説明

可変容量素子及び、電子機器

【課題】信号電圧に対する耐圧とは無関係に、制御電圧に対する電界感度を設定できる構造を有する可変容量素子及び、電子機器を提供する。
【解決手段】誘電体層28を挟持して設けられた対の信号電極24,25と、信号電極24,25間で発生する信号電界と交差する方向に制御電界を発生させるように、誘電体層28を挟持して設けられた対の制御電極23,26とから構成する。そして、信号電極24,25は、一対の制御電極23,26に挟持される誘電体層28内の制御電界が発生する方向に2層以上積層して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量を変化させるための制御端子を有する可変容量素子において、制御電界が、信号電界を個別に制御する可変容量素子及び、それを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からバイアス信号を印加することによって、容量を変化させることで周波数や時間などを制御する可変容量素子が活用されており、例えば、ダイオード(バリキャップ)やMEMSなどで商品化されている。これらの可変容量素子は、可変容量を制御する制御用のバイアス信号を加える為の専用端子を持たない。すなわち、信号用の端子と、制御用の端子が共通とされた、2端子デバイスであった。したがって、実回路での使用においては、図17に示すような回路構成がとることにより、4端子化する必要があった。
【0003】
図17に示す例は、従来の、可変容量素子150を4端子化して用いる場合の等価回路である。まず、図17は、可変容量素子150と、バイアス除去用の容量素子151が、直列接続された例である。図17に示す可変容量素子150の一方の電極は、バイアス除去用の容量素子151の一方の電極に接続されている。バイアス除去用の容量素子151の一方の電極と、可変容量素子150の一方の電極間の接続配線の途中には、制御電圧が、抵抗Rを介して印加されるように構成されている。
【0004】
この等価回路においては、AC信号は、バイアス除去用の容量素子151及び、可変容量素子150を流れる。また、DCバイアス電流は、抵抗Rを介して、可変容量素子150のみを流れる。図17に示す例では、このように、AC信号を発信する信号電圧源と、DCバイアス電流のための制御電圧源が別々に形成されている。
しかしながら、このような等価回路において、制御電圧源と、信号電圧源が別々に構成されているとしても、可変容量素子150において使用される端子は共通とされる。
このような等価回路においては、端子が4端子化されているものの、制御電圧源から流れるDCバイアス電流と、AC信号が干渉してしまう。
【0005】
また、本願発明者らは、強誘電体を使った可変容量素子において、例えば、下記特許文献1に示す発明を提案してきた。特許文献1には、信頼性と生産性が向上された電極構造を有する可変容量素子について記載されている。図18A,Bを用いて、特許文献1に記載された可変容量素子について説明する。図18Aは、可変容量素子の概略斜視図であり、図18Bは、その断面構成図である。
【0006】
特許文献1における可変容量素子100は、図18A,Bに示すように、例えば立方体からなる誘電体層104の4つの面に、それぞれ、端子が構成されている。その4つの端子のうち、2つの端子が、内部の信号電極に接続される信号端子103で、もう2つの端子が、内部の制御電極に接続される制御端子102である。この可変容量素子100の内部構造は、図18Bに示すように、複数の信号電極、及び制御電極が、強誘電体層104を介して積層された構成とされている。図18Bに示す例では、一番下層の電極と、下から5番目の電極と、一番上層の電極が一方の制御電極102aとされ、一方の制御端子102に接続されており、下層から3番目の電極と7番目の電極が他方の制御電極102bとされ、他方の制御端子102に接続されている。また、下から2番目の電極と、6番目の電極が一方の信号電極103aとされ、一方の信号端子103に接続されており、下から、4番目の電極と、8番目の電極が他方の信号電極103bとされ、他方の信号端子103に接続されている。
【0007】
この従来例においては、制御端子102と、信号端子103には別々に電圧印加できる共に、内部に信号電極103a,103bと、制御電極102a,102bを複数層積層させることにより、低コストで容量の増大が行えるというメリットがある。
【0008】
このように誘電体層104を介して、制御電極102a,102b、及び信号電極103a,103bが複数積層して形成される可変容量素子100は、製造しやすく、低コストである。しかしながら、信号端子103間に形成される信号用容量と、制御端子102間に形成される制御用容量が、図18BのC1〜C8で示すように、誘電体層104内で直結されてしまう。そして、このとき、信号電界と制御電界とは、同じ向きに発生している。
したがって、このような従来の可変容量素子100においては、小さい制御電圧の印加で、容量値を変化させるために、誘電体層を薄く構成して電界感度を上げようとすると、絶縁特性が低下して、信号電圧に対する耐圧が小さくなってしまうという問題がある。
【0009】
すなわち、信号電界と制御電界が平行とされ、誘電体層104内の、信号端子103間に形成される信号用容量と、制御端子102間に形成される制御用容量とが共通する場合には、制御電圧を小さく構成することと、信号電圧に対する耐圧を大きく構成することは、相反の関係にある。
