説明

可変容量素子

【課題】スティッキングによる可変容量素子の動作不良を防ぐ。
【解決手段】可変容量素子1は、支持板2、可動梁3、下容量電極4A,4B、下駆動電極5A,5B、上容量電極6、上駆動電極7A,7B、および誘電体膜8を備える。可動梁3は、長手方向に垂直な撓み方向に、ギャップ空間を介して支持板2と対向する。誘電体膜8は支持板2と可動板3との間のギャップ空間に露出して設けられる。下駆動電極5A,5Bおよび上駆動電極7A,7Bは駆動電圧が印加される。下容量電極4A,4Bおよび上容量電極6はRF信号が印加される。可動梁3の変位開始位置近傍での上容量電極6と誘電体膜8との接触面積を低減するストッパ12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電力により駆動するMEMSアクチュエータを用いてRF容量を可変する可変容量素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、MEMSアクチュエータとして、固定板と可動板とを備え、両者をギャップ空間を介して対向させ、それぞれに駆動電極を設ける構成が採用されている。この構成では、駆動電極にDC電圧を印加することで静電引力により可動板を変位させることができる(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図1は、従来のMEMSアクチュエータの構成例を説明する図である。
ここで示すMEMSアクチュエータ101は、光の反射状態を変化させる光スイッチとして利用されるものであり、可動金属板102、支持アンカー部103、支持フレーム部104、固定電極板105、およびストッパ106を備える。可動金属板102は固定電極板105に対して相対的に上下動自在である。支持アンカー部103は可動金属板102を支持フレーム部104に対して弾性支持する。支持フレーム部104は可動金属板102と固定電極板105との間にギャップ空間を形成する。固定電極板105は可動金属板102に対向し、可動金属板102との間に駆動電圧が印加される。すると、可動金属板102には固定電極板105から駆動電圧による静電引力が作用することになる。
【0004】
ストッパ106は固定電極板105から突出する部位であり、絶縁部106Aと電極部106Bとを備える。絶縁部106Aは、可動金属板102と固定電極板105との導通を防ぐために設けられる。絶縁部106Aが可動金属板102に直接接触すれば、駆動電圧の電界により絶縁部106Aが帯電して可動金属板102がストッパ106に吸着されるスティッキングが発生することがある。そこで、スティッキングを防ぐために絶縁部106Aの表面には電極部106Bが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3668935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は、MEMSアクチュエータを用いてRF容量を連続的に制御する素子の開発を行っている。図2は、RF容量を連続的に制御可能な可変容量素子201の構成例を示す図である。
可変容量素子201は固定板202と可動板203とを備える。可動板203は片持ち梁構成で固定板202に対して平行に支持される。固定板202は、直線線路状電極204、コの字線路状電極205、誘電体膜208A,208Bを備える。直線線路状電極204は、可動板203の長手方向に沿って平行に2本形成される。コの字線路状電極205は、平行する両端部の間に2本の直線線路状電極204を挟むように形成される。誘電体膜208A,208Bは、直線線路状電極204、コの字線路状電極205それぞれを覆うように設けられる。また可動板203は、直線線路状電極204に対向する形状の矩形状電極206と、コの字線路状電極205に対向する形状のコの字線路状電極207とを備える。コの字線路状電極207とコの字線路状電極205とはギャップ空間および誘電体膜208Bを介して対向し、両電極間には駆動電圧が印加される。矩形状電極206と直線線路状電極204とはギャップ空間および誘電体膜208Aを介して対向し、これらの電極間にはRF容量が形成される。
【0007】
この可変容量素子201では、駆動電圧の印加により可動板203が先端側から撓んで誘電体膜208A,208Bに接触する。その接触面積は駆動電圧に応じて変化し、これによりRF容量が連続的に制御されることになる。
【0008】
