可撓性グラファイト床放熱体
床機構(100)は、床基材(112)、前記床基材と熱伝達関係にある加熱または冷却素子(114)を包含する。放熱体(116)は、床基材(112)と熱伝達関係にある。放熱体(116)は、可撓性グラファイト材料の層を包含する。床カバー(118)は可撓性グラファイト材料の層の上にある。床カバー(118)の露出した表面を横切る温度変化は、可撓性グラファイト放熱体(116)の存在により低減されて、床および床に関連する部屋を効率的に、より均一に加熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の異方性の特徴、例えば異方性比を有するグラファイト製品に関する。より詳しくは、本発明は、インターカレーション処理され、剥離され(exfoliated)、所定の面内伝導率と面貫通伝導率との比を有し、調整されたグラファイトのフレークから形成された製品に関する。本製品は、放射式床加熱機構等の一部として使用する放熱体であってよい。本発明の製品を製造する方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
益々高度になる技術的構成部品、例えば処理速度を増加し、より高い周波数で作動する能力がある電子部品や特殊な熱的および電気的伝導性を必要とする燃料電池部品、の開発に伴い、天然グラファイトが、特定の部品に使用する材料として特に選択されるようになっている。天然グラファイトは、電気的および熱的伝導性および成形性のような望ましい特性を、特に銅やステンレス鋼のような金属と比較して、比較的軽い重量と併せ持っているので、非常に有利な材料であると考えられている。そのため、グラファイト製品は、エレクトロニクスにおける熱管理(特に熱的界面材料、放熱体および吸熱源)、PEM燃料電池部品、例えばフローフィールドプレートおよびガス拡散層、ならびに床加熱機構の部品を包含する様々な用途に提案されている。
【0003】
微小電子装置から熱を消散させる必要性が増大するにつれて、熱の管理が、電子製品の設計において益々重要な要素になっている。電子装置の性能信頼性および期待される寿命の両方が、装置の部品温度に逆比例することが分かっている。例えば、典型的なシリコン半導体のようなデバイスの動作温度を下げることにより、デバイスの信頼性および期待される寿命を指数的に増加させることができる。従って、部品の寿命および信頼性を最大限にするには、デバイスの動作温度を、設計者により設定される限度内に制御することが最も重要である。
【0004】
吸熱源は、熱源、例えば発熱している電子部品の表面から、より低温の環境、通常は空気中、に放熱し易くする部品である。多くの典型的な状況では、部品の固体表面と空気との間の熱移動は、その装置中で最も効率が低く、従って、固体−空気の界面は放熱にとって最も大きな障壁となる。吸熱源は、主として空気と直接接触している表面積を増加することにより、部品と周囲の空気との間の熱移動効率を増大しようとするものである。これによって、より多くの熱を放散させ、従って、装置の作動温度を下げることができる。吸熱源の主目的は、装置の温度を、その設計者/製造者により規定される最高許容温度より低く抑えることである。
【0005】
典型的には、吸熱源は金属、特に銅またはアルミニウムから形成されるが、これは、銅の、その構造全体の周囲にある熱を容易に吸収し、移動させる能力によるものである。多くの用途で、銅製の吸熱源は、フィンまたは他の、吸熱源の表面積を増加するための構造を備え、空気を強制的に(例えばファンにより)銅製フィンに沿って、またはその中を通過させ、熱を電子部品から、銅製吸熱源を通し、次いで空気中に放散させる。
【0006】
しかし、銅製吸熱源の使用には制約もある。制約の一つは、銅の相対的な等方性、すなわち、銅構造の、構造の周囲に熱を相対的に均等に配分する傾向に関連している。銅の等方性とは、銅製吸熱源に送られた熱が、空気への最も効率的な移動が行われるフィンに向けられるのではなく、構造の周りに分散されることを意味する。これは、銅製吸熱源を使用する放熱の効率を下げることがある。さらに、銅製またはアルミニウム製の吸熱源を使用することにより、その金属の重量のために、特に発熱面積が吸熱源の面積より著しく小さい場合、問題が生じることがある。例えば、純粋な銅の重量は8.96グラム/立方センチメートル(g/cc)であり、純粋なアルミニウムの重量は2.70g/ccである(典型的には約0.4〜1.8g/ccである、本明細書に開示する形態にあるグラファイトと比較)。多くの用途で、幾つかの吸熱源を、例えば回路基板上に並べ、基板上の様々な部品から発生する熱を放散させる必要がある。銅製吸熱源を使用する場合、基板上にある銅の重量そのものにより、基板が壊れるか、または他の同様に好ましくない影響を受ける機会が多くなり、部品自体の重量も増加する。さらに、銅は金属であるので、金属に一般的な表面の不規則性および変形が生じ、銅製吸熱源を接合している電子部品の表面も金属または他の、比較的剛直な材料、例えば酸化アルミニウムまたはセラミック材料であることが多く、比較的高い圧力による取付を行わない限り、部品から銅製吸熱源への熱移動を最大限にするために銅製吸熱源と部品との間を完全に接続することが困難な場合があるが、これは、電子部品が損傷を受ける場合があるので、好ましくない。その上、金属には不可避な酸化物層は、熱移動に対する大きなバリヤーとなり得るが、グラファイトでは形成されない。
【0007】
イオン交換メンブラン燃料電池、より具体的にはプロトン交換メンブラン(PEM)燃料電池は、水素と空気中の酸素との化学的反応により電気を発生する。燃料電池内では、アノードおよびカソードと呼ばれる電極が重合体電解質を取り囲み、一般的にメンブラン電極アセンブリーまたはMEAと呼ばれるものを形成する。燃料電池内では、電極がガス拡散層、またはGDL、の二重機能を果たすことが多い。触媒材料が水素分子を刺激して水素原子に分裂させ、次いで、メンブランで、これらの原子がそれぞれプロトンおよび電子に分裂する。電子は、電気エネルギーとして利用される。プロトンは、電解質を通って移動し、酸素および電子と結合して水を形成する。
【0008】
PEM燃料電池は、2個のグラファイトフローフィールドプレート間に挟まれたメンブラン電極アセンブリーから形成するのが有利である。従来、メンブラン電極アセンブリーは、不規則に配向した炭素繊維紙(アノードおよびカソード)からなり、触媒材料、特に白金または白金族金属、の薄い層を含み、これらの層は、電極間に配置されたプロトン交換メンブランのいずれかの側に結合した等方性炭素粒子、例えばランプブラック上に施されている。作動の際、水素は、フローフィールドプレートの一方にある通路を通ってアノードに流れ、そこで触媒が、水素の、水素原子への、さらにはプロトンと電子への分裂を促進し、プロトンはメンブランを通過し、電子は外部負荷を通って流れる。空気は、他方のフローフィールドプレート中にある通路を通ってカソードに流れ、そこで空気中の酸素が酸素原子に分裂し、その酸素原子がプロトン交換メンブランを通してプロトンと、および回路を通して電子と結合し、組み合わされて水を形成する。メンブランは絶縁体なので、電子は外部の回路を通って移動し、そこで電気が使用され、カソードでプロトンと結合する。カソード側の空気流は、水素と酸素の組合せにより形成される水を除去することができる機構の一つである。その様な燃料電池が燃料電池積重構造中で組み合わされ、所望の電圧を供給する。
【0009】
最近、PEM燃料電池の特定の部品として天然グラファイト材料を使用することが提案されている。例えば、可撓性グラファイトシート、オハイオ州レイクウッドのGraftech Inc.から市販されているGrafcell(商品名)を用いて製造されたガス拡散層およびフローフィールドプレートが燃料電池用に使用または開示されている。
【0010】
膨脹グラファイト材料を使用する先行技術の加熱機構が、米国特許第5,288,429号、第5,247,005号、および第5,194,198号に提案されている(これら文献は、引用さることにより本明細書の開示の一部とされる)。これらの機構に使用されているグラファイト材料は、一般的に等方性熱伝導率を有するように構築されている。
【0011】
上記のグラファイト製品の様々な用途、ならびに本明細書に特に記載していない他の用途は、最適化するための様々な特性を必要とする。例えば、放熱体は、シートの面内(すなわちシートの主要表面に沿った)方向における熱伝導性を最大限にし、熱をできるだけ速く、効果的に放散させることを必要とするシートを含むことができる。比較として、電気化学的燃料電池用のガス拡散層(上記のように電極としても機能し得る)も、一般的にシートの形態にあり、電流を通し易くするために、ある程度の面貫通(すなわちその主要表面間を通る)導電性を必要とする場合があるが、やはり、できるだけ多くの面内の熱的および電気的伝導性がなお望ましい。
【0012】
グラファイトは、炭素原子の六角形配列または網目の層平面から形成されている。これらの、六角形に配置された炭素原子の層平面は、実質的に平らであり、実質的に互いに平行で等間隔になるように配向または配列されている。実質的に平らで、平行で、等間隔の炭素原子のシートまたは層は、通常、グラフェン層または基底面と呼ばれ、一つに連結または結合されており、それらの群がクリスタライトに配置されている。高度に秩序付けられたグラファイトは、かなりの大きさのクリスタライトからなり、それらのクリスタライトは、相互に高度に整列または配向しており、十分に秩序付けられた炭素層を有する。つまり、高度に秩序付けられたグラファイトは、高度の選択的クリスタライト配向を有する。グラファイトは、異方性構造を有し、従って、方向性が高い多くの特性、例えば熱的および電気的伝導性および流体拡散性、を示すか、または有する。
【0013】
簡潔に述べると、グラファイトは炭素のラミネート構造、すなわち弱いファンデルワールス力により一つに接合された炭素原子の重なり合った層または薄片からなる構造として特徴付けることができる。グラファイト構造を考える時、2つの軸または方向、すなわち「c」軸または方向および「a」軸または方向、を指定する。簡単にするために、「c」軸または方向は、炭素層に対して直角の方向と考えることができる。「a」軸または方向は、炭素層に対して平行の方向または「c」方向に対して直角の方向と考えることができる。可撓性のグラファイトシートを製造するのに好適なグラファイトは、非常に高度の配向を有する。
【0014】
上記のように、炭素原子の平行な層を一つに保持している結合力は弱いファンデルワールス力だけである。天然グラファイトを化学的または電気化学的に処理し、重なり合った炭素層または薄片間の間隔を十分に広げ、その層に対して直角の方向、すなわち「c」方向に大きく拡張し、膨張した、または膨れあがったグラファイト構造を形成することができ、その際、炭素層の薄層特性は実質的に維持されている。
【0015】
大きく膨張した、より詳しくは、最終的な厚さ、つまり「c」方向寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイトフレークを、結合剤を使用せずに形成し、膨張したグラファイトの凝集性の、または一体化されたシート、例えばマット、ウェブ、紙、細片、テープ、等(典型的には「可撓性グラファイト」と呼ばれる)を製造することができる。最終的な厚さ、つまり「c」寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を、一体化された可撓性のシートに、結合剤を使用せずに圧縮により形成することは、大きく膨張したグラファイト粒子間に達成される機械的なかみ合わせ力または凝集性により、可能であると考えられる。
【0016】
シート材料は、膨張グラファイト粒子が、圧縮により得られるシートの対向面に対して実質的に平行に配向しているために、可撓性に加えて、上記の様に、熱的および電気的な伝導性および流体拡散性に関して、出発材料である天然グラファイトに匹敵する高度の異方性を有することも分かっている。このようにして製造されたシート材料は、可撓性に優れ、良好な強度を有し、非常に高度に配向している。
【0017】
簡潔に述べると、可撓性があり、結合剤を含まない、異方性のグラファイトシート材料、例えばウェブ、紙、細片、テープ、ホイル、マット、等の製造方法は、予め決められた負荷の下で、結合剤の不存在下で、「c」方向寸法が本来の粒子の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を圧縮または圧迫し、実質的に平坦で、可撓性がり、一体化されたグラファイトシートを形成することを含んでなる。膨張したグラファイト粒子は、一般的に外観がウォーム状である、または細長く、圧縮された後、圧縮永久ひずみを維持し、シートの対向する主表面と整列している。シート材料の密度および厚さは、圧縮の程度を制御することにより変えることができる。シート材料の密度は約0.8g/cc〜2.0g/ccである。可撓性のグラファイトシート材料は、グラファイト粒子がシートの対向する平行な主要表面に対して平行に配向しているために、かなりの程度の異方性を示す。ロールプレス加工した異方性シート材料では、厚さ、すなわち、対向する平行なシート表面に対して直角の方向は「c」方向を含んでなり、長さおよび幅に沿った、すなわち対向する主要表面に沿った、または平行な方向は、「a」方向を含んでなり、シートの熱的、電気的および流体拡散性は、「c」および「a」方向で非常に大きく、典型的には数等級異なっている。
【0018】
電気的特性に関して、異方性の可撓性グラファイトシートの導電率は、その可撓性グラファイトシートの主要面に対して平行な方向(「a方向」)で高く、その可撓性グラファイトシートの主要表面に対して横方向(「c方向」)で実質的に低い。熱的特性に関しては、可撓性グラファイトシートの熱的伝導率は、その可撓性グラファイトシートの主要面に対して平行な方向(「a方向」)で比較的高く、その主要表面に対して横方向の「c方向」では比較的低い。
【0019】
可撓性グラファイトシートから製造されたグラファイト製品を応用する様々な用途に対して、その製品の異方性比を予め決定または制御し、グラファイト製品の特定の機能的特性を特定の最終用途に最適化するのが非常に有利であろう。異方性比とは、熱的または電気的伝導率に関して、面内伝導率と面貫通伝導率の比を意味する。
【発明の開示】
【0020】
本発明は、剥離し、圧縮した、天然グラファイトのフレークを含んでなるグラファイト製品であって、予め決められた異方性特徴、例えば異方性比、より好ましくは約2〜約250(熱的異方性に関して)または約200〜約5000(電気的異方性に関して)の異方性比、を有するグラファイト製品を提供する。本発明の製品の(熱的伝導率、電気的伝導率または調整された様式における熱的および電気的伝導率のバランスに関する)異方性比は、グラフェン層の調整された方向的整列により得られる。これは、例えば、インターカレーションと剥離の前にグラファイトフレークのフレークサイズを調整すること、剥離されたグラファイト粒子を成形し、完成したグラファイト製品を形成すること、グラファイト製品の粒子の配向を機械的に変えること(これは例えばグラファイト製品を押し付けること、可撓性グラファイト製品にせん断力を作用させること、可撓性グラファイト製品をエンボス加工すること、グラファイト製品を局所的に押し付けること、またはそれらの組合せにより行う)、あるいはそれらの組合せにより、達成できる。
【0021】
本発明の別の態様においては、所定の異方性特徴を有する完成したグラファイト製品の製造方法を提供する。この方法は、完成した可撓性グラファイト製品に望ましい異方性特徴を決定すること、グラファイトフレークをインターカレーション処理し、次いで剥離し、剥離されたグラファイト粒子を形成すること、該剥離されたグラファイト粒子を、グラフェン層から形成された凝集性製品に圧縮することにより、基材グラファイト製品を形成すること、該基材グラファイト製品中の該グラフェン層を方向的に整列させ、所望の異方性特徴を有する完成したグラファイト製品を形成することを包含する。
【0022】
本発明の別の態様においては、床基材、該床基材と熱伝達関係にある加熱または冷却素子、および該床基材と熱伝達関係にある放熱体を含んでなる床機構を提供する。該放熱体は、床基材の上に配置する可撓性グラファイト材料の層を包含する。該可撓性グラファイト材料の層の上に、床カバーを配置する。床カバーの露出した表面を横切る温度変動は、放熱体として機能する可撓性グラファイト材料の層が存在することにより、低減される。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明は、下記の詳細な説明を、特に添付の図面を参照しながら読むことにより、より深く理解され、その優位性がより明確になる。
【0024】
グラファイトは、平らな層状平面で共有結合した原子を含んでなり、平面間で弱く結合した結晶形態の炭素である。グラファイトの粒子、例えば天然グラファイトフレーク、を、例えば硫酸および硝酸の溶液のインターカレート(intercalant)で処理することにより、グラファイトの結晶構造が反応し、グラファイトとインターカレートの化合物を形成する。処理したグラファイト粒子を、以下、「インターカレーション処理されたグラファイトの粒子」と呼ぶ。高温にさらすことにより、グラファイト中のインターカレートが分解して揮発し、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子を、「c」方向で、すなわちグラファイトの結晶平面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80倍以上もの寸法で膨張させる。剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧迫し、可撓性のシートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および裁断することができ、機械的衝撃で変形させることにより、小さな横方向開口部を与えることもできる。
