説明

可撓性膜状太陽電池積層体

【課題】吸湿吸水防止性・防汚性の耐久性が高く、実用寿命の永い可撓性膜状太陽電池積層体の提供。
【解決手段】可撓性シート状基体4と、その上に接合された複数の可撓性太陽電池モジュール2を含み、基体において、可撓性シート状基材層4a上に、アンカー層5及びトップ層6が順次に接合され、太陽電池モジュールの下面部2aとシート状基体とが、架橋性接着剤層8aにより接着され、太陽電池モジュールの側面部2b、それに連続する上面周縁部2c、及び前記側面部の下端を囲む基体上面の周囲部4cを、架橋性接着剤層8bを介して、フッ素系樹脂含有可撓性保護フィルム3が被覆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性膜状太陽電池積層体に関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は可撓性太陽電池モジュールを含み、接着性、防湿・防水性、耐候性及び、防汚性に優れた可撓性膜状太陽電池積層体に関するものである、本発明の可撓性膜状太陽電池積層体は、巻き上げ或は屈曲させて運搬又は収納を要する大型テント構造物、テント倉庫、日除けテント、屋形テント、農業用ハウス、トラック幌、ブラインドなどの構成部材として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池はそのエネルギー源が太陽であるために、無尽蔵で、化石エネルギーのように枯渇することもなく、従って、環境負荷ゼロという地球温暖化防止への貢献度の最も高いクリーンエネルギーを利用するものとして期待されている。また、アモルファスシリコン太陽電池は、薄型、かつ軽量にすることができ、製造コストが安く、大面積化が容易であるなどの利点を有しているので、今後の太陽電池の主流となると考えられる。従来の太陽電池にはガラス基板を用いられていたが、軽量化、施工性、量産性においてプラスチックフィルムまたは金属フィルムなどを基板として用いたフレキシブルタイプの太陽電池は、そのフレキシビリティを生かしたロールツーロール方式の製造方法により大量生産が可能である。従来の太陽電池の建造物への利用については、単結晶シリコンや多結晶シリコンの太陽電池を屋根面に置く屋根置き型であり、屋根面に支持架台を設け、それに太陽電池を固定支持する方法であるが、近年では、直接屋根に組み込む方法が採られつつある。しかしながら、いずれもガラス基板で構成されたモジュールを使用しているため作業性、施工性に難点があるのが実情であった。
【0003】
一方では、屋根防水シートと言われる加硫ゴム系、塩化ビニル系やアスファルト系非加硫ゴム等の高分子シートの上面にフィルム状のフレキシブルタイプの太陽電池を一体化することにより上記の課題が解決されつつある。しかし、所望のフレキシビリティを得ようとすると、太陽電池の発電素子を保護する材料が有機材料に限定されてしまうという欠点がある。その結果、防湿性、耐候性、接着性、等の低下を引き起こし、太陽電池の寿命を縮めてしまうことがある。それを改善するための表面保護材料として、フッ素樹脂フィルムの表面に珪素酸化物薄膜が形成されたシートが提案されている(例えば、特許文献1)。また、透明なポリクロロトリフルオロエチレン樹脂フィルムを表面保護フィルムとして使用することが提案されている(例えば、特許文献2)。有機材料を利用して、防湿性を高める方法として種々検討されているが、フレキシビリティのある太陽電池セルと一体化した膜材については、長期間にわたる耐久性の面で不十分であるのが現状である。
【0004】
また、フレキシビリティタイプの太陽電池セルの両面に接着剤を介して、フッ素樹脂フィルムで表面保護した太陽電池モジュールが市販されている。前記太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール単独または、様々な背面材と一体化されて使用される。例えば、前記太陽電池モジュールを可撓・防水性膜材などのシート状基体と一体化させて太陽電池モジュールを様々なところに取付けられることが提案されている(例えば、特許文献3)。これは、太陽電池モジュールとしては、ある程度十分な耐久性を有しているものの、膜材一体化としての長期間にわたる耐久性の面で不十分であるのが現状である。
【0005】
太陽電池モジュールとシート状基体との一体化において、耐久性を低下させる原因は色々あるが、特に、下記の要因が大きい。
(1)太陽電池モジュールとシート状基体間の接着耐久性が不十分であること。
太陽電池モジュールのシート状発電素子は金属電極で被覆されているため、発電素子が積層されている部分には太陽光(紫外線含む)は透過されないため、シート状基体との接合部の接着剤層は、紫外線が起因とされる樹脂劣化は生じない。
一方、発電素子を含まない端部は太陽光(紫外線を含む)を透過するため、経時的に樹脂劣化が生じ、接着耐久性が低下する。したがって、太陽電池モジュール層とシート状基体間の接着耐久性の改善が必要である。
(2)太陽電池モジュールの端部、厚み段差部分及び厚さ方向段差部分の防汚性を含む耐久性が不十分であること。
シート状基体上に積層された太陽電池モジュールの端部は、シート状基体上に全面埋没しない限り、厚さ方向に段差が生ずるため、長期間の屋外曝露によって、塵や埃などの汚れ成分が堆積し、外観上好ましくない。したがって、段差部の汚れ成分の付着、堆積による汚染の改善が必要であった。
(3)太陽電池モジュール端部断面の耐湿性、耐水性を含む耐久性が不十分であること。
太陽電池モジュールの端部断面は、保護フィルムと封止用シートが剥き出しとなっているため、端部断面から吸湿又は、吸水によって、発電素子部分へ浸入し、出力低下を引き起こす可能性がある。したがって、太陽電池モジュール端部断面への吸湿又は、吸水の改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−308521
【特許文献2】特開2006−100527
【特許文献3】特開平10−144947
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の可撓性膜状太陽電池積層体の上記問題点を解決し、実用上十分な可撓性を有し、かつ太陽電池モジュールとの接着耐久性が高く、また、接合部断面に対して、吸湿、吸水防止及び、防汚性、等の耐久性が高い可撓性膜状太陽電池積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体は、可撓性シート状基体とその一面上に、互に間隔をおいて配置された複数の可撓性太陽電池モジュールとを含む積層体であって、
(1)前記可撓性シート状基体が、可撓性シート状基材層と、その上面上に接合している表面被覆層とを含み、
