説明

可搬式車椅子昇降装置

可搬式車椅子昇降装置は、昇降台車(162)と、支持基台と、それらに結合されて昇降台車を選択的に上げ下げし、昇降台車の床(170)を地表面まで一杯に下げることができる昇降機構(50、52)とを備える。鋏状支柱(179)は、昇降台車が上昇しているときに、選択的に、昇降台車の前方扉(164)を支持基台(180)にロックする。昇降台車の床(170)は、折り畳み縮められて幅を縮小することができ、狭いところを通って移送することができるようになる。移送キャスタ(182)が、昇降台車(162)の底部に取り外し可能に取り付けられて、移送を容易にする。昇降装置は、ステージ(174)の高さに再現性をもって昇降台車を持ち上げられるように、高さ調節制御部(184)を昇降台車内に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、昇降装置に関し、より詳細には、個々の身体障害者がステージ、壇、上り台などへ登壇できるようにする可搬式車椅子昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年制定の「障害をもつアメリカ人に関する法律」(ADA:the Americans With Disabilities Act)のもと、米国政府は、公共の建物が身体障害者にとって利用可能であることを要求している。移動に車椅子を必要とする人々にとって、床の高さの急激な変化は、車椅子が通ることができるように修正される必要がある。新規の建造物では通常傾斜路が設けられ、その傾斜路の傾斜度すなわち勾配は、立ち上がりが、水平行程30.48cm(1フィート)当たり2.54cm(1インチ)以下でなくてはならず、垂直行程76.2cm(30インチ)毎に長さ152.4cm(5フィート)の水平な床面を設けなければならない。しかし、そのような長さの傾斜路は、かなりの広さの床面積を占有する。古い建物、あるいは新しい建物でもスペースに限りがあると、傾斜路についての要求を単純に実現することができないことがある。
【0003】
ADAはまた、固定傾斜路の代わりに、垂直昇降装置も許容している。通常、そのような昇降装置は恒久的に取り付けられ、適切なジャッキ機構で上げ下げされる小さな車が出入りするための短い傾斜路を備えている。ADAによれば、そのような昇降装置は、106.7cm(42インチ)以上の高さの側壁を備えなければならず、側壁の1つに把持棒を備えなければならない。移動床面は滑りが防止されたものでなければならず、ジャッキ機構は適切に囲いをされていなければならない。
【0004】
利用されている一部の固定式昇降装置では、一枚壁の側壁が備えられ、昇降装置の一端に扉が設けられていないこともある。そのような昇降装置は、閉所恐怖症の人または小さな子供にとっては乗り心地が悪く、さらに、昇降台車に開放端を有するので安全でない。
【0005】
公共の建物内の殆どのステージは、床または地表から約106.7cm(42インチ)未満である。本明細書で使用されるとき、用語「ステージ」は、高くなっているその床が実際に劇場または公会堂のステージであるか否かに拘わらず、高くなっている床を指す。したがって、使用者を106.7cm(42インチ)の高さのステージまで持ち上げることができる昇降装置は一般に受け入れられるが、152.4cm(60インチ)以上の高さに達せられれば明らかに1つの利点になる。
【0006】
身体障害者用の移動式昇降装置は、たとえば、固定された両側面、および両端に短い一体型の傾斜路を備える台車を有する昇降装置を記述する米国特許第5,105,915号(Gray)に記載されているように、当業者には周知である。台車は、スイッチで制御される電気モータによって駆動される油圧ポンプを備えるパンタグラフ式ジャッキによって上げ下げされる。同特許は、従来技術の幾つかの昇降装置も記載している。
【0007】
改良型移動式昇降装置が、Brady等へ付与され、本発明の譲受人であるAGM Container Controls, Inc.社へ譲渡された米国特許第6,182,798号に開示されている。同特許は、昇降台車の両端の扉、透明壁、搭乗傾斜路、渡り板、ステージ高さセンサ、および多数の安全機構を有する昇降装置を開示している。
【0008】
それでも、前述のBradyの特許第6,182,798号に開示された移動式昇降装置は、移動式昇降装置で生じた全ての問題を解決してはいない。たとえば、昇降台車は、その最低位置まで下げられたときでもまだ、車椅子の使用者が自分自身を台車中に直接こぎ入れることができるのに十分な近さまでは地面に近づかない。昇降機構が昇降台車の下に格納されているので、昇降台車を地面まで一杯に下げることは決してできない。その代わり、使用者が昇降台車に乗れるようにするために、折り畳み式入口傾斜路を設けなければならない。この入口傾斜路は、移動式昇降装置の重量および材料費を増加させるだけでなく、使用者および使用者を補助する付添人の両者に不便を感じさせる。さらに、入口傾斜路が必要な場合、昇降装置にスペース上の制約が加わる。たとえば、ステージとその近くの壁との間、またはステージと座席領域との間に、昇降台車の長さだけではなく、展開される入口傾斜路の追加長さもまかなえる十分なスペースを必要とする。
