説明

可変温度及び圧力検知制御手段を備えた酸素濃縮器

【解決手段】 送出時のガスの作動圧力及び/又は温度に従って送出時間を調整することによって、一貫した投与量の酸素濃縮ガスを使用者に送出するための酸素濃縮器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの生成と、その流れの調節に関しており、より具体的には、高酸素濃度ガスの生成と、そのガスをパルス状に投与する際の送出に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年10月12日出願の米国仮特許出願第60/617,833号と、2005年4月7日出願の米国仮特許出願第60/669,323号からの優先権を主張する。
【0003】
ガスの流量調節器が、例えば、酸素を補給する必要のある人に高酸素濃度ガスを供給するために、高圧酸素タンク又は他の同様の酸素供給源の様なガス供給源に連結して用いられることは、周知である。酸素の放出を、例えば、人の呼吸サイクルの吸入期間の様な有用な時だけに限定することによって、酸素の供給を節約する酸素制御装置が開発されている。その様な装置では、吸入によって圧力が降下し、今度はそれが、酸素の流れを活性化させる。
【0004】
肺によって有効に吸収される空気又は酸素は、吸入又は吸気の初期又は有効な段階に吸入される酸素だけであることも知られている。吸入の後半の段階に吸入される空気又は酸素は、普通は、肺に吸収される前に吐き出される。この現象を利用するために、装置は、初期吸入時にガスの流れを活性化させるが、有効な段階の後は酸素の流れを終了させることによって、酸素の供給を一層節約する。その様な装置では、酸素の有効流量を、使用者の要求に従って、各吸入サイクル中の活性化時間を増減することによって制御することが知られている。
【0005】
その様な組み合わせ型の圧力調節器と節約装置の1つが、2002年8月6日発行のMcCombs他に与えられた共同所有の米国特許第6,427,690号に開示されており、その開示全体を参考文献としてここに援用するが、この装置は、タンク又は出口に直接接続するために、都合良く、酸素タンク(ガス又は液体状の酸素又は酸素混合物が入っている)上に直接配置されるか、又は、マスター酸素システムの壁の出口に接続されている。装置の中に含まれているのは、酸素圧調節器と、電源又は外部電源との接続器と、選択可能な交互吸入サイクル中の全ての吸入段階の間の酸素の流れの間隔及び時間を制御することにより、又は、連続して酸素を供給することによって有効酸素投与量を制御するための制御回路である。
【0006】
節約装置には、調節器のばねとピストンによって供給される酸素の圧力を制御するための第1チャンバと、第1チャンバと流体接続している第2又は酸素体積チャンバとが入っている。第2チャンバは、事前設定圧力での酸素の所定の体積又は「投与塊(bolus)」を維持するために設けられており、酸素は、制御回路によって操作される弁が作動すると、そこから管を通って使用者へ送出される。使用者の吸入に応じて弁を作動させるために、例えば上記特許で開示されている様に、制御回路は、吸入によって生じる圧力の低下を検知して、予めプログラムされた、又は何らかの適した時間の間弁を開く圧力検知変換器を含んでいる。
【0007】
米国特許第6,427,690号に開示されている節約装置に加えて、圧力スイング吸着、即ちPSAの原理で作動し、2004年7月20日発行のMcComb他への共同所有の米国特許第6,764,534号に開示されている一体式酸素節約装置を含んでいる持ち運び可能な酸素濃縮器も開発されており、同特許の開示全体を、参考文献として援用する。更に、同特許に記載されている様な酸素濃縮器は、吸入の初期段階に、濃縮器のPSA構成要素によって作り出される高酸素濃度(例えば、約95%の酸素)の、治療的には少なくとも毎分5リットルまでの連続流量に匹敵する、製品ガスを送出することができる。
【0008】
望ましい作動モードは、モード制御スイッチを所望の作動モード位置に配置することによって決められる。節約装置は、別体の装置の場合は、酸素タンク又はPSA装置の出口の何れかに取り付けられ、次いで酸素供給タンク上の弁が開かれるか、又はPSA装置がオンにされる。通常の断続的な作動モードでは、選択器スイッチは、幾つかの作動設定の内の1つを選択して、供給される酸素の等価流量、例えば1−5LPM、を示すのに用いられる。次に、鼻カニューレの様な酸素送出装置が、その接続管によって、節約装置の出口に取り付けられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸素の様な、高濃度の所望の1つ又は複数の製品ガスを作ることができ、要求の開始のみに応じて、使用者へ送る製品ガスの量をより正確に制御する能力を有する装置を提供する。本発明は、圧縮製品ガス(例えば、酸素)供給源、又は、圧力スイング吸着(PSA)装置又は真空圧力スイング吸着装置(VPSA)の様な他のその様な製品ガス生成手段と、装置の或る作動特性と照らし合わせてより正確な量の製品ガスを使用者に供給するために時間の長さを決定する送出制御アッセンブリと、を備えている。
