説明

可変抵抗器

【課題】 長寿命のクラッチ機構や減速回転伝達機構が得られると共に、微細な抵抗値の可変ができる可変抵抗器を提供する。
【解決手段】 本発明の可変抵抗器は、操作部材15の回転を伝達する複数の歯車からなる減速回転伝達機構と、抵抗値を可変するための回転体11を有した抵抗器部材7と、回転体11を回転するための回転伝達部材13とを備え、減速回転伝達機構の終端に位置する歯車付ホイール18と回転伝達部材13との間には、板状のクラッチ部材14が配設されてクラッチ機構を形成して、クラッチ機構によって、回転伝達部材13の回転伝達と回転中止を行うようにしたため、従来に比して摩耗が少なく、長期にわたってクラッチ機構や減速回転伝達機構が維持できて、信頼性の高いものが得られるばかりか、複数の歯車からなる減速回転伝達機構とすることによって、減速比が大きく、微細な抵抗値の可変を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のシートの傾き角度検出等に使用して好適な可変抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変抵抗器の図面を説明すると、図9は従来の可変抵抗器に係る要部の縦断面図、図10は従来の可変抵抗器に係る要部の横断面図を示し、次に、従来の可変抵抗器の構成を図9,図10に基づいて説明すると、絶縁材からなる外装ケース51の凹部内には、抵抗体(図示せず)を設け、端子52が取り付けられた抵抗体基板53が配置されている。
【0003】
また、外装ケース51の凹部内には、抵抗体に摺接する摺動子54を取り付けたロータ55が回転可能に取り付けられ、このロータ55は、ここでは図示しないが、外装ケース51との間でストッパー部が形成され、ロータ55の回転がストップするようになっている。
【0004】
更に、外装ケース51の凹部の内周面には、内歯部51aが設けられ、ロータ55には、ゴム材からなる遊星円板56を収納するための凹溝55aが設けられ、遊星円板56の円状外周面が内歯部51aに弾接するようになっている。
【0005】
十字状のドライバー溝57aと外歯歯車57bを有する操作部材57は、外装ケース51の上方部に回転可能に取り付けられ、操作部材57の外歯歯車57bが凹溝55a内に位置して、遊星円板56の円状外周面に弾接すると共に、外歯歯車57bによって遊星円板56を内歯部51aに押し付けて、内歯部51a、遊星円板56,及び外歯歯車57bによって遊星歯車機構による減速回転伝達機構、及びクラッチ機構が形成されている。
【0006】
そして、外装ケース51の下部には、シール樹脂58を充填することによって、抵抗体基板53が固定されて、従来の可変抵抗器が形成されている。
【0007】
このような構成を有する従来の可変抵抗器は、ドライバーによって操作部材57が矢印A1方向に回転されると、外歯歯車57bも矢印A1方向に回転するため、遊星円板56は、外歯歯車57bと内歯部51aとの間の摩擦によって矢印A2方向に回転する。
【0008】
すると、遊星円板56の矢印A2方向の回転時、ロータ55が押されて、ロータ55は矢印A3方向に回転し、その結果、摺動子54が抵抗体を摺接して、抵抗値が可変すると共に、操作部材57の回転を続けると、ロータ55は、外装ケース51のストッパー部にぶつかって、ロータ55の回転がストップし、更に、操作部材57の回転を続けると、外歯歯車57bと遊星円板56との間でスリップするようになっている。(例えば、特許文献1参照)
【0009】
しかし、従来の可変抵抗器は、ゴム材の遊星円板56を使用したクラッチ機構であるため、ロータ55の回転がストップした状態で操作部材57の回転を続けると、遊星円板56と弾接状態にある外歯歯車57bの回転によって、遊星円板56の摩耗が著しく、長期にわたってクラッチ機構や減速回転伝達機構が果たせないばかりか、1個の遊星円板56を使用した遊星歯車機構では、減速比が小さく、微細な抵抗値の可変ができない。
【0010】