【0009】
Bradyの特許第6,182,798号に示された移動式昇降装置は、昇降台車が何時ステージの高さまで達したかを昇降装置が検知することができるステージセンサを備える。このステージセンサは、ステージ上に分離して配設しなければならない。さらに、ステージセンサが不注意で、または故意に定位置から動かされ、その結果昇降台車が正しくない高さに止まることが生じ得る。
【0010】
さらに、Bradyの特許第6,182,798号に示された移動式昇降装置は、固定幅を有する。すなわち昇降装置の全体幅は少なくとも昇降台車の幅と同じ幅である。そのような移動式昇降装置を、戸口を通過して移送しなければならないことがしばしば生じ、戸口がかなり広ければ(すなわち121.9cm(48インチ)以上)、戸口を通過して昇降装置を移送することは通常問題にはならない。しかし、そのような周知の昇降装置を、古い学校のように一人用戸口を有する建物にしばしば見られる比較的狭い91.44cm(36インチ)の戸口など、121.9cm(48インチ)より狭い戸口を通して移送することは、しばしば実際的ではなく、また不可能である。これが、なぜ昇降台車を持ち上げるのに用いられる油圧ジャッキ機構が昇降台車の直下に配設されているかの理由であり、油圧ジャッキ機構が昇降台車の脇に出されると、昇降装置の全体幅はさらに増加する。
【0011】
Bradyの特許第6,182,798号は、引き込み可能な車輪を移送のために備える移動式昇降装置を開示している。昇降装置が移送されるとき、車輪が基台から延びて、基台を地面から持ち上げる。昇降装置が使用に適した位置に来ると、車輪が引き込まれ、基台が直接地面に係合することができる。そのような車輪の伸張および引込みは、4個の車輪それぞれを上げまたは下げるために回転させなければならないクランクによって制御される。これは、かなり顕著な肉体的努力ならびに大幅な時間を必要とする。さらにそのような車輪の寸法は、車輪を基台の下に取り付けることができるように、比較的小さい(典型的には8.89cm(3.5インチ))。しかし、そのように小さな車輪は、特に、カーペットを敷いた床やスタジアムの芝を含めて、柔らかく、かつ/または凸凹のある床面上では、昇降装置の移送をより困難にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を鑑みて、本発明の目的は、安全で信頼できる方式で車椅子に乗った使用者をステージ、壇、上り台などの高さまで持ち上げるのに適する、該当する全てのADA要求に合致する可搬式昇降装置を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、昇降台車を地面に向けて下げたときには比較的低い形状を保ちながら、使用者を地面から152.4cm(60インチ)以上持ち上げることができるような昇降装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、必要とする床面積が最低限であり、ステージが、壁、座席領域、または他の障害物に比較的近い位置にあっても、使用者が昇降台車に乗ることができるような昇降装置を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、実際に使用中に、ADA規則(少なくとも91.44cm(36インチ)の邪魔物のない幅)を満足するのに十分な広さのスペースを昇降台車内に実現しながらも、ある現場から別の現場へ比較的狭い通路を通って移送することができるような昇降装置を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、ステージ上のワンド、センサまたはスイッチに頼ることなく、権限のない人物の不注意、または故意による変更を防止しながら、施設の管理人/所有者が再現性のある方式で昇降台車の上昇高さを適切なステージ高さに調節することができる自己完結型ユニットとしての昇降装置を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、ある現場から次の現場へ最低限の努力で迅速かつ容易に移送することができるような、比較的大きな移送用車輪を採り入れた昇降装置を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、搭乗者または付添人が昇降台車を安全に上げ下げすることができる昇降装置を提供することである。