そうすると、このような従来の可変容量素子100では、小さい制御電圧で可変容量素子100の容量値を制御し、大きな振幅の信号電圧を用いるという要望には、対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−287996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の点に鑑み、本発明は、信号電圧に対する耐圧とは無関係に、制御電圧に対する電界感度を設定できる構造を有する可変容量素子及び、電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の可変容量素子は、誘電体層を挟持して設けられた対の信号電極と、信号電極間で発生する信号電界と交差する方向に制御電界を発生させるように、誘電体層を挟持して設けられた対の制御電極とから構成する。そして、信号電極は、一対の制御電極に挟持される誘電体層内の制御電界が発生する方向に2層以上積層して設けられている。
【0013】
本発明の可変容量素子では、信号電極間の信号用容量の容量値が、信号電界と交差する方向に発生する制御電界により変化される制御用容量の容量値の変化に伴い、変化される。そして、信号電界と、制御電界は、交差するようになされるので、信号端子における耐圧と、制御端子における耐圧を個別に設計することができる。
【0014】
本発明の電子機器は、誘電体層を挟持して設けられた対の信号電極と、信号電極間で発生する信号電界と交差する方向に制御電界を発生させるように、誘電体層を挟持して設けられた対の制御電極とから構成される可変容量素子を有する。そして、可変容量素子では、信号電極は、一対の制御電極に挟持される誘電体層内の制御電界が発生する方向に2層以上積層して設けられている。
【0015】
本発明の電子機器では、可変容量素子において、信号電極間の容量値が、制御電極間に制御電圧を印加することにより容量値が変化される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の可変容量素子によれば、容量を決定する3つの要素である、比誘電率、電極面積、電極間距離を、制御電極間でできる制御用容量と、信号電極間でできる信号用容量とで、個別に設定することができる。これにより、信号電極に対する耐圧と、制御電極に対する耐圧とを個別に設計することができる。
【0017】
本発明の電子機器によれば、可変容量素子を、信号端子に対する耐圧とは無関係に、制御端子間の制御電界の感度を設定できるので、大きな信号電圧が用いられる電子機器においても、可変容量素子を小さな制御電圧で制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】A,B 本発明の第1の実施形態における可変容量素子の概略斜視図と、その断面構成図である。
【図2】A,B 実験における試料の概略構成図と、その断面構成図である。
【図3】実験における測定値を示した図である。
【図4】A,B 本発明の第2の実施形態における可変容量素子の概略斜視図と、その断面構成図である。
【図5】第2の実施形態における可変容量素子の製造段階の分解斜視図(その1)である。
【図6】第2の実施形態における可変容量素子の製造段階の分解斜視図(その2)である。
【図7】A,B 本発明の第3の実施形態における可変容量素子の概略斜視図と、その断面構成図である。
【図8】A,B 本発明の第3の実施形態の他の例における可変容量素子の概略斜視図と、その断面構成図である。
【図9】A,B 本発明の第3の実施形態の他の例における可変容量素子の概略断面構成図である。
【図10】A,B 本発明の第4の実施形態における可変容量素子の概略断面構成図及び、内部信号電極層の平面構成図である。
【図11】A,B 第4の実施形態における可変容量素子の上側制御電極層及び下側制御電極層の平面構成図である。
【図12】第4の実施形態における可変容量素子の他の例における分解斜視図である。
【図13】第4の実施形態における可変容量素子の他の例における概略断面構成図である。
【図14】A,B 第4の実施形態における可変容量素子の他の例における概略断面構成図である。
【図15】第4の実施形態における可変容量素子を用いて測定した測定結果である。
【図16】本発明の電子機器の一実施形態例を示す概略回路構成である。
【図17】従来例の可変容量素子を用いる場合の等価回路である。
【図18】A,B 従来例の可変容量素子の概略斜視図及びその断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図16を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る可変容量素子の概略構成、及びその断面構成を示す。
本実施形態例の可変容量素子1は、例えば、直方体に形成された誘電体層4の4つの面に、4つの端子が形成された構成とされている。図1において、紙面左から右方向に水平な軸をx軸、紙面下から上方向に水平な軸をy軸、紙面手前から奥方向に延びる軸をz軸と設定する。
【0021】
誘電体層4としては、例えば、イオン分極による強誘電体材料、電子分極による強誘電体材料を用いることができる。
イオン分極による強誘電体材料は、イオン結晶材料からなり、プラスのイオンとマイナスのイオンの原子が変位することで電気的に分極する強誘電体材料である。このイオン分極による強誘電体材料は、例えば原子Aと原子BからなるABOである化学式で表され、ペロブスカイト構造を有し、例えばBaTiO(チタン酸バリウム)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、チタン酸鉛(PbTiO)等が挙げられる。本実施形態例におけるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)は、チタン酸鉛(PbTiO)にジルコン酸鉛(PbZrO)を混ぜ合わせた強誘電体材料である。
【0022】
