。
【0026】
第6の発明は、第1または第2の発明において、上記圧縮機構(119)が、シリンダ室(125)を有するシリンダ(120)と、該シリンダ(120)に対して偏心してシリンダ室(125)に収納される揺動ピストン(128)と、該揺動ピストン(128)と一体的に形成されて上記シリンダ室(125)を第1室(125b)と第2室(125a)とに区画するブレード(128b)と、ブレード(128b)を揺動可能に支持する揺動支持部材(151,152)とを有し、シリンダ(120)に対して揺動ピストン(128)とが偏心回転運動をするように構成され、上記補助吐出通路(170)が、上記シリンダ(120)に形成された固定側通路(171,173)と、上記ピストンに形成された可動側通路(172)とを有することを特徴としている。
【0027】
この第6の発明では、揺動ピストン(128)とシリンダ(120)の間にシリンダ室(125)が形成される揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(119)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、シリンダ室(125)から固定側通路(171,173)と可動側通路(172)を通じて吐出空間(86)に逃がすことで、圧力のピーク値を下げることができる。
【0028】
第7の発明は、第6の発明において、上記固定側通路(171,173)は、上記シリンダ(120)の端面を閉塞する端板(122)を上記吐出空間から揺動ピストン(128)の端面まで貫通するリリーフポート(173)と、該端板におけるシリンダ室(125)側の面に形成された固定溝(171)とを有し、上記可動側通路(172)は、上記リリーフポート(171)と固定溝(173)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように上記揺動ピストン(128)における端板(122)側の端面に形成された可動溝(172)により構成されていることを特徴としている。
【0029】
この第7の発明では、揺動ピストン(128)とシリンダ(120)の間にシリンダ室(125)が形成される揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(119)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、固定溝(171)とリリーフポート(173)と可動溝(172)とを通じてシリンダ室(125)から吐出空間(86)に逃がすことができ、圧力のピーク値を下げることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、補助吐出通路(70)(170)を設けたことにより、圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中の過圧縮発生範囲で圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と吐出空間(86)とが連通するので、圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と吐出空間(86)とが連通するタイミングが、圧縮機構(40)(119)で過圧縮が発生するタイミングに合うことになる。そして、こうすることにより、圧力の上昇しすぎた冷媒を吐出空間(86)に逃がすことができる。そのため、圧力のピーク値を下げることで過圧縮を抑えられるから、圧縮機の運転効率が低下するのを防止できる。
【0031】
上記第2の発明によれば、冷凍サイクルを定格圧力比で運転しているときに、冷媒圧力のピーク値が生じるタイミング(過圧縮が生じるタイミング)で圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と吐出空間(86)とが補助吐出通路(70)(170)により連通するから、確実にそのピーク値を抑えて過圧縮を抑制できる。したがって、圧縮機の運転効率が低下するのを確実に抑えられる。
【0032】
上記第3の発明によれば、環状ピストン(42)の内側と外側にシリンダ室(S21,S22)が形成されるタイプの揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(40)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、両方のシリンダ室(S21,S22)から内側補助吐出通路(72,74)と外側補助吐出通路(71,73)を通じて吐出空間(86)に逃がすことができるので、過圧縮を抑えて圧縮機の運転効率低下を防止できる。
【0033】
上記第4,第5の発明によれば、環状ピストン(42)の内側と外側にシリンダ室(S21,S22)が形成されるタイプの揺動ピストン型圧縮機において、リリーフポート(71,72)と凹陥部(73,74)により構成した補助吐出通路(70)を設けることにより、過圧縮を防止できる。また、補助吐出通路(70)をリリーフポート(71,72)と凹陥部(73,74)により構成できるので、機構を容易に実現することができる。
【0034】
上記第6の発明によれば、揺動ピストン(128)とシリンダ(120)の間にシリンダ室(125)が形成される揺動ピストン型圧縮機において、圧縮機構(119)の動作中に圧力が上昇しすぎた冷媒を、シリンダ室(125)から固定側通路(171,173)と可動側通路(172)を通じて吐出空間(86)に逃がすことができるので、過圧縮を抑えて圧縮機の運転効率低下を防止できる。
【0035】
上記第7の発明によれば、揺動ピストン(128)とシリンダ(120)の間にシリンダ室(125)が形成される揺動ピストン型圧縮機において、固定溝(171)とリリーフポート(173)と可動溝(172)により構成した補助吐出通路(170)を設けることにより、過圧縮を防止できる。また、補助吐出通路(170)を固定溝(171)とリリーフポート(173)と可動溝(172)により構成できるので、機構を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る圧縮機の縦断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(H)は、圧縮機構の動作状態の変化を示す横断面図である。
【図3】図3は、圧縮機構の拡大縦断面図である。
【図4】図4は、圧縮機構の拡大縦断面において過圧縮防止機構の構成を示す図である。
【図5】図5は、過圧縮防止機構の第1の動作状態を示す模式図である。
【図6】図6は、過圧縮防止機構の第2の動作状態を示す模式図である。
【図7】図7は、過圧縮防止機構の第3の動作状態を示す模式図である。
【図8】図8は、過圧縮防止機構の第4の動作状態を示す模式図である。
【図9】図9は、過圧縮防止機構の第5の動作状態を示す模式図である。
【図10】図10は、圧縮機構の動作に伴う圧縮室の圧力変化を示す表である。
【図11】図11は、実施形態の変形例1に係る圧縮機の縦断面図である。
【図12】図12は、図11の圧縮機の圧縮機構を示す横断面図である。
【図13】図13は、実施形態の変形例2に係る圧縮機の縦断面図である。
【図14】図14は、従来の可変容積比型圧縮機に用いられている揺動ピストン型圧縮機構の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
本発明の実施形態に係る回転式圧縮機(10)は可変容積比型の回転式圧縮機である。この回転式圧縮機(10)は、例えば空気調和装置の冷媒回路(1)に設けられ、蒸発器から吸入した冷媒(作動流体)を圧縮して凝縮器へ吐出する。
【0039】
図1に示すように、回転式圧縮機(10)は、縦長で密閉容器状のケーシング(11)を備えている。このケーシング(11)は、縦長の円筒状に形成された胴部(12)と、碗状に形成されて、該胴部(12)の両端に外側に凸に配設される一対の端板部(13,13)とによって構成されている。ケーシング(11)の内部には、電動機(20)と、低段側の第1圧縮機構(30)及び高段側の第2圧縮機構(40)を有して冷媒を二段圧縮する圧縮機部(50)とが収容されている。
【0040】
