説明

可溶性トロンボモジュリン変異体を用いる組成物および方法

本発明は、種々の状態によって引き起こされる急性腎臓損傷を有する患者を予防および/または治療する方法を提供する。その方法は、トロンビンに結合しない可溶性トロンボモジュリン変異体を患者に投与することを含む。標準治療と併用して、トロンビンに結合しない可溶性トロンボモジュリン変異体は、急性腎臓損傷ならびにその後有病率および死亡率を予防または低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療科学に関し、特に、可溶性トロンボモジュリンの変異体を用いる微小血管機能障害の治療に関する。より具体的には、本発明は、トロンビンに結合しない可溶性トロンボモジュリンの変異体を、治療を必要とする患者に投与することにより、急性腎臓損傷において発生する場合の微小血管機能障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
トロンボモジュリン(TM)は、多臓器(肺、肝臓、および腎臓等)上の内皮細胞の膜表面上で支えられた糖タンパク質であり、損傷に対する血管反応において重要な役割を果たす。TMは、トロンビンに結合し、凝固活性化および炎症活性化の両方を調節する。
【0003】
TMは、5つのドメイン(すなわち、N末端レクチン様結合ドメイン、6個のEGF様リピートを構成する上皮細胞増殖因子(EGF)ドメイン、Ser/Thrリッチ領域、膜貫通ドメイン、および、細胞質ドメイン)から構成される。可溶性TM(sTM)変異体は細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを欠損することにより構築される。TM欠損変異体は、トロンビンの結合およびその後のトロンビン−TM複合体によるプロテインCの切断を維持する、最小のTMフラグメント(EGF様リピート4〜6個)を決定するために使用されていた。TM領域のアラニンスキャンニングは、トロンボモジュリン活性に欠かせない残基を決定するために行われていた(特許文献1)。EGF4〜6個からなるポリペプチド内におけるアラニンに対する特定の残基の変化は、トロンビンに対する結合における改善された補因子活性を有するsTM変異体をもたらした。提案された治療用途は、血管形成の阻害および全身性凝固障害(例えば、播種性血管内凝固症候群)の治療を含んでいた。しかしながら、このような用途は、凝固カスケードの破壊に起因する出血性合併症の固有のリスクを有する。つい最近では、非特許文献1が、実験的糸球体腎炎上のsTMの効果について報告しており、sTMの抗血栓作用が血栓性糸球体腎炎の損傷を効果的に減衰させたと結論付けた。
【0004】
急性腎臓損傷(AKI)は、腎臓の微小血管系を急に損傷することで生じる状態を意味する一般用語である。この微小血管機能障害は、感染/炎症、虚血性損傷、造影剤、または、化学療法に関連し得る。AKIは、一般的に、糸球体濾過量おける急激な低下、窒素廃棄物の蓄積、ならびに、電解質および水分平衡を制御する腎臓の不能により特徴付けられる。
【0005】
AKIを患う患者のケアにおける技術的な進歩および疾患経過における病態生理学の理解の向上にもかかわらず、この状態に関連する高い有病率および死亡率が依存として見られる。なお、AKIに対する治療剤における最近の試験は成功していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第93/25675号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ikeguchiら,Kidney International,61巻,第490〜501頁,2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、安全かつ有効なAKIの治療に関するいまだ満たされていない医学的ニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
予想外に、出願人は、トロンビンに結合しない可溶性トロンボモジュリン変異体が、AKIのインビボ実験モデルにおいて腎臓の損傷を特に効果的に保護することを発見した。トロンビンに結合しない可溶性トロンボモジュリン変異体は、凝固カスケードの調節により起こり得る潜在的な出血性合併症を引き起こすことなく、AKIを予防および治療するための、潜在的に重要な代替アプローチを提供する。
【0010】
本発明は、トロンビンに結合しない有効量のsTM変異体を患者に投与することを含む、治療を必要とする患者においてAKIを治療する方法を提供する。ここで、この変異体は、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する。この方法の好ましいsTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明はまた、トロンビンに結合しない有効量のsTM変異体を患者に投与することを含む、AKIに罹りやすい患者においてAKIを予防する方法を提供する。ここで、この変異体は、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する。この方法の好ましいsTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明は、AKIの治療に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体を提供する。
【0013】
本発明はまた、AKIの治療に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体を提供する。ここで、この変異体は、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する。これに用いられる好ましいsTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明は更に、AKIの予防に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体の使用を提供する。
【0015】
本発明はまた、AKIの予防に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体を提供する。この変異体は、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する。これに用いられる好ましいsTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0016】
本発明はまた、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含むsTM変異体を提供する。
【0017】
本発明は更に、医薬として使用されるトロンビンに結合しないsTM変異体を提供する。ここで、この変異体は、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明はまた、医薬として使用されるトロンビンに結合しない配列番号11に示されたsTM変異体を提供する。
【0019】
本発明は、AKIの治療のための医薬製品に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体を提供する。本発明は更に、AKIの予防のための医薬製品に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体の使用を提供する。これに用いられる好ましいsTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明はまた、配列番号11に示されたアミノ酸配列を有するsTM変異体と、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