【0010】
送出制御アッセンブリは、例えば酸素生成装置に適用されると、2つの主要な機能を果たす。第1に、普通に吸入される酸素の大部分は、直ぐに排気され、使用されないので、送出制御アッセンブリは、高酸素濃度ガスを、吸入する人に最も効率的に利用されるときにだけパルス状に投与して、高酸素濃度製品ガスの不必要な浪費を最小限に抑制する。供給される酸素をこの様により効率的に使用することは、加圧ボトル又はPSA装置の様な酸素供給源の容量要件を最小化する点で非常に有用である。容量の要件が緩和されると、小型で軽く、静かで安価な高酸素濃度ガス生成装置になる。
【0011】
第二に、本発明による送出制御アッセンブリは、その所有者が、どの様な所与の流量設定でも、各吸入の間に、実質的に一定量の酸素を受け取ることを保証する働きをする。理想ガスの法則によればPV=nRTなので、各投与時の酸素分子の数は、装置内の高酸素濃度ガスの分圧に依存し、分圧は多数の因子、基本的には、吸入時の装置内のガスの圧力と温度に依存することから、この量が常に一定になると仮定することはできない。
【0012】
本発明は、例えば、リアルタイムの作動圧力及び/又は温度を読み取るセンサーを使用し、センサーのアナログ出力をデジタル信号に変換し、マイクロ電子制御回路内のマイクロプロセッサを使用してパルス状の投与量を制御する。制御回路は、使用者による吸入の開始に応え、マイクロプロセッサへのデジタル信号を作る手段を更に有しており、マイクロプロセッサは、信号入力に基づき、例えば、マイクロプロセッサが事前にプログラムされたデータ表にアクセスすることによって、適切なパルス状投与の持続時間を計算する。本発明は、PSA又はVPSA作動サイクルが原因で生じる装置内の温度及び/又は圧力の変動を補正し、作動サイクルの中に何時吸入が検出されるたかに関係無く、酸素ガスを使用者に一貫して投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の上記及びこの他の特徴と利点、並びにそれらを実現する方法は、本発明の実施形態に関する以下の説明を添付図面と関連付けて参照すれば、明らかになり、良く理解頂けるであろう。
【0014】
各図面を通して、同じ参照番号は同じ部品を示している。ここに設定されている例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、本発明の範囲を如何なる意味であれ制限するものではない。
【0015】
本出願に記載されている本発明は、PSA又はVPSA装置の何れに用いることもでき、その両方とも周知であり、中でも、例えば、米国特許第3,564,816号、第3,636,679号、第3,717,974号、第4,802,899号、第5,531,807号、第5,755,856号、第5,871,564号、第6,524,370号、第6,764,534号、に記載されている。PSAとVPSAの装置は、両方共1つ又は複数の吸着器を含んでおり、各吸着器は、吸着材から成る固定篩層(fixed sieve bed)を有しており、供給流からのガス混合物が吸着器を通して順流方向に連続して送られるときに、少なくとも1つの成分ガスを、層に吸収することによってガス混合物から分留する。1つの吸着器が吸着を実行している間に、別の吸着器では、その吸着された成分ガスがパージされる。PSA装置では、パージは、製品ガスの一部を第1の又は生成中の吸着器から抜き出して、逆流方向に別の吸着器を通して流すことによって実行される。VSPA装置では、パージは、基本的に、パージガスを吸着器から引き出すために吸着器入り口で作られる真空によって実行される。この別の吸着器がパージされると、供給流は、事前設定された時に、この別の吸着器に順流方向に送られるので、この別の吸着器は、吸着を実行する。その後、第1吸着器が、同時に、又は、3つ以上の吸着器がある場合には別の計時順序でパージされるが、それらは全て、上記の特許を読めば理解できるであろう。
【0016】
例えば、その様な装置が、医療用、工業用又は商業用を問わず様々な用途に使用するために高濃度の酸素を周囲の空気から生成するのに用いられる場合、通常、約78%の窒素と、21%の酸素と、0.9%のアルゴンと、変動する量の水蒸気を含んでいる空気が、装置に入る。基本的に、窒素の大部分は装置によって除去され、医療用には、例えば、通常は酸素を少なくとも約80%、多ければ約95%含んでいる製品ガスが生成される。
【0017】
図1に示すように、周囲の空気は、周囲の空気の供給流の取入れ口からのノイズを減らすためにフィルター付き取り入れ口21及び取り入れ口共鳴器22を通してPSA装置20に供給される。供給流は、共鳴器22から続いており、供給空気圧縮器/熱交換器アッセンブリ24によって、交互に第1と第2の吸着器30、32へ、それぞれ供給弁40と42を通して送り込まれる。
