説明

台車式引揚げ船台

【課題】船底の前部側及び後部側をそれぞれ固定支持する盤木をその上に取り付けるシーソー型傾動台に船体を乗せていない場合に、突然にシーソー型傾動台の前後側が上下に傾動して事故の原因になるのを未然に回避することのできる台車式引揚げ船台を提供することにある。
【解決手段】前部台車2及び後部台車5に中央を回転中心として前後側が上下に傾動するシーソー型傾動台3,6をそれぞれ設け、各シーソー型傾動台3,6上に上記盤木12を設け、当該各シーソー型傾動台3,6の前後両端側の下部を弾性伸縮しながら支える傾動緩衝器4,7をその前後両端側の下部にそれぞれ配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船底を前部台車及び後部台車の盤木に固定支持して、海から陸上に引き揚げる場合に使用される台車式引揚げ船台に係り、特に、船底の前部側及び後部側をそれぞれ固定支持する盤木を、各々シーソー型傾動台を介して前部台車及び後部台車で支持するようにした台車式引揚げ船台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台車式引揚げ船台を使用して海の中の船を陸上に引き揚げる場合、船底の前部側は前部台車の盤木に固定支持され、船底の後部側は後部台車の盤木に固定支持される。前後の各台車は登り傾斜の路面に敷設されているレール上を走行して引き揚げられるが、登り傾斜の路面は途中で傾斜角度が変わることがしばしばである。海側寄りの路面傾斜に比べて工場がある陸上寄りの路面の傾斜は一般に緩やかになっている。
このため、先に引き揚げられる前部台車が緩やかな路面上に達し、後部台車が未だ海側寄りの緩やかでない路面上に有るときには、前部台車と後部台車の傾き具合が異なることになり、その結果、後部台車の盤木に支持固定されていた船底の後部側が浮き上がり、船底の後部側が盤木で支持されなくなって不安定となり、最悪の場合には船体が台車式引揚げ船台から横転して大事故の原因となる危険をはらんでいる。
そこで、これを防ぐために、船底を固定支持する盤木をシーソープレートを介して前部台車及び後部台車に支持する発明(特許文献1及び特許文献2)が出願されている。この発明は盤木を支持するシーソープレートが路面の傾斜の変化に追従して前後の台車上で相対的に前後に傾動することで、前後の各盤木で船底の前後側を常に固定支持できる構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−12417
【特許文献2】特開2009−158929
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前部台車及び後部台車に設けられたシーソープレートは、支軸を中心として容易に前後に傾動できる構造になっているため、船体を乗せていない状況下で突然に前後に傾動することがあり、作業員がシーソープレートで作業をしている時にこのようなことがあると、事故につながる危険がある。
これを回避する方法として、前後に傾動しないように例えば固定ピンなどをシーソープレートの側面に差し込んで固定させることが考えられる。ただこの方法だと、固定ピンを抜いた途端に突然、シーソープレートが前後に傾動して事故を招く危険をはらんでいる。
また、作業直前に固定ピンの抜き忘れも考えられ、この場合にはシーソープレートが船体を乗せた状態で前後に傾動せず、路面の傾斜角度が前後の台車で異なる場合に船底の前後を盤木で固定支持できなくなり、船体が前後の台車から横転して大事後になる懼れも考えられる。
或いは、船体の重みでシーソープレートが前後に傾き、その際に固定ピンが勢いよく差し込み孔から飛び跳ねて、その周囲の作業員や装置にあたって怪我や機器の故障の原因になる懼れも考えられる。さらにまた、船体の重みでシーソープレートが前後に傾いた際に、固定ピンが変形して外れなくなり、シーソープレートが正常に前後に傾動しなくなることも考えられる。