上記ケーシング(11)の胴部(12)には、低段側の第1圧縮機構(30)に接続される第1吸入管(14)及び第1吐出管(15)が、該胴部(12)を厚み方向に貫通するように設けられている。また、胴部(12)には、高段側の第2圧縮機構(40)に接続される第2吸入管(16)が、胴部(12)を貫通するように設けられている。さらに、胴部(12)の上方側を塞ぐ端板部(13)には、第2吐出管(17)が該端板部(13)を貫通するように設けられ、該第2吐出管(17)はケーシング(11)の内部空間(S10)と連通している。尚、図示を省略するが、第1吐出管(15)と第2吸入管(16)とは、ケーシング(11)の外部において接続されている。
【0041】
このような構成により、本回転式圧縮機(10)は、高段側の第2圧縮機構(40)において圧縮された冷媒がケーシング(11)の内部空間(S10)に吐出されてから第2吐出管(17)を介してケーシング(11)の外部へ排出されるように構成されている。つまり、この回転式圧縮機(10)は、ケーシング(11)の内部空間(S10)が高圧圧力状態となる、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機に構成されている。
【0042】
上記ケーシング(11)の内部には、胴部(12)と平行に延びる駆動軸(23)が設けられている。上記電動機(20)及び圧縮機部(50)は、該駆動軸(23)を介して連結されている。尚、密閉容器状のケーシング(11)の底部には、圧縮機部(50)の各摺動部に供給される潤滑油を貯留する油溜まり(18)が形成されている。
【0043】
上記駆動軸(23)は、主軸部(24)と2つの偏心部(25,26)とを有している。本実施形態では、上側偏心部(25)は、主軸部(24)の中央寄りに設けられ、下側偏心部(26)は、主軸部(24)の下端寄りの位置に設けられている。両偏心部(25,26)は、主軸部(24)よりも大径の円柱状に形成され、それぞれ軸心が主軸部(24)の軸心に対して偏心している。また、上側偏心部(25)と下側偏心部(26)とは、主軸部(24)の軸心を中心として互いに位相が180°ずれるように形成されている。
【0044】
上記駆動軸(23)の下端には、油溜まり(18)に浸漬する給油ポンプ(28)が設けられている。また、駆動軸(23)の内部には、上記給油ポンプ(28)が吸い上げられた潤滑油が流通する給油路(29:図4参照)が軸方向に沿って形成されている。上記油溜まり(18)の潤滑油は、上記給油路(29)を通り、両圧縮機構(30,40)の摺動部や、駆動軸(23)と両圧縮機構(30,40)との摺動部に供給される。
【0045】
上記電動機(20)は、ステータ(21)とロータ(22)とを備えている。ステータ(21)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。一方、ロータ(22)は、ステータ(21)の内側に配置され、駆動軸(23)の主軸部(24)に連結されている。
【0046】
上記圧縮機部(50)は、電動機(20)の下方に配置され、上記第1圧縮機構(30)及び第2圧縮機構(40)と、両圧縮機構(30,40)の間に設けられたミドルプレート(51)とを有している。
【0047】
図2及び図3に示すように、上記第1圧縮機構(30)は、環状の第1シリンダ室(S11,S12)を形成する第1シリンダ(31)と、該第1シリンダ室(S11,S12)内に位置して該第1シリンダ室(S11,S12)を外側圧縮室(S11)と内側圧縮室(S12)とに区画する環状ピストン部材(32b)を有する第1ピストン(32)と、第1シリンダ室(S11,S12)を第1室の高圧室(S11H,S12H)と第2室の低圧室(S11L,S12L)とに区画する第1ブレード(33)とを備えている。上記第1シリンダ(31)と第1ピストン(32)とは、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。尚、本実施形態では、上記第1シリンダ(31)が第1圧縮機構(30)の固定部材を構成し、第1ピストン(32)が第1圧縮機構(30)の可動部材を構成している。
【0048】
上記第1シリンダ(31)は、中央に軸受部が形成された平板状の鏡板部(31a)と、該鏡板部(31a)から上方に突出するように形成された筒状の外側シリンダ部材(31b)及び内側シリンダ部材(31c)とを備えている。第1シリンダ(31)は、鏡板部(31a)及び外側シリンダ部材(31b)がケーシング(11)の胴部(12)の内面に溶接で固定されている。また、鏡板部(31a)の軸受部には、駆動軸(23)の主軸部(24)が挿通され、該駆動軸(23)の主軸部(24)は、鏡板部(31a)の軸受部に滑り軸受を介して回転可能に支持されている。
【0049】
上記第1シリンダ(31)の鏡板部(31a)には、外周面から径方向の内側向きに延びる第1吸入ポート(14a)が形成されている。この第1吸入ポート(14a)の一端は、外側圧縮室(S11)及び内側圧縮室(S12)に連通するように構成され、他端には上記第1吸入管(14)が接続されている。つまり、第1吸入ポート(14a)は第1吸入管(14)から外側圧縮室(S11)及び内側圧縮室(S12)に吸入される冷媒を流通させる吸入通路を構成している。
【0050】
また、上記第1シリンダ(31)の鏡板部(31a)には、外周面から径方向の内側向きに延びる第1吐出ポート(15a)が形成されている。この第1吐出ポート(15a)の一端は、外側圧縮室(S11)及び内側圧縮室(S12)に連通するように構成され、他端には上記第1吐出管(15)が接続されている。具体的には、第1吐出ポート(15a)には、外側圧縮室(S11)及び内側圧縮室(S12)の吐出口(35,36)が開口し、該両吐出口(35,36)には吐出弁(37,38)が設けられている。外側圧縮室(S11)の吐出弁(37)は、該外側圧縮室(S11)の高圧室(S11H)と第1吐出ポート(15a)との圧力差が設定値に達すると吐出口(35)を開くように構成されている。同様に、内側圧縮室(S12)の吐出弁(38)は、該内側圧縮室(S12)の高圧室(S12H)と第1吐出ポート(15a)との圧力差が設定値に達すると吐出口(36)を開くように構成されている。
【0051】
上記外側シリンダ部材(31b)の内周面と内側シリンダ部材(31c)の外周面とは、互いに同一中心上に配置された円筒面に形成されている。上記第1ピストン(32)の環状ピストン部材(32b)の外周面と外側シリンダ部材(31b)の内周面との間には外側圧縮室(S11)が形成され、第1ピストン(32)の環状ピストン部材(32b)の内周面と内側シリンダ部材(31c)の外周面との間には内側圧縮室(S12)が形成されている。
【0052】
上記第1ピストン(32)は、平板状の鏡板部(32a)と、該鏡板部(32a)の一方側に形成された上記環状ピストン部材(32b)と、該環状ピストン部材(32b)の内側に形成された筒状の軸受部(32c)とを備えている。環状ピストン部材(32b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている。軸受部(32c)には、駆動軸(23)の下側偏心部(26)が摺動自在に嵌め込まれている。尚、軸受部(32c)と内側シリンダ部材(31c)との間に空間(80)が形成されるが、この空間(80)では冷媒の圧縮は行われない。
【0053】
上記第1ブレード(33)は、第1シリンダ室(S11,S12)の径方向に、外側シリンダ部材(31b)の内周面から内側シリンダ部材(31c)の外周面に亘って延びている。そして、第1ブレード(33)は、環状ピストン部材(32b)の分断箇所を挿通して第1シリンダ室(S11,S12)を高圧室(S11H,S12H)と低圧室(S11L,S12L)とに区画するように構成されている。尚、本実施形態では、第1ブレード(33)は、外側シリンダ部材(31b)及び内側シリンダ部材(31c)と一体形成されているが、該両シリンダ部材(31b,31c)と別部材として形成し、これらに固定するものであってもよい。
【0054】
また、第1圧縮機構(30)は第1揺動ブッシュ(34)を備えている。第1揺動ブッシュ(34)は環状ピストン部材(32b)の分断箇所に設けられ、第1ピストン(32)と第1ブレード(33)とを揺動可能に連結している。第1揺動ブッシュ(34)は、第1ブレード(33)に対して高圧室(S11H,S12H)側に位置する吐出側ブッシュ(34a)と、第1ブレード(33)に対して低圧室(S11L,S12L)側に位置する吸入側ブッシュ(34b)とから構成されている。この吐出側ブッシュ(34a)及び吸入側ブッシュ(34b)は、いずれも断面形状が略半円形の同一形状に形成されている。両ブッシュ(34a,34b)の対向面の間には、上記第1ブレード(33)が進退自在に挟まれている。そして、第1揺動ブッシュ(34)は、第1ブレード(33)を挟み込んだ状態において、第1ピストン(32)に対して揺動可能に形成されている。尚、両ブッシュ(34a,34b)は一部において連結することにより一体形成されたものであってもよい。
