説明

可搬式給水器

【課題】排水口への装着品の取付が容易であり、この装着品の取付によっても着座安定性が阻害されにくい給水器1を提供すること。
【解決手段】台座部2、台座部から立ち上がるように取り付けられた管路部3とを備え、台座部2が、受水開口部4と、上面に形成された給水開口部5と、これら両開口部4、5を連通する台座流路6とを有し、管路部3が、上記給水開口部5に接続される入水口8と、先端に形成された排水口9と、入水口8と排水口9との間に形成された、上記給水開口部5から水平方向に変位した横変位部11とを有しており、排水口9が、平面視で、横変位部11から給水開口部5側に離間して位置しており、管路部3の排水口9の上下方向における位置が、上記横変位部11の上下方向の範囲内に存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可搬式給水器に関する。さらに詳しくは、本発明は、給水源から受け入れた水を所望の場所で散水等することができる可搬式給水具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような可搬式給水具の一例として、登録実用新案第3009672号公報に開示された水量調節弁付き放水スタンドが知られている。この放水スタンドは、スタンドと、このスタンドの上面の中央部に接続され、真っ直ぐ上方に延びたパイプと、このパイプの上端に接続された放水部とから構成されている。放水部には弁が装着されている。放水部は、パイプの上端から水平方向に延びている。スタンドの内部及びパイプの内部には通水路が形成されている。この放水スタンドによれば、上記スタンドと、家屋等の近辺に設置された給水源とを、ホース等によって連結し、家屋等から離れた場所に水栓柱を配置することが可能である。上記放水部の先端が、パイプから水平方向に離間しているため、放水部の先端には、コネクタ部材等を介して、大きい体積の灌水タイマー等を取り付けることができる。
【0003】
特許第4051586号公報には、移動式立上り水栓が開示されている。この立上り水栓は、上記スタンドに類似したベースと、このベースの中央部から真っ直ぐ上方に延びた立上り管と、この立上り管の上端に接続された蛇口部とから構成されている。蛇口部には弁が装着されている。蛇口部は、立上り管の上端から水平方向に延びている。ベースの内部及び立上り管の内部には通水路が形成されている。蛇口部の先端が立上り管から水平方向に離間しているため、コネクタ部材等を介して、大きい体積の灌水タイマー等を取り付けることができる。
【0004】
登録実用新案第3009672号公報に開示された放水スタンドでは、その放水部に、大きい体積及び大きい重量を有する灌水タイマー等が取り付けられた場合、装置全体の安定性に問題が生じるおそれがある。この放水スタンドでは、パイプがスタンドの中央部から上方に真っ直ぐ伸び、放水部が水平方向に延びている。従って、放水部の先端に重量物が取り付けられると、放水スタンド全体の重心の位置が水平方向に大きく変化する。その結果、放水スタンドが転倒する可能性が生じる。特許第4051586号公報に開示された立上り水栓も、上記と同様の転倒の問題を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3009672号公報
【特許文献2】特許第4051586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、灌水タイマー等の付属物を安定した状態で付設することを可能にした可搬式給水器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給水器は、
台座部と、台座部から立ち上がるように台座部に取り付けられた管路部とを備えた給水器であって、
上記台座部が、受水開口部と、上面に形成された給水開口部と、受水開口部と給水開口部とを連通する台座流路とを有しており、上記管路部が、その基端部に形成された、上記給水開口部に接続される入水口と、その先端部に形成された排水口と、入水口と排水口との間に形成された、上記給水開口部から水平方向に変位した横変位部とを有しており、上記排水口が、上から鉛直下方に見る平面視で、上記横変位部から給水開口部側に離間して位置している。
【0008】