【0005】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、船底の前部側及び後部側をそれぞれ固定支持する盤木をその上に取り付けるシーソー型傾動台に船体を乗せていない場合に、突然にシーソー型傾動台の前後側が上下に傾動して事故の原因になるのを未然に回避することのできる台車式引揚げ船台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を達成するために、この発明は、船底の前部側を支持する盤木を備えた前部台車と、船底の後部側を支持する盤木を備えた後部台車とを有する台車式引揚げ船台において、上記前部台車及び後部台車に中央を回転中心として前後側が上下に傾動するシーソー型傾動台をそれぞれ設け、各シーソー型傾動台上に上記盤木を設け、当該各シーソー型傾動台の前後両端側の下部を弾性伸縮しながら支える傾動緩衝器をその前後両端側の下部にそれぞれ配置した手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0007】
課題を解決するための手段よりなるこの発明に係る台車式引揚げ船台によれば、船体を前後の台車の上に乗せた状態では、シーソー型傾動台の支軸を挟んでその前後に設置した傾動緩衝器は上下に弾性伸縮するため、シーソー型傾動台は前後側が上下に傾動することができるのは勿論のこと、船体を前後の台車の上に乗せていない状態では、シーソー型傾動台の支軸を挟んでその前後に設置した上記傾動緩衝器が、その両側からシーソー型傾動台を上向きに押し上げるように弾性支持するため、シーソー型傾動台が突然に前後側の何れかが上下に傾動するのを防ぐことができ、これにより、突然にシーソー型傾動台の前後側が上下に傾動して事故の原因になるのを未然に回避することができる等、極めて新規的有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明を実施するための形態を示す船体上架姿図である。
【図2】この発明を実施するための形態を示す台車式引揚げ船台の側面図である。
【図3】この発明を実施するための形態を示す台車式引揚げ船台の平面図である。
【図4】この発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台の間に横設した盤木側部支持桁の平面図である。
【図5】この発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台の間に横設した盤木側部支持桁の正面図である。
【図6】この発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台の間に横設した盤木側部支持桁の側面図である。
【図7】この発明を実施するための形態を示す台車側桁の間に取り付けられたシーソー型傾動台の支軸の断面図である。
【図8】(A)はこの発明を実施するための形態を示す傾動緩衝器の平面図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す傾動緩衝器の側面図である。 (C)はこの発明を実施するための形態を示す傾動緩衝器の正面図である。
【図9】(A)はこの発明を実施するための形態を示す傾動緩衝器の収縮時の側面図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す傾動緩衝器の収縮時の正面図である。
【図10】この発明を実施するための形態を示す左右の台車側桁に取り付けられたシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁の平面図である。
【図11】(A)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁の傾動前の正面図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁が左側傾動時の右側からの正面図である。 (C)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁が右側傾動時の右側からの正面図である。
