説明

可搬式瞬間電気湯沸給湯装置

【課題】災害時に、家屋等に電気温水器が据え付けられていない場合であっても瞬時に温水を供給することが可能であり、より効果的な救命救護活動及び避難住民の支援活動を効率良く行うことができるとともに、温水を使用可能な状態に準備する作業とは独立した覆いの設置作業を要することなく、温水を使用する際に外部からの視線を遮ることが可能な可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を提供する。
【解決手段】可搬型のケースCと、ケースC内に収容された且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて加熱可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体3とを備え、ケースCの少なくとも一部が、瞬間電気湯沸給湯装置本体3から温水を吐出可能な使用可能状態(A)において温水を使用する者の少なくとも体の一部を隠す遮蔽部材として機能する可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害現場や医療現場等で活用可能な瞬間電気湯沸給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天災や人災(核物質、生物剤、化学剤に起因するNBC災害を含む)等の災害が発生した現場において、治療活動や避難生活(被災生活)のために水ではなく温水(湯)が必要とされる場面が多々ある。
【0003】
そこで、各家庭に据え付けている電気温水器を利用して、災害時にも温水を確保できるようにすべく、ヒートポンプ給湯器等の貯湯式温水器を用いて、感震器等の災害検知手段で地震や火事などの災害の発生を検知した場合には、貯湯式温水器における貯湯タンク内の湯温を低温且つ均一になるように制御する給湯システムが考えられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の給湯システムは、各家庭にこの給湯システムに適用可能な貯湯温水器を据え付けていることが大前提となり、また、貯湯タンク内の温水を、当該貯湯温水器を据え付けている家庭以外の避難場所や救助場所に搬送する場合には多大な手間と時間が掛かり、緊急時の使用が困難である。そもそも、このような災害時用給湯システムに用いられる貯湯温水器自体が災害によって破損・故障した場合には、役に立たない。なお、特開2006−153378号公報等には、大型地震に対しても充分な支持強度が得られるよう案出された電気温水器の設置構造及び設置方法が開示されているものの、構造の複雑化及び設置作業の煩雑化を招来し、実用性に欠ける。また、貯湯タンクを備えた貯湯温水器であれば、貯湯タンク内の湯が冷めた場合には再度沸かし直す作業が必要となり、使用せずにタンク内で放置し続けた水は菌の発生等により使用に耐え得ない状態になり、廃棄せざるを得ない。
【0006】
また、災害発生後に災害現場に貯湯温水器を搬入して設置する態様も考えられるが、貯湯温水器自体が大型且つ重量であるため、一刻も早い温水の供給が要求される災害現場にこのような貯湯温水器を搬入して設置することは現実的ではない。
【0007】
また、被災地等で温水を使用する場面としては、被災者の患部を洗浄する場合や、温水を使用して体等を洗う場合が想定される。このような際には、外部からの視線を遮るために使用者の周囲にシャワーテント等の覆いを設置することがある。しかし、このような覆いを設置する作業は、電気温水器の設置作業や温水を使用可能な状態に準備する作業とは独立して行われるものであり、また複数人での作業になることから迅速な治療活動、救援活動に支障を来すおそれがある。なお、温水供給装置付のシャワーテント等も考えられているが、その組み立てには数人での作業が求められ、被災地であっても比較的平らな地面が確保された避難所等に設置することが前提とされている。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ライフライン崩壊等の災害時に、家屋等に電気温水器が据え付けられていない場合であっても早急に温水を供給することが可能であり、より効果的な救命救護活動及び避難住民の支援活動を迅速且つ効率良く行うことができるとともに、温水を使用可能な状態に準備する作業とは独立した覆いの設置作業を要することなく、温水を使用する際に外部からの視線を遮ることが可能な可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置は、可搬型のケースと、ケース内に収容され且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて電気的に加熱し、外部に温水を吐出可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体とを備えてなり、ケースの少なくとも一部が、瞬間電気湯沸給湯装置本体から温水を吐出可能な使用可能状態において温水を使用する者の少なくとも体の一部を隠す遮蔽部材として機能することを特徴としている。ここで、「可搬型のケース」とは、人間が一人で引っ張る、押す、持ち上げるといった動作で持ち運ぶことができる重量、大きさのケースを意味する。
【0010】