【0018】
供給流が吸着器30、32の入口30a、32aに交互に、順流方向に入ると、各吸着器は、供給流を所望の濃度の製品ガスに分留する。周囲の空気から窒素を分離するために層に用いられる吸着材は、合成ゼオライト、又は等価な特性を有する他の既知の吸着材である。
【0019】
各吸着器30、32内を順流方向に連続して流れる周囲の空気から生成される高酸素濃度製品ガスの大部分又は使用可能部分は、対応する吸着器の出口30b、32b及び逆止弁34、36を通って、製品マニホルド48へ、次いで送出制御アッセンブリ60に、説明通りに送られる。各吸着器によって生成される製品ガスの残りは、時機を計って、パージオリフィス50、適切に計時された等化弁52、及び随意の流量絞り弁53によって転じられ、他方の吸着器30又は32を通して、他方の吸着器の各出口30b、32bから各入り口30a、32aまで逆流方向に流れて、吸着されたガス、主に窒素をパージする。逆流の製品ガスとパージされたガスは、その後、吸着器から大気中に、適切な時機を計る逃し弁44、46、共通逃し配管47、及び騒音吸収マフラー49を通して放出される。
【0020】
生成されたガスの使用可能な部分が送られる制御アッセンブリ60は、通常、合成ゼオライトが装填されていて、装置出口68を通してパルス投与モードで使用者へ送り出す前の製品酸素を貯蔵するリザーバーとして働く混合タンク62と、混合タンク62の製品ガスの圧力を監視する(一般的に、例えば、極端な圧力レベルを監視し、警告信号を発動する)圧力センサー76と、使用者に送られる製品ガス圧力を調節するピストン型の圧力制御調節器64と、随意の細菌フィルター66と、パルス投与変換器72を含んでいる酸素送出システム70と、説明する節約ユニット80と、流量制御弁74と、を含んでいる。PSAで生成された酸素濃縮ガスを混合タンク62から使用者への送出するのは、後述する様に、送出システム70によって制御される。
【0021】
図2に概略的に示しているVPSA装置は、パージオリフィス50が無いことを除き、図1のPSA装置と同様の方式で作動する。その代わりに、時機を計って各逃し弁44、46を開いて各吸着器層30、32から交互に廃棄物としての窒素を取り出すために、真空ポンプ90が、共通逃がし配管47に設けられている。高酸素濃度製品ガスを生成するための周囲空気の循環と、供給及び逃し弁の作動、並びに、混合タンク62への製品ガスの供給、節約ユニット80による製品ガスの送出、その他については、図1に関して述べている。
【0022】
先に述べたように、節約装置は、患者の吸入時に、終始変わらぬ規定の1パルス投与分の酸素を、装置の選択された流量設定に依って決まる、或る連続する流量と等価な、事前に設定された時間に患者に送出する。圧力調節器、例えば64で設定された製品ガス送出圧力は、先に述べた様なソレノイド駆動流量制御弁74である酸素送出要求弁の、事前に設定された開放時間と一緒になって、一般に、使用者に送出される製品ガスの量を決める。吸入時に、所望の投与量を送出するために或る長さの時間に亘って要求弁を開くこの技法は、酸素のシリンダーを使って、PAS又はVPSA酸素濃縮器内で用いられる。
【0023】
圧力調節器は、節約装置が酸素シリンダー及び酸素濃縮器と共に使用される場合に必要であることが先行技術で知られている。酸素タンク内の圧力が幾らであっても、調節器は、時間に亘ってシリンダーが減圧する際に一貫したパルス投与量を得るために、圧力を調節して約20psig(138kPa)に下げる。PSA装置では、サイクル圧力は、例えば、約15から約26psig(103〜179kPa)まで変動し、調節器は、要求弁の圧力を、例えば約10psig(69kPa)に調節する。同様に、VPSAのサイクル圧力は、約−25から約10psig(−172〜69kPa)まで変動し、要求弁では約3psig(21kPa)に調節される。
【0024】
更に、装置の使用者に送出される実際の酸素の量は、弁が開いている時間の長さと、ガスが供給されている時間におけるガスの作動温度と、使用者の呼吸速度を含む、他の因子の関数である。例えば、高温では、どの様な所与の期間でも、より少ない量の酸素が使用者に送出される。同様に、特に、製品ガス圧力に影響を及ぼすより速い呼吸速度によって低圧になっている場合は、より少ない量の酸素が使用者に送出される。ここに記載されている既知の先行技術とは異なり、本発明は、理想ガスの法則に基づいて実際の酸素量が変動する固定された所定送出時間とは対照的に、作動圧力及び/又は温度に基づいて、実質的に一貫した所定量の酸素を送出するためにパルス投与時間を制御することのできる酸素濃縮器20を備えている。
【0025】