【図12】(A)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁の傾動前の側面図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁が左側傾動時の側面図である。 (C)はこの発明を実施するための形態を示すシーソー型傾動台に横設された盤木側部支持桁が右側傾動時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に記載の発明を実施するための形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0010】
図において、台車式引揚げ船台1は、船体aの船底を前部台車及び後部台車の盤木に固定支持して、海から陸上に引き揚げる場合に使用されるが、必要に応じて船体aを陸上から海に戻す場合にも使用されることがある。
【0011】
台車式引揚げ船台1は、船体aの船底の前部側を支持する盤木12を備えた前部台車2、前部台車2に設けられた前部シーソー型傾動台3及びその前後に配置された前部傾動緩衝器4、船体aの船底の後部側を支持する盤木12を備えた後部台車5、後部台車5に設けられた後部シーソー型傾動台6及びその前後に配置された後部傾動緩衝器7などから構成されている。
【0012】
船体aの前部側を支持する前部台車2は、例えば平面からみて直角四角形の形状を有している。前部台車2は、左右に間をあけてその長さ方向に並行に配置される一対の台車側桁21、左右の台車側桁21の前端側及び後端側に幅方向に配置される前部横桁22、後部横桁23で骨組が構成されている。また、前部横桁22と後部横桁23の中央にはこれらを連結する補助縦桁24が長さ方向に取り付けられている。
【0013】
左右の各台車側桁21は、一対の例えば溝型鋼21aを横向きのコ字型と逆コ字型の背中合わせにして間をあけて並行に配置したものから構成されている。左右の各台車側桁21の一対の溝型鋼21aの間には前部シーソー型傾動台3が設けられている。前部シーソー型傾動台3は台車側桁21の一対の溝型鋼21aの間で前後側が上下に傾動するように取り付けられている。
【0014】
また、前部シーソー型傾動台3を挟んで各台車側桁21の一対の溝型鋼21aの前後両端側の下部には車輪25がそれぞれ設けられている。各車輪25は一対の溝型鋼21aの間に回転自在に軸支されている。各車輪25を軸支する軸受け板は各溝型鋼21aの下部側に下向きに取り付けられている。車輪25は前部台車2の下部の前部側の左右両側及び後部側の左右両側の合計4箇所に設けられている。
【0015】
前部シーソー型傾動台3の前後両側が上下に傾動する側の下部側で、一対の溝型鋼31aの間には前部シーソー型傾動台3がそれ以上、下側に傾動するのを阻止するストッパー36がそれぞれ設けられている。このストッパー36により極端に傾動し過ぎて前部シーソー型傾動台3の両端側の下面が路面bやレールcに接触するのが防がれている。
【0016】
前部台車2の前端側にその幅方向に配置される前部横桁22は、例えば溝型鋼を横向きにして前方に向けてコ字型にして取り付けられている。その両端側は左右の各台車側桁21の前端部分に溶接などにより固設されている。前部横桁22の中央には前方に向けて引き揚げウインチ用滑車26が取り付けられている。この引き揚げウインチ用滑車26には図示しないワイヤーロープが取り付けられ、このワイヤーロープを利用して前部台車2は引き揚げられる。
【0017】
前部台車2の後端側にその幅方向に配置される後部横桁23は、例えば溝型鋼を横向きにして後方に向けてコ字型にして取り付けられている。その両端側は左右の各台車側桁21の後端部分に溶接などにより固設されている。この後部横桁23の左右両端側には、前部台車2と後部台車5とを連結する可撓製の連結部材11の先端側が連結されている。連結部材11には例えばチェーンが使用される。
【0018】
