可変応答性おしゃぶり
【課題】 本発明は、噛むこと(biting)に対して様々な応答を示す(varied response:可変応答性)おしゃぶり(あるいは一連のおしゃぶり)を提供する。
【手段】 少なくとも部分的には第一の弾性材料により作られている外表面(12);および前記第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質を有する弾性材料を有する内側部(22)を含む、可変応答性おしゃぶり(10)
【手段】 少なくとも部分的には第一の弾性材料により作られている外表面(12);および前記第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質を有する弾性材料を有する内側部(22)を含む、可変応答性おしゃぶり(10)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、おしゃぶり(歯固め:teether)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
何世紀もの間、乳児は、生歯の期間に、あらゆるタイプの物体を噛むのが観察されてきている。これは、歯が生えるプロセスにおいて、痛みを和らげる手段と解釈されている。一般的に、生後5ヶ月から24ヶ月の乳児の間に生歯は起こり、歯茎パッド(歯槽隆線)、生えかけもしくは新しく生えた歯、あるいはそれらの歯と歯茎の両方が圧迫される。「おしゃぶり」は、乳児が噛むことで、生歯に関する課題を処理するためにデザインされた装置である。
【0003】
人間の摂食というのは、食物を最初に噛んでから飲み込むまでに、口内の食物や唾液を動かす20以上の筋肉の協同を必要とする一体的な連続運動により起こる。子供の口の運動筋肉の発達は、口が全体的に1つの器官として作用することから始まるが、しかし、子供が成熟するとともに、あごの動き、舌および唇は別個の器官ではあるが共同の物体として機能する。顎関節の成長は、様々な材質、サイズ及び堅さの食物を噛むために必要であり、時間とともに進行する。さらに最近の研究(1998年 Lundy他)では、初期の知覚及び識別能力が、乳児および初期のよちよち歩きの時期にも発達することがわかった。
【0004】
子供の口の運動筋肉の成長段階(顎運動、咀嚼筋機能、摂食機能、舌の機能および歯の萌出)が、どういう食感が受け入れられ、あるいは拒絶されるかに影響があることが実証された(1972年 Szczesniak)。簡単に言えば、子供は、自分がどういうタイプのものが食べられて、どういうものが食べられないかを知る。乳児はまず流動食から始まり、生後4〜6ヶ月に最初の固形食(それらは半液体(例えばピューレの果物あるいは野菜)である)で食事が補足される。6ヶ月頃に、さらに歯は発達し、さらに進んだ噛む運動が始まる。この段階までに、幼児は様々な食感の食物を経験し、自分の舌、唇および歯茎によって容易に操作することができる食感のものが好きなことを学習する。このような好みは、様々な食感を経験することで決まる。
【0005】
実際、子供は生まれてからの最初の2年間のうち、6〜10か月の間が、より堅い材質のものを食すための口の技術の成長が最も著しい期間である。更なる噛む能力の向上が、生後24ヶ月から36ヶ月まで続く(1991年 Gisel, E.G.)。これは、”生歯段階”(歯の萌出および下顎の下方および前方運動)にちょうど一致する。このように、噛むことと生歯が、経時的に関係することが明らかにされている。
【0006】
科学が教示すること
1.子供が成長するにつれて、あごの動き、舌および唇が別個の器官ではあるが共同して機能する。
2.顎運動、咀嚼筋機能、つまり摂食機能、舌の機能および歯の萌出は、どのような食感が受け入れられ、拒絶されるかに影響する。すなわち、子供は、自分がどういうタイプのものが食べられて、どういうものが食べられないかを知る。
3.子供は、摂食能力および言語能力の進歩のために、その筋肉および筋肉の協調機能を強化しなくてはならない。
4. 口の発達が最も著しい時期(生後6ヶ月から24ヶ月)に、子供の筋肉・関節・舌は、複雑な固形物を食べることを扱い調整することを学習する。これは、歯の萌出にちょうど一致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、噛むこと(biting)に対して様々な応答を示す(varied response:可変応答性)おしゃぶり(あるいは一連のおしゃぶり)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、噛むこと(biting)に対して様々な応答を示す(varied response:可変応答性)おしゃぶり(あるいは一連のおしゃぶり)を特徴とする。本発明のおしゃぶりは、自然な発達に対応し調整することができる。このおしゃぶりは、様々な食料の様々な食感、堅さおよび圧縮性を達成することができる。このおしゃぶりの噛んだ感覚、デザインの特徴及びおしゃぶりの応答性により、子供の自然な摂食および会話の発達に対応し調整することができる。このおしゃぶりで子供を訓練することは、各摂食段階の間の推移を早め、会話に必要なコントロールの発達を促進する。
【0009】
本発明のおしゃぶりは、子供の年齢や成長段階に応じて極めて適切な特徴を有する様々な設計指針を取り入れており、主として摂食の発達を模擬するものである。成長段階は、以下のグループに分けることができる。第1段階−流動食(主として吸うこと及び口腔の位置調整に関する成長)、第2段階−柔らかい流動食(食物を噛み砕くこと、飲み込むことのおよび初期の言語能力に関する成長に特に関係がある)、第3段階−固形食(噛むこと、顎関節の整合及び言語能力の成長)。
【0010】
例えば、本発明のおしゃぶりの様々な具体例は、従来の形状を含むことができ、あるいは独特すなわち従来とは異なる形状も含み得る。噛む表面の幅や厚さは、各成長段階における許容性によって変化する。おしゃぶりの噛む部分の厚さは、子供の年齢及び成長段階に従って適切な量によって変化させることができる。一般に、この厚さの変化は、1つの段階当たり1〜3mmの増加である。例えば、第1段階では厚さ6〜8mm、第2段階では厚さ8〜11mm、第3段階では厚さ11〜13mmである。
【0011】
ポリマーの物性に関連して、応力、歪みおよび回復を研究する場合、度々フックの法則の一般化が使われる。この一般化は、ミクロの規模の真実の物性を無視したいくつかの理想的な仮定を考慮に入れている。応力と歪みの間の直線関係を用いて、歪みの6つの独立成分と応力の6つの独立成分のそれぞれが直線的に関係があると仮定する。単純化するため、さらに、一般的に、変形する立方体の模型のユニット次元内の変化を考慮するものとする。すなわち、立方体はx、yおよびz次元を有し、変形に際して、立方体は、変形比率λ1、λ2およびλ3を備えた平行体に変形するものとする。より「現実世界」で、例えばイチゴのような物体を見る場合、ミクロ系を考慮せず、純粋にマクロの単純化された系に注目することは多くの場合有用である。これは、ミクロの挙動が噛む力に関する単純な研究には必ずしも適切だとは限らないためである。
【0012】
変位(対)力の線図(この図は、単純化された上記の立方体のような理想的な場合には、応力−歪みカーブに相関づけることができる。)を示す場合、ミクロの挙動(歯をかみ合わせ、力お及ぼし始める最初の挙動)は無視され、マクロの挙動が観察されている。すなわち、ベリー(イチゴなど)は、歯がベリーの表面と接触した時から、技術的に言えば弾力的に挙動し、ついには歯が(ベリーの)皮の表面張力を破壊して、直ちに塑性(回復不可能な)変形を生じさせる。ミクロの規模のこの変形を見る代わりに、よりマクロな状態でそれを見ることが選択された。
【0013】
さて、バナナ、イチゴおよびチーズの小さなブロックのような物体は、一般に摂食の発達において、柔らかいピューレに続く食糧であるので、おしゃぶりと生歯の関連を明らかにするために使用することができる。流動食を供給した後、子供にステーキ(あるいはその他の弾力的に堅い食物)を与えることは愚かである。
【0014】
図10はイチゴのテキスチャープロファイル分析(TPA)である。この分析は、インストロン試験装置および特定の力/変位プログラムを使用して、噛み合わせ(bite)を説明するのに有用である。問題は、口と歯から成るインターフェースの代わりに、当該テストが2つのプレートを使用して実行されるということである。グラフに表示された1および2は、噛み1と噛み2に相応するか、あるいはベリーが弾性のあるものから可塑性のもの、そして次に柔らかい状態にまで移る時間に相応し得る。グラフを見れば、イチゴの弾性の段階がプレートによっておよそ2〜3mmの変位の間続くことが理解できるだろう。2−3mmの変位および力の増加の後、可塑性状態が起こる(カーブの大部分)。なお、その後の噛みや、飲み込む前に生じるピューレについては、このテストとグラフでは示していない。
【0015】
子供の噛み合わせを調べる際に寄与する仮定
