説明

可撓性グラファイト複合難燃性壁紙およびその製法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性可撓性グラファイト複合体および防火性可撓性グラファイト壁またはフロアーカバー(covering)の製法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】火災が航空機上またはビル中の閉じ込められた空間内で生ずる時には、発生された有毒煙霧が、主な死因である。有毒煙霧は、プラスチック、合成繊維などの建設材料の燃焼から生ずる。最近の研究は、飛行機墜落において、発生された煙りおよび煙霧が墜落単独の衝撃よりもはるかに多い事故死を生ずることを示した。部屋セパレーターを難燃材料、特に壁紙などの表面に適用できるもので覆うことによって、飛行機上またはビル内の火災の伝播を限定することが望ましいであろう。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、はぎ落とされた(exfoliated)グラファイト粒子および挿入剤(intercalating agent)で処理されたグラファイトフレークの粒子を含む組成物は、高度に難燃性である複合体を形成することが発見された。挿入グラファイトのはぎ落とされていない(unexfoliated)粒子とはぎ落とされたグラファイト粒子とのこの複合体は、連続シートに成形し、圧延して(roll)難燃材料のロールなどの壁紙またはフロアーカバーを製造することができる。
【0004】本発明は、はぎ落とされた可撓性グラファイトの粒子および挿入グラファイトフレークのはぎ落とされていない粒子からなる複合体であって、該複合体中の前記はぎ落とされていない粒子の%が、10〜60%の範囲内であることを特徴とする難燃性可撓性グラファイト複合体に関するものである。
【0005】本発明は、また(i) グラファイトフレークの粒子を挿入剤と接触して挿入グラファイトの粒子を形成し、(ii) 挿入グラファイトの粒子の一部を高温で加熱して、はぎ落とされたグラファイトの粒子を形成し、(iii) 挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子とはぎ落とされたグラファイトの粒子をはぎ落とされていない粒子の%が10〜60%の範囲内であるように合わせ、(iv) 合わされた粒子を密に圧縮された単層又は多層のグラファイトシートに圧縮する工程からなることを特徴とする壁またはフロアー用の防火性可撓性グラファイトカバーの製法に関するものである。
【0006】グラファイトは、平面間で弱い結合で平らな層状平面内において結合された原子からなる結晶形の炭素である。天然グラファイトフレークなどのグラファイトの粒子を例えば硫酸および硝酸の溶液の挿入剤で処理することによって、グラファイトの結晶構造は、反応してグラファイトと挿入剤との化合物を生成する。グラファイトの処理粒子は、以下で「挿入グラファイトの粒子」と称する。高温への暴露時に、挿入グラファイトの粒子は、寸法がアコーディオン状方式でc方向、即ち、グラファイトの結晶平面に垂直な方向に元の容量の80倍以上膨張する。はぎ落とされたグラファイト粒子は、外観がゼイ虫状であり、それゆえウォーム(worm)と通例称する。ウォームは、一緒に圧縮して可撓性シートにしてもよく、この可撓性シートは、元のグラファイトフレークと異なり、各種の形状に成形し、切断することができる。
【0007】グラファイトホイルを可撓性グラファイトから製造するための普通の方法は、米国特許第3,404,061号明細書に記載されている。この特許に記載の方法の典型的な実施においては、天然グラファイトフレークは、フレークを例えば硝酸と硫酸との混合物の酸化剤を含有する溶液に分散することによって挿入している。挿入溶液は、技術上既知の酸化剤および他の挿入剤を含有する。例としては、酸化剤および酸化混合物を含有するもの、例えば、硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、過塩素酸など、または混合物、例えば、濃硝酸と塩素酸塩との混合物、クロム酸とリン酸との混合物、硫酸と硝酸との混合物、または強い有機酸、例えば、トリフルオロ酢酸と有機酸に可溶性の強い酸化剤との混合物を含有する溶液が挙げられる。
【0008】本発明の好ましい態様においては、挿入剤は、硫酸または硫酸/リン酸と、酸化剤、即ち、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸などとの混合物の溶液である。余り好ましくないが、挿入溶液は、金属ハロゲン化物、例えば、塩化第二鉄、および硫酸と混合された塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば、臭素と硫酸との溶液としての臭素または有機溶媒中の臭素を含有してもよい。
【0009】フレークを挿入した後、過剰の溶液は、フレークから水切りする。水切り後にフレーク上に保持される挿入溶液の量は、典型的には、グラファイト100重量部当たり100重量部よりも多い溶液(pph)、より典型的には約100〜150pphである。水洗後、挿入グラファイトフレークは、乾燥し、次いで、700℃よりも高い温度、より典型的には1000℃以上の温度で若干の秒間のみ火炎にさらすことによって、はぎ落として可撓性フレークにする。
【0010】挿入溶液の量は、グラファイト100重量部当たり10〜50部の溶液(pph)に限定してもよい。これは、米国特許第4,895,713号明細書に教示記載のように洗浄工程を排除させる。次いで、はぎ落とされたグラファイト粒子またはウォームは、圧縮し圧延して(roll)、所望の密度および厚さの密に圧縮された可撓性グラファイトホイルシートにする。好適なはぎ落とし法およびはぎ落とされたグラファイト粒子を薄いホイルに圧縮する方法は、前記米国特許第3,404,061号明細書に開示されている。はぎ落とされたウォームを複数の段階で圧延し、圧縮することは通常であることに留意すべきである(圧縮の第一または初期段階の生成物を技術上「可撓性マット」と称する)。次いで、可撓性マットは、所定の厚さの標準密度シートまたはホイルに更に圧縮する。密度約70ポンド/立方フィートが大抵の応用に許容可能であるが、可撓性グラファイトマットは、厚さ2〜70ミルの薄いシートまたはホイル(密度は理論密度に近似)に圧縮してもよい。
【0011】可撓性グラファイトは、表面に沿って、厚さを通してよりも約20倍以上の熱伝導率を有する比較的良好な熱バリヤーであることが既知である。本発明によれば、挿入グラファイトフレークのはぎ落とされていない粒子とはぎ落とされたグラファイトの混合粒子の複合体は、実質的な難燃性を保有することが発見された。このことは、高温、例えば、火災の存在下での高温にさらす時に複合体の厚さを通しての熱伝導率の更なる減少から生ずる。複合体の厚さを通しての熱伝導率のこの減少は、高温での膨張に起因する。膨張されていない厚さの20倍の厚さの膨張が、挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子約30重量%を含有する複合体から実現された。不幸なことに、混合複合体の強度は、挿入グラファイトフレークのはぎ落とされていない粒子の量が増大するにつれて減少する。それゆえ、かね合い(trade off)は、最適の強度と熱伝導率との間で各々の特定の応用の場合に必要とされる。混合粒子の2層複合体は、はぎ落とされた粒子またはウォームの第一床を敷設し(lay down)、挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子の第二床を例えばはぎ落とされた粒子60g対挿入グラファイト40gの所望の割合で重ねることによって形成してもよい。挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子の%は、10〜60%であってもよく、30〜50%が好ましく、約40%が最適であると予測される。前記のように、粒子間の比率は、複合体に所望の強度および難燃性に基づく。これらの性質は各々の応用に応じて変化するであろう。
【0012】グラファイト粒子の2つの床は、可撓性マットに圧延し、薄い2層シートに圧縮する。圧延およびカレンダー掛け操作は、各床中の粒子を界面で混合させ且つ結合された界面を形成させる。このことは、当業者によって理解されるように、非常に有意である。その理由は、ホイルに一旦圧縮されたグラファイトを結合することが非常に困難であるからである。3層複合体は、はぎ落とされていないウォーム例えば20gの第一床、はぎ落とされたグラファイト例えば20gの第二床およびはぎ落とされていないウォーム例えば20gの第三床を対称配置でデポジットすることによって形成することができる。3層以上の配置においては、複合体中のはぎ落とされていない粒子の合計%は、依然として10〜60%の所望の範囲内であるべきである。
【0013】難燃性壁またはフロアーカバーは、複合体を所望の厚さに更に圧縮し、シートを圧延して壁紙の標準ロールに匹敵する連続ロールにすることによって、2以上のグラファイト層の複合体から形成する。火災にさらす時に、壁またはフロアーカバーの厚さは、膨張して、厚さを通して熱伝導率を減少する実質的な数の空気ポケットを有する高多孔体を形成する。熱は、可撓性グラファイトカバーを通して横向きに優先的に伝わる。カバーは、2つのエリアまたは部屋を互いに隔離または分離するためのバリヤーとして使用してもよい。カバーは、火災がカバーの本体を通して伝播するのも防止し、それによって有毒煙霧を含有するように作用する。更に、グラファイト複合体は、高い発火温度のため発火しにくく且つそれ自体自己冷却性であり、このことも火災が広がることを防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】はぎ落とされた可撓性グラファイトの粒子および挿入グラファイトフレークのはぎ落とされていない粒子からなる複合体であって、該複合体中の前記はぎ落とされていない粒子の%が、10〜60%の範囲内であることを特徴とする難燃性可撓性グラファイト複合体。
【請求項2】前記複合体中の前記のはぎ落とされていない粒子の%が、30〜50%の範囲内である、請求項1に記載の難燃性可撓性グラファイト複合体。
【請求項3】前記のはぎ落とされていない粒子が、前記複合体の40%を表わす、請求項2に記載の難燃性可撓性グラファイト複合体。
【請求項4】(i) グラファイトフレークの粒子を挿入剤と接触して挿入グラファイトの粒子を形成し、(ii) 挿入グラファイトの粒子の一部を高温で加熱して、はぎ落とされたグラファイトの粒子を形成し、(iii) 挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子とはぎ落とされたグラファイトの粒子をはぎ落とされていない粒子の%が10〜60%の範囲内であるように合わせ、(iv) 合わされた粒子を密に圧縮された単層又は多層のグラファイトシートに圧縮する工程からなることを特徴とする壁またはフロアー用の防火性可撓性グラファイトカバーの製法。
【請求項5】圧縮されたグラファイトシートを圧延してロールにする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】前記の(iii) 工程において前記挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子を敷設して第一粒子床を形成し、前記のはぎ落とされたグラファイトの粒子を敷設して第二粒子床を形成し、第二粒子床を前記第一粒子床上に重ねて2層複合体を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】前記2層複合体をシートに圧縮する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】前記複合体中の挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子の%が、30〜50%の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】前記の(iii) 工程において、前記挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子を敷設して第一粒子床を形成し、前記のはぎ落とされたグラファイトの粒子を敷設して第二粒子床を形成し、第二粒子床を前記第一粒子床上に重ね、更に挿入グラファイトのはぎ落とされていない粒子の第三床を前記第二粒子床上に重ねて3層カバーを形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】第一床および第三床を第二床の回りに対称的に配置し、前記複合体中のはぎ落とされていない粒子の%が10〜60%の範囲内である、請求項9に記載の方法。

【特許番号】第2960610号
【登録日】平成11年(1999)7月30日
【発行日】平成11年(1999)10月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−206755
【出願日】平成4年(1992)8月3日
【公開番号】特開平6−24723
【公開日】平成6年(1994)2月1日
【審査請求日】平成8年(1996)3月1日
【出願人】(591033870)ユーカー、カーボン、テクノロジー、コーポレーション (4)
【氏名又は名称原語表記】UCAR CARBON TECHNOLOGY CORPORATION