(2)前記表面被覆層において、メタクリル酸エステル系樹脂及び、フッ素系樹脂を含むアンカー層が、前記可撓性シート状基材層に接合し、フッ素系樹脂を主成分として含むトップ層が、前記アンカー層上に接合しており、そして、
(3)前記可撓性太陽電池モジュールと、前記可撓性シート状基体との接合部が、架橋性接着剤層により接着され、かつ、前記可撓性太陽電池モジュールの側面部、及び、この側面部の上端に連続する前記可撓性太陽電池モジュールの上表面の周縁部、並びに前記可撓性シート状基体の上面の、前記可撓性太陽電池モジュールの側面部の下端を取り囲む前記可撓性シート状基体の周囲部に、フッ素系樹脂を主成分として含む可撓性保護フィルムが、架橋性接着剤層を介して接着されていて、それによって、可撓性太陽電池モジュールの吸湿吸水防止耐久性を向上させていることを特徴とするものである。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記アンカー層がメタクリル酸エステル系樹脂、100〜80質量%及びフッ素系樹脂0〜20質量%とを含む接着層と、フッ素系樹脂100〜80質量%及びメタクリル酸エステル系樹脂、0〜20質量%とを含むバリヤー層とからなるものであってもよい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記トップ層が、フッ素系樹脂80〜45質量%、メタクリル酸エステル系樹脂20〜45質量%、エポキシ系樹脂0〜5質量%及びシリコーン系樹脂0〜5質量%とを含み、防汚性及び耐久性を有することが好ましい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記アンカー層及びトップ層用フッ素系樹脂が、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂であることが好ましい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記可撓性シート状基体の表面被覆層が、メタクリル酸エステル系樹脂100〜35質量%とフッ化ビニリデン系樹脂0〜65質量%とを含むアンカー層用樹脂、及びフッ化ビニリデン系樹脂100〜50質量%、メタクリル酸エステル系樹脂0〜50質量%とを含むトップ層用樹脂とを、溶融二層押出し積層法により一体化しながら、その押出されたアンカー層用溶融樹脂層表面を、前記可撓性シート状基材層上に接合して形成されたものであることが好ましい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記架橋性接着剤層が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びヒドロキシル基を含むフッ素系樹脂から選ばれた1種以上を含む樹脂成分と、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物及びカップリング剤から選ばれた1種以上を含む架橋剤とを含む架橋性接着剤の架橋硬化物を含むものであることが好ましい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記可撓性太陽電池モジュールの最外表面が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムにより形成されていることが好ましい。
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、前記可撓性保護フィルムが0.025〜0.10mmの厚さ、及び5g/m2/day以下の水蒸気透過率(JIS Z0208−1976条件Bにより測定)を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体は、実用上十分な可撓性を有し、更に高温高湿度環境下で使用した場合、及び長期間屋外で使用した場合においても、シート状基体と太陽電池モジュール間の接着耐久性に優れ、また、太陽電池モジュールの端部断面部分から吸湿、吸水することもなく、発電素子への水分の浸入を防止することができるため、発電出力低下を防止する効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の一実施例の一部断面説明図。
【図2】図1の可撓性膜状太陽電池積層体の平面説明図。
【図3】本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の可撓性シート状基体の一実施態様の一部断面説明図。
【図4】本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の可撓性シート状基体の他の実施態様の一部断面説明図。
【図5】本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の可撓性太陽電池モジュールの一実施態様の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体は、可撓性シート状基体と、その一面上に、互に離間されて配置されている複数の可撓性電池モジュールとを含むものである。図1は、本発明の可撓性膜状電池積層体の1実施態様の部分断面説明図であって、図示されている部分は、1個の太陽電池モジュールと、それを支持している可撓性シート状基体の一部分とから構成される。図1において、可撓性シート状基体4の上面に、可撓性太陽電池モジュール2の下面部2aが、配置され、この下面部が架橋性接着剤層8aを介して、可撓性シート状基体上に接着・固定されている、可撓性太陽電池モジュール2は、直列に接続された複数の太陽電池セル1の可撓性接続体と、それを包囲被覆している可撓性・接着性樹脂層1aとを含むものである。
【0012】
また可撓性太陽電池モジュール2と、可撓性シート状基材との固定状態は、架橋性接着剤層8bを介して、可撓性保護フィルム3を被覆・固定することにより更に強化される。すなわち図1に示されているように、可撓性太陽電池モジュールの側面部2b、及びこの側面部2bの上端に連続する前記可撓性太陽電池モジュールの上表面の周縁部2c、並びに前記可撓性太陽電池モジュール側面部下端を取り囲む、前記可撓性シート状基体上面の周囲部4cに、フッ素樹脂を主成分として含む可撓性保護フィルム3が、架橋性接着剤層8bを介して接着されている。接着された可撓性保護フィルム層3は、可撓性太陽電池モジュールと、可撓性シート状基体との接合安定性を強化し、さらに可撓性太陽電池モジュールの吸湿・吸水防止耐久性を著しく向上させることができる。
【0013】
図2は、図1に示された本発明の可撓性膜状太陽電池積体の一実施態様の平面説明図であって、太陽電池セル1とそれを包囲被覆している可撓性接着性樹脂層1aを含む可撓性太陽電池モジュール2において、可撓性接着性樹脂層1aの周縁部、及び側面部が可撓性保護フィルム3の部分3b及び3aにより被覆され、この可撓性保護フィルム3の他の部分3cは前記側面部の下端(図示されていない)を取り囲む可撓性シート状基体上面の周囲部上に伸び出て、これを被覆している。
