説明

台車設備

【課題】台車が小さい旋回半径でレールコーナ部を旋回する際にも旋回半径の中心側に設けた車輪や床面が損傷することがなく、しかも、台車の安定度が損なわれることのない台車設備を提供する。
【解決手段】台車枠体5の一側下面に設けられてレール1上を転動し得るようにした駆動車輪13及び従動車輪17と、台車枠体5の他側下面に設けられて床面2上を転動し得るようにした台車直進用の従動車輪21と、転動面が床面2から浮いた状態で台車枠体5の下面に設けられ、且つ台車4がレール旋回部を旋回する際に旋回用レール上を転動し得るようにした台車旋回用の従動車輪24を備えたものである。台車旋回用の従動車輪24が旋回用レールに沿い上昇すると、台車直進用の従動車輪21は床面2から浮きあがるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は台車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
台車設備の従来の一例は図7に示されている。図中、aは左右2本の無限軌道状のレールであり、そのループの一方側には、複数の自動倉庫ユニットbが配置され、他方側にはコンベヤ等の搬送装置cが配設されている。又、レールaには、左右、前後2個ずつ、合計4個の車輪dを介して台車eが自走し得るように、載置されている。而して、物品は自動倉庫ユニットbと搬送装置cとの間を台車eにより搬送される。
【0003】
斯かる台車設備においては、そのレイアウトは台車eのレールコーナ部の旋回半径により決まるが、台車eの車輪dは、レールコーナ部を旋回するときに旋回中心側となるレールa上をも円滑に転動しなければならないため、レールコーナ部の曲率半径は大きくしなければならず、従って、台車eの旋回半径は大きくなる。その結果、レールaは略旋回半径分の長さだけ自動倉庫ユニットbを配置した領域からはみ出すと共に、レールaの自動倉庫ユニットbと搬送装置cとの間には、台車eの旋回半径で定まる無駄なスペースが必要となるため、設備スペースの有効利用を図ることができない。
【0004】
そこで、図8に示すようにレールaを1本として、台車eを、レールa上を転動する前後2個の車輪dにより支持させると共に、台車eのレールコーナ部走行時に旋回半径中心側となる側を、床面を転動するキャスタのような自在車輪fにより支持させて、台車aのレールコーナ部における旋回半径を小さくするようにした3輪車形式の台車設備が提案されている。なお、図7、図8において、複数の車輪dのうち、少なくとも何れか1個は駆動車輪である。
【0005】
又、台車設備の先行文献としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、床面にモノレールを敷設するとともに、台車の車体面内底部の一側方に、モノレールにより案内される駆動車輪を、水平面内で旋回自在に取り付け、且つ台車車体面内底部の他側方に、前記床面上を走行する2個のキャスタ式の自在車輪を取り付けたものである。
【特許文献1】特開2000−6793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す台車設備においては、レールコーナ部における台車dの旋回半径が小さいため、キャスタ式の自在車輪fの水平方向の動きは複雑な軌跡となる。このため、自在車輪f及び床面には無理な負荷が作用して、自在車輪fを損傷させたり床面を削って傷付ける虞がある。
【0007】
そこで、自在車輪fや床面の損傷を防止するために、自在車輪fの取付け位置を前後にずらして、コーナ部における自在車輪fの水平方向の軌跡が極力複雑とならない位置を探して取付けるようにしているが、自在車輪fの取付け位置をずらすと、台車eの安定度が損なわれ、不具合である。
【0008】
特許文献1の台車設備においては、キャスタ式の自在車輪をモノレール上を転動する車輪とは反対側に前後2個設けているが、コーナ部を旋回する際には、図7の図示例と同様、自在車輪の水平方向への動きは複雑な軌跡となる。このため、自在車輪f及び床面には無理な負荷が作用して、自在車輪fを損傷させたり床面を削って傷付けたりする虞がある。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、台車が小さい旋回半径でレールコーナ部を旋回する際にも旋回半径の小さい側の車輪や床面が損傷することがなく、しかも、台車の安定度が損なわれることのない台車設備を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の台車設備は、コーナ部を有する1本のレールに対し転動し得るよう、台車枠体の一側側に設けられて少なくとも一つは駆動し得るようにした複数の車輪と、前記台車枠体の他側側に設けられて床面に対し転動し得るようにした台車直進用の車輪と、転動面が床面から浮いた状態で台車枠体の下面に設けられると共に、台車が前記レールのコーナ部を旋回する際に前記レールとは別に設けた旋回用レールに対し転動し得るようにした台車旋回用の車輪を備えたものである。