【0025】
本発明で使用するのに好適なグラファイト出発材料は、有機および無機酸ならびにハロゲンでインターカレーション処理し、次いで加熱した時に膨脹することができるグラファイト化度の高い炭素質材料である。これらのグラファイト化度の高い炭素質材料は、最も好ましくは約1.0のグラファイト化度を有する。本発明で使用する用語「グラファイト化度」は、下記式:
【数1】
に従う値を意味する。ここでd(002)は、オングストローム単位で測定した結晶構造中にある炭素のグラファイト層間における間隔である。グラファイト層間の間隔dは標準的なX線回折技術により測定される。(002)、(004)および(006)ミラー指数に対応する回折ピークの位置を測定し、標準的な最小二乗法を使用し、これらのピークすべてに対する総誤差を最小にする間隔を導く。グラファイト化度の高い炭素質材料の例としては、様々な供給源から得られる天然グラファイト、ならびに他の炭素質材料、例えば化学蒸着等により製造された炭素、がある。天然グラファイトが最も好ましい。
【0026】
本発明で使用するグラファイト出発材料は、出発材料の結晶構造が必要なグラファイト化度を維持し、剥離可能である限り、非グラファイト成分を含むことができる。一般的に、結晶構造が必要なグラファイト化度を有し、剥離可能である炭素含有材料はすべて、本発明で使用するのに好適である。その様なグラファイトは、好ましくは灰分が約25重量%未満、より好ましくは約10重量%未満である。最も好ましくは、本発明に使用するグラファイトは、純度が少なくとも約94%である。最も好ましい実施態様では、使用するグラファイトの純度が少なくとも約99%である。
【0027】
グラファイトシートの一般的な製造方法はシェーン(Shane)らの米国特許第3,404,061号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に記載されている。シェーンらの方法の典型的な実施では、例えば硝酸と硫酸の混合物を、好ましくはグラファイトフレーク100重量部あたりインターカレート溶液約20〜約300重量部(pph)のレベルで含む溶液中にフレークを分散させることにより、天然グラファイトフレークをインターカレーション処理する。インターカレーション溶液は、この分野で公知の酸化剤および他のインターカレーション剤を含む。例としては、酸化剤および酸化性混合物を含む溶液、例えば硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸等、または混合物、例えば、濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸、または強有機酸の混合物、例えばトリフルオロ酢酸、および有機酸に可溶な強酸化剤、を含む溶液が挙げられる。あるいは、電位を利用してグラファイトの酸化を引き起こすこともできる。電解酸化を利用してグラファイト結晶中に導入することができる化学種は、硫酸ならびに他の酸を含む。
【0028】
好ましい実施態様においては、インターカレーション剤は、硫酸、または硫酸およびリン酸、と酸化剤、すなわち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸、等、との混合物の溶液である。インターカレーション溶液は、金属ハロゲン化物、例えば塩化第二鉄、および硫酸と混合した塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば臭素と硫酸の溶液として、または臭素の有機溶剤溶液として、臭素を含むこともできる。
【0029】
インターカレーション溶液の量は、約20〜約150pph、より好ましくは約40〜約120pphである。フレークをインターカレーション処理した後、過剰の溶液はすべてフレークから排出し、フレークを水洗する。あるいは、インターカレーション溶液の量を約10〜約50pphに制限することができ、これにより、米国特許第4,895,713号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に開示されているように、洗浄工程を省くことができる。
【0030】
インターカレーション溶液で処理したグラファイトフレークの粒子は、所望により、例えば混合により、アルコール、糖、アルデヒドおよびエステルから選択された、温度25℃〜125℃で酸化性インターカレーション溶液の表面被膜と反応し得る還元剤と接触させることができる。好適な、具体的な有機試剤としては、ヘキサデカノール、オクタデカノール、1-オクタノール、2−オクタノール、デシルアルコール、1,10−デカンジオール、デシルアルデヒド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デキストロース、フルクトース、ラクトース、スクロース、ジャガイモデンプン、エチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコール、ジベンゾエート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ジメチルオキシレート、ジエチルオキシレート、メチルホルメート、エチルホルメート、アスコルビン酸およびリグニン由来の化合物、例えばリグノ硫酸ナトリウムがある。有機還元剤の量は、グラファイトフレーク粒子の約0.5〜4重量%であるのが好適である。
【0031】
インターカレーションの前、最中または直後に膨脹助剤を塗布することによっても改良することができる。これらの改良には、剥離温度の低下および膨脹体積(「ウォーム体積」とも呼ばれる)の増加が含まれる。本明細書における膨脹助剤は、膨脹の改良を達成できるように、インターカレーション溶液に十分に可溶な有機材料が有利である。より詳しくは、好ましくは炭素、水素および酸素だけを含む、この種の有機材料を使用するとよい。カルボン酸が特に効果的であることが分かっている。膨脹助剤として有用な、好適なカルボン酸は、少なくとも一個の炭素原子、好ましくは約15個までの炭素原子を有し、インターカレーション溶液中に、剥離の一つ以上の特徴を大きく改善するのに有効な量で溶解し得る、芳香族、脂肪族または環状脂肪族、直鎖状または分岐鎖状の、飽和および不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸およびポリカルボン酸から選択される。有機膨脹助剤のインターカレーション溶液に対する溶解度を改良するために、好適な有機溶剤を使用することができる。
【0032】
飽和脂肪族カルボン酸の代表例は、例えば式H(CH2)nCOOHの、nが0〜約5の数である酸であり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、等を包含する。カルボン酸の代わりに、酸無水物または反応性カルボン酸誘導体、例えばアルキルエステル、も使用できる。アルキルエステルの代表例は、ギ酸メチルおよびギ酸エチルである。硫酸、硝酸および他の公知の水性インターカレートは、ギ酸を最終的に水および二酸化炭素に分解する能力を有する。このため、ギ酸および他の敏感な膨脹助剤をグラファイトフレークと接触させた後で、水性インターカレートにフレークを浸漬するのが有利である。ジカルボン酸の代表例は、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、特にシュウ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,5−ペンタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸またはテレフタル酸である。アルキルエステルの代表例は、シュウ酸ジメチルおよびシュウ酸ジエチルである。環状脂肪族酸の代表例は、シクロヘキサンカルボン酸であり、芳香族カルボン酸の代表例は、安息香酸、ナフトエ酸、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、o−、m−およびp−トリル酸、メトキシおよびエトキシ安息香酸、アセトアセタミド安息香酸およびアセトアミド安息香酸、フェニル酢酸およびナフトエ酸である。ヒドロキシ芳香族酸の代表例は、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸である。ポリカルボン酸の中ではクエン酸が特記される。
【0033】
インターカレーション溶液は、水性であり、剥離を強化するのに有効な量、好ましくは約1〜10%の膨脹助剤を含む。膨脹助剤をグラファイトフレークと、インターカレーション水溶液中に浸漬する前または後に接触させる実施態様では、膨脹助剤をグラファイトと、典型的にはグラファイトフレークの約0.2〜約10重量%の量で、好適な手段、例えばV−ブレンダーにより混合することができる。
【0034】
グラファイトフレークをインターカレーション処理し、インターカレート被覆した、インターカレーション処理したグラファイトフレークを有機還元剤と混合した後、その混合物を温度25〜125℃にさらし、還元剤とインターカレート被覆の反応を促進する。加熱期間は約20時間までであり、上記範囲中の高い温度では、より短く、例えば少なくとも約10分間である。高い温度では、半時間以下、例えば10〜25分間のオーダーの時間でよい。
【0035】
このようにして処理されたグラファイトの粒子は、「インターカレーション処理したグラファイトの粒子」と呼ばれることがある。高温、例えば少なくとも約160℃、とりわけ、約700℃〜1000℃以上の温度に暴露することにより、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子は、c−方向で、すなわち構成するグラファイト粒子の結晶面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80〜1000倍以上にも膨張する。膨脹した、すなわち剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧縮し、可撓性のシートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および裁断する、および/または機械的衝撃で変形させることにより、小さな横方向開口部を与えることができる。
【0036】
可撓性グラファイトシートおよびホイルは、凝集性であり、良好な取扱強度を有し、例えばロールプレス加工により、厚さ約0.075mm〜3.75mm、典型的な密度が約0.1〜2.0グラム/立方センチメートル(g/cc)に効果的に圧縮される。米国特許第5,902,762号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に開示されているように、約1.5〜30重量%のセラミック添加剤をインターカレーション加工したグラファイトフレークと混合し、最終的な可撓性グラファイト製品の樹脂含浸性を高めることができる。これらの添加剤は、長さ約0.15〜1.5ミリメートルのセラミック繊維粒子を含む。粒子の幅は約0.04〜0.004mmが好適である。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で非粘着性であり、約1100℃までの、好ましくは約1400℃以上の温度で安定している。好適なセラミック繊維粒子は、細断した石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、等から形成される。
【0037】
可撓性グラファイトシートは、場合により、樹脂で処理するのが有利であり、吸収された樹脂は、硬化後、可撓性グラファイトシートの耐湿性および取扱強度、すなわち剛性を高めると共に、形成されたグラファイト構造(特に「整列した」グラフェン層)を「固定する」。好適な樹脂含有量は、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは約10〜35重量%、約60重量%までが好適である。本発明の実施に特に有用であることが分かっている樹脂としては、アクリル、エポキシおよびフェノールを基剤とする樹脂系、またはそれらの混合物がある。好適なエポキシ樹脂系には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを基剤とする系(DGEBA)、および他の多官能性樹脂系があり、使用できるフェノール系樹脂としては、レゾールおよびノボラックフェノール系がある。典型的には、必要という訳ではないが、樹脂系を溶媒和させ、可撓性グラファイトシート中に塗布し易くする。典型的な樹脂含浸工程では、可撓性グラファイトシートを容器を通し、例えばスプレーノズルから放出される樹脂系で含浸させ、真空チャンバーを使用して樹脂系を「マットを通して吸引」するのが有利である。その後、樹脂系を好ましくは乾燥させ、樹脂の粘着性を下げる。
【0038】
可撓性グラファイトシートが、熱的伝導性に関して約20〜30(すなわち面内方向約150〜200ワット/メートル℃(W/m℃) 対 面貫通方向約7W/m℃)の異方性比を有し、電気的伝導性に関する典型的な異方性比が約1600〜2000(すなわち面内伝導率約125,000シーメンス/メートル(S/m) 対 面貫通導電率約70S/m)であることは一般的に認められている。しかし、上記のように、特定の最終用途に対する異方性比を「管理する」または予め決定する能力は非常に有利であろう。例えば、少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約70の熱的異方性比は、放熱体用途には非常に望ましいであろう。実際、吸熱源および熱的界面を包含するほとんどの熱管理用途には、少なくとも約160の熱的異方性比が最も好ましい。
【0039】
同様に、グラファイト使用の重量に関する優位性を維持しながら、電流の流れをある方向で最大限にするには、少なくとも約2200の電気的異方性比が多くの用途に望ましい。さらに、電気化学的燃料電池部品には、電気的および熱的異方性比間のバランスをとり、燃料電池の熱を効率的に除去しながら、電流の流れを最適にすることが望ましい。燃料電池部品は、約1500未満の電気的異方性比を、約70を超える熱的異方性比と組み合わせるのが、最も好ましい。
【0040】
このためには、グラファイト製品、特に剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から形成された製品を、予め決められた異方性特徴、より詳しくは、予め決められた異方性比を有するように製造することができる。これを行うには、グラフェン層の方向的整列を調整して製品を製造する。より詳しくは、グラフェン層の方向的整列度合いが高いほど、異方性比は高い。グラフェン層の方向的整列は、とりわけ、インターカレーション処理および剥離の前にグラファイトフレークのフレークサイズを調整すること、剥離されたグラファイト粒子を成形し、完成したグラファイト製品を形成すること、グラファイト製品の粒子の配向を機械的に変えること(例えば基材グラファイト製品を押し付けること、基材可撓性グラファイト製品にせん断力を作用させること、グラファイト製品をエンボス加工すること、グラファイト製品を局所的に押し付けること、あるいはそれらの組合せにより行う)、またはそれらの組合せにより、達成できる。
【0041】
例えば、インターカレーション処理および剥離の前に小さな粒子を使用することにより、そのグラフェン層の方向的整列度が低い(従って、より大きな粒子径と比較して、異方性比が低い)グラファイト製品が形成される。反対に、圧縮により圧力を作用させることにより(例えば、往復プラテンまたはフラットプレスを使用するダイプレス加工により)、あるいはせん断力を作用させる(例えばカレンダー加工またはロールプレス加工により)ことにより、方向的整列が増加する傾向があるが、圧力作用の具体的な様式は相対的である、すなわち、製品にせん断力を作用させることにより、方向的整列度が大きくなり、従って、異方性比が高くなるのに対し、圧縮では、方向的整列度が低く、従って、異方性比が比較的低くなる。
【0042】
例えば、より具体的に、グラファイト製品の異方性比を下げるために、少なくとも約70重量%が80メッシュスクリーン(−80メッシュと呼ぶ)(他に指示が無い限り、メッシュサイズは全て米国標準スクリーンを基準とする)を通過するようなグラファイトフレークサイズを使用することにより製品を形成することができる。実際、グラファイトフレークは、少なくとも約50重量%が80メッシュスクリーンを通過するが、140メッシュスクリーンは通過せず(80×140メッシュと呼ぶ)、含水量が約1.0%を超えるようなサイズを有することができる。事実、フレークが小さい程、方向的整列度は低く、従って、異方性比が小さい。従って、さらに小さな異方性比(すなわちより大きな等方性)を達成するには、140メッシュスクリーンを通過するようなサイズを有するフレークが好ましい。
【0043】
グラファイト製品の成形、特に膨脹グラファイト粒子(樹脂を含むか、または含まない)を、平衡またはダイプレス加工により型の中に押し込むことにより、構成するグラフェン層の方向的整列を制御することもできる。成形は、一般的に約7メガパスカル(mPa)〜約700mPa以上の圧力下で行い、圧力が高い程、グラフェン層の方向的整列度が高くなる。
【0044】
圧力の作用によりグラフェン層の整列を機械的に変えることは、最終グラファイト製品の形態および機能的特徴、従って、グラフェン層の方向的整列度、を制御し、調節するのに効果的に使用することができる。より詳しくは、圧力の作用を目的に合わせて調製し、所望の特性を可能な程度に達成することができる。圧力は、グラファイト製品の面内熱伝導率を、密度を純粋な銅の密度より小さく維持したまま、純粋な銅の伝導率と等しいか、またはさらにそれより高い伝導率に増加させることができる。その上、得られる「整列した」製品の異方性比は、「整列前の」製品のそれよりはるかに高く、少なくとも約70〜約160以上(熱的異方性に関して)にもなる。
【0045】