電子分極による強誘電体材料は、プラスの電荷に偏った部分と、マイナスの電荷に偏った部分に分かれて電気双極子モーメントが生じ、分極が生じているものである。最近では、Fe2+の電荷面と、Fe3+の電荷面の形成により、分極を形成して強誘電体的特性を示す希土類鉄酸化物が報告されている。この系は、希土類(RE)と鉄族(TM)にて、(RE)・(TM)・Oなる分子式で表されるものが、高誘電率を持つことが報告されている。例えば、(RE)としては、Y,Er,Yb,Lu(特にYと重希土類元素)が挙げられ、また、(TM)としては、Fe,Co,Ni(特にFe)が挙げられる。(RE)・(TM)・Oとしては、ErFe2O4,LuFe2O4,YFe2O4が挙げられる。
【0023】
本実施形態例では、直方体の誘電体層4において、yz面に位置した、対向する側面に、例えば平板状の制御端子2がそれぞれ構成されており、xy面に位置した、対向する側面に、同じく平板状の信号端子3がそれぞれ構成されている。そして、それらの信号端子3、及び制御端子2は、互いに接触しないように形成されている。
【0024】
本実施形態例では、信号端子3が、信号電極を兼ね、制御端子2が制御電極を兼ねる例とする。
すなわち、このような構成の可変容量素子1においては、yz面に形成された面状の制御端子2は、制御電極とされ、この制御端子2間において、制御用容量が構成される。このときの、制御電界の向きは、矢印aで示すように、x方向となる。
また、xy面に形成された面状の信号端子3は、信号電極とされ、この信号端子3間においても、制御電極2とは直交する、信号用容量が構成される。このときの信号電界の向きは、矢印cで示すように、z方向となる。すなわち、本実施形態例では、制御電界の向きと、信号電界の向きが直角に交差する構成とされている。
【0025】
本実施形態例では、制御端子2間に、DC電圧である制御電圧を印加することにより、制御用容量の容量値が制御される。そうすると、制御用容量の容量値の変化に伴って、信号端子3間で構成される信号用容量の容量値も変化されるので、信号端子3間にAC信号が入力された場合には、この可変容量素子1は、制御された信号用容量を有する容量素子としてはたらく。
【0026】
本実施形態例においては、誘電体層4のxy面に信号端子3、yz面に制御端子2を設けた構成としたが、信号端子3と制御端子2を逆の位置に構成する例としてもよいし、また、xz面に、信号端子3、又は制御端子2を構成する例としてもよい。すなわち、制御電界と、信号電界が、交差する関係にあればよい。本実施形態例においては、誘電体層4を直方体に形成して、制御電界と信号電界が直交する関係となる構成としたが、必ずしも直交する必要はなく、交差する関係であればよい。
【0027】
このような、信号電界と制御電界とが交差するように構成された可変容量素子の特性について、図2A,Bに示す試料を用いて実験したときの計測結果を、図3に示す。図2Aは、本実験で用いられた試料5の概略斜視図であり、図2Bは、そのz軸方向に断面をとった場合の概略断面構成図である。
【0028】
まず、図2Aに示すように、実験で用いられた試料5は、x軸方向の幅が約30mm、y軸方向、及びz軸方向の幅が0.5mmに構成された誘電体層8において、対向するxz面に制御端子7が構成され、対向するxy面に信号端子6が構成された可変容量素子である。また、試料5の誘電体層8は、強誘電体材料である、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成されている。このとき、制御端子7、及び信号端子6は接触されないように形成されている。また、これらの制御端子7、及び信号端子6は、容量素子を構成するための制御電極、信号電極を兼ねる。信号端子6、制御端子7としては、ニッケルメッキが用いられている。
【0029】
このように構成された試料5の、制御端子7間には、所望のDC電圧9を印加して、誘電体層8に、矢印a方向に制御電界を発生させた。また、信号端子6間には、容量計10を設置して、信号端子6間の容量値の変化率を測定した。なお、信号端子6間では、矢印cで示す方向に信号電界が発生する。
【0030】
図3に示す計測結果は、横軸が、DC電圧9印加に伴う制御電界の電界強度で、縦軸が、信号端子6間で計測した容量値の変化率である。この容量値の変化率は、1nFを基準として計測されたものである。また、図3における測定値AVE(+)は、正極性のDC電圧を印加した場合であり、測定値AVE(−)は、負極性のDC電圧を印加した場合である。
図3からわかるように、制御端子7間に制御電界を発生させて試料5の容量値を変化させた場合でも、その交差する方向、すなわち、信号端子6間で計測する容量値も変化されていることがわかる。すなわち、制御電界と信号電界を交差させて可変容量素子を構成した場合でも、信号端子6間で構成される信号用容量の容量値を、制御端子7間で構成される制御用容量の容量値を変化させることで、制御することができることがわかる。
【0031】
このような容量値の変化は、誘電体層の分極の状態が変化して誘電率が変化することにより起こる。すなわち、この場合には、制御電界の向きによって変化された分極が、信号端子6間の容量値の変化、すなわち、信号端子6間の誘電率の変化にも影響することが証明された。すなわち、図1A,Bに示すような本実施形態例の可変容量素子1でも、制御端子2間に、制御電圧を印加することにより、信号端子3間の信号用容量値を変化させることができる。
【0032】
ところで、異方性を有する誘電体材料は、その方向によって、それぞれ誘電率が異なる材料である。例えば、図1A,Bに示す誘電体層4として、異方性を有する誘電体材料を用いれば、制御電界の発生によって変化された分極の影響を、より大きく、信号端子3間の容量値の変化に反映させることができる。この場合には、制御端子2間に、小さな制御電圧であるDC電圧を印加することで、信号端子3間にできる信号用容量の容量値を大きく変化させることができ得る。
【0033】
