説明

可逆性感熱記録材料

【目的】 良好なコントラストで画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【構成】 通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体と、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる下記一般式化1で表される電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録材料。
【化1】


(式化1中、nは1以上3以下の整数を、m及びlは0または1の整数を表す。R1はアルキル、アルケニル、アルコキシ、ハロゲンから選ばれる置換基または水素原子を表す。R2及びR3は低級アルキル基または水素原子を表し、互いに同一でも異なっていても良い。R4は脂肪族炭化水素基を表す。また、Xは少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の基を、Arは2価の芳香族基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加熱により画像形成及び消去が可能な可逆性感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】感熱記録材料は一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応し記録画像が得られるもので、特公昭43−4160号、特公昭45−14039号公報等に開示されている。
【0003】一般にこのような感熱記録材料は、一度画像を形成するとその部分を消去して再び画像形成前の状態に戻すことは不可能であるため、さらに情報を記録する場合には画像が未形成の部分に追記するしかなかった。このため感熱記録部分の面積が限られている場合には、記録可能な情報が制限され必要な情報を全て記録できないという問題が生じていた。
【0004】近年、この様な問題に対処するため画像形成・画像消去が繰り返して可能な可逆性感熱記録材料が考案されており、例えば、特開昭54−119377号公報、特開昭63−39377号公報、特開昭63−41186号公報では、樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子から構成された感熱記録材料が記載されている。しかしこの方法は、熱エネルギーによって感熱記録材料の透明度を可逆的変化させる物であるため、画像形成部と画像未形成部のコントラストが不十分である。
【0005】また、特開昭50−81157号公報、特開昭50−105555号公報に記載された方法においては、形成する画像は環境温度に従って変化するものであるため、画像形成状態と消去状態を保持する温度が異なっており、常温下ではこの2つの状態を任意の期間保持することが出来ない。
【0006】さらに、特開昭59−120492号公報には、呈色成分のヒステリシス特性を利用し、記録材料をヒステリシス温度域に保つことにより画像形成状態・消去状態を維持する方法が記載されているが、この方法では画像形成及び消去に加熱源と冷却源が必要な上、画像の形成状態及び消去状態を保持できる温度領域がヒステリシス温度領域内に限られる欠点を有しており、日常生活の温度環境で使用するには未だ不十分である。
【0007】一方、特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報、国際公開番号WO90/11898号には、ロイコ染料と加熱によりロイコ染料を発色及び消色させる顕減色剤から構成される可逆性感熱記録媒体が記載されている。顕減色剤は、ロイコ染料を発色させる酸性基と、発色したロイコ染料を消色させる塩基性基を有する両性化合物で、熱エネルギーの制御により酸性基による発色作用または塩基性基による消色作用の一方を優先的に発生させ、発色と消色を行うものである。しかしこの方法では、熱エネルギーの制御のみで完全に発色反応と消色反応を切り換えることは不可能で、両反応がある割合で同時に起こるため、十分な発色濃度が得られず、また、消色が完全には行えない。そのために十分な画像のコントラストが得られない。また、塩基性基の消色作用は常温で発色部にも作用するため、経時的に発色部の濃度が低下する現象が避けられない。
【0008】このように、従来の技術では良好な画像コントラストを持ち、画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能な可逆性感熱記録材料は存在しない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、良好なコントラストで画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、この課題を解決するため研究を行った結果、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体に加熱により可逆的な色調変化、すなわち、発色及び消色を生じせしめる下記一般式化2で表される電子受容性化合物が存在することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【化2】


