説明

可逆性感熱記録装置の制御方法

【目的】従来の感熱記録技術に加え、さらに記録消去の機能も加えた可逆性感熱記録の最適な制御方法を提供すること。
【構成】上記目的は、加熱により発色と消色とを繰り返す可逆性感熱紙に画像の記録と消去とを行う可逆性感熱記録装置の制御方法において、少なくとも記録された画像を消去するために、記録用の加熱装置とは別に消色用加熱装置を設けて、記録信号が印加されて記録が行われる前に、消去のために必要な熱を供給することができるように消色加熱シーケンスを有していることを特徴とする可逆性感熱記録装置の制御方法とすることによって達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、可逆性感熱記録シートを用いて、熱パルスにより発色記録し、加熱により記録画像を消去し、かつ、発色、消色を繰り返すことのできる可逆性感熱記録装置の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】感熱記録については、これまで、特公昭 43‐4160号公報、特公昭 45‐14039号公報などに開示されているように、電子供与性の無色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを増感剤、増量剤などと共にバインダ中に分散させ、これを紙、プラスチックフィルムなどの支持体に塗布したものを記録シートとして用い、熱パルスを印加し染料前駆体を発色させることによって記録画像を形成する方法が採られていた。
【0003】一方、新しいタイプの感熱記録方法として特開平 2‐188293号、特開平 2‐188294号、国際特開 WO 90/11898号公報等に開示されている技術は、この感熱記録を繰り返し行うことができるように、記録と消去とができるようにしたものである。
【0004】この中、前者は一般に書き込みは1回で、できるだけ記録保存性の良いことを前提としたもので非可逆記録であり、これに対して後者は可逆記録であるということで、大きく区別することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】非可逆感熱記録は、パーソナルコンピュータの出力装置、ワードプロセッサの出力装置、ファクシミリ、券売機等で大量に利用されているが、一度記録された画像は消去することは不可能で、熱を加えれば全体が黒化してしまう。また、これらの記録装置には、通常、記録のためのパルス印加加熱装置、すなわち感熱記録ヘッドが設けられているのみで、記録消去用の装置は設けられていない。
【0006】一方、可逆性感熱記録装置、特に発色・消色型の感熱記録シートを用いた記録装置、は、未だ該シート自体が開示された段階であり、これに適する感熱記録装置として特別に提案されたものはない。
【0007】従って、可逆感熱記録装置についてまとめた制御を行うためには、これに適する制御方法が必要になる。
【0008】本発明の目的は、上記従来技術の有していた課題を解決して、従来の感熱記録技術に加え、さらに記録消去の機能も加えた可逆性感熱記録の最適な制御方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、加熱により発色と消色とを繰り返す可逆性感熱紙に画像の記録と消去とを行う可逆性感熱記録装置の制御方法において、少なくとも記録された画像を消去するために、記録用の加熱装置とは別に消色用加熱装置を設けて、記録信号が印加されて記録が行われる前に、消去のために必要な熱を供給することができるように消色加熱シーケンスを有していることを特徴とする可逆性感熱記録装置の制御方法とすることによって達成することができる。
【0010】さらに具体的に説明すれば、記録した画像を同一構成の記録装置の中で消去しながら記録を行うためには、記録動作を開始する以前に消去動作を完了し、記録の妨げにならないようにする必要があり、このため、本発明の場合には、シリアルタイプの感熱記録、ラインヘッド型感熱記録の何れの場合にも、予め、シートの送られる方向に沿って、記録が行われる前の個所に消色用発熱体を設け、この位置から記録が実際に行われるまでの間に、既に存在している記録画像を消去しようとするものである。
【0011】従って、記録動作が開始される前に、消去装置の温度上昇の時定数分の余裕を含め、シート走行時間を含む時間よりも前に消色用加熱装置パワーオンの動作の開始を行う。この消色用加熱装置パワーオンの動作は、可逆性感熱記録装置全体のパワーオンサイクルに連動させることもでき、また、該装置全体のパワーオン後、記録動作開始信号によって初めてパワーオンし、実質記録動作開始前に既記録画像の消去を行うようにすることもできる。
【0012】
【作用】本発明制御方法の手順の一例について、図1によって説明する。
【0013】図1は、(a) 装置全体の電源オン、(b) 消色用加熱装置の電源オン、(c) 消色用加熱装置の温度推移、(d) 記録装置の記録開始の相互の時間関係を示した図で、まず (a) で装置全体の電源をオンした後、記録動作を行うか否かによって決定される時間t1の経過後(b) をオンすると、(c) 一定の時間遅れ(t2)をもって消色加熱装置が消去可能温度に達する。この段階で初めて可逆性感熱シートが消色装置に挿入される。実際の記録部では、感熱シートが記録部に到達するまでの遅れ時間(t3)があるので、装置全体の電源オンからの時間経過をみると、オンからt1+t2+t3時間の経過後、(d) 記録開始の状態に達する。