また、本実施形態によれば、制御端子と信号端子とが別に構成され、また、制御電界と信号電界が交差されるので、制御端子間に流れる信号が、信号端子に漏れない。このため、従来用いられていた、DC除去用のコンデンサが必要なくなる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、図4A,Bに、本発明の第2の実施形態における可変容量素子の概略構成、及びその断面構成を示す。図4A,Bにおいて、紙面左から右方向に水平な軸をx軸、紙面下から上方向に水平な軸をy軸、紙面手前から奥方向に延びる軸をz軸と設定する。図4A,Bにおいて、図1A,Bに対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0035】
本実施形態例においては、誘電体層4内部に、制御端子2に接続された複数の内部制御電極13a,13bを有する可変容量素子12を示す。この内部制御電極13a,13bは、誘電体層4内のxz面内に延在して平板状に形成され、y軸方向に複数層、本実施形態例では6層、誘電体層4を介して積層されるものである。図4Bに示すように、本実施形態例の可変容量素子12では、下から1番目と、3番目と、5番目に積層される内部制御電極13aが、一方の制御端子2aに接続されており、下から2番目と、4番目と、6番目に積層される内部制御電極13bが、他方の制御端子2bに接続されている。
【0036】
このような可変容量素子12は、図5に示すように、誘電体層4となる平板状のセラミックグリーンシート4a上に、内部制御電極13a,13bとなる金属ペーストを印刷した内部制御電極層13を積層して形成される。セラミックグリーンシート4aの幅d1が制御端子2間距離で、幅d2が、信号端子3間距離である。内部制御電極13a,13bのそれぞれの端部は、制御端子2の引き出し電極部となるので、セラミックグリーンシート4a上の、一方の端部に露出されるように、形成される。そして、露出された引き出し電極が、交互に、対向する位置にくるように、積層される。
【0037】
また、積層される内部制御電極層13の上下には、保護用のセラミックグリーンシートを積層して、例えば1300℃程度の高温で焼結する。その後、図6に示すように、積層体の所望の側面に、信号端子3と、制御端子2を接続することにより、可変容量素子12が完成される。このとき、制御端子2aは、内部制御電極13aの端部の引き出し電極部に接するように形成され、制御端子2bは、内部制御電極13bの端部の引き出し電極部に接するように形成される。
【0038】
このような構成の可変容量素子12では、制御端子2間に電圧を印加することにより、隣接する内部制御電極13a,13b間に、それぞれ制御用容量が形成される。この制御用容量に発生する制御電界を形成する内部制御電極13a,13bが形成される平面は、、制御端子2が形成されているyz平面とは垂直の関係にある。以下の説明において、そのような位置関係を有する容量を垂直コンデンサと定義する。
【0039】
本実施形態例の可変容量素子12では、内部制御電極13a,13bを構成することにより、制御電界の向きは、矢印bで示すように、y方向とされる。そして、信号端子3は、xy平面上に形成されるので、信号電界の向きは、矢印cで示すように、z方向とされ、制御電界と直行する方向に発生する。
【0040】
本実施形態例では、内部制御電極13a,13bにより、垂直コンデンサである制御用容量を構成する例としたが、制御電界と、信号電界は、直交する関係を有するので、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0041】
また、本実施形態例においては、内部制御電極13a,13bを構成することにより、容易に、電極間距離を小さくすることが可能であり、制御電界の電界強度を信号電界の電界強度よりも大きく構成することができる。このため、容量値を変化させるために必要な制御電圧を低くすることができる。また、この場合においても、信号端子3の構成や、信号端子3間の距離は、制御端子2に接続される内部制御電極13a,13bの構成には影響されない。したがって、制御端子2に接続される内部制御電極13a,13bの構成を変化させて、小さな制御電圧でも、容量値が変化するように、垂直コンデンサを構成した場合でも、信号端子3の耐圧を維持することができる。
【0042】
本実施形態例では内部制御電極13a,13bを6層に形成する構成としたが、これに限定されず、所望の層数に形成することができる。また、例えば、図4〜図6で示した可変容量素子12を基本ユニットとして、積層させることもできる。
【0043】
ところで、本実施形態例の可変容量素子12では、内部制御電極13a,13bの形状を変えることで、制御電界の有効領域を広くすることが可能となる。すなわち、内部制御電極13a,13bの面積を広くすることで、隣接する内部制御電極13a,13b間で、互いに重なる面積が大きくなり、これにより、制御電界が発生する面積も大きくなる。しかしながら、その分、制御用容量が増加し、応答が悪くなるという問題がある。制御電界の必要な領域は、信号電界が発生する領域であるので、例えば、図4Bに示すように、それ以外の信号電界が発生しない領域11であって、制御に関係しない関係しない領域11の内部制御電極13a,13bを削ることで制御容量を小さくすることが可能となる。
【0044】
[第3の実施形態]
次に、図7A,Bに、本発明の第3の実施形態における可変容量素子の概略構成、及びその断面構成を示す。図7A,Bにおいて、紙面左から右方向に水平な軸をx軸、紙面下から上方向に水平な軸をy軸、紙面手前から奥方向に延びる軸をz軸と設定する。また、図7A,Bにおいて、図1A,Bに対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0045】