このように、瞬間電気湯沸給湯装置本体を人手で持ち運び可能な可搬型のケース内に収容することにより、装置全体のコンパクト化を実現し、家屋等に電気温水器が据え付けられていない災害現場や、消防車両や救急車両、特に大型車両が進入し難い災害現場にも容易に持ち込むことができ、救命救護活動及び被災住民の支援活動を迅速且つ効率良く行うことができる。しかも、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置では、ケースの少なくとも一部が、瞬間電気湯沸給湯装置本体から温水を吐出可能な使用可能状態で使用者の少なくとも体の一部を隠す遮蔽部材として機能するため、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を使用可能な状態にするための準備作業とは別にシャワーテント等の覆いを設置する大掛かりな作業が不要になり、遮蔽部材で仕切られる領域内において他者の視線を遮った状態で、患部の洗浄処理や体を洗う行為をすることができる。このように本発明に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置は、被災地等では確保が困難な被救助者や被災者のプライバシー領域を容易且つ迅速に提供することができ、実用性に優れた装置である。また、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置では、外部から供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体によって瞬間加熱するように構成しているため、貯湯タンクが不要となり、装置全体のコンパクト化及び軽量化を図ることができるとともに、貯湯タンクを備えた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、貯湯タンク内の湯が冷めた場合の再加熱処理、或いは使用せずにタンク内で放置し続けた水の廃棄処理が要求されるという不具合を解消することができる。また、消防、警察、自衛隊、公共施設や家庭に備えておいてもコンパクトなので便利であり、水を貯めないので腐ることもなく、菌の発生等を点検する必要もない。また、災害時のみならず、例えば病院や介護施設等でも、患者や介護対象者のベッド脇などで温水を使うことができれば非常に便利であるが、現状では、給湯室から温水を運んだり、患者等をシャワー室や風呂へ運ぶというような多大な手間が掛かる。このような問題も、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を利用すれば、解決することができる。なお、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置は、給水車や給水栓、水道の蛇口等から水の供給を受けたり、電気工作車や発電機、建物の電気コンセント等から電気の供給を受ければ使用することができる。特に、ライフラインが崩壊している災害現場では、給水車や電気工作車を利用すればよく、ライフラインが崩壊していない場所では、ライフラインの一部である給水栓や水道の蛇口、建物のコンセントを利用すればよい。
【0011】
また、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置では、ケースとして、ケース本体と、瞬間電気湯沸給湯装置本体を収容すべくケース本体に形成した開口部を開閉可能に被覆し得る蓋とを備えたものを適用し、ケース本体又は蓋の少なくとも何れか一方を遮蔽部材の一部として機能させることによって、ケースを構成する部材を有効利用して遮蔽機能を発揮する装置を提供することができる。なお、ケース本体のみを遮蔽部材の一部として機能させる態様、蓋のみを遮蔽部材の一部として機能させる態様、ケース本体及び蓋を遮蔽部材の一部として機能させる態様、これら何れの態様であっても構わない。さらに、蓋によってケース本体の開口部を被覆した不使用時や被災現場への携行時にケース内に収容されている瞬間電気湯沸給湯装置本体が露出する事態を蓋によって防止することができるとともに、使用可能状態においてこの蓋の少なくとも一部をケースと共に接地させることで、より安定した自立姿勢を維持した状態で温水を被災者や医療従事者、救護従事者に提供することができる。
【0012】
特に、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置において、少なくとも使用可能状態において自立可能に構成すれば、災害現場でこの可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を据え付ける作業や据え付けるための部材が不要になり、例えば瓦礫の間などの比較的狭い空間に置き、自立させて使用することができるため、緊急を要する救命救護活動及び被災住民に対する支援活動を迅速に開始することができる。また、瞬間電気湯沸給湯装置本体から温水を吐出不可能な不使用状態においても自立可能に構成すれば、保管時や不使用時でも安定した姿勢を保持することができ、好適である。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明は、使用者自身の手で直接持ち運び可能な瞬間電気湯沸給湯装置を提供するという斬新且つ有用な着想に基づくものものであり、家屋等に電気温水器が据え付けられていない災害現場であっても瞬時に温水を作って被災者等に供給することができ、より効果的な救命救護活動及び避難住民に対する支援活動を迅速且つ効率良く行うことができるとともに、ケースの少なくとも一部を遮蔽部材として機能させることによって、使用者の少なくとも体の一部を隠すことができ、シャワーテント等の大掛かりな覆いを組み立てたり、据え付ける作業を要することなく、温水の使用時に外部からの視線を遮ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の全体外観図。
【図2】同実施形態に係る不使用状態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の全体外観図。
【図3】同実施形態に係る不使用状態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の全体外観図。