本発明は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。ここで、このポリヌクレオチドは、配列番号8または配列番号12の配列を含む。本発明は更に、この単離されたポリヌクレオチドを含む組み換え発現ベクター、および、この組み換え発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明は、配列番号11に示されたアミノ酸配列を有するsTM変異体を生成するためのプロセスを提供する。ここで、当該プロセスは、組み換え発現ベクターを用いて安定に形質転換された宿主細胞を培養すること、ポリペプチドを発現させること、および、培養物由来のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドを回収することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願明細書において開示されかつ主張される本発明に関して、以下の用語は、以下に示すように定義される。
【0024】
「AKI」は、窒素廃棄物の保持に関連する糸球体濾過量の急激な減少をもたらす1つの症状を有する急性腎臓損傷を意味する。この減少は、AKI(例えば、急性腎尿細管壊死または急性間質性腎炎)が原因であり得る。あるいはAKIは急性腎機能障害を意味する場合もある。
【0025】
「有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な量(投与量、時間、投与方法)を意味する。sTM変異体の有効量は、例えば、疾患状態、年齢、性別、および、個体の体重等の因子、ならびに、個体における所望の反応を引き起こすsTM変異体の能力によって変化し得る。
【0026】
「治療すること」または「治療する」とは、疾患、状態または障害を、除去、低減または調節するために、患者を管理およびケアすることを意味する。
【0027】
「予防すること」または「予防する」とは、疾患、状態または障害の兆候または合併症の発現を遅延させるために、患者を管理およびケアすることを意味する。
【0028】
「患者」は、AKIを有するかまたは発症しやすい動物(好ましくは、ヒト)を意味する。特定の場合、患者は、トロンビンに結合しないsTM変異体を用いる治療で効果が得られるAKIとともに生じる微小血管機能障害を有する。
【0029】
可溶性トロンボモジュリン(sTM)は、配列番号4または配列番号5の可溶性トロンボモジュリンを意味する。sTMは可溶性であり、完全長トロンボモジュリン膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインが欠損している、トロンボモジュリンの分泌型変異体である。ヒトのトロンボモジュリン(配列番号1)のアミノ酸一次構造は、欧州特許第0412841号に記載されるように、当該技術分野において公知である。ヒトTMは、16、18または21個の残基長にて報告されるシグナルペプチド部分を含む、575個のアミノ酸タンパク質として合成される。このシグナルペプチド部分の後に、ヒトTMは、アミノ末端から連続して、以下のドメインまたは領域を含む。(1)約222〜226個のアミノ酸のアミノ末端ドメイン、(2)合計約236〜240個のアミノ酸(EGFドメイン)となる6個のEGF(「上皮細胞増殖因子」)様構造、(3)いくつかの可能なO−糖鎖付加部位を有する、約34〜37個のアミノ酸のセリン/トレオニンリッチドメイン(STドメイン)、(4)約23〜24個のアミノ酸の膜貫通領域、および、(5)約36〜38個のアミノ酸の細胞質ドメイン。本願明細書において、「アミノ末端ドメイン」、「EGFドメイン」、「STドメイン」、「膜貫通領域またはドメイン」、および、「細胞質領域またはドメイン」は、各領域またはドメインについて上述されたアミノ酸残基の隣接した範囲を意味する。さらに、インビボのプロセッシングは、発現形質転換宿主細胞(特に真核宿主細胞と比べて原核宿主細胞)に依存して変化することが見込まれるので、用語「アミノ末端領域またはドメイン」は、必要に応じて、トロンボモジュリンシグナルペプチドまたはその部分を含み得る。例えば、spTMD1(配列番号2)は、シグナルペプチド、アミノ末端ドメイン、EGFドメイン、および、STドメインを含み、一方で、spTMD2(配列番号3)は、シグナルペプチド、アミノ末端ドメイン、および、EGFドメインを含む。
【0030】
「sTM変異体」は、配列番号4または配列番号5と比べた場合、EGF5ドメインにおける1つ以上の置換またはEGF6ドメインの欠損を含むsTMを意味する。sTM変異体は、当該技術分野において公知の手順により生成され得、また、一般的な手順(例えば、実施例3に記載されるBIACoreアッセイ)によりトロンビンと結合する能力の欠如についてアッセイされ得る。これらのアッセイ条件の下で、4300を超えるKd値は、このアッセイの検出限界を超えるため、sTM変異体がトロンビンに結合しないことを示す。
【0031】
微小血管機能障害は、末梢血管抵抗に対する影響を有し得る血圧およびフローパターンの両方に影響を与え得る、任意の器官(すなわち、腎臓、心臓、肝臓等)における微小循環の機能障害を意味する一般用語である。微小循環は、毛細血管および細静脈に加えて最小動脈および細動脈を含む。
【0032】
アミノ酸位置の番号付けは、アミノ末端ドメイン、EGFドメイン、および、STドメインを含むがシグナルペプチドが欠損している配列番号4(TMD1とも表される)を基にしている。配列番号4の最初のアラニンは、アミノ酸の番号付けのために指定された位置1である。EGF6の直後に切断されかつシグナルペプチドが欠損している、野生型完全長可溶性ヒトトロンボモジュリンは、配列番号5(TMD2とも表される)である。
【0033】
更に、本発明のsTM変異体は、置換されたアミノ酸についての1文字表記、アミノ酸位置番号、続いて、置換するアミノ酸残基により、名付けられる。例えば、I424Aは、位置424におけるイソロイシンがアラニンに変更されたsTM変異体を意味する。
【0034】
本発明のsTM変異体は、トロンビンに結合しない。好ましくは、トロンビンに結合しないsTM変異体は、位置424におけるイソロイシンがアラニンで置換されたTMD2(配列番号5)である。この変異体は、TMD2−I424A(配列番号6)としても表され得る。
【0035】
別の実施形態において、トロンビンに結合しないsTM変異体は、EFG6ドメインが除去され、また、TM−LE15(配列番号11)として表される、TMD2の切断型である。
【0036】
ヒト組み換えsTMおよびヒトTMの変異体を生成する方法は、既に開示されている(Parkinsonら,1990 J.Biol.Chem.265:12602−12610、および、Nagashimaら,1993 J.Biol.Chem.268:2888−2892)。本発明において用いられたsTM変異体は、当該技術分野において公知の種々の方法で達成され得る、分子遺伝学的操作の結果である。DNA配列は、当該技術分野において周知の手順により本発明のsTM変異体のアミノ酸配列から得られる。本発明の好ましいDNA配列は、TMD2(配列番号7)、TMD2−I424A(配列番号8)、および、TM−LE15(配列番号12)をコードするDNA配列である。加えて、本発明のsTM変異体をコードするDNA配列は、プラスミドまたは発現ベクターに組み込まれ、次に、組み換え細胞に形質転換されることで、薬学的に有用な化合物を生成する方法を提供する。ここで、この化合物は、組み換え細胞由来の分泌型であり、sTM変異体である。本発明のDNA配列がリーダー配列(例えば、配列番号13のリーダー配列)もコードし得ることが理解される。
【0037】