本発明によれば、パルス投与量は、特定のシステム特性又はシステム特性の組み合わせの監視に基づいて制御され、これらの手段によって、装置に重量を加えることになる圧力調節器の必要性を無くしている。本発明の或る実施形態では、所望量の酸素を送出するためのパルス投与の長さは、吸入開始時の、事前に計算されている予測可能なシステム圧力次第で決まる。第2の実施形態では、パルス投与の長さは、製品ガスの実際の温度及び/又は実際の圧力を吸入時に、限定するわけではないが望ましくは混合タンク62又はその付近で測定して求められる。
【0026】
本発明の第1の実施形態は、本発明により送出される酸素の量が、装置の製造の際に事前測定することができ従ってPSA又はVPSAの作動サイクルの様々な段階で使用する際に「予測される」、混合タンク62における体積と圧力の関数であるという事実を利用しており、従って、圧力調節器の必要が無い。圧力調節器を必要としない装置は、装置をできるだけ小さく軽くするように努めている点で非常に有用である。この実施形態では、上記の一貫した酸素の投与量は、吸入が検知されるときの作動サイクル内の正にその時点で要求弁が開いている時間の長さを制御することによって送出される。この実施形態によれば、圧力センサー変換器84は、装置が正常に機能していない場合に警告信号を作動させるのに用いられるが、パルス投与の長さを決めるのに使う必要は無い。
【0027】
例えば、2つの吸着器層を備えているPSAは、全体の時間経過が17秒である圧力スイング吸着サイクル、又は、各層毎のその層の酸素生成段階の間が約8.5秒であるサブサイクルを有している。0.85秒の時間間隔を選択することによって、各作動層の酸素生成サブサイクルは、10個の異なるサイクル点に分割される。次の表1は、2層式PSA装置内のシステム圧力の変動を、両方の層で酸素生成サブサイクルを1サイクル回すのに必要な17秒に亘って示している。以下に示しているシステム圧力対時間は、PSA装置の周期的な運転を通して一貫して、繰り返し再現される。
【0028】
【表1】

パルス投与体積の酸素濃縮製品ガスは混合タンク62から使用者に送出されるが、要求弁74の作動時間を求めるために、この混合タンク62の圧力が、例えば、測定される体積圧力変動範囲として、21psig(約145kPa)未満、21−23.9psig(約145〜166kPa)、24−26.9psig(約166〜186kPa)、27−29.9psig(約186〜206kPa)、30psig(約206kPa)以上に亘る5つの範囲に分割される。これらの時間と圧力の範囲を使って、データ表は、作動サイクル内10個の各選択された点それぞれについて、各点毎に200ミリ秒の初期公称時間に基づいて作成される。従って、要求弁が、1パルス投与分を送出するため200ms公称時間に亘って開く場合は、実際のパルス投与体積は、弁が開いていたサイクル点とパルス投与体積圧力に基づいて、全て測定される。例えば、装置が所望のパルス投与体積26.25mlを生成するように設定され、そのサイクル点での測定されたパルス投与体積が24ml(所望の26.25mlより9%少ない)の場合、そのサイクル点の時間は200msから218msに変わり、それに伴って弁の開放時間が調整される。各所望の設定に対するデータ表を完成させるために、このプロセスは、10個の各サイクル点に対する正しい時間が求められるまで継続される。表2は、流量設定が3LPM(リットル毎分)の連続する酸素供給と等価な場合であるが、この表から分かるように、10個の各サイクル点で計算された要求弁の開放時間を列挙した最終データ表は、以下の通りである。
【0029】
【表2】

表2でパルス投与時間が決められるのと同じ方法で、本技法は、装置で用いられる他の選択可能な流量設定に関して計算されるパルス投与時間の別のデータ表を作るために用いられる。
【0030】
表3に示されている約12秒のサイクル時間と3つの流量を有する代わりの装置は、2004年10月12日出願のMcCombsらによる同時係属中の米国仮特許出願第60/617,834号「小型で持ち運び可能な酸素濃縮器」に記載されている発明に従って作られており、同出願の開示全体を参考文献としてここに援用するが、この装置は、表4に示している様に、ミリ秒の弁開放時間に関するルックアップテーブルを有している。
【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

望ましくは、装置の電力効率を大幅に改良するため、圧縮器/熱交換器アッセンブリ24は、各流量設定毎に異なる速度、例えば同時係属中の米国仮特許出願第60/617,834号に開示されている装置に従って、1LPMの等価連続流量では約1750rpm、2LPMの等価連続流量では約2500rpm、3LPMの等価連続流量では約3200rpmの速度で作動するようにプログラムされる。次に、表の全ては、使用中にアクセスされるのに備えて酸素濃縮器のマイクロプロセッサ82に記憶される。マイクロプロセッサ82は、基本的に装置の全作動構成要素の作動順序を制御するので、本来、PSAサイクルに関する情報を備えている。マイクロプロセッサは、PSAの作動サイクルを監視し続けているので、圧力変換器72が吸入を検知すると、選択されている流量設定をサイクル点に対する混合タンクでの所定の体積圧力と組み合わせ、その時点で、マイクロプロセッサの論理回路は、対応する設定に関するデータ表を調べて、要求弁74を、表に記載されている対応する時間の長さだけ開く。本発明のこの実施形態に依る、圧力調節器を備えていない制御アッセンブリ60の概略図を、図3に示している。