前部台車2の片側の台車側桁21の前部側の上面には前部誘導案内杆13が設けられている。前部誘導案内杆13の下部は台車側桁21の前部側の上面に上向きに取り付けられている。前部誘導案内杆13はそれから外側方に向けて水平向き曲げられた後、再び上向き曲げられて上方に延設されている。
【0019】
左右の各台車側桁21の一対の溝型鋼21aの間に設けられた前部シーソー型傾動台3は、前部台車2の上でその前後側が上下に傾くことで、その上の盤木12が船体aの船底から離れるのを防いで固定支持させる機能を果たすものである。前部シーソー型傾動台3は前部台車2の長さ方向に配置されている。
【0020】
前部シーソー型傾動台3は、縦向きの主桁31、主桁31の上端に固設された水平な上フランジ32、主桁31の中央下部にこれを貫通する軸孔33が形成されている。主桁31はその上端は水平に形成されている。主桁31の下端は中央が最も高く両端側に向かって斜め上に傾斜してその高さが徐々に小さくなるように形成されている。
【0021】
軸孔33の周囲には円筒33aが貫通して固設されて補強されている。主桁31の両側面と上フランジ32及び円筒33aとは補強リブ31aで補強され、主桁31の両側面と上フランジ32とは補強リブ31bで補強されている。
【0022】
円筒33aで補強された前部シーソー型傾動台3の軸孔33には、円柱形の支軸34が貫通している。円柱形の支軸34の直径は軸孔33の内径よりも少し小さくなっていて、円柱形の支軸34は遊嵌状に前部シーソー型傾動台3の軸孔33を貫通して取り付けられている。
【0023】
支軸34の両端は、台車側桁21の一対の溝型鋼21aの中央に形成された軸受け21bに軸支されている。前部シーソー型傾動台3は、主桁31の軸孔33を遊嵌状に貫通した支軸34の両端が台車側桁21の溝型鋼21aの軸受け21bに軸支されることにより、支軸34を回転中心としてその前後両側が上下に傾動する。
【0024】
左右に配置された台車側桁21にそれぞれ設けられた前部シーソー型傾動台3の上フランジ32の間には、左右幅方向に盤木側部支持桁35が横設されている。盤木側部支持桁35は前後に例えば2箇所に横設されている。前後の盤木側部支持桁35は、一対の例えば溝型鋼35aを横向きのコ字型と逆コ字型の背中合わせにして間をあけて並行に配置したものから構成されている。一対の溝型鋼35aはその下部に固設された複数の例えば逆L字型の山型鋼35bによって連結補強されている。
【0025】
前後の各盤木側部支持桁35の一対の溝型鋼35aの間には、船体aの船底の前部側を支持固定する盤木12が取り付けられている。盤木12は溝型鋼35aより高く、またその長さも大きく、盤木12の両端側は溝型鋼35aの両端側から外側方に向けてはみ出している。盤木12は溝型鋼35aに複数形成された貫通孔を貫通したボルトネジによって、その両側面が両溝型鋼35aにしっかりと固定されている。
【0026】
前部傾動緩衝器4は、左右の各台車側桁21の一対の溝型鋼21aの間に設けられた前部シーソー型傾動台3の前後両端側の下部を弾性伸縮しながら支える機能を果たすものである。前部傾動緩衝器4は左右の各台車側桁21の一対の溝型鋼21aの間に設けられた前部シーソー型傾動台3の前後両端側の下部に配置されている。前部傾動緩衝器4は、台車側桁21の一対の溝型鋼21aの下部から下向きに断面U字型に突出して取り付けられた支持盤21cに支持されている。
【0027】
前部シーソー型傾動台3は、その前後両端側の下部に配置された前部傾動緩衝器4によって、突然に前後側が上下に傾動するのが防がれる。例えば、突然に前部シーソー型傾動台3の前部側が下向きに傾動しようとした場合、前部側に配置された前部傾動緩衝器4が弾性縮小しながら支えるために、前部側が下向きに急激に傾動するのが防がれる。また、突然に前部シーソー型傾動台3の後部側が下向きに傾動しようとした場合、後部側に配置された前部傾動緩衝器4が弾性縮小しながら支えるために、急激に後部側が下向きに傾動するのが防がれる。
【0028】
前部傾動緩衝器4は、ローラ41、軸受け42、上部板43、上部筒体44、下部筒体45、バネ46、底部板47から構成される。ローラ41は前部シーソー型傾動台3の主桁31の両側の下面に接触して下から支えるもので、ローラ41の両端は軸受け42に回転自在に軸支されていて、前部シーソー型傾動台3の下面に接触する場合、ローラ41が簡単に回転することで互いの接触面が傷つくのを防いでいる。