【0012】(式化1中、nは1以上3以下の整数を、m及びlは0または1の整数を表す。R1はアルキル、アルケニル、アルコキシ、ハロゲンから選ばれる置換基または水素原子を表す。R2及びR3は低級アルキル基または水素原子を表し、互いに同一でも異なっていても良い。R4は脂肪族炭化水素基を表す。また、Xは少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の基を、Arは2価の芳香族基を示す。)
【0013】また、化2で表される化合物の中、R4の炭素数が多い方が好ましく、R4の炭素数が5以下であるものは消色効果が十分ではない。また、R4の炭素数が23以上であるものは製造コストが高いため、R4は炭素数6以上22以下の脂肪族炭化水素基であるものが特に好ましい。
【0014】本発明に用いる、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物の具体例としては、下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】N−ヘキシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−シクロヘキシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−シクロヘキシルメチル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−オクチル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−ドデシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(2−デセニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−テトラデシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−オクタデシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−ドコデシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−オクタコシル−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(2−エチルヘキシル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(8−オクタデセニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−ヘキシル−o−ヒドロキシシンナムアミド、N−オクチル−o−ヒドロキシシンナムアミド、N−ドデシル−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−テトラデシル−o−ヒドロキシシンナムアミド、N−オクタデシル−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−ヘキシル−2,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−オクチル−2,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−ドデシル−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−テトラデシル−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−オクタデシル−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−ヘキシル−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、N−オクチル−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、N−ドデシル−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−テトラデシル−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−オクタデシル−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0016】N−(p−ヘキシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−シクロヘキシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0017】N−(p−ヘキシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−シクロヘキシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−{p−(2−デセニル)オキシフェニル}−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルオキシフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルオキシフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0018】N−(p−ヘキシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−シクロヘキシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−{p−(2−デセニル)チオフェニル}−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルチオフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルチオフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルチオフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルチオフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルチオフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0019】N−(p−ヘキシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルカルボニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルカルボニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルカルボニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルカルボニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルカルボニルフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0020】N−(p−ヘキシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ジシクロヘキシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルアミノフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルアミノフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルアミノフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルアミノフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルアミノフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0021】N−(p−ヘキシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−{p−(2−デセニル)スルフィニルフェニル}−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルスルフィニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルスルフィニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフィニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルスルフィニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルスルフィニルフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド、
【0022】N−(p−ヘキシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクチルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−{p−(2−デセニル)スルフォニルフェニル}−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−オクタデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ヘキシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−オクチルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−ドデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド、N−(o−テトラデシルスルフォニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(m−オクタデシルスルフォニルフェニル)−m−ヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフォニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−テトラデシルスルフォニルフェニル)−3,4−ジヒドロキシシンナムアミド、N−(p−ドデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシ−β−メチルシンナムアミド、N−(p−オクタデシルスルフォニルフェニル)−p−ヒドロキシ−α−メチルシンナムアミド等。
【0023】本発明による電子受容性化合物はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよく、通常無色ないし淡色の染料前駆体に対する本発明による電子受容性化合物の使用量は、5〜5000重量%、好ましくは10〜3000重量%である。
【0024】本発明に用いられる通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられるものに代表されるが、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】(1)トリアリールメタン系化合物3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等、
【0026】(2)ジフェニルメタン系化合物4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
【0027】(3)キサンテン系化合物ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0028】3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0029】(4)チアジン系化合物ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0030】(5)スピロ系化合物3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等。