【0033】
マイクロプロセッサ82は、更に、先に述べた様に、そしてサイクル時間によって決められるように、要求弁74を開いたままに保持する時間の長さを画定するデータ表の全データを含むよう、事前にプログラムされている。装置の設定と、パルス投与変換器72からのアナログ信号の受信とに依って、マイクロプロセッサ82は、適切なデータ表を参照し、データ表に定められている因子に従って、要求弁74を作動させる働きをする。
【0034】
図4は、この実施形態による制御回路を示すブロック図である。分かり易くするために、この図は、吸入を検知する圧力変換器72と、作動サイクルの時点とルックアップテーブルの両方の情報が入っているマイクロプロセッサ82と、要求弁74と、だけを含んでいる。一般に、吸入圧力変換器72は、吸入サイクルの開始を示す圧力の変化を検出する働きをする。吸入を検知すると、吸入圧力変換器72は、マイクロプロセッサ82が処理するのに適した信号を送信し、マイクロプロセッサは、そのルックアップテーブルにアクセスし、要求弁74に適切な時間長さ作動するように信号を送る。図4は、本発明による制御回路を示すブロック図を提供しているが、具体的な回路要素とマイクロプロセッサ論理の詳細は、当業者であれば、例えば、米国特許第6,764,534号に記載されている回路を参考にして決めることができる。
【0035】
図5と図6は、本発明の第2の実施形態による制御回路60を示しており、制御回路60は、実際の作動圧力及び/又は実際の作動温度を使って、使用者に送られる高酸素濃度製品ガスの投与量を決める。分かり易くするために、図5は、吸入を検知する圧力変換器72と、温度センサー又はサーミスタ75によって吸入時点で検知される温度のアナログ信号を読み取り、それをデジタル信号に変換するための温度検知回路77と、混合タンクの圧力センサー84であって、圧力センサー84の出力がデジタル信号でない場合には圧力検知回路78がデジタル信号に変換するようになっている圧力センサー84と、2つのデジタル信号を読み取るマイクロプロセッサ82と、圧力変換器72に応えてマイクロプロセッサ82により駆動される制御要求弁74と、だけを含んでいるブロック図である。圧力変換器72が吸入を検出すると、マイクロプロセッサ82は、温度センサー75と圧力センサー84それぞれから来たデジタル信号を読み取る。先に述べた様に、これらのセンサーは、図6に示している様に、装置内の幾つかの場所の内の1つ、例えば、混合タンク62の出口又は入口で測定を行う。圧力センサー84と温度センサー75は、別々の器具として描いているが、両方のパラメーターを読み取ることができる1つの監視装置とすることもできる。更に、図5は、実際の温度と実際の圧力の両方を使用して、パルス投与の長さを制御する可能性を示しているが、本発明によれば、それらのパラメーターの一方だけを使ってパルス投与を制御するか、又は、第1実施形態で説明した様に、温度入力を、事前に計算されたシステム圧力入力と組み合わせて使用することも考えられる。
【0036】
例えば、温度の変化だけを使用して、パルス投与の長さを制御するのが望ましい場合、以下に更に詳しく説明する様に、マイクロプロセッサ82は、温度検知回路77によって生成される信号を受信し、ガスが吸入される時間がどの温度範囲であるかを判定し、適切なデータ表から、選択されている等価流量にとって所定量の酸素を送出するために要求弁を開いたままにしておく必要のある時間を求める。本発明のこの具体的な実施形態では、第1実施形態で説明した様に、所定数の各圧力範囲と、濃縮器にとって選択可能な各設定とに対して、例えば3つの温度範囲が定義されている。3つの温度範囲それぞれは、要求弁が開いたままであるか、或いは、装置に対して選択された流量に従って事前に設定された弁の開放時間に対応する、指定時間を有している。更に、装置は、例えば、3つの選択可能な流量設定を有しているので、要求弁が開いたままである時間に関するルックアップテーブルも、それぞれの流量設定毎に具体的に定義されている。
【0037】
5つの流量選択器設定を有する濃縮器を示している表5で分かる様に、温度検知回路が特定の流量設定に対し約15℃以下の温度を読み取ると、要求弁74は、その特定の温度範囲に対して定義されている期間は開いたままになる。この期間は、マイクロプロセッサによって適切なデータ表から受け取られる。温度が約15℃より高く、約30℃未満である場合、その特定の温度範囲に対するルックアップテーブル内の要求弁74パラメーターにアクセスし、温度が約30℃以上である場合は、その特定の温度範囲に対する要求弁74パラメーターにアクセスするなどする。一般に、温度が上がると、結果として、要求弁74が開いたままになる時間、即ちパルス投与時間は長くなる。