本実施形態例においては、誘電体層4内部に、制御端子2に接続された2つの内部制御電極15,16を有する可変容量素子17を示す。この2つの内部制御電極15,16のうち、一方の内部制御電極15は、一方の制御電極2aに接続されており、また、他方の内部制御電極16は、他方の制御電極2bに接続されている。そして、これらの内部制御電極15,16は、誘電体層4のy軸方向に対して、中心に位置するxz面内の同一平面上に、平板状に延在して形成される。そして、2つの内部制御電極15,16は、x軸方向に、幅w1(以下、ギャップ長w1)だけ離間されて設けられている。そして、信号端子3は、そのギャップ長w1部分に重なる、誘電体層4のxy平面上に形成される。
【0046】
本実施形態例の可変容量素子17では、信号電界は、矢印cで示すように、z方向となり、制御電界は、矢印aで示すように、x方向となる。したがって、本実施形態例においても、信号電界と制御電界は、直交する関係を有し、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0047】
また、本実施形態例では、2つの内部制御電極15,16間において制御用容量が構成され、ギャップ長w1部分の誘電体層4が、制御端子2間に印加されるDC電圧からなる制御電圧により可変される。
本実施形態例では、内部制御電極15,16が形成される面と、同一平面上に形成される容量を、水平コンデンサと定義する。また、本実施形態例において、信号端子3間の距離をギャップ長w2とする。
【0048】
本実施形態例においては、制御端子2に接続された内部制御電極15,16によって、水平コンデンサを構成することにより、水平コンデンサ内の誘電体層4に制御電界が印加され、水平コンデンサの容量値が変化する。本実施形態例では、水平コンデンサを構成する内部制御電極15,16間のギャップ長w1を減少させることにより、容量値を変化させるのに必要な制御電圧を小さくすることができる。そして、この場合、信号端子3間のギャップ長w2は、変化する必要がない。これにより、信号端子3間の耐圧をそのまま維持することができる。
【0049】
すなわち、本実施形態例によれば、内部制御電極15,16を用いて水平コンデンサを構成することにより、内部制御電極15,16間のギャップ長w1を自由に設定できるので、信号電圧に対する耐圧とは無関係に、制御電圧に対する電界感度を設定できる構造となる。
【0050】
例えば、制御端子2に接続される内部制御電極15,16のギャップ長w1を2μmとしたとき、信号端子3間のギャップ長w2は、200〜300μmとすることができる。構造として、信号端子3間が200〜300μm、制御端子2間が2μmとなるようなアスペクト比を有する可変容量素子を製造することは困難であるが、内部制御電極15,16を構成することにより、ギャップ長w1とギャップ長w2のアスペクト比を自由に設計することができる。また、ギャップ長は、耐圧に比例し、また、容量値の変化に必要な制御電圧の大きさも、ギャップ長に比例するので、本実施形態例の可変容量素子を用いれば、信号電圧に対する耐圧を維持しながらも、低い制御電圧で容量値を制御することができる可変容量素子を形成することができる。
【0051】
具体的にいうと、本実施形態例では、設計により信号電圧に対して、制御電圧を100〜300分の1程度に低減することも可能となる。例えば、3000Vの信号電圧が印加されるような装置に、この可変容量素子17を用いた場合には、従来は、容量値制御に、信号電圧の4分の1〜6分の1の制御電圧が必要とされていた。しかしながら、本実施形態例を用いれば、3000Vの信号電圧が印加されるような装置においても、10V程度の制御電圧で、可変容量素子17の制御が可能となる。
【0052】
本実施形態例では、誘電対層4の対向するxy平面上に信号端子3を構成する例としたが、図8A,Bに示すように、信号端子3を、誘電体層4の対向するxz平面上にそれぞれ構成する例としてもよい。図8A,Bにおいて、図7A,Bに対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0053】
図8A,Bに示す可変容量素子14では、信号端子3間に発生する信号電界は、矢印bで示すように、y軸方向となる。また、制御端子2間に発生する制御電界は、矢印aで示すように、x軸方向となる。
このように、制御端子2に接続される内部制御電極15,16が、水平コンデンサを構成する場合には、信号端子3をxz平面上に構成しても、制御電界と、信号電界がそれぞれ直交する。また、信号端子3は、誘電体層4の、ギャップ長w1に重ならないxz平面上に構成されるものである。そして、この場合においても、図7A,Bに示した可変容量素子17と同様の効果を有する。
【0054】
また、図9A,Bには、信号端子3に接続される面内の内部制御電極の総数を2層に増やした可変容量素子の概略断面構成を示す。図9Aにおいて、図7A,Bと同一部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。また、図9Bにおいて、図8A,Bと同一部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0055】
図9Aは、図7A,Bに示した可変容量素子17の内部制御電極15,16を、2層に構成した例であり、また、図9Bは、図8A,Bの可変容量素子14の内部制御電極15,16を、2層に構成した例である。すなわち、これらの可変容量素子においては、1層目に形成された内部制御電極のうちの、一方の内部制御電極18は、一方の制御電極2aに接続されており、また、他方の内部制御電極17は、他方の制御電極2bに接続されている。そして、1層目に形成された一方の内部制御電極18直上に2層目の内部制御電極19,20のうちの一方の内部制御電極20が形成され、直下の内部制御電極18と同じ、一方の制御端子2bに接続されている。同様に、1層目に形成された他方の内部制御電極17直上に、2層目の内部制御電極19,20のうちの他方の内部制御電極19が形成され、直下の内部制御電極17と同じ、他方の制御端子2bに接続されている。
【0056】