【0011】
本発明の請求項2の台車設備においては、台車直進用の車輪は、台車旋回用の車輪が旋回レールに対し転動する際には、旋回用レールにより床面から浮かされるよう構成されており、請求項3の台車設備においては、旋回用レールはレールにおけるコーナ部の曲率半径の中心位置若しくはその近傍位置を通り設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1〜3記載の台車設備によれば、床面を転動する台車直進用の車輪とは別に台車旋回用の車輪を設けているため、台車が小さい旋回半径でレールコーナ部を旋回する際に、旋回半径の小さい側の台車直進用の車輪や床面を損傷することがなく、しかも、台車の安定度が損なわれることはなく、従って、設備の信頼性が向上するという効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図6は本発明を実施する形態の一例である。図中、1は床面2に敷設されてレールコーナ部が90度に曲折されたレールであり、レールコーナ部1aは所定の曲率半径Rの円弧状に形成されている。又、床面2には、レールコーナ部1aに近接して、レールコーナ部1aの曲率半径Rの中心O側に位置するよう、全体の長さが短い旋回用レール3が敷設されている。旋回用レール3はレールコーナ部1aの曲率半径Rの中心O又はその近傍位置を通るよう配置される。図5の場合は、旋回用レール3はレールコーナ部1aの曲率半径Rの中心Oを通り設置された場合を示している。
【0014】
4はレール1に沿って自走し得るようにした台車である。台車4は、上面に物品を載置し得るようにした台車枠体5と、台車枠体5の左右一側下面に台車枠体5の前後方向へ所定の間隔を置いて設けられた駆動輪ユニット6及び従動輪ユニット7と、台車枠体5の左右他側下面に、台車枠体5の前後方向において駆動輪ユニット6と従動輪ユニット7との中間部に位置するよう、設けられた台車直進用の従動輪ユニット8と、台車枠体5の左右方向における中間部下面に、台車枠体5の前後方向において駆動輪ユニット6と従動輪ユニット7との中間部に位置するよう、設けられた旋回用の従動輪ユニット9とを備えている。
【0015】
駆動輪ユニット6は、台車枠体5の下面に水平方向へ旋回し得るよう取付けられたブラケット10を有し、ブラケット10には駆動装置11により水平軸12を介し駆動されてレール1上を転動し得るようにした駆動車輪13と、レール1を左右から挟むようにした縦型のガイドローラ14が設けられている。
【0016】
従動輪ユニット7は、台車枠体5の下面に水平方向へ旋回し得るよう取付けられたブラケット15を有し、ブラケット15には水平軸16に支持されてレール1上を転動し得るようにした従動車輪17と、レール1を左右から挟むようにした縦型のガイドローラ18が設けられている。なお、従動輪ユニット7は設けずに、複数の駆動輪ユニット6を設置するようにしても良い。
【0017】
台車直進用の従動輪ユニット8は、台車枠体5の下面に固設されたブラケット19を有し、ブラケット19には、水平軸20に支持されて床面2上を転動し得るようにした従動車輪21が設けられている。
【0018】
台車旋回用の従動輪ユニット9は、台車枠体5の下面に固設されたブラケット22を有し、ブラケット22には、水平軸23に支持された従動車輪24が設けられている。従動車輪24の外周は図示例では円筒形であるが、台車旋回時の走行抵抗を小さくするため、球形状にしても良い。
【0019】
而して、従動車輪24は、床面2との間に隙間H1が形成された状態でブラケット22に枢支されており、台車4がレールコーナ部1aを旋回する際には、レールコーナ部1a近傍に設けられた旋回用レール3上を転動し得るようになっている。旋回用レール3の台車進行方向に沿った方向の両側には傾斜面3aが形成されており、従動車輪24は傾斜面3aに案内されて旋回用レール3の上面に到達し、或は上面から床面2まで下降し得るようになっている。又、従動車輪24が傾斜面3aに対し転動して上昇する際には、従動車輪21は床面2から浮きあがるようになっている。
【0020】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
台車4が走行する際には駆動装置11が駆動されて駆動輪ユニット6の駆動車輪13が駆動される。而して、台車4が直進走行する際には、駆動輪ユニット6の駆動車輪13及び従動輪ユニット7の従動車輪17はレール1上を転動し、台車直進用の従動輪ユニット8の従動車輪21は床面2に接地して転動し、台車旋回用の従動輪ユニット9の従動車輪24は、床面2から隙間H1だけ浮上した状態となっている。
【0021】
台車4がレールコーナ部1aへ来て、台車進行方向前方側(図1、図5の紙面で上方側)の駆動輪ユニット6の駆動車輪13がレールコーナ部1aを転動し始めると、台車4は旋回を開始し、旋回用の従動輪ユニット9の従動車輪24は、旋回用レール3の傾斜面3aに沿い上方へ向け転動を開始し、傾斜面3aを上昇後、旋回用レール3の上面を転動する。