【0055】
そして、上記第1圧縮機構(30)では、第1ピストン(32)が第1シリンダ(31)に対して偏心回転運動を行う。その偏心回転運動では、環状ピストン部材(32b)の外周面と外側シリンダ部材(31b)の内周面とが実質的に1点で摺接し、その摺接点と位相が180°ずれた位置において環状ピストン部材(32b)の内周面と内側シリンダ部材(31c)の外周面とが実質的に1点で摺接するように構成されている。
【0056】
上記第2圧縮機構(40)は、上記第1圧縮機構(30)と同様の構成要素によって構成されている。また、第2圧縮機構(40)は、ミドルプレート(51)を挟んで第1圧縮機構(30)を反転させた状態で設けられている。尚、図2では、第2圧縮機構(40)の構成要素に関する符号を括弧内に示している。
【0057】
具体的には、上記第2圧縮機構(40)は、環状の第2シリンダ室(S21,S22)を形成する第2シリンダ(41)と、該第2シリンダ室(S21,S22)内に位置して該第2シリンダ室(S21,S22)を外側圧縮室(外側シリンダ室)(S21)と内側圧縮室(内側シリンダ室)(S22)とに区画する環状ピストン部材(42b)を有する第2ピストン(環状ピストン)(42)と、第2シリンダ室(S21,S22)を第1室の高圧室(S21H,S22H)と第2室の低圧室(S21L,S22L)とに区画する第2ブレード(43)とを備えている。
【0058】
上記第2シリンダ(41)と第2ピストン(42)とは、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。また、本実施形態では、上記第2シリンダ(41)が第2圧縮機構(40)の固定部材を構成し、第2ピストン(42)が第2圧縮機構(40)の可動部材を構成している。
【0059】
上記第2シリンダ(41)は、中央に軸受部が形成された平板状の鏡板部(41a)と、該鏡板部(41a)から下方に突出して形成された筒状の外側シリンダ部材(41b)及び内側シリンダ部材(41c)とを備えている。第2シリンダ(41)は、鏡板部(41a)及び外側シリンダ部材(41b)がケーシング(11)の胴部(12)の内面に溶接されることにより固定されている。また、鏡板部(41a)の軸受部には、駆動軸(23)の主軸部(24)が挿通され、該駆動軸(23)の主軸部(24)は、鏡板部(41a)の軸受部に滑り軸受を介して回転自在に支持されている。
【0060】
上記第2シリンダ(41)の鏡板部(41a)には、外周面から径方向の内側向きに延びる第2吸入ポート(16a)が形成されている。この第2吸入ポート(16a)の一端は、外側圧縮室(S21)及び内側圧縮室(S22)に連通するように構成され、他端には上記第2吸入管(16)が接続されている。つまり、第2吸入ポート(16a)は第2吸入管(16)から外側圧縮室(S21)及び内側圧縮室(S22)に吸入される冷媒を流通させる吸入通路を構成している。
【0061】
また、上記第2シリンダ(41)の鏡板部(41a)には、上面から下方に向かって延びる第2吐出ポート(17a)が形成されている。この第2吐出ポート(17a)の一端は、外側圧縮室(S21)及び内側圧縮室(S22)に連通するように構成され、他端はケーシング(11)の内部空間(S10)に開口している。具体的には、第2吐出ポート(17a)には、外側圧縮室(S21)及び内側圧縮室(S22)の吐出口(45,46)が開口し、両吐出口(45,46)には吐出弁(47,48)が設けられている。外側圧縮室(S21)の吐出弁(47)は、該外側圧縮室(S21)の高圧室(S21H)と第2吐出ポート(17a)との差圧が設定値に達すると吐出口(45)を開くように構成されている。同様に、内側圧縮室(S22)の吐出弁(48)は、該内側圧縮室(S22)の高圧室(S22H)と第2吐出ポート(17a)との差圧が設定値に達すると吐出口(46)を開くように構成されている。
【0062】
上記第2シリンダ(41)の上面には吐出カバー(85)が設けられている。この吐出カバー(85)は上記第2吐出ポート(17a)を覆うとともに第2シリンダ(41)との間に吐出空間(消音空間)(86)が区画されるように形成されている。また、吐出カバー(85)の上部中央には、ケーシング(11)の内部空間(S10)と吐出空間(86)とを連通する吐出開口(87)が形成されている。第2吐出ポート(17a)に吐出された冷媒は、吐出空間(86)に流出した後、さらに吐出開口(87)を通って上記ケーシングの内部空間に流出する。
【0063】
上記外側シリンダ部材(41b)の内周面と内側シリンダ部材(41c)の外周面とは、互いに同一中心上に配置された円筒面に形成されている。上記第2ピストン(42)の環状ピストン部材(42b)の外周面と外側シリンダ部材(41b)の内周面との間には外側圧縮室(S21)が形成され、第2ピストン(42)の環状ピストン部材(42b)の内周面と内側シリンダ部材(41c)の外周面との間には内側圧縮室(S22)が形成されている。
【0064】
上記第2ピストン(42)は、平板状の鏡板部(42a)と、該鏡板部(42a)の一方側に形成された環状ピストン部材(42b)と、鏡板部(42a)の環状ピストン部材(42b)の内側に形成された筒状の軸受部(42c)とを備えている。環状ピストン部材(42b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている。軸受部(42c)には、駆動軸(23)の上側偏心部(25)が摺動自在に嵌め込まれている。なお、該軸受部(42c)と内側シリンダ部材(41c)との間に空間(83)が形成されるが、この空間(83)では冷媒の圧縮は行われない。
【0065】
上記第2ブレード(43)は、第2シリンダ室(S21,S22)の径方向に、外側シリンダ部材(41b)の内周面から内側シリンダ部材(41c)の外周面に亘って延びている。そして、第2ブレード(43)は、環状ピストン部材(42b)の分断箇所を挿通して第2シリンダ室(S21,S22)を高圧室(S21H,S22H)と低圧室(S21L,S22L)とに区画するように構成されている。なお、本実施形態では、第2ブレード(43)は、外側シリンダ部材(41b)及び内側シリンダ部材(41c)と一体形成されているが、両シリンダ部材(41b,41c)と別部材として形成し、これらに固定するものであってもよい。
【0066】
また、第2圧縮機構(40)は第2揺動ブッシュ(揺動支持部材)(44)を備えている。第2揺動ブッシュ(44)は環状ピストン部材(42b)の分断箇所に設けられ、第2ピストン(42)と第2ブレード(43)とを揺動可能に連結している。第2揺動ブッシュ(44)は、第2ブレード(43)に対して高圧室(S21H,S22H)側に位置する吐出側ブッシュ(44a)と、該第2ブレード(43)に対して低圧室(S21L,S22L)側に位置する吸入側ブッシュ(44b)とから構成されている。この吐出側ブッシュ(44a)及び吸入側ブッシュ(44b)は、いずれも断面形状が略半円形の同一形状に形成されている。該両ブッシュ(44a,44b)の対向面の間には、上記第2ブレード(43)が進退自在に挟まれている。そして、第2揺動ブッシュ(44)は、該第2ブレード(43)を挟み込んだ状態において、第2ピストン(42)に対して揺動可能に形成されている。なお、両ブッシュ(44a,44b)は一部において連結されて一体的に形成されていてもよい。
【0067】
そして、上記第2圧縮機構(40)では、第2ピストン(42)が第2シリンダ(41)に対して偏心回転運動を行う。その偏心回転運動では、環状ピストン部材(42b)の外周面と外側シリンダ部材(41b)の内周面とが実質的に1点で摺接し、その摺接点と位相が180°ずれた位置において環状ピストン部材(42b)の内周面と内側シリンダ部材(41c)の外周面とが実質的に1点で摺接するように構成されている。
【0068】