そして、これらの1層目の内部制御電極17,18と、2層目の内部制御電極19,20は、それぞれ、xz面内の同一平面上に、平板状に延在して形成される。そして、一方の内部制御電極17,18は、他方の内部制御電極19,20と、x軸方向に、幅w1(以下、ギャップ長w1)だけ離間されて設けられている。本実施形態例では、一方の内部制御電極17,18と、他方の内部制御電極19,20間において、それぞれ水平コンデンサが構成され、ギャップ長w1を有する誘電体層4が、制御端子2間に印加される制御電圧により可変される。
【0057】
このように、内部制御電極17〜20を積層させることで、内部制御電極17〜20で構成される水平コンデンサの数を増やすことができる。図9A,Bに示す例においては、水平コンデンサを増やすことで、制御電界の有効領域、すなわち、制御用容量の可変量を拡大することができる。内部制御電極17〜20のギャップ長w1を広げることでも制御電界の有効領域を面内方向に拡大することも可能であるが、電界強度が下がってしまうため、制御電圧そのものは大きくなってしまう。しかしながら、内部制御電極17〜20の層数を増やして、垂直方向の領域を拡大する限りは、電界強度を低下させずに、同じ電圧で制御することが可能である。
【0058】
図9A,Bに示す例では、積層される内部制御電極17〜20を、y軸方向に2層とする構成としたが、これに限られるものではなく、さらに複数層積層させる例としてもよい。また、図7から図9に示す可変容量素子においても、第2の実施形態と同様、セラミックグリーンシート上に、所望の位置に金属ペーストを印刷形成し、積層して焼結することにより形成することができる。
【0059】
[第4の実施形態]
次に、図10Aに、本発明の第4の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成を示す。図10Aにおいては、紙面左から右方向に水平な軸をx軸、紙面下から上方向に水平な軸をy軸、紙面手前から奥方向に延びる軸をz軸と設定する。
【0060】
本実施形態例の可変容量素子31は、誘電体層28と、誘電体層28内に、櫛形に形成された2つの内部信号電極24,25と、誘電体層28の上下面に形成された上側制御端子26、下側制御電極23とから構成される。2つの内部信号電極の構成の概略平面構成を図10Bに示す。
【0061】
内部信号電極24,25は、図示されない信号端子に接続されるものであり、2つの内部信号電極24,25のうちの一方の内部信号電極24は、一方の信号端子に接続されるための引き出し電極部24bと、その引き出し電極部24bから、面内方向に、複数本延在して形成される短冊状内部信号電極24aとから構成される。また、他方の内部信号電極25は、他方の信号端子に接続されるための引き出し電極部25bと、その引き出し電極部25bから、面内方向に、複数本延在して形成される短冊状内部信号電極25aから構成される。そして、これらの2つの内部信号電極24,25の短冊状内部信号電極24a,25aは、互い違いになるように、同一平面上に形成される。本実施形態例においては、内部信号電極24,25は、誘電体層28内のxz面内に形成されるものであり、また、信号端子は、誘電体層28のxy平面上に形成されるものである。
【0062】
また、上側制御電極26は、誘電体層28の対向するxz平面上に形成され、上側制御電極26の一方の端部は、誘電体層28のyz平面上に形成される一方の制御端子22に接続される。また、下側制御電極23は、誘電体層28の対向するxz平面上に形成され、下側制御電極23の一方の端部は、誘電体層28のyz平面上に形成される他方の制御端子22bに接続される。
そして、本実施形態例においては、制御端子22、信号端子は、互いに短絡しないように設けられるものである。
【0063】
図10Aに示すように、本実施形態例の可変容量素子31では、信号端子に接続される内部信号電極24,25間で、信号用容量C1である水平コンデンサが構成され、また、制御端子22に接続される上側制御電極26と下側制御電極23間では、制御用容量C2である垂直コンデンサが構成される。このような可変容量素子31においても、上側制御電極26と下側制御電極23間には、制御電界が発生し、内部信号電極24,25間には、制御電界に直交する信号電界が発生する。そして、制御端子22に制御電圧を印加することにより、制御用容量C2の容量値が変化され、これにより、内部信号電極24,25間の信号用容量C2の容量値も変化される。
【0064】
このように、信号端子に接続される櫛形の内部信号電極24,25が構成される可変容量素子31において、信号電界と、制御電界とが直交するように構成することができる。そのため、第1の実施形態と同様の効果を得る。
【0065】
また、本実施形態例では、内部信号電極24,25の構成や、上側制御電極26、及び下側制御電極23の構成を変え、信号用容量C1、及び制御用容量C2に関する、比誘電率、電極面積、電極間距離を個別に設計することができる。
【0066】
ところで、信号電界と制御電界が直交するように構成するメリットの1つとして、信号端子と、制御端子22が分離されることで、信号干渉がなくなるということがある。しかしながら、本実施形態例の可変容量素子31では、図10Aに示すように、内部信号電極24,25と、上側制御電極26、下側制御電極23とが、全て、誘電体層28のxz面内に形成されるため、上側制御電極26と下側制御電極23との間で、不要な浮遊容量Cxが形成されてしまう。このような浮遊容量Cxは、信号端子と制御端子22の分離を不完全なものとしてしまう。特に、櫛形の内部信号電極24,25と、上側制御電極26及び下側制御電極23との浮遊容量Cxは、誘電体層28の厚さを薄くしていくと顕著となるため、何らかの対策が必要となる。
【0067】