【図4】図1のα方向矢視図。
【図5】同実施形態に係る不使用状態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の図4対応図。
【図6】同実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の携行方法を示す図。
【図7】同実施形態に係る使用可能状態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置のレイアウト例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、図1〜図5に示すように、ケース本体1及び蓋2を有する可搬型のケースCと、ケースC内に収容された瞬間電気湯沸給湯装置本体3とを備えたものである。なお、図1は使用可能状態(A)にある可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの全体外観図であり、図2及び図3は不使用状態(B)にある可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xをそれぞれ前方側、後方側から見た全体外観図である。また、図4は図1のα方向矢視図であり、図5は不使用状態(B)にある可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの図4対応図である。以下の説明では、使用可能状態(A)において瞬間電気湯沸給湯装置本体3が露出する側を前方とする。
【0017】
ケースCは使用者自身が持ち運び可能なものである。ケース本体1は、前面に形成した開口部1Kを通じて前方に開放可能な内部空間を有する概略直方体状をなし、底面部1B(下向き面)にキャスタ11を設けている。本実施形態では、底面部1Bのうち奥行き方向中央部よりも背面部1R側に寄った位置に左右一対のキャスタ11を設けている(図3及び図5参照)。各キャスタ11の回動を規制するロック状態と回動を許容するアンロック状態との間で切替可能なロック機構を各キャスタ11に付帯させてもよい。また、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置X全体が後方に所定角度傾斜した場合に他の部分よりも優先して地面等に接し、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの転倒を防止する転動防止部を起立姿勢(垂直ないし略垂直姿勢)における各キャスタ11の回動を規制しない位置に設けることもできる(図示省略)。ケース本体1の背面部1Rには、上方に引き出し自在な取手部12(ハンドル)を装着している。さらに、ケース本体1の背面部1Rには、給水用コネクタ13及び電源コネクタ14を所定距離離間させて設けている(図3参照)。各コネクタ(給水用コネクタ13、電源コネクタ14)には専用のカバー(図示省略)を脱着可能に取り付けることができ、これらにより各コネクタ(給水用コネクタ13、電源コネクタ14)内への埃や瓦礫の侵入を防止している。また、図示していないが、ケース本体1の両側面部1Sに使用者が手を掛けることが可能な手掛け部を形成したり、ケース本体1の上面部1Tに使用者が握ることが可能なグリップ部を設けることもできる。
【0018】
本実施形態では、ケース本体1の開口部1Kを開閉可能に被覆する蓋2を、ケース本体1の側面部1Sにおける前縁部にそれぞれヒンジHで連結した左右一対の扉21(いわゆる観音開きタイプの扉21)によって構成している。本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、各扉21によってケース本体1の前方開口部1Kを閉じた不使用状態(B)において、扉21の前面部21Fとケース本体1の前面(次に説明する瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3F)とに間に、例えばシャワー32やその他の備品等を収容できる備品収容空間XSが形成されるように扉21の形状を設定している(図5参照)。また、各扉21の底面部21B(下向き面)に、他の領域よりも下方に突出した接地部22を設けている。本実施形態では、不使用状態(B)において底面部21Bのうち奥行き方向中央部よりも後方側に寄った位置に左右一対の接地部22を設けている(図2及び図5参照)。これにより、使用可能状態(A)において接地部22が扉21の底面部21Bのうち奥行き方向中央部よりも前方側に寄った位置になり、キャスタ11と奥行き方向に近寄り過ぎることを防止し、使用可能状態(A)にある瞬間電気湯沸給湯装置本体3全体の安定した姿勢を維持することができる(図1及び図4参照)。
【0019】
本実施形態では、蓋2(扉21)の高さ寸法をケース本体1の高さ寸法と同一ないし略同一に設定し、蓋2(扉21)の奥行き寸法をケース本体1の奥行き寸法よりも小さく設定している。なお、不使用状態(B)において蓋2(扉21)が不意に開くことを防止するロック部材(図示省略)を蓋2やケース本体1に設けることができる。また、ケース本体1や蓋2(扉21)の素材としては、軽量性や強度に優れた軽合金が好適であるが、他の素材から形成したケース本体1や蓋2を適用してもよい。
【0020】