噛む力の大きさは重要だが、実際は負荷(荷重)の角度(アングル)の方がより重要である。負荷の主要な3つの角度を有する系について考える。後方移動負荷アングル"C"は、下顎が後方に移動した場合もしくは奥歯で噛む場合に生じる下顎頭負荷の方向として定義される。突出負荷アングル"P"は、下顎が切歯で噛む位置あるいは乳を飲む位置に移動される場合の下顎頭の負荷の方向として定義される。平均下顎頭負荷アングル"M"は、上記後方移動負荷アングルと上記突出負荷アングルとの時間依存性の組合せとして定義される。以下の式から、年齢と成長の関数として、下顎頭負荷の角度および隆起(eminence)発達の角度を考慮することができる。
【0016】
M=Kp(P)+Kr(C)
【0017】
Kの比率は、下顎頭が突出位置または後方移動位置のいずれかにおいて、負荷がかかっていると仮定した時間の割合と等しい定数を定義する(定数KはNickel et al, J Dent Res, June 1988中に記載されている)。物性論とともに噛む角度と噛む負荷(次のセクションで述べる)を理解することにより、子供の成長に、良好に関連付けたおしゃぶりの開発が可能となる。
【0018】
子供の噛む力とおしゃぶり
Journal of Dental Researchにある「Theoretical Model of Loading and Eminence Development of the Postnatal Human Temporomandibular Joint」 (1988年、Nickel, JC他)という表題の優れた論文には、噛む力が口と顔の組織の発達に相関することを述べている。この文献から、我々は次のデータを使用する:生後0−5か月の噛む力は1.76 ポンドあるいは800グラムである(1958年、Ardran他)。初期の成長と噛む力の間には直線関係があることから、生後6−12か月の噛む力は3.52ポンドであり、また生後12−18か月の噛む力は7.04ポンドであると考えられる。このデータを使用し、摂食の発達、言語の発達、生理学の発達および物性論についての知識に適用することにより、我々は本発明のおしゃぶりを開発した。
我々は、本発明のおしゃぶりと、他社のおしゃぶりのフィードバック・レスポンス(与えた力と結果として生じる変形の間の相関性)をテストした。その結果の1つを図11のグラフに示している。図11のグラフを単純な記述に分類すると、以下の観察結果が導き出される。
【0019】
先行技術のおしゃぶり「Comp A」を選択したのは、現在市場に出されている大多数のおしゃぶり製品の代表的な特徴を含み、かつ構造を有すると考えられるからである。そのポリプロピレン・セクションを、次の理由によりテストした: (1) 我々はこれが意図した設計に基づいた噛む表面だと考えた(2)このおしゃぶりは、最大のベビー用製品会社のうちの1つによって作られ、売られていた(3)それは生後6ヶ月強(一般に考えられる、第三段階、物を食べる規模がイチゴに最も近い)のためにデザインされていると述べられていた。このおしゃぶり(Comp A)は、超音波溶接法によって注入成形品を組み合わせることにより構築されているようにと見受けられた。
【0020】
さらにテストすると、「Comp A」(ポリプロピレンとポリカーボネートの部品の組合せでできている既存のおしゃぶり)の材料は、本発明のおしゃぶりの3つのバージョンの同じテストを示すその他の3本の線で示される材料より、非常に速く強度限界に達して、完全に壊れるだろう。グラフは、増加するストレスを関数として、疲労と亀裂がどのように大きくなるかを示している。等しい力では、本発明のおしゃぶり中の材料の組み合わせは、より大きなレスポンスおよびより良い耐久性をもたらす。力が増加するとともに本発明のおしゃぶりのレスポンスも継続するが、組合せ(材料の選定、厚さおよびそれらの組合せ)により各デザイン毎に異なる。本発明おしゃぶりの断面デザインを単純化したモデルとして示すと、例えば次のとおりであった:
【0021】
a 第1段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ25Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
b 第2段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ50Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
c 第3段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ90Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
【0022】
上記のテストは、1.5ミリを有するシート素材から構築されたサンプル及び特定のジュロメーターを使用して行われた。そのシート素材から、3枚のディスクをカットアウトし、圧縮試験に使用した。例えば、ステージ1(第1段階)のテストおしゃぶりは、素材からカットアウトしたディスクの4つ、すなわち50Aシリコン1個、25Aシリコン2つ、および50Aシリコン1つを順次重ねることにより構築された。
【0023】
材料の適用と粘弾性重畳原理
Boltzmannは以下のことを提案している。
(1)クリープは、物体に対するすべての過去の荷重(負荷)履歴の関数である。
(2)各荷重段階は、最終的な変形に、それぞれ独立した寄与を果たし、その結果、全体的な変形は、すべての寄与を加算することによって得ることができる。
【0024】
平均的な噛む力および平均の噛む角度を知り、成長途中の口腔内環境の生理的欲求について理解することによって、「高性能(スマート)なおしゃぶり」を作ることができる。食品テキスチャー分析および材料の線形粘弾性の法則を組み合わせて、トレーニングツールを模擬し、かつ/または作成をする。すなわち、このトレーニングツールは、変形中に全ての外的な力およびエネルギーを蓄え、外的な力が無くなった場合に同じエネルギーを利用して、当該物体を元の形状に戻す能力を有する。外力の利用は、材料の性質を調えることにより調節され、適用された力と同等かあるいはそれより少ない回復力レスポンスを有効に作り出すことができる。すなわち、材料は、元の形状に素早く急速に回復する場合もあれば、あるいは、よりゆっくり回復する場合もある。この劇的なレスポンスの形態、すなわち液体的な特徴と固体的な特徴を組み合わせたものは、おしゃぶりの開発で商業上及び医学上の使用に求められている粘弾性材料に役に立つものである。
【0025】
噛むことは、2段階の荷重サイクル(図10で説明されるような、主要な噛みとそれに続く小さな第2の噛み)と考えられるので、予測される負荷および粘弾性レスポンス(後述)に関して、Boltzmannの原理を用い、応力緩和係数理論(時間の関数としての応力緩和動作と材料関係)と組み合わせることで、意図されるとおりにおしゃぶりが応答することが保証されるであろう。
【0026】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、粘弾性材料の図解モデルおよび対応するクリープ回復カーブである。
TPA食品テキスチャー分析は、成長途中の子供が食べる食品をテストするために使用することができ、そして、それらのそれぞれの食品の動きとかみ合うおしゃぶりを設計することができる。すなわち、力対変位グラフを採用し、またテストの所要時間を知ることにより、結果とぴったり一致する図解モデル(上述)を作り出すことができる。粘弾性理論を用い、ポリマーを使用して食品をシミュレートすることができる。
【0027】
物理的測定と知覚反応の間のフィードバック・レスポンスおよび相関性
知覚の大きさの度合いと物理的測定値は、客観的には、精神物理学関係の確定モデルに従う。例えば、知覚反応(R)のパワー・モデルは、次の式で表すことができる。
【0028】
R=CSn
ここでのR=知覚反応
S=刺激(例えば噛むこと)
Cとnは食物/材料と関係する定数である。
【0029】
硬さは、次の定式による機械抵抗力の量を計るスクイーズテストで分析することができる。
Mc=M1Mx/(M1+Mx)
Mc=全体の機械抵抗力
M1=歯の抵抗力
Mx=試料の変形に対する抵抗力
よって、柔かい材料(試料または食物)が歯の間で変形する際はMc=Mxであり、知覚反応は主として試料(あるいは食物)の特性によって決まる。
【0030】
事例研究(ケーススタディ)設計
入力、角度、相対的な時間枠および「問題記述」の環境条件を知ることで、理論的及び経験的な結果を生む研究対象項目を構想することができる。各段階に特化したおしゃぶりを設計するに際して、例として、第3段階(生後6か月強、なお、ここで、第1段階=3か月強、第2段階=4か月強、第3段階=6か月強および第4段階=9か月強である)を選択し、図12Aおよび12B中に示されるように、我々は視覚的なエネルギー・バランスを使用して、システムをモデル化することができる。こうすることによって、個別の事例ごとに、線形系に基づき、我々が意図するように機能するおしゃぶりを生産することが可能である。単純な理論では、これは、必要なばね定数および必要な減衰定数によって、食品のレスポンスを模擬するために必要なおしゃぶりの出力レスポンスが決定されることを意味する。
【0031】