このような構成の可変容量素子201であっても、前述の従来例(図1)と同様に誘電体膜208Bが駆動電圧により帯電してスティッキングが発生することがある。そのため、可変容量素子201においてもストッパ構造を採用することが考えられる。しかしながら、本願発明者らが見いだした知見によれば、可変容量素子201においては誘電体膜208Bに採用するストッパ構造によっては、スティッキングの発生を完全に防ぐことは極めて困難である。
【0009】
そこで本発明の目的は、誘電体膜の帯電によるスティッキングの発生を防ぐことができる可変容量素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の可変容量素子は、支持板と可動梁と誘電体膜と駆動電圧印加部とRF信号印加部とを備える。可動梁は、長手方向に垂直な撓み方向に、ギャップ空間を介して支持板と対向する。誘電体膜は支持板と可動板との間のギャップ空間に露出して設けられる。駆動電圧印加部およびRF信号印加部は、ギャップ空間および誘電体膜を介して対向する電極対からなり、可動梁の長手方向に沿って設けられる。このような構成の可変容量素子であって、可動梁の変位開始位置近傍でのRF信号印加部の電極と誘電体膜との接触面積を低減するストッパを設けることを特徴とする。
本願発明者が見いだした知見によれば、誘電体膜は、極性が一定の駆動電圧による帯電だけでなく極性が反転するRF信号の交番電界によっても帯電し、その帯電によってスティッキングが発生することがある。そこで、本構成では、RF信号印加部の電極と誘電体膜との接触面積をストッパにより低減し、RF信号による誘電体膜の帯電を抑制する。これにより、スティッキングの発生をより確実に防ぐことができる。
上述の可変容量素子において、可動梁の変位開始位置から長手方向に離れた領域では、RF信号印加部の電極と、その電極に対向する誘電体膜とが全面で接触すると好適である。
この構成では、RF信号印加部の電極と誘電体膜との最大接触面積を大きくでき、可変容量の最大値が増大する。したがって必要な容量最大値を確保しながら、装置サイズを小型化することが容易になる。さらに、変位開始位置にはストッパがあり、その周辺で得られる容量値が小さくなるため、結果的に得られる容量値の最小値と最大値の比率を変えることができ、容量可変比の大きな可変容量素子を作ることができる。
【0011】
上述の可変容量素子において、ストッパにより駆動電圧印加部の電極と誘電体膜との接触面積を低減してもよい。
この構成では、駆動電圧印加部の電極と誘電体膜との接触面積を小さくでき、駆動電圧による誘電体膜の帯電と、その帯電によるスティッキングの発生を抑制することができる。
【0012】
上述の可変容量素子は、RF信号印加部と駆動電圧印加部とのそれぞれに対向する位置にストッパを備え、RF信号印加部でのストッパの形成位置と駆動電圧印加部でのストッパの形成位置とが可動梁の変位開始位置から長手方向の同距離に配置されると好適である。
【0013】
この構成では、長手方向の断面形状が、RF信号印加部の形成位置と駆動電圧印加部の形成位置とで類似するため、駆動電圧印加部の容量とRF信号印の容量との相関がずれにくくなる。また、加工ばらつきが相関に及ぼす影響も低減する。すると、駆動電圧印加部に形成される容量をモニタしてRF信号印加部に形成される容量を安定化させるような場合に、高精度にRF容量の設定を行うことが可能になる。さらに、例えば85℃などの高温の温度負荷が素子にかかった場合、可動板は線膨脹係数によって伸び、それにより誘電膜と誘電膜に対向する電極とがより強く接触することになる。その際、RF信号印加部でのストッパの形成位置と駆動電圧印加部でのストッパの形成位置とが可動梁の変位開始位置から長手方向の同距離に配置されていると、RF容量と駆動容量とが同様に増加するため、相関ズレが大幅に抑制されるというメリットもある。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ストッパを設けて可動梁の変位開始位置近傍でRF信号印加部における誘電体膜との接触面積を低減することができ、これによりRF信号による誘電体膜の帯電を抑制できる。したがって、スティッキングの発生をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のMEMSアクチュエータの構成例を説明する図である。
【図2】可変容量素子の基本構成を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る可変容量素子の構成例を説明する図である。
【図4】図3の可変容量素子の駆動による可動梁の変形を説明する図である。
【図5】図3の可変容量素子の備える誘電体膜の詳細構成を説明する図である。
【図6】作用効果を確認する試験に用いる可変容量素子の構成を説明する図である。