瞬間電気湯沸給湯装置本体3は、ケース本体1の内部空間に緊密ないし略緊密に収容可能な外形寸法を有し、内部に、ヒータと、給水用コネクタ13に連通する給水経路とを設け(図示省略)、前面部3Fに、給水経路の終端となる吐出口31を設け、給水用コネクタ13から給水経路内に送られる水を、ヒータの加熱作用によって瞬間的に加熱し、この加熱した熱水と水とを混合させた温水(使用者が設定した適宜温度の温水)を吐出口31から吐出可能なものである。この瞬間電気湯沸給湯装置本体3は、適宜の固定手段によりケース本体1内に一体的に取り付けられている。本実施形態では、図1及び図4に示すように、先端部にシャワー32を取り付けたホース33を吐出口31に接続しており、前面部3Fにシャワー32を保持するシャワーホルダ34を設けている。さらに、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3Fには、電源スイッチ35と、温度調節部(摘み部)36とを設けている。
【0021】
次に、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの使用方法及び作用について説明する。
【0022】
不使用時は、左右一対の扉21によってケース本体1の前面開口部1Kを閉じた不使用状態(B)にしておく。そして、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを起立姿勢にすると、扉21に設けた接地部22が地面等に接触することによりキャスタ11の転動を規制し、これらキャスタ11と接地部22とによって支持され垂直ないし略垂直に自立した姿勢となる(図5参照)。
【0023】
このような可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等へ携行する際は、図6に示すように、取手部12を上方へ引き出し、この取手部12を握って可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを後方へ傾斜させる。すると、接地部22が地面や床等から離間して、この状態で取手部12を引っ張ることによってキャスタ11が回転可能な状態になり、携行者は可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等へ携行することができる。
【0024】
このように、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、携行者が取手部12を握って進行方向へ引っ張ることにより、キャスタ11を回転させながら所望の場所へ携行することが可能であるため、車両等が進入できない狭い場所にも使用者自身の比較的軽い操作力(引っ張る力)で携行することができる。なお、上述した手掛け部に手を掛けた状態やグリップ部を掴んだ状態で可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを持ち運んだり、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置X全体を抱き抱えるようにして携行することもできる。
【0025】
そして、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを必要とする被災現場等に携行した後は、各扉21をそれぞれ左右に開けてケース本体1の前面開口部1Kを開放した使用可能状態(A)にする(図1参照)。この使用可能状態(A)において、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面3Fが露出するとともに、各扉21に設けた接地部22が地面等に接して、これら接地部22とキャスタ11とにより安定した支持状態を維持することができる。本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xでは、不使用状態(B)と使用可能状態(A)との切り替え時に、各扉21をヒンジHの軸回りに最大180度ないし略180度回転可能に構成している。なお、各扉21をヒンジHの軸回りに最大限回転させた際に、扉21がケース本体1に当たった際の衝撃を緩和する緩衝部材を、扉21又はケース本体1の少なくとも何れか一方に設ければ緊急時に扉21を急いで開けても過度の衝撃力が扉1やケース本体1に作用したり、大きな衝撃音が発生することを可及的に抑制することができる。
【0026】
引き続き、各コネクタ(給水用コネクタ13、電源コネクタ14)のカバーを取り外して、給水用コネクタ13に、例えば水槽付ポンプ車又はタンク車のホースを接続するとともに、電源コネクタ14に、例えば救助工作車又は電源車からの電源コードを接続する。次いで、電源スイッチ35をオフ状態からオン状態に切り替える操作を行い、温度調節部36を操作して適宜の温度に設定する。以上の操作によって、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、給水用コネクタ13から給水経路内に供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体3内においてヒータにより瞬間加熱するとともに、この加熱した熱水と、直接或いは給水源から送られてきた水とを吐出口31近傍に設けた混合弁又は混合栓等の混合手段(図示省略)で混合することにより設定温度に調節し、この温度調節した温水を吐出口31を介してシャワー32(具体的にはシャワー32の噴射口)から放出する。なお、本実施形態では、シャワー32にスイッチ32aを設け、このスイッチ32aに対する所定の操作によって温水を噴射する状態と噴射停止状態との間で切替可能に構成している。また、本実施形態では、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3Fに、本装置Xの使用方法を表示している(丸数字内に操作の順番を示し、各丸数字に関連付けた枠内に実際の部材(電源スイッチ25や温度調節部36)やイラストと文字とによって使用方法を示している)。これにより、本装置Xを使用する人、特に初めて使用する被災者にとっても容易に使用方法を把握することができる。
【0027】