図11A,Bに、前述した浮遊容量の発生を防止するための上側制御電極、及び下側制御電極の構成の一例を示す。図11Aは、浮遊容量が形成されないための上側制御電極29の構成例であり、図11Bは、浮遊容量が形成されないための下側制御電極30の構成例である。図12は、その上側制御電極29、及び下側制御電極30を用いた場合の可変容量素子の概略分解斜視図である。図11,12において、図10に対応する部分には、同一符号を付し重複説明を省略する。
【0068】
図11A,Bに示すように、上側制御電極29、及び下側制御電極30は、誘電体層28内で、xy軸方向に、内部信号電極24,25と重なる部分の電極が、抜かれた構成とする。すなわち、内部信号電極24,25と重なる部分には、電極が形成されない。また、上側制御電極29、及び下側制御電極30は、誘電体層28への印刷ずれと、上側制御電極層29、下側制御電極層30、内部信号電極層24,25を積層する場合の積層時の位置ずれを考慮したマージンを加算して、櫛形に抜かれる部分が決定される。
【0069】
このような、内部信号電極24,25、上側制御電極29、下側制御電極30も、誘電体層28となるセラミックグリーンシート上に、所望の形状に金属ペーストを印刷して形成される。そして、その内部信号電極24,25、上側制御電極29、下側制御電極30が形成された誘電体層28を、図12に示すように、積層して、焼結した後に、上側制御電極29、下側制御電極30、内部信号電極24,25のそれぞれの端部に形成された引き出し電極に、制御端子22、信号端子32がそれぞれ接続されるように、接続することにより完成する。
【0070】
本実施形態例では、それぞれの電極の厚さは、約1μmである。このため、上側制御電極29、及び下側制御電極30で、浮遊容量対策のための電極が形成されない抜きの部分があったとしても、上下に、2〜10μm程度の誘電体層28を積層、加圧して焼結することにより、隙間なく、セラミック化することができる。
【0071】
図13に、図11A,Bの上側制御電極29、下側制御電極30を用いて形成された可変容量素子の概略断面構成を示す。図13に示すように、xy軸方向に、内部信号電極24,25と重なる部分には、上側制御電極29及び下側制御電極30が形成されない。これにより、信号端子(図13では図示せず)に接続される内部信号電極24,25と、制御端子22に接続される上側制御電極29、及び下側制御電極30間に浮遊容量が発生するのを防ぐことができる。
【0072】
また、図13に示した可変容量素子をさらに積層させる構成としてもよい。図14Aに、櫛形の内部信号電極24,25を、3層積層させた場合の可変容量素子の概略構成図を示す。図14Aにおいて、図13に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0073】
このように、櫛形の内部信号電極24,25をy軸方向に複数層(図では3層)積層する例においては、内部信号電極24,25の上下に、上側制御電極29及び、下側制御電極30を形成する。この場合も、上側制御電極29及び下側制御電極30において、内部信号電極24,25と重なる部分には、電極が形成されない構成とされる。
【0074】
また、櫛形の内部信号電極24,25を構成する例における、浮遊容量対策としては、上述した例の他、図14Bに示すように、上側制御電極26と、下側制御電極23の間に、櫛形の内部信号電極24,25を2層ずつ形成する例としてもよい。このように、y軸方向に、同電位の内部信号電極24,25が積層されることで、垂直の櫛形の内部信号電極間24,25間の浮遊容量を減らすことができる。
【0075】
ところで、本実施形態例の櫛形の可変容量素子は、その構成上、面積あたりの容量を大きくできるため、小型化に有効である。図10に示す内部信号電極24,25おいて、短冊状内部信号電極の長軸方向の長さをW、隣接する短冊状内部信号電極の距離をd1、近接する櫛形内部信号電極と引き出し電極との距離をd2、短冊状信号電極の線幅をd3、引き出し電極間の距離をL1、短冊状内部信号電極対の数をN、実効誘電率をε1、d3÷d1をη、とし、メタライズレシオM1(η)=1.43η+0.285で近似した場合、容量値CIDT=W×N×ε1×M1(η)が計算される。
図15の測定値は、図13に示す可変容量素子を、x軸方向に2.5mm、z軸方向に1.25mmとなるように設計した場合の容量値CIDTの測定値であり、横軸Xを距離=d1−d3、縦軸Yに線幅d3を示し、紙面垂直方向の軸Zに、容量値CIDTを示す。
【0076】
容量は、距離や線幅により変わるので、線幅と距離を小さくすることで、容量を増やすことができる。数十μm程度のサイズであれば安価な塗布での電極作製が可能であり、数μm程度と、塗布が困難な大きさの場合には、スパッタ等により、電極を作製すればよい。また、これは、1層あたりの容量であり、積層することでも、容量をふやすことができる。
【0077】
以上のように、第1〜第4の実施形態によれば、信号電界とは交差する制御電界により可変容量素子の制御用容量を変化させることができ、これにより、信号用容量も変化される。また、信号電極に対する耐圧と、制御電極に対する耐圧とを別個に設計することができる。さらに、信号電界の電界強度を、制御電界の電界強度よりも小さくなるように適宜構成することにより、信号電極における耐圧を維持した状態で、制御電極に対する制御電圧を小さくすることができる。これにより、小さな制御電圧で制御した可変容量素子に、大きな信号電圧を印加して使用することができる。
【0078】
[電子機器の一実施形態]
本発明の可変容量素子は、図16に示すような電子機器に適用することができる。図16は、電子機器の一実施形態として、液晶テレビ等に用いられる冷陰極管(Cold Cathode Fluorescent Lamp:CCFL)バックライトのインバータ回路構成を示す。
【0079】