【0029】
ローラ41を軸支する軸受け42はその下端が上部板43に固設されている。上部板43は上下向きの円筒形の上部筒体44の上端に固設されている。上部筒体44は円形の形状をしている。上下向きの上部筒体44の下面は開口されている。この開口された下面からその内部に上下向きの円筒形の下部筒体45が挿入されている。上下向きの下部筒体45の上面は開口されている。
【0030】
下面が開口する上部筒体44の内径は、上面が開口する下部筒体45の外径よりも大きく、下部筒体45は開口する下面を通じて上部筒体44の内部に挿入できる構造になっている。上部筒体44及び下部筒体45の内部にはバネ46が内装されている。バネ46には例えばコイルバネが使用される。バネ46は上下向きに弾性伸縮するように上部筒体44及び下部筒体45の内部に内装されている。下部筒体45の下端には正方形の底部板47が固設されている。
【0031】
内部のバネ46はその上下両端が、上部筒体44に固設された上部板43と下部筒体45に固設された底部板47とにより、挟まれて支持されることにより、上部筒体44と下部筒体45とは上下に弾性伸縮可能になっている。ローラ41が接触して支持する前部シーソー型傾動台3は、下部筒体45に対して内部のバネ46により上部筒体44が上下に弾性伸縮することで、急激な傾動動作が緩和されることになるのである。
【0032】
船体aの後部側を支持する後部台車5は、例えば平面からみて直角四角形の形状を有している。後部台車5は、左右に間をあけてその長さ方向に並行に配置される一対の台車側桁51、左右の台車側桁51の前端側及び後端側に幅方向に配置される前部横桁52、後部横桁53で骨組が構成されている。また、前部横桁52と後部横桁53の中央にはこれらを連結する補助縦桁54が長さ方向に取り付けられている。
【0033】
左右の各台車側桁51は、一対の例えば溝型鋼51aを横向きのコ字型と逆コ字型の背中合わせにして間をあけて並行に配置したものから構成されている。左右の各台車側桁51の一対の溝型鋼51aの間には後部シーソー型傾動台6が設けられている。後部シーソー型傾動台6は台車側桁51の一対の溝型鋼51aの間で前後側が上下に傾動するように取り付けられている。
【0034】
また、後部シーソー型傾動台6を挟んで各台車側桁51の一対の溝型鋼51aの前後両端側の下部には車輪55がそれぞれ設けられている。各車輪55は一対の溝型鋼51aの間に回転自在に軸支されている。各車輪55を軸支する軸受け板は各溝型鋼51aの下部側に下向きに取り付けられている。車輪55は後部台車5の下部の前部側の左右両側及び後部側の左右両側の合計4箇所に設けられている。
【0035】
後部シーソー型傾動台6の前後両側が上下に傾動する側の下部側で、一対の溝型鋼51aの間には後部シーソー型傾動台6がそれ以上、下側に傾動するのを阻止するストッパー66がそれぞれ設けられている。このストッパー66により極端に傾動し過ぎて後部シーソー型傾動台6の両端側の下面が路面bやレールcに接触するのが防がれている。
【0036】
後部台車5の上面の前半側の幅方向の両側となる左右には、後部台車5の中央に向かって収縮スライドしながら船体aの左右両舷側を挟むようにして誘導案内する拡縮スライド自在なスライド誘導案内杆14設けられている。
【0037】
後部台車5の前端側にその幅方向に配置される前部横桁52は、例えば溝型鋼を横向きにして前方に向けてコ字型にして取り付けられている。その両端側は左右の各台車側桁51の前端部分に溶接などにより固設されている。この前部横桁52の左右両端側には、前部台車2と後部台車5とを連結する前記の可撓製の連結部材11の後端側が連結されている。前述したように連結部材11には例えばチェーンが使用される。
【0038】