この理論を考慮し、おしゃぶりの設計にそれを適用して、エネルギー/材料に関する理論に基づいたおしゃぶりを設計するために行う必要があるのは、プロトタイプまたはそれに等しいテストのサンプルを作製すること、おしゃぶりの応答(レスポンス)に関するデータをテストし記録するカスタムTPA食品分析試験ステーションを構築するか、あるいは、TPA食品分析試験のサービス施設を利用すること、テスト結果を再検討し統計的に分析し、望んだ結果を達成するために求められるような設計を繰り返すことである。
【0032】
本発明による可変応答性おしゃぶりは、少なくとも部分的には第一の弾性(エラストマー)材料により作られている外表面(outer surface)、およびその第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質をもつ弾性材料を有する内側部(inner portion)を含むことを特徴とする。内側部は、さらに1つ以上の空隙を含みうる。本発明のおしゃぶりの復元応答(回復レスポンス)は、加えられた力の速度と比較すると遅い場合もあるし、本発明のおしゃぶりの復元応答は、加えられた力の速度とほぼ等しい場合もある。本発明のおしゃぶりの材料および構成は、加えられた力に対して、ばね及び減衰性の応答(a spring and damping response)を示す粘弾性モデルに少なくとも部分的に基づいて選ばれることができる。粘弾性の応答(レスポンス)は、外力の2段階の荷重(噛むパターンに類似)に応答するか反応するように設計(デザイン)することができる。
【0033】
本発明のおしゃぶりは、少なくともの外側部(outer portion)が、軸を中心に回転することができる。本発明のおしゃぶりは、さらに、主体(main body)、およびその主体の周りを回転することができるリング(輪)を含みうる。本発明のおしゃぶりは、角度のある(angled)表面を形成している。その角度のある表面は、少なくとも1つの山部(peak)と少なくとも1つの谷部(valley)によって作られている。内側部が外側部より柔軟な場合がある。この場合、内側部が約25Aの硬度の時、外側部は約50Aの硬度になりうる。逆に、内側部が外側部より硬い場合もあり、この場合、内側部が約90Aの硬度の時に、外側部が約50Aの硬度になりうる。
【0034】
また、本発明は、おしゃぶりの設計(デザイン)方法であって、特定の食料を試験(テスト)して、圧縮力に対するそれらの応答(レスポンス)を判定すること、および、その試験(テスト)結果を用いておしゃぶりの力に対する応答性を判定することを含むことを特徴とする。さらに、本発明は、この方法によって設計されることを特徴とするおしゃぶりである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の適切な実施の形態および添付図面の説明から、当業者は、他の態様が思い浮かぶだろう。
【図1】本発明に係るおしゃぶりの第一の実施例の単純化された側部断面図である。
【図2】本発明に係るおしゃぶりの第二の実施例の単純化された側部断面図である。
【図3】本発明に係るおしゃぶりの第三の実施例の単純化された側部断面図である。
【図4】本発明に係るおしゃぶりの第四の実施例の単純化された側部断面図である。
【図5】A〜Dは、本発明に係るおしゃぶりの1つの実施例についての様々な図である。
【図6】AおよびBは、本発明に係るおしゃぶりで使用することができる可変応答性の構造を概略図として示している。
【図7】図6 Aおよび図6Bの構造を使用するおしゃぶりの実施例の単純化された側部断面図である。
【図8】図6 Aおよび6Bの構造を使用するおしゃぶりの他の単純化された部分的な側部断面図である。
【図9】食物を2回噛む場合の力に対する時間を説明するグラフであり、本発明に係るおしゃぶりの具体化したものの様々な応答(レスポンス)を理解する助けとなる。
【図10】イチゴの試験における変位/力カーブである。
【図11】本発明に係るおしゃぶりと、先行技術の3つのおしゃぶりとの比較である。
【図12】AおよびBは、本発明に係るおしゃぶりのデザインを理解するのに役立つ粘弾性材料の図解モデルおよび対応するクリープ回復カーブである。
【図13】AおよびBは、他の可変応答性おしゃぶりのデザインを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜4は、本発明のおしゃぶりの4つの異なる実施例の概要の横断面を示したものである。図1のおしゃぶり10は、同じジュロメーター材料で作られている上位部及び下位部14と16、異なる材料になりうる端部18および20から成る外殻12を含んでいる。例えば、2つの端部18および20が、50−60Aのエラストマー(弾性)材料から構成され、上位部及び下位部の14と16は、50−90Aのエラストマー材料で構成される場合がある。より柔軟なジュロメーターから成る端部とすることが好ましく、これによって屈曲や圧縮が(効果的に作製された)ジョイント部またはヒンジ部の早期疲労をもたらさないようにする。外部屈曲の大部分がこれらの端部で起こるので、材料は、クリープ変形、繰り返される応力及び歪みサイクルに耐えることができて、損傷しないようにしなければならない。上位部および下位部は、子供のインターフェース、または噛む表面として役立つ。これらの部材の目的は、歯茎パッドあるいは歯によって加えられた外力を受け取り、その力を分散して、内部減衰/スプリング・メカニズム(異なる粘弾性材料)及び末端部が、ショックアブソーバーのようなシステムとして機能することができるようにすることである。外力が加わる際、応答(レスポンス)は、材料のショアー硬さ、内部材および端部材に選ばれた材料の粘弾性応答性によってコントロールされる。内部21は、トップ(頂部)とボトム(底部)14・16の間に配置した材料22の一部を含んでいる。内部の残りは異なる材料か、あるいは空隙の場合もある。材料22は、エラストマー(弾性)か、あるいはエラストマー様のものが好ましい。この構造により、圧縮が進むとともに圧縮可能で、より大きな力を必要とするおしゃぶりが作製される。噛む力が解放されると、装置は元の状態に戻る。この元の位置への復帰は、噛んでいる間の食物のレスポンスに相関しており、加える力の速度と等しいか遅い。別のやり方として、ヒドロゲルのようなゲルあるいは砂のような粒状材料で部分22を形成することもできる。
【0037】
具体例30が示される図2においても、単一の材料から成る上位部および下位部34と36、さらに、異なる材料から作ることができる端部38および40を備えたシェル32を含んでおり、噛む力がかけられた際に、望ましいレスポンスを示す。この場合、内部42は、1つまたはそれ以上の空隙44を除き、或る材料で満たされる。材料42は、異なるエラストマーとするのが好ましい。空隙44は、柔らかくて湿ったような(squishy)感覚を達成する助けとなる。しかし、その空隙は、おしゃぶりの中に均等には割り当てられていないので、おしゃぶりを圧縮するのに必要な力は、おしゃぶり上の位置によって異なる。こうして、おしゃぶり上の異なる位置で可変的な噛む力を実現する。
【0038】
別の同様の具体例50が示される図3において、シェル52は上層および下層54と56、端部58と60を含み、各々、他の具体例のように、シリコンのようなエラストマーとするのが好ましい。エラストマーの内部の架橋部62は、表面54と56の間を接続するが、可変空隙エリア64、66、68および70を実現しており、これによって、異なる位置において、また圧縮の程度によって変化するおしゃぶりの噛む力/圧縮性レスポンスを調整できる。
【0039】
具体例80が示される図4においては、断面形状が少し異なり、指の形を模倣するために一般に細長い管状の形状を有することができる。主体82は、単一の材料で作られており、そして、異なる材料および/または空隙から成る1つ、2つまたはそれ以上の容積部(ボリューム)を内側に有することができ(図では、そのような2つの容積部88、89を示している)、その長さに沿った様々な圧縮性を実現できる。末端部84および86は、同様に異なる材料になりうる。
【0040】
図5A〜5Dは、本発明おしゃぶりの多くの可能な物理的デザインのうちの1つを示している。おしゃぶり90は、概して水平で薄いものである。おしゃぶり90は、柔軟なシリコンまたは同様のエラストマー材料94でオーバーモールド成形された、エラストマー性のコア(中心部)92から構築される。外層94は、山部および谷部(例えば山部91、谷部93および97)、貫通孔96と丸い扇形の縁を持つ(scalloped)の端部95を画定しており、これらによって本発明おしゃぶりの異なる領域において異なる応答(レスポンス)を供給する角度を実現するようになっている。おしゃぶり90は、固形食のレスポンスを模倣する粘弾性応答を示す。特にこのおしゃぶりは、非常に柔軟で、弾力的に応答するように、生後3か月強の乳児用にデザインされている。このおしゃぶりは、ピューレ状/ライスプディングのような食物に類似したレスポンスを生み出す。エラストマー性(弾性)に構成した柔軟な圧縮力のある性質により、子供がおしゃぶりの表面を自由に噛むことを可能にしながら、摂食過程の次のレベルにおいて強くすべきTMJ/あごに負荷をかける。つまり、Nickel JC他(1988)が提唱するように、負荷および負荷の角度がTMJ発達に関係するので、この角度はTMJに対する負荷の方向を変更する助けとなる。これは筋肉と関節を強化するのを助けるだけでなく、初期の噛む行為の際に、できるだけ門歯(前部)で噛むことの発達を促進する。