【0014】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の可撓性シート状基体の一例の断面説明図が、図3に示されている。図3において、可撓性シート状基体4は、可撓性シート状基材層4aと、その上に積層された表面被覆層4bを含むものである。図3において、表面被覆層4bは、可撓性シート状基材層4a上に積層されたアンカー層5及びその上に積層されたトップ層6とを含むものである。上記アンカー層5はメタクリル酸エステル系樹脂と、フッ素系樹脂とを含み、前記トップ層はフッ素系樹脂を主成分として含むものである。アンカー層5は、可撓性シート状基材層4a上に積層された接着層5bと、その上に積層されたバリヤー層5aとを含むものであってもよい。この場合、前記接着層5bは、メタクリル酸エステル系樹脂100〜80質量%とフッ素系樹脂0〜20質量%とを含むことが好ましく、前記バリヤー層は、フッ素系樹脂100〜80質量%とメタクリル酸エステル系樹脂0〜20質量%とを含むことが好ましい。
【0015】
前記表面被覆層のアンカー層及び/又はトップ層の構成のために用いられるメタクリル酸エステル系樹脂とは、メタクリル酸メチルの単独重合体又は、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体を言う。共重合可能な単量体としては、炭素原子数が1〜8のアルコール残基を有するメタクリル酸エステル例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等、の炭素原子数が1〜8のアルコール残基を有するアクリル酸エステル例えばアクリル酸メチルアクリル酸エチル及び、アクリル酸ブチル、並びにスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、等を用いることができる。好ましくは、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体が用いられる。
【0016】
前記表面被覆層のアンカー層及び/又はトップ層に用いられるフッ素形樹脂とは、
また、ここで使用されるフッ素形樹脂とは、フッ化ビニリデンの単独重合体又は、フッ化ビニリデンと、それと共重合可能な単量体との共重合体を言う。フッ素系共重合体としては、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、等がある。特に、メタクリル酸エステル系樹脂との相溶性のよいフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂が好ましい。
【0017】
接着層のメタクリル酸エステル系樹脂とフッ素系樹脂の配合比は、メタクリル酸エステル系樹脂100〜80質量%、フッ素系樹脂0〜20質量%である。好ましくは、メタクリル酸エステル系樹脂100〜90質量%、フッ素系樹脂0〜10質量%である。メタクリル酸エステル系樹脂の含有量が80質量%未満であると、シート状基体に対する接着性が不十分になることがある。
前記アンカー層及びトップ層に用いられるフッ素系樹脂が、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体であることが好ましい。
【0018】
前記バリヤー層を形成するメタクリル酸エステル系樹脂とフッ素系樹脂との配合比は、メタクリル酸エステル系樹脂0〜20質量%、フッ素系樹脂100〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは、メタクリル酸エステル系樹脂0〜10質量%、フッ素系樹脂100〜90質量%である,フッ素系樹脂の含有量が80質量%未満であるとシート状基体に含まれる配合剤がバリヤー層を透過して、ブリード又は、ブルームを起こし、可撓性太陽電池モジュールとの接着耐久性を低下させることがある。
【0019】
前記表面被覆層の、前記接着層とバリヤー層とを含む、アンカー層の好ましい態様において、接着層が、前記メタクリル酸エステル系樹脂100〜80質量%及び前記フッ素系樹脂0〜20質量%からなり、前記バリヤー層が、フッ素系100〜80質量%及び前記メタクリル酸エステル系樹脂0〜20質量%からなるアンカー層が用いられる。
【0020】
前記表面被覆層のトップ層の好ましい組成において前記フッ素系樹脂80〜45質量%、前記メタクリル酸エステル系樹脂20〜45質量%、エポキシ系樹脂0〜5質量%及びシリコーン系樹脂0〜5質量%を含むことが好ましく、このような組成を有するトップ層は、可撓性シート状基体の防湿性及び耐久性を向上させるために有効である。
【0021】
前記トップ層用エポキシ樹脂として、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどを用いることができる。また、上記エポキシ樹脂をキレート剤、ウレタン樹脂、合成ゴム等で変性されたエポキシ樹脂も使用できる。
【0022】
前記トップ層用シリコン樹脂とは、主にシラン系カップリング剤を使用することができる。シラン系カップリング剤としては、アミノシラン類、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いることができ、また、エポキシシラン類、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど:ビニルシラン類、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなど;メルカプトシラン類、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなど、を用いることができる。これらシラン系カップリング剤の中で、耐湿性、耐光性の観点から、特にはγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシランを用いることが好ましい。
【0023】
前記トップ層には、可撓性太陽電池モジュールとの接着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理、及びプラズマ処理等の前処理を施すことができる。
【0024】