上記ミドルプレート(51)は、互いに対向するように配置された第1ピストン(32)の鏡板部(32a)及び第2ピストン(42)の鏡板部(42a)の外周面を径方向外方から覆う筒部(51a)と、該筒部(51a)の内部において両ピストン(32,42)の鏡板部(32a,42a)と平行に延びる円板状の平板部(51b)とによって構成されている。ミドルプレート(51)はハウジングを構成している。筒部(51a)は、第1シリンダ(31)の外側シリンダ部材(31b)の上面と第2シリンダ(41)の外側シリンダ部材(41b)の下面とに当接するように設けられている。このような構成により、ミドルプレート(51)は、第1圧縮機構(30)との間に第1空間(S1)を区画する一方、第2圧縮機構(40)との間に第2空間(S2)を区画している。尚、第1空間(S1)及び第2空間(S2)は背圧空間を構成している。
【0069】
ミドルプレート(51)の平板部(51b)は、両ピストン(32,42)の鏡板部(32a,42a)との間に隙間を設けて配設されている。この隙間の一部が後述する第2内側背圧空間(S5)及び第1内側背圧空間(S3)を構成している。上記隙間は、その幅が所定幅に設定されている。
【0070】
ミドルプレート(51)の平板部(51b)は、第2ピストン(42)の鏡板部(42a)との対向する面に駆動軸(23)を囲むように全周に亘って第2環状溝(54)が形成される一方、第1ピストン(32)の鏡板部(32a)との対向する面に同じく駆動軸(23)を囲むように全周に亘って第1内側環状溝(52)が形成され、該第1内側環状溝(52)を囲むように第1外側環状溝(53)が形成されている。
【0071】
図1及び図3に示すように、上記ミドルプレート(51)の平板部(51b)の第1内側環状溝(52)、第1外側環状溝(53)、及び第2環状溝(54)には、シールリング(82)が装着されている。上記シールリング(82)は、樹脂製で、且つ平面視で略環状に形成されており、その断面形状は略方形となっている。尚、シールリング(82)を構成する樹脂材料として、例えば、熱可塑性樹脂であるポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)樹脂を用いることができる。だたし、シールリング(82)を構成する材料はこの材料に限られず、弾性体であるゴム部材等によって構成してもよい。
【0072】
このような構成により、上記第1空間(S1)は、シールリング(82)により、内側の第1内側背圧空間(S3)と外側の第1外側背圧空間(S4)とに分割されている。
【0073】
また、同様に、上記第2空間(S2)は、シールリング(82)により、内側の第2内側背圧空間(S5)と外側の第2外側背圧空間(S6)とに分割される。
【0074】
上記第1内側背圧空間(S3)及び第2内側背圧空間(S5)は、ケーシング(11)の内部空間(S10)に連通し、該内部空間(S10)に形成された油溜まり(18)から高圧の潤滑油が流入するように構成されている。具体的には、油溜まり(18)から各駆動部(両圧縮機構(30,40)の摺動部や、駆動軸(23)と両圧縮機構(30,40)の摺動部等)に供給された高圧の潤滑油が該第1内側背圧空間(S3)及び第2内側背圧空間(S5)に流入するように構成されている。これにより、第1内側背圧空間(S3)及び第2内側背圧空間(S5)は、高圧圧力状態のケーシング(11)の内部空間(S10)と同等の高圧圧力状態となる。そして、第1内側背圧空間(S3)の高圧の潤滑油によって第1ピストン(32)の鏡板部(32a)は第1シリンダ(31)側に押し付けられ、第2内側背圧空間(S5)の高圧の潤滑油によって第2ピストン(42)の鏡板部(42a)は第2シリンダ(41)側に押し付けられる。
【0075】
一方、第1外側背圧空間(S4)は、第1圧縮機構(30)の圧縮室(S11,S12)に吸入される冷媒の圧力(低圧圧力)よりも高く、且つ吐出される冷媒の圧力(中間圧力)よりも低い圧力となり、第2外側背圧空間(S6)は、第2圧縮機構(40)の圧縮室(S21,S22)に吸入される冷媒の圧力(中間圧力)よりも高く、且つ吐出される冷媒の圧力(高圧圧力)よりも低い圧力となる。これにより、第1外側背圧空間(S4)の圧力によって第1ピストン(32)の鏡板部(32a)は第1シリンダ(31)側に押し付けられ、第2外側背圧空間(S6)の圧力によって第2ピストン(42)の鏡板部(42a)は第2シリンダ(41)側に押し付けられる。
【0076】
また、回転式圧縮機(10)は、第1外側背圧空間(S4)の圧力を運転条件の変化に応じて調整するための第1背圧調整機構(60)と、第2外側背圧空間(S6)の圧力を運転条件の変化に応じて調整するための第2背圧調整機構(65)とを備えている。
【0077】
上記第1背圧調整機構(60)は、第1外側背圧空間(S4)と第1吸入ポート(14a)との間に設けられている。第1背圧調整機構(60)は、第1外側背圧空間(S4)と第1吸入ポート(14a)とを連通する第1連通路(61)と、該第1連通路(61)の途中に設けられた第1ボール弁(62)及び第1スプリング(63)とを備えている。
【0078】
上記第2背圧調整機構(65)は、第2外側背圧空間(S6)と第1吐出ポート(15a)との間に設けられている。該第2背圧調整機構(65)は、第2外側背圧空間(S6)と第1吐出ポート(15a)とを連通する第2連通路(66)と、該第2連通路(66)の途中に設けられた第2ボール弁(67)及び第2スプリング(68)とを備えている。
【0079】
図4〜図9に示すように、上記圧縮機部(50)の第2圧縮機構(40)には、過圧縮防止機構(補助吐出通路)(70)が設けられている。過圧縮防止機構(70)は、第2シリンダ(41)に形成されたリリーフポート(71,72)と、第2ピストン(42)に形成された凹陥部(73,74)とを有している。尚、図3が駆動軸(23)の中心と吐出口(45,46)の中心とを通る面で圧縮機部(50)を切断した断面図であるのに対して、図4は、駆動軸(23)の中心とリリーフポート(71,72)の中心とを通る面で圧縮機部(50)を切断した断面図である。また、図5〜図9は、過圧縮防止機構(70)の動作状態を示す模式図であり、駆動軸(23)の回転角度の変化に伴って変化する過圧縮防止機構(70)の動作状態を示している。
【0080】
上記第1リリーフポート(71)は、第2シリンダ(41)の鏡板部(41a)の上端面から外側シリンダ部材(41b)の下端面まで貫通する第1リリーフポート(外側リリーフポート)(71)と、鏡板部(41a)の上端面から内側シリンダ部材(41c)の下端面まで貫通する第2リリーフポート(内側リリーフポート)(72)とから構成されている。各第1リリーフポート(71)は、第2シリンダ(41)を駆動軸(23)の軸心と平行ないしほぼ平行な方向に上下へ貫通するように形成されている。また、各第1リリーフポート(71)の上端は、第2シリンダ(41)の上面に取り付けられている吐出カバー(85)で区画されている吐出空間(86)に開口している。
【0081】
上記凹陥部(73,74)は、第2ピストン(42)が有している鏡板部(42a)の上面に形成されている。この凹陥部(73,74)は、鏡板部(42a)の上面に形成された浅い円形のくぼみであって、第1リリーフポート(71)に対応する第1凹陥部(外側凹陥部)(73)と、第2リリーフポート(72)に対応する第2凹陥部(内側凹陥部)(74)とから構成されている。
【0082】
各凹陥部(73,74)は、第2ピストン(42)が1回転する間の所定の角度範囲で、第1リリーフポート(71)と平面的にオーバーラップして連通する位置に形成されている。具体的には、第1凹陥部(73)は、駆動軸(23)の回転角度が約180°に達する図2(E)の状態で、第1リリーフポート(71)の下端開口とオーバーラップして連通する。また、第2凹陥部(74)は、駆動軸(23)の回転角度が約360°に達する図2(A)の状態で、第2リリーフポート(72)の下端開口とオーバーラップして連通する。その結果、第1凹陥部(73)と第1リリーフポート(71)は、第1圧縮室における1サイクルの動作中のわずかな範囲内でオーバーラップし、第2凹陥部(74)と第2リリーフポート(72)は、第2圧縮室における1サイクルの動作中のわずかな範囲内でオーバーラップして、それぞれ互いに連通する。各凹陥部(73,74)とそれに対応する第1リリーフポート(71)が連通する範囲は、いずれも冷媒回路(1)の定格圧力比の運転条件で圧縮室にピーク圧が発生する過圧縮発生範囲(この範囲の詳細は後述する)となるように設定されている。
【0083】
−運転動作−
