説明

可変抵抗器

【課題】回転調整用ドライバの先端がドライバプレートの下側に潜り込み難く、ドライバプレートの浮き上がりや変形を防止できる可変抵抗器を提供する。
【解決手段】表面に抵抗体5を設けた絶縁基板1と、該基板1に回転自在に取り付けられた摺動子6を備えた可変抵抗器。摺動子6は、接点部6gを有するカップ状筒状部6eと、該筒状部6eから折り返されたドライバプレート部6aとで構成され、係合溝6bの周囲部7は絞り加工又は折曲げ加工によってカップ状筒状部6eの上部に配設されている凹部6hの内壁に接近されている。即ち、係合溝6bの周囲部7の先端部は、挿入される回転調整用ドライバの先端部位置とほぼ同じ位置あるいはそれより下の位置まで曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変抵抗器、特に、表面実装型可変抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面実装型の可変抵抗器としては、表面に抵抗体を設けた絶縁基板と、該絶縁基板に回転自在に取り付けられた摺動子とを備え、摺動子は、抵抗体に弾性的に摺接する接点部を有する略カップ状の筒状部と、該筒状部の一部から折り返されたドライバプレート部とで構成され、ドライバプレート部には回転調整用ドライバの先端が挿入される係合溝を有するものが提供されていた(特許文献1参照)。
【0003】
さらに、絞り加工によって略カップ状に形成した筒状部の外周の一部に、ドライバプレート部の係合溝に対向した凹部を形成したり(特許文献2参照)、ドライバプレート部の一部を突出させて折り曲げて筒状部を挟み込むようにし(特許文献3参照)、筒状部とドライバプレート部を強く連結した可変抵抗器も知られている。
【0004】
しかしながら、従来の可変抵抗器の場合、抵抗値調整時に、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部の下側に潜り込み、ねじれが加わってドライバプレート部をめくり上げてしまうという問題点があった。また、ドライバプレート部と筒状部を機械的に連結する場合は、ドライバプレート部の浮き上がりを防止できても、係合溝付近に局部的に力が加わり、変形してしまうおそれがあった。
【特許文献1】実開昭61−114805号公報
【特許文献2】実開平2−146802号公報
【特許文献3】特開2003−77714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部の下側に潜り込み難く、ドライバプレート部の浮き上がりや変形を防止できる可変抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る可変抵抗器は、
表面に抵抗体を設けた絶縁基板と、該絶縁基板に回転自在に取り付けられた摺動子とを備え、
前記摺動子は、前記抵抗体に弾性的に摺接する接点部を有する略カップ状の筒状部と、該筒状部の一部から折り返されたドライバプレート部とで構成されており、かつ、ドライバプレート部には回転調整用ドライバの先端が挿入される係合溝を有し、
前記ドライバプレート部の係合溝周辺を絞り形成又は折曲げ形成によって前記筒状部の内壁に接近させたこと、
を特徴とする。
【0007】
本発明に係る可変抵抗器においては、ドライバプレート部の係合溝の先端部を、挿入される回転調整用ドライバの先端部位置より下側に曲げているため、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部の下側に潜り込み難くなる。係合溝周辺を筒状部の内壁に密着させてもよい。また、筒状部において、ドライバプレート部の係合溝に対応する位置に、係合溝の幅よりも狭い幅を有する凹部を形成すれば、回転調整用ドライバの凹部への係合強度が高まる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドライバプレート部の係合溝周辺を絞り形成又は折曲げ形成して筒状部の内壁に接近(さらには密着)させたため、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部の下側に潜り込み難く、ドライバプレート部の浮き上がりや変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る可変抵抗器の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施例、図1〜図3参照)