表面被覆層の他の実施態様が図4に示されている。図4において、可撓性シート状基体層4a上に積層された表面被覆層4bは、溶融二層押出し積層法により形成される。この態様において、好ましくは、前記メタクリル酸エステル樹脂100〜35質量%と前記フッ化ビニリデン系樹脂0〜65質量%を含むアンカー層用樹脂、及び、前記フッ化ビニリデン系樹脂100〜50質量%と、前記メタクリル酸エステル系樹脂0〜50質量%を含むトップ層用樹脂とを溶融押出機関において別々に溶融し、押出し、同時に押し出された2層の溶融樹脂層を、積層一化化し、かつ一体化された2層中のアンカー層用樹脂層の可撓性シート状基材層表面に接合接着するように積層することによって、図4に示されているように可撓性シート状基材層4a上に、それに接するアンカー層5と、その上に積層されたトップ層からなる表面被覆層4bが積層される。より好ましくは、前記アンカー層が、メタクリル酸エステル系樹脂100〜50質量%、フッ化ビニリデン系樹脂0〜50質量%を含み、前記トップ層が、フッ化ビニリデン系樹脂100〜70質量%、メタクリル酸エステル系樹脂0〜30質量%を含む。前記アンカー層のメタクリル酸エステル系樹脂が35質量%未満であるとシート状基体との密着性が不十分で、経時的にフィルムが剥離してくることがある。前記トップ層のフッ化ビニリデン系樹脂が、50質量%未満であると防汚耐久性が不十分で、経時的に塵や埃が堆積してきて外観上好ましくない。前記アンカー層とトップ層の2種類のフィルムを溶融押出で一体化させた2層フィルムの厚さは、0.02〜0.075mmであることが好ましく、特に、0.04〜0.06mmがより好ましい。厚さが0.02mm未満であると、バリヤー性が不十分になることがあり、またそれが0.075mmを超えると柔軟性が不十分になることがある。
【0025】
前記トップ層には、可撓性太陽電池モジュールとの接着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理、及びプラズマ処理等で前処理することができる。
【0026】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体において、図1に示されるように、可撓性太陽電池モジュール2を可撓性シート状基体4に接着固定するための架橋性樹脂層8a及び、この接着固定をさらに補強するための可撓性保護フィルム3を、可撓性太陽電池モジュール2及び可撓性シート状基体4に接着するための架橋性樹脂層8bは、接着用可撓性樹脂と架橋剤とを含み、接着用可撓性樹脂が、架橋剤により架橋され、架橋後も実用上十分な可撓性を有するものである。架橋性樹脂層8a及び8a用接着用可撓性樹脂はポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びヒドロキシル基を含むフッ素系樹脂から選ばれた1種以上を含むものである。また、架橋剤としては、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及びカップリング剤などの1種以上が用いられる。
【0027】
架橋性樹脂8a,8b用ポリエステル樹脂は一般的に多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合させることにより得られる。上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの5員環もしくは6員環を含む脂環式ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの3官能以上の多価カルボン酸などがある。これらの多価カルボン酸は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状のアルカン系ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンジオールなどの3官能以上の多価アルコールがある。
【0028】
架橋性接着剤層8a,8b用ポリウレタン系樹脂として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対して、2官能以上のイソシアネート化合物が使用できる。
ポリエステルポリオールは、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系の二塩基酸の1種以上、そして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系、シクロヘキサンジオール、水添キシレングリコールなどの脂環式系、キシレングリコールなどの芳香族系ジオールの1種以上を用いることができる。また、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系のポリオールを用いることができる。カーボネートポリオールとしては、カーボネート化合物とジオールとを反応させて得ることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール、キシリレングリールなど芳香族ジオールなどの1種以上の混合物が用いられたカーボネートを用いることができる。
【0029】
上記ポリウレタン樹脂用のイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート類、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートなど;脂環式ジイソシアネート類、例えば、イソホロンジイソシアネート、及び水添トリレンジイソシアネートなど;芳香族ジイソシアネート類、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシレンジイソシアネートなど;イソシアヌレート類、例えば、トリス(ヘキサメチレンイソシアネート)イソシアヌレート、及びトリス(3−イソシアネートメチルベンジル)イソシアヌレートなど;並びにこれら化合物のイソシアネート基末端をフェノール類、オキシム類、アルコール類、ラクタム類などのブロック化剤でブロックしたブロックイソシアネートなどを用いることができる。
【0030】
また、架橋性接着剤8a,8bに使用されるシリコーン系樹脂としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトエチルトリメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトメトキシシラン、ポリメチルシロキサン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物、これらのシラン化合物誘導体、これらのシラン化合物の混合物、これらのシラン化合物誘導体の混合物、これらシラン化合物とこれらシラン化合物誘導体の混合物などがある。
【0031】
また、架橋性接着剤8a,8bに用いられるヒドロキシル基含有フッ素系樹脂としては、ヒドロキシル基を含むフルオロオレフィン−ビニル共重合体樹脂、例えば、ヒドロキシル基を含むトリフルオロクロロエチレン−ビニル共重合体樹脂、ヒドロキシル基を含むテトラフルオロエチレン−ビニル共重合体樹脂などがある。
【0032】