かかる構成によれば、横変位部と排水口とが水平方向に離間しているので、排水口に灌水タイマー等の装着品が容易に取り付けられる。また、装着品の取付後の給水器全体の安定性が阻害されにくい。
【0009】
上記管路部の排水口の上下方向における位置が、上記横変位部の上下方向の範囲内に存在するのが好ましい。
【0010】
上記管路部は、入水口と横変位部との間に形成された、入水口から鉛直方向上向きに延びる立上り部と、横変位部と排水口との間に形成された、排水口に向けて鉛直方向下向きに延びる垂下部とを有し、上記排水口が下方を向くように構成されうる。
【0011】
上記排水口の中心の位置は、平面視で、入水口の中心と一致する位置、又は、その位置より横変位部と逆の方向に変位し且つ台座部の外輪郭より入水口側の位置とすることもできる。
【0012】
上記台座部の平面視形状が、凹凸が形成された外周縁を有しており、上記管路部の排水口の中心の位置が、平面視で、上記台座部の外周縁の隣接凸部の先端同士を結ぶ仮想直線の内側に存在するように構成されるのが好ましい。
【0013】
上記管路部が、台座部に対して、受水開口部の中心を通る鉛直線周りに回転可能に構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る給水器によれば、排水口への装着品の取付が容易であり、排水口への装着品の取付によっても給水器の安定性が阻害されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る給水器の一使用態様を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の給水器の外形寸法の一例を示す一部断面正面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る給水器を示す平面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の一実施形態に係る給水器の、他の使用態様を示す正面図であり、図4(b)は平面図である。
【図5】図5は、図4に示された使用態様の給水器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1及び図2に示された可搬式給水器(以下、単に給水器という)1は、台座部2と管路部3とを備えている。管路部3は、台座部2の上面から上方に立ち上がるように、台座部2に取り付けられている。管路部3は、後述するように、所定の目的に沿って屈曲している。図1の給水器1には、その管路部3の先端に灌水タイマー100が取り付けられている。灌水タイマー100にはホース101が取り付けられている。
【0018】
ホース101は、止めリング102により、台座部2に対して長手方向のみの移動が自由となるように係止されている。この係止により、給水器1の搬送時に、給水器1と灌水タイマー100等の装着品との連結部に加わる負荷が減少しうる。その結果、給水器1の耐久性が増大する。また、給水器1の搬送時において、ホース101が運搬者の足に引っかかることを防止することができ、安全性が向上する。上記のとおり、給水器1に装着される灌水タイマー100等の装着品には、通常、流水ホースが装着されている。このホース101を係止する上記止めリング102は、ホース101を通すための貫通孔102Aが開閉不能であってもよい。しかし、取り扱い性の向上の観点からは、貫通孔102Aが開閉可能であるのが好ましい。すなわち、止めリング102を開いてそこにホース101を設置し、閉じてホース101を保持するタイプの止めリングが好ましい。
【0019】
図2に示されるように、台座部2は、受水開口部4と、給水開口部5と、受水開口部4と給水開口部5とを連通する台座流路6とを有している。受水開口部4は台座部2の側部に設けられており、給水開口部5は台座部2の上面の中央部に設けられている。受水開口部4には、ホース等と接続するためのニップル部材NPが取り付けられている。給水開口部5には、管路部3と接続するためのコネクタCN1が取り付けられている。本実施形態では、台座部2は概ね円盤状を呈している。台座部2には開口7が形成されている。この開口7を利用して、ペグ等によって台座部2を土面に固定することが容易となる。しかし、本発明では、以上のような形状には限定されず、給水器1全体が安定した姿勢で地面等に載置されうる形状であればよい。なお、本実施形態では、給水開口部5にコネクタCN1を配して管路部3と接続する形態としているが、本発明ではかかる構成に限定されない。例えば、コネクタCN1を無くして、給水開口部5に管路部3を螺子機能による螺合接合、接着剤による接合、溶接による接合等の方法で直接に接続してもよい。また、台座部2と管路部3とを一体物として構成してもよい。