本発明のこれらおよび他の目的は、当業者には、本発明の説明が進むにつれてより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
簡単な記述、およびその一態様によれば、本発明は、動き回るのに車椅子または松葉杖に依存する人々を含む個々の身体障害者を、ステージ(174)、壇、上り台などに登壇させるのに使用することができる昇降装置に関する。その昇降装置は、車椅子(168)内の人物(166)を支持するのに適する昇降台車(162)を備える。第1および第2の支持部(161、163)が、地表面に据わるために昇降台車(162)の両側に配設されている。1対の油圧シリンダ(50、52)、電機モータ(56)および油圧ポンプ(58)を備え得る昇降機構が、第1および第2の支持部内に格納されている。この昇降機構が昇降台車に結合されて、昇降台車を選択的に上げ、下げする。昇降機構を昇降台車の下から出すことによって、昇降台車の床を地表面に向かって一杯に下げることができる。これによって、搭乗傾斜路の補助なしに、使用者が昇降台車に出入することができ、それによって、利用可能な床面積を最大に使用することができるようになる。そのような昇降装置が、複数箇所で使用できるように可搬式であれば理想的である。
【0020】
好ましくは、前述の昇降装置の第1および第2の支持部(161、163)の上方への延在は、昇降台車の床が持ち上げられ得る最大上昇高さより低く、それによって、そのような昇降装置としては比較的低い形状を維持する。この結果を達成する好ましい方式は、本質的に第1の支持部と同じ高さのほぼ垂直の固定軌道を第1の支持部内に含めることである。可動中間部材が、固定軌道に沿って摺動し、昇降台車軌道を備える。昇降台車は、昇降台車をその最終的高さまで案内する、中間部材の昇降台車軌道に係合する少なくとも1つのローラを備える。好ましくは、同じ構成が、第2の支持部に関しても設けられ、その結果、昇降台車の両側が、上記のように案内される。
【0021】
本発明の別の態様は、身体障害者用の昇降装置に関し、その昇降装置は、車椅子(168)内の人物(166)を支持するのに適した昇降台車(162)をやはり備え、地面から昇降台車に入るのに用いられる前方入口扉(164)と、地表面に据わる支持基台(180)と、昇降台車を支持基台に対して選択的に上げ下げする、支持基台と昇降台車との間に結合された昇降機構(50、52)と、昇降台車が地表面から上昇したとき、昇降台車の前方扉を支持基台に選択的にロックする鋏状支柱(179)とを備える。鋏状支柱は、昇降台車が地面から公称高さに上昇しているとき、昇降台車を支持基台に対して安定させる援けとなり、前方入口扉を閉じた状態に保つ。他方、昇降台車が地表面まで下降したとき、鋏状支柱はロックを解除して、前方入口扉が開けられるようにする。
【0022】
本発明の別の態様は、狭い通路を通り抜けられるように縮めることができる、身体障害者用可搬式昇降装置に関する。その昇降装置は、通常の使用モードに構成されたときは、車椅子(168)内の人物(166)を支持するのに適する昇降台車(162)を備え、そのような通常の使用モードの間は、昇降台車の床(170)は、車椅子を収容できる幅に広がっている。しかし、昇降台車はまた、縮められた移送モードに構成することができ、昇降台車の床は、その広がった幅より狭い幅に縮められる。縮められた移送モードによって、普通ならそのような昇降装置の移送を妨げる狭い通路を通って、昇降装置を移送することができる。
【0023】
前述の可搬式昇降装置は、好ましくは、昇降装置が通常の使用モードのときは水平に延在するが、昇降装置の幅を最小にするときはほぼ垂直な向きに回転させられる少なくとも第1のヒンジ式パネルを備える昇降台車床(170)を有する。理想的には、昇降台車の床は、2つのそのようなヒンジ式パネルを備える。床パネルは、好ましくは、その下にある少なくとも1つの伸縮式横断支柱によって支持されるが、好ましくは、複数のそのような伸縮式横断支柱(196)によって支持される。伸縮式横断支柱の長さは、ヒンジ式パネルがそれらの垂直な向きに回転させられた後、縮めることができ、それによって、昇降装置の全体幅を減少させる。各伸縮式横断支柱は、好ましくは、昇降台車の第1の側部から延びる第1の管状部材と、昇降台車の対向する第2の側部から延びる第2の管状部材とを備える。第2の管状部材は、第1の管状部材より大きな断面寸法を有し、第1の管状部材は第2の管状部材内で摺動的に延びることができる。留め具が、伸縮式横断支柱の長さを調節するために、第1の管状部材と第2の管状部材とを一定の相対的関係に解除可能に固定する。
【0024】
本発明の別の態様は、個々の身体障害者をステージ(174)に登壇させることができる容易に移送可能な昇降装置に関し、一連のキャスタまたは車輪(182)が、昇降台車(162)の底部に取り外し可能に取り付けられる。前述のように、昇降装置は、通常地上面に据わる支持基台(180)、ならびに、支持基台に対して昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させるために、支持基台と昇降台車との間に結合された昇降機構(50、52)を備える。