図16に示すインバータ回路は、例えば、CCFL42と、CCFL42に接続された昇圧トランス40と、昇圧トランス40を駆動する駆動回路41とから構成される。また、CCFL42と昇圧トランス40との間には、可変容量素子49からなるバラストコンデンサが構成されている。可変容量素子49としては、例えば、上述した第1〜第4の実施形態における可変容量素子を用いることができる。そして、この可変容量素子49の制御端子に接続される制御電圧電源43が備えられている。
【0080】
図16に示す例においては、CCFL42が1個のみの構成としたが、CCFL42は2個並列に構成されてもよい。このCCFL42においては、昇圧トランス40をつかって昇圧された高圧の交流電圧が、バラストコンデンサである可変容量素子49を介して、CCFL42に印加されている。通常昇圧トランス40の出力は1500V、50kHz程度となっている。またCCFL42に流れる電流は5〜10mAである。可変容量素子49からなるバラストコンデンサは、CCFL42を並列ドライブするときに、二つのCCFL42を分離するためのものであり、コンデンサの他にトランスを用いることもある。
【0081】
ところで、CCFLバックライトにおいて、バラストコンデンサを使うのは、コストを安くするためであるが、CCFLの容量ばらつきや周辺金属間との浮遊容量などの違いにより、各CCFLで電流がばらつき、輝度むらが生じるという欠点がある。
【0082】
そこで、この例においては、バラストコンデンサを構成する可変容量素子49により、容量値の調整が行われる。
可変容量素子49の容量値を調整するために、可変容量素子49の図示しない制御端子に接続されている、制御電圧電源43からDC電圧を印加する。そして、所望のDC電圧が印加されることにより、可変容量素子49の容量値が調整される。昇圧トランス40の端子に高直流電圧が印加されると、トランスコイルに過大な電流が流れてしまう。しかし、この例においては、可変容量素子49においては、制御端子にDC電圧が印加される。このため、可変容量素子49における容量値を調整するために、可変容量素子49の制御端子に電圧を印加しても、可変容量素子49の信号端子に接続されている昇圧トランス40及びCCFL42には、直流電圧が加わることがない。このため、実装状態で、可変容量素子49に電圧を印加し、容量値を調整することが可能となる。そして、このような可変容量素子49が組み込まれたCCFLバックライトでは、CCFL42の輝度が均一になるように、可変容量素子49の容量値が調整される。
【0083】
また、この可変容量素子49として、上述した第1〜第4の実施形態における可変容量素子を適用することで、信号端子の耐圧を維持しながら、必要な制御電圧を低減することができる。このため、例えば、昇圧トランス40の出力の100〜300分の1の制御電圧で、可変容量素子49の容量値を調整することができる。
【0084】
本例においては、可変容量素子が組み込まれる電子機器の例として、CCFLバックライトを用いたが、その他、非接触ICカード等に組み込むこともできる。このように、電子機器に本発明の可変容量素子を組み込むことにより、電子機器の他の回路に影響を及ぼすことなく、可変容量素子に制御電圧を印加することができ、所望の容量値を得ることができる。そして、可変容量素子において、所望の容量値を有するように可変容量素子を調整することにより、部品ばらつきなどによるチューニング周波数ずれを、出荷時に合わせ込むことができる。
【符号の説明】
【0085】
1,12,17・・可変容量素子、2(2a,2b)・・制御端子、3・・信号端子、4・・誘電体層、5・・試料、6・・信号端子、7・・制御端子、8・・誘電体層、9・・DC電圧、10・・容量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を挟持して設けられた対の信号電極と、
前記信号電極間で発生する信号電界と交差する方向に制御電界を発生させるように、前記誘電体層を挟持して設けられた対の制御電極とを備え、
前記信号電極は、一対の制御電極に挟持される誘電体層に対して前記制御電界が発生する方向に2層以上積層して設けられている
可変容量素子。
【請求項2】
前記制御電界が発生する方向に積層された信号電極同士は同電位とされている
請求項1に記載の可変容量素子。
【請求項3】
前記信号電界と前記制御電界との電界強度が異なる請求項1又は2に記載の可変容量素子。
【請求項4】
前記信号電界の電界強度が、前記制御電界の電界強度よりも小さく構成される請求項3記載の可変容量素子。
【請求項5】
前記制御電極、及び/又は前記信号電極は、前記誘電体層内に、前記誘電体層を介して複数積層し、それぞれの信号電極間隔、信号電極面積、制御電極間隔、制御電極面積を個々に決定する請求項1〜4のいずれか一項に記載の可変容量素子。
【請求項6】
前記信号電極と、前記制御電極とは、前記誘電体層内において、互いに積層方向に重ならないように、所望の形状、又は位置に配置される請求項1〜5のいずれか一項に記載の可変容量素子。
【請求項7】
誘電体層を挟持して設けられた対の信号電極と、前記信号電極間で発生する信号電界と交差する方向に制御電界を発生させるように、前記誘電体層を挟持して設けられた対の制御電極とを備え、前記信号電極は、一対の制御電極に挟持される誘電体層に対して前記制御電界が発生する方向に2層以上積層して設けられている可変容量素子
を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−101041(P2011−101041A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9143(P2011−9143)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2008−116242(P2008−116242)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)