【0041】
図6Aおよび6Bは、本発明おしゃぶりの中で使用することができる可変応答性の構造体を図で概念的に説明している。構造体100は、7つの薄層あるいはプレート101−107の積層体(スタック)であり、これは、図6Aで示されるように、垂直に整列して配置されているか、または、図6 Bで示されるように、部分的にずれて(不整列に)配置することができる。層が整列すると、積層体(スタック)は、垂直力に対する最も大きな抵抗力を持ち、そして、おしゃぶり(例えば図1〜5に示すおしゃぶり)の内部で使用された時、構造体100は、年上の子供に相応しい堅いおしゃぶりを実現する。プレートが図6Bの構造100aに示されるように、もっとずれて(不整列に)並べられるように移動されると、積層体(スタック)はより大きな垂直の圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)を示し、したがって、より容易に圧縮性が高いおしゃぶりを実現することができる。さらに、個々のプレートの材質、構造および厚さは、圧縮力に対して所望の弾性あるいは粘弾性応答を達成するように調整することができる。すなわち、少なくとも部分的に本発明のおしゃぶりの目的を実現する手段として、圧縮力に対する異なった応答を実現するためにこのような積層体(スタック)を使用することができるということである。
【0042】
本発明のおしゃぶりに、この積層体(スタック)の概念を文字通りにあるいはより概念的に適用することができることに注目されたい。例えば、この積層体(スタック)を準備して、図1−5に示されるタイプの単一または一体的な内部弾性部材の適切なデザインを決定する手段として(例えば、インストロンの試験装置を使用して)、テストすることができる。
【0043】
図6Aおよび6Bの概念は、図7および8の例(再び、図によりそして多少概念的に)に示されている。図7のおしゃぶり110は、「ばね(spring)112」を使用することにより、その圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)の一部または全てを与える。ばね112は、プレート(あるいはプレートによってモデル化された構造)が相互に連結し、交差するストリング113と114から構成されて、ある圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)を与える。ストリング113および114の材質、長さ、厚さおよび/または角度(または相対的な角度)を、変化させ、所望の弾性あるいは粘弾性の応答を実現ことができるのは自明であろう。
【0044】
さらに、別のほぼ同様な具体例120が図8に示されている。この例において、内側部に中空のチャンネル126が使用されて、圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)に寄与するようになっている。プレート・ストリング(あるいはその等価物)122は、中空または満たされたチャンネル126と上表面123との間に位置する。また、ストリング(あるいはその等価物)124は、下表面125とチャンネル126との間に位置する。
【0045】
図9は、食物を噛む際に見られる、噛む力の示力図である。このグラフは、食品が咀嚼されるにつれて、噛む毎の力が減少するという事実を示している。本発明の可変応答性おしゃぶりは、おしゃぶりのデザイン、材料および配置の選択を通して、乳児/幼児のこの種噛む力の特徴を模倣することを可能にしている。
【0046】
図13 Aおよび13Bは、複数の噛み表面を有するおしゃぶりであって、主要部となる遊星様構造体(planet like structure:球状構造体)202を含むおしゃぶり200を示している。このおしゃぶりは、噛む時に応答(レスポンス)するための2つのエラストマー性(弾性)オーバーモールド成形セクション204、212と外側の軌道リング206を有し、当該リングは、それらの2つの部材を連結している車軸様構造体208により、遊星様構造体の周りを自由回転できるようになっている。構造体202は、ペグ232およびペグ収容シリンダ231を有する。図13Bに示されていないおしゃぶり200の他方の半分は、鏡像の構造を有し、2つのペグがシリンダ内でプレス嵌め構造を形成して、構造体202の2つの半分が互いに保持されるとともに、それらはシーム(継ぎ目)域201に沿って、互いに超音波溶接されている。構造体202およびセクション204の両方には内部構造体があり、その内部構造体は、類似の形状であり、そして、典型的には(だが必須ではなく)オーバーモールド成形セクションとは異なる硬さ(一般的にはより硬い)になっていて、オーバーモールディングのできる構造であるとともに、噛むレスポンスに寄与するようになっている。外部の軌道リング206の大きさは、幼児がリングの周りで噛むことを可能にするもの、つまり、リングの周りで幼児が唇を閉じて、唇を閉じた仕草ができるようにすることである。物体の周りで唇を閉じる行為は、乳幼児が口の中で食物または液体をこぼさずに保持することを可能にする。さらに、構造体202から一定間隔で配置されているリング206は、目と手の協調作用のための空隙を供給し、ハンドルとして機能する。構造体202は、(軸208上にある)ディスク221、222および(構造体202内部にあり中央開口を有する)マッチングプレートを通って軸の周りを回転することができ、そのマッチングプレートは、ディスク221、222を浮遊保持するとともに、その垂直方向の移動を制限し、かつ構造体202が軸208の周りを自由回転できるようにしている。
【0047】
本発明は、明瞭さと理解を目的としてかなり詳細に記述されているが、特定の具体例は、説明的で、限定的でないものとして考慮すべきである。この発明について読むことで、発明の範囲から外れず、請求の範囲内で形式または詳細の変更が行われうることは、当業者によって理解されるだろう。例えば、いくつかの図面中に示される特徴とそれに示されていない他のものが、当発明に基づいて異なる方法で組み合わされるかもしれない。
【技術分野】
【0001】
この発明は、おしゃぶり(歯固め:teether)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
何世紀もの間、乳児は、生歯の期間に、あらゆるタイプの物体を噛むのが観察されてきている。これは、歯が生えるプロセスにおいて、痛みを和らげる手段と解釈されている。一般的に、生後5ヶ月から24ヶ月の乳児の間に生歯は起こり、歯茎パッド(歯槽隆線)、生えかけもしくは新しく生えた歯、あるいはそれらの歯と歯茎の両方が圧迫される。「おしゃぶり」は、乳児が噛むことで、生歯に関する課題を処理するためにデザインされた装置である。
【0003】
人間の摂食というのは、食物を最初に噛んでから飲み込むまでに、口内の食物や唾液を動かす20以上の筋肉の協同を必要とする一体的な連続運動により起こる。子供の口の運動筋肉の発達は、口が全体的に1つの器官として作用することから始まるが、しかし、子供が成熟するとともに、あごの動き、舌および唇は別個の器官ではあるが共同の物体として機能する。顎関節の成長は、様々な材質、サイズ及び堅さの食物を噛むために必要であり、時間とともに進行する。さらに最近の研究(1998年 Lundy他)では、初期の知覚及び識別能力が、乳児および初期のよちよち歩きの時期にも発達することがわかった。
【0004】
子供の口の運動筋肉の成長段階(顎運動、咀嚼筋機能、摂食機能、舌の機能および歯の萌出)が、どういう食感が受け入れられ、あるいは拒絶されるかに影響があることが実証された(1972年 Szczesniak)。簡単に言えば、子供は、自分がどういうタイプのものが食べられて、どういうものが食べられないかを知る。乳児はまず流動食から始まり、生後4〜6ヶ月に最初の固形食(それらは半液体(例えばピューレの果物あるいは野菜)である)で食事が補足される。6ヶ月頃に、さらに歯は発達し、さらに進んだ噛む運動が始まる。この段階までに、幼児は様々な食感の食物を経験し、自分の舌、唇および歯茎によって容易に操作することができる食感のものが好きなことを学習する。このような好みは、様々な食感を経験することで決まる。
【0005】
実際、子供は生まれてからの最初の2年間のうち、6〜10か月の間が、より堅い材質のものを食すための口の技術の成長が最も著しい期間である。更なる噛む能力の向上が、生後24ヶ月から36ヶ月まで続く(1991年 Gisel, E.G.)。これは、”生歯段階”(歯の萌出および下顎の下方および前方運動)にちょうど一致する。このように、噛むことと生歯が、経時的に関係することが明らかにされている。
【0006】
科学が教示すること
1.子供が成長するにつれて、あごの動き、舌および唇が別個の器官ではあるが共同して機能する。