【特許文献1】特開平5−21214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の可変抵抗器は、ゴム材の遊星円板56を使用したクラッチ機構であるため、ロータ55の回転がストップした状態で操作部材57の回転を続けると、遊星円板56と弾接状態にある外歯歯車57bの回転によって、遊星円板56の摩耗が著しく、長期にわたってクラッチ機構や減速回転伝達機構が果たせないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は長寿命のクラッチ機構や減速回転伝達機構が得られると共に、微細な抵抗値の可変ができる可変抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、ケースに回転可能に支持され、歯車を設けた操作部材と、この操作部材の回転を伝達する複数の歯車からなる減速回転伝達機構と、抵抗値を可変するための回転体を有した抵抗器部材と、前記回転体を回転するための回転伝達部材とを備え、前記減速回転伝達機構の終端に位置する歯車付ホイールと前記回転伝達部材との間には、前記歯車付ホイールと前記回転伝達部材のそれぞれに弾接する板状のクラッチ部材が配設されてクラッチ機構を形成し、前記操作部材からの回転が前記減速回転伝達機構、前記クラッチ機構、及び前記回転伝達部材を介して前記回転体に伝達されて抵抗値を可変すると共に、前記回転伝達部材の回転がストップした時は、前記クラッチ機構がスリップして、抵抗値の可変を停止するようにした構成とした。
【0014】
また、第2の解決手段として、前記クラッチ部材は、バネ性のある金属板製のウエーブワッシャーで形成された構成とした。
また、第3の解決手段として、前記歯車付ホイールは、中央部に設けられた貫通孔を有し、前記回転伝達部材には、前記貫通孔内に挿通されて前記歯車付ホイールに係止される複数の係止片が設けられ、前記回転伝達部材が前記係止片によって前記歯車付ホイールに組み合わされた構成とした。
【0015】
また、第4の解決手段として、前記クラッチ部材は、中央部に孔が設けられた環状部を有し、前記係止片が前記孔内に挿通されて、前記回転伝達部材と前記歯車付ホイールとの間に前記クラッチ部材が挟持された構成とした。
また、第5の解決手段として、前記ケースには突出部が設けられ、前記突出部が前記歯車付ホイールの前記貫通孔内に位置して、前記歯車付ホイールからの前記係止片の抜け止めを行うようにした構成とした。
【0016】
また、第6の解決手段として、前記抵抗器部材を保持する保持部材を有し、前記回転伝達部材と前記保持部材とには、前記回転伝達部材の回転をストップするためのストッパー部が設けられた構成とした。
また、第7の解決手段として、前記保持部材には、前記抵抗器部材に設けられた端子を接続するための接続導体が設けられ、前記抵抗器部材の抵抗値が前記接続導体を介して前記ケース外に導出されるようにした構成とした。
【0017】
また、第8の解決手段として、前記保持部材は、前記ケースに設けられた係止突起によって、前記ケースに掛け止めされた構成とした。
また、第9の解決手段として、前記回転体の中央部には孔が設けられると共に、前記回転伝達部材には、前記孔内に挿通されて、前記回転体に回転伝達を行うための軸部が設けられた構成とした。
【0018】
また、第10の解決手段として、前記ケースは、第1,第2のケース部と、前記第1,第2のケース部の一方に設けられた突起と、前記第1,第2のケース部の他方に設けられた係止腕部を有し、前記ケースは、前記突起と前記係止腕部が掛け止めされて箱形をなし、前記ケース内には、少なくとも前記減速回転伝達機構、前記回転伝達部材、クラッチ機構、及び前記抵抗器部材が収納された構成とした。
【0019】
また、第11の解決手段として、前記操作部材が前記第1,第2のケース部間に保持されると共に、前記減速回転伝達機構の一部の前記歯車は、前記第1,第2のケース部の何れかに設けられた突部からなる軸部によって回転可能に支持された構成とした。