【0031】前記通常無色ないし淡色の染料前駆体はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】次に本発明に係る可逆性感熱記録材料の具体的製造方法について述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】本発明に係る可逆性感熱記録材料の製造方法の具体例としては、通常無色ないし淡色の染料前駆体と本発明による電子受容性化合物を主成分とし、これらを支持体上に塗布して可逆性感熱記録層を形成する方法が挙げられる。
【0034】通常無色ないし淡色の染料前駆体と、本発明による電子受容性化合物を可逆性感熱記録層に含有させる方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが特定されるものではない。
【0035】また、可逆性感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダーを可逆性感熱記録層中に添加する事も可能である。バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のラテックスなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】また、可逆性感熱記録層の発色感度及び消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を可逆性感熱記録層中に含有させることができる。60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80℃〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどのワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等を併用して添加することができる。
【0037】本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】本発明の可逆性感熱記録材料の層構成は、可逆性感熱記録層のみであっても良い。必要に応じて、可逆性感熱記録層上に保護層を設けることも又、可逆性感熱記録層と支持体の間に中間層を設けることもできる。この場合、保護層および/または中間層は2層ないしは3層以上の複数の層から構成されていてもよい。更に可逆性感熱記録層中および/または他の層および/または可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面に、電気的、磁気的、光学的に情報が記録可能な材料を含んでも良い。また、可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止、帯電防止を目的としてバックコート層を設けることもできる。
【0039】可逆性感熱記録層は、各発色成分を微粉砕して得られる各々の分散液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法、各発色成分を溶媒に溶解して得られる各々の溶液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法などにより得ることができる。この場合、例えば、各発色成分を一層ずつに含有させ、多層構造としてもよい。
【0040】また、可逆性感熱記録層及び/または保護層及び/または中間層には、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等の顔料、その他に、ヘッド摩耗防止、スティッキング防止等の目的でステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックス等のワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、さらに界面活性剤、蛍光染料などを含有させることもできる。
【0041】
【作用】本発明による電子受容性化合物は、ロイコ染料を発色させる能力を持つにも関わらず、特異的に消色効果すなわち可逆効果も持ち合わせている。このことは全く予期しないことであり、通常の感熱記録材料に用いている電子受容性化合物、即ち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等ではこのような可逆効果は全く見られない。
【0042】本発明の感熱記録材料の画像形成及び消去原理は未だ明確ではないが、以下の様に考えている。通常無色ないし淡色の染料前駆体は、フェノール性化合物のような電子受容性化合物と共に加熱すると染料前駆体から電子受容性化合物への電子移動が起こり発色する。この時、電子受容性化合物分子は発色した染料分子の極めて近傍に存在していると考えられる。また、発色した染料分子から電子受容性化合物分子を引き離すと、発色した染料分子は再び電子を受け取り、発色前の染料前駆体の状態となる。本発明は加熱により、電子受容性化合物分子と染料分子との距離を変化させ発色及び消色を行うものと考えられる。
【0043】さらに詳しく述べるならば、本発明による電子受容性化合物は、その構造の中に大きな脂肪鎖を持つため、染料前駆体分子および発色した染料分子との相溶性が低く、凝固した状態では互いに殆ど溶け合わないと考えられる。また、溶融状態の様に染料前駆体分子と本発明による電子受容性化合物分子が自由に運動できる状態では、染料前駆体分子と本発明による電子受容性化合物分子は互いにある割合で溶け合い、発色状態となる。それ故、発色している溶融状態の混合物をゆっくり冷却すると、降温するに従い本発明による電子受容性化合物と染料分子は互いに溶け合わなくなって相分離し、消色する。一方、急速に冷却を行うと、相分離する前、即ち発色状態のままで固化するため、発色状態が固定され固化後も発色状態が安定に保持される。
【0044】以上のように、本発明による可逆性感熱記録材料は、染料分子と本発明による電子受容性化合物との相溶状態および相分離状態を作りだし、発色および消色状態を発現させるものと考えられる。発色を行うには、加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、例えばサーマルヘッド、レーザー光等による加熱により可能である。また、加熱後ゆっくり冷却すれば消色し、例えば熱ロール、熱スタンプ、サーマルヘッド、高周波加熱、熱風、電熱ヒーターからの輻射熱等を用いることにより行える。
【0045】
【実施例】以下実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
【0046】実施例1(A)可逆性感熱塗液の作成染料前駆体である3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液90部と共にボールミルで24時間粉砕し、染料前駆体分散液を得た。次いでN−オクタデシル−p−ヒドロキシシンナムアミド100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕し分散液を得た。上記2種の分散液を混合した後、10%ポリビニルアルコール水溶液200部、水400部を添加、よく混合し、可逆性感熱塗液を作成した。
【0047】(B)可逆性感熱記録材料の作成(A)で調製した可逆性感熱塗液をポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量4g/m2となる様に塗抹し、乾燥後、スーパーカレンダーで処理して可逆性感熱記録材料を得た。
【0048】実施例2実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、N−(p−テトラデシルフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0049】実施例3実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、N−(p−テトラデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0050】実施例4実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、N−(p−オクタデシルオキシフェニル)−p−ヒドロキシシンナムアミド100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0051】比較例1実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、没食子酸とステアリルアミンとの塩100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にした。
【0052】比較例2実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にした。
【0053】比較例3実施例1で用いたN−オクダデシル−p−ヒドロキシシンナムアミドの分散液のかわりに、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル100部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液400部と共にボールミルで24時間粉砕して得た分散液を使用した他は、実施例1と同様にした。
【0054】試験1(発色濃度=熱応答性)
実施例1〜4および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて印加パルス1.0ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、得られた発色画像の濃度を濃度計マクベスRD918を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0055】試験2(発色濃度の経時変化=画像安定性)
実施例1〜4および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて、印加パルス1.0ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下に96時間保存した後、試験1と同様にして、発色部の濃度を測定し、下記数1により画像残存率を計算した。結果を表1に示した。
【0056】
【数1】A=(C/B)×100A:画像残存率(%)
B:試験前の画像濃度C:試験後の画像濃度
【0057】試験3(画像の消去性)
実施例1〜4および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて印加パルス1.0ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、これを熱スタンプを用いて120℃で1秒間加熱した後、試験1と同様にして濃度を測定した。結果を表1に示した。
【0058】
【表1】


【0059】表1中、○は消去部の濃度が発色部の濃度の30%未満で発色部と消去部のコントラストが良好、△は消去部の濃度が発色部の濃度の30%以上80%未満でコントラストが不十分、×は消去部の濃度が発色部の濃度の80%以上で可逆性が認められないことを表す。
【0060】
【発明の効果】表1に示したように、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体と、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる前記一般式化2で表される電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録材料により、良好なコントラストで画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能な可逆性感熱記録材料を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体と、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる下記一般式化1で表される電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録材料。
【化1】


(式化1中、nは1以上3以下の整数を、m及びlは0または1の整数を表す。R1はアルキル、アルケニル、アルコキシ、ハロゲンから選ばれる置換基または水素原子を表す。R2及びR3は低級アルキル基または水素原子を表し、互いに同一でも異なっていても良い。R4は脂肪族炭化水素基を表す。また、Xは少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の基を、Arは2価の芳香族基を示す。)

【公開番号】特開平6−171225
【公開日】平成6年(1994)6月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−330134
【出願日】平成4年(1992)12月10日
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)