【0020】
管路部3は、基端部に形成された入水口8と、先端部に形成された排水口9とを有している。入水口8及び排水口9はともに下方を向いている。入水口8は、上記コネクタCN1を介して台座部2の給水開口部5に接続されている。排水口9にはコネクタCN2が取り付けられている。排水口9には、このコネクタCN2を介して、上記灌水タイマー100等が取り付けられている。なお、本実施形態では、排水口9と灌水タイマー100等をコネクタCN2を介して取り付ける構成としているが、本発明ではかかる構成に限定されない。例えば、コネクタCN2を使用せずに、排水口9と灌水タイマー100等を、螺子機能による螺合接合等で直接に取り付ける構成としてもよい。
【0021】
管路部3は、台座部2に取り付けられた姿勢で、入水口8から鉛直方向上向きに延びる立上り部10と、横変位部11と、垂下部12とを有している。横変位部11は、上から鉛直下方を見た平面視で、入水口8の位置(立上り部10の位置)から、水平方向(横方向ともいう)に変位した部分であり、鉛直方向に延びている。立上り部10の上端と横変位部11の下端との間には、これら10、11に連続して下部湾曲部13が形成されている。横変位部11の上端と垂下部12の上端との間には、これら11、12に連続して上部湾曲部14が形成されている。下部湾曲部13は概ねS字状を呈し、上部湾曲部14は概ね半円状を呈している。垂下部12の下端に上記排水口9が形成されている。
【0022】
本実施形態では、平面視で、横変位部11と垂下部12(排水口9)とは、入水口8の位置を挟んで互いに反対側に位置している。排水口9の上下方向の位置は、横変位部11の上下方向範囲の中にある。その結果、平面視で排水口9の位置が入水口8の位置(台座部2の中央)から大きく離れることなく、さらに、排水口9と管路部3の中間部分である横変位部11との間には、大きなスペースが確保される。これにより、管路部3と干渉することなく、排水口9に灌水タイマー100等が容易に取り付けられる。また、灌水タイマー100等の取付後の給水器1全体の安定性が阻害されない。平面視での給水器1全体の重心位置が、台座部2の中央位置に近づくからであり、これにより、地面等に載置された台座部2に加わるモーメントが小さくなるからである。
【0023】
本発明における管路部は、上記形状には限定されない。例えば、横変位部は上下方向に直線状に延びる形状に限定されず、円弧状等であってもよい。例えば、管路部全体が、入水口8から排水口9にかけて円弧状等を呈していてもよい。また、本発明では、排水口9が、平面視で入水口8を挟んで横変位部11と反対側に位置することに限定されない。例えば、排水口9の位置は、平面視で入水口8の位置よりわずかに横変位部11寄りにあってもよい。しかし、排水口9の中心位置は、平面視で入水口8の中心位置と一致しているか、又は、平面視で入水口8を挟んで横変位部11と反対側であって且つ台座部2の外輪郭より入水口8側に位置するのがよい。排水口9に灌水タイマー100等を取り付けたとき、平面視での給水器1全体の重心位置、及び/又は灌水タイマーなどの取付けされる器具と給水機1を合わせた重心位置が、台座部2の中央位置に一層近づき、台座部2に加わるモーメントがより一層小さくなるからである。なお、後述するような台座部22の外形が円形でない場合には、上記台座部2の外輪郭を、後述する仮想境界に置き換えて規定する。
【0024】
要するに、管路部の形状は、平面視で排水口9の中心位置が台座部2の中央から大きく離れることなく、排水口9と管路部3の中間部分である横変位部11との間に大きなスペースが確保されるものであればよい。排水口9は、装着品が容易に取り付けられ、且つ、台座部2の中央にできるだけ近い位置、及び/又は、台座部2の外輪郭より内側の位置にするのが好ましい。
【0025】