【0014】このような方法とすることによって、1台の装置で記録と消去とを行うことができるため、装置をコンパクト化し、かつ、既に記録画像が存在する可逆性感熱シートを用いて新たな情報を記録することができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の可逆性感熱記録装置の制御方法について、実施例によって具体的に説明する。
【0016】
【実施例1】本発明の制御方法について図2により、また、図1を援用し、さらに図3のフローチャートを用いて説明する。ここで、図2は本実施例の実施に用いた可逆性感熱記録装置の要部の概略構成を示す図で、1は消去用ヒートロール、2はバックアップロール、3は可逆性感熱記録紙、4はプラテンロール、5はライン型サーマル記録ヘッド、6は発熱抵抗体を示す。
【0017】まず装置全体の電源をオンし、可逆性感熱記録紙を給紙待ちの状態で待機させる。この場合、記録紙上の既記録画像の消去を行うか否かによって、消去用ヒートロール1を同時にオンするか否かを決定する。従って、最初から既記録画像の消去を前提とした場合には、本体電源オンのときに消去用ヒートロール1の加熱電源もオンとして、このときは t1≒0の動作となる。可逆感熱記録紙3の挿入が可能となるのは消去用ヒートロール1の温度上昇が充分に行われた後となるので、さらにt2時間経過後となる。t2時間経過後の時点では、消去用ヒートロール1、バックアップロール2共に既に充分な消去温度に昇温しているので、いつでも可逆性感熱記録紙の挿入が可能な状態となる。ここで、可逆性感熱記録紙3を消去用ヒートロール1、バックアップロール2間に挿入すると、上記両ロール間で加熱されて記録の消去が行われた後、プラテンロール4に沿って移動し、ラインサーマル記録ヘッド5を通過する。このとき初めて記録動作が開始されることになる。
【0018】記録の消去を必要とせず、装置全体の電源オンから消去用加熱装置の電源オンまでの時間t1≒0の場合は、記録動作開始までの所要時間はt2+t3で済むことになる。
【0019】
【発明の効果】以上述べてきたように、可逆性感熱記録装置の制御方法を本発明構成の方法とすることによって、従来技術の有していた課題を解決して、従来の技術に加え、さらに既記録画像消去の機能を含む最適な制御の方法を提供することができた。すなわち、記録消去部と記録部とを一体化して一組の装置とし、消去のためのタイミングを記録動作の前に置くことによって、既に記録像のある可逆性感熱記録シートを新規のシートと全く区別なく使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】装置全体の電源オン、消色用加熱装置の電源オン、消色用加熱装置の温度推移、記録部の記録開始の相互の時間関係を示す図。
【図2】本発明方法の実施に用いた可逆性感熱記録装置の要部の概略構成を示す図。
【図3】本発明方法のフローチャートを示す図。
【符号の説明】
1…消去用ヒートロール、2…バックアップロール、3…可逆性感熱記録紙、4…プラテンロール、5…ライン型サーマル記録ヘッド、6…発熱抵抗体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】加熱により発色と消色とを繰り返す可逆性感熱紙に画像の記録と消去とを行う可逆性感熱記録装置の制御方法において、少なくとも記録された画像を消去するために、記録用の加熱装置とは別に消色用加熱装置を設けて、記録信号が印加されて記録が行われる前に、消去のために必要な熱を供給することができるように消色加熱シーケンスを有していることを特徴とする可逆性感熱記録装置の制御方法。
【請求項2】加熱により発色と消色とを繰り返す可逆性感熱紙に画像の記録と消去とを行う可逆性感熱記録装置の制御方法において、記録用の加熱装置と、該記録用加熱装置とは別の消色用加熱装置と、該消色用加熱装置を作動させる制御手段とを設け、上記記録用加熱装置により記録が行われる前に記録画像の消去動作を行うか否かを判別し、消去動作を行う場合には消色用加熱装置を作動させて消色用加熱装置が所定の温度に達した時点で消去動作を行った後に上記記録用加熱装置により記録を行い、消去動作を行わない場合にはそのまま上記記録用加熱装置により記録を行うことを特徴とする可逆性感熱記録装置の制御方法。
【請求項3】画像の記録を行う記録紙が加熱により発色と消色とを繰り返す可逆性感熱紙であるか非可逆性の感熱紙であるかを判別し、可逆性感熱紙である場合には消色用加熱装置を作動させ、非可逆性の感熱紙である場合には消色用加熱装置を作動させないことを特徴とする請求項2記載の可逆性感熱記録装置の制御方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−309915
【公開日】平成5年(1993)11月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−117427
【出願日】平成4年(1992)5月11日
【出願人】(000194332)株式会社スリオンテック (46)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)