次に、回転式圧縮機(10)の運転動作について説明する。まず、第1圧縮機構(30)について説明する。第1圧縮機構(30)では、低圧冷媒が圧縮されて中間圧の冷媒となる。
【0084】
電動機(20)を起動すると、第1ピストン(32)の環状ピストン部材(32b)が第1ブレード(33)に沿って往復運動(進退動作)を行うと共に揺動動作を行う。その際、第1揺動ブッシュ(34)は、環状ピストン部材(32b)及び第1ブレード(33)に対して実質的に面接触をする。そして、環状ピストン部材(32b)が外側シリンダ部材(31b)及び内側シリンダ部材(31c)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構(30)が圧縮動作を行う。
【0085】
具体的には、外側圧縮室(S11)では、図2(B)の状態で低圧室(S11L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印方向に回転して図2(C)〜図2(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(S11L)の容積が増大し、第1吸入ポート(14a)の冷媒が外側圧縮室(S11)の低圧室(S11L)に吸入される。
【0086】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び図2(B)の状態になると、上記低圧室(S11L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S11L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S11H)となり、第1ブレード(33)を隔てて新たな低圧室(S11L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S11L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S11H)の容積が減少し、該高圧室(S11H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S11H)の圧力が所定値となって第1吐出ポート(15a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(37)が開き、高圧室(S11H)の中間圧の冷媒が第1吐出ポート(15a)を通じて第1吐出管(15)へ流出する。
【0087】
上記内側圧縮室(S12)では、図2(F)の状態で低圧室(S12L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して図2(G)〜図2(E)の状態へ変化するのに伴って、該低圧室(S12L)の容積が増大し、第1吸入ポート(14a)の冷媒が内側圧縮室(S12)の低圧室(S12L)へ吸入される。
【0088】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び図2(F)の状態になると、上記低圧室(S12L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S12L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S12H)となり、第1ブレード(33)を隔てて新たな低圧室(S12L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S12L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S12H)の容積が減少し、該高圧室(S12H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S12H)の圧力が所定値となって第1吐出ポート(15a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(38)が開き、高圧室(S12H)の中間圧の冷媒が第1吐出ポート(15a)を通じて第1吐出管(15)へ流出する。
【0089】
上記外側圧縮室(S11)では、ほぼ図2(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側圧縮室(S12)でほぼ図2(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側圧縮室(S11)と内側圧縮室(S12)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°ずれている。また、吐出開始のタイミングは、両圧縮室(S11,S12)とも、圧縮開始から吐出終了のほぼ真ん中となる約180°の位置になっている。第1吐出管(15)へ流出した中間圧の冷媒は、第2吸入管(16)に流入して第2圧縮機構(40)に吸入される。
【0090】
第2圧縮機構(40)では、第1圧縮機構(30)とほぼ同様にして中間圧の冷媒が圧縮されて高圧冷媒となる。
【0091】
電動機(20)が回転すると、第2ピストン(42)の環状ピストン部材(42b)が第2ブレード(43)に沿って往復運動(進退動作)を行うと共に揺動運動を行う。その際、第2揺動ブッシュ(44)は、環状ピストン部材(42b)及び第2ブレード(43)に対して実質的に面接触をする。そして、環状ピストン部材(42b)が外側シリンダ部材(41b)及び内側シリンダ部材(41c)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構(40)が圧縮動作を行う。
【0092】
具体的には、外側圧縮室(S21)では、図2(B)の状態で低圧室(S21L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して図2(C)〜図2(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(S21L)の容積が増大し、第2吸入ポート(16a)の冷媒が外側圧縮室(S21)の低圧室(S21L)に吸入される。
【0093】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び図2(B)の状態になると、上記低圧室(S21L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S21L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S21H)となり、第2ブレード(43)を隔てて新たな低圧室(S21L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S21L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S21H)の容積が減少し、該高圧室(S21H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S21H)の圧力が所定値となって第2吐出ポート(17a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(47)が開き、高圧室(S21H)の高圧冷媒が第2吐出ポート(17a)を通じて吐出空間(86)からケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出する。
【0094】
上記内側圧縮室(S22)では、図2(F)の状態で低圧室(S22L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して図2(G)〜図2(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(S22L)の容積が増大し、第2吸入ポート(16a)の冷媒が内側圧縮室(S22)の低圧室(S22L)に吸入される。