後部台車5の後端側にその幅方向に配置される後部横桁53は、例えば溝型鋼を横向きにして後方に向けてコ字型にして取り付けられている。その両端側は左右の各台車側桁51の後端部分に溶接などにより固設されている。この後部横桁53の左右両端側には、船体aの船底の傾斜する左右両側面をその傾斜面に対応して傾動及び昇降しながら係止して支持する一対の傾動昇降自在な船体固定装置15が設けられている。
【0039】
左右の各台車側桁51の一対の溝型鋼51aの間に設けられた後部シーソー型傾動台6は、後部台車5の上でその前後側が上下に傾くことで、その上の盤木12が船体aの船底から離れるのを防いで固定支持させる機能を果たすものである。後部シーソー型傾動台6は後部台車5の長さ方向に配置されている。
【0040】
後部シーソー型傾動台6は、縦向きの主桁61、主桁61の上端に固設された水平な上フランジ62、主桁61の中央下部にこれを貫通する軸孔63が形成されている。主桁61はその上端は水平に形成されている。主桁61の下端は中央が最も高く両端側に向かって斜め上に傾斜してその高さが徐々に小さくなるように形成されている。
【0041】
軸孔63の周囲には円筒63aが貫通して固設されて補強されている。主桁61の両側面と上フランジ62及び円筒63aとは補強リブ61aで補強され、主桁61の両側面と上フランジ62とは補強リブ61bで補強されている。
【0042】
円筒63aで補強された後部シーソー型傾動台6の軸孔63には、円柱形の支軸64が貫通している。円柱形の支軸64の直径は軸孔63の内径よりも少し小さくなっていて、円柱形の支軸64は遊嵌状に後部シーソー型傾動台6の軸孔63を貫通して取り付けられている。
【0043】
支軸64の両端は、台車側桁51の一対の溝型鋼51aの中央に形成された軸受け51bに軸支されている。後部シーソー型傾動台6は、主桁61の軸孔63を遊嵌状に貫通した支軸64の両端が台車側桁51の溝型鋼51aの軸受け51bに軸支されることにより、支軸64を回転中心としてその前後両側が上下に傾動する。
【0044】
左右に配置された台車側桁51にそれぞれ設けられた後部シーソー型傾動台6の上フランジ62の間には、左右幅方向に盤木側部支持桁65が横設されている。盤木側部支持桁65は前後に例えば2箇所に横設されている。前後の盤木側部支持桁65は、一対の例えば溝型鋼65aを横向きのコ字型と逆コ字型の背中合わせにして間をあけて並行に配置したものから構成されている。一対の溝型鋼65aはその下部に固設された複数の例えば逆L字型の山型鋼65bによって連結補強されている。
【0045】
前後の各盤木側部支持桁65の一対の溝型鋼65aの間には、船体aの船底の前部側を支持固定する盤木12が取り付けられている。盤木12は溝型鋼65aより高く、またその長さも大きく、盤木12の両端側は溝型鋼65aの両端側から外側方に向けてはみ出している。盤木12は溝型鋼65aに複数形成された貫通孔を貫通したボルトネジによって、その両側面が両溝型鋼65aにしっかりと固定されている。
【0046】
後部傾動緩衝器7は、左右の各台車側桁51の一対の溝型鋼51aの間に設けられた後部シーソー型傾動台6の前後両端側の下部を弾性伸縮しながら支える機能を果たすものである。後部傾動緩衝器7は左右の各台車側桁51の一対の溝型鋼51aの間に設けられた後部シーソー型傾動台6の前後両端側の下部に配置されている。後部傾動緩衝器7は、台車側桁51の一対の溝型鋼51aの下部から下向きに断面U字型に突出して取り付けられた支持盤51cに支持されている。
【0047】
後部シーソー型傾動台6は、その前後両端側の下部に配置された後部傾動緩衝器7によって、突然に前後側が上下に傾動するのが防がれる。例えば、突然に後部シーソー型傾動台6の前部側が下向きに傾動しようとした場合、前部側に配置された後部傾動緩衝器7が弾性縮小しながら支えるために、急激に前部側が下向きに傾動するのが防がれる。また、突然に後部シーソー型傾動台6の後部側が下向きに傾動しようとした場合、後部側に配置された後部傾動緩衝器7が弾性縮小しながら支えるために、急激に後部側が下向きに傾動するのが防がれる。
【0048】