図1は第1実施例である可変抵抗器21Aの平面図であり、図2はその断面図である。可変抵抗器21Aは、概略、固定側端子2,3及び可変側端子4を一体的にインサートモールドした絶縁基板1と、可変側端子4にカシメて取り付けられた摺動子6とで構成されている。
【0011】
絶縁基板1は、はんだ付けの熱に耐え、高温雰囲気で安定動作を可能にするため、耐熱性熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。例えば、液晶(LCP)樹脂、変性6Tナイロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが用いられる。
【0012】
絶縁基板1の上面には、固定側端子2,3の導通部が露出している。さらに、絶縁基板1の上面には、この導通部を覆うようにカーボンなどからなる抵抗体5が略円弧状に塗布され、焼き付けられている。これにより、固定側端子2,3と抵抗体5とが電気的に導通している。
【0013】
固定側端子2,3及び可変側端子4のプリント絶縁基板へのはんだ付け部である外部接続部2b,3b,4bは、絶縁基板1の底部から引き出されている。そして、外部接続部2b,3b,4bの先端側は、絶縁基板1の側面に近接して上方に90°折り曲げられている。
【0014】
固定側端子2,3及び可変側端子4は、銅合金又は不錆鋼などの良導電性の薄板からなり、はんだ濡れ性を向上させるため、少なくとも外部接続部2b,3b,4bに金や銀などの貴金属めっき、はんだめっき、錫めっきなどの表面処理を行うことが望ましい。
【0015】
摺動子6は良好な導電性とバネ特性とを有する金属、例えば、銅合金、不錆鋼又は貴金属系合金などの薄板からなる。摺動子6は、環状のドライバプレート部6aとカップ状の筒状部6eとが連結部6dを介して一体的に打ち抜き形成され、連結部6dで筒状部6eがドライバプレート部6aの裏面側へ折り畳まれている。ドライバプレート部6aには、ドライバなどの図示しない調整用治具によって回転操作される十字状の係合溝6bが形成されている。
【0016】
係合溝6bの周囲部7は、絞り加工又は折曲げ加工が施され、カップ状筒状部6eの上部に配設されている凹部6hの内壁に接近している。即ち、係合溝6bの周囲部7の先端部は、挿入される回転調整用ドライバの先端部位置とほぼ同じ位置、もしくは、それより下の位置まで曲げられている。
【0017】
筒状部6eの連結部6dと反対側の外周縁部には、半円弧状のアーム部6fが形成され、このアーム部6fの中央部に抵抗体5上に弾性的に接触する接点部6gが形成されている。筒状部6eの中央部には、可変側端子4のハトメ部4aに嵌合する嵌合穴6iが形成されている。摺動子6は、この嵌合穴6iを可変側端子4のハトメ部4aに嵌合させた後、ハトメ部4aを外開きにカシメることにより、絶縁基板1に回転自在に取り付けられている。
【0018】
可変抵抗器21Aにおいて、抵抗値を変化させるには、回転調整用ドライバの先端部をドライバプレート部6aの係合溝6bに係合させ、摺動子6を回すことで調整可能である。
【0019】
この可変抵抗器21Aは、係合溝6bの周囲部7を曲げて筒状部6eの凹部6hの内壁に接近させ、周囲部7の先端部を、挿入される回転調整用ドライバの先端部位置とほぼ同じ位置、もしくは、それより下の位置まで曲げているので、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部6aの下側に潜り込み難くなる。
【0020】
また、係合溝6bの周囲部7の曲げ始め位置を、筒状部6eの絞り曲げ位置より内側にすることで、回転調整用ドライバとの係りを向上させることができる。
【0021】
図3は、図の左側半分に第1実施例である可変抵抗器21Aの断面を記載し、右側半分に従来の可変抵抗器の断面を記載し、両者を比較的に説明する図面である。可変抵抗器21Aは、係合溝6bの周囲部7を曲げて筒状部6eの凹部6hの内壁に接近させているので、隙間空間R1が、従来の可変抵抗器の隙間空間R2と比較して小さい。このため、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部6aの下側に潜り込み難い。
【0022】
従って、回転調整用ドライバの先端部が斜めに挿入され、局部的に集中荷重がかかったり、ドライバプレート部6aを浮かせるような力が加わったりした場合にも、回転調整用ドライバがドライバプレート部6aの下側に潜り難い状態になりドライバプレート部6aを浮き上がらせない。あるいは、ドライバプレート部6aを浮き上がらせずに、回転調整用ドライバの係りが外れる作用によって、回転調整用ドライバがドライバプレート部6aを浮き上がらせたり、変形させたりするのを防止できる。