図2が参照されつつ、この給水器1における各部の寸法の好ましい範囲が説明される。なお、ここでは、各寸法の好ましい範囲は、給水器1にコネクタCN1、CN2が取り付けられた状態でのものである。給水器1の全高、すなわち、台座部2の底面から上部湾曲部14の上端までの寸法をH1とする。H1の値は250mm以上700mm以下が好ましい。250mm未満では、灌水タイマー100等の取り付け容易性を実現できる給水器1全体の寸法設定が容易ではなくなる。従って、H1は、300mm以上がさらに好ましく、325mm以上が特に好ましい。700mm超では、給水器1が大型化して取り扱い性及び運搬性が低下するおそれがある。従って、H1は、550mm以下がさらに好ましく、400mm以下が特に好ましい。本実施形態では、H1=350mmとされている。
【0026】
台座部2の上面から排水口9(つまり、コネクタCN2の下端)までの寸法をH2とする。H2の値は150mm以上600mm以下が好ましい。150mm未満では、灌水タイマー100等の取り付け容易性を実現しにくくなったり、ホース101が屈曲してしまうおそれがある。従って、H2は、175mm以上がさらに好ましく、200mm以上が特に好ましい。600mm超では給水器1が大型化して取り扱い性及び運搬性が低下するおそれがある。従って、H2は、450mm以下がさらに好ましく、300mm以下が特に好ましい。本実施形態では、H2=225mmとされている。なお、排水口9にコネクタCN2を取り付けない状態での台座部2の上面から排水口9までの寸法(コネクタCN2の寸法を含まない)については、上記と同様の理由で180mm以上630mm以下が好ましく、下限についてはさらに105mm以上、特に230mm以上、上限については、さらに480mm以下、特に330mm以下が好ましい。
【0027】
台座部2の全高、すなわち、台座部2の底面から上端面(本実施形態では給水開口部5の位置)までの寸法をH3とする。H3は10mm以上100mm以下が好ましい。10mm未満では台座部2の内部に台座流路6を形成しにくい。従って、H3は、20mm以上がさらに好ましく、30mm以上が特に好ましい。100mm超では灌水タイマー100等の取り付け容易性を実現できる給水器1全体の寸法設定がしずらくなったり、重くなって取り扱い性が悪くなるおそれがある。従って、H3は、80mm以下がさらに好ましく、60mm以下が特に好ましい。本実施形態では、H3=50mmとされている。
【0028】
本実施形態における台座部2は円盤状であるので、この台座部2の外径をW1とする。W1は150mm以上500mm以下が好ましい。150mm未満では給水器1の安定性が悪くなるおそれがある。従って、W1は、175mm以上がさらに好ましく、200mm以上が特に好ましい。また、500mm超では、給水器1が大型化し、それに伴って重くなり、取り扱い性が悪くなるおそれがある。従って、W1は、400mm以下がさらに好ましく、300mm以下が特に好ましい。本実施形態では、W1=220mmとされている。
【0029】
図3に示される給水器21のように、台座部22の外形が円形でない(非円形)場合は、台座部22の外輪郭内の面積重心位置と、二点鎖線で示される仮想境界(すなわち、台座部22の外輪郭の隣接凸部23同士を結ぶ仮想直線)B上の各点との各離間距離のうち、一番短い距離がW1とされる。図3は、非円形の台座部の形状の一例を示している。なお、例えば台座部22の外形が正方形である場合等においては、上記仮想境界Bは、台座部22の外輪郭と一致する場合もある。
【0030】
本実施形態における台座部2は円盤状であるので、この台座部2の半径(外径W1の1/2)をW2とする。図3に示されるように、台座部22の外形が非円形の場合は、給水開口部5の中心位置と、上記仮想境界B上の各点との離間距離のうち、一番短い距離がW2とされる。W2は、75mm以上250mm以下が好ましい。75mm未満では給水器1の安定性が悪くなるおそれがある。従って、W2は、85mm以上がさらに好ましく、100mm以上が特に好ましい。また250mm超では、給水器1が大型化し、またそれに伴って重くなり、取り扱い性が悪くなるおそれがある。従って、W2は、200mm以下がさらに好ましく、150mm以下が特に好ましい。本実施形態では、W2=110mmとされている。
【0031】