本発明のsTM変異体は、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、NS0細胞 HEK293細胞、またはCOS細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌)、あるいは、真菌細胞または酵母細胞において、容易に生成され得る。宿主細胞は、sTM変異体を含む発現ベクターで形質転換されて、次いで、当該技術分野において周知の技術を用いて培養される。
【0038】
宿主細胞から発現されたタンパク質は、培地から回収され、精製される。タンパク質精製の様々な方法が利用されてもよく、そのような方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、Deutscher,Methods in Enzymology 182:83−89(1990)およびScopes,Protein Purification:Principles and Practice,第3版,Springer、NY(1994)に記載されている。
【0039】
一般に、本出願に記載される一般的な実験用手順の用語および詳細の定義は、J.Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,(1989)Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Yに見出され得る。そのマニュアルは以下Sambrookと称する。さらに、Ausubelら,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,(1987および定期的更新)Greene Publishing Associates,Wiley−Interscience,New Yorkは、本出願に有用な方法を開示している。
【0040】
sTM変異体は、ヒトsTM配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列を変化させるか、または切断することによって生成される。アミノ酸がタンパク質の配列において除去または置換され得る方法は周知である。例えば、Sambrook,前出;Ausubelら,前出およびそれらに引用される参考文献を参照のこと。
【0041】
トロンビン/トロンボモジュリン複合体によってプロテインC活性化を測定するアッセイは、本発明のsTM変異体によるトロンビン結合を測定するために使用される。凝固の間に、ヒトプロテインCはトロンビンによって活性化される。しかし、この活性化反応は、トロンビンがトロンボモジュリンと複合体化されない限り、ゆっくりである。実施例1に示したアッセイは、ヒトトロンビンおよびsTMの複合体が、ヒトプロテインCを活性化することを示す。しかし、ヒトプロテインC活性化は、ヒトトロンビンおよびsTM変異体TMD2−I424AまたはTM−LE15の存在下で検出できず、TMD2−I424AおよびTM−LE15がトロンビンに結合せず、従ってプロテインCを活性化できないことを示す。
【0042】
本発明のsTMの変異体がトロンビンに結合しないことを実証するさらなる方法は、ヒト臍帯静脈内皮細胞中でトロンビンにより誘発されるC++流動のトロンボモジュリン阻害を示すアッセイ(実施例2)ならびにsTM/トロンビン複合体の結合反応速度および親和性のBIAcore解析(実施例3)である。
【0043】
AKIを低下または予防する本発明のsTM変異体の有効性の指標となるインビボモデルを実施例4および5に示す。
【0044】
例えば、Kikeriら,(1986 Am.J.Physiol.250:F1098−F1106)に本質的に記載されるように実施されたLPSにより誘発されたAKIラットモデルを実施例4に表す。LPSにより誘発されるモデルは一般に、大腸菌LPSのボーラス注射でAKIを誘発することからなる。LPSのボーラス注射は内毒血症を引き起こし、糸球体濾過量の機能の減少および血中尿素窒素(BUN)レベルの増加を生じる。sTM変異体を、内毒血症の誘発前にヒトsTM変異体でラットを処置することによって、このAKIを低下または予防するそれらの能力について試験する。表4に示すように、トロンビンに結合しないヒトsTMまたはヒトsTMの変異体の投与は、BUNレベルの減少によって測定されるようにAKIを低下できる。
【0045】
さらに、ラット両側腎動脈鉗子モデルを実施例5に記載するように行う。このモデルにおいて、両側腎虚血は、腎茎を締めることによって誘発され、クランプが除去されると再潅流障害を生じる。腎障害の測定は、血清中クレアチニン値の増加である。表5に示すように、トロンビンに結合しないヒトsTMの変異体の投与は、血清中クレアチニン値の減少によって示されるようにAKIを低下させる。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、一般にAKIを治療する意図する目的を達成する当該技術分野において公知の任意の手段によって投与され得る。好ましい投与経路は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、皮下、ならびに関節内注射および注入を含む投与様式として本明細書に定義される、非経口である。より好ましくは、sTM変異体は、IVボーラスおよび/または皮下注射のいずれかで投与される。好ましい曝露時間は、1〜24時間またはそれ以上、限定されないが、48、72、96、もしくは120時間もの時間を含む、範囲である。投与される用量は、受容者の年齢、健康、および体重、もしあれば、併用療法の種類、治療の頻度、および望まれる効果の性質に依存する。典型的な用量レベルは、標準的な臨床技術を用いて最適化され得、投与様式および患者の状態に依存する。一般に、用量は、1μg/kg〜10mg/kg;2.5μg/kg〜5mg/kg;5μg/kg〜2.5mg/kg;または10μg/kg〜500μg/kgの範囲である。
【0047】
薬学的組成物は、選択される投与様式、および必要に応じて使用される薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤、安定剤、担体などに適切でなければならない。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton PA。
【0048】
製剤中のsTM変異体の濃度は、約0.1%(1mg/mL)ほどの低さから15%または20%(150〜200mg/mL)もの高さであってもよく、選択される特定の投与様式に従って、主に、液量、粘性、安定性などに基づいて選択される。sTM変異体の好ましい濃度は一般に、1〜約100mg/mLの範囲である。
【0049】
以下の実施例は例示することを意図するが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0050】
実施例1
sTM変異体によるヒトプロテインC活性化
反応速度解析を、ヒトsTM変異体によるヒトプロテインCの活性化の速度を測定するために行う。各sTM変異体について、反応を以下のように設定する。最終的に100μLの反応体積において、ヒトプロテインCを150nMの最終濃度に加え、ヒトトロンビンを2nMの最終濃度に加える。AB/BSAバッファー(150mMのNaCl;20mMのTris pH7.5;3mMのCaCl;1mg/mLのBSA)中のsTMコントロールTMD1およびTMD2またはsTM変異体を、0nM〜250nMの種々の最終濃度で反応物に加える。反応混合物を37℃にて30分、インキュベートする。25μLの各反応物を、150μLのトロンビン停止バッファー(150mMのNaCl中の1ユニット/mlのヒルジン;20mMのTris pH7.5;3mMのCaCl)を含有する96ウェルプレートに移し、室温にて5分間、インキュベートする。25μLのS2366発色基質(L−ピログルタミル−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン塩酸塩、クロモゲニックス(Chromogenix))の4μMストック溶液を加え、手短に混合する。405nmにおける吸光度(OD450)を、6秒の読み取り間隔で5分の動的読み取りにおいてマイクロプレート分光光度計で読み取る。ミカエリスメンテン速度定数を、Enzyme Kinetics Module 1.1を有するSigmaPlotソフトウェアを用いて動的データから計算する。この方法は、Grinnellら,1994 Biochem J.303:929−933に記載されるプロトコルに一部基づいた。