2.顎運動、咀嚼筋機能、つまり摂食機能、舌の機能および歯の萌出は、どのような食感が受け入れられ、拒絶されるかに影響する。すなわち、子供は、自分がどういうタイプのものが食べられて、どういうものが食べられないかを知る。
3.子供は、摂食能力および言語能力の進歩のために、その筋肉および筋肉の協調機能を強化しなくてはならない。
4. 口の発達が最も著しい時期(生後6ヶ月から24ヶ月)に、子供の筋肉・関節・舌は、複雑な固形物を食べることを扱い調整することを学習する。これは、歯の萌出にちょうど一致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、噛むこと(biting)に対して様々な応答を示す(varied response:可変応答性)おしゃぶり(あるいは一連のおしゃぶり)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、噛むこと(biting)に対して様々な応答を示す(varied response:可変応答性)おしゃぶり(あるいは一連のおしゃぶり)を特徴とする。本発明のおしゃぶりは、自然な発達に対応し調整することができる。このおしゃぶりは、様々な食料の様々な食感、堅さおよび圧縮性を達成することができる。このおしゃぶりの噛んだ感覚、デザインの特徴及びおしゃぶりの応答性により、子供の自然な摂食および会話の発達に対応し調整することができる。このおしゃぶりで子供を訓練することは、各摂食段階の間の推移を早め、会話に必要なコントロールの発達を促進する。
【0009】
本発明のおしゃぶりは、子供の年齢や成長段階に応じて極めて適切な特徴を有する様々な設計指針を取り入れており、主として摂食の発達を模擬するものである。成長段階は、以下のグループに分けることができる。第1段階−流動食(主として吸うこと及び口腔の位置調整に関する成長)、第2段階−柔らかい流動食(食物を噛み砕くこと、飲み込むことのおよび初期の言語能力に関する成長に特に関係がある)、第3段階−固形食(噛むこと、顎関節の整合及び言語能力の成長)。
【0010】
例えば、本発明のおしゃぶりの様々な具体例は、従来の形状を含むことができ、あるいは独特すなわち従来とは異なる形状も含み得る。噛む表面の幅や厚さは、各成長段階における許容性によって変化する。おしゃぶりの噛む部分の厚さは、子供の年齢及び成長段階に従って適切な量によって変化させることができる。一般に、この厚さの変化は、1つの段階当たり1〜3mmの増加である。例えば、第1段階では厚さ6〜8mm、第2段階では厚さ8〜11mm、第3段階では厚さ11〜13mmである。
【0011】
ポリマーの物性に関連して、応力、歪みおよび回復を研究する場合、度々フックの法則の一般化が使われる。この一般化は、ミクロの規模の真実の物性を無視したいくつかの理想的な仮定を考慮に入れている。応力と歪みの間の直線関係を用いて、歪みの6つの独立成分と応力の6つの独立成分のそれぞれが直線的に関係があると仮定する。単純化するため、さらに、一般的に、変形する立方体の模型のユニット次元内の変化を考慮するものとする。すなわち、立方体はx、yおよびz次元を有し、変形に際して、立方体は、変形比率λ1、λ2およびλ3を備えた平行体に変形するものとする。より「現実世界」で、例えばイチゴのような物体を見る場合、ミクロ系を考慮せず、純粋にマクロの単純化された系に注目することは多くの場合有用である。これは、ミクロの挙動が噛む力に関する単純な研究には必ずしも適切だとは限らないためである。
【0012】
変位(対)力の線図(この図は、単純化された上記の立方体のような理想的な場合には、応力−歪みカーブに相関づけることができる。)を示す場合、ミクロの挙動(歯をかみ合わせ、力お及ぼし始める最初の挙動)は無視され、マクロの挙動が観察されている。すなわち、ベリー(イチゴなど)は、歯がベリーの表面と接触した時から、技術的に言えば弾力的に挙動し、ついには歯が(ベリーの)皮の表面張力を破壊して、直ちに塑性(回復不可能な)変形を生じさせる。ミクロの規模のこの変形を見る代わりに、よりマクロな状態でそれを見ることが選択された。
【0013】
さて、バナナ、イチゴおよびチーズの小さなブロックのような物体は、一般に摂食の発達において、柔らかいピューレに続く食糧であるので、おしゃぶりと生歯の関連を明らかにするために使用することができる。流動食を供給した後、子供にステーキ(あるいはその他の弾力的に堅い食物)を与えることは愚かである。
【0014】
図10はイチゴのテキスチャープロファイル分析(TPA)である。この分析は、インストロン試験装置および特定の力/変位プログラムを使用して、噛み合わせ(bite)を説明するのに有用である。問題は、口と歯から成るインターフェースの代わりに、当該テストが2つのプレートを使用して実行されるということである。グラフに表示された1および2は、噛み1と噛み2に相応するか、あるいはベリーが弾性のあるものから可塑性のもの、そして次に柔らかい状態にまで移る時間に相応し得る。グラフを見れば、イチゴの弾性の段階がプレートによっておよそ2〜3mmの変位の間続くことが理解できるだろう。2−3mmの変位および力の増加の後、可塑性状態が起こる(カーブの大部分)。なお、その後の噛みや、飲み込む前に生じるピューレについては、このテストとグラフでは示していない。
【0015】
子供の噛み合わせを調べる際に寄与する仮定
噛む力の大きさは重要だが、実際は負荷(荷重)の角度(アングル)の方がより重要である。負荷の主要な3つの角度を有する系について考える。後方移動負荷アングル"C"は、下顎が後方に移動した場合もしくは奥歯で噛む場合に生じる下顎頭負荷の方向として定義される。突出負荷アングル"P"は、下顎が切歯で噛む位置あるいは乳を飲む位置に移動される場合の下顎頭の負荷の方向として定義される。平均下顎頭負荷アングル"M"は、上記後方移動負荷アングルと上記突出負荷アングルとの時間依存性の組合せとして定義される。以下の式から、年齢と成長の関数として、下顎頭負荷の角度および隆起(eminence)発達の角度を考慮することができる。
【0016】
M=Kp(P)+Kr(C)
【0017】
Kの比率は、下顎頭が突出位置または後方移動位置のいずれかにおいて、負荷がかかっていると仮定した時間の割合と等しい定数を定義する(定数KはNickel et al, J Dent Res, June 1988中に記載されている)。物性論とともに噛む角度と噛む負荷(次のセクションで述べる)を理解することにより、子供の成長に、良好に関連付けたおしゃぶりの開発が可能となる。
【0018】
子供の噛む力とおしゃぶり
Journal of Dental Researchにある「Theoretical Model of Loading and Eminence Development of the Postnatal Human Temporomandibular Joint」 (1988年、Nickel, JC他)という表題の優れた論文には、噛む力が口と顔の組織の発達に相関することを述べている。この文献から、我々は次のデータを使用する:生後0−5か月の噛む力は1.76 ポンドあるいは800グラムである(1958年、Ardran他)。初期の成長と噛む力の間には直線関係があることから、生後6−12か月の噛む力は3.52ポンドであり、また生後12−18か月の噛む力は7.04ポンドであると考えられる。このデータを使用し、摂食の発達、言語の発達、生理学の発達および物性論についての知識に適用することにより、我々は本発明のおしゃぶりを開発した。
我々は、本発明のおしゃぶりと、他社のおしゃぶりのフィードバック・レスポンス(与えた力と結果として生じる変形の間の相関性)をテストした。その結果の1つを図11のグラフに示している。図11のグラフを単純な記述に分類すると、以下の観察結果が導き出される。
【0019】
先行技術のおしゃぶり「Comp A」を選択したのは、現在市場に出されている大多数のおしゃぶり製品の代表的な特徴を含み、かつ構造を有すると考えられるからである。そのポリプロピレン・セクションを、次の理由によりテストした: (1) 我々はこれが意図した設計に基づいた噛む表面だと考えた(2)このおしゃぶりは、最大のベビー用製品会社のうちの1つによって作られ、売られていた(3)それは生後6ヶ月強(一般に考えられる、第三段階、物を食べる規模がイチゴに最も近い)のためにデザインされていると述べられていた。このおしゃぶり(Comp A)は、超音波溶接法によって注入成形品を組み合わせることにより構築されているようにと見受けられた。
【0020】
さらにテストすると、「Comp A」(ポリプロピレンとポリカーボネートの部品の組合せでできている既存のおしゃぶり)の材料は、本発明のおしゃぶりの3つのバージョンの同じテストを示すその他の3本の線で示される材料より、非常に速く強度限界に達して、完全に壊れるだろう。グラフは、増加するストレスを関数として、疲労と亀裂がどのように大きくなるかを示している。等しい力では、本発明のおしゃぶり中の材料の組み合わせは、より大きなレスポンスおよびより良い耐久性をもたらす。力が増加するとともに本発明のおしゃぶりのレスポンスも継続するが、組合せ(材料の選定、厚さおよびそれらの組合せ)により各デザイン毎に異なる。本発明おしゃぶりの断面デザインを単純化したモデルとして示すと、例えば次のとおりであった:
【0021】
a 第1段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ25Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
b 第2段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ50Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
c 第3段階:1.5ミリ50Aのシリコン、3ミリ90Aのシリコン、1.5ミリ50Aのシリコン
【0022】
上記のテストは、1.5ミリを有するシート素材から構築されたサンプル及び特定のジュロメーターを使用して行われた。そのシート素材から、3枚のディスクをカットアウトし、圧縮試験に使用した。例えば、ステージ1(第1段階)のテストおしゃぶりは、素材からカットアウトしたディスクの4つ、すなわち50Aシリコン1個、25Aシリコン2つ、および50Aシリコン1つを順次重ねることにより構築された。
【0023】
材料の適用と粘弾性重畳原理
Boltzmannは以下のことを提案している。
(1)クリープは、物体に対するすべての過去の荷重(負荷)履歴の関数である。
(2)各荷重段階は、最終的な変形に、それぞれ独立した寄与を果たし、その結果、全体的な変形は、すべての寄与を加算することによって得ることができる。
【0024】
平均的な噛む力および平均の噛む角度を知り、成長途中の口腔内環境の生理的欲求について理解することによって、「高性能(スマート)なおしゃぶり」を作ることができる。食品テキスチャー分析および材料の線形粘弾性の法則を組み合わせて、トレーニングツールを模擬し、かつ/または作成をする。すなわち、このトレーニングツールは、変形中に全ての外的な力およびエネルギーを蓄え、外的な力が無くなった場合に同じエネルギーを利用して、当該物体を元の形状に戻す能力を有する。外力の利用は、材料の性質を調えることにより調節され、適用された力と同等かあるいはそれより少ない回復力レスポンスを有効に作り出すことができる。すなわち、材料は、元の形状に素早く急速に回復する場合もあれば、あるいは、よりゆっくり回復する場合もある。この劇的なレスポンスの形態、すなわち液体的な特徴と固体的な特徴を組み合わせたものは、おしゃぶりの開発で商業上及び医学上の使用に求められている粘弾性材料に役に立つものである。
【0025】
噛むことは、2段階の荷重サイクル(図10で説明されるような、主要な噛みとそれに続く小さな第2の噛み)と考えられるので、予測される負荷および粘弾性レスポンス(後述)に関して、Boltzmannの原理を用い、応力緩和係数理論(時間の関数としての応力緩和動作と材料関係)と組み合わせることで、意図されるとおりにおしゃぶりが応答することが保証されるであろう。
【0026】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、粘弾性材料の図解モデルおよび対応するクリープ回復カーブである。
TPA食品テキスチャー分析は、成長途中の子供が食べる食品をテストするために使用することができ、そして、それらのそれぞれの食品の動きとかみ合うおしゃぶりを設計することができる。すなわち、力対変位グラフを採用し、またテストの所要時間を知ることにより、結果とぴったり一致する図解モデル(上述)を作り出すことができる。粘弾性理論を用い、ポリマーを使用して食品をシミュレートすることができる。
【0027】
物理的測定と知覚反応の間のフィードバック・レスポンスおよび相関性
知覚の大きさの度合いと物理的測定値は、客観的には、精神物理学関係の確定モデルに従う。例えば、知覚反応(R)のパワー・モデルは、次の式で表すことができる。
【0028】
R=CSn
ここでのR=知覚反応
S=刺激(例えば噛むこと)
Cとnは食物/材料と関係する定数である。
【0029】
硬さは、次の定式による機械抵抗力の量を計るスクイーズテストで分析することができる。
Mc=M1Mx/(M1+Mx)
Mc=全体の機械抵抗力
M1=歯の抵抗力
Mx=試料の変形に対する抵抗力
よって、柔かい材料(試料または食物)が歯の間で変形する際はMc=Mxであり、知覚反応は主として試料(あるいは食物)の特性によって決まる。
【0030】
事例研究(ケーススタディ)設計
入力、角度、相対的な時間枠および「問題記述」の環境条件を知ることで、理論的及び経験的な結果を生む研究対象項目を構想することができる。各段階に特化したおしゃぶりを設計するに際して、例として、第3段階(生後6か月強、なお、ここで、第1段階=3か月強、第2段階=4か月強、第3段階=6か月強および第4段階=9か月強である)を選択し、図12Aおよび12B中に示されるように、我々は視覚的なエネルギー・バランスを使用して、システムをモデル化することができる。こうすることによって、個別の事例ごとに、線形系に基づき、我々が意図するように機能するおしゃぶりを生産することが可能である。単純な理論では、これは、必要なばね定数および必要な減衰定数によって、食品のレスポンスを模擬するために必要なおしゃぶりの出力レスポンスが決定されることを意味する。
【0031】
この理論を考慮し、おしゃぶりの設計にそれを適用して、エネルギー/材料に関する理論に基づいたおしゃぶりを設計するために行う必要があるのは、プロトタイプまたはそれに等しいテストのサンプルを作製すること、おしゃぶりの応答(レスポンス)に関するデータをテストし記録するカスタムTPA食品分析試験ステーションを構築するか、あるいは、TPA食品分析試験のサービス施設を利用すること、テスト結果を再検討し統計的に分析し、望んだ結果を達成するために求められるような設計を繰り返すことである。
【0032】
本発明による可変応答性おしゃぶりは、少なくとも部分的には第一の弾性(エラストマー)材料により作られている外表面(outer surface)、およびその第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質をもつ弾性材料を有する内側部(inner portion)を含むことを特徴とする。内側部は、さらに1つ以上の空隙を含みうる。本発明のおしゃぶりの復元応答(回復レスポンス)は、加えられた力の速度と比較すると遅い場合もあるし、本発明のおしゃぶりの復元応答は、加えられた力の速度とほぼ等しい場合もある。本発明のおしゃぶりの材料および構成は、加えられた力に対して、ばね及び減衰性の応答(a spring and damping response)を示す粘弾性モデルに少なくとも部分的に基づいて選ばれることができる。粘弾性の応答(レスポンス)は、外力の2段階の荷重(噛むパターンに類似)に応答するか反応するように設計(デザイン)することができる。
【0033】
本発明のおしゃぶりは、少なくともの外側部(outer portion)が、軸を中心に回転することができる。本発明のおしゃぶりは、さらに、主体(main body)、およびその主体の周りを回転することができるリング(輪)を含みうる。本発明のおしゃぶりは、角度のある(angled)表面を形成している。その角度のある表面は、少なくとも1つの山部(peak)と少なくとも1つの谷部(valley)によって作られている。内側部が外側部より柔軟な場合がある。この場合、内側部が約25Aの硬度の時、外側部は約50Aの硬度になりうる。逆に、内側部が外側部より硬い場合もあり、この場合、内側部が約90Aの硬度の時に、外側部が約50Aの硬度になりうる。
【0034】
また、本発明は、おしゃぶりの設計(デザイン)方法であって、特定の食料を試験(テスト)して、圧縮力に対するそれらの応答(レスポンス)を判定すること、および、その試験(テスト)結果を用いておしゃぶりの力に対する応答性を判定することを含むことを特徴とする。さらに、本発明は、この方法によって設計されることを特徴とするおしゃぶりである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の適切な実施の形態および添付図面の説明から、当業者は、他の態様が思い浮かぶだろう。
【図1】本発明に係るおしゃぶりの第一の実施例の単純化された側部断面図である。
【図2】本発明に係るおしゃぶりの第二の実施例の単純化された側部断面図である。
【図3】本発明に係るおしゃぶりの第三の実施例の単純化された側部断面図である。
【図4】本発明に係るおしゃぶりの第四の実施例の単純化された側部断面図である。
【図5】A〜Dは、本発明に係るおしゃぶりの1つの実施例についての様々な図である。
【図6】AおよびBは、本発明に係るおしゃぶりで使用することができる可変応答性の構造を概略図として示している。
【図7】図6 Aおよび図6Bの構造を使用するおしゃぶりの実施例の単純化された側部断面図である。
【図8】図6 Aおよび6Bの構造を使用するおしゃぶりの他の単純化された部分的な側部断面図である。