また、第12の解決手段として、前記減速回転伝達機構の一部の前記歯車は、前記操作部材によって回転可能に支持された構成とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の可変抵抗器は、ケースに回転可能に支持され、歯車を設けた操作部材と、この操作部材の回転を伝達する複数の歯車からなる減速回転伝達機構と、抵抗値を可変するための回転体を有した抵抗器部材と、回転体を回転するための回転伝達部材とを備え、減速回転伝達機構の終端に位置する歯車付ホイールと回転伝達部材との間には、歯車付ホイールと回転伝達部材のそれぞれに弾接する板状のクラッチ部材が配設されてクラッチ機構を形成し、操作部材からの回転が減速回転伝達機構、クラッチ機構、及び回転伝達部材を介して回転体に伝達されて抵抗値を可変すると共に、回転伝達部材の回転がストップした時は、クラッチ機構がスリップして、抵抗値の可変を停止するようにした構成とした。
このように、板状のクラッチ部材が歯車付ホイールと回転伝達部材との間の平坦部に介在されると、従来に比して摩耗が少なく、長期にわたってクラッチ機構や減速回転伝達機構が維持できて、信頼性の高いものが得られるばかりか、複数の歯車からなる減速回転伝達機構とすることによって、減速比が大きく、微細な抵抗値の可変を行うことができる。
【0021】
また、クラッチ部材は、バネ性のある金属板製のウエーブワッシャーで形成されたため、耐久性を高めることができて、長期にわたってクラッチ機構や減速回転伝達機構が維持できて、信頼性の高いものが得られる。
【0022】
また、歯車付ホイールは、中央部に設けられた貫通孔を有し、回転伝達部材には、貫通孔内に挿通されて歯車付ホイールに係止される複数の係止片が設けられ、回転伝達部材が係止片によって歯車付ホイールに組み合わされたため、回転伝達部材と歯車付ホイールを一体化した状態で、ケースへの組み込みができて、生産性の良好なものが得られる。
【0023】
また、クラッチ部材は、中央部に孔が設けられた環状部を有し、係止片が孔内に挿通されて、回転伝達部材と歯車付ホイールとの間にクラッチ部材が挟持されたため、回転伝達部材、歯車付ホイール、及びクラッチ部材を容易に一体化でき、この一体化した状態で、ケースへの組み込みができて、生産性の良好なものが得られる。
【0024】
また、ケースには突出部が設けられ、突出部が歯車付ホイールの貫通孔内に位置して、歯車付ホイールからの係止片の抜け止めを行うようにしたため、回転伝達部材の取付が確実となって、振動や衝撃に強い取付ができる。
【0025】
また、抵抗器部材を保持する保持部材を有し、回転伝達部材と保持部材とには、回転伝達部材の回転をストップするためのストッパー部が設けられたため、回転範囲の異なる要求に対して、保持部材の変更のみで良く、容易にバラエティに対応できると共に、抵抗器部材は、変更することなく共通性を持たせることができて、安価なものが得られる。
【0026】
また、保持部材には、抵抗器部材に設けられた端子を接続するための接続導体が設けられ、抵抗器部材の抵抗値が接続導体を介してケース外に導出されるようにしたため、外部接続の形態が異なる場合の対応には、保持部材を変更すれば良く、容易にバラエティに対応できる。
【0027】
また、保持部材は、ケースに設けられた係止突起によって、ケースに掛け止めされたため、ケースへの保持部材の取付が簡単で、生産性の良好なものが得られる。
【0028】
また、回転体の中央部には孔が設けられると共に、回転伝達部材には、孔内に挿通されて、回転体に回転伝達を行うための軸部が設けられたため、抵抗器部材がケースに組み込みされた後、回転体の孔に回転伝達部材の軸部を挿入する作業ができて、組立性の良好なものが得られる。
【0029】
また、ケースは、第1,第2のケース部と、第1,第2のケース部の一方に設けられた突起と、第1,第2のケース部の他方に設けられた係止腕部を有し、ケースは、突起と係止腕部が掛け止めされて箱形をなし、ケース内には、少なくとも減速回転伝達機構、回転伝達部材、クラッチ機構、及び抵抗器部材が収納されたため、ケースの組立が簡単であると共に、防塵性の良好なものが得られる。