【0025】
キャスタ(182)は、昇降台車を僅かに上げて昇降台車の下側にアクセスできるようにすることによって、昇降台車(162)の底部に容易に取り付けることができる。そのとき、キャスタは、昇降台車の底部に挿入される。キャスタが昇降台車の底部に固定された後、昇降台車をその最大降下位置に向かって下降させることにより、車輪が床に係合するようになる。さらに、昇降機構を作動(「下降」方向へ)させることにより、実際には、支持基台(180)が地面から持ち上げられ、昇降装置の全ての重量がキャスタ(182)によって担持されるようになり、それによって、昇降装置の簡便な移送が容易に行える。昇降装置がその新しい場所に移送されると、昇降機構が、昇降台車(162)を持ち上げるように作動させられ、それによって、昇降装置の重量がキャスタ(182)から取り除かれる。昇降台車を僅かに上昇した位置にすると、キャスタを容易に取り外すことができ、それによって、昇降台車の床を地面に向かって一杯に下げ戻すことができる。
【0026】
本発明の別の態様は、最高高さの調節機構(184)が昇降台車(162)内で自己完結する、個々の身体障害者をステージ(174)に登壇させる昇降装置に関する。前述のように、昇降装置は、車椅子(168)内の人物(166)を支持する昇降台車(162)と、地上面に据わる支持基台(180)と、支持基台に対して昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させるために、支持基台(180)と昇降台車(162)との間に結合された昇降機構(50、52)とを備える。昇降台車の側壁(167)内に格納され、その側壁(167)のパネルn(186、188)を介してアクセスできる調製可能制御部材(190、192)は、昇降台車が上昇させられるべき最大高さを選択するために、昇降台車が持ち上げられる前に調節することができる。昇降装置の作動時に、昇降台車の床(170)がステージ(174)と同じ高さでなければ、調節可能な制御部材(190、192)を、所望の高さが達成されるまで僅かずつシフトさせることができる。所望の高さが達成されると、調節可能な制御部材(190、192)は、適位置にロックされ、その後、昇降台車(162)は、再現性をもって、ステージ(174)の高さまで上昇させることができる。
【0027】
好ましくは、調節可能制御部材(184)は、昇降台車が所望のステージ高さまで到達したとき、油圧ポンプモータへの電力を切断(154)(少なくとも上昇方向について)することによって、昇降機構を切断させる。調節可能制御部材は、好ましくは、昇降台車の側壁の1つに第1の端部が枢支されたレバーアームを備える。レバーアームの第2の端部は、レバーアームがその第1の端部周りに枢動すると、弧を描いて動く。弓状の軌道(192)が、好ましくは、レバーアームの第2の端部のほぼ近くに設けられ、解除可能留め具(190)が、レバーアームの第2の端部を弓状軌道上の選択された点に解除可能に固定する。レバーアームに取り付けられて別の部材と選択的に係合するか、または、別の部材に取り付けられてレバーアームと選択的に係合するかいずれかの電気スイッチ(154)が、昇降台車がその所望の高さに達したことを感知するのに用いられ、昇降台車をさらに上昇させることになる昇降機構のそれ以上の作動を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の可搬式車椅子昇降装置は、地面から上方へ約109.2cm(43インチ)だけ延在する側方支持部(161、163)を用いるが、その昇降装置は、昇降台車(162)の床(170)を152.4cm(60インチ)のステージ高さまで持ち上げることができる。それにも拘らず、昇降台車の側壁(165、167)および扉(164、172)の高さが109.2cm(43インチ)あるので、昇降装置は、車椅子の使用者だけではなく、松葉杖や歩行補助器を用いる人々にとっても安全である。
【0029】
入口傾斜路の必要性を無くすことによって、本発明の昇降装置は、入口傾斜路を備える同様な昇降装置に比べて、約55%少ない床面積しか必要としない。該昇降装置は、前後152.4cm(5フィート)の使用面積に加えて、入口扉の近くに昇降台車に出入りするための使用者用の余裕を確保するためにさらに121.9cm(4フィート)程度のスペースを必要とするだけである。対比すると、この昇降装置を使用することが、最大19.8m(65フィート)の直線傾斜路に置き換わり、傾斜路自体の費用およびそれが占有するスペースだけではなく、傾斜路を設置し、除去する労務費を節約することになる。
【0030】