【0038】
【表5】

勿論、表5は、例えば、濃縮器内のシステム圧力も流量を調節するのに用いられる場合は、特定の圧力範囲に対して機能するにすぎない。従って、圧力調節器が省かれている第1の実施形態又は第2の実施形態による場合は、所定数の温度範囲のそれぞれ、及び所定の圧力範囲のそれぞれにルックアップテーブルを作ることも有用である。これは、圧力範囲に関する圧力が、第1の実施形態での様に事前に計算された圧力であるか、又は圧力センサー76によって測定される実際の圧力である場合である。従って、他の所定の圧力範囲には追加の温度表が提供される。その結果、各温度範囲、圧力範囲、及び流量設定に対する、三次元マトリックスのルックアップテーブルになる。
【0039】
表からの全ての情報は、装置の使用中にアクセスできるようにマイクロプロセッサ内に記憶されている。マイクロプロセッサは、選択された流量設定を監視し、温度検知回路77が受信するアナログ信号に基づいて、ガスの適切な温度範囲を判定する。吸入が検知されると、マイクロプロセッサ論理は、対応する設定に関するデータ表を調べて、要求弁を、圧力センサー76によって検出される適切な圧力範囲に対し表に記載されている対応する時間長さだけ、開く。
【0040】
マイクロプロセッサ82は、先に述べた様に、所与の圧力範囲内の各温度範囲、又はその逆で、要求弁74を開いたままに保つ時間の長さを決める全てのデータ表が入っているように事前にプログラムされている。流量選択器設定と、温度センサー75及び圧力センサー84から来たデジタル信号の受信とに基づいて、マイクロプロセッサ82は、適切なデータ表を参照し、データ表に記載されている時間値に従って要求弁74を作動させる。図5は、本発明の第2の実施形態による制御回路を表すブロック図を提供しているが、具体的な回路要素及びマイクロプロセッサ論理の詳細は、当業者であれば、米国特許第6,764,534号に記載されている回路、又は図7a−dを参照すれば決めることができる。図7a−dは、回路を四分割したものであり、各四分割図内の共通の要素を参考にすれば連結することができる。
【0041】
図7a−dに概略的に示しているように、或る型式の温度検知回路77は、回路板(図示せず)に追加されている抵抗分割器ネットワークで構成されている。具体的には、温度検知回路77は、抵抗分割器ネットワークR86、R87と、10K負温度係数サーミスタを含んでいる。作動時、マイクロプロセッサ82は、吸入が検出される度に温度検知回路77によって作られる電圧を読み取る。例えば、一定の電流とすれば、ユニット温度が上がると、サーミスタの抵抗も上がり、その結果、出力電圧も高くなるが、これをマイクロプロセッサが適切な表で読み取って所望の投与時間を作り出す。
【0042】
デジタル信号に変換するのに別体の圧力検知回路78を必要としない或る型式の圧力センサー84が図7a−dに概略的に示されており、このセンサーは、混合タンクの出力のガス圧力を測定して信号を作り出す働きをし、この信号をマイクロプロセッサ82がアナログ−デジタル変換器ポートを介して読み取る。マイクロプロセッサ82は、圧力センサー84のアナログ出力と、提供される表とに基づいて適切な圧力範囲を判定するようにプログラムされている。更に、マイクロプロセッサ82は、混合タンクの異常な低及び高圧力レベルを識別して、システムの故障を識別するのにも用いることができる。例えば、圧力センサー84が約2psi(約14kPa)以下の圧力を読み取ると、マイクロプロセッサ82は、システムの故障を信号で知らせる。システムの圧力が約36psi(約248kPa)以上であれば、同様の故障が信号で知らされる。
【0043】
投与される酸素の量は、システム内の酸素の圧力に関係付けられたパルス投与時間の関数であると説明してきたが、パルス投与時間を決めることになる酸素圧力は、圧力及び温度の様な周囲の状況、並びに、PSA又はVPSA装置につきものの圧力の変動、の両方に依る。従って、更に好適な実施形態では、制御アッセンブリの作動は、温度/圧力入力と体積圧力との相互参照によって決められる。
【0044】