【図7】図6の可変容量素子の特性を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る可変容量素子の構成例を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る可変容量素子の構成例を説明する図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る可変容量素子の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、各図には直交座標形のX−Y−Z軸を付し、可動梁の厚み方向をZ軸方向、長手方向をX軸方向、幅方向をY軸方向とする。
【0017】
《第1の実施形態》
図3(A)は第1の実施形態に係る可変容量素子1のX−Y面図である。図3(B)は可変容量素子1のX−Z面(図3(A)のB−B’断面)図である。可変容量素子1は、支持板2、可動梁3、下容量電極4A,4B、下駆動電極5A,5B、上容量電極6、上駆動電極7A,7B、および誘電体膜8を備える。
【0018】
可動梁3は高抵抗シリコン基板(絶縁材料)からなり、2本の連結部3Bと可動部3Cと支持部3Aとラダー部3Dとを備え、X−Z面を視て略L字状の片持ち梁構造で支持板2に支持される。支持部3Aは、Y軸方向に長尺で支持板2からZ軸方向に立設する柱状であり、可動梁3のX軸負方向の端部に形成され、連結部3Bと可動部3Cとを支持板2から離間した状態で支持する。可動部3CはX−Y面を視てX軸方向に長尺な約20μm厚の平板であり、可動梁3のX軸正方向の端部に設けている。2本の連結部3BはそれぞれX軸に対して蛇行するミアンダライン状であり、支持部3AのY軸方向両端からX軸方向に立設して支持部3Aと可動部3Cとの間を接続する。ラダー部3DはX軸に沿って複数の開口部を2列に配列してなる。
【0019】
上容量電極6および上駆動電極7A,7Bはそれぞれ可動梁3の下面に約200nm厚で形成したX軸方向に長尺な線路状電極である。上容量電極6は、可動部3Cにおけるラダー部3Dに区画されるY軸方向の中央の領域に配置され、上駆動電極7A,7Bは可動部3Cにおけるラダー部3Dに区画されるY軸方向の両外側の領域に配置される。
支持板2は平面視して矩形状のガラス基板(絶縁材料)からなる。
下容量電極4A,4Bおよび下駆動電極5A,5Bはそれぞれ支持板2の上面に約2000nm厚で形成したX軸方向に長尺な線路状電極である。下容量電極4A,4Bは上容量電極6に対向するように配置され、下駆動電極5A,5Bは上駆動電極7A,7Bに対向するように配置される。
誘電体膜8は、Ta2O3を主成分として、下容量電極4A,4Bおよび下駆動電極5A,5Bを約100〜300nm厚で覆うように矩形状に形成している。
【0020】
上述の下容量電極4A,4BはRF端子に接続され、誘電体膜8を介して対向する上容量電極6とRF容量を構成する。また、下駆動電極5A,5Bは駆動電圧端子に接続され、上駆動電極7A,7Bはグランド端子に接続され、駆動容量を構成する。
【0021】
図4は、可動梁3の変形について説明する図である。図中のハッチングは、可動梁3の誘電体膜8に近接領域を示している。駆動電圧のDC電圧値が高いほど前述の駆動容量は大きくなり、可動梁3に作用する静電引力が大きくなる。この静電引力の作用で可動梁3は先端側から誘電体膜8に近接し、静電引力に応じて近接面積が変化することになる。そのため、駆動電圧のDC電圧値が高いほど前述のRF容量は大きなものになる。このように可変容量素子1は、駆動電圧の制御によってRF容量を連続的に変化させることができる。
【0022】
図5は、誘電体膜8の詳細構成を説明する図であり、図5(A)は平面図、図5(B)はB−B’断面図、図5(C)はC−C’断面図である。ここでは説明の便宜のため、図5(A)に、誘電体膜8の上面を複数の領域8A〜8Dに区画して図示している。領域8A,8Bは、前述の下駆動電極5A,5Bおよび上駆動電極7A,7Bに対向するY軸方向両外側の領域である。領域8Cは、下容量電極4A,4Bおよび上容量電極6に対向するY軸方向中央の領域のうちの可動梁3の先端側から約1/3の領域である。領域8Dは、Y軸方向中央の領域のうちの可動梁3の基端側から約2/3の領域である。これらの領域のうち、領域8A〜8Cには、誘電体膜8の表面から20nm〜100nmの高さで突出する円柱状のストッパ12を一定間隔で設けている。また、領域8Dは、ストッパ12と同じ高さまで肉厚に構成している。
【0023】