昇降装置を91.44cm(36インチ)より狭い幅(たとえば、83.82cm(33インチ))に圧縮することができることによって、昇降装置は、比較的狭い出入口を通って移送することができるようになり、古い学校などの一人用出入口を有する建物を含めて、より広く様々な場所で使用することができるようになる。昇降装置は、縮められ、次いで、それ自体の車輪に載って押されて扉を通る。狭い出入口を通過させるために昇降装置を変形させるのに必要なのは、簡単なツールキットだけである。
【0031】
本発明の昇降装置は、完全に自己完結型小型ユニットであり、ステージ高さセンサなどの追加の構成要素を必要としない。好ましい実施形態により構成されたとき、昇降装置は340kg(750ポンド)の荷重を容易に持ち上げられる。
【0032】
本発明の可搬性の特徴により、1つの昇降装置が複数の箇所で使えるので、公共施設において、複数の固定昇降装置または傾斜路を設置する費用を節約することが可能になる。さらに、本発明の昇降装置を用いると、そうしなければ固定傾斜路によって占められる貴重な床面積を節約できる。本発明の昇降装置は、学校、カレッジおよび大学、総合集会場、公会堂、アリーナ、教会、ホテル、総合会議場、公園およびレクリエーション施設、法廷、高齢者活動センタ、屋外劇場、公共広場、野球場、遊園地、大競技場など、ステージや壇に一時的に登壇する必要が生じ得るほぼいかなる公共施設にでも使用することができる。
【0033】
本発明の昇降装置は、「障害をもつアメリカ人に関する法律」(ADA)に要求されるように、個々の身体障害者一人で(すなわち、付添人の補助なしに)操作することができ、該当するADAの要求を全て満足する。この昇降装置によって、個々の身体障害者が、卒業式や音楽演奏などステージや壇が関係する活動に参加することが可能になる。把持棒が、昇降台車の内壁の長さ一杯に延在し、台車の床および渡り板には滑り防止面が設けられている。所望なら、複数の制御台、すなわち搭乗者の操作用に台車の内部に1つ、付添人の操作用に前端および後端に別の2つの制御台が設けられる。各制御台は、定圧「上昇/下降」スイッチ(138)を備え、昇降台車内の制御台は、別の「押すと停止する」緊急ボタン(160)を備える。昇降台車内の緊急停止ボタンは、押されるとロックし、操作を再開できるようにするには手動でリセットする必要がある。
【0034】
本発明の昇降装置は、60ヘルツ単相10アンペアを供給する標準の120ボルトの壁面コンセントに差し込むように設計された3ピンアース電気コードで給電される。プラグを差し込むと、昇降装置は、僅か9アンペアを引き込み、使用準備ができる。もちろん、電源(111)は、他の国で使用するために、220/240ボルトで作動するように構成することができる。全ての操作制御は、直流12Vの降圧電圧で作動する。部分的または完全な短絡または過電流の場合に電力を遮断するために、漏電回路遮断器(GFCI:Ground Fault Circuit Interrupter)が、電源内に組み込まれている。油圧ポンプ(58)は、1/2馬力コンデンサ始動電動機(56)に直接結合されている。この油圧ポンプ用モータ以外は、全ての制御および操作回路は、直流12Vの固体線形電源(111)で作動する。
【0035】
建物の改造または現場での準備は必要としない。昇降装置は、ステージの前に152.4cm(5フィート)の隙間に加えて、使用者が昇降台車に出入りすることができるように、入口扉の近くに約121.9cm(4フィート)の自由なスペースを必要とするだけである。この特徴は、ステージと座席領域との間に限られたスペースしかない公会堂や他の催場にとって理想的である。
【0036】
本昇降装置の利点の1つは、催し物が進行している間に使用することができることである。昇降装置は低い形状を維持し、その静かな作動は催し物を妨げない。入口および出口扉(164、172)、および側壁(165、167)の殆どを、好ましくは、耐衝撃性透明熱可塑性樹脂で製作し、昇降装置が観衆に目立たないようにする。搭乗者(166)もまた、周囲をはっきり見ることができる。昇降装置を油圧で作動させることにより、滑らかな乗り心地を実現し、また、搭乗者へ不必要な注目を集めることがなくなる。その容易な使用法に鑑みて、この昇降装置はあらゆる年齢層に使用可能である。
【0037】
本発明の昇降装置は、ほんの数分で設置することができる。この昇降装置は、必要なときに使用することができ、そして、それ以上必要でないときは、簡単に仕舞い込むことができる。昇降装置は、その好ましい実施形態では、僅か121.9cm(48インチ)×152.4cm(60インチ)の保管スペースしか必要としない。
【0038】