前記架橋接着8a,8bで使用される架橋剤として、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及びカップリング剤化合物から選ばれた1種以上の架橋剤の硬化物を含むことが好ましい。
【0033】
架橋性接着剤8a,8bにおいて架橋剤用エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが使用できる。また、上記エポキシ樹脂をキレート剤、ウレタン樹脂、合成ゴム等で変性されたエポキシ樹脂も使用できる。
【0034】
架橋性接着剤8a,8bの架橋剤用イソシアネート化合物としては、上記のイソシアネート化合物を使用することができる。
【0035】
また、架橋剤用カップリング剤化合物としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びジルコアルミニウム系カップリング剤から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
シラン系カップリング剤としては、アミノシラン類、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど;エポキシシラン類、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど;ビニルシラン類、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなど;メルカプトシラン類、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなど、が挙げられる。
チタン系カップリング剤としては、アルコキシ類、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、及びテトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタンなど;アシレート類、例えば、トリ−n−ブトキシチタンステアレート、及びイソプロポキシチタントリステアレートなどが挙げられる。
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、及びテトライソプロピルジルコネートなどが挙げられる。アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
さらに、ジルコアルミニウム系カップリング剤としては、テトラプロピルジルコアルミネートが挙げられる。これらカップリング剤の中で、耐湿性、耐光性の観点から、特にはγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシランを用いることが好ましい。
【0036】
架橋性接着剤層8a,8bの架橋剤として用いられるエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び/又はカップリング剤化合物の添加量は、それとともに用いられる架橋性接着層8a又は8b層の合計固形分質量に対し、0.5〜30質量%であることが好ましい。その添加量が0.5質量%未満では、シート状基板との接着性が不十分になることがあり、またそれが30質量%を超えると得られる積層体の柔軟性が不十分になることがある。
【0037】
図1に示されているように可撓性太陽電池モジュールにおいて、可撓性太陽電池セル1は、可撓性接着性樹脂層1aにより被覆されているか、図5に示されているように、可撓性太陽電池モジュール2は、その最外上及び下面を形成するエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム9を含むことが好ましい。前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム9の厚さは、0.025〜0.10mmであることが好ましく、特に、0.04〜0.075mmがより好ましい。厚さが0.025mm未満であると、防湿性の向上が不十分になることがあり、またそれが、0.075mmを超えると柔軟性が不十分になることがある。
【0038】
図1及び、図2に示された、前記可撓性保護フィルム3は、JIS Z0208において、フィルム厚さが50μmで、測定条件が、40℃、90%RHのときの水蒸気透過率が5g/m2/day以下であることが好ましい。このような性能を有する可撓性保護フィルム3は、フッ素系樹脂を主成分として含む厚さが0.025〜0.10mmのフィルムにより構成される。
上記フッ素系樹脂フィルムとして、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フロロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選ばれた2種以上のモノマーからなる少なくとも1種の共重合体樹脂フィルムが使用できる。特には、防湿性の点から、厚さが0.025〜0.10mmのトリフルオロクロロエチレンフィルムを用いることが好ましい。可撓性樹脂フィルム3の厚さは、0.025〜0.10mmであることが好ましく、特には、0.04〜0.075mmが好ましい。厚さが0.025mm未満であると防湿性が不十分となることがあり、またそれが0.075mmを越えると柔軟性が不充分となることがある。
【0039】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体の可撓性シート状基体4は、可撓・防水性シートからなるものであって、0.1〜3.0mmの厚さ及び、150〜2500g/m2の単位面積当り質量(目付け)を有することが好ましい。可撓・防水性シートは、必要により繊維布帛(織布、編布又は不織布)を基布として含んでいてもよい。この場合繊維布帛からなる基布の少なくとも一面、好ましくは両面に、可撓・防水性合成樹脂が、塗布又は含浸されていて、可撓・防水樹脂層が形成されていることが好ましい。基布用繊維布帛を形成する繊維としては、天然繊維、例えば、木綿、麻等、無機繊維、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等、再生繊維、例えば、ビスコースレーヨン、キュプラ等、半合成繊維、例えば、ジ−及びトリアセテート繊維等、及び合成繊維、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、ケブラー等のアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル繊維(飽和ポリエステル)及びポリ乳酸繊維等の脂肪酸ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、芳香族ポリエーテル繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維及びポリ塩化ビニル繊維、等から選ばれた少なくとも1種からなるものを使用することができる。繊維性基布を形成している繊維材料は、短繊維紡績糸、長繊維糸状、スプリットヤーン、テープヤーン等、いずれの形状でもよい。また、繊維性基布の組織は、織物、編物、不織布又は、これらの複合体のいずれであってもよい。