このように、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、専用の搬送車等を利用することなく、携行者(使用者)自身の手によって一人で簡単に移動させることが可能であるため、搬送車両、特に大型車両が進入不可能な場所にも容易に持ち運ぶことができ、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の吐出口31(シャワー32)から放出する温水を使用して要救護者や被災者に対する迅速な処置を行うことができる。また、本実施形態では、蓋2(扉21)によってケース2の前面開口部1Kを閉止した不使用状態(B)のまま使用者自身の手によって可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等の所望の場所まで移動させた後、蓋2(左右一対の扉21)によるケース本体1の前面開口部1Kの被覆状態を解除する(蓋2を開けて使用可能状態(A)にする)と、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xが安定した姿勢で自立するように構成しているため、例えば災害現場等において瞬間電気湯沸給湯装置本体3を据え付ける作業が不要になり、より早く救護活動を開始することができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、不使用状態(B)から使用可能状態(A)に切り替える作業、つまり使用するための準備作業に伴って、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xから供給される温水を使用する領域、換言すれば瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前方領域を、温水を使用しない領域、換言すれば瞬間電気湯沸給湯装置本体3の後方領域とをケース本体1及び左右一対の扉21によって隔てることができる。そして、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、使用可能状態(A)において、ケース本体1及び左右一対の扉21により、これら可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xから供給される温水を使用した処置を、温水を使用する人や温水を使用した処置を受ける人の少なくとも体の一部を外部から視認不能ないし視認困難な状態に遮蔽することができる。このように、本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xでは、ケース本体1及び蓋2を構成する左右一対の扉21が、使用可能状態(A)においてケース本体1の前方で使用している使用者の少なくとも体の一部を隠す遮蔽部材として機能し、例えばシャワーテントを複数人で組み立て・設置する等の大掛かりな作業を別途要することなく、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを不使用状態(B)から使用可能状態(A)に切り替える作業、換言すれば可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを使用するための準備作業によって災害現場では確保し難いプライバシー領域を容易且つ迅速に形成することができる。しかも、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、使用可能状態(A)においてケース本体1の底面部1Bや蓋2(扉21)の底面部21Bが、キャスタ11や接地部22の高さ寸法分だけ地面から離間する構成であるため、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前方で座ったり屈んだ姿勢で温水を使用する人や処置を受ける人の体全体、或いは起立姿勢で温水を使用する人や処理を受ける人の少なくとも下半身をケース本体1や蓋2(扉21)によって好適に遮蔽することができる。
【0029】
特に、図7に示すように、各扉21をヒンジHの軸回りにそれぞれ180度ないし略180度回転させた使用可能状態(A)にある複数の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを幅方向に連設すると、扉21及びケース本体1により、各可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの後方領域と前方領域とを仕切ることができ、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの前方領域を幅方向に延伸する使用領域(シャワー領域等)として有効利用することができる。なお、各可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの蓋2(扉21)に、隣り合う可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの蓋2(扉21)同士を着脱可能に連結する連結部(図示省略)を設けた場合には、この連結部によって隣り合う可搬式瞬間電気湯沸給湯装置X同士の良好な連結状態を維持することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、遮蔽部材として機能するケース本体1や蓋2(扉21)によって、使用時に温水が可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの後方側へ撥ね飛ぶことを防止・抑制することができる。扉21の開き角度によっては側方への飛散も防止・抑制することが可能である。さらに、蓋2(扉21)の開き角度を調整することによって、ケース本体1と蓋2(扉21)とを平面視部分多角形状ないし略部分多角形状に配置することができ、これらケース本体1及び蓋2(扉21)が温水を使用する領域の風除け機能や保温機能を発揮し得る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xとなる。
