説明

合成ガス生成装置

【課題】本発明は、合成ガス生成装置に関し、COを吸収させた電解液の電気分解によってFT反応の原料ガスを生成する場合において、原料ガス中のCOガスの混入割合を低減可能な合成ガス生成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電解器10は、CO吸収済みの電解液で満たされたカソード室26を備えている。カソード室26の電解液の液面上方には、電解液の液面全体を覆うようにCOフィルタ34が設けられている。COフィルタ34は、カソード室26の所定位置に固定されおり、CO分子を通過させずに、H分子およびCO分子を通過させることの可能なサイズの細孔が無数に形成された多孔体から構成される。COフィルタ34によれば、電解液から放出(溶出)したCOガスを空間38に留めつつ、ガス取り出し部36に送られるガス中のHやCOの純度や分圧を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成ガス生成装置に関する。より詳細には、COを電気分解してH、COを含む合成ガスを生成する合成ガス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭、天然ガスといった化石燃料は、熱、電気の生成の原料や、運輸燃料として使用され、現代のエネルギー消費社会を支えている。しかし、このような化石燃料は使い切り燃料であり、その埋蔵量には限りがある。そのため、化石燃料が枯渇した場合の備えが必要であることは言うまでもない。また、化石燃料の燃焼によるCOの大気中への放出は、地球温暖化の一要因となることが知られている。そのため、COの排出量を低減することが、近年の課題となっている。
【0003】
これらの課題を解決する一つの手段として、COを原料とした代替燃料が検討されており、その製造装置や製法に関し各種の提案がなされているところである。例えば、特許文献1には、COの電気分解によって上記代替燃料を生成するCO電解装置が開示されている。このCO電解装置は、具体的に、電解液を蓄えるカソード室の隣に、カソード電極としてのCNT膜と透過室とをこの順に配置し、カソード室の電解液にCOガスをバブリングして吸収(溶解)させながら電気分解するものである。このCO電解装置によれば、CNT膜で液体状の電解生成物(エタノールなど)を生成し、尚且つ、CNT膜の機能によって透過室側に分離できる。
【0004】
また、特許文献6には、電気化学的セルを用いた電気分解によって、COガスと水蒸気とからCOガスとHガスとを生成し、これらの生成ガスを副生成物と分離した上でフィッシャー・トロプシュ反応(FT反応)して上記代替燃料としての炭化水素系燃料(HC)を合成するシステムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、水の電気分解により生じるHやOを電解槽の上方から採集する電解装置において、HやO以外の異物を除去する異物除去フィルタを電解槽上方に配置したものが開示されている。この異物除去フィルタは、メッシュ網に光触媒を形成したものであり、この光触媒の作用によってHガスやOガスに混ざってメッシュ網まで上昇してきた異物を除去することができる。
【0006】
また、特許文献3には、アルコールの電気分解によりHを生成するH生成装置において、副生成物からHのみを分離するための分離膜を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−255018号公報
【特許文献2】特開2010−18886号公報
【特許文献3】特開2005−179128号公報
【特許文献4】特開2006−348326号公報
【特許文献5】特開平9−143779号公報
【特許文献6】特表2009−506213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1のCNT膜では、液体状の電解生成物のみならずガス状の電解生成物(COやH)も生成し、カソード室の上方から系外に排出される。そのため、排出されたガス状の電解生成物を回収し、その上で上記特許文献6のようにFT反応させることができれば、原料COを最大限活用した代替燃料の製造が可能となる。しかし、上記特許文献1の電解装置では、バブリング時に電解液に吸収されなかったCOガスや、電解液中から溶出したCOガスが、ガス状の電解生成物に混入する可能性がある。そうすると、不活性なCOによって、FT反応の反応効率が低下してしまう。従って、原料ガス中のCOの混入割合を如何にして低下させるかが問題となる。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものである。即ち、COを吸収させた電解液の電気分解によってFT反応の原料ガスを生成する場合において、原料ガス中のCOの混入割合を低減可能な合成ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、COを吸収させた電解液を電気分解してHとCOとを含む合成ガスを生成する合成ガス生成装置であって、
陽極を有するアノード室と陰極を有するカソード室とを備え、それぞれの内部にCO吸収電解液を蓄える電解槽と、
前記カソード室におけるCO吸収電解液の液面全体を覆うように固定配置され、COを通過させることなくHおよびCOを通過可能なフィルタと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記電解槽にCO吸収電解液を供給する電解液供給手段と、
前記フィルタの液面対向面からCO吸収電解液の液面までの液面間距離が設定距離よりも短くなるように前記電解液供給手段を制御する電解液供給制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記電解槽にCO吸収電解液を供給する電解液供給手段と、
前記電解液供給手段に接続されると共に、内部に蓄えた電解液にCOを吸収させることが可能なCO吸収