後部傾動緩衝器7は、ローラ71、軸受け72、上部板73、上部筒体74、下部筒体75、バネ76、底部板77から構成される。ローラ71は後部シーソー型傾動台6の主桁61の両側の下面に接触して下から支えるもので、ローラ71の両端は軸受け72に回転自在に軸支されていて、後部シーソー型傾動台6の下面に接触する場合、ローラ71が簡単に回転することで互いの接触面が傷つくのを防いでいる。
【0049】
ローラ71を軸支する軸受け72はその下端が上部板73に固設されている。上部板73は上下向きの円筒形の上部筒体74の上端に固設されている。上部筒体74は円形の形状をしている。上下向きの上部筒体74の下面は開口されている。この開口された下面からその内部に上下向きの円筒形の下部筒体75が挿入されている。上下向きの下部筒体75の上面は開口されている。
【0050】
下面が開口する上部筒体74の内径は、上面が開口する下部筒体75の外径よりも大きく、下部筒体75は開口する下面を通じて上部筒体74の内部に挿入できる構造になっている。上部筒体74及び下部筒体75の内部にはバネ76が内装されている。バネ76には例えばコイルバネが使用される。バネ76は上下向きに弾性伸縮するように上部筒体74及び下部筒体75の内部に内装されている。下部筒体75の下端には正方形の底部板77が固設されている。
【0051】
内部のバネ76はその上下両端が、上部筒体74に固設された上部板73と下部筒体75に固設された底部板77とにより、挟まれて支持されることにより、上部筒体74と下部筒体75とは上下に弾性伸縮可能になっている。ローラ71が接触して支持する後部シーソー型傾動台6は、下部筒体75に対して内部のバネ76により上部筒体74が上下に弾性伸縮することで、急激な傾動動作が緩和されることになるのである。
【0052】
次に、上記発明を実施するための形態の構成に基づく作用について以下説明する。
前部台車2の左右の台車側桁21にそれぞれ配置された前部シーソー型傾動台3の間に盤木12を横設してボルトネジで溝型鋼35aを貫通させて取り付け、盤木12を前部シーソー型傾動台3に固定する。同様に、後部台車5の左右の台車側桁51にそれぞれ配置された後部シーソー型傾動台6の間に盤木12を横設してボルトネジで溝型鋼65aを貫通させて取り付け、盤木12を後部シーソー型傾動台6に固定する。
【0053】
前部台車2及び後部台車5を船体aが浮かぶ海中まで傾斜する路面bのレールcに沿って移動させ沈め、前部台車2に設けられた前部誘導案内杆13、後部台車5に設けられたスライド誘導案内杆14及び船体固定装置15を用いて、海水中に沈ませた前部台車2及び後部台車5の盤木12に船体aの船底の前部側及び後部側を乗せて固定する。
【0054】
船体aの船底の前部側及び後部側を前部台車2及び後部台車5の盤木12に固定支持させた後、ワイヤーロープを前部台車2の引き揚げウインチ用滑車26に取り付けて引き揚げると、連結部材11を通じて前部台車2に連結されている後部台車5も一緒に移動し、船体aを乗せた前部台車2及び後部台車5は海から引き揚げられる。つまり前部台車2及び後部台車5は登り傾斜の路面bに敷設されたレールc上をそれぞれの車輪25,55が走行することにより、陸上に引き揚げられる。
【0055】
海側寄りの路面bの傾斜は少し角度があるが、工場側寄りの路面bの傾斜は途中から緩やかになっている。このため、前部台車2及び後部台車5が海側寄りの同じ傾斜角度の路面bを引き揚げられている場合には、前部台車2及び後部台車5の路面bに対する傾斜角度は同じであり、その上に設けられた前部シーソー型傾動台3及び後部シーソー型傾動台6、その上の盤木12、さらにその上に載っている船体aの傾きも同じ状態にある。
【0056】
しかし、前部台車2が工場側寄りの路面bの傾斜が緩やかな箇所まで引き揚げられると、前部台車2の傾きは緩やかになり、後部台車5との傾きが異なることになる。この場合、前部台車2の前部シーソー型傾動台3はその後部側が徐々に下向きに傾く。これに対して後部台車5の後部シーソー型傾動台6はその前部側が徐々に下向きに傾いて、前部シーソー型傾動台3及び後部シーソー型傾動台6の上面を常に同一平面上に維持することができる。