移送車輪(182)を昇降台車(162)の底部に取り付けると、昇降装置は、それ自体の車輪で転がって、一人で容易に移動させることができる。所望の位置に転がした後、台を安定して作動させるために、車輪を速やかに取り外すことができる。移送車輪は、昇降装置が移送されていないときは、基台フレーム(180)中に保管されている。移送車輪(182)は、好ましくは硬質ゴムで製作される。移送車輪は、道具を使わずに昇降台車に取り付け、取り外しができる。車輪が取り付けられると、昇降装置は、硬く滑らかで水平な面上を容易に転がすことができる。あるいは、昇降装置は、比較的長い距離を移動させなければならないときは、フォークリフト、トラック、またはトレーラによって移送することもできる。さらに、本発明の昇降装置は、他の昇降装置より大きな車輪を採り入れることができ、本昇降装置の屋外使用を理想的なものにする。
【0039】
ステージ調節装置(184)は、道具を全く必要とせずに、正しいステージ高さ、すなわち、昇降台車の床が持ち上げられる最高高さを素早く設定するのに使用することができる。この調節装置は、権限外の使用を防止するために、鍵で開ける施錠パネル(188)によって隠すことができる。
【0040】
ステージ扉(172)が開くとき、ヒンジ式渡り板(176)が、自動的に定位置に下がって、昇降台車(162)とステージ(174)との間の隙間を差し渡す。渡り板(176)は、ステージ(174)に載り、昇降台車の床(170)とステージ(174)との間を滑らかに移動できるようにする。ステージ扉(172)が閉じるとき、渡り板(176)は同時に引っ込められる。下方での下車扉、または昇降台車(162)への入口扉(164)は、台車が完全に下がった位置より5.08cm(2インチ)を超えて上にあるときは常に、入口扉(164)が開くのを防止する電気機械式インターロック(179)を備えている。さらに、いずれかの扉が開いた場合、昇降台車(162)のいかなる動きも防止する電気スイッチ(152、150)が、入口扉(164)およびステージ扉(172)に設けられている。さらに、安全裾部(181)が、昇降台車(162)の下側領域を完全に囲み、防護している。安全上の理由から、下方での入口扉(164)および上方でのステージ扉(172)は共に、自動閉鎖式である。
【0041】
電源不具合の場合は、油圧ポンプ(58)を駆動する電気モータ(56)が作動しない。このため、電気動力なしで台車(162)を上げ下げするための手動油圧ポンプ(80)が非常時用に設けられている。
【0042】
本発明によって構成された昇降装置は、重量が最大約442kg(975ポンド)、垂直上昇/下降速度が毎分213.4cm(7フィート)であり、台車を30.48cm(12インチ)から152.4cm(60インチ)の範囲内の上昇高さまで連続的に調節可能に上昇させることができる。昇降台車の床面積(170)は、好ましくは91.44cm(36インチ)×121.9cm(48インチ)であり、以前に言及したように、昇降台車の扉(164、172)および側方パネル(165、167)は高さ109.2cm(43インチ)である。狭い通路モードに圧縮される前は、昇降装置は、全体幅が約121.9cm(48インチ)である。台車(162)、基台支持フレーム(180)、および油圧昇降シリンダ(50、52)は全て、好ましくは、ASTM A36、AISI 1018、またはAISI 1020鋼から形成される。全ての透明窓は、好ましくは、厚さ1/4インチの耐衝撃性透明熱可塑性樹脂から製作される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電気モータ、油圧歯車ポンプ、補助手動ポンプ、制御バルブ、および油圧シリンダを含む、油圧昇降機構の概略図である。
【図2】油圧昇降機構を駆動するモータの作動を制御するスイッチおよび制御回路を示す概略電気回路図である。
【図3】地上から昇降台車に入る使用者を示す図である。
【図4】昇降台車内に乗って上昇する使用者を示す図である。
【図5】ステージからステージ扉を通って昇降台車に入る使用者を示す図である。
【図6】昇降台車を持ち上げるのに使用される油圧シリンダの1つを示す図である。
【図7】昇降台車の側壁上の弓状軌道内を動く、昇降台車の高さ調節用制御つまみを示す図である。
【図8】昇降装置を移送するために取り付けられる移送用キャスタを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の身体障害者がステージ(174)に上れるようにする昇降装置であって、
a)車椅子(168)内の人物(166)を支持する昇降台車(162)であって、床(170)を有する昇降台車(162)と、
b)前記昇降台車の両側にある、地表面に据わる第1および第2の支持部(161、163)と
c)前記昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させるために、前記第1および第2の支持部(161、163)内に格納され、前記昇降台車(162)に結合された昇降機構(50、52)であって、前記昇降台車の前記床(170)を地表面まで下降させることができる昇降機構(50、52)と