流量選択器の設定(LPMで)は、先の実施形態では基本的に同じでなので、具体的なパルス投与量の決定には、まだ人間の要素が残っている。第1の実施形態では、パルス投与値を計算するのに基本的に用いられるデータは、200msの公称パルス投与量に対する補正係数の形をしている。しかしながら、第2の実施形態では、公称パルス投与量はもはや基本点として使用されず、投与量は、マイクロプロセッサが実際の圧力及び温度の入力に基づいて実際のパルス投与時間を計算して決める。従って、第2の実施形態では、マイクロプロセッサ82は、温度センサー75と圧力センサー84から来る基準温度及び圧力の情報を連続的に受信する。マイクロプロセッサ82は、装置使用中の時間に亘る基準圧力及び温度を調整するために、これらの値の比較的短い時間履歴を平均しなければならないので、それらの値は、絶えず測定されるのが望ましい。この基準値のセットを基に、マイクロプロセッサは、マイクロプロセッサメモリ内に記憶されている指定の表から適切な基線パルス投与量を知る。吸入圧力変換器72が吸入による圧力降下を検知すると、マイクロプロセッサ82は、これを検知し、パルス投与量変換器84を介してその瞬間の体積圧力を読み取る。マイクロプロセッサは、この値を使って、PSA又はVPSAサイクルで連続して変化する体積圧力に基づく個別の表のセットから、補正係数を探し出し、その補正を適用して、最終的に必要なパルス投与量を作り出せるようになっている。
【0045】
例えば、表2は、200msの公称値に基づく一連のパルス投与時間で表されている。しかしながら、これらの値は、単に、増倍係数で表されており、下の表6に示されている様に、どの様な公称値にでも理論的に適用される。
【0046】
【表6】

先の実施形態と同様に明白なように、異なる流量設定に対応するこれらの表が数多く必要である。
【0047】
以上、本発明を特定の実施形態に関連付けて説明してきたが、当業者には理解頂けるように、本発明の範囲から逸脱すること無く、様々な変更を加え、等価物をその要素に置き換えることができる。具体的な状況又は材料に適合させるため、本発明の範囲から逸脱すること無く、本発明の教示に多くの修正を施すことができる。例えば、マイクロプロセッサが十分なメモリを有している場合は、実際の温度と圧力を組み込むことによって、パルス投与の長さを決めることもできる。更に、本発明は、米国特許第6,764,534号に開示されている濃縮器の多くの有用な特徴を組み込むこともできる。
【0048】
従って、本発明を、本発明を実施するために考えられた最良のモードとして開示されている具体的な実施形態に限定する意図はなく、本発明は、特許請求の範囲に述べる内容の範囲及び精神に入る全ての実施形態を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明が組み込まれる圧力スイング吸着(PSA)装置の概略図である。
【図2】本発明を組み込む真空圧力スイング吸着(VPSA)装置の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態用の制御アッセンブリを示す部分概略図である。
【図4】作動サイクル中の吸入が検知される時点に基づいて、パルス状の投与の長さを決めるための制御回路のブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態用の制御回路のブロック図であり、この制御回路によって、パルス状の投与量が、温度及び/又は圧力の変動に合わせて制御される。
【図6】本発明の第2の実施形態用の制御アッセンブリを示す部分概略図である。
【図7】図7a−dは、全体で、本発明に用いられる制御回路の概略図を形成している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度の酸素を有する製品ガスを生成するための生成手段と、要求の開始のみに応じて出口を通して使用者へ送出される前記製品ガスの所望量を制御するための制御手段と、前記製品ガスを前記出口へ送出するための送出手段と、前記出口又はその付近における前記製品ガスの温度及び/又は圧力を判定するための判定手段と、を備えている装置において、
前記制御手段は、実質的にその量の前記製品ガスを前記使用者へ供給する時間の長さを設定するために前記判定された温度及び/又は圧力を利用する利用手段を含んでいる、装置。
【請求項2】
前記生成手段は、作動サイクルの各段階に亘る予測可能な圧力の変動時に周囲の空気から前記製品ガスを生成し、前記利用手段は、要求が開始される作動サイクルの段階から圧力を判定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記作動サイクルの段階に特有の時間長さが含まれている一式のルックアップテーブルを備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ルックアップテーブルは、マイクロプロセッサに常駐している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記生成手段は、圧力スイング吸着によって前記製品ガスを生成する、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記製品ガスを供給するための、そして複数の圧力範囲それぞれに対する複数の温度範囲に固有の、所定の時間長さが入っている少なくとも1つのルックアップテーブルのセットを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ルックアップテーブルは、マイクロプロセッサに常駐している、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記製品ガスを供給するための、そして複数の圧力範囲に固有の、所定の時間長さが入っている少なくとも1つのルックアップテーブルのセットを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ルックアップテーブルは、マイクロプロセッサに常駐している、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記製品ガスを供給するための、そして複数の温度範囲に固有の、所定の時間長さが入っている少なくとも1つのルックアップテーブルのセットを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ルックアップテーブルは、マイクロプロセッサに常駐している、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
高濃度の酸素ガスを生成し、前記酸素ガスを出口を通して使用者に送出するための手段を有する装置によって生成された製品ガスの所望の投与量を決めるための方法において、前記使用者による吸入を検知する段階と、吸入が検知された時間における前記製品ガスの前記温度及び/又は圧力を判定する段階と、前記製品ガスの所望の投与量を、前記判定された温度及び/又は圧力に基づく時間長さに亘って前記使用者に送出する段階と、を含む方法。
【請求項13】
前記製品ガスの所望の投与量を送出する前記段階の前に、要求が開始される時間に前記製品ガスの所望の投与量を送出するのに必要な時間を計算する段階と、前記送出段階のためにアクセスされる前記計算された時間の参照表を作成する段階を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記計算は、前記サイクルを複数の所定の範囲に分割する段階と、前記製品ガスを任意の定時間供給して、前記サイクル範囲のそれぞれで、前記定時間中に送出される製品ガスの実際の圧力と実際の体積の両方を測定する段階と、それぞれのその様なサイクル範囲で前記ガス送出時間を再計算して、サイクルのその時点で要求が開始されたときに、所望の製品ガスの投与量を送出する段階と、前記サイクル範囲と再計算された時間から前記参照表を作成する段階と、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高濃度の酸素を有する製品ガスの投与量を生成するための生成手段と、要求の開始のみに応じて使用者への前記投与量の供給を制御するための制御手段と、を有する装置であって、前記製品ガスを生成するための前記生成手段は、実質的に一貫して連続している作動サイクルで圧力変動が生じている前記装置のための方法であって、所望の実質的に均一な投与量を前記使用者に供給するのに必要な時間長さを求める方法において、
前記作動サイクルの時間全体を所定の範囲に分割する段階と、前記製品ガスを任意の定時間供給して前記サイクル範囲のそれぞれで前記定時間中に送出される製品ガスの実際の圧力と実際の体積の両方を測定する段階と、その様なサイクル範囲のそれぞれについて前記ガス送出時間を再計算してそのサイクル範囲で要求が開始されると前記所望の製品ガスの投与量を送出する段階と、参照表を作成し、それによって前記サイクル範囲の中から適切な送出時間を読み取る段階と、を含む方法。
【請求項16】
高濃度の酸素を有する製品ガスの所望の投与量を生成し、前記製品ガスを、変動する圧力及び温度で出口を通して使用者に送出するための手段を有する装置で用いられる方法であって、
前記使用者による吸入を検知する段階と、前記吸入が検知されたときに供給される前記製品ガスの前記温度を判定する段階と、前記吸入が検知されたときの前記ガスの前記圧力を判定する段階と、前記製品ガスを、前記判定された温度と圧力に基づく時間長さに亘って前記使用者に送出する段階と、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【公表番号】特表2008−517638(P2008−517638A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536759(P2007−536759)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/036273
【国際公開番号】WO2006/044278
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(303012504)エアーセップ・コーポレーション (6)