【0030】
また、操作部材が第1,第2のケース部間に保持されると共に、減速回転伝達機構の一部の歯車は、第1,第2のケース部の何れかに設けられた突部からなる軸部によって回転可能に支持されたため、操作部材の保持を確実にできると共に、歯車の取付、支持が簡単で、生産性の良好なものが得られる。
【0031】
また、減速回転伝達機構の一部の歯車は、操作部材によって回転可能に支持されたため、歯車のスペースファクタが良く、ケースを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の可変抵抗器の図面を説明すると、図1は本発明の可変抵抗器の平面図、図2は本発明の可変抵抗器の下面図、図3は本発明の可変抵抗器の要部断面図、図4は本発明の可変抵抗器に係り、第2のケース部を取り去った状態の斜視図、図5は本発明の可変抵抗器の分解斜視図、図6は本発明の可変抵抗器に係る抵抗器部材の断面図、図7は本発明の可変抵抗器に係る第1のケース部の平面図、図8は本発明の可変抵抗器に係る歯車付ホイールの平面図である。
なお、図面を理解し易くするために、図3,図4,図5においては、第1〜第3の歯車、及び歯車付ホイールの歯(凹凸部)を図示省略している。
【0033】
次に、本発明の可変抵抗器の構成を図1〜図8に基づいて説明すると、合成樹脂の成型品からなる箱形のケース1は、互いに組み合わされて一体化される第1,第2のケース部2,3を有し、下部側に位置する第1のケース部2は、底壁2aと、この底壁2aの外周から上方に延びて、収納部を形成する側壁2bと、底壁2aに設けられた大きめの孔2cと、この孔2cの近くで、底壁2aに設けられた突部からなる軸部2dと、孔2cを挟んで軸部2dと反対側の位置で、複数個が並設して底壁2aに設けられた導出用孔2eと、この導出用孔2eを挟むように底壁2aに設けられた一対の係止突起2fと、この係止突起2f間の位置で、底壁2aに設けられた凸部2gと、導出用孔2eを囲んだ状態で、底壁2aから外方(下方)に突出する筒状部2hと、側壁2bの外周面に設けられた複数の突起2jと、突部2gの近傍であって、孔2c寄りの位置で、底壁2aに設けられた凹部2kを有する。
【0034】
また、上方側に位置する第2のケース部3は、上壁3aと、この上壁3aの外周から下方に延びて、収納部を形成する側壁3bと、上壁3aに設けられた大きめの孔3cと、上壁3aに設けられ、軸部を構成する突出部3dと、側壁3bから下方に延び、孔3eを有した複数の係止腕部3fを有する。
【0035】
この第1,第2のケース部2,3は、側壁2b、3b同士が合わされ、突起2jが係止腕部3fの孔3eに係止(スナップ止め)されることによって、両者が組み合わされて、内部に収納部を備えたケース1が形成されてる。
そして、第1,第2のケース部2,3が組み合わされた時、孔2c、3cは対向した状態となっている。
【0036】
保持部材4は、絶縁基体5と、この絶縁基体5に取り付けられた接続導体6a、6bからなり、絶縁基体5は、上面に設けられた凹部5aと、間隔を置いて配置された2つの孔5b、5cと、上方に突出したストッパー部5dを有し、この絶縁基体5は、孔5c内に凸部2gが位置して、位置決めされた状態で、底壁2a上に載置されると共に、この絶縁基体5の両側部側は、一対の係止突起2fによって掛け止め(スナップ止め)されて、底壁2aに取り付けられる。
この時、接続導体6bは、筒状部2h内に位置して、コネクタ用の引出端子となって、ケース1外に導出されるようになる。
【0037】
抵抗器部材7は、円弧状の抵抗体(図示せず)が設けられ、複数の端子8を埋設した絶縁板9と、抵抗体上を摺接する摺動子10が取り付けられ、中央部に非円形状(本実施例ではD字状)の孔11aを有する回転体11と、抵抗体と摺動子10を覆った状態で絶縁板9に取り付けられ、回転体11を回転可能に支持するカバー12とで構成されている。