【図9】食物を2回噛む場合の力に対する時間を説明するグラフであり、本発明に係るおしゃぶりの具体化したものの様々な応答(レスポンス)を理解する助けとなる。
【図10】イチゴの試験における変位/力カーブである。
【図11】本発明に係るおしゃぶりと、先行技術の3つのおしゃぶりとの比較である。
【図12】AおよびBは、本発明に係るおしゃぶりのデザインを理解するのに役立つ粘弾性材料の図解モデルおよび対応するクリープ回復カーブである。
【図13】AおよびBは、他の可変応答性おしゃぶりのデザインを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜4は、本発明のおしゃぶりの4つの異なる実施例の概要の横断面を示したものである。図1のおしゃぶり10は、同じジュロメーター材料で作られている上位部及び下位部14と16、異なる材料になりうる端部18および20から成る外殻12を含んでいる。例えば、2つの端部18および20が、50−60Aのエラストマー(弾性)材料から構成され、上位部及び下位部の14と16は、50−90Aのエラストマー材料で構成される場合がある。より柔軟なジュロメーターから成る端部とすることが好ましく、これによって屈曲や圧縮が(効果的に作製された)ジョイント部またはヒンジ部の早期疲労をもたらさないようにする。外部屈曲の大部分がこれらの端部で起こるので、材料は、クリープ変形、繰り返される応力及び歪みサイクルに耐えることができて、損傷しないようにしなければならない。上位部および下位部は、子供のインターフェース、または噛む表面として役立つ。これらの部材の目的は、歯茎パッドあるいは歯によって加えられた外力を受け取り、その力を分散して、内部減衰/スプリング・メカニズム(異なる粘弾性材料)及び末端部が、ショックアブソーバーのようなシステムとして機能することができるようにすることである。外力が加わる際、応答(レスポンス)は、材料のショアー硬さ、内部材および端部材に選ばれた材料の粘弾性応答性によってコントロールされる。内部21は、トップ(頂部)とボトム(底部)14・16の間に配置した材料22の一部を含んでいる。内部の残りは異なる材料か、あるいは空隙の場合もある。材料22は、エラストマー(弾性)か、あるいはエラストマー様のものが好ましい。この構造により、圧縮が進むとともに圧縮可能で、より大きな力を必要とするおしゃぶりが作製される。噛む力が解放されると、装置は元の状態に戻る。この元の位置への復帰は、噛んでいる間の食物のレスポンスに相関しており、加える力の速度と等しいか遅い。別のやり方として、ヒドロゲルのようなゲルあるいは砂のような粒状材料で部分22を形成することもできる。
【0037】
具体例30が示される図2においても、単一の材料から成る上位部および下位部34と36、さらに、異なる材料から作ることができる端部38および40を備えたシェル32を含んでおり、噛む力がかけられた際に、望ましいレスポンスを示す。この場合、内部42は、1つまたはそれ以上の空隙44を除き、或る材料で満たされる。材料42は、異なるエラストマーとするのが好ましい。空隙44は、柔らかくて湿ったような(squishy)感覚を達成する助けとなる。しかし、その空隙は、おしゃぶりの中に均等には割り当てられていないので、おしゃぶりを圧縮するのに必要な力は、おしゃぶり上の位置によって異なる。こうして、おしゃぶり上の異なる位置で可変的な噛む力を実現する。
【0038】
別の同様の具体例50が示される図3において、シェル52は上層および下層54と56、端部58と60を含み、各々、他の具体例のように、シリコンのようなエラストマーとするのが好ましい。エラストマーの内部の架橋部62は、表面54と56の間を接続するが、可変空隙エリア64、66、68および70を実現しており、これによって、異なる位置において、また圧縮の程度によって変化するおしゃぶりの噛む力/圧縮性レスポンスを調整できる。
【0039】
具体例80が示される図4においては、断面形状が少し異なり、指の形を模倣するために一般に細長い管状の形状を有することができる。主体82は、単一の材料で作られており、そして、異なる材料および/または空隙から成る1つ、2つまたはそれ以上の容積部(ボリューム)を内側に有することができ(図では、そのような2つの容積部88、89を示している)、その長さに沿った様々な圧縮性を実現できる。末端部84および86は、同様に異なる材料になりうる。
【0040】
図5A〜5Dは、本発明おしゃぶりの多くの可能な物理的デザインのうちの1つを示している。おしゃぶり90は、概して水平で薄いものである。おしゃぶり90は、柔軟なシリコンまたは同様のエラストマー材料94でオーバーモールド成形された、エラストマー性のコア(中心部)92から構築される。外層94は、山部および谷部(例えば山部91、谷部93および97)、貫通孔96と丸い扇形の縁を持つ(scalloped)の端部95を画定しており、これらによって本発明おしゃぶりの異なる領域において異なる応答(レスポンス)を供給する角度を実現するようになっている。おしゃぶり90は、固形食のレスポンスを模倣する粘弾性応答を示す。特にこのおしゃぶりは、非常に柔軟で、弾力的に応答するように、生後3か月強の乳児用にデザインされている。このおしゃぶりは、ピューレ状/ライスプディングのような食物に類似したレスポンスを生み出す。エラストマー性(弾性)に構成した柔軟な圧縮力のある性質により、子供がおしゃぶりの表面を自由に噛むことを可能にしながら、摂食過程の次のレベルにおいて強くすべきTMJ/あごに負荷をかける。つまり、Nickel JC他(1988)が提唱するように、負荷および負荷の角度がTMJ発達に関係するので、この角度はTMJに対する負荷の方向を変更する助けとなる。これは筋肉と関節を強化するのを助けるだけでなく、初期の噛む行為の際に、できるだけ門歯(前部)で噛むことの発達を促進する。
【0041】
図6Aおよび6Bは、本発明おしゃぶりの中で使用することができる可変応答性の構造体を図で概念的に説明している。構造体100は、7つの薄層あるいはプレート101−107の積層体(スタック)であり、これは、図6Aで示されるように、垂直に整列して配置されているか、または、図6 Bで示されるように、部分的にずれて(不整列に)配置することができる。層が整列すると、積層体(スタック)は、垂直力に対する最も大きな抵抗力を持ち、そして、おしゃぶり(例えば図1〜5に示すおしゃぶり)の内部で使用された時、構造体100は、年上の子供に相応しい堅いおしゃぶりを実現する。プレートが図6Bの構造100aに示されるように、もっとずれて(不整列に)並べられるように移動されると、積層体(スタック)はより大きな垂直の圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)を示し、したがって、より容易に圧縮性が高いおしゃぶりを実現することができる。さらに、個々のプレートの材質、構造および厚さは、圧縮力に対して所望の弾性あるいは粘弾性応答を達成するように調整することができる。すなわち、少なくとも部分的に本発明のおしゃぶりの目的を実現する手段として、圧縮力に対する異なった応答を実現するためにこのような積層体(スタック)を使用することができるということである。
【0042】
本発明のおしゃぶりに、この積層体(スタック)の概念を文字通りにあるいはより概念的に適用することができることに注目されたい。例えば、この積層体(スタック)を準備して、図1−5に示されるタイプの単一または一体的な内部弾性部材の適切なデザインを決定する手段として(例えば、インストロンの試験装置を使用して)、テストすることができる。
【0043】
図6Aおよび6Bの概念は、図7および8の例(再び、図によりそして多少概念的に)に示されている。図7のおしゃぶり110は、「ばね(spring)112」を使用することにより、その圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)の一部または全てを与える。ばね112は、プレート(あるいはプレートによってモデル化された構造)が相互に連結し、交差するストリング113と114から構成されて、ある圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)を与える。ストリング113および114の材質、長さ、厚さおよび/または角度(または相対的な角度)を、変化させ、所望の弾性あるいは粘弾性の応答を実現ことができるのは自明であろう。
【0044】
さらに、別のほぼ同様な具体例120が図8に示されている。この例において、内側部に中空のチャンネル126が使用されて、圧縮率(物質に力を加えたときの変形しやすさ)に寄与するようになっている。プレート・ストリング(あるいはその等価物)122は、中空または満たされたチャンネル126と上表面123との間に位置する。また、ストリング(あるいはその等価物)124は、下表面125とチャンネル126との間に位置する。
【0045】
図9は、食物を噛む際に見られる、噛む力の示力図である。このグラフは、食品が咀嚼されるにつれて、噛む毎の力が減少するという事実を示している。本発明の可変応答性おしゃぶりは、おしゃぶりのデザイン、材料および配置の選択を通して、乳児/幼児のこの種噛む力の特徴を模倣することを可能にしている。