【0051】
表1に示すように、ヒトTMD1(配列番号4)およびヒトTMD2(配列番号5)はヒトプロテインCを活性化でき、トロンビンに対する結合についてのKdを測定する。解離定数、Kdは、複合体をどのように容易に分離するかの観点からヒトプロテインCとトロンビンとの間の結合の強度(解離または「オフレート(off rate)」)を示す。sTM変異体I424A(配列番号6)またはTM−LE15(配列番号11)およびトロンビンで得られたヒトプロテインC活性化の速度は非常に低く、トロンビン結合に対するKdは計算できない(TLD=検出するには低すぎる)。これは、sTM変異体I424A(配列番号6)およびTM−LE15(配列番号11)が、トロンビンに結合できず、ヒトプロテインCを活性化できないことを示す。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例2
HUVECにおけるトロンビンにより誘発されたCa++流動のトロンボモジュリン阻害
トロンビンに結合するsTMなどの化合物は、HUVEC細胞に対するトロンビンの結合およびその後のCa++の誘発を妨げる。インビトロアッセイを、HUVEC中のトロンビンにより誘発されたCa++流動に対するsTM変異体の効果を評価するために使用する。ブラックウェルの透明底96ウェルプレートに、10のヒト臍静脈内皮細胞を播種し、37℃、5%COにて48時間インキュベートする。2日のインキュベーション後、FLIPRカルシウム4アッセイキット(Molecular Devices,カタログ番号R8142)からの100μL/ウェルのローディングバッファーを、製造業者のプロトコルに従って加える。次いで、ハンクス平衡塩溶液、20nMのHEPESおよび0.75%のウシアルブミン画分V中の500nMの可溶性トロンボモジュリン(TMD1、TMD2またはTMD2−I424A)を含むか、または含まない5nMのヒトトロンビンを含有する試薬を100μL/ウェルにて加え、室温にて30分間インキュベートする。トロンビンにより誘発されたCa++流動を、蛍光イメージングプレートリーダー−2(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定した。HUVEC中のCa++流動の誘発によって測定されるように、sTM変異体TMD1およびTMD2と比較して、sTM変異体TMD2−I424Aがトロンビンに結合しないことは表2から明らかである。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例3
表面プラズモン共鳴(BIAcore)によるトロンビンに結合するsTM変異体の評価
種々のヒトsTM変異体のトロンビン結合特性を、BIAcoreバイオセンサー2000機器を用いて測定する。全ての測定は室温で実施する。全ての実験は、5mMのCaClを含有するHBS−P(150mMのNaClを含有する10mMのHEPES、pH7.4)バッファー中で実施する。全ての結合実験に関して、ビオチン化sTM変異体を、200〜300反応ユニット(RU)のレベルでSA(ストレプトアビジンでコーティングされた)センサーチップに固定する。ビオチン化sTM変異体を、室温にて2時間、50μMのNHS−LC−ビオチンとともに10μMのsTM変異体(0.5mL)をインキュベートすることによって調製し、その後、一晩、リン酸緩衝生理食塩水に対して透析する。ヒトトロンビン(PPACKにより阻害された、Enzyme Research Laboratories)、マウストロンビン、およびラットトロンビンの結合を試験する。
【0056】
トロンビンの結合を、複数の解析サイクルを用いて評価する。各サイクルは、100μL/分の流速で実施し、以下の工程からなる:各濃度について2回の注射を用いる種々のトロンビン濃度の250μLの溶液の注射、続いて、解離のために1分遅らせる。解離段階後、バイオセンサーチップ表面を、5mMのEDTAの50μLの注射、続いて、ランニングバッファーの同様の注射を用いて再生成した。トロンビンの濃度は200nM〜1.6nMの範囲であり、200nMのトロンビンで開始する、連続2倍希釈により調製した。急速な会合速度および解離速度のために、平衡結合親和性を、注射段階の最後の30秒にわたってシグナルを平均化することによって得られる、安定状態シグナルを用いて測定する;次いで得られるシグナル対トロンビン濃度データを、Scrubber(Center for Biomolecular Interaction Analysis,Univ.of Utah)を用いて1対1平衡結合モデルに適合した。全ての追跡は、10μMのビオチンがストレプトアビジン表面にわたって注射されるコントロール表面に対して参照される。sTM変異体TMD1およびTMD2と比較して、sTM変異体TMD2−I424A(配列番号6)およびTM−LE15(配列番号11)が、トロンビンに結合しないことは表3から明白である。上記のアッセイ条件下で、4300より大きいKd値はアッセイの検出限界を超え、従って配列番号6および配列番号11のsTM変異体がトロンビンに結合しないことを示す。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例4
ラットにおけるLPSにより誘発される急性腎不全におけるヒトおよびラットsTMの有効性
LPSにより誘発されるAKIラットモデルを、Kikeriら(1986 Am.J.Physiol.250:F1098−F1106)によって実質的に記載されたように行った。LPSにより誘発されたモデルは一般に、大腸菌LPSのボーラス注射を用いてAKIを誘発することからなる。LPSのボーラス注射は内毒素血を引き起こし、その結果、糸球体濾過量の機能が低下し、血中尿素窒素(BUN)値が増加する。内毒素血の誘発の前に、ヒトsTM変異体を用いて、ラットを処置することによって、このAKIを低下または予防するそれらの能力についてsTM変異体を試験できる。
【0059】
体重200〜250gのオスのSprague−Dawleyラット(Harlan,IN,米国)をこの研究において用いた。この動物を(1)生理食塩水で処置したコントロール、および(2)LPSで処置した動物の2つの群に、外科処置の時点でランダム化する。LPSで処置した群の動物をさらに下位の群のビヒクル、TMD2(配列番号5)またはヒトsTM変異体TMD2−I424A(配列番号:6)に分ける。内毒素血を、大腸菌LPS(20mg/kg)の腹腔内投与により誘発する。コントロール群はピロゲンを含まない生理食塩水を受容する。TMD2(5mg/kgおよび2.5mg/kg)またはTMD2−I424A(5mg/kgおよび2.5mg/kg)を、内毒素血の誘発の12時間前に皮下投与する。動物を、LPS投与の24時間後に屠殺し、血液サンプルをBUN分析のために回収する。以下の結果は群毎の4匹のラットの平均である。
【0060】
表4に示すように、トロンビンに結合しないヒトsTMまたはヒトsTMの変異体の投与が、BUN値の低下によって測定されるように、AKIを低下することができる。sTM変異体TMD2−I424A(配列番号6)は、比較され得る値でのTMD2よりも、より効果的にBUN値を低下する。
【0061】
【表4】