そして、この抵抗器部材7は、絶縁板9が凹部5a内に位置して、位置決めされた状態で、接続導体6aに端子8が半田付されて、保持部材4に取り付けられている。
【0038】
合成樹脂の成型品からなる回転伝達部材13は、平板部13aと、この平板部13aから上方に突出して設けられた複数の係止片13bと、平板部13aの中心から下方に突出して設けられた非円形状(本実施例ではD字状)の軸部13cと、平板部13aの外周から外方に突出したストッパー部13dを有する。
【0039】
この回転伝達部材13は、非円形状の軸部13cが非円形状の回転体11の孔11a内に係合状態で挿通され、軸部13cの先端部が絶縁基体5の孔5bを通って底壁2aに設けられた凹部2k内に位置した状態で取り付けられており、この回転伝達部材13が回転すると、軸部13cを介して回転体11が回転すると共に、摺動子10が抵抗体上を摺接して抵抗値を可変し、また、回転伝達部材13が所定の範囲回転すると、ストッパー部13dが保持部材4のストッパー部5dにぶつかって、回転伝達部材13と回転体11の回転がストップする。
【0040】
板状のクラッチ部材14は、バネ性のある金属板製のウエーブワッシャーやフェルト板等からなり、中央部に孔14aが設けられた環状部14bを有し、このクラッチ部材14は、回転伝達部材13の係止片13bが孔14aに挿通されて、回転伝達部材13に組み合わされて、一体化される。
【0041】
歯車を備えた操作部材15は、筒状部15aと、筒状部15aの外周部に設けられた第1の歯車15bと、筒状部15aの中空部内に設けられたスプライン溝15cを有し、この操作部材15は、第1,第2のケース部2,3の孔2c、3c間で、回転可能に支持されている。
【0042】
第2の歯車16は、軸線方向の異なる位置に設けられた径の異なる歯部16a、16bを有し、この第2の歯車16は、中心部の凹部が第1のケース部2の軸部2dに支持されて、回転可能に取り付けられると共に、歯部16aが第1の歯車15bに噛み合わされている。
【0043】
第3の歯車17は、軸線方向の異なる位置に設けられた径の異なる歯部17a,17bを有し、この第3の歯車17は、操作部材15の筒状部15aが中心部の孔に挿通されて、筒状部15aを軸として回転可能に取り付けられると共に、歯部17aが第2の歯車16の歯部16bに噛み合わされている。
【0044】
第4の歯車である下面が平坦面からなる板状の歯車付ホイール18は、外周部に設けられた歯車18aと、中心部に設けられた貫通孔18bを有し、この歯車付ホイール18は、回転伝達部材13の係止片13bが貫通孔18b内に挿通され、係止片13bによって掛け止め(スナップ止め)されて、回転可能に取り付けられると共に、歯車18aが第3の歯車17の歯部17bに噛み合わされる。
【0045】
そして、第1の歯車15bを備えた操作部材15と、第2,第3の歯車16,17,及び第4の歯車である歯車付ホイール18とによって、減速回転伝達機構が形成され、操作部材15からの回転が第2,第3の歯車16,17を介して、終端に位置する歯車付ホイール18に減速して伝達されるようになっている。
【0046】
また、歯車付ホイール18が係止片13bによって取り付けられた際、歯車付ホイール18,クラッチ部材14,及び回転伝達部材13が一体化されると共に、歯車付ホイール18と回転伝達部材13の間の平坦部間には、板状のクラッチ部材14が挟持されて、クラッチ機構が形成されており、歯車付ホイール18の回転がクラッチ部材14を介して回転伝達部材13に伝達されると共に、回転伝達部材13の回転がストップした場合は、歯車付ホイール18とクラッチ部材14間、或いはクラッチ部材14と回転伝達部材13との間でスリップして、クラッチ機構がスリップするようになっている。
【0047】
更に、歯車付ホイール18が第1のケース部2内に収納された状態で、第2のケース部3が第1のケース部2に取り付けられた際、第2のケース部3に設けられた軸部を構成する突出部3dは、歯車付ホイール18の貫通孔18b内に位置して、係止片13bの動きを阻止し、係止片13bの抜け止めが行われると共に、突出部3dの先端部は、回転伝達部材13の平板部13aに当接して、回転伝達部材13の浮き上がりが防止され、更に又、突出部3dは、歯車付ホイール18と係止片13b(回転伝達部材13)の中心部に位置して、歯車付ホイール18と回転伝達部材13の回転軸としての機能を果たしている。