【0031】
また、本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xでは、使用可能状態(A)及び吐出口31から温水を吐出不可能な不使用状態(B)で自立可能に構成しているため、災害現場でこの可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを建物や地面等に固定する作業が不要になり、緊急を要する救命救護活動及び被災住民に対する支援活動を迅速に開始することができるとともに、不使用時や保管時にも安定した姿勢を維持することができる。
【0032】
加えて、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、ケース本体1、及びケース本体1の開口部1Kを被覆し得る蓋2(扉21)を遮蔽部材の一部として機能させているため、蓋2によってケース本体1の開口部1Kを被覆した不使用時や被災現場等への携行時にケース本体1内に収容されている瞬間電気湯沸給湯装置本体3がむき出しになることを防止することができるとともに、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3Fを露出させた使用可能状態(A)において蓋2の少なくとも一部(本実施形態では接地部22)をケース本体1(具体的にはキャスタ11)と共に接地させることで、より安定した自立姿勢を維持した状態で温水を被災者や医療従事者に提供することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、外部から供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体3の内部に設けたヒータによって瞬間加熱するように構成しているため、貯湯タンクが不要であり、装置X全体のコンパクト化及び軽量化を図ることができるとともに、貯湯タンクを備えた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、貯湯タンク内の湯が冷めた場合の再加熱処理、或いは使用せずにタンク内で放置し続けた水の廃棄処理が要求されるという不具合を解消することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、ケース本体の開口部を被覆可能な蓋を、左右一対の扉(観音開きタイプの扉)によって構成した態様を例示したが、単一の扉(片開きタイプの扉)によって構成することもできる。また、各扉として、幅方向に2枚以上の板状体を平面視における相対角度を変更可能に連結して全体的に任意の形状に折り曲げ自在に構成したものを適用してもよい。このようなものであれば、設置場所等に応じて扉を適宜折り曲げることによってより一層安定した姿勢で自立させることができたり、多方向からの視線を遮ることが可能な好適なプライバシー空間を形成することが可能になる。
【0036】
また、蓋に遮蔽部材としての機能を担わせない場合には、スライド扉やシャッタータイプの扉によって蓋を構成しても構わない。また、ケース本体に対して着脱可能な蓋であってもよい。
【0037】
また、遮蔽部材をケース本体のみによって構成したり、蓋のみによって構成することもできる。前者の場合、ケースとして蓋を備えていないものを適用しても構わない。
【0038】
また、吐出口に蛇口(カラン)を接続して蛇口の放出口から温水を放出可能に構成してもよい。
【0039】
また、本装置は被災現場に限らず、病院施設や介護施設、養護施設においても好適に用いることができる。
【0040】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ケース本体
2(21)…蓋(扉)
3…瞬間電気湯沸給湯装置本体
C…ケース
X…可搬式瞬間電気湯沸給湯装置
(A)…使用可能状態
(B)…不使用状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型のケースと、
当該ケース内に収容され、且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて電気的に加熱し、外部に温水を吐出可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体とを具備してなり、
前記ケースの少なくとも一部が、前記瞬間電気湯沸給湯装置本体から温水を吐出可能な使用可能状態において温水を使用している使用者の少なくとも体の一部を隠す遮蔽部材として機能することを特徴とする可搬式瞬間電気湯沸給湯装置。
【請求項2】
前記ケースが、ケース本体と、前記瞬間電気湯沸給湯装置本体を収容すべく前記ケース本体に形成した開口部を開閉可能に被覆し得る蓋とを備えたものであり、
前記ケース本体又は前記蓋の少なくとも何れか一方を前記遮蔽部材の一部として機能させている請求項1に記載の可搬式瞬間電気湯沸装置。
【請求項3】
少なくとも前記使用可能状態において自立可能に構成している請求項1又は2の何れかに記載の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−75234(P2011−75234A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228958(P2009−228958)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】