【0062】
実施例5
AKIのための両側腎動脈クランプモデル
180〜250gのオスのSprague−Dawleyラットを、誘発のために5%のイソフルレンおよび維持のために1.5%を用いて麻酔し、中核体温を37℃に維持するために恒温テーブルに置く。TMD2−I424A(配列番号6)またはTM−LE15(配列番号11)を注入するために、PE50カテーテルを用いて頸静脈にカニューレを挿入する。正中切開を行い、腎茎を単離し、両側性腎虚血を、30分間、腎茎をクランプすることにより誘発する。偽手術コントロールは、腎茎のクランプがないこと以外は同一の手順からなる。化合物を、頸静脈カテーテルを介して虚血の誘発の2時間後に投与する。動物を、虚血の24時間後に屠殺し、腎機能を、虚血の24時間後に血清クレアチニンの測定により決定する。実験用のラット、偽ラット、および処置をしなかったコントロールラットの尾静脈から血液を回収する。遠心分離により血清を単離し、プロテアーゼ阻害剤を用いて保存する。血清クレアチニンを測定し、mg/dLで報告する。変異体TM−LE15およびTMD2−I424Aは、腎動脈クランプ(RAC)コントロールと比較した場合、虚血の24時間後でのSCrにおける低減によって証明されるように、腎損傷を抑制するのに効果的である。
【0063】
【表5】