【0048】
このような構成を有する本発明の可変抵抗器は、例えば、自動車に組み込まれ、モータ(図示せず)からの回転が操作部材15のスプライン溝15cに係合された回転軸(図示せず)から操作部材15に伝達される。
すると、減速回転伝達機構である操作部材15と、第2,第3の歯車16,17,及び歯車付ホイール18からクラッチ機構であるクラッチ部材14と回転伝達部材13を介して回転体11に伝達されて、摺動子10が抵抗体(図示せず)上を摺動することにより、抵抗値が微細に可変されて、これによって、シートの傾き状態が調整されるようになる。
【0049】
また、歯車付ホイール18の回転を続けると、回転伝達部材13のストッパー部13dは、保持部材4のストッパー部5dにぶつかって回転がストップすると共に、回転体11の回転もストップして、抵抗値の可変が停止する。
更に、歯車付ホイール18の回転を続けると、クラッチ機構がスリップして、回転伝達部材13への回転伝達が中止される。
【0050】
そして、操作部材15が上記回転と反対方向に回転すると、ストッパー部5dのストップが外れる方向に回転伝達部材13は、クラッチ機構を介して回転して抵抗値の可変が行われるようになり、それ以後は、前述と同様の動作が行われるものである。
【0051】
なお、上述した本発明の実施形態においては、抵抗器部材7はカバー12を有し、摺動子10が抵抗体上を摺動するユニット化されたもので説明したが、本発明の抵抗器部材はこれに限定されない。
即ち、カバーによって摺動子や抵抗体が覆われていないものでも良く、また、固定された摺動子に対して、抵抗体が設けられた回転体が回転するものであっても良い。
更に、ケースの底壁等に、抵抗体が形成された抵抗体基板を取付、この抵抗体上を摺動する摺動子を回転伝達部材の下面に設けたものでも良く、このような構成においては、該摺動子が抵抗器部材の回転体として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の可変抵抗器の平面図。
【図2】本発明の可変抵抗器の下面図。
【図3】本発明の可変抵抗器の要部断面図。
【図4】本発明の可変抵抗器に係り、第2のケース部を取り去った状態の斜視図。
【図5】本発明の可変抵抗器の分解斜視図。
【図6】本発明の可変抵抗器に係る抵抗器部材の断面図。
【図7】本発明の可変抵抗器に係る第1のケース部の平面図。
【図8】本発明の可変抵抗器に係る歯車付ホイールの平面図。
【図9】従来の可変抵抗器に係る要部の縦断面図。
【図10】従来の可変抵抗器に係る要部の横断面図。
【符号の説明】
【0053】
1:ケース
2:第1のケース部
2a:底壁
2b:側壁
2c:孔
2d:軸部
2e:導出用孔
2f:係止突起
2g:凸部
2h:筒状部
2j:突起
2k:凹部
3:第2のケース部
3a:上壁
3b:側壁
3c:孔
3d:突出部
3e:孔
3f:係止腕部
4:保持部材
5:絶縁基体
5a:凹部
5b、5c:孔
5d:ストッパー部
6a、6b:接続導体
7:抵抗器部材
8:端子
9:絶縁板
10:摺動子
11:回転体
11a:孔
12:カバー
13:回転伝達部材
13a:平板部
13b:係止片
13c:軸部
13d:ストッパー部
14:クラッチ部材
14a:孔
14b:環状部
15:操作部材
15a:筒状部
15b:第1の歯車
15c:スプライン溝
16:第2の歯車
16a、16b:歯部
17:第3の歯車
17a、17b:歯部
18:歯車付ホイール(第4の歯車)
18a:歯車