領域8A,8Bは、駆動電圧として高電圧が印加されると接触面積当たりの帯電量が大きくなる。このため領域8A,8Bは全面にストッパ12を設け、上駆動電極7A,7Bとの接触面積を低減し、駆動電圧に起因する帯電量の低減とスティッキングの抑制を図っている。
【0024】
また領域8C,8Dは、RF信号による交番電界の印加によって帯電が発生する。そこで、領域8Cにストッパ12を設け、上容量電極6との接触面積を低減する。これにより領域8C,8DにおいてRF信号に起因する帯電量の低減とスティッキングの抑制を図っている。
ただし、可変容量素子1のRF容量最大値は、領域8C,8Dにおける上容量電極6との接触面積に応じたものになるため、領域8Dはストッパ12を設けずに肉厚に構成して接触面積の確保を図っている。このような構成により、スティッキングの発生をより確実に防ぎながら、可変容量素子1のRF容量最大値を大きく確保することができる。
【0025】
なお、本実施形態では円柱状のストッパ12を領域8A〜8Cそれぞれに複数配列する構成を示したが、ストッパ12の形状や配置、個数などはどのようであってもよい。少なくとも、領域8Cにおいて上容量電極6と誘電体膜8との接触面積を低減できるならば、どのような形状や配置、個数を採用してもよい。例えば半球状のストッパや、所定方向に延設されるリブ状のストッパを採用してもよい。また例えば、領域8A,8Bにのみストッパを設けて領域8Cを単に薄肉に構成してもよく、逆に、領域8Cにのみストッパを設けて領域8A,8Bを単に薄肉に構成してもよい。そのような構成を採用しても、領域8Cにおいて上容量電極6と誘電体膜8との接触面積を低減でき、可動梁3が支持板2に吸着されることをより確実に防ぐことができる。
【0026】
《確認試験》
ここで、本願発明の作用効果を説明するために実施した確認試験について説明する。
【0027】
図6は、この試験において用いた可変容量素子11,21の部分構成を示す図である。可変容量素子11,21は、第1の実施形態とは形状が異なる誘電体膜18,28を備える。誘電体膜18は、Y軸方向両外側の領域にのみストッパを備え、Y軸方向中央の領域はストッパを設けずに肉厚に構成している。誘電体膜28は全面を肉厚に構成している。また、下駆動電極5A,5Bには、極性が一定のDC電圧では無く、AC電圧を印加するように構成している。
【0028】
なお、第1の実施形態では、下容量電極4A,4BにRF信号(AC電圧)を印加して下駆動電極5A,5BにはDC電圧を印加していたが、その構成のまま特性値を高精度に計測することは難しい。そのため、この試験においては、可変容量素子11,21のように下駆動電極5A,5BにAC電圧を印加して、下容量電極4A,4B間の容量値の変化を測定する。この場合であっても、AC電圧に起因して誘電体膜の帯電と可動梁の吸着が発生する作用機序は同じであるため、本願発明の作用効果を確認することができる。
【0029】
図7は、可変容量素子11,21のC−V特性を示す図である。ここではAC電圧としては、極性が1MHzの周期で反転する矩形波を用いている。
【0030】
ステッパを設けていない可変容量素子21では、AC電圧振幅を昇圧させていく際には、RF容量は約0pFから線形的に増加していくが、AC電圧振幅を降圧させていく際には、RF容量は約4pF程度までしか低下していない。0Vに降圧した際には、可動梁3の先端部の約1/3がスティッキングしていた。
【0031】
一方、ステッパを設ける可変容量素子11では、AC電圧振幅を昇圧させていく際に、RF容量は約0pFから線形的に増加し、AC電圧振幅を降圧させていく際に、RF容量は約0pF程度まで低下した。則ち、0Vに降圧した際にも可動梁3のスティッキングは発生していなかった。
【0032】
このような確認試験の結果から、スティッキングしていた誘電体膜の先端1/3の領域で接触面積の低減を図ることにより、スティッキングの発生をより確実に防止できると考えられる。
【0033】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る可変容量素子について説明する。本実施形態の可変容量素子は第1の実施形態とは誘電体膜の形状が相違する。
【0034】
図8は、本実施形態に係る可変容量素子31の備える誘電体膜38の詳細構成を説明する図である。
【0035】
誘電体膜38は、可動梁3の先端側から約1/3の領域にストッパ12を備え、可動梁3の基端側から約2/3の領域をストッパ12の形成高さと同じ高さまで肉厚に構成している。そして、X軸方向でのストッパ12の形成位置が、下容量電極4A,4Bに対向する領域と、下駆動電極5A,5Bに対向する領域とで一致するようにしている。この構成では、第1の実施形態と同様に可動梁3の先端側が誘電体膜38に吸着されてスティッキングが発生することを防ぐことができる。