配列番号1
MLGVLVLGALALAGLGFPAPAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAVEPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDNECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALVRHIGTDCDSGKVDGGDSGSGEPPPSPTPGSTLTPPAVGLVHSGLLIGISIASLCLVVALLALLCHLRKKQGAARAKMEYKCAAPSKEVVLQHVRTERTPQRL

配列番号2
MLGVLVLGALALAGLGFPAPAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAVEPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALARHIGTDCDSGKVDGGDSGSGEPPPSPTPGSTLTPPAVGLVHS

配列番号3
MLGVLVLGALALAGLGFPAPAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAVEPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALARHIGTDCDSGK

配列番号4
APAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAV
EPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALARHIGTDCDSGKVDGGDSGSGEPPPSPTPGSTLTPPAVGLVHS

配列番号5
APAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAV
EPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALARHIGTDCDSGK

配列番号6
APAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAVEPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDADECENGGFCSGVCHNLPGTFECICGPDSALARHIGTDCDSGK

配列番号7
ヒト sTMD2 DNA 配列

GCCCCTGCCGAGCCTCAGCCTGGCGGCAGCCAGTGCGTGGAGCACGACTGCTTCGCCCTGTACCCCGGACCCGCCACCTTCCTGAACGCCAGCCAGATCTGCGACGGCCTGCGGGGCCACCTGATGACCGTGCGGAGCAGCGTGGCCGCCGACGTGATCAGCCTGCTGCTGAACGGCGACGGCGGCGTGGGCAGGCGGAGGCTGTGGATCGGACTGCAGCTGCCCCCTGGCTGCGGCGACCCCAAGAGGCTGGGCCCCCTGCGGGGCTTCCAGTGGGTGACCGGCGACAACAACACCAGCTACAGCAGATGGGCCAGGCTGGACCTGAATGGCGCCCCTCTGTGCGGCCCACTGTGCGTGGCCGTGTCTGCCGCCGAGGCCACCGTGCCCAGCGAGCCCATCTGGGAGGAACAGCAGTGCGAAGTGAAGGCCGACGGCTTCCTGTGCGAGTTCCACTTCCCCGCCACCTGCAGGCCTCTGGCCGTGGAACCTGGAGCCGCTGCTGCCGCCGTGAGCATCACCTACGGCACCCCCTTCGCCGCCAGAGGCGCCGACTTCCAGGCCCTGCCCGTGGGCTCTTCTGCCGCCGTGGCCCCCCTGGGGCTGCAGCTGATGTGCACCGCCCCTCCAGGCGCCGTGCAGGGCCACTGGGCCAGAGAAGCCCCTGGCGCCTGGGACTGCAGCGTGGAGAACGGCGGCTGCGAGCACGCCTGCAACGCCATCCCTGGCGCCCCTAGGTGCCAGTGCCCTGCCGGAGCCGCCCTCCAGGCCGATGGCAGAAGCTGCACCGCCAGCGCCACCCAGAGCTGCAACGACCTGTGCGAGCACTTCTGCGTGCCCAACCCCGACCAGCCCGGCAGCTACAGCTGCATGTGCGAGACCGGCTACCGGCTGGCCGCCGATCAGCACAGATGCGAGGACGTGGACGACTGCATCCTGGAACCCAGCCCCTGCCCCCAGAGATGCGTGAACACCCAGGGCGGCTTCGAGTGCCACTGCTACCCCAACTACGACCTGGTGGACGGCGAGTGTGTGGAGCCCGTGGACCCCTGCTTCCGGGCCAACTGCGAGTACCAGTGCCAGCCCCTGAACCAGACCAGCTACCTGTGCGTGTGCGCCGAAGGCTTCGCCCCCATCCCCCACGAGCCCCACCGGTGCCAGATGTTCTGCAACCAGACCGCCTGCCCTGCCGACTGCGACCCCAATACCCAGGCCAGCTGCGAGTGCCCCGAGGGCTACATCCTGGACGACGGCTTCATCTGCACCGACATCGACGAGTGCGAGAATGGCGGCTTCTGCAGCGGCGTGTGCCACAACCTGCCCGGCACCTTCGAGTGCATCTGCGGCCCTGACAGCGCCCTGGCCCGGCACATCGGCACCGACTGCGATAGCGGCAAG

配列番号8 ヒト sTMD2-I424A DNA 配列

GCCCCTGCCGAGCCTCAGCCTGGCGGCAGCCAGTGCGTGGAGCACGACTGCTTCGCCCTGTACCCCGGACCCGCCACCTTCCTGAACGCCAGCCAGATCTGCGACGGCCTGCGGGGCCACCTGATGACCGTGCGGAGCAGCGTGGCCGCCGACGTGA
TCAGCCTGCTGCTGAACGGCGACGGCGGCGTGGGCAGGCGGAGGCTGTGGATCGGACTGCAGCTGCCCCCTGGCTGCGGCGACCCCAAGAGGCTGGGCCCCCTGCGGGGCTTCCAGTGGGTGACCGGCGACAACAACACCAGCTACAGCAGATGGGCCAGGCTGGACCTGAATGGCGCCCCTCTGTGCGGCCCACTGTGCGTGGCCGTGTCTGCCGCCGAGGCCACCGTGCCCAGCGAGCCCATCTGGGAGGAACAGCAGTGCGAAGTGAAGGCCGACGGCTTCCTGTGCGAGTTCCACTTCCCCGCCACCTGCAGGCCTCTGGCCGTGGAACCTGGAGCCGCTGCTGCCGCCGTGAGCATCACCTACGGCACCCCCTTCGCCGCCAGAGGCGCCGACTTCCAGGCCCTGCCCGTGGGCTCTTCTGCCGCCGTGGCCCCCCTGGGGCTGCAGCTGATGTGCACCGCCCCTCCAGGCGCCGTGCAGGGCCACTGGGCCAGAGAAGCCCCTGGCGCCTGGGACTGCAGCGTGGAGAACGGCGGCTGCGAGCACGCCTGCAACGCCATCCCTGGCGCCCCTAGGTGCCAGTGCCCTGCCGGAGCCGCCCTCCAGGCCGATGGCAGAAGCTGCACCGCCAGCGCCACCCAGAGCTGCAACGACCTGTGCGAGCACTTCTGCGTGCCCAACCCCGACCAGCCCGGCAGCTACAGCTGCATGTGCGAGACCGGCTACCGGCTGGCCGCCGATCAGCACAGATGCGAGGACGTGGACGACTGCATCCTGGAACCCAGCCCCTGCCCCCAGAGATGCGTGAACACCCAGGGCGGCTTCGAGTGCCACTGCTACCCCAACTACGACCTGGTGGACGGCGAGTGTGTGGAGCCCGTGGACCCCTGCTTCCGGGCCAACTGCGAGTACCAGTGCCAGCCCCTGAACCAGACCAGCTACCTGTGCGTGTGCGCCGAAGGCTTCGCCCCCATCCCCCACGAGCCCCACCGGTGCCAGATGTTCTGCAACCAGACCGCCTGCCCTGCCGACTGCGACCCCAATACCCAGGCCAGCTGCGAGTGCCCCGAGGGCTACATCCTGGACGACGGCTTCATCTGCACCGACGCCGACGAGTGCGAGAATGGCGGCTTCTGCAGCGGCGTGTGCCACAACCTGCCCGGCACCTTCGAGTGCATCTGCGGCCCTGACAGCG
CCCTGGCCCGGCACATCGGCACCGACTGCGATAGCGGCAAG