【0095】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び図2(F)の状態になると、上記低圧室(S22L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S22L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S22H)となり、第2ブレード(43)を隔てて新たな低圧室(S22L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S22L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S22H)の容積が減少し、該高圧室(S22H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S22H)の圧力が所定値となって第2吐出ポート(17a)を通じて吐出空間(86)からケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出する。
【0096】
上記外側圧縮室(S21)では、ほぼ図2(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側圧縮室(S22)でほぼ図2(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側圧縮室(S21)と内側圧縮室(S22)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°ずれている。また、吐出開始のタイミングは、両圧縮室(S11,S12)とも、圧縮開始から吐出終了のほぼ真ん中となる約180°の位置になっている。吐出空間(86)を経てケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出した高圧冷媒は、第2吐出管(17)から吐出される。尚、冷媒回路(1)において、回転式圧縮機(10)から吐出された冷媒は、凝縮工程および蒸発工程を経て、再び該回転式圧縮機(10)に吸入される。
【0097】
一方、上記油溜まり(18)の潤滑油は、駆動軸(23)の下端の給油ポンプ(28)の遠心ポンプ作用により、該駆動軸(23)の給油路(29)内を上方へ押し上げられて、両圧縮機構(30,40)の摺動部や駆動軸(23)と両圧縮機構(30,40)との摺動部に供給される。
【0098】
そして、これらの摺動部に供給された潤滑油は、各摺動部の隙間を通って第1内側背圧空間(S3)及び第2内側背圧空間(S5)に流入する。
【0099】
上記第1内側背圧空間(S3)は、内部空間(S10)に連通するとと共に、上記潤滑油が流入するため高圧圧力状態となる。また、同様に上記第2内側背圧空間(S5)は、内部空間(S10)に連通すると共に上記潤滑油が流入するため高圧圧力状態になる。
【0100】
<過圧縮防止機構の動作>
上述したように、本実施形態において、第1凹陥部(73)と第1リリーフポート(71)、第2凹陥部(74)と第2リリーフポート(72)は、それぞれ、駆動軸(23)が1回転する度に、第2圧縮機構(40)の圧縮行程から吐出行程の間の所定のタイミングでわずかな時間だけ連通する。ここで、凹陥部(73,74)とリリーフポート(71,72)が連通する時間の範囲(過圧縮発生範囲)について、図10の表を用いて具体的に説明する。
【0101】
まず、図10の表で「実施形態」と表示している例は、図1〜図3の圧縮機(10)に図4〜図9の過圧縮防止機構(70)を設けた例、「比較例」と表示している例は、圧縮機(10)に過圧縮防止機構(70)を設けていない例である。この図10の表は、圧縮機構(40)を比較的高速で運転するときの圧縮室の内圧の変化を示し、比較例と実施形態を、冷媒回路(1)の圧力比が低圧力運転比になる状態、設計(定格)圧力比になる状態、及び高運転圧力比になる状態、の3つの状態で比較して示している。
【0102】
まず、比較例の圧縮機が冷媒回路(1)の設計圧力比で運転される場合、圧縮室内の圧力Pが吸入圧力Psから徐々に上昇して吐出圧力Pdに達すると吐出弁(47,48)が開き始める。しかし、圧縮機構(40)が高速回転しているので、その回転速度に対して吐出弁(47,48)の開く速度が相対的に遅くなり、冷媒が吐出されにくくなるため、圧縮室の圧力のピークが吐出圧力Pdを大きく越えてしまう。その後は、圧縮室内でピーク圧力が発生した反動で脈動が生じる。脈動の振幅は徐々に小さくなっていくが、過圧縮による効率の低下が比較的大きくなる。
【0103】
これに対して、本実施形態の圧縮機(10)は、冷媒回路(1)の定格圧力比で運転されるときに上記ピーク値が発生する範囲(過圧縮発生範囲)で、上記凹陥部(73,74)とリリーフポート(71,72)が連通するようになっている。したがって、本実施形態の圧縮機(10)では、比較例の圧縮機(10)であれば上記ピーク値が大きくなってしまう過圧縮発生範囲で、冷媒が圧縮室から吐出カバー(85)内の吐出空間(86)を通ってケーシング(11)の内部へ抜けるので、上記ピーク値が小さくなる。このように圧縮室の圧力のピーク値が小さくなると冷媒の過圧縮度合いが小さくなるから、本実施形態の圧縮機(10)では運転効率が低下するのを抑えられる。なお、上記の上記凹陥部(73,74)とリリーフポート(71,72)が連通する「過圧縮発生範囲」は、過圧縮が始まるタイミングに合わせて設定するのが好ましいが、過圧縮が始まるタイミングと若干前後しても、過圧縮が発生する範囲を含んでいればよい。
【0104】
次に、比較例の圧縮機(10)を低運転圧力比で運転する場合、吸入圧力Psから吐出圧力Pdに達するまでの時間が定格圧力比で運転する場合に比べて短くなる。そのため、低運転圧力比の場合は、吐出弁(47,48)の開くタイミングが定格運転圧力比の時と比べて早くなる。この定格運転圧力比の場合、圧縮室内の圧力のピーク値は定格圧力比の時よりも小さくなる。
【0105】
この低運転圧縮比で本実施形態の圧縮機(10)が運転される場合、上記凹陥部とリリーフポートが連通するのは、圧縮室内で上記ピーク値が発生した後のタイミングになる。そのため、この実施形態の圧縮機(10)でも、圧縮室内の圧力には比較例の圧縮機(10)と実質的に同じ大きさのピーク値が発生するが、上述のようにピーク値が比較的小さいので過圧縮による効率低下は起こりにくい。また、過圧縮が発生した後の脈動は比較例よりも早く収束するので、このことにより効率低下を抑える効果を得ることもできる。
【0106】
次に、比較例の圧縮機(10)が高運転圧力比で運転される場合、吸入圧力Psから吐出圧力Pdに達するまでの時間が定格圧力比で運転する場合に比べて長くなる。そのため、低運転圧力比の場合は、吐出弁(47,48)の開くタイミングが定格運転圧力比の時と比べて遅くなる。
【0107】
この高運転圧縮比で本実施形態の圧縮機(10)が運転される場合、上記凹陥部とリリーフポートが連通するのは、圧縮室内で上記ピーク値が発生する前のタイミングになる。なお、高運転圧力比で圧縮室内が吐出圧に達する前に凹陥部とリリーフポートが連通すると冷媒が吐出空間(86)から圧縮室へ逆流して圧力が上昇することが考えられるが、凹陥部とリリーフポートが連通するのはわずかな時間だけであるから、逆流が生じてもその流量はわずかである。したがって、逆流損失も最小限度に抑えられる。
【0108】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、圧縮機(10)の運転中に、過圧縮発生範囲で凹陥部(73,74)とリリーフポート(71,72)が連通する間に圧縮室と吐出空間(86)とが連通するので、高速運転時に吐出弁(47,48)の開き遅れが生じても、過圧縮のピーク値を抑えられる。このことにより、過圧縮損失を低減できる。
【0109】
また、高運転圧力比で運転しているときに、圧縮室内の圧力が吐出圧力に達する前に凹陥部(73,74)とリリーフポート(71,72)が連通しても、その連通する時間が短く逆流がほとんど生じないので、逆流損失が生じるのを抑えられる。
【0110】
以上のことから、本実施形態によれば圧縮機(10)の運転効率が低下するのを効果的に抑えられる。
【0111】
なお、スクロール圧縮機(10)のような固定圧縮比型圧縮機では、圧縮機構に吐出弁が不要であるため高速運転時の過圧縮は小さいものの、運転圧力比が設計圧力比より小さい場合に過圧縮が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態ではそのような問題も生じない。
【0112】
また、スクロール圧縮機の吐出ポートでは、高運転圧力比で吐出圧力が上昇しにくいと、連通後、長時間にわたり冷媒の逆流が生じる。また、容積比を大きめに設計して、弁のあるリリーフポートを設けた場合は、高速でリリーフ弁の開き遅れがある。これに対して、本実施形態ではそのような問題も生じない。