【0022】
この際、台車枠体5は、駆動輪ユニット6の駆動車輪13及び従動輪ユニット7の従動車輪17側を支点として、従動輪ユニット8側が上昇する。このため、従動輪ユニット8の従動車輪21が床面2から浮きあがって、床面2と従動車輪21との間に隙間H2が形成される。隙間H2が形成されると台車枠体5は、駆動輪ユニット6及び従動輪ユニット7側から従動輪ユニット8側へ向け若干上り傾斜となるが、傾斜角度は僅かであるため、台車4の走行や物品の搬送に支障が生じることはない。
【0023】
従動車輪21が床面2から浮くと、駆動輪ユニット6の駆動車輪13及び従動輪ユニット7の従動車輪17はレール1を転動すると共に、従動輪ユニット9の従動車輪24は旋回用レール3を転動する。このため、台車4はレールコーナ部1aを旋回し、進行方向が変更される。
【0024】
又、台車4が所定状態に向きを変更すると、台車4の走行に伴い、従動車輪24は旋回用レール3の傾斜面3aに沿い転動しつつ下降し、台車直進用の従動輪ユニット8の従動車輪21は下降して床面2に接地する。従って、台車旋回用の従動輪ユニット9の従動車輪24の下端と床面2との間の隙間はH1となり、以降は従動車輪24が浮いた状態で駆動車輪13及び従動車輪17はレール1を転動し、従動輪ユニット8の従動車輪21は床面2を転動しつつ、台車4は直進走行する。
【0025】
本図示例においては、旋回用の従動輪ユニット9の従動車輪24が転動する旋回用レール3をレールコーナ部1aの曲率半径Rの中心O又はその近傍位置に配置することにより、従動車輪24に無理な負荷を掛けずにレールコーナ部1aの曲率半径Rを小さくすることができる。しかも、台車4の旋回時には、従動車輪24は床面2から浮いているため、床面2から従動車輪24には負荷は掛からない。
【0026】
又、台車4のレールコーナ部1a旋回時には、台車直進用の従動輪ユニット8の従動車輪21は床面2から浮いているため、台車枠体5に対する設置位置に関係なく従動車輪21は複雑な軌跡を描かなくなる。従って、床面2に無理な負荷が掛からない結果、床面2に損傷が生じることがなく、床面2の補強が不要となる。このため、レールコーナ部1aを有する往復式の台車設備に対しても容易に対応することができ、且つ、台車4の安定に最適な位置に従動車輪21を設置することができる。
【0027】
更に、従動車輪21は図示のように1個に限らず、複数個でも良く、従動車輪21の個数に制限されずに台車4の旋回半径を小さくすることができる。
【0028】
なお、本発明の台車設備においては、台車直進用の従動車輪はキャスタ式の車輪であっても使用可能なこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の台車設備の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1のIII−III方向矢視図である。
【図4】台車がレールコーナ部を旋回するときの状態を示す正面図である。
【図5】レールコーナ部及び旋回用レールの平面図である。
【図6】図5のVI−VI方向矢視図である。
【図7】従来の台車設備の一例の平面図である。
【図8】従来の台車設備の他の例の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 レール
1a レールコーナ部(コーナ部)
2 床面
3 旋回用レール
4 台車
5 台車枠体
13 駆動車輪(車輪)
17 従動車輪(車輪)
21 従動車輪(台車直進用の車輪)
24 従動車輪(台車旋回用の車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナ部を有する1本のレールに対し転動し得るよう、台車枠体の一側側に設けられて少なくとも一つは駆動し得るようにした複数の車輪と、前記台車枠体の他側側に設けられて床面に対し転動し得るようにした台車直進用の車輪と、転動面が床面から浮いた状態で台車枠体の下面に設けられると共に、台車が前記レールのコーナ部を旋回する際に前記レールとは別に設けた旋回用レールに対し転動し得るようにした台車旋回用の車輪を備えたことを特徴とする台車設備。
【請求項2】
台車直進用の車輪は、台車旋回用の車輪が旋回レールに対し転動する際には、旋回用レールにより床面から浮かされるよう構成されている請求項1記載の台車設備。
【請求項3】
旋回用レールはレールにおけるコーナ部の曲率半径の中心位置若しくはその近傍位置を通り設けられている請求項1又は2記載の台車設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−327464(P2006−327464A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155368(P2005−155368)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)