を備え、
d)前記昇降台車を地表面まで下降させたとき、使用者が、搭乗傾斜路の補助なしに前記昇降台車に出入りすることができる昇降装置。
【請求項2】
前記昇降機構が、前記第1および第2の支持部(161、163)内にそれぞれ格納された第1および第2の油圧シリンダ(50、52)を備える、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記昇降機構が、油圧流体を前記第1および第2の油圧シリンダ(50、52)に送り込む電気モータ(56)および油圧ポンプ(58)をさらに備え、前記電気モータおよび油圧ポンプは前記第1および第2の支持部の1つの内部に格納されている、請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記第1および第2の支持部(161、163)が所定の高さを有し、前記昇降機構が、前記所定の高さを超える高さまで前記昇降台車の前記床を持ち上げる、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項5】
a)前記第1の支持部(161)が、ほぼ垂直な固定軌道を備え、
b)前記第1の支持部はまた、前記固定軌道に沿って摺動する可動中間部材を備え、前記中間部材は昇降台車軌道を備え、
c)前記昇降台車(162)は、前記中間部材の前記昇降台車軌道に係合する少なくとも1つのローラを備える、請求項4に記載の昇降装置。
【請求項6】
個々の身体障害者がステージ(174)に上れるようにする昇降装置であって、
a)車椅子(168)内の人物(166)を支持する昇降台車(162)であって、前方扉(164)を有する昇降台車(162)と、
b)地表面に据わる支持基台(180)と、
c)前記支持基台に対して前記昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させる、前記支持基台(180)と前記昇降台車(162)との間に結合された昇降機構(50、52)と、
d)前記昇降台車を地表面から上昇させたとき、選択的に前記昇降台車(162)の前記前方扉(164)をロックし、前記昇降台車を前記支持基台に対して安定させる鋏状支柱(179)であって、前記昇降台車が地表面まで下降したとき、前記前方扉を開くことができるようにロックを解除する鋏状支柱(179)と
を備える昇降装置。
【請求項7】
個々の身体障害者がステージ(174)に上れるようにする昇降装置であって、
a)車椅子(168)内の人物(164)を支持する昇降台車(162)であって、前記昇降台車が床(170)を有し、前記床は、前記車椅子昇降装置が使用されているときは幅が広げられ、狭い通路を通って前記昇降装置を搬送する必要があるときは、前記床はその広げられた幅より幅が狭くなる昇降台車(162)と、
b)地表面に据わる支持基台(180)と、
c)前記支持基台に対して前記昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させる、前記支持基台(180)と前記昇降台車(162)との間に結合された昇降機構(50、52)と
を備える昇降装置。
【請求項8】
前記床(170)は、前記昇降装置が使用されているときは水平に延在し、前記昇降装置の幅を最小にするときはほぼ垂直な向きに回転させられる少なくとも第1のヒンジ式パネルを備える、請求項7に記載の昇降装置。
【請求項9】
前記床(170)は、前記昇降装置が使用されているときは水平に延在し、前記昇降装置の幅を最小にするときはほぼ垂直な向きに回転させられる第2のヒンジ式パネルを備える、請求項8に記載の昇降装置。
【請求項10】
前記床(170)が、前記少なくとも第1のヒンジ式パネルの下にある少なくとも1つの伸縮式横断支柱(196)を備え、前記少なくとも第1のヒンジ式パネルがほぼ垂直な向きに回転させられた後、前記伸縮式横断支柱の長さが縮められる、請求項8に記載の昇降装置。
【請求項11】
複数の伸縮式横断支柱(196)が、前記少なくとも第1のヒンジ式パネルの下にあり、前記少なくとも第1のヒンジ式パネルがほぼ垂直な向きに回転させられた後、前記伸縮式横断支柱の長さがそれぞれ縮められる、請求項10に記載の昇降装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの伸縮式横断支柱(196)が、前記昇降台車(162)の第1の側部(165)から延在する第1の断面寸法の第1の管状部材と、前記昇降台車の対向する第2の側部(167)から延在する、前記第1の断面寸法より大きい第2の断面寸法の第2の管状部材とを備え、前記第1の管状部材が、前記第2の管状部材内を摺動的に延びる、請求項10に記載の昇降装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの伸縮式横断支柱の長さを調節するために、前記第1の管状部材と第2の管状部材とを一定の相対的関係に解除可能に固定する留め具をさらに備える、請求項12に記載の昇降装置。