【0057】
このため、船体aの船底の前部側又は後部側が盤木12の表面から離れることはなく、路面bの傾斜角度が途中で変化しても、盤木12に固定支持されて陸上に問題なく引き揚げられる。
【0058】
また、海の浮かんでいる船体aを引き揚げるために空の前部台車2及び後部台車5を海に向かって傾斜する路面bを下る場合或いは陸上の船体aを海に戻して空となった前部台車2及び後部台車5を陸上に引き揚げる場合、その移動時の反作用で前部シーソー型傾動台3又は後部シーソー型傾動台6の前部側又は後部側が突然に下向きに傾動しようとする。
【0059】
しかし、前部シーソー型傾動台3及び後部シーソー型傾動台6は、その回転中心の支軸34、54を挟んでその前後側に配置されている前部傾動緩衝器4、後部傾動緩衝器7によって下側から支えられている。
【0060】
このため、前部シーソー型傾動台3又は後部シーソー型傾動台6の前部側又は後部側の下面が接触している前部傾動緩衝器4のローラ41、後部傾動緩衝器7のローラ71を突然に下向きに押しても、ローラ41,71の下側の上部筒体44,74と下部筒体45,75との内部に内装されているバネ46,76の働きによって、バネ46,76が弾性収縮しながら衝撃を緩やかに吸収する。
【0061】
これにより、前部シーソー型傾動台3及び後部シーソー型傾動台6が突然に前後側に傾動するのを回避でき、事故の発生を未然に防止することができる。
【0062】
なお、この発明は上記発明を実施するための形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 台車式引揚げ船台
11 連結部材
12 盤木
13 前部誘導案内杆
14 スライド誘導案内杆
15 船体固定装置
2 前部台車
21 台車側桁
21a 溝型鋼
21b 軸受け
21c 支持盤
22 前部横桁
23 後部横桁
24 補助縦桁
25 車輪
26 引き揚げウインチ用滑車
3 前部シーソー型傾動台
31 主桁
31a 補強リブ
31b 補強リブ
32 上フランジ
33 軸孔
33a 円筒
34 支軸
35 盤木側部支持桁
35a 溝型鋼
35b 山型鋼
36 ストッパー
4 前部傾動緩衝器
41 ローラ
42 軸受け
43 上部板
44 上部筒体
45 下部筒体
46 バネ
47 底部板
5 後部台車
51 台車側桁
51a 溝型鋼
51b 軸受け
51c 支持盤
52 前部横桁
53 後部横桁
54 補助縦桁
55 車輪
6 後部シーソー型傾動台
61 主桁
61a 補強リブ
61b 補強リブ
62 上フランジ
63 軸孔
63a 円筒
64 支軸
65 盤木側部支持桁
65a 溝型鋼
65b 山型鋼
66 ストッパー
7 後部傾動緩衝器
71 ローラ
72 軸受け
73 上部板
74 上部筒体
75 下部筒体
76 バネ
77 底部板
a 船体
b 路面
c レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底の前部側を支持する盤木を備えた前部台車と、船底の後部側を支持する盤木を備えた後部台車とを有する台車式引揚げ船台において、上記前部台車及び後部台車に中央を回転中心として前後側が上下に傾動するシーソー型傾動台をそれぞれ設け、各シーソー型傾動台上に上記盤木を設け、当該各シーソー型傾動台の前後両端側の下部を弾性伸縮しながら支える傾動緩衝器をその前後両端側の下部にそれぞれ配置したことを特徴とする台車式引揚げ船台。
【請求項2】
傾動緩衝器には上下に弾性伸縮するバネが内装されている請求項1記載の台車式引揚げ船台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52780(P2013−52780A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192858(P2011−192858)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(511216536)株式会社沖新船舶工業 (1)