【0046】
図13 Aおよび13Bは、複数の噛み表面を有するおしゃぶりであって、主要部となる遊星様構造体(planet like structure:球状構造体)202を含むおしゃぶり200を示している。このおしゃぶりは、噛む時に応答(レスポンス)するための2つのエラストマー性(弾性)オーバーモールド成形セクション204、212と外側の軌道リング206を有し、当該リングは、それらの2つの部材を連結している車軸様構造体208により、遊星様構造体の周りを自由回転できるようになっている。構造体202は、ペグ232およびペグ収容シリンダ231を有する。図13Bに示されていないおしゃぶり200の他方の半分は、鏡像の構造を有し、2つのペグがシリンダ内でプレス嵌め構造を形成して、構造体202の2つの半分が互いに保持されるとともに、それらはシーム(継ぎ目)域201に沿って、互いに超音波溶接されている。構造体202およびセクション204の両方には内部構造体があり、その内部構造体は、類似の形状であり、そして、典型的には(だが必須ではなく)オーバーモールド成形セクションとは異なる硬さ(一般的にはより硬い)になっていて、オーバーモールディングのできる構造であるとともに、噛むレスポンスに寄与するようになっている。外部の軌道リング206の大きさは、幼児がリングの周りで噛むことを可能にするもの、つまり、リングの周りで幼児が唇を閉じて、唇を閉じた仕草ができるようにすることである。物体の周りで唇を閉じる行為は、乳幼児が口の中で食物または液体をこぼさずに保持することを可能にする。さらに、構造体202から一定間隔で配置されているリング206は、目と手の協調作用のための空隙を供給し、ハンドルとして機能する。構造体202は、(軸208上にある)ディスク221、222および(構造体202内部にあり中央開口を有する)マッチングプレートを通って軸の周りを回転することができ、そのマッチングプレートは、ディスク221、222を浮遊保持するとともに、その垂直方向の移動を制限し、かつ構造体202が軸208の周りを自由回転できるようにしている。
【0047】
本発明は、明瞭さと理解を目的としてかなり詳細に記述されているが、特定の具体例は、説明的で、限定的でないものとして考慮すべきである。この発明について読むことで、発明の範囲から外れず、請求の範囲内で形式または詳細の変更が行われうることは、当業者によって理解されるだろう。例えば、いくつかの図面中に示される特徴とそれに示されていない他のものが、当発明に基づいて異なる方法で組み合わされるかもしれない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的には第一の弾性材料により作られている外表面および前記第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質を有する弾性材料を有する内側部を含む、可変応答性おしゃぶり。
【請求項2】
内側部がさらに1つ以上の空隙を有する、請求項1のおしゃぶり。
【請求項3】
おしゃぶりの復元応答が、加えられた力の速度に比べて遅れる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項4】
おしゃぶりの復元応答が、加えられた力の速度にほぼ等しい、請求項1のおしゃぶり。
【請求項5】
おしゃぶりの材料および構造が、加えられた外力に対してバネおよび減衰性の応答を示す粘弾性モデルに少なくとも部分的に基づいて選ばれる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項6】
粘弾性応答が、噛むパターンに類似する2段階の外力荷重に応答するか反応するように設計された、請求項5のおしゃぶり。
【請求項7】
少なくとも外側部が軸を中心に回転することができる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項8】
主体およびその主体の周りを回転することができるリングをさらに含む請求項7のおしゃぶり。
【請求項9】
異なる角度のある表面を形成している請求項1のおしゃぶり。
【請求項10】
角度のある表面が、少なくとも1つの山部と少なくとも1つの谷部によって作られている、請求項9のおしゃぶり。
【請求項11】
内側部が外側部より柔軟である、請求項1のおしゃぶり。
【請求項12】
内側部が約25Aの硬度を有し、外側部が約50Aの硬度を有する、請求項11のおしゃぶり。
【請求項13】
内側部が外側部より硬い、請求項1のおしゃぶり。
【請求項14】
内側部が約90Aの硬度を有し、外側部が約50Aの硬度を有する、請求項13のおしゃぶり。
【請求項15】
圧縮力に対するおしゃぶりの応答を判定するために特定の食料を試験すること、及びその試験結果を用いて、おしゃぶりの力に対する応答性を判定することを含むおしゃぶりの設計方法。
【請求項16】
請求項15の方法によって設計されたおしゃぶり。
【請求項1】
少なくとも部分的には第一の弾性材料により作られている外表面および前記第一の弾性材料とは少なくとも1つの異なる性質を有する弾性材料を有する内側部を含む、可変応答性おしゃぶり。
【請求項2】
内側部がさらに1つ以上の空隙を有する、請求項1のおしゃぶり。
【請求項3】
おしゃぶりの復元応答が、加えられた力の速度に比べて遅れる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項4】
おしゃぶりの復元応答が、加えられた力の速度にほぼ等しい、請求項1のおしゃぶり。
【請求項5】
おしゃぶりの材料および構造が、加えられた外力に対してバネおよび減衰性の応答を示す粘弾性モデルに少なくとも部分的に基づいて選ばれる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項6】
粘弾性応答が、噛むパターンに類似する2段階の外力荷重に応答するか反応するように設計された、請求項5のおしゃぶり。
【請求項7】
少なくとも外側部が軸を中心に回転することができる、請求項1のおしゃぶり。
【請求項8】
主体およびその主体の周りを回転することができるリングをさらに含む請求項7のおしゃぶり。
【請求項9】
異なる角度のある表面を形成している請求項1のおしゃぶり。
【請求項10】
角度のある表面が、少なくとも1つの山部と少なくとも1つの谷部によって作られている、請求項9のおしゃぶり。
【請求項11】
内側部が外側部より柔軟である、請求項1のおしゃぶり。
【請求項12】
内側部が約25Aの硬度を有し、外側部が約50Aの硬度を有する、請求項11のおしゃぶり。
【請求項13】
内側部が外側部より硬い、請求項1のおしゃぶり。
【請求項14】
内側部が約90Aの硬度を有し、外側部が約50Aの硬度を有する、請求項13のおしゃぶり。
【請求項15】
圧縮力に対するおしゃぶりの応答を判定するために特定の食料を試験すること、及びその試験結果を用いて、おしゃぶりの力に対する応答性を判定することを含むおしゃぶりの設計方法。
【請求項16】
請求項15の方法によって設計されたおしゃぶり。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2013−518617(P2013−518617A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551379(P2012−551379)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023292
【国際公開番号】WO2011/094729
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511043404)
【氏名又は名称原語表記】TESINI,David,A.
【住所又は居所原語表記】13 Norcross Road,Hopkinton,MA The United States of America
【出願人】(511043415)
【氏名又は名称原語表記】WIESMAN,Joshua
【住所又は居所原語表記】130 Appleton Street,#2B,Boston, MA The United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023292
【国際公開番号】WO2011/094729
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511043404)
【氏名又は名称原語表記】TESINI,David,A.
【住所又は居所原語表記】13 Norcross Road,Hopkinton,MA The United States of America
【出願人】(511043415)
【氏名又は名称原語表記】WIESMAN,Joshua
【住所又は居所原語表記】130 Appleton Street,#2B,Boston, MA The United States of America
【Fターム(参考)】
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