【請求項14】
個々の身体障害者がステージ(174)に上れるようにする昇降装置であって、
a)車椅子内の人物を支持する昇降台車(162)と、
b)地表面に据わる支持基台(180)と、
c)前記支持基台に対して前記昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させる、前記支持基台(180)と前記昇降台車(162)との間に結合された昇降機構(50、52)と、
d)前記昇降台車(162)に取り外し可能に取り付けられた、前記昇降装置を移送するための複数のキャスタ(182)と
を備える昇降装置。
【請求項15】
昇降台車(162)と、通常は地表面に据わる支持基台(180)と、前記昇降台車を前記支持基台に対して上昇させる昇降機構(50、52)とを備える昇降装置の移送を容易にする方法であって、
a)地表面から前記昇降台車(162)をある程度持ち上げるように前記昇降機構(50、52)を作動させるステップと、
b)前記昇降台車がある程度持ち上げられた状態にある間に、前記昇降台車(162)の底部にキャスタ(182)を取り付けるステップと、
c)前記昇降台車(162)を地面に向かって下げ、それによって、前記昇降台車が降下したときに前記キャスタ(182)を地表面に係合させて、前記キャスタが前記昇降装置の重量全体を支えるように前記昇降機構(50、52)を作動させるステップと
を含む方法。
【請求項16】
d)地面から前記昇降台車(162)をある程度持ち上げるように前記昇降機構(50、52)を作動させるステップと、
e)前記昇降台車がある程度持ち上げられた位置にある間に、前記キャスタ(182)を前記昇降台車(162)の底部から取り外すステップと、
f)前記昇降台車(162)を地面に向けて下げ、それによって、前記支持基台(180)がまた再び地表面と係合することができるように前記昇降機構(50、52)を作動させるステップと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
個々の身体障害者がステージ(174)に上れるようにする昇降装置であって、
a)車椅子内の人物を支持する昇降台車(162)と、
b)地表面に据わる支持基台(180)と、
c)前記支持基台に対して前記昇降台車を選択的に持ち上げ、または下降させる、前記支持基台(180)と前記昇降台車(162)との間に結合された昇降機構(50、52)と、
d)前記昇降台車が上昇させられるべき最大高さを選択するために、前記昇降台車が持ち上げられる前に調節することができる、前記昇降台車からアクセス可能な調節可能制御部材(184)と
を備える昇降装置。
【請求項18】
前記調節可能制御部材によって選択された最大高さまで前記昇降台車が持ち上げられると、前記調節可能制御部材(184)が前記昇降機構を切断する、請求項17に記載の昇降装置。
【請求項19】
前記昇降台車(162)が、少なくとも1つの側壁(167)を備え、前記調節可能制御部材(184)が、第1および第2の対向する端部を有するレバーアームを備え、前記レバーアームの前記第1の端部は、前記少なくとも1つの側壁(167)に枢支され、前記レバーアームの前記第2の端部は、レバーアームがその第1の端部の周りに枢動すると弧を描いて動き、前記調節可能制御部材は、前記レバーアームの前記第2の端部にほぼ近い弓状の軌道(192)をさらに備え、前記調節可能制御部材は、前記弓状軌道の選択された点に対して前記レバーアームの前記第2の端部を解除可能に固定する留め具(190)をさらに備える、請求項17に記載の昇降装置。
【請求項20】
前記昇降台車が所定の高さまで上昇させられたとき、前記昇降台車(162)をさらに上昇させることになる前記昇降機構のそれ以上の作動を防止するために、前記レバーアームに選択的に係合させる電気スイッチ(154)をさらに備える、請求項19に記載の昇降装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2008−526645(P2008−526645A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549663(P2007−549663)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/047495
【国際公開番号】WO2006/072013
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507220648)エイジーエム・コンテイナー・コントロールズ・インコーポレーテッド (1)