18b:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに回転可能に支持され、歯車を設けた操作部材と、この操作部材の回転を伝達する複数の歯車からなる減速回転伝達機構と、抵抗値を可変するための回転体を有した抵抗器部材と、前記回転体を回転するための回転伝達部材とを備え、前記減速回転伝達機構の終端に位置する歯車付ホイールと前記回転伝達部材との間には、前記歯車付ホイールと前記回転伝達部材のそれぞれに弾接する板状のクラッチ部材が配設されてクラッチ機構を形成し、前記操作部材からの回転が前記減速回転伝達機構、前記クラッチ機構、及び前記回転伝達部材を介して前記回転体に伝達されて抵抗値を可変すると共に、前記回転伝達部材の回転がストップした時は、前記クラッチ機構がスリップして、抵抗値の可変を停止するようにしたことを特徴とする可変抵抗器。
【請求項2】
前記クラッチ部材は、バネ性のある金属板製のウエーブワッシャーで形成されたことを特徴とする請求項1記載の可変抵抗器。
【請求項3】
前記歯車付ホイールは、中央部に設けられた貫通孔を有し、前記回転伝達部材には、前記貫通孔内に挿通されて前記歯車付ホイールに係止される複数の係止片が設けられ、前記回転伝達部材が前記係止片によって前記歯車付ホイールに組み合わされたことを特徴とする請求項1、又は2記載の可変抵抗器。
【請求項4】
前記クラッチ部材は、中央部に孔が設けられた環状部を有し、前記係止片が前記孔内に挿通されて、前記回転伝達部材と前記歯車付ホイールとの間に前記クラッチ部材が挟持されたことを特徴とする請求項3記載の可変抵抗器。
【請求項5】
前記ケースには突出部が設けられ、前記突出部が前記歯車付ホイールの前記貫通孔内に位置して、前記歯車付ホイールからの前記係止片の抜け止めを行うようにしたことを特徴とする請求項3,又は4記載の可変抵抗器。
【請求項6】
前記抵抗器部材を保持する保持部材を有し、前記回転伝達部材と前記保持部材とには、前記回転伝達部材の回転をストップするためのストッパー部が設けられたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の可変抵抗器。
【請求項7】
前記保持部材には、前記抵抗器部材に設けられた端子を接続するための接続導体が設けられ、前記抵抗器部材の抵抗値が前記接続導体を介して前記ケース外に導出されるようにしたことを特徴とする請求項6記載の可変抵抗器。
【請求項8】
前記保持部材は、前記ケースに設けられた係止突起によって、前記ケースに掛け止めされたことを特徴とする請求項6、又は7記載の可変抵抗器。
【請求項9】
前記回転体の中央部には孔が設けられると共に、前記回転伝達部材には、前記孔内に挿通されて、前記回転体に回転伝達を行うための軸部が設けられたことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の可変抵抗器。
【請求項10】
前記ケースは、第1,第2のケース部と、前記第1,第2のケース部の一方に設けられた突起と、前記第1,第2のケース部の他方に設けられた係止腕部を有し、前記ケースは、前記突起と前記係止腕部が掛け止めされて箱形をなし、前記ケース内には、少なくとも前記減速回転伝達機構、前記回転伝達部材、クラッチ機構、及び前記抵抗器部材が収納されたことを特徴とする請求項1記載の可変抵抗器。
【請求項11】
前記操作部材が前記第1,第2のケース部間に保持されると共に、前記減速回転伝達機構の一部の前記歯車は、前記第1,第2のケース部の何れかに設けられた突部からなる軸部によって回転可能に支持されたことを特徴とする請求項10記載の可変抵抗器。
【請求項12】
前記減速回転伝達機構の一部の前記歯車は、前記操作部材によって回転可能に支持されたことを特徴とする請求項11記載の可変抵抗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−13068(P2006−13068A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186786(P2004−186786)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】