【0040】
可撓性シート状基体において、可撓・防水性シート用可撓・防水性合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂(エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩等)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステル系樹脂を含む)、アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、スチレン系共重合体樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びこれらの水素添加物等)、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、シリコーン系樹脂、及び、その他の合成樹脂(熱可塑性エラストマーを包含する)等から選ぶことができる。これらの防水性合成樹脂は、単独、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
【実施例】
【0041】
本発明の可撓性膜状太陽電池積層体を、下記実施例により更に説明する。
下記実施例及び比較例において製造された太陽電池積層体は下記の試験に供された。
(1)発電出力測定
JIS−C8935−1995に基づき、供試体の環境試験前後の発電出力を測定した。
(2)耐湿熱性
供試体を85℃,85%RHの環境下にて、1000時間放置後の発電出力保持率(%)を計測し、かつ外観(色相、フィルム剥がれ、浮き、その他)を下記のように4段階に評価した。
(外観評価)
4:測定開始前の状態に比べて変化なし。
3:着色が僅かに見られる。
2:黄変が認められ、供試体の一部分にフィルム(表面被覆層、可撓性太陽電池モジュ ール層、可撓性保護フィルム層)の浮き、剥がれが一部見られる。
1:黄変が認められ、供試体の全面にフィルム(上記)の浮き、剥がれが認められる。
(3)耐候性
供試体をメタルウェザー超促進耐候試験機に装着し、これに下記条件で紫外線照射した後の発電出力保持率を計測し、及び、外観(色相、フィルム剥がれ、浮き、その他)を下記4段階に評価した。
(試験条件)
紫外線強度;50(mW/cm2
L時(ライト);温度60℃、湿度39%、設定時間4時間
D時(結露) ;温度60℃、湿度90%以上、設定時間4時間
L時及びD時の合計時間 8時間
を1サイクルとして、合計15サイクル(120時間)を1単位の試験時間として、合計10単位、1200時間の照射を行った。
(外観評価)
4:測定開始前の状態に比べて変化なし。
3:着色が僅かに見られる。
2:黄変が認められ、供試体の一部分にフィルム(表面被覆層、可撓性太陽電池モジュ ール層、可撓性保護フィルム層)の浮き、剥がれが一部見られる。
1:黄変が認められ、供試体の全面にフィルムの浮き、剥がれが認められる。
(4)耐はためき性
横手長さ140cm、傾斜縦幅100cmの、南面して30度に傾斜している曝露枠台の、横手上辺部と横手下辺部との間に、横幅30cm縦長さ60cmの供試体を配置し、この供試体の横上辺部と横下辺部の2偶部を、長さ20cmのゴムバンドにより前記曝露枠台の横手上辺部と下辺部とに結びつけて固定し、供試体が風を受けたとき、供試体がゴムバンドの伸縮により変位してはためくことができるようにした。上記のはためき可能な供試体を、屋外環境下(実施地:埼玉県草加市、実施期間:2009年6月〜12月)にて、5000時間放置した後の発電出力保持率(%)を計測し、及び、外観(汚れ、フィルム剥がれ、浮き、その他)を下記のように4段階に評価した。
(外観評価)
4:測定開始前の状態に比べて変化なし。
3:汚れの付着が僅かに見られる。
2:汚れの付着が認められ、供試体の一部分にフィルム(表面被覆層、可撓性太陽電池 モジュール層、可撓性保護フィルム層)の浮き、剥がれが一部見られる。
1:汚れの付着が認められ、供試体の全面にフィルムの浮き、剥がれが認められる。
(5)防湿性(水蒸気透過率)
JIS Z0208に準拠して、フィルム厚さ50μm、温度40℃、相対湿度90%RHにおいて、フィルムの水蒸気透過率(g/m2,day)を測定した。
【0042】
実施例1
シート状基体のシート状基材層用可撓・防水性シートの繊維布帛として、ガラス繊維糸条(繊維太さ:150tex)を経糸、緯糸に使用した平織物(目付け:380g/m2、密度:経糸29本/25.4mm、緯糸32本/25.4mm)を使用した。
【0043】
前記繊維布帛上に下記可撓・防水性樹脂フィルムを貼着して、シート状基材層を構成した。
前記可撓・防水性樹脂フィルムは、下記ポリ塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形法により混練、圧延し、厚さ0.16mmのフィルムを作製したものであった。このフィルムを前記繊維布帛の表面上に165℃で2分間熱圧着して、前記可撓性シート状基材層を作製した。この基材層の目付けは840g/m2であった。
塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸エステル系可塑剤 50質量部
リン酸エステル系可塑剤 15質量部
エポキシ系化合物 3質量部
Ba−Ca系安定剤 1質量部
芳香族イソシアネート化合物 5質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.1質量部
顔料(酸化チタン) 5質量部
【0044】
上記前記可撓性シート状基材層の表面にアンカー層を形成した。まず下記アンカー層用接着剤組成物(アクリル系樹脂90質量%とフッ素系樹脂10質量%との混合物)の溶液をコーティングして、厚さが約10μmの接着層を形成した。
メタクリル酸エステル系樹脂(メタクリル酸メチル樹脂とアクリル酸ブチル樹脂の共重合体) 18質量部
フッ素系樹脂(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂)
2質量部
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 80質量部
次に、接着層の表面に、下記バリヤー層用組成物(アクリル系樹脂10質量%とフッ素系樹脂90質量%との混合物)の溶液をコーティングして、厚さが約10μmのバリヤー層を形成して、アンカー層を構成した。