【0023】
また、ドライバプレート部6aに過荷重が加わった場合でも、周囲部7が筒状部6eの凹部6hの内壁に接近しているので、周囲部7が変形し難いという効果がある。さらに、係合溝6bの周囲部7を曲げているので、回転調整用ドライバの挿入性が向上する。
【0024】
また、ドライバプレート部6aの係合溝6bの周囲部7を曲げているので、ドライバプレート部6a自体の機械的強度が向上し、水平方向荷重やモーメントに対して強くなる。
【0025】
(第2実施例、図4及び図5参照)
図4は第2実施例である可変抵抗器21Bの平面図であり、図5はその断面図である。この可変抵抗器21Bは、筒状部6eにおいて、ドライバプレート部6aの係合溝6bに対応する位置に、係合溝6bの幅よりも狭い幅を有する凹部6hを形成し、ドライバプレート部6aの係合溝6bの周囲部7を曲げて筒状部6eの凹部6hの内壁に密着させたものであり、他の構成は前記第1実施例である可変抵抗器21Aと同様である。従って、図4及び図5において図1及び図2と同じ部材、部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
本可変抵抗器21Bにあっては、回転調整用ドライバが凹部6hに係合し、ドライバプレート部6aに力が直接かかり難くなり、ドライバプレート部6aの変形や浮き上がりをより一層抑えることができる。
【0027】
そして、凹部6hの溝幅を回転調整用ドライバの先端部の肉厚寸法に近付けるほど、回転調整用ドライバが滑って抜けにくくなるので、凹部6hで確実に係合できる。また、調整の際の遊びが小さくなるため、調整がしやすくなる。
【0028】
ドライバプレート部6aは回転調整用ドライバの挿入深さを深くする補完的な役割も担い、仮に、凹部6hから回転調整用ドライバが滑って外れても、ドライバプレート部6aで調整できる。
【0029】
また、可変抵抗器21Bは、ドライバプレート部6aの係合溝6bの周囲部7を曲げて筒状部6eの凹部6hの内壁に密着させており、隙間空間がなく、回転調整用ドライバの先端がドライバプレート部6aの下側に潜り込むことはない。
【0030】
(他の実施例)
なお、本発明に係る可変抵抗器は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0031】
例えば、ドライバプレート部6aの係合溝6bは十字形状である必要はなく、マイナスドライバに合わせてマイナス形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る可変抵抗器の第1実施例を示す平面図。
【図2】図1に示した可変抵抗器の断面図。
【図3】図1の可変抵抗器と従来の可変抵抗器の差を説明するための断面図。
【図4】本発明に係る可変抵抗器の第2実施例を示す平面図。
【図5】図4に示した可変抵抗器の断面図。
【符号の説明】
【0033】
1…絶縁基板
2〜4…端子
5…抵抗体
6…摺動子
6a…ドライバプレート部
6b…係合溝
6e…筒状部
6g…接点部
6h…凹部
7…周囲部
21A,21B…可変抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に抵抗体を設けた絶縁基板と、該絶縁基板に回転自在に取り付けられた摺動子とを備え、
前記摺動子は、前記抵抗体に弾性的に摺接する接点部を有する略カップ状の筒状部と、該筒状部の一部から折り返されたドライバプレート部とで構成されており、かつ、ドライバプレート部には回転調整用ドライバの先端が挿入される係合溝を有し、
前記ドライバプレート部の係合溝周辺を絞り形成又は折曲げ形成によって前記筒状部の内壁に接近させたこと、
を特徴とする可変抵抗器。
【請求項2】
前記ドライバプレート部の係合溝周辺を絞り形成又は折曲げ形成によって前記筒状部の内壁に密着させたことを特徴とする請求項1に記載の可変抵抗器。
【請求項3】
前記筒状部には、前記ドライバプレート部の係合溝に対応する位置に、該係合溝の幅よりも狭い幅を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変抵抗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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