【0113】
なお、本実施例のように、図2(A)(E)の回転位置では、それぞれ外側圧縮室、内側圧縮室の各容積変化率(減少率)がもっとも大きく、このタイミングで吐出状態になる圧力比が設計圧力比に相当するのであれば、過圧縮は特に大きくなりやすいので、このようなリリーフポートの効果は格別に大きい。
【0114】
−実施形態の変形例−
(変形例1)
上記実施形態では、環状ピストンの内側と外側に圧縮室が形成されるタイプの揺動ピストン型圧縮機に本発明を適用した例について説明したが、本発明の過圧縮防止機構は、上記実施形態とは圧縮機構の構成が異なる圧縮機に適用してもよい。
【0115】
例えば、図11,図12に示している変形例1は、一般的な揺動ピストン型の圧縮機構(119)を有する圧縮機(100)に本発明を適用した例である。図11は圧縮機(100)の縦断面図、図12は圧縮機構(119)の横断面図である。この圧縮機構(119)は、シリンダ(120)と、駆動軸(133)の偏心部(134)に連結される揺動ピストン(128)とを有している。シリンダ(120)は、円筒状のシリンダ部材(121)と、シリンダ部材(121)の両端面に固定される端板(122,123)とを有している。揺動ピストン(128)は、外周面の直径がシリンダ部材(121)の内周面より小さなピストン部材(128a)と、このピストン部材(128a)と一体的に形成されたブレード(128b)とを有している。ブレード(128b)は、ピストン部材(128a)の外周面から径方向外側へ延出している。
【0116】
上記シリンダ部材(121)には、揺動ピストン(128)のブレード(128b)を両側から挟持する揺動ブッシュ(揺動支持部材)(151,152)が装着されている。揺動ブッシュ(151,152)は、いずれも断面半円形の吸入側ブッシュ(152)と吐出側ブッシュ(151)から構成されている。
【0117】
駆動軸(133)の回転に伴って、揺動ピストン(128)のブレード(128b)が揺動ブッシュ(151,152)と共に揺動しながら揺動ブッシュ(151,152)間の溝(129)の間を進退する。そして、揺動ピストン(128)のピストン部材(128a)は駆動軸(133)の周りを自転せずに公転する。このとき、揺動ピストン(128)のピストン部材(128a)の外周面とシリンダの内周面とが実質的に摺接するように、シリンダ部材(121)と揺動ピストン(128)が構成されている。
【0118】
上記シリンダ部材(121)の内周面と揺動ピストン(128)の外周面の間にシリンダ室(125)が形成されている。このシリンダ室(125)は、上記ブレード(128b)により、吸入側の低圧室(第2室)(125a)と、吐出側の高圧室(第1室)(125b)とに区画されている。この圧縮機構(119)には、低圧室(125a)に連通する吸入口(141)と、高圧室(125b)に連通する吐出口(142)が形成されている。吐出口(142)には吐出弁(143)が設けられている。
【0119】
過圧縮防止機構(補助吐出通路)(170)は、一方の端板(122)と揺動ピストン(128)とが摺接する部分において、端板(122)に形成された固定溝(171)と、揺動ピストン(128)に形成された可動溝(172)と、端板(122)に形成されたリリーフポート(補助吐出通路)(173)とを有している。固定溝(171)と可動溝(172)とリリーフポート(173)は、上記実施形態と同様に、圧縮機(100)が冷媒回路(1)の定格運転圧力比で運転されるときに圧縮室内にピーク圧が発生するタイミング(過圧縮発生範囲)で、わずかな時間だけ互いに連通するように構成されている。なお、この変形例では、圧縮機構(119)に吐出カバーは設けられていない。また、「過圧縮発生範囲」の定義も実施形態1と同じである。
【0120】
以上の構成において、固定溝(171)と可動溝(172)とリリーフポート(173)が連通するときには、圧縮室内の冷媒がケーシング内の空間へ抜ける。このことにより、高速運転時に吐出弁の開き遅れが生じても、過圧縮のピーク値を低減できるので、過圧縮損失を低減できる。
【0121】
また、高運転圧力比で運転しているとき、圧縮室内の圧力が吐出圧力に達する前に固定溝(171)と可動溝(172)とリリーフポート(173)が連通しても、その連通時間が短く逆流がほとんど生じないようにしているので、逆流損失が生じるのを抑えられる。
【0122】
(変形例2)
実施形態1の圧縮機(10)においても、過圧縮防止機構(70)を上記変形例1とほぼ同様に構成することができる。なお、過圧縮防止機構(70)を除く構成は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0123】
図13に示すように、過圧縮防止機構(70)は、第2シリンダ(41)に外側シリンダ部材(41b)及び内側シリンダ部材(41c)の間の位置を軸方向に貫通するように形成されたリリーフポート(75)と、リリーフポート(75)の径方向外側に形成された外側固定溝(76)と、リリーフポート(75)の径方向内側に形成された内側固定溝(77)と、環状ピストン部材(42b)の先端部に形成された可動溝(78)とから構成されている。
【0124】
リリーフポート(75)と外側固定溝(76)と可動溝(78)、及びリリーフポート(75)と内側固定溝(77)と可動溝(78)は、圧縮機(10)が冷媒回路(1)の定格運転圧力比で運転されるときに各シリンダ室内にピーク圧が発生するタイミング(過圧縮発生範囲)で、わずかな時間だけ互いに連通するように構成される。
【0125】
このように構成しても、リリーフポート(75)と外側固定溝(76)と可動溝(78)が連通するとき、及びリリーフポート(75)と内側固定溝(77)と可動溝(78)が連通するときには、吐出空間(86)へ抜ける。このことにより、高速運転時に吐出弁の開き遅れが生じても、過圧縮のピーク値を低減できるので、過圧縮損失を低減できる。
【0126】
また、高運転圧力比で運転しているとき、圧縮室内の圧力が吐出圧力に達する前に
リリーフポート(75)と外側固定溝(76)と可動溝(78)、及びリリーフポート(75)と内側固定溝(77)と可動溝(78)が連通しても、その連通時間が短く逆流がほとんど生じないようにしているので、逆流損失が生じるのを抑えられる。
【0127】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0128】
例えば、上記実施形態では揺動ピストン型の圧縮機(10)に本発明を適用した例を説明したが、本発明を適用する圧縮機は可変圧縮比型の圧縮機であればよい。具体的には、ピストンとブレードが別部品になっていてピストンの偏心回転運動にブレードが追従するローリングピストン型圧縮機であっても、ピストンが1回公転する間の過圧縮発生範囲内で圧縮室の流体を逃がす構成になっていればよい。
【0129】
また、上記実施形態においては、圧縮室がリリーフポート(71,72)を通じて吐出空間(86)と連通するタイミングを、冷媒回路(1)の定格運転圧力比で圧縮室内に圧力のピークが発生する範囲に設定しているが、その範囲は圧縮機構の構造や寸法その他の条件に応じて適宜設定すればよい。
【0130】
さらに、上記実施形態では、吐出カバー(85)で吐出空間(86)を区画して消音機能を持たせるようにしているが、この吐出カバー(85)は必ずしも設けなくてもよい。その場合、ケーシング(11)の内部空間が上記実施形態の吐出空間に相当する。
【0131】
また、上記実施形態は、外側シリンダ部(31b,41b)と内側シリンダ部(31c,41c)を有するシリンダ(31,41)を固定側とし、環状ピストン部材(32b,42b)を有する環状ピストン(32,42)を可動側とする圧縮機(10)に本発明を適用した例であるが、本発明は、逆に環状ピストン(32,42)が固定側になりシリンダ(31,41)が可動側になる構成の圧縮機(環状ピストンをケーシングに固定して駆動軸の主軸部を支持する固定側とし、シリンダを駆動軸の偏心部に装着して可動側とした圧縮機)に適用してもよい。さらに、上記実施形態では二段圧縮機構の高段側に本発明を適用した例であるが、変形例に示しているように単段圧縮機に適用してもよい。
【0132】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上説明したように、本発明は、可変容積比型圧縮機において過圧縮を抑えるための構造について有用である。