【0036】
また、この構成では、下容量電極4A,4Bに対向する領域と、下駆動電極5A,5Bに対向する領域とで、XーZ断面が類似の形状になるため、各領域に形成される容量値の相関性を極めて高いものにできる。そのため、下容量電極4A,4Bに対向する領域の容量値(駆動容量)をモニタしてRF容量を安定化させるような場合に、高精度にRF容量の設定を行うことが可能になる。
【0037】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態に係る可変容量素子について説明する。本実施形態の可変容量素子は第1・第2の実施形態とは誘電体膜の形状が相違する。
【0038】
図9は、本実施形態に係る可変容量素子41の備える誘電体膜48の詳細構成を説明する図である。誘電体膜48は全面にストッパ12を備える。このような構成であっても、可動梁3の先端側が誘電体膜48に吸着されてスティッキングが発生することを防ぐことができる。また、この構成では、下容量電極4A,4Bに対向する領域と、下駆動電極5A,5Bに対向する領域とに形成される容量値の相関性を極めて高いものにできる。
【0039】
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態に係る可変容量素子について説明する。本実施形態の可変容量素子は第1乃至第3の実施形態とは誘電体膜の形状が相違する。
【0040】
図10は、本実施形態に係る可変容量素子51の備える誘電体膜58の詳細構成を説明する図である。誘電体膜58は下容量電極4A,4Bに対向する領域の先端1/3をストッパ12を設けずに薄肉に構成している。この場合も、下駆動電極5A,5Bに対向する領域に設けたストッパ12によって、下容量電極4A,4Bに対向する領域での可動梁3との接触面積を低減できる。このような構成であっても、可動梁3の先端側が誘電体膜48に吸着されてスティッキングが発生することを防ぐことができる。
【0041】
本発明は上述の実施形態の記載に制限されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されるものである。
【符号の説明】
【0042】
1,11,21,31,41,51…可変容量素子
2…支持板
3…可動梁
3A…支持部
3B…連結部
3C…可動部
3D…ラダー部
4A,4B…下容量電極
5A,5B…下駆動電極
6…上容量電極
7A,7B…上駆動電極
8,18,28,38,48,58…誘電体膜
12…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
長手方向に垂直な撓み方向に、ギャップ空間を介して前記支持板と対向する可動梁と、
前記ギャップ空間に露出して設けられる誘電体膜と、
前記ギャップ空間および前記誘電体膜を介して対向し、駆動電圧が印加される電極対からなり、前記長手方向に沿って設けられる駆動電圧印加部と、
前記ギャップ空間および前記誘電体膜を介して対向し、RF信号が印加される電極対からなり、前記長手方向に沿って設けられるRF信号印加部と、を備え、
前記可動梁の変位開始位置近傍での前記RF信号印加部の電極と前記誘電体膜との接触面積を低減するストッパを設けることを特徴とする可変容量素子。
【請求項2】
前記可動梁の変位開始位置から前記長手方向に離れた領域では、前記RF信号印加部の電極と、その電極に対向する前記誘電体膜とが全面で接触する、請求項1に記載の可変容量素子。
【請求項3】
前記ストッパにより前記駆動電圧印加部の電極と前記誘電体膜との接触面積を低減する、請求項1または2に記載の可変容量素子。
【請求項4】
前記RF信号印加部と前記駆動電圧印加部とのそれぞれに対向する位置に前記ストッパを備え、前記RF信号印加部でのストッパの形成位置と前記駆動電圧印加部でのストッパの形成位置とが前記可動梁の変位開始位置から長手方向の同距離に配置される、請求項3に記載の可変容量素子。
【請求項5】
前記ストッパは、前記誘電体膜を部分的に厚くした突出部分である、請求項1〜4のいずれかに記載の可変容量素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178379(P2012−178379A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39165(P2011−39165)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)