配列番号9 spTMD1 DNA 配列
ATGCTGGGCGTGCTGGTGCTGGGAGCCCTGGCCCTGGCCGGCCTGGGCTTTCCTGCCCCTGCCGAGCCTCAGCCTGGCGGCAGCCAGTGCGTGGAGCACGACTGCTTCGCCCTGTACCCCGGACCCGCCACCTTCCTGAACGCCAGCCAGATCTGCGACGGCCTGCGGGGCCACCTGATGACCGTGCGGAGCAGCGTGGCCGCCGACGTGATCAGCCTGCTGCTGAACGGCGACGGCGGCGTGGGCAGGCGGAGGCTGTGGATCGGACTGCAGCTGCCCCCTGGCTGCGGCGACCCCAAGAGGCTGGGCCCCCTGCGGGGCTTCCAGTGGGTGACCGGCGACAACAACACCAGCTACAGCAGATGGGCCAGGCTGGACCTGAATGGCGCCCCTCTGTGCGGCCCACTGTGCGTGGCCGTGTCTGCCGCCGAGGCCACCGTGCCCAGCGAGCCCATCTGGGAGGAACAGCAGTGCGAAGTGAAGGCCGACGGCTTCCTGTGCGAGTTCCACTTCCCCGCCACCTGCAGGCCTCTGGCCGTGGAACCTGGAGCCGCTGCTGCCGCCGTGAGCATCACCTACGGCACCCCCTTCGCCGCCAGAGGCGCCGACTTCCAGGCCCTGCCCGTGGGCTCTTCTGCCGCCGTGGCCCCCCTGGGGCTGCAGCTGATGTGCACCGCCCCTCCAGGCGCCGTGCAGGGCCACTGGGCCAGAGAAGCCCCTGGCGCCTGGGACTGCAGCGTGGAGAACGGCGGCTGCGAGCACGCCTGCAACGCCATCCCTGGCGCCCCTAGGTGCCAGTGCCCTGCCGGAGCCGCCCTCCAGGCCGATGGCAGAAGCTGCACCGCCAGCGCCACCCAGAGCTGCAACGACCTGTGCGAGCACTTCTGCGTGCCCAACCCCGACCAGCCCGGCAGCTACAGCTGCATGTGCGAGACCGGCTACCGGCTGGCCGCCGATCAGCACAGATGCGAGGACGTGGACGACTGCATCCTGGAACCCAGCCCCTGCCCCCAGAGATGCGTGAACACCCAGGGCGGCTTCGAGTGCCACTGCTACCCCAACTACGACCTGGTGGACGGCGAGTGTGTGGAGCCCGTGGACCCCTGCTTCCGGGCCAACTGCGAGTACCAGTGCCAGCCCCTGAACCAGACCAGCTACCTGTGCGTGTGCGCCGAAGGCTTCGCCCCCATCCCCCACGAGCCCCACCGGTGCCAGATGTTCTGCAACCAGACCGCCTGCCCTGCCGACTGCGACCCCAATACCCAGGCCAGCTGCGAGTGCCCCGAGGGCTACATCCTGGACGACGGCTTCATCTGCACCGACATCGACGAGTGCGAGAATGGCGGCTTCTGCAGCGGCGTGTGCCACAACCTGCCCGGCACCTTCGAGTGCATCTGCGGCCCTGACAGCGCCCTGGCCCGGCACATCGGCACCGACTGCGATAGCGGCAAGGTGGACGGGGGCGACTCCGGCTCCGGCGAGCCCCCTCCCAGCCCTACCCCCGGCAGCACCCTGACCCCTCCCGCCGTGGGCCTGGTGCACAGC

配列番号10 spTMD1-I424A DNA 配列
ATGCTGGGCGTGCTGGTGCTGGGAGCCCTGGCCCTCGCTGGACTGGGCTTTCCTGCCCCTGCCGAGCCTCAGCCTGGCGGCAGCCAGTGCGTGGAGCACGACTGCTTCGCCCTGTACCCCGGACCCGCCACCTTCCTGAACGCCAGCCAGATCTGCGACGGCCTGAGAGGCCACCTGATGACCGTGCGGAGCAGCGTGGCCGCCGACGTGATCAGCCTGCTGCTGAACGGCGACGGCGGCGTGGGCAGGCGGAGACTGTGGATCGGCCTGCAGCTGCCCCCTGGCTGCGGCGACCCCAAGAGACTGGGCCCCCTGCGGGGCTTCCAGTGGGTGACCGGCGACAACAACACCAGCTACAGCAGATGGGCCAGACTGGACCTGAATGGCGCCCCTCTGTGCGGCCCACTGTGCGTGGCCGTGTCTGCTGCCGAGGCCACCGTGCCCAGCGAGCCCATCTGGGAGGAACAGCAGTGCGAAGTGAAGGCCGACGGCTTCCTGTGCGAGTTCCACTTCCCCGCCACCTGCAGACCCCTGGCCGTGGAACCCGGCGCCGCTGCTGCAGCCGTGTCTATCACCTACGGCACCCCCTTCGCCGCCAGAGGCGCCGACTTCCAGGCCCTGCCCGTGGGAAGCTCTGCCGCCGTGGCCCCTCTGGGGCTGCAGCTGATGTGCACCGCCCCTCCAGGCGCCGTGCAGGGCCACTGGGCCAGAGAAGCCCCTGGGGCCTGGGACTGCAGCGTGGAGAACGGCGGCTGCGAGCACGCCTGCAACGCCATCCCTGGCGCCCCTAGATGCCAGTGCCCTGCTGGAGCCGCCCTGCAGGCCGATGGCAGAAGCTGCACCGCCAGCGCCACCCAGAGCTGCAACGACCTGTGCGAGCACTTCTGCGTGCCCAACCCCGACCAGCCTGGAAGCTACAGCTGCATGTGCGAGACAGGCTACCGGCTGGCCGCCGATCAGCACAGATGCGAGGACGTGGACGACTGCATCCTGGAACCCAGCCCCTGCCCCCAGAGATGCGTGAACACCCAGGGCGGCTTCGAGTGCCACTGCTACCCTAACTACGACCTGGTGGACGGCGAGTGTGTGGAGCCCGTGGACCCCTGCTTCCGGGCCAACTGCGAGTACCAGTGCCAGCCCCTGAACCAGACCAGCTACCTGTGCGTGTGCGCCGAAGGCTTCGCCCCCATCCCCCACGAGCCCCACCGGTGCCAGATGTTCTGCAACCAGACCGCCTGTCCTGCCGACTGCGACCCCAATACCCAGGCCAGCTGTGAGTGCCCCGAGGGCTACATCCTGGACGACGGCTTCATCTGCACAGACGCCGACGAGTGCGAGAATGGCGGCTTCTGCAGCGGCGTGTGCCACAACCTGCCCGGCACCTTCGAGTGCATCTGCGGCCCTGACAGCGCCCTGGCCAGACACATCGGCACCGACTGCGATAGCGGCAAGGTGGACGGGGGGGACGCCGGAGCCGGCGAGCCTCCCCCCAGCCCTACCCCCGGCAGCACCCTGACCCCTCCCGCCGTGGGCCTGGTGCACAGC