【符号の説明】
【0134】
1 冷媒回路
10 揺動ピストン型圧縮機(可変容積比型圧縮機)
11 ケーシング
20 駆動機構
40 圧縮機構
41 シリンダ
41b 外側シリンダ部(41b)
41c 内側シリンダ部(41c)
42 環状ピストン
43 ブレード
44 揺動支持部材
45 吐出口
46 吐出口
47 吐出弁
48 吐出弁
70 補助吐出通路
71 外側リリーフポート(外側補助吐出通路)
72 内側リリーフポート(内側補助吐出通路)
73 外側凹陥部(外側補助吐出通路)
74 内側凹陥部(内側補助吐出通路)
86 吐出空間
S11 圧縮室(シリンダ室)
S12 圧縮室(シリンダ室)
S21 圧縮室(シリンダ室)
S22 圧縮室(シリンダ室)
S21H 第1室
S22H 第1室
S21L 第2室
S22L 第2室
119 圧縮機構
120 シリンダ
122 端板
125 シリンダ室
128 揺動ピストン
125b 第1室
125a 第2室
128b ブレード
151 揺動ブッシュ(揺動支持部材)
152 揺動ブッシュ(揺動支持部材)
173 リリーフポート(固定側通路)
171 固定溝(固定側通路)
172 可動溝(可動側通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)と、ケーシング(11)内に収納された圧縮機構(40)(119)と、圧縮機構(40)(119)を駆動する駆動機構(20)とを備え、
上記圧縮機構(40)(119)が、作動流体を圧縮する圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)と、上記ケーシング(11)の内部に形成される吐出空間(86)へ圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)から作動流体を吐出する吐出口(45,46)(142)と、吐出口(45,46)(142)を開閉する吐出弁(47,48)(143)とを有する可変容積比型圧縮機であって、
上記圧縮機構(40)(119)は、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中の過圧縮発生範囲で圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)に連通する補助吐出通路(70)(170)を有することを特徴とする可変容積比型圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記圧縮機構(40)(119)は、上記作動流体である冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(1)に接続され、
上記補助吐出通路(70)(170)が圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)に連通する上記過圧縮発生範囲は、冷凍サイクルの定格圧力比の運転条件で、圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に圧縮室(S11,S12,S21,S22)(125)の圧力が最初に吐出空間(86)の圧力を超える領域に対応する範囲であることを特徴とする可変容積比型圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記圧縮機構(40)(119)は、環状のシリンダ室(S21,S22)を有するシリンダ(41)と、該シリンダ(41)に対して偏心してシリンダ室(S21,S22)に収納され、シリンダ室(S21,S22)を外側シリンダ室(S21)と内側シリンダ室(S22)とに区画する環状ピストン(42)と、該シリンダ(41)と一体的に形成されて上記各シリンダ室(S21,S22)を第1室(S21H,S22H)と第2室(S21L,S22L)とに区画するブレード(43)と、ブレード(43)を揺動可能に支持する揺動支持部材(44)とを有し、シリンダ(41)と環状ピストン(42)とが相対的に偏心回転運動をするように構成され、
上記補助吐出通路(70)は、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に上記過圧縮発生範囲で内側シリンダ室(S22)に連通する内側補助吐出通路(72,74)と、一端が上記吐出空間(86)に常に連通し、他端が圧縮機構(40)(119)の動作の1サイクル中に上記過圧縮発生範囲で外側シリンダ室(S21)に連通する外側補助吐出通路(71,73)とを有していることを特徴とする可変容積比型圧縮機。
【請求項4】
請求項3において、
上記補助吐出通路(70)は、上記シリンダ(41)と環状ピストン(42)のうちの固定側部材を貫通して上記吐出空間(86)に連通するリリーフポート(71,72)と、該シリンダ(41)と環状ピストン(42)の内の可動側部材に形成されてシリンダ室(S21,S22)と上記リリーフポート(71,72)とを上記過圧縮発生範囲で連通する凹陥部(73,74)とを含み、
上記リリーフポート(71,72)及び凹陥部(73,74)は、内側シリンダ室(S22)と吐出空間(86)とを上記過圧縮発生範囲で連通させる内側リリーフポート(72)及び内側凹陥部(74)と、外側シリンダ室(S21)と吐出空間(86)とを上記過圧縮発生範囲で連通させる外側リリーフポート(71)及び外側凹陥部(73)とを含むことを特徴とする可変容積型圧縮機。
【請求項5】
請求項4において、
上記圧縮機構(40)は、上記シリンダ(41)がケーシング(11)に固定される固定側として構成されるとともに、上記環状ピストン(42)がシリンダ(41)に対して偏心回転動作をする可動側として構成され、
上記内側リリーフポート(72)は、上記シリンダ(41)が有する内側シリンダ部(41c)を内側シリンダ室(S22)側から上記吐出空間(86)へ貫通して形成され、
上記内側凹陥部(74)は、上記内側リリーフポート(72)と内側シリンダ室(S22)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように構成され、
上記外側リリーフポート(71)は、上記シリンダ(41)が有する外側シリンダ部(41b)を外側シリンダ室(S21)側から上記吐出空間(86)へ貫通して形成され、
上記外側凹陥部(73)は、上記外側リリーフポート(71)と外側シリンダ室(S21)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように構成されていることを特徴とする可変容積型圧縮機。
【請求項6】
請求項1または2において、
上記圧縮機構(119)は、シリンダ室(125)を有するシリンダ(120)と、該シリンダ(120)に対して偏心してシリンダ室(125)に収納される揺動ピストン(128)と、該揺動ピストン(128)と一体的に形成されて上記シリンダ室(125)を第1室(125b)と第2室(125a)とに区画するブレード(128b)と、ブレード(128b)を揺動可能に支持する揺動支持部材(151,152)とを有し、シリンダ(120)に対して揺動ピストン(128)とが偏心回転運動をするように構成され、
上記補助吐出通路(170)は、上記シリンダ(120)に形成された固定側通路(171,173)と、上記ピストンに形成された可動側通路(172)とを有することを特徴とする可変容積比型圧縮機。
【請求項7】
請求項6において、
上記固定側通路(171,173)は、上記シリンダ(120)の端面を閉塞する端板(122)を上記吐出空間から揺動ピストン(128)の端面まで貫通するリリーフポート(173)と、該端板におけるシリンダ室(125)側の面に形成された固定溝(171)とを有し、
上記可動側通路(172)は、上記リリーフポート(171)と固定溝(173)とを上記過圧縮発生範囲で連通させるように上記揺動ピストン(128)における端板(122)側の端面に形成された可動溝(172)により構成されていることを特徴とする可変容積比型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−24209(P2013−24209A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162342(P2011−162342)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】