平面視での排水口9の中心位置と横変位部11の内側(入水口8側)端との離間距離をW3とする。W3は50mm以上250mm以下が好ましい。50mm未満では灌水タイマー100等の取り付け容易性が実現されにくくなる。従って、W3は、70mm以上がさらに好ましく、80mm以上が特に好ましい。また250mm超では、給水器1が大型化し、それに伴って重くなり、取り扱い性が悪くなるおそれがある。従って、W3は、200mm以下がさらに好ましく、150mm以下が特に好ましい。本実施形態では、W3=90mmとされている。
【0032】
平面視での給水開口部5の中心を通る鉛直線(図2に符号VLで示す)と、横変位部11の内側端との離間距離をW4とし、上記鉛直線VLと排水口9の中心位置との離間距離をW5とする。W4/W5は、0.5以上2.0以下が好ましい。0.5未満では給水器1の使用時の安定性が低下する。従って、W4/W5は、0.7以上がさらに好ましく、0.8以上が特に好ましい。2.0超では給水器1の使用時の安定性が低下するおそれがある。従って、W4/W5は、1.5以下がさらに好ましく、1.3以下が特に好ましい。本実施形態では、W4/W5=0.8とされている。
【0033】
平面視での排水口9の中心位置と台座部2の外周縁との最短離間距離をW6とする。図3に示されるように、台座部22の外形が円形でない場合は、排水口9の中心位置9Cと、上記仮想境界B上の各点との離間距離のうち、一番短い距離がW6とされる。W6は、20mm以上125mm以下が好ましい。20mm未満では給水器1の安定性が悪くなるおそれがある。従って、W6は、35mm以上がさらに好ましく、50mm以上が特に好ましい。125mm超では給水器1が大型化し、重量が増加して取り扱い性が低下するおそれがある。従って、W6は、100mm以下がさらに好ましく、80mm以下が特に好ましい。本実施形態では、W6=60mmとされている。
【0034】
台座部2の給水開口部5に対する、管路部3の入水口8の接続は、固定接続でもよく、着脱可能な接続でもよい。また、管路部3が台座部2に対して、給水開口部5の中心を通る鉛直線(図2に符号VLで示す)回りに回転可能な接続でもよく、回転不能な接続でもよい。固定接続と着脱可能接続とを比較すれば、給水器1の運搬時及び保管時の収納性を追及する場合は着脱可能接続が好ましく、低コストを追求する場合は固定接続が好ましい。
【0035】
回転可能接続と回転不能接続とを比較すれば、給水器1の使用時に装着品が多方向に向く事が要求される場合、及び/又は、耐久性が要求される場合は回転可能接続が好ましい。管路部3が台座部2に対して回転すれば、給水器1の使用時に、回転部周辺の部位への負荷が軽減されるからである。低コストが要求される場合は回転不能接続が好ましい。回転不能接続が選択される場合には、台座部2における受水方向(図1及び図2において矢印INで示される)と、管路部3の上部湾曲部14における排水方向(図1及び図2において矢印EXで示される)とが、平面視でほぼ一致しているのが好ましい。給水器1に灌水タイマー100等が取付けられたとき、通水使用時等における地面に対する給水器1の着座安定性が向上するからである。上記「ほぼ一致」については、平面視で、上記受水方向INと上記排水方向EXとの交差角が、20°以下が好ましく、10°以下がさらに好ましく、5°以下が特に好ましい。
【0036】
図4及び図5には、給水開口部5の中心を通る鉛直線VLの回りに管路部3が回転可能に接続された給水器1が示されている。図4には、管路部3が台座部2に対して図1及び図2に示される位置から180°回転した位置にある給水器1が示されている。このように管路部3を回転可能にするためには、給水開口部5と管路部3の入水口8とを接続するコネクタとして、回転可能なタイプのコネクタCN1が採用される。また、ホース101を係止するための止めリング103(図5)は、管路部3の立上り部10に取り付けられている。この止めリング103は開閉可能である。止めリング103は、開状態においては、その立上り部10用貫通孔103A及びホース101用貫通孔103Bはともに開放される。この止めリング103は、立上り部10の回り、すなわち、上記鉛直線VLの回りに回転位置が変更可能である。なお、上記止めリング103は、立上り部10に非回転状態で固定されてもよい。立上り部10自身が鉛直線VL回りに回転可能だからである。止めリング103が固定式である場合、装置が簡素化できて、故障防止及び低コスト化が可能となる。この止めリング103は、管路部3における立上り部10以外の部位に取り付けられてもよい。なお、回転可能なタイプのコネクタCN1を給水開口部5と管路部3の入水口8とを接続する箇所に設ける代わりに、管路部3の中間位置、例えば、立上り部