配列番号11
APAEPQPGGSQCVEHDCFALYPGPATFLNASQICDGLRGHLMTVRSSVAADVISLLLNGDGGVGRRRLWIGLQLPPGCGDPKRLGPLRGFQWVTGDNNTSYSRWARLDLNGAPLCGPLCVAVSAAEATVPSEPIWEEQQCEVKADGFLCEFHFPATCRPLAVEPGAAAAAVSITYGTPFAARGADFQALPVGSSAAVAPLGLQLMCTAPPGAVQGHWAREAPGAWDCSVENGGCEHACNAIPGAPRCQCPAGAALQADGRSCTASATQSCNDLCEHFCVPNPDQPGSYSCMCETGYRLAADQHRCEDVDDCILEPSPCPQRCVNTQGGFECHCYPNYDLVDGECVEPVDPCFRANCEYQCQPLNQTSYLCVCAEGFAPIPHEPHRCQMFCNQTACPADCDPNTQASCECPEGYILDDGFICTDIDE

配列番号12 hsTM-LE15 DNA 配列
GCCCCTGCCGAGCCTCAGCCTGGCGGCAGCCAGTGCGTGGAGCACGACTGCTTCGCCCTGTACCCCGGACCCGCCACCTTCCTGAACGCCAGCCAGATCTGCGACGGCCTGCGGGGCCACCTGATGACCGTGCGGAGCAGCGTGGCCGCCGACGTGATCAGCCTGCTGCTGAACGGCGACGGCGGCGTGGGCAGGCGGAGGCTGTGGATCGGACTGCAGCTGCCCCCTGGCTGCGGCGACCCCAAGAGGCTGGGCCCCCTGCGGGGCTTCCAGTGGGTGACCGGCGACAACAACACCAGCTACAGCAGATGGGCCAGGCTGGACCTGAATGGCGCCCCTCTGTGCGGCCCACTGTGCGTGGCCGTGTCTGCCGCCGAGGCCACCGTGCCCAGCGAGCCCATCTGGGAGGAACAGCAGTGCGAAGTGAAGGCCGACGGCTTCCTGTGCGAGTTCCACTTCCCCGCCACCTGCAGGCCTCTGGCCGTGGAACCTGGAGCCGCTGCTGCCGCCGTGAGCATCACCTACGGCACCCCCTTCGCCGCCAGAGGCGCCGACTTCCAGGCCCTGCCCGTGGGCTCTTCTGCCGCCGTGGCCCCCCTGGGGCTGCAGCTGATGTGCACCGCCCCTCCAGGCGCCGTGCAGGGCCACTGGGCCAGAGAAGCCCCTGGCGCCTGGGACTGCAGCGTGGAGAACGGCGGCTGCGAGCACGCCTGCAACGCCATCCCTGGCGCCCCTAGGTGCCAGTGCCCTGCCGGAGCCGCCCTCCAGGCCGATGGCAGAAGCTGCACCGCCAGCGCCACCCAGAGCTGCAACGACCTGTGCGAGCACTTCTGCGTGCCCAACCCCGACCAGCCCGGCAGCTACAGCTGCATGTGCGAGACCGGCTACCGGCTGGCCGCCGATCAGCACAGATGCGAGGACGTGGACGACTGCATCCTGGAACCCAGCCCCTGCCCCCAGAGATGCGTGAACACCCAGGGCGGCTTCGAGTGCCACTGCTACCCCAACTACGACCTGGTGGACGGCGAGTGTGTGGAGCCCGTGGACCCCTGCTTCCGGGCCAACTGCGAGTACCAGTGCCAGCCCCTGAACCAGACCAGCTACCTGTGCGTGTGCGCCGAAGGCTTCGCCCCCATCCCCCACGAGCCCCACCGGTGCCAGATGTTCTGCAACCAGACCGCCTGCCCTGCCGACTGCGACCCCAATACCCAGGCCAGCTGCGAGTGCCCCGAGGGCTACATCCTGGACGACGGCTTCATCTGCACCGACATCGACGAG

配列番号13
MLGVLVLGALALAGLGFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロンビンに結合しないsTM変異体を患者に投与することを含む、治療を必要とする該患者においてAKIを治療する方法。
【請求項2】
トロンビンに結合しないsTM変異体を患者に投与することを含む、AKIに罹りやすい該患者においてAKIを予防する方法。
【請求項3】
該変異体が、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該sTM変異体が、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
配列番号11に示されたアミノ酸配列を含むsTM変異体。
【請求項6】
請求項5のsTM変異体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項7】
AKIの治療に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体。
【請求項8】
AKIの予防に用いる、トロンビンに結合しないsTM変異体の使用。
【請求項9】
該変異体が、実施例3に記載のBIAcoreアッセイ条件下におけるトロンビン結合について4300を超えるKd値を有する、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
前記sTM変異体は、配列番号6または配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む、請求項7または8に記載の使用。
【請求項11】
医薬として使用されるトロンビンに結合しないsTM変異体であって、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む、変異体。

【公表番号】特表2012−508742(P2012−508742A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536368(P2011−536368)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061407
【国際公開番号】WO2010/056472
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】