メタクリル酸エステル系樹脂(メタクリル酸メチル樹脂と
アクリル酸ブチル樹脂の共重合体) 2質量部
フッ素系樹脂(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン
共重合体樹脂) 18質量部
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 80質量部
【0045】
更に、前記バリヤー層の表面に、下記トップ層用組成物(アクリル系樹脂20質量%と、フッ素系樹脂75質量%と、エポキシ系樹脂2質量%と、シリコン系樹脂3質量%との混合物)の溶液をコーティングして、厚さが約10μmのトップ層を形成した。
フッ素系樹脂(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン
共重合体樹脂) 15質量部
メタクリル酸エステル系樹脂(メタクリル酸メチル樹脂と
アクリル酸ブチル樹脂の共重合体) 4質量部
エポキシ系樹脂(ウレタン変性エポキシ樹脂) 0.4質量部
シリコン系樹脂(シランカップリング剤) 0.6質量部
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 80質量部
【0046】
上記のように、アンカー層(接着層とバリヤー層)、及びトップ層からなる表面被覆層を形成した。
更に、トップ層の表面にコロナ放電処理を施して、接着性の向上を図った。
【0047】
幅460mm、長さ1733mmの可撓性太陽電池モジュール(品名;アモルファス太陽電池モジール、形式:FPV1045COM1、公称最大出力:45W、製造元;富士電機システムズ(株))2個を、互いに80mmの間隔を開けて配置し、これに、幅1200mm、長さ2000mmの上記アンカー層及びトップ層を有する可撓性シート状基体の中央部に、下記架橋性接着剤用樹脂組成物層を介して積層し、接合一体化した。
【0048】
次に、可撓性太陽電池モジュールの側面部及び上面周縁部並びに前記太陽電池モジュールの側面部下端を取り囲む、シート状基体の周囲部に、可撓性保護フィルムを積層、接合一体化した。
この可撓性保護フィルムとして、厚さ50μmのトリフルオロクロロエチレン樹脂フィルムを使用した。このフィルムの水蒸気透過率は、0.1g/m2/dayであった。
【0049】
このトリフルオロクロロエチレン樹脂フィルムの裏面にコロナ放電処理を施した後に、下記組成の架橋性接着剤層用樹脂組成物をコーティングをして、乾燥後厚みが20μmの架橋性接着剤層を形成した。
ポリエステル系樹脂 100質量部
イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート) 7質量部
エポキシ樹脂(ウレタン変性エポキシ樹脂) 1質量部
カップリング剤化合物(エポキシ系シランカップリング剤) 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 2.5質量部
希釈溶剤(酢酸エチル) 140質量部
【0050】
前記のようにして形成された積層体を120℃の温度、及び1Torrの真空下に2分間真空加熱後、5分間大気圧下で加圧加熱して、すべての層を接着一体化させて、可撓性膜状太陽電池積層体を作製し、これを前記試験に供した。
試験結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、可撓性保護フィルムとして、厚さ50μm、水蒸気透過率が4.5g/m2/dayのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムを用いて形成した。
試験結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、シート状基体である可撓・防水性シートの表面にアンカー層の接着層、及びトップ層の2層の表面被覆層を形成した。
試験結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、シート状基体用繊維布帛として、ポリエステル繊維糸状(繊維太さ:84dtex)を経糸、緯糸に使用した基布平織物(目付け:160g/m2、密度:経糸40本/25.4mm、緯糸50本/25.4mm)を使用した。また、前記繊維布帛上に、下記可撓・防水性樹脂フィルムを貼着した。この可撓・防水性樹脂フィルムとして、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形法により混練、圧延し、厚さ0.15mmのフィルムを作製し、このフィルムを前記繊維布帛の表面上に165℃で2分間熱圧着し、可撓性シート状基材層を形成した。このシート状基材層の目付けは500g/m2であった。
試験結果を表1に示す。
【0054】
実施例5
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、アンカー層用、メタクリル酸エステル系樹脂70質量%及びフッ化ビニリデン系樹脂30質量%からなる樹脂混合物と、及びトップ層用フッ化ビニリデン系樹脂80質量部、メタクリル酸エステル系樹脂20質量%からなる樹脂混合物とを溶融押出してアンカー層をトップ層とを一体化させた2層構造を有するフィルムを形成し、これを直ちにシート状基体の表面上に積層し接合した。
試験結果を表1に示す。
【0055】
実施例6
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、架橋性接着層用樹脂に下記の組成物を用いた。
ヒドロキシル基を含有するフッ素系樹脂
(テトラフルオロエチレン−ビニル共重合体樹脂) 100質量部
イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート) 15質量部
カップリング剤化合物(エポキシ系シランカップリング剤) 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 2.5質量部
希釈溶剤(トルエン) 20質量部
試験結果を表1に示す
【0056】
実施例7
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、シート状基体のシート状基材層は、実施例1と同一のガラス繊維平織基布の表面上にカレンダー成形法により可撓・防水性樹脂フィルムとして、下記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物をカレンダー成形法により下記組成の組成物を混練、圧延して形成されたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物フィルム(厚さ0.16mm)を積層し、130℃で2分間加圧、圧着し、可撓・防水性シートを作製した。このシートの目付けは720g/m2であった。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂 100質量部