グラフェン層整列の機械的変更は、エンボス加工によっても、特に空隙制御と組み合わせて行うことができる。より詳しくは、特にグラファイト製品を電気化学的燃料電池における構成部品として使用する場合、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシートを、電気的および熱的伝導性を燃料電池用途に最適にするために、空隙をあまり含まないように形成することができる。これは、例えば、空隙をあまり含まない状態(例えば、樹脂含有量に応じて、少なくとも約1.5g/ccの密度により示されるように)になるように、シートをカレンダー加工または圧縮することにより、達成でき、これによって、比較的高い熱的異方性比(潜在的に、約160以上のオーダー)を有する製品が製造される。ある種の放熱体用途におけるように、より低い異方性比が望ましい場合、使用中の剛性を高め、最終的な形態を固定するために樹脂で飽和させたグラファイト製品に対する約0.4〜約1.4g/ccの密度により示される、より高い空隙状態が望ましい。
【0046】
ここで、図1、図1(A)に関して、本発明の方法を使用して製造された二枚のシートの壁断面の顕微鏡写真を示す。図1のシートは、エンボス加工の前に、空隙をあまり含まないようにカレンダー加工したものである。図1(A)のシートは、エンボス加工の前に、空隙を含まない状態にしていない。形態の違い(すなわち、方向的整列度)は明らかである。図1で、グラフェン層は、壁の表面と、より多く整列している(すなわち壁と平行である)ことが容易に分かる。事実、「逆三角形」区域が壁の上側部分で明瞭であり、交差する線が見られ、そこでは、グラファイトの流動前線同士が遭遇し、壁の内部構造を比較的対称的な部分に実質的に分割している。これを図1(A)の壁と対照させると、エンボス加工/空隙制御により造り出される構造は明らかである。当業者には明らかなように、エンボス加工した可撓性グラファイトにおける構造の相対的な量により、上記のように、異なった異方性特性が得られる。
【0047】
図2〜図2(C)に示すように、これを達成するためのエンボス加工装置10は、一般的に二個の対向する素子20および30を含んでなり、それらの少なくとも一方は、エンボス加工素子20であり、その上にエンボス加工パターンを有する。このエンボス加工パターンは、エンボス加工素子20の表面から予め決められた高さを有する、チャネル床部24により分離された、最上部またはランド22aを有する一連の壁22を、エンボス加工素子20の表面近くに配置することにより形成される。典型的には、チャネル床部24は、事実上、エンボス加工素子20の表面である。着床(landing)素子30は、好ましくは一般的に平らな表面を有する素子を含んでなり、その素子に対してエンボス加工素子20が作用し、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシート上にエンボス加工パターンを押し付ける。着床素子30の衝撃表面32も、構造またはパターンを有し、エンボス加工工程を容易にするか、または可撓性グラファイトシートのエンボス加工されない表面に所望の構造またはパターンを付けることができる。
【0048】
エンボス加工素子20および着床素子30は、共同して可撓性グラファイトシート上にパターンをエンボス加工できるのであれば、ローラー、プレート、それらの組合せ、または他の構造を含んでなることができ、好ましくは図2(C)に示すように、ローラーを含む。エンボス加工素子20および着床素子30は、エンボス加工装置10の中に、着床素子30の表面32が、エンボス加工素子20のチャネル床部24から、壁22の高さと少なくとも等しい間隔「d」だけ分離されるように配置する。実際、最も好ましい実施態様では、着床素子30の表面32は、エンボス加工素子20のチャネル床部24から、可撓性グラファイトシート100のシート床(すなわちシート100の壁間)の位置で、壁22の高さ+エンボス加工された可撓性グラファイトシート100の所望の厚さと少なくとも等しい間隔「d」だけ分離されるように配置する。
【0049】
カレンダー加工し、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシート100aは、図2に示すように、エンボス加工前のエンボス加工パターンの区域における厚さが間隔「d」よりは小さいが、着床素子30の表面32とエンボス加工素子20の壁22との間の間隔よりは大きくなるように形成する。エンボス加工の際、図2〜図2(B)に示すように、シート100a中の材料(すなわちグラファイトおよび樹脂)が、シート100aの、シート100aを圧迫するエンボス加工素子20の壁22のランド22aから圧力を受ける区域から、シート100aとエンボス加工素子20のチャネル床部24との間の隙間24aに流れる。このカレンダー加工および樹脂含浸された可撓性グラファイトシート100aのグラファイト/樹脂が「再配置」されることは、驚くべきことであり、これによって、(図2および図2(A)に示すように)エンボス加工素子20のエンボス加工パターンに対応するチャネルパターンを形成する、シート床部102およびシートランド104を有するエンボス加工された可撓性グラファイトシート100が形成される。
【0050】
グラファイト製品のグラフェン層を方向的に整列させるためのもう一つの方法は、製品の特定区域におけるグラフェン層を機械的に変化させることである。これらの区域は、グラファイト製品、例えば可撓性グラファイトシート、の表面を、複数の位置で局所的に押し付け、表面を横方向に変形させ、シート中のグラファイトを移動させることにより、機械的に変化させ、続いて、この変形した、押し付けられた表面を平らな表面にプレス加工する。
【0051】
例えば、図5に示すような、ローラー80の平滑表面と共作用する溝50および隆起部60を有するローラー75を包含する装置40を使用して、図3に示す可撓性グラファイトシート100aの平坦な表面30を、好ましくは連続パターンで、平らな表面110を機械的に型押し加工に付すことにより、横方向に変形させ、予め決められた深さ、例えばシート100aの厚さの1/8〜1/2に貫通させ、シート100a中のグラファイトを移動させることができる(幾つかの変形パターンを図4(A)〜4(C)に示す)。得られる製品を、図6に側方立面図で示す。グラファイト粒子(従って、グラフェン層)の不整列は、全体的に可撓性グラファイトシート100a中にあるグラファイトの、機械的衝撃により引き起こされた移動によるものである。図6に示す横方向に変形した製品を、例えばロールプレス加工により、圧縮し、図6(A)に示すように、表面30を平らな状態に回復させる。図6(A)に関して、表面30を平坦な状態に回復させた後、シート100aは、平坦な表面30に隣接する区域70を有し、そこでは膨脹グラファイト粒子800が、平行で平坦な、対向する表面30,40と実質的に整列せず、異方性比を低下させている(すなわち、等方性を大きくしている)。図7に関して、可撓性グラファイトシート10は、両方の対向表面30,40で横方向に、連続的または同時に変形させ、続いて圧縮し、図7(A)に示すような、平坦な対向する表面30,40を形成することができる。図7(A)の製品は、それぞれ両方の平行で平坦な表面30,40に隣接する、実質的に不整列で、異方性がさらに低減した膨脹グラファイト粒子の区域70を有する。
【0052】
上記のように本発明を実施することにより、グラファイト製品の異方性特徴を制御することができる。このようにして、電子部品の熱管理であれ、燃料電池部品の熱的および電気的管理を改善することであれ、床機構における放熱体であれ、それぞれの具体的な最終用途に最適な特徴を有する製品を製造することができる。
【0053】
ラミネート加工された製品
本発明の実施においては、複数の、このように製造された可撓性グラファイトシートを、所望により、一体的な製品、例えばブロックまたは他の所望の形状にラミネート加工することができる。剥離されたグラファイトの圧縮された粒子の異方性の可撓性シートを、好適な接着剤、例えば感圧の、または熱的に活性化される接着剤を間に入れてラミネート加工することができる。選択する接着剤は、接着強度と最小厚さのバランスをとり、放熱させるべき電子部品の使用温度で十分な接着を維持するべきである。好適な接着剤は、当業者には公知であり、フェノール系樹脂を包含する。
【0054】
最も好ましくは、このラミネート加工された製品の実施態様を形成する、剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から形成された、異方性の可撓性シートにおいて、グラファイト結晶構造の平らな方向に対して平行に伸びる「a」方向は、放熱が望まれる電子部品から熱を所望の方向に向けるように配向されている。このように、グラファイトシートの異方性は、熱を電子部品の外側表面から(すなわちグラファイトシートに沿った「a」方向で)移動させ、接着剤の存在により損なわれない。そのようなラミネートは、一般的に密度が約1.1〜約1.35g/ccであり、熱伝導率が面内(すなわち「a」)方向で約220〜約250であり、面貫通(すなわち「c」)方向で約4〜約5である。従って、典型的なラミネートは、熱的異方性比、つまり面内熱伝導率と面貫通熱伝導率の比が約44〜約63である。
【0055】
ラミネートの面内および面貫通方向における熱的伝導率の値は、ラミネートの形成に使用する可撓性グラファイトシートのグラフェン層の方向的整列を変えることにより、またはラミネート自体の、ラミネート形成後のグラフェン層の方向的整列を変えることにより、操作することができる。このようにして、ラミネートの面貫通熱伝導率を下げながら、ラミネートの面内熱伝導率を増加し、これによってラミネートの熱的異方性比が少なくとも約70、好ましくは少なくとも約110に増加する。最も好ましくは、ラミネートの熱的異方性比を少なくとも約160に増加する。
【0056】
このグラフェン層の方向的整列を達成できる一つの方法は、構成する可撓性グラファイトシートに、シートをカレンダー加工することにより(すなわちせん断力を作用させることにより)、またはダイプレス加工もしくは往復プラテンプレス加工により(すなわち圧縮作用により)、圧力を作用させることであり、方向的整列には、カレンダー加工が最も効果的である。例えば、シートを密度1.1g/ccから1.7g/ccにカレンダー加工することにより、面内熱伝導率は、約240W/m℃から約450W/m℃以上に増加し、面貫通熱伝導率は、約23W/m℃から約2W/m℃に減少し、従って、個々のシート、さらにはそこから形成されたラミネート、の熱的異方性比を(約10〜約225に)大きく増加する。
【0057】
あるいは、ラミネートを形成した後、ラミネート全体を構成するグラフェン層の方向的整列を、例えば圧力の作用により、強化し、ラミネートを構成する可撓性グラファイトシートの初期密度より大きい密度を得る。実際、このようにして、ラミネート加工した製品の最終密度は、少なくとも約1.4g/cc、より好ましくは少なくとも約1.6g/ccから約2.0g/ccまで増加することができる。圧力は、従来の手段、例えばプレス加工またはカレンダー加工、により作用させることができる。少なくとも約60メガパスカル(MPa)の圧力が好ましく、2.0g/ccまでの密度を達成するには、少なくとも約550MPa、より好ましくは少なくとも約700MPaの圧力が必要である。
【0058】
驚くべきことに、グラフェン層の方向的整列を強化することにより、グラファイトラミネートの面内熱伝導率を、純粋な銅の伝導率と等しいか、またはさらにはそれより大きい導電性に増加することができ、密度は純粋な銅の密度と同等のままである。その上、得られた「整列した」ラミネートの熱的異方性比は、「整列前の」ラミネートより大幅に高く、少なくとも約70から約160以上までである。さらに、得られた整列したラミネートは、「整列していない」ラミネートと比較して、強度が増加している。
【0059】
整列した製品の意図する最終用途に応じて、この整列方法は、ラミネート中に様々な整列程度を生じ、製品の異方性をさらに制御し、操作することができる。
【0060】
次いで、得られた整列したラミネートをプレス加工するか、または所望の形状に成形するか(実際、この整列方法は、ラミネートを所望の形状に成形することができる)、または機械加工することができる。成形された、整列したラミネートは、熱的問題の解決策、例えば熱的界面、放熱体および/または吸熱源、として使用し、熱を熱源、例えば電気部品、からある方向で、潜在的には銅の重量欠点無しに、少なくとも銅と同じ位に放散させることができる。
放射加熱された床機構
【0061】
図8は、建物104の空間または部屋102の一部である床機構100を図式的に示したものである。建物104の内側空間102は、複数の平らな境界構造、例えば床機構100、壁106および天井110により規定される。本発明を主として床機構100に関して説明するが、無論、本発明の原理は、境界構造、例えば壁106または108もしくは天井110のいずれかに埋め込まれた加熱または冷却機構にも適用できる。
【0062】
床機構100は、床基材112を包含する。加熱または冷却素子114は、床基材112と熱伝達関係にある。下記の説明は、主として加熱素子114に関して行うが、無論、これは冷却素子も含む。素子114は、より一般的には、加熱または冷却できる熱伝達素子と呼ぶことができる。
【0063】
加熱素子114は、電気抵抗配線加熱素子および熱伝達流体を運ぶための配管網目を包含するが、これらに限定しない、入手可能なあらゆる種類の加熱または冷却素子でよい。床基材112は、選択された加熱素子と共に使用するのに好適な種類の、全ての従来型床基材でよい。好適な加熱素子114および床基材112を、以下にさらに詳細に説明する。
【0064】
可撓性グラファイト材料の層を含んでなる放熱体116は、床基材112と熱伝達関係にあり、好ましくは床基材112の上にあり、それと接触している。しかし、無論、放熱体116は、特定の型の床基材の中に埋め込まれていても、またはその下にあってもよく、それでも本発明の利点を達成する。
【0065】
床カバー118は、放熱体116の上に位置する。無論、床カバー118は、放熱体116と直接接触していなくてもよく、様々な層、例えばカーペット用の詰め物により放熱体から分離されていてもよい。実際、上記のように、放熱体116は、床基材112の中に埋め込まれていても、その下に配置されていてもよい。例えば、一つの層が他の層の上にあるとして記載されていても、他に特別な指示が無い限り、それらが互いに接触している必要はない。以下にさらに説明するように、床カバー118は、ビニル床材、カーペット、硬材およびセラミックタイルを包含するが、これらに限定しない、全ての従来型床カバーでよい。
【0066】
所望により、絶縁性材料120の層が床基材112および/または加熱素子114の下に位置し、これらを地表122または床下の空間から絶縁する。
【0067】
図9の透視図に最も分かり易く示すように、床カバー118は、部屋102の内側に露出した表面124を有し、その上を、この部屋102の住人が歩くことになる。
【0068】
可撓性グラファイト材料の層を含んでなる放熱体116は、それぞれ上表面126および下表面128とも呼ばれる2つの対向する主要表面126および128を有する。放熱体116は、これらの表面126と128との間で規定される厚さ130を有する。可撓性グラファイト材料の層は、平坦な表面126と128に対して平行の第一熱伝導率、および平坦な表面126と128とに対して直角の第二熱伝導率を有する。上に詳細に説明したように、可撓性グラファイトシートの、表面126と128とに対して平行の熱伝導率は、これらの表面に対して直角の熱伝導率より大きい。これらの熱伝導率の比は、異方性比として説明でき、好ましくは少なくとも2.0の値を有する。より好ましくは、この異方性比約2〜約250である。さらに好ましくは、この異方性比は、少なくとも約30である。
【0069】
典型的には、平坦な表面126と128とに対して直角の熱伝導率は、少なくとも約2W/m℃であり、表面126と128とに対して平行の熱伝導率は、少なくとも約140W/m℃である。
【0070】
平坦な表面126と128とに対して直角の熱伝導率が少なくとも約7W/m℃であり、異方性比が2である場合、これらの表面に対して平行の熱伝導率は少なくとも約14W/m℃である。
【0071】
やはり上に説明したように、放熱体116が構築されている材料は、密度が少なくとも約0.08g/ccである比較的軽量の材料である。より好ましくは、この材料は、密度が少なくとも約0.6g/ccである。
【0072】
所望により、層116の可撓性グラファイト材料は、上記のように樹脂で含浸されていてよい。
【0073】
また、可撓性グラファイト層116は、複数の可撓性グラファイトシートを含み、可撓性グラファイトシートのそれぞれが方向的に整列したグラフェン層を含んでなるラミネートでよい。
【0074】
加熱素子および床基材
床基材112および加熱素子114は、どのような従来型の放射床加熱機構でもよい。
【0075】
例えば、加熱素子114は、電気抵抗配線加熱素子、例えばBuffalo Grove, ILのThermoSoft International Corporationから市販されているThermoTile(商品名)放射床加熱機構に使用されている素子でよい。
【0076】
そのような電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には、加熱素子114を完全に埋め込むことができる型の床基材112で使用される。
【0077】
例えば、床カバー118がビニル床材またはカーペットである場合、電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には、セメントの層を含んでなる床基材112の中に埋め込まれる。
【0078】
電気抵抗配線型加熱素子114は、金属床材層、例えば床全体にわたって熱を放散させることができるアルミニウムに取り付けることもできる。
【0079】
あるいは、床カバー118がセラミック型である場合、電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には薄い硬化したモルタルの層を含んでなる床基材112の中に埋め込まれる。
【0080】
熱伝達流体、例えば高温水を通すための配管網目を含む型の加熱素子114を選択する場合、例えばApple Valley, MinnesotaのUponor Wirsbo Companyから市販されている素子でよい。そのような機構は、典型的には架橋したポリエチレン(PEX)管を使用し、これをコンクリート床基材112の中に埋め込むことができる。そのような機構は、他の配管材料、例えば銅も使用できる。
【0081】
配管型加熱素子114は、図10に示す従来型の木製床基材にも使用できる。そのような場合、配管は、従来型の木製床横梁138間に伸びる従来型の合板または配向性ストランドボード木製副床材136の下側132に取り付ける。この実施態様では、木製副床材136および横梁138は、図8および図9の床基材112を含んでなる。所望により、放熱体116は、図11に示すように、副床材136の下側でかつ加熱素子114の上にあってもよい。
【0082】
所望により使用する絶縁層120は、好適などのような絶縁でもよい。放射加熱機構で使用するように設計された、絶縁120のための一機構は、Watertown, South DakotaのBenchmark Foam, Inc.から市販されているEPS「膨脹ポリスチレン」絶縁機構である。そのような絶縁層は、加熱素子114から地表122への、または床が地表の高さにない場合、床の下にある部屋空間への熱損失を防止する。
【0083】
また、電気抵抗型加熱素子114は、図10および図11に示す配置と同様に、木製床と共に、配管型加熱素子の代わりに使用できる。
【0084】
あるいは、加熱素子114に関連する床基材112は、グラファイト材料を使用して構築することもできる。そのようなグラファイト基材112は、上記の方法のいずれか、例えば成形または他の圧縮技術により形成し、どのような所望の異方性比でも得ることができる。さらに、グラファイト床基材112は、上記のように可撓性グラファイト材料の薄い層を張り合わせることにより製造することができる。さらに、グラファイト材料を使用して構築された床基材112を使用する場合、放熱体116は、床基材112と一体的に構築することができる。
【0085】
可撓性グラファイト床放熱体の構築方法
本発明を使用する建物104の床機構100または他の境界構造、例えば壁106または天井110は、放熱体116を床基材112の上に配置することにより形成するのが好ましい。
【0086】
好ましい一実施態様においては、放熱体116を可撓性シート状材料のロールの形態で用意し、シート116をロールから引き出し、床基材112を覆うことにより達成できる。放熱体116は、上記の床基材112のいずれかと直接接触させて配置することができる。基材112と放熱体116との間の物理的結合および熱伝達を改良するために、熱的界面、接着剤層、または他の材料を間に配置すれば、放熱体層116は、床基材112と間接的に接触させて熱伝達させることもできる。また、上記のように、放熱体は、加熱素子の下にあってもよい。
【0087】
所望により、放熱体116を構成する可撓性グラファイト材料は、一般的に平坦な部品として説明できる、タイル等の形態にある比較的堅いシートで提供することもできる。この場合、タイルまたは平坦な部品の隣接する縁部を、隣接するそのような部品の同様の縁部の近くに隣接して、好ましくは隣接する縁部同士を突き合わせて配置するが、全ての場合にそうする必要はない。
【0088】
加熱素子114が作動して熱を床機構100に与える時、加熱素子114から出た熱エネルギーは、一般的に上方向に移動し、放熱体116に伝達され、放熱体116は、その、横方向における優先的な熱伝導性のために、熱エネルギーを横方向に、一般的に主要表面126および128と平行に発散させ、それによって、放熱体116が存在しない場合よりも、より欽一に配分された熱が床カバー118に伝えられる。
【0089】
無論、どのような型の加熱素子114を使用するかに関係なく、加熱素子114は、一般的に、複数の電気的加熱素子または流体配管が蛇行して床基材112全体にわたって伸びる形態で構築される。先行技術の機構では、伝統的に使用される床基材112および床カバー118が熱をあまり横方向に伝達しないために、蛇行する加熱素子114を比較的密接に配置する必要があった。本発明の放熱体116を使用することにより、加熱素子114をより広く離して配置しても、床機構100全体にわたって熱を遙かに効率的に、均一に配分することができ、従って、加熱素子114の製造および設置コストを低減できることは明らかである。
【0090】
上記の説明は全て、部屋空間を加熱するのではなく、冷却するための機構にも適用できる。冷却する場合、加熱素子114を冷却素子で置き換える。放熱体116は、熱エネルギーを部屋から外に、冷却素子に移動させる。
【0091】
上記の説明は、当業者が本発明を実施できるようにすることを意図している。当業者がこの説明を読めば明らかであるような、可能な変形および修正を全て詳細に説明することは意図していない。しかし、そのような修正および変形は全て、請求項により規定される本発明の範囲内に入る。相反することが特に指示されていない限り、請求項は、本発明の目的を達成するのに有効な、同等の要素および工程を、あらゆる配置または順序で包含する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明により製造された、エンボス加工された可撓性グラファイトシートの、壁の一つの断面の、空隙を含まない可撓性グラファイトシートを使用して達成できる形態を、倍率50倍で示す顕微鏡写真である。
【図1(A)】本発明により製造された、エンボス加工された可撓性グラファイトシートの、壁の一つの断面の、空隙を含む可撓性グラファイトシートを使用して達成できる形態を、倍率50倍で示す顕微鏡写真である。
【図2】図1および図1(A)に示す可撓性グラファイトシートの製造に有用なエンボス加工装置の一実施態様を示す部分断面図である。
【図2(A)】図2のエンボス加工装置の一実施態様を示す、エンボス加工の開始直後に見た部分断面図である。
【図2(B)】エンボス加工が起こる時に見た、図2のエンボス加工装置である。
【図2(C)】図2のエンボス加工装置の透視図を示す。
【図3】可撓性グラファイトシートの断面を拡大した図である。
【図4(A)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図4(B)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図4(C)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図5】図3に示すシートの局所的な表面押付加工を行う装置の透視図である。
【図6】図5に示すシートの圧縮後の拡大図である。
【図6(A)】図6に示すシートの、変形した表面を平らな形態に圧縮した後の側方立面図である。
【図7】図3に示すシートの、両方の対向表面で横方向に変形させた拡大側方立面図である。
【図7(A)】図7に示すシートの、変形した表面を平らな形態に圧縮した後の側方立面図である。
【図8】本発明の可撓性グラファイト放熱体を使用する、加熱された床機構を図式的に示す、切り取った側方立面図である。
【図9】図8に示す、隣接する層を有する床機構の、それぞれの詳細を例示するために切り取った透視図である。
【図10】配管網目構造を取り付けた木製副床材を有する、別の型の床基材を図式的に示す立面断面図である。
【図11】木製の床を有する、別の型の床基材を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の異方性の特徴、例えば異方性比を有するグラファイト製品に関する。より詳しくは、本発明は、インターカレーション処理され、剥離され(exfoliated)、所定の面内伝導率と面貫通伝導率との比を有し、調整されたグラファイトのフレークから形成された製品に関する。本製品は、放射式床加熱機構等の一部として使用する放熱体であってよい。本発明の製品を製造する方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
益々高度になる技術的構成部品、例えば処理速度を増加し、より高い周波数で作動する能力がある電子部品や特殊な熱的および電気的伝導性を必要とする燃料電池部品、の開発に伴い、天然グラファイトが、特定の部品に使用する材料として特に選択されるようになっている。天然グラファイトは、電気的および熱的伝導性および成形性のような望ましい特性を、特に銅やステンレス鋼のような金属と比較して、比較的軽い重量と併せ持っているので、非常に有利な材料であると考えられている。そのため、グラファイト製品は、エレクトロニクスにおける熱管理(特に熱的界面材料、放熱体および吸熱源)、PEM燃料電池部品、例えばフローフィールドプレートおよびガス拡散層、ならびに床加熱機構の部品を包含する様々な用途に提案されている。
【0003】
微小電子装置から熱を消散させる必要性が増大するにつれて、熱の管理が、電子製品の設計において益々重要な要素になっている。電子装置の性能信頼性および期待される寿命の両方が、装置の部品温度に逆比例することが分かっている。例えば、典型的なシリコン半導体のようなデバイスの動作温度を下げることにより、デバイスの信頼性および期待される寿命を指数的に増加させることができる。従って、部品の寿命および信頼性を最大限にするには、デバイスの動作温度を、設計者により設定される限度内に制御することが最も重要である。
【0004】
吸熱源は、熱源、例えば発熱している電子部品の表面から、より低温の環境、通常は空気中、に放熱し易くする部品である。多くの典型的な状況では、部品の固体表面と空気との間の熱移動は、その装置中で最も効率が低く、従って、固体−空気の界面は放熱にとって最も大きな障壁となる。吸熱源は、主として空気と直接接触している表面積を増加することにより、部品と周囲の空気との間の熱移動効率を増大しようとするものである。これによって、より多くの熱を放散させ、従って、装置の作動温度を下げることができる。吸熱源の主目的は、装置の温度を、その設計者/製造者により規定される最高許容温度より低く抑えることである。
【0005】
典型的には、吸熱源は金属、特に銅またはアルミニウムから形成されるが、これは、銅の、その構造全体の周囲にある熱を容易に吸収し、移動させる能力によるものである。多くの用途で、銅製の吸熱源は、フィンまたは他の、吸熱源の表面積を増加するための構造を備え、空気を強制的に(例えばファンにより)銅製フィンに沿って、またはその中を通過させ、熱を電子部品から、銅製吸熱源を通し、次いで空気中に放散させる。
【0006】
しかし、銅製吸熱源の使用には制約もある。制約の一つは、銅の相対的な等方性、すなわち、銅構造の、構造の周囲に熱を相対的に均等に配分する傾向に関連している。銅の等方性とは、銅製吸熱源に送られた熱が、空気への最も効率的な移動が行われるフィンに向けられるのではなく、構造の周りに分散されることを意味する。これは、銅製吸熱源を使用する放熱の効率を下げることがある。さらに、銅製またはアルミニウム製の吸熱源を使用することにより、その金属の重量のために、特に発熱面積が吸熱源の面積より著しく小さい場合、問題が生じることがある。例えば、純粋な銅の重量は8.96グラム/立方センチメートル(g/cc)であり、純粋なアルミニウムの重量は2.70g/ccである(典型的には約0.4〜1.8g/ccである、本明細書に開示する形態にあるグラファイトと比較)。多くの用途で、幾つかの吸熱源を、例えば回路基板上に並べ、基板上の様々な部品から発生する熱を放散させる必要がある。銅製吸熱源を使用する場合、基板上にある銅の重量そのものにより、基板が壊れるか、または他の同様に好ましくない影響を受ける機会が多くなり、部品自体の重量も増加する。さらに、銅は金属であるので、金属に一般的な表面の不規則性および変形が生じ、銅製吸熱源を接合している電子部品の表面も金属または他の、比較的剛直な材料、例えば酸化アルミニウムまたはセラミック材料であることが多く、比較的高い圧力による取付を行わない限り、部品から銅製吸熱源への熱移動を最大限にするために銅製吸熱源と部品との間を完全に接続することが困難な場合があるが、これは、電子部品が損傷を受ける場合があるので、好ましくない。その上、金属には不可避な酸化物層は、熱移動に対する大きなバリヤーとなり得るが、グラファイトでは形成されない。
【0007】
イオン交換メンブラン燃料電池、より具体的にはプロトン交換メンブラン(PEM)燃料電池は、水素と空気中の酸素との化学的反応により電気を発生する。燃料電池内では、アノードおよびカソードと呼ばれる電極が重合体電解質を取り囲み、一般的にメンブラン電極アセンブリーまたはMEAと呼ばれるものを形成する。燃料電池内では、電極がガス拡散層、またはGDL、の二重機能を果たすことが多い。触媒材料が水素分子を刺激して水素原子に分裂させ、次いで、メンブランで、これらの原子がそれぞれプロトンおよび電子に分裂する。電子は、電気エネルギーとして利用される。プロトンは、電解質を通って移動し、酸素および電子と結合して水を形成する。
【0008】
PEM燃料電池は、2個のグラファイトフローフィールドプレート間に挟まれたメンブラン電極アセンブリーから形成するのが有利である。従来、メンブラン電極アセンブリーは、不規則に配向した炭素繊維紙(アノードおよびカソード)からなり、触媒材料、特に白金または白金族金属、の薄い層を含み、これらの層は、電極間に配置されたプロトン交換メンブランのいずれかの側に結合した等方性炭素粒子、例えばランプブラック上に施されている。作動の際、水素は、フローフィールドプレートの一方にある通路を通ってアノードに流れ、そこで触媒が、水素の、水素原子への、さらにはプロトンと電子への分裂を促進し、プロトンはメンブランを通過し、電子は外部負荷を通って流れる。空気は、他方のフローフィールドプレート中にある通路を通ってカソードに流れ、そこで空気中の酸素が酸素原子に分裂し、その酸素原子がプロトン交換メンブランを通してプロトンと、および回路を通して電子と結合し、組み合わされて水を形成する。メンブランは絶縁体なので、電子は外部の回路を通って移動し、そこで電気が使用され、カソードでプロトンと結合する。カソード側の空気流は、水素と酸素の組合せにより形成される水を除去することができる機構の一つである。その様な燃料電池が燃料電池積重構造中で組み合わされ、所望の電圧を供給する。
【0009】
最近、PEM燃料電池の特定の部品として天然グラファイト材料を使用することが提案されている。例えば、可撓性グラファイトシート、オハイオ州レイクウッドのGraftech Inc.から市販されているGrafcell(商品名)を用いて製造されたガス拡散層およびフローフィールドプレートが燃料電池用に使用または開示されている。
【0010】
膨脹グラファイト材料を使用する先行技術の加熱機構が、米国特許第5,288,429号、第5,247,005号、および第5,194,198号に提案されている(これら文献は、引用さることにより本明細書の開示の一部とされる)。これらの機構に使用されているグラファイト材料は、一般的に等方性熱伝導率を有するように構築されている。
【0011】
上記のグラファイト製品の様々な用途、ならびに本明細書に特に記載していない他の用途は、最適化するための様々な特性を必要とする。例えば、放熱体は、シートの面内(すなわちシートの主要表面に沿った)方向における熱伝導性を最大限にし、熱をできるだけ速く、効果的に放散させることを必要とするシートを含むことができる。比較として、電気化学的燃料電池用のガス拡散層(上記のように電極としても機能し得る)も、一般的にシートの形態にあり、電流を通し易くするために、ある程度の面貫通(すなわちその主要表面間を通る)導電性を必要とする場合があるが、やはり、できるだけ多くの面内の熱的および電気的伝導性がなお望ましい。
【0012】
グラファイトは、炭素原子の六角形配列または網目の層平面から形成されている。これらの、六角形に配置された炭素原子の層平面は、実質的に平らであり、実質的に互いに平行で等間隔になるように配向または配列されている。実質的に平らで、平行で、等間隔の炭素原子のシートまたは層は、通常、グラフェン層または基底面と呼ばれ、一つに連結または結合されており、それらの群がクリスタライトに配置されている。高度に秩序付けられたグラファイトは、かなりの大きさのクリスタライトからなり、それらのクリスタライトは、相互に高度に整列または配向しており、十分に秩序付けられた炭素層を有する。つまり、高度に秩序付けられたグラファイトは、高度の選択的クリスタライト配向を有する。グラファイトは、異方性構造を有し、従って、方向性が高い多くの特性、例えば熱的および電気的伝導性および流体拡散性、を示すか、または有する。
【0013】
簡潔に述べると、グラファイトは炭素のラミネート構造、すなわち弱いファンデルワールス力により一つに接合された炭素原子の重なり合った層または薄片からなる構造として特徴付けることができる。グラファイト構造を考える時、2つの軸または方向、すなわち「c」軸または方向および「a」軸または方向、を指定する。簡単にするために、「c」軸または方向は、炭素層に対して直角の方向と考えることができる。「a」軸または方向は、炭素層に対して平行の方向または「c」方向に対して直角の方向と考えることができる。可撓性のグラファイトシートを製造するのに好適なグラファイトは、非常に高度の配向を有する。
【0014】
上記のように、炭素原子の平行な層を一つに保持している結合力は弱いファンデルワールス力だけである。天然グラファイトを化学的または電気化学的に処理し、重なり合った炭素層または薄片間の間隔を十分に広げ、その層に対して直角の方向、すなわち「c」方向に大きく拡張し、膨張した、または膨れあがったグラファイト構造を形成することができ、その際、炭素層の薄層特性は実質的に維持されている。
【0015】
大きく膨張した、より詳しくは、最終的な厚さ、つまり「c」方向寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイトフレークを、結合剤を使用せずに形成し、膨張したグラファイトの凝集性の、または一体化されたシート、例えばマット、ウェブ、紙、細片、テープ、等(典型的には「可撓性グラファイト」と呼ばれる)を製造することができる。最終的な厚さ、つまり「c」寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を、一体化された可撓性のシートに、結合剤を使用せずに圧縮により形成することは、大きく膨張したグラファイト粒子間に達成される機械的なかみ合わせ力または凝集性により、可能であると考えられる。
【0016】
シート材料は、膨張グラファイト粒子が、圧縮により得られるシートの対向面に対して実質的に平行に配向しているために、可撓性に加えて、上記の様に、熱的および電気的な伝導性および流体拡散性に関して、出発材料である天然グラファイトに匹敵する高度の異方性を有することも分かっている。このようにして製造されたシート材料は、可撓性に優れ、良好な強度を有し、非常に高度に配向している。
【0017】
簡潔に述べると、可撓性があり、結合剤を含まない、異方性のグラファイトシート材料、例えばウェブ、紙、細片、テープ、ホイル、マット、等の製造方法は、予め決められた負荷の下で、結合剤の不存在下で、「c」方向寸法が本来の粒子の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を圧縮または圧迫し、実質的に平坦で、可撓性がり、一体化されたグラファイトシートを形成することを含んでなる。膨張したグラファイト粒子は、一般的に外観がウォーム状である、または細長く、圧縮された後、圧縮永久ひずみを維持し、シートの対向する主表面と整列している。シート材料の密度および厚さは、圧縮の程度を制御することにより変えることができる。シート材料の密度は約0.8g/cc〜2.0g/ccである。可撓性のグラファイトシート材料は、グラファイト粒子がシートの対向する平行な主要表面に対して平行に配向しているために、かなりの程度の異方性を示す。ロールプレス加工した異方性シート材料では、厚さ、すなわち、対向する平行なシート表面に対して直角の方向は「c」方向を含んでなり、長さおよび幅に沿った、すなわち対向する主要表面に沿った、または平行な方向は、「a」方向を含んでなり、シートの熱的、電気的および流体拡散性は、「c」および「a」方向で非常に大きく、典型的には数等級異なっている。
【0018】
電気的特性に関して、異方性の可撓性グラファイトシートの導電率は、その可撓性グラファイトシートの主要面に対して平行な方向(「a方向」)で高く、その可撓性グラファイトシートの主要表面に対して横方向(「c方向」)で実質的に低い。熱的特性に関しては、可撓性グラファイトシートの熱的伝導率は、その可撓性グラファイトシートの主要面に対して平行な方向(「a方向」)で比較的高く、その主要表面に対して横方向の「c方向」では比較的低い。
【0019】
可撓性グラファイトシートから製造されたグラファイト製品を応用する様々な用途に対して、その製品の異方性比を予め決定または制御し、グラファイト製品の特定の機能的特性を特定の最終用途に最適化するのが非常に有利であろう。異方性比とは、熱的または電気的伝導率に関して、面内伝導率と面貫通伝導率の比を意味する。
【発明の開示】
【0020】
本発明は、剥離し、圧縮した、天然グラファイトのフレークを含んでなるグラファイト製品であって、予め決められた異方性特徴、例えば異方性比、より好ましくは約2〜約250(熱的異方性に関して)または約200〜約5000(電気的異方性に関して)の異方性比、を有するグラファイト製品を提供する。本発明の製品の(熱的伝導率、電気的伝導率または調整された様式における熱的および電気的伝導率のバランスに関する)異方性比は、グラフェン層の調整された方向的整列により得られる。これは、例えば、インターカレーションと剥離の前にグラファイトフレークのフレークサイズを調整すること、剥離されたグラファイト粒子を成形し、完成したグラファイト製品を形成すること、グラファイト製品の粒子の配向を機械的に変えること(これは例えばグラファイト製品を押し付けること、可撓性グラファイト製品にせん断力を作用させること、可撓性グラファイト製品をエンボス加工すること、グラファイト製品を局所的に押し付けること、またはそれらの組合せにより行う)、あるいはそれらの組合せにより、達成できる。
【0021】
本発明の別の態様においては、所定の異方性特徴を有する完成したグラファイト製品の製造方法を提供する。この方法は、完成した可撓性グラファイト製品に望ましい異方性特徴を決定すること、グラファイトフレークをインターカレーション処理し、次いで剥離し、剥離されたグラファイト粒子を形成すること、該剥離されたグラファイト粒子を、グラフェン層から形成された凝集性製品に圧縮することにより、基材グラファイト製品を形成すること、該基材グラファイト製品中の該グラフェン層を方向的に整列させ、所望の異方性特徴を有する完成したグラファイト製品を形成することを包含する。
【0022】
本発明の別の態様においては、床基材、該床基材と熱伝達関係にある加熱または冷却素子、および該床基材と熱伝達関係にある放熱体を含んでなる床機構を提供する。該放熱体は、床基材の上に配置する可撓性グラファイト材料の層を包含する。該可撓性グラファイト材料の層の上に、床カバーを配置する。床カバーの露出した表面を横切る温度変動は、放熱体として機能する可撓性グラファイト材料の層が存在することにより、低減される。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明は、下記の詳細な説明を、特に添付の図面を参照しながら読むことにより、より深く理解され、その優位性がより明確になる。
【0024】
グラファイトは、平らな層状平面で共有結合した原子を含んでなり、平面間で弱く結合した結晶形態の炭素である。グラファイトの粒子、例えば天然グラファイトフレーク、を、例えば硫酸および硝酸の溶液のインターカレート(intercalant)で処理することにより、グラファイトの結晶構造が反応し、グラファイトとインターカレートの化合物を形成する。処理したグラファイト粒子を、以下、「インターカレーション処理されたグラファイトの粒子」と呼ぶ。高温にさらすことにより、グラファイト中のインターカレートが分解して揮発し、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子を、「c」方向で、すなわちグラファイトの結晶平面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80倍以上もの寸法で膨張させる。剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧迫し、可撓性のシートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および裁断することができ、機械的衝撃で変形させることにより、小さな横方向開口部を与えることもできる。
【0025】
本発明で使用するのに好適なグラファイト出発材料は、有機および無機酸ならびにハロゲンでインターカレーション処理し、次いで加熱した時に膨脹することができるグラファイト化度の高い炭素質材料である。これらのグラファイト化度の高い炭素質材料は、最も好ましくは約1.0のグラファイト化度を有する。本発明で使用する用語「グラファイト化度」は、下記式:
【数1】
に従う値を意味する。ここでd(002)は、オングストローム単位で測定した結晶構造中にある炭素のグラファイト層間における間隔である。グラファイト層間の間隔dは標準的なX線回折技術により測定される。(002)、(004)および(006)ミラー指数に対応する回折ピークの位置を測定し、標準的な最小二乗法を使用し、これらのピークすべてに対する総誤差を最小にする間隔を導く。グラファイト化度の高い炭素質材料の例としては、様々な供給源から得られる天然グラファイト、ならびに他の炭素質材料、例えば化学蒸着等により製造された炭素、がある。天然グラファイトが最も好ましい。
【0026】
本発明で使用するグラファイト出発材料は、出発材料の結晶構造が必要なグラファイト化度を維持し、剥離可能である限り、非グラファイト成分を含むことができる。一般的に、結晶構造が必要なグラファイト化度を有し、剥離可能である炭素含有材料はすべて、本発明で使用するのに好適である。その様なグラファイトは、好ましくは灰分が約25重量%未満、より好ましくは約10重量%未満である。最も好ましくは、本発明に使用するグラファイトは、純度が少なくとも約94%である。最も好ましい実施態様では、使用するグラファイトの純度が少なくとも約99%である。
【0027】
グラファイトシートの一般的な製造方法はシェーン(Shane)らの米国特許第3,404,061号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に記載されている。シェーンらの方法の典型的な実施では、例えば硝酸と硫酸の混合物を、好ましくはグラファイトフレーク100重量部あたりインターカレート溶液約20〜約300重量部(pph)のレベルで含む溶液中にフレークを分散させることにより、天然グラファイトフレークをインターカレーション処理する。インターカレーション溶液は、この分野で公知の酸化剤および他のインターカレーション剤を含む。例としては、酸化剤および酸化性混合物を含む溶液、例えば硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸等、または混合物、例えば、濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸、または強有機酸の混合物、例えばトリフルオロ酢酸、および有機酸に可溶な強酸化剤、を含む溶液が挙げられる。あるいは、電位を利用してグラファイトの酸化を引き起こすこともできる。電解酸化を利用してグラファイト結晶中に導入することができる化学種は、硫酸ならびに他の酸を含む。
【0028】
好ましい実施態様においては、インターカレーション剤は、硫酸、または硫酸およびリン酸、と酸化剤、すなわち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸、等、との混合物の溶液である。インターカレーション溶液は、金属ハロゲン化物、例えば塩化第二鉄、および硫酸と混合した塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば臭素と硫酸の溶液として、または臭素の有機溶剤溶液として、臭素を含むこともできる。
【0029】
インターカレーション溶液の量は、約20〜約150pph、より好ましくは約40〜約120pphである。フレークをインターカレーション処理した後、過剰の溶液はすべてフレークから排出し、フレークを水洗する。あるいは、インターカレーション溶液の量を約10〜約50pphに制限することができ、これにより、米国特許第4,895,713号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に開示されているように、洗浄工程を省くことができる。
【0030】
インターカレーション溶液で処理したグラファイトフレークの粒子は、所望により、例えば混合により、アルコール、糖、アルデヒドおよびエステルから選択された、温度25℃〜125℃で酸化性インターカレーション溶液の表面被膜と反応し得る還元剤と接触させることができる。好適な、具体的な有機試剤としては、ヘキサデカノール、オクタデカノール、1-オクタノール、2−オクタノール、デシルアルコール、1,10−デカンジオール、デシルアルデヒド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デキストロース、フルクトース、ラクトース、スクロース、ジャガイモデンプン、エチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコール、ジベンゾエート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ジメチルオキシレート、ジエチルオキシレート、メチルホルメート、エチルホルメート、アスコルビン酸およびリグニン由来の化合物、例えばリグノ硫酸ナトリウムがある。有機還元剤の量は、グラファイトフレーク粒子の約0.5〜4重量%であるのが好適である。
【0031】
インターカレーションの前、最中または直後に膨脹助剤を塗布することによっても改良することができる。これらの改良には、剥離温度の低下および膨脹体積(「ウォーム体積」とも呼ばれる)の増加が含まれる。本明細書における膨脹助剤は、膨脹の改良を達成できるように、インターカレーション溶液に十分に可溶な有機材料が有利である。より詳しくは、好ましくは炭素、水素および酸素だけを含む、この種の有機材料を使用するとよい。カルボン酸が特に効果的であることが分かっている。膨脹助剤として有用な、好適なカルボン酸は、少なくとも一個の炭素原子、好ましくは約15個までの炭素原子を有し、インターカレーション溶液中に、剥離の一つ以上の特徴を大きく改善するのに有効な量で溶解し得る、芳香族、脂肪族または環状脂肪族、直鎖状または分岐鎖状の、飽和および不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸およびポリカルボン酸から選択される。有機膨脹助剤のインターカレーション溶液に対する溶解度を改良するために、好適な有機溶剤を使用することができる。
【0032】
飽和脂肪族カルボン酸の代表例は、例えば式H(CH2)nCOOHの、nが0〜約5の数である酸であり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、等を包含する。カルボン酸の代わりに、酸無水物または反応性カルボン酸誘導体、例えばアルキルエステル、も使用できる。アルキルエステルの代表例は、ギ酸メチルおよびギ酸エチルである。硫酸、硝酸および他の公知の水性インターカレートは、ギ酸を最終的に水および二酸化炭素に分解する能力を有する。このため、ギ酸および他の敏感な膨脹助剤をグラファイトフレークと接触させた後で、水性インターカレートにフレークを浸漬するのが有利である。ジカルボン酸の代表例は、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、特にシュウ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,5−ペンタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸またはテレフタル酸である。アルキルエステルの代表例は、シュウ酸ジメチルおよびシュウ酸ジエチルである。環状脂肪族酸の代表例は、シクロヘキサンカルボン酸であり、芳香族カルボン酸の代表例は、安息香酸、ナフトエ酸、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、o−、m−およびp−トリル酸、メトキシおよびエトキシ安息香酸、アセトアセタミド安息香酸およびアセトアミド安息香酸、フェニル酢酸およびナフトエ酸である。ヒドロキシ芳香族酸の代表例は、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸である。ポリカルボン酸の中ではクエン酸が特記される。
【0033】
インターカレーション溶液は、水性であり、剥離を強化するのに有効な量、好ましくは約1〜10%の膨脹助剤を含む。膨脹助剤をグラファイトフレークと、インターカレーション水溶液中に浸漬する前または後に接触させる実施態様では、膨脹助剤をグラファイトと、典型的にはグラファイトフレークの約0.2〜約10重量%の量で、好適な手段、例えばV−ブレンダーにより混合することができる。
【0034】
グラファイトフレークをインターカレーション処理し、インターカレート被覆した、インターカレーション処理したグラファイトフレークを有機還元剤と混合した後、その混合物を温度25〜125℃にさらし、還元剤とインターカレート被覆の反応を促進する。加熱期間は約20時間までであり、上記範囲中の高い温度では、より短く、例えば少なくとも約10分間である。高い温度では、半時間以下、例えば10〜25分間のオーダーの時間でよい。
【0035】
このようにして処理されたグラファイトの粒子は、「インターカレーション処理したグラファイトの粒子」と呼ばれることがある。高温、例えば少なくとも約160℃、とりわけ、約700℃〜1000℃以上の温度に暴露することにより、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子は、c−方向で、すなわち構成するグラファイト粒子の結晶面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80〜1000倍以上にも膨張する。膨脹した、すなわち剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧縮し、可撓性のシートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および裁断する、および/または機械的衝撃で変形させることにより、小さな横方向開口部を与えることができる。
【0036】
可撓性グラファイトシートおよびホイルは、凝集性であり、良好な取扱強度を有し、例えばロールプレス加工により、厚さ約0.075mm〜3.75mm、典型的な密度が約0.1〜2.0グラム/立方センチメートル(g/cc)に効果的に圧縮される。米国特許第5,902,762号(引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。)に開示されているように、約1.5〜30重量%のセラミック添加剤をインターカレーション加工したグラファイトフレークと混合し、最終的な可撓性グラファイト製品の樹脂含浸性を高めることができる。これらの添加剤は、長さ約0.15〜1.5ミリメートルのセラミック繊維粒子を含む。粒子の幅は約0.04〜0.004mmが好適である。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で非粘着性であり、約1100℃までの、好ましくは約1400℃以上の温度で安定している。好適なセラミック繊維粒子は、細断した石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、等から形成される。
【0037】
可撓性グラファイトシートは、場合により、樹脂で処理するのが有利であり、吸収された樹脂は、硬化後、可撓性グラファイトシートの耐湿性および取扱強度、すなわち剛性を高めると共に、形成されたグラファイト構造(特に「整列した」グラフェン層)を「固定する」。好適な樹脂含有量は、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは約10〜35重量%、約60重量%までが好適である。本発明の実施に特に有用であることが分かっている樹脂としては、アクリル、エポキシおよびフェノールを基剤とする樹脂系、またはそれらの混合物がある。好適なエポキシ樹脂系には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを基剤とする系(DGEBA)、および他の多官能性樹脂系があり、使用できるフェノール系樹脂としては、レゾールおよびノボラックフェノール系がある。典型的には、必要という訳ではないが、樹脂系を溶媒和させ、可撓性グラファイトシート中に塗布し易くする。典型的な樹脂含浸工程では、可撓性グラファイトシートを容器を通し、例えばスプレーノズルから放出される樹脂系で含浸させ、真空チャンバーを使用して樹脂系を「マットを通して吸引」するのが有利である。その後、樹脂系を好ましくは乾燥させ、樹脂の粘着性を下げる。
【0038】
可撓性グラファイトシートが、熱的伝導性に関して約20〜30(すなわち面内方向約150〜200ワット/メートル℃(W/m℃) 対 面貫通方向約7W/m℃)の異方性比を有し、電気的伝導性に関する典型的な異方性比が約1600〜2000(すなわち面内伝導率約125,000シーメンス/メートル(S/m) 対 面貫通導電率約70S/m)であることは一般的に認められている。しかし、上記のように、特定の最終用途に対する異方性比を「管理する」または予め決定する能力は非常に有利であろう。例えば、少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約70の熱的異方性比は、放熱体用途には非常に望ましいであろう。実際、吸熱源および熱的界面を包含するほとんどの熱管理用途には、少なくとも約160の熱的異方性比が最も好ましい。
【0039】
同様に、グラファイト使用の重量に関する優位性を維持しながら、電流の流れをある方向で最大限にするには、少なくとも約2200の電気的異方性比が多くの用途に望ましい。さらに、電気化学的燃料電池部品には、電気的および熱的異方性比間のバランスをとり、燃料電池の熱を効率的に除去しながら、電流の流れを最適にすることが望ましい。燃料電池部品は、約1500未満の電気的異方性比を、約70を超える熱的異方性比と組み合わせるのが、最も好ましい。
【0040】
このためには、グラファイト製品、特に剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から形成された製品を、予め決められた異方性特徴、より詳しくは、予め決められた異方性比を有するように製造することができる。これを行うには、グラフェン層の方向的整列を調整して製品を製造する。より詳しくは、グラフェン層の方向的整列度合いが高いほど、異方性比は高い。グラフェン層の方向的整列は、とりわけ、インターカレーション処理および剥離の前にグラファイトフレークのフレークサイズを調整すること、剥離されたグラファイト粒子を成形し、完成したグラファイト製品を形成すること、グラファイト製品の粒子の配向を機械的に変えること(例えば基材グラファイト製品を押し付けること、基材可撓性グラファイト製品にせん断力を作用させること、グラファイト製品をエンボス加工すること、グラファイト製品を局所的に押し付けること、あるいはそれらの組合せにより行う)、またはそれらの組合せにより、達成できる。
【0041】
例えば、インターカレーション処理および剥離の前に小さな粒子を使用することにより、そのグラフェン層の方向的整列度が低い(従って、より大きな粒子径と比較して、異方性比が低い)グラファイト製品が形成される。反対に、圧縮により圧力を作用させることにより(例えば、往復プラテンまたはフラットプレスを使用するダイプレス加工により)、あるいはせん断力を作用させる(例えばカレンダー加工またはロールプレス加工により)ことにより、方向的整列が増加する傾向があるが、圧力作用の具体的な様式は相対的である、すなわち、製品にせん断力を作用させることにより、方向的整列度が大きくなり、従って、異方性比が高くなるのに対し、圧縮では、方向的整列度が低く、従って、異方性比が比較的低くなる。
【0042】
例えば、より具体的に、グラファイト製品の異方性比を下げるために、少なくとも約70重量%が80メッシュスクリーン(−80メッシュと呼ぶ)(他に指示が無い限り、メッシュサイズは全て米国標準スクリーンを基準とする)を通過するようなグラファイトフレークサイズを使用することにより製品を形成することができる。実際、グラファイトフレークは、少なくとも約50重量%が80メッシュスクリーンを通過するが、140メッシュスクリーンは通過せず(80×140メッシュと呼ぶ)、含水量が約1.0%を超えるようなサイズを有することができる。事実、フレークが小さい程、方向的整列度は低く、従って、異方性比が小さい。従って、さらに小さな異方性比(すなわちより大きな等方性)を達成するには、140メッシュスクリーンを通過するようなサイズを有するフレークが好ましい。
【0043】
グラファイト製品の成形、特に膨脹グラファイト粒子(樹脂を含むか、または含まない)を、平衡またはダイプレス加工により型の中に押し込むことにより、構成するグラフェン層の方向的整列を制御することもできる。成形は、一般的に約7メガパスカル(mPa)〜約700mPa以上の圧力下で行い、圧力が高い程、グラフェン層の方向的整列度が高くなる。
【0044】
圧力の作用によりグラフェン層の整列を機械的に変えることは、最終グラファイト製品の形態および機能的特徴、従って、グラフェン層の方向的整列度、を制御し、調節するのに効果的に使用することができる。より詳しくは、圧力の作用を目的に合わせて調製し、所望の特性を可能な程度に達成することができる。圧力は、グラファイト製品の面内熱伝導率を、密度を純粋な銅の密度より小さく維持したまま、純粋な銅の伝導率と等しいか、またはさらにそれより高い伝導率に増加させることができる。その上、得られる「整列した」製品の異方性比は、「整列前の」製品のそれよりはるかに高く、少なくとも約70〜約160以上(熱的異方性に関して)にもなる。
【0045】
グラフェン層整列の機械的変更は、エンボス加工によっても、特に空隙制御と組み合わせて行うことができる。より詳しくは、特にグラファイト製品を電気化学的燃料電池における構成部品として使用する場合、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシートを、電気的および熱的伝導性を燃料電池用途に最適にするために、空隙をあまり含まないように形成することができる。これは、例えば、空隙をあまり含まない状態(例えば、樹脂含有量に応じて、少なくとも約1.5g/ccの密度により示されるように)になるように、シートをカレンダー加工または圧縮することにより、達成でき、これによって、比較的高い熱的異方性比(潜在的に、約160以上のオーダー)を有する製品が製造される。ある種の放熱体用途におけるように、より低い異方性比が望ましい場合、使用中の剛性を高め、最終的な形態を固定するために樹脂で飽和させたグラファイト製品に対する約0.4〜約1.4g/ccの密度により示される、より高い空隙状態が望ましい。
【0046】
ここで、図1、図1(A)に関して、本発明の方法を使用して製造された二枚のシートの壁断面の顕微鏡写真を示す。図1のシートは、エンボス加工の前に、空隙をあまり含まないようにカレンダー加工したものである。図1(A)のシートは、エンボス加工の前に、空隙を含まない状態にしていない。形態の違い(すなわち、方向的整列度)は明らかである。図1で、グラフェン層は、壁の表面と、より多く整列している(すなわち壁と平行である)ことが容易に分かる。事実、「逆三角形」区域が壁の上側部分で明瞭であり、交差する線が見られ、そこでは、グラファイトの流動前線同士が遭遇し、壁の内部構造を比較的対称的な部分に実質的に分割している。これを図1(A)の壁と対照させると、エンボス加工/空隙制御により造り出される構造は明らかである。当業者には明らかなように、エンボス加工した可撓性グラファイトにおける構造の相対的な量により、上記のように、異なった異方性特性が得られる。
【0047】
図2〜図2(C)に示すように、これを達成するためのエンボス加工装置10は、一般的に二個の対向する素子20および30を含んでなり、それらの少なくとも一方は、エンボス加工素子20であり、その上にエンボス加工パターンを有する。このエンボス加工パターンは、エンボス加工素子20の表面から予め決められた高さを有する、チャネル床部24により分離された、最上部またはランド22aを有する一連の壁22を、エンボス加工素子20の表面近くに配置することにより形成される。典型的には、チャネル床部24は、事実上、エンボス加工素子20の表面である。着床(landing)素子30は、好ましくは一般的に平らな表面を有する素子を含んでなり、その素子に対してエンボス加工素子20が作用し、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシート上にエンボス加工パターンを押し付ける。着床素子30の衝撃表面32も、構造またはパターンを有し、エンボス加工工程を容易にするか、または可撓性グラファイトシートのエンボス加工されない表面に所望の構造またはパターンを付けることができる。
【0048】
エンボス加工素子20および着床素子30は、共同して可撓性グラファイトシート上にパターンをエンボス加工できるのであれば、ローラー、プレート、それらの組合せ、または他の構造を含んでなることができ、好ましくは図2(C)に示すように、ローラーを含む。エンボス加工素子20および着床素子30は、エンボス加工装置10の中に、着床素子30の表面32が、エンボス加工素子20のチャネル床部24から、壁22の高さと少なくとも等しい間隔「d」だけ分離されるように配置する。実際、最も好ましい実施態様では、着床素子30の表面32は、エンボス加工素子20のチャネル床部24から、可撓性グラファイトシート100のシート床(すなわちシート100の壁間)の位置で、壁22の高さ+エンボス加工された可撓性グラファイトシート100の所望の厚さと少なくとも等しい間隔「d」だけ分離されるように配置する。
【0049】
カレンダー加工し、樹脂含浸させた可撓性グラファイトシート100aは、図2に示すように、エンボス加工前のエンボス加工パターンの区域における厚さが間隔「d」よりは小さいが、着床素子30の表面32とエンボス加工素子20の壁22との間の間隔よりは大きくなるように形成する。エンボス加工の際、図2〜図2(B)に示すように、シート100a中の材料(すなわちグラファイトおよび樹脂)が、シート100aの、シート100aを圧迫するエンボス加工素子20の壁22のランド22aから圧力を受ける区域から、シート100aとエンボス加工素子20のチャネル床部24との間の隙間24aに流れる。このカレンダー加工および樹脂含浸された可撓性グラファイトシート100aのグラファイト/樹脂が「再配置」されることは、驚くべきことであり、これによって、(図2および図2(A)に示すように)エンボス加工素子20のエンボス加工パターンに対応するチャネルパターンを形成する、シート床部102およびシートランド104を有するエンボス加工された可撓性グラファイトシート100が形成される。
【0050】
グラファイト製品のグラフェン層を方向的に整列させるためのもう一つの方法は、製品の特定区域におけるグラフェン層を機械的に変化させることである。これらの区域は、グラファイト製品、例えば可撓性グラファイトシート、の表面を、複数の位置で局所的に押し付け、表面を横方向に変形させ、シート中のグラファイトを移動させることにより、機械的に変化させ、続いて、この変形した、押し付けられた表面を平らな表面にプレス加工する。
【0051】
例えば、図5に示すような、ローラー80の平滑表面と共作用する溝50および隆起部60を有するローラー75を包含する装置40を使用して、図3に示す可撓性グラファイトシート100aの平坦な表面30を、好ましくは連続パターンで、平らな表面110を機械的に型押し加工に付すことにより、横方向に変形させ、予め決められた深さ、例えばシート100aの厚さの1/8〜1/2に貫通させ、シート100a中のグラファイトを移動させることができる(幾つかの変形パターンを図4(A)〜4(C)に示す)。得られる製品を、図6に側方立面図で示す。グラファイト粒子(従って、グラフェン層)の不整列は、全体的に可撓性グラファイトシート100a中にあるグラファイトの、機械的衝撃により引き起こされた移動によるものである。図6に示す横方向に変形した製品を、例えばロールプレス加工により、圧縮し、図6(A)に示すように、表面30を平らな状態に回復させる。図6(A)に関して、表面30を平坦な状態に回復させた後、シート100aは、平坦な表面30に隣接する区域70を有し、そこでは膨脹グラファイト粒子800が、平行で平坦な、対向する表面30,40と実質的に整列せず、異方性比を低下させている(すなわち、等方性を大きくしている)。図7に関して、可撓性グラファイトシート10は、両方の対向表面30,40で横方向に、連続的または同時に変形させ、続いて圧縮し、図7(A)に示すような、平坦な対向する表面30,40を形成することができる。図7(A)の製品は、それぞれ両方の平行で平坦な表面30,40に隣接する、実質的に不整列で、異方性がさらに低減した膨脹グラファイト粒子の区域70を有する。
【0052】
上記のように本発明を実施することにより、グラファイト製品の異方性特徴を制御することができる。このようにして、電子部品の熱管理であれ、燃料電池部品の熱的および電気的管理を改善することであれ、床機構における放熱体であれ、それぞれの具体的な最終用途に最適な特徴を有する製品を製造することができる。
【0053】
ラミネート加工された製品
本発明の実施においては、複数の、このように製造された可撓性グラファイトシートを、所望により、一体的な製品、例えばブロックまたは他の所望の形状にラミネート加工することができる。剥離されたグラファイトの圧縮された粒子の異方性の可撓性シートを、好適な接着剤、例えば感圧の、または熱的に活性化される接着剤を間に入れてラミネート加工することができる。選択する接着剤は、接着強度と最小厚さのバランスをとり、放熱させるべき電子部品の使用温度で十分な接着を維持するべきである。好適な接着剤は、当業者には公知であり、フェノール系樹脂を包含する。
【0054】
最も好ましくは、このラミネート加工された製品の実施態様を形成する、剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から形成された、異方性の可撓性シートにおいて、グラファイト結晶構造の平らな方向に対して平行に伸びる「a」方向は、放熱が望まれる電子部品から熱を所望の方向に向けるように配向されている。このように、グラファイトシートの異方性は、熱を電子部品の外側表面から(すなわちグラファイトシートに沿った「a」方向で)移動させ、接着剤の存在により損なわれない。そのようなラミネートは、一般的に密度が約1.1〜約1.35g/ccであり、熱伝導率が面内(すなわち「a」)方向で約220〜約250であり、面貫通(すなわち「c」)方向で約4〜約5である。従って、典型的なラミネートは、熱的異方性比、つまり面内熱伝導率と面貫通熱伝導率の比が約44〜約63である。
【0055】
ラミネートの面内および面貫通方向における熱的伝導率の値は、ラミネートの形成に使用する可撓性グラファイトシートのグラフェン層の方向的整列を変えることにより、またはラミネート自体の、ラミネート形成後のグラフェン層の方向的整列を変えることにより、操作することができる。このようにして、ラミネートの面貫通熱伝導率を下げながら、ラミネートの面内熱伝導率を増加し、これによってラミネートの熱的異方性比が少なくとも約70、好ましくは少なくとも約110に増加する。最も好ましくは、ラミネートの熱的異方性比を少なくとも約160に増加する。
【0056】
このグラフェン層の方向的整列を達成できる一つの方法は、構成する可撓性グラファイトシートに、シートをカレンダー加工することにより(すなわちせん断力を作用させることにより)、またはダイプレス加工もしくは往復プラテンプレス加工により(すなわち圧縮作用により)、圧力を作用させることであり、方向的整列には、カレンダー加工が最も効果的である。例えば、シートを密度1.1g/ccから1.7g/ccにカレンダー加工することにより、面内熱伝導率は、約240W/m℃から約450W/m℃以上に増加し、面貫通熱伝導率は、約23W/m℃から約2W/m℃に減少し、従って、個々のシート、さらにはそこから形成されたラミネート、の熱的異方性比を(約10〜約225に)大きく増加する。
【0057】
あるいは、ラミネートを形成した後、ラミネート全体を構成するグラフェン層の方向的整列を、例えば圧力の作用により、強化し、ラミネートを構成する可撓性グラファイトシートの初期密度より大きい密度を得る。実際、このようにして、ラミネート加工した製品の最終密度は、少なくとも約1.4g/cc、より好ましくは少なくとも約1.6g/ccから約2.0g/ccまで増加することができる。圧力は、従来の手段、例えばプレス加工またはカレンダー加工、により作用させることができる。少なくとも約60メガパスカル(MPa)の圧力が好ましく、2.0g/ccまでの密度を達成するには、少なくとも約550MPa、より好ましくは少なくとも約700MPaの圧力が必要である。
【0058】
驚くべきことに、グラフェン層の方向的整列を強化することにより、グラファイトラミネートの面内熱伝導率を、純粋な銅の伝導率と等しいか、またはさらにはそれより大きい導電性に増加することができ、密度は純粋な銅の密度と同等のままである。その上、得られた「整列した」ラミネートの熱的異方性比は、「整列前の」ラミネートより大幅に高く、少なくとも約70から約160以上までである。さらに、得られた整列したラミネートは、「整列していない」ラミネートと比較して、強度が増加している。
【0059】
整列した製品の意図する最終用途に応じて、この整列方法は、ラミネート中に様々な整列程度を生じ、製品の異方性をさらに制御し、操作することができる。
【0060】
次いで、得られた整列したラミネートをプレス加工するか、または所望の形状に成形するか(実際、この整列方法は、ラミネートを所望の形状に成形することができる)、または機械加工することができる。成形された、整列したラミネートは、熱的問題の解決策、例えば熱的界面、放熱体および/または吸熱源、として使用し、熱を熱源、例えば電気部品、からある方向で、潜在的には銅の重量欠点無しに、少なくとも銅と同じ位に放散させることができる。
放射加熱された床機構
【0061】
図8は、建物104の空間または部屋102の一部である床機構100を図式的に示したものである。建物104の内側空間102は、複数の平らな境界構造、例えば床機構100、壁106および天井110により規定される。本発明を主として床機構100に関して説明するが、無論、本発明の原理は、境界構造、例えば壁106または108もしくは天井110のいずれかに埋め込まれた加熱または冷却機構にも適用できる。
【0062】
床機構100は、床基材112を包含する。加熱または冷却素子114は、床基材112と熱伝達関係にある。下記の説明は、主として加熱素子114に関して行うが、無論、これは冷却素子も含む。素子114は、より一般的には、加熱または冷却できる熱伝達素子と呼ぶことができる。
【0063】
加熱素子114は、電気抵抗配線加熱素子および熱伝達流体を運ぶための配管網目を包含するが、これらに限定しない、入手可能なあらゆる種類の加熱または冷却素子でよい。床基材112は、選択された加熱素子と共に使用するのに好適な種類の、全ての従来型床基材でよい。好適な加熱素子114および床基材112を、以下にさらに詳細に説明する。
【0064】
可撓性グラファイト材料の層を含んでなる放熱体116は、床基材112と熱伝達関係にあり、好ましくは床基材112の上にあり、それと接触している。しかし、無論、放熱体116は、特定の型の床基材の中に埋め込まれていても、またはその下にあってもよく、それでも本発明の利点を達成する。
【0065】
床カバー118は、放熱体116の上に位置する。無論、床カバー118は、放熱体116と直接接触していなくてもよく、様々な層、例えばカーペット用の詰め物により放熱体から分離されていてもよい。実際、上記のように、放熱体116は、床基材112の中に埋め込まれていても、その下に配置されていてもよい。例えば、一つの層が他の層の上にあるとして記載されていても、他に特別な指示が無い限り、それらが互いに接触している必要はない。以下にさらに説明するように、床カバー118は、ビニル床材、カーペット、硬材およびセラミックタイルを包含するが、これらに限定しない、全ての従来型床カバーでよい。
【0066】
所望により、絶縁性材料120の層が床基材112および/または加熱素子114の下に位置し、これらを地表122または床下の空間から絶縁する。
【0067】
図9の透視図に最も分かり易く示すように、床カバー118は、部屋102の内側に露出した表面124を有し、その上を、この部屋102の住人が歩くことになる。
【0068】
可撓性グラファイト材料の層を含んでなる放熱体116は、それぞれ上表面126および下表面128とも呼ばれる2つの対向する主要表面126および128を有する。放熱体116は、これらの表面126と128との間で規定される厚さ130を有する。可撓性グラファイト材料の層は、平坦な表面126と128に対して平行の第一熱伝導率、および平坦な表面126と128とに対して直角の第二熱伝導率を有する。上に詳細に説明したように、可撓性グラファイトシートの、表面126と128とに対して平行の熱伝導率は、これらの表面に対して直角の熱伝導率より大きい。これらの熱伝導率の比は、異方性比として説明でき、好ましくは少なくとも2.0の値を有する。より好ましくは、この異方性比約2〜約250である。さらに好ましくは、この異方性比は、少なくとも約30である。
【0069】
典型的には、平坦な表面126と128とに対して直角の熱伝導率は、少なくとも約2W/m℃であり、表面126と128とに対して平行の熱伝導率は、少なくとも約140W/m℃である。
【0070】
平坦な表面126と128とに対して直角の熱伝導率が少なくとも約7W/m℃であり、異方性比が2である場合、これらの表面に対して平行の熱伝導率は少なくとも約14W/m℃である。
【0071】
やはり上に説明したように、放熱体116が構築されている材料は、密度が少なくとも約0.08g/ccである比較的軽量の材料である。より好ましくは、この材料は、密度が少なくとも約0.6g/ccである。
【0072】
所望により、層116の可撓性グラファイト材料は、上記のように樹脂で含浸されていてよい。
【0073】
また、可撓性グラファイト層116は、複数の可撓性グラファイトシートを含み、可撓性グラファイトシートのそれぞれが方向的に整列したグラフェン層を含んでなるラミネートでよい。
【0074】
加熱素子および床基材
床基材112および加熱素子114は、どのような従来型の放射床加熱機構でもよい。
【0075】
例えば、加熱素子114は、電気抵抗配線加熱素子、例えばBuffalo Grove, ILのThermoSoft International Corporationから市販されているThermoTile(商品名)放射床加熱機構に使用されている素子でよい。
【0076】
そのような電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には、加熱素子114を完全に埋め込むことができる型の床基材112で使用される。
【0077】
例えば、床カバー118がビニル床材またはカーペットである場合、電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には、セメントの層を含んでなる床基材112の中に埋め込まれる。
【0078】
電気抵抗配線型加熱素子114は、金属床材層、例えば床全体にわたって熱を放散させることができるアルミニウムに取り付けることもできる。
【0079】
あるいは、床カバー118がセラミック型である場合、電気抵抗配線型加熱素子114は、典型的には薄い硬化したモルタルの層を含んでなる床基材112の中に埋め込まれる。
【0080】
熱伝達流体、例えば高温水を通すための配管網目を含む型の加熱素子114を選択する場合、例えばApple Valley, MinnesotaのUponor Wirsbo Companyから市販されている素子でよい。そのような機構は、典型的には架橋したポリエチレン(PEX)管を使用し、これをコンクリート床基材112の中に埋め込むことができる。そのような機構は、他の配管材料、例えば銅も使用できる。
【0081】
配管型加熱素子114は、図10に示す従来型の木製床基材にも使用できる。そのような場合、配管は、従来型の木製床横梁138間に伸びる従来型の合板または配向性ストランドボード木製副床材136の下側132に取り付ける。この実施態様では、木製副床材136および横梁138は、図8および図9の床基材112を含んでなる。所望により、放熱体116は、図11に示すように、副床材136の下側でかつ加熱素子114の上にあってもよい。
【0082】
所望により使用する絶縁層120は、好適などのような絶縁でもよい。放射加熱機構で使用するように設計された、絶縁120のための一機構は、Watertown, South DakotaのBenchmark Foam, Inc.から市販されているEPS「膨脹ポリスチレン」絶縁機構である。そのような絶縁層は、加熱素子114から地表122への、または床が地表の高さにない場合、床の下にある部屋空間への熱損失を防止する。
【0083】
また、電気抵抗型加熱素子114は、図10および図11に示す配置と同様に、木製床と共に、配管型加熱素子の代わりに使用できる。
【0084】
あるいは、加熱素子114に関連する床基材112は、グラファイト材料を使用して構築することもできる。そのようなグラファイト基材112は、上記の方法のいずれか、例えば成形または他の圧縮技術により形成し、どのような所望の異方性比でも得ることができる。さらに、グラファイト床基材112は、上記のように可撓性グラファイト材料の薄い層を張り合わせることにより製造することができる。さらに、グラファイト材料を使用して構築された床基材112を使用する場合、放熱体116は、床基材112と一体的に構築することができる。
【0085】
可撓性グラファイト床放熱体の構築方法
本発明を使用する建物104の床機構100または他の境界構造、例えば壁106または天井110は、放熱体116を床基材112の上に配置することにより形成するのが好ましい。
【0086】
好ましい一実施態様においては、放熱体116を可撓性シート状材料のロールの形態で用意し、シート116をロールから引き出し、床基材112を覆うことにより達成できる。放熱体116は、上記の床基材112のいずれかと直接接触させて配置することができる。基材112と放熱体116との間の物理的結合および熱伝達を改良するために、熱的界面、接着剤層、または他の材料を間に配置すれば、放熱体層116は、床基材112と間接的に接触させて熱伝達させることもできる。また、上記のように、放熱体は、加熱素子の下にあってもよい。
【0087】
所望により、放熱体116を構成する可撓性グラファイト材料は、一般的に平坦な部品として説明できる、タイル等の形態にある比較的堅いシートで提供することもできる。この場合、タイルまたは平坦な部品の隣接する縁部を、隣接するそのような部品の同様の縁部の近くに隣接して、好ましくは隣接する縁部同士を突き合わせて配置するが、全ての場合にそうする必要はない。
【0088】
加熱素子114が作動して熱を床機構100に与える時、加熱素子114から出た熱エネルギーは、一般的に上方向に移動し、放熱体116に伝達され、放熱体116は、その、横方向における優先的な熱伝導性のために、熱エネルギーを横方向に、一般的に主要表面126および128と平行に発散させ、それによって、放熱体116が存在しない場合よりも、より欽一に配分された熱が床カバー118に伝えられる。
【0089】
無論、どのような型の加熱素子114を使用するかに関係なく、加熱素子114は、一般的に、複数の電気的加熱素子または流体配管が蛇行して床基材112全体にわたって伸びる形態で構築される。先行技術の機構では、伝統的に使用される床基材112および床カバー118が熱をあまり横方向に伝達しないために、蛇行する加熱素子114を比較的密接に配置する必要があった。本発明の放熱体116を使用することにより、加熱素子114をより広く離して配置しても、床機構100全体にわたって熱を遙かに効率的に、均一に配分することができ、従って、加熱素子114の製造および設置コストを低減できることは明らかである。
【0090】
上記の説明は全て、部屋空間を加熱するのではなく、冷却するための機構にも適用できる。冷却する場合、加熱素子114を冷却素子で置き換える。放熱体116は、熱エネルギーを部屋から外に、冷却素子に移動させる。
【0091】
上記の説明は、当業者が本発明を実施できるようにすることを意図している。当業者がこの説明を読めば明らかであるような、可能な変形および修正を全て詳細に説明することは意図していない。しかし、そのような修正および変形は全て、請求項により規定される本発明の範囲内に入る。相反することが特に指示されていない限り、請求項は、本発明の目的を達成するのに有効な、同等の要素および工程を、あらゆる配置または順序で包含する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明により製造された、エンボス加工された可撓性グラファイトシートの、壁の一つの断面の、空隙を含まない可撓性グラファイトシートを使用して達成できる形態を、倍率50倍で示す顕微鏡写真である。
【図1(A)】本発明により製造された、エンボス加工された可撓性グラファイトシートの、壁の一つの断面の、空隙を含む可撓性グラファイトシートを使用して達成できる形態を、倍率50倍で示す顕微鏡写真である。
【図2】図1および図1(A)に示す可撓性グラファイトシートの製造に有用なエンボス加工装置の一実施態様を示す部分断面図である。
【図2(A)】図2のエンボス加工装置の一実施態様を示す、エンボス加工の開始直後に見た部分断面図である。
【図2(B)】エンボス加工が起こる時に見た、図2のエンボス加工装置である。
【図2(C)】図2のエンボス加工装置の透視図を示す。
【図3】可撓性グラファイトシートの断面を拡大した図である。
【図4(A)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図4(B)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図4(C)】可撓性グラファイトシートの、局所的な押付加工の様々なパターンを示す。
【図5】図3に示すシートの局所的な表面押付加工を行う装置の透視図である。
【図6】図5に示すシートの圧縮後の拡大図である。
【図6(A)】図6に示すシートの、変形した表面を平らな形態に圧縮した後の側方立面図である。
【図7】図3に示すシートの、両方の対向表面で横方向に変形させた拡大側方立面図である。
【図7(A)】図7に示すシートの、変形した表面を平らな形態に圧縮した後の側方立面図である。
【図8】本発明の可撓性グラファイト放熱体を使用する、加熱された床機構を図式的に示す、切り取った側方立面図である。
【図9】図8に示す、隣接する層を有する床機構の、それぞれの詳細を例示するために切り取った透視図である。
【図10】配管網目構造を取り付けた木製副床材を有する、別の型の床基材を図式的に示す立面断面図である。
【図11】木製の床を有する、別の型の床基材を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床基材、
前記床基材と熱伝達関係にある加熱または冷却素子、
前記床基材と熱伝達関係にある、可撓性グラファイト材料の層を包含する放熱体、
前記可撓性グラファイト材料の層の上にある床カバー、
を含んでなり、
前記床カバーの露出した表面を横切る温度変動が、前記可撓性グラファイト材料の層が存在することにより、低減される、床機構。
【請求項2】
前記可撓性グラファイト材料の層が前記床基材の上に位置する、請求項1に記載の床機構。
【請求項3】
前記可撓性グラファイト材料の層が2つの対向する主要な平表面を有し、前記層が、前記平表面に対して平行な第一熱伝導率および前記平表面に対して直角の第二熱伝導率を有し、異方性比を規定する前記第一熱伝導率と前記第二熱伝導率の比が少なくとも約2.0である、請求項1に記載の床機構。
【請求項4】
前記異方性比が約2〜約250である、請求項3に記載の床機構。
【請求項5】
前記異方性比が少なくとも約30である、請求項4に記載の床機構。
【請求項6】
前記平表面に対して直角の前記熱伝導率が少なくとも約2 W/m℃である、請求項3に記載の床機構。
【請求項7】
前記可撓性グラファイト材料の密度が少なくとも約0.08g/ccである、請求項1に記載の床機構。
【請求項8】
前記可撓性グラファイト材料の密度が少なくとも約0.6g/ccである、請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記可撓性グラファイト材料が樹脂で含浸されている、請求項1に記載の機構。
【請求項10】
前記可撓性グラファイト材料の層が、複数の可撓性グラファイトシートを含んでなるラミネートであり、前記可撓性グラファイトシートのそれぞれが方向的に整列したグラフェン層を含んでなる、請求項1に記載の機構。
【請求項11】
前記加熱素子が電気抵抗配線加熱素子を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項12】
前記床基材がセメント層を含んでなり、前記セメント層の中に前記加熱素子が埋め込まれており、
前記床カバーが、ビニルおよびカーペットからなる群から選択される、請求項11に記載の床機構。
【請求項13】
前記床基材が薄い硬化したモルタルの層を含んでなり、前記モルタル層の中に前記加熱素子が埋め込まれており、
前記床カバーがセラミックタイルを含んでなる、請求項11に記載の床機構。
【請求項14】
前記加熱素子が熱伝達流体を運ぶための配管網目を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項15】
前記床基材が木製副床材を含んでなり、前記木製副床材に前記配管網目が取り付けられる、請求項14に記載の床機構。
【請求項16】
前記床基材がコンクリート副床材を含んでなり、前記コンクリート副床材の中に前記配管網目が埋め込まれる、請求項14に記載の床機構。
【請求項17】
前記床基材がグラファイト材料を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項18】
前記床基材の下に位置する絶縁材料の層をさらに含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項19】
前記可撓性グラファイト材料の層が可撓性のある一体的なシートを含んでなり、前記シートが、ロールの形態で提供され、前記床基材を覆うように設置される、請求項1に記載の床機構。
【請求項20】
前記可撓性グラファイト材料の層が複数の一般的に平らな部品を含んでなり、隣接する前記部品の縁部が突き合わせになっている、請求項1に記載の床機構。
【請求項21】
建物の空間を加熱する方法であって、
(a)前記空間の内側表面を限定する平らな境界構造を設けて、前記構造が、構造基材、前記構造基材と熱伝達関係にある加熱素子、および前記構造基材および前記空間と熱伝達関係にある可撓性グラファイト放熱体を包含すること、
(b) 前記加熱素子が熱エネルギーを発生させるように、前記加熱素子を操作すること、および
(c)前記可撓性グラファイト放熱体を介して、前記熱エネルギーを前記平坦な境界構造にわたって横方向に発散させることにより、前記放熱体が存在しない状態よりも、熱がより均一に空間に配分される、ことを含んでなる、方法。
【請求項22】
前記工程(a)が、可撓性グラファイト材料のロールを展開して前記構造基材を覆うことによって、前記可撓性グラファイト放熱体を形成することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(a)が、グラファイトのフレークをインターカレーション処理し、次いで剥離し、剥離されたグラファイト粒子を形成し、次いで前記剥離されたグラファイト粒子を、グラフェン層から形成された凝集性のシートに圧縮することにより、前記可撓性グラファイト放熱体を形成することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記可撓性グラファイト放熱体が約2〜約250の熱的異方性比を有し、前記比が、前記内側表面に対して平行な熱伝導率と、前記内側表面に対して直角の熱伝導率との比として定義される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
軽量熱伝導性プレートであって、
結合剤を含まない、圧縮された膨脹グラファイト材料、および
プレート表面を含んでなり、前記プレート表面に対して平行な熱伝導率および前記プレート表面に対して直角の熱伝導率を有し、前記プレート表面に対して平行な前記熱伝導率が、前記プレート表面に対して直角の前記熱伝導率よりも、少なくとも50%高い、軽量熱伝導性プレート。
【請求項26】
前記プレート表面に対して平行な前記熱伝導率が、少なくとも5.5W/m°Kである、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項27】
プレート含浸をさらに含んでなる、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項28】
窪み、溝、ビード、ローレット刻み、ダイヤモンド形状のローレット刻み、粒表面、接合部および開口部からなる群から選択された、少なくとも一種の構造プレート要素をさらに含んでなる、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項29】
熱伝導性平製品であって、
結合剤を含まない、圧縮された膨脹グラファイト材料、および
平製品表面を含んでなり、前記平製品表面に対して平行な熱伝導率および前記平製品表面に対して直角の熱伝導率を有し、前記平製品表面に対して平行な前記熱伝導率が、前記平製品表面に対して直角の前記熱伝導率の少なくとも約2倍である、熱伝導性平製品。
【請求項30】
前記平製品表面に対して直角の前記熱伝導率が少なくとも約7W/m℃であり、前記平製品表面に対して平行の前記熱伝導率が少なくとも約14W/m℃である、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項31】
少なくとも約0.8g/ccの製品材料密度をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項32】
製品含浸をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項33】
窪み、溝、およびローレット刻みからなる群から選択された、少なくとも一種の構造製品要素をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項34】
熱伝導要素をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項35】
熱伝導性平製品の製造方法であって、
連続的に供給される膨脹グラファイト材料を予備圧縮装置中で圧縮し、ウェブを形成する工程、および
前記ウェブを、ある長さに切断し、所望のサイズを有する請求項29に記載の平製品を形成する工程
を含んでなる、方法。
【請求項36】
前記ウェブが、少なくとも約0.08g/ccのウェブ材料密度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記予備圧縮装置で得た前記ウェブを、続いて後圧縮用の一対のローラー間で圧縮することをさらに含んでなり、予備圧縮と後圧縮が連続製法を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記予備圧縮および後圧縮されたウェブを含浸させることをさらに含んでなり、前記予備圧縮工程、後圧縮工程および含浸工程が連続製法を構成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記予備圧縮されたウェブを含浸させることをさらに含んでなり、前記圧縮工程および含浸工程が連続製法を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品を機械的に処理および構造化することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品をエンボス加工ローラーで構造化することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品を冷間プレス加工により成形することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項1】
床基材、
前記床基材と熱伝達関係にある加熱または冷却素子、
前記床基材と熱伝達関係にある、可撓性グラファイト材料の層を包含する放熱体、
前記可撓性グラファイト材料の層の上にある床カバー、
を含んでなり、
前記床カバーの露出した表面を横切る温度変動が、前記可撓性グラファイト材料の層が存在することにより、低減される、床機構。
【請求項2】
前記可撓性グラファイト材料の層が前記床基材の上に位置する、請求項1に記載の床機構。
【請求項3】
前記可撓性グラファイト材料の層が2つの対向する主要な平表面を有し、前記層が、前記平表面に対して平行な第一熱伝導率および前記平表面に対して直角の第二熱伝導率を有し、異方性比を規定する前記第一熱伝導率と前記第二熱伝導率の比が少なくとも約2.0である、請求項1に記載の床機構。
【請求項4】
前記異方性比が約2〜約250である、請求項3に記載の床機構。
【請求項5】
前記異方性比が少なくとも約30である、請求項4に記載の床機構。
【請求項6】
前記平表面に対して直角の前記熱伝導率が少なくとも約2 W/m℃である、請求項3に記載の床機構。
【請求項7】
前記可撓性グラファイト材料の密度が少なくとも約0.08g/ccである、請求項1に記載の床機構。
【請求項8】
前記可撓性グラファイト材料の密度が少なくとも約0.6g/ccである、請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記可撓性グラファイト材料が樹脂で含浸されている、請求項1に記載の機構。
【請求項10】
前記可撓性グラファイト材料の層が、複数の可撓性グラファイトシートを含んでなるラミネートであり、前記可撓性グラファイトシートのそれぞれが方向的に整列したグラフェン層を含んでなる、請求項1に記載の機構。
【請求項11】
前記加熱素子が電気抵抗配線加熱素子を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項12】
前記床基材がセメント層を含んでなり、前記セメント層の中に前記加熱素子が埋め込まれており、
前記床カバーが、ビニルおよびカーペットからなる群から選択される、請求項11に記載の床機構。
【請求項13】
前記床基材が薄い硬化したモルタルの層を含んでなり、前記モルタル層の中に前記加熱素子が埋め込まれており、
前記床カバーがセラミックタイルを含んでなる、請求項11に記載の床機構。
【請求項14】
前記加熱素子が熱伝達流体を運ぶための配管網目を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項15】
前記床基材が木製副床材を含んでなり、前記木製副床材に前記配管網目が取り付けられる、請求項14に記載の床機構。
【請求項16】
前記床基材がコンクリート副床材を含んでなり、前記コンクリート副床材の中に前記配管網目が埋め込まれる、請求項14に記載の床機構。
【請求項17】
前記床基材がグラファイト材料を含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項18】
前記床基材の下に位置する絶縁材料の層をさらに含んでなる、請求項1に記載の床機構。
【請求項19】
前記可撓性グラファイト材料の層が可撓性のある一体的なシートを含んでなり、前記シートが、ロールの形態で提供され、前記床基材を覆うように設置される、請求項1に記載の床機構。
【請求項20】
前記可撓性グラファイト材料の層が複数の一般的に平らな部品を含んでなり、隣接する前記部品の縁部が突き合わせになっている、請求項1に記載の床機構。
【請求項21】
建物の空間を加熱する方法であって、
(a)前記空間の内側表面を限定する平らな境界構造を設けて、前記構造が、構造基材、前記構造基材と熱伝達関係にある加熱素子、および前記構造基材および前記空間と熱伝達関係にある可撓性グラファイト放熱体を包含すること、
(b) 前記加熱素子が熱エネルギーを発生させるように、前記加熱素子を操作すること、および
(c)前記可撓性グラファイト放熱体を介して、前記熱エネルギーを前記平坦な境界構造にわたって横方向に発散させることにより、前記放熱体が存在しない状態よりも、熱がより均一に空間に配分される、ことを含んでなる、方法。
【請求項22】
前記工程(a)が、可撓性グラファイト材料のロールを展開して前記構造基材を覆うことによって、前記可撓性グラファイト放熱体を形成することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(a)が、グラファイトのフレークをインターカレーション処理し、次いで剥離し、剥離されたグラファイト粒子を形成し、次いで前記剥離されたグラファイト粒子を、グラフェン層から形成された凝集性のシートに圧縮することにより、前記可撓性グラファイト放熱体を形成することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記可撓性グラファイト放熱体が約2〜約250の熱的異方性比を有し、前記比が、前記内側表面に対して平行な熱伝導率と、前記内側表面に対して直角の熱伝導率との比として定義される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
軽量熱伝導性プレートであって、
結合剤を含まない、圧縮された膨脹グラファイト材料、および
プレート表面を含んでなり、前記プレート表面に対して平行な熱伝導率および前記プレート表面に対して直角の熱伝導率を有し、前記プレート表面に対して平行な前記熱伝導率が、前記プレート表面に対して直角の前記熱伝導率よりも、少なくとも50%高い、軽量熱伝導性プレート。
【請求項26】
前記プレート表面に対して平行な前記熱伝導率が、少なくとも5.5W/m°Kである、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項27】
プレート含浸をさらに含んでなる、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項28】
窪み、溝、ビード、ローレット刻み、ダイヤモンド形状のローレット刻み、粒表面、接合部および開口部からなる群から選択された、少なくとも一種の構造プレート要素をさらに含んでなる、請求項25に記載の軽量熱伝導性プレート。
【請求項29】
熱伝導性平製品であって、
結合剤を含まない、圧縮された膨脹グラファイト材料、および
平製品表面を含んでなり、前記平製品表面に対して平行な熱伝導率および前記平製品表面に対して直角の熱伝導率を有し、前記平製品表面に対して平行な前記熱伝導率が、前記平製品表面に対して直角の前記熱伝導率の少なくとも約2倍である、熱伝導性平製品。
【請求項30】
前記平製品表面に対して直角の前記熱伝導率が少なくとも約7W/m℃であり、前記平製品表面に対して平行の前記熱伝導率が少なくとも約14W/m℃である、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項31】
少なくとも約0.8g/ccの製品材料密度をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項32】
製品含浸をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項33】
窪み、溝、およびローレット刻みからなる群から選択された、少なくとも一種の構造製品要素をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項34】
熱伝導要素をさらに含んでなる、請求項29に記載の熱伝導性平製品。
【請求項35】
熱伝導性平製品の製造方法であって、
連続的に供給される膨脹グラファイト材料を予備圧縮装置中で圧縮し、ウェブを形成する工程、および
前記ウェブを、ある長さに切断し、所望のサイズを有する請求項29に記載の平製品を形成する工程
を含んでなる、方法。
【請求項36】
前記ウェブが、少なくとも約0.08g/ccのウェブ材料密度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記予備圧縮装置で得た前記ウェブを、続いて後圧縮用の一対のローラー間で圧縮することをさらに含んでなり、予備圧縮と後圧縮が連続製法を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記予備圧縮および後圧縮されたウェブを含浸させることをさらに含んでなり、前記予備圧縮工程、後圧縮工程および含浸工程が連続製法を構成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記予備圧縮されたウェブを含浸させることをさらに含んでなり、前記圧縮工程および含浸工程が連続製法を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品を機械的に処理および構造化することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品をエンボス加工ローラーで構造化することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
ある長さに切断された前記ウェブまたは前記平製品を冷間プレス加工により成形することをさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【図1】
【図1(A)】
【図2】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5】
【図6】
【図6(A)】
【図7】
【図7(A)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1(A)】
【図2】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5】
【図6】
【図6(A)】
【図7】
【図7(A)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−508786(P2009−508786A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530069(P2008−530069)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032673
【国際公開番号】WO2007/030309
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(507393218)グラフテック、インターナショナル、ホールディングス、インコーポレーテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】GrafTech International Holdings Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032673
【国際公開番号】WO2007/030309
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(507393218)グラフテック、インターナショナル、ホールディングス、インコーポレーテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】GrafTech International Holdings Inc.
【Fターム(参考)】
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