10の中間位置に回転可能な部材を配する等して、管路部3に回転可能な機構を配設することもできる。
【0037】
台座部2の受水開口部4及び給水開口部5、並びに、管路部3の入水口8及び排水口9における連結用付属品としては、水栓及び/又は散水などの用途に用いられるコネクタ、ホース継ぎ手、蛇口ニップルなどを採用することができる。例えば、株式会社タカギのホームページに公開されているような、コネクタ(G072FJ、G086FJ等)、ホース継ぎ手(G040FJ、G084FJ等)、蛇口ニップル(G043FJ、G064FJ、G065FJ、G312、G315等)等が採用されうる。この給水器1には、上記の他、様々な連結機能品を付設することができる。又は、この給水器1は、様々な連結機能品が付設可能な構成とすることができる。
【0038】
本実施形態では、上記台座部2の受水開口部4には、株式会社タカギ製の、ネジ付き蛇口ニップル(G065FJ)等のニップル部材NPが採用されている。又は、例えば、先端が雄ネジ構成の部材が採用されてもよい。台座部2の給水開口部5と管路部3の入水口8との接続には、両部材を雄ネジ及び雌メジで締め付け固定する方式のコネクタCN1が採用されている。この方式の他に、台座部2と管路部3との接続部材として、例えば、株式会社タカギ製の、ネジ付き蛇口ニップルセット(G154FJ等)が採用されうる。管路部3の排出口9には、先端が雄ネジ構成のコネクタCN2が採用されている。この部材の他に、例えば、株式会社タカギ製の、ネジ付き蛇口ニップル(G065FJ)等のニップル部材が採用されうる。
【0039】
本給水器1に装着するものとしては、例えば、株式会社タカギ製の、水分センサー付き灌水タイマー(G215等)100が例示されうる。また、灌水タイマー100の他に、株式会社タカギ製の、ホースリール(RS550FJPW)が装着可能であり、株式会社タカギ製の、三方口コネクターのコック付き(G099FJ)等の分岐コネクターが装着可能である。従って、例えば灌水タイマー100を常時設置したり、また、灌水タイマー100の設置と上記例示部材の設置とを変更することもできる。
【0040】
台座部2の材料としては、金属材料や樹脂材料が使用可能である。このうち、比重が大きく安定するので金属材料が好ましい。特に比重5以上が好ましく、6以上がさらに好ましい。例えば、ステンレス鋼等の鉄系金属(比重=8程度)、亜鉛合金(比重=7程度)が好ましい。なお、亜鉛合金は、鋳造が容易であり、材料コストの低減も可能であるため、特に好ましい。本実施形態における台座部2は亜鉛合金から形成されている。
【0041】
管路部3の材料としては、要求される剛性を確保するうえで金属材料が好ましい。鉄系金属、特に耐食性も考慮すると、例えば、ステンレス鋼(例えばJIS−G−4303−SUS304等)、アルミニウム合金等がさらに好ましい。なお、耐食性、低コスト等を重視する場合はステンレス鋼が好ましい。管路部3の安定性のために軽量化を図る場合は、比重4以下、さらに3以下の金属とするのが好ましく、例えばアルミニウム合金(比重が約3程度)が好ましい。本実施形態における管路部3は、長手方向に延びる1本の継ぎ目を有するSUS304製の管状部材を採用した。なお、管路部3は継ぎ目のないシームレスタイプの管状金属部材から形成するのが好ましく、これにより、特に下部湾曲部13や上部湾曲部14のような湾曲部における水漏れを発生しにくくすることができる。
【0042】
給水器1、21の使用時の安定性を確保するために、(管路部3の材料の比重)/(台座部2材料の比重)の値は1.2以下、さらに0.9以下、特に0.7以下とするのが好ましい。なお、この比の下限については、材料入手上の制限、材料コストの理由により、0.1以上が好ましく、0.2以上がさらに好ましく、0.3以上が特に好ましい。
【0043】
図1及び図5に示される止めリング102、103は、各種金属、樹脂等から形成することができる。図1における止めリング102は、ポリアミド樹脂製の円筒部位102Bと、それに繋がる図示しない金属製の雄ネジ部と接合した構造を有している。この図示しない雄ネジ部が、台座部2に設けられた図示しない雌ネジ部にネジ固定されている。図5における止めリング103は、ポリプロピレン樹脂から形成されている。止めリング103が開放された(横に広げられた)形態で射出成形される。この成形物が、ヒンジ部103Hで折り曲げられ、立上り部10に巻いて取り付けられる。成形物の両端部に配された孔103Cとフック103Fとが係止され、立上り部10に取付けられる。この止めリング103はホース101等の係止対象物を係止するもので、係止対象物が通される係止用通孔を備える。この係止用通孔の係止対象物が当接する部位を樹脂により形成するのがよい。これにより、係止対象物の傷付きを抑止でき、また、給水器を軽量化できる。例えば、図1及び図5に示される形態の場合は、円筒部材102Bや貫通孔103B部分の全体を樹脂により形成したり、円筒部材102Bや貫通孔103B部分を多層構造として、内面側に位置する層を樹脂により形成し、外面側の層を金属等で形成することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態の説明では、管路部3の先端に装着する器具として灌水タイマー100を例示したが、本発明では、管路部3には、灌水タイマー以外の様々な器具を取付けて使用できる。例えば、給水器1の排水口9から吐出される水を2以上の流路に分岐できる分岐具や、給水器1の排水口9から吐出される水を広範囲に散布できるスプリンクラー等の器具を、管路部3の先端に取付けて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る給水器は、所望の場所に搬送し、地上に載置して給水する装置として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1、21・・・給水器
2、22・・・台座部
3・・・管路部
4・・・受水開口部
5・・・給水開口部
6・・・台座流路
7・・・開口
8・・・入水口
9・・・排水口
10・・・立上り部
11・・・横変位部
12・・・垂下部
13・・・下部湾曲部
14・・・上部湾曲部
23・・・凸部
100・・・灌水タイマー
101・・・ホース
102、103・・・止めリング
CN1、CN2・・・コネクタ
NP・・・ニップル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、台座部から立ち上がるように台座部に取り付けられた管路部とを備えた給水器であって、
上記台座部が、受水開口部と、上面に形成された給水開口部と、受水開口部と給水開口部とを連通する台座流路とを有しており、
上記管路部が、その基端部に形成された、上記給水開口部に接続される入水口と、その先端部に形成された排水口と、入水口と排水口との間に形成された、上記給水開口部から水平方向に変位した横変位部とを有しており、
上記排水口が、上から鉛直下方に見る平面視で、上記横変位部から給水開口部側に離間して位置している給水器。
【請求項2】
上記管路部の排水口の上下方向における位置が、上記横変位部の上下方向の範囲内に存在する請求項1に記載の給水器。
【請求項3】
上記管路部が、入水口と横変位部との間に形成された、入水口から鉛直方向上向きに延びる立上り部と、横変位部と排水口との間に形成された、排水口に向けて鉛直方向下向きに延びる垂下部とを有しており、上記排水口が下方を向いている請求項1又は2に記載の給水器。
【請求項4】
上記排水口の中心の位置が、平面視で、入水口の中心と一致する位置、又は、その位置より横変位部と逆の方向に変位し且つ台座部の外輪郭より入水口側の位置である請求項1から3のいずれかに記載の給水器。
【請求項5】
上記台座部の平面視形状が、凹凸が形成された外周縁を有しており、
上記管路部の排水口の中心の位置が、平面視で、上記台座部の外周縁の隣接凸部の先端同士を結ぶ仮想直線の内側に存在する請求項1から4のいずれかに記載の給水器。
【請求項6】
上記管路部が、台座部に対して、受水開口部の中心を通る鉛直線周りに回転可能に構成されている請求項1から5のいずれかに記載の給水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−7185(P2013−7185A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139627(P2011−139627)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)