安定剤(フェノール系化合物) 0.5質量部
顔料(酸化チタン) 5質量部
試験結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、シート状基体である可撓・防水性シートの表面に施すアンカー層を省略した。
試験結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、シート状基体である可撓・防水性シートの表面に施すトップ層を省略した。
試験結果を表1に示す。
【0059】
比較例3
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、可撓性太陽電池モジュールの側面部及び上面周縁部並びに前記太陽電池モジュールの側面部下端を取り囲む、シート状基体の周囲部に、可撓性保護フィルムを形成することを省略した。
試験結果を表1に示す。
【0060】
比較例4
実施例1と同様にして、可撓性膜状太陽電池積層体を製造し、試験に供した。但し、可撓性保護フィルムを厚さ50μm、水蒸気透過率が11g/m2/dayであるポリエステル樹脂フィルムを用いて形成した。
試験結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示されているように、本発明に係る実施例1〜7の可撓性膜状太陽電池積層体は、実用上優れた耐湿熱性、耐候性及び耐はためき性を有することを示した。
【符号の説明】
【0063】
1 太陽電池セル
1a 可撓性接着性樹脂層
2 可撓性太陽電池モジュール
3 可撓性保護フィルム
4 可撓性シート状基体
2a モジュール2の下面部
2b モジュール2の側面部
2c モジュール2の上面周縁部
3a 保護フィルム3の、モジュール2の側面部2bに接合する部分
3b 保護フィルム3の、モジュール2の上面周縁部2cに接合する部分
3c 保護フィルム3の、基体4に接合する部分
4a 可撓性シート状基材層
4b 表面被覆層
4c 基体4の、モジュール側面部の下端を囲む周囲部
5 アンカー層
5a バリヤー層
5b 接着層
6 トップ層
8a,8b 架橋性接着剤層
9 エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シート状基体4とその一面上に、互に間隔をおいて配置された複数の可撓性太陽電池モジュール2とを含む積層体であって、
(1)前記可撓性シート状基体4が、可撓性シート状基材層4aと、その上面上に接合している表面被覆層4bとを含み、
(2)前記表面被覆層4bにおいて、メタクリル酸エステル系樹脂及び、フッ素系樹脂を含むアンカー層5が、前記可撓性シート状基材層4aに接合し、フッ素系樹脂を主成分として含むトップ層6が、前記アンカー層上に接合しており、そして、
(3)前記可撓性太陽電池モジュール2の下面部2aが、前記可撓性シート状基体に、架橋性接合剤層8aを介して接着され、かつ、前記可撓性太陽電池モジュール側面部2b、及び、この側面部2bの上端に連続する前記可撓性太陽電池モジュール上表面の周縁部2c、並びに前記可撓性太陽電池モジュール側面部2bの下端を取り囲む、前記可撓性シート状基体上面の、周囲部4cに、フッ素系樹脂を主成分として含む可撓性保護フィルム3が、架橋性接着剤層8bを介して接着されていて、それによって、可撓性太陽電池モジュール2の吸湿吸水防止耐久性を向上させている、
ことを特徴とする可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項2】
前記アンカー層5がメタクリル酸エステル系樹脂100〜80質量%及びフッ素系樹脂0〜20質量%からなる、接着層と、フッ素系樹脂100〜80質量%及びメタクリル酸エステル系樹脂0〜20質量%からなるバリヤー層とからなる、請求項1に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項3】
前記トップ層6が、フッ素系樹脂80〜45質量%、メタクリル酸エステル系樹脂20〜45質量%、エポキシ系樹脂0〜5質量%及びシリコーン系樹脂0〜5質量%からなり、防湿性及び耐久性を有する、請求項1又は2に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項4】
前記アンカー層5及びトップ層6用フッ素系樹脂が、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項5】
前記可撓性シート状基体4の表面被覆層4bが、メタクリル酸エステル系樹脂100〜35質量%とフッ化ビニリデン系樹脂0〜65質量%とからなるアンカー層用樹脂、及びフッ化ビニリデン系樹脂100〜50質量%、メタクリル酸エステル系樹脂0〜50質量%とからなるトップ層用樹脂とを、溶融二層押出し積層法により一体化しながら、その押出されたアンカー層用溶融樹脂層表面を、前記可撓性シート状基材層4a上に接合して形成されたものである、請求項1に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項6】
前記架橋性接着剤層8a及び8bが、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びヒドロキシル基を含むフッ素系樹脂から選ばれた1種以上からなる樹脂成分と、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物及びカップリング剤から選ばれた1種以上からなる架橋剤とを含む架橋性接着剤の架橋硬化物を含む、請求項1に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項7】
前記可撓性太陽電池モジュール2の最外表面が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、樹脂フィルムにより形成されている、請求項1に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。
【請求項8】
前記可撓性保護フィルム3が、0.025〜0.10mmの厚さを有し5g/m2/day以下の水蒸気透過率(JIS Z0208−1976条件Bにより測定)を有する、請求項1に記載の可撓性膜状太陽電池積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−258759(P2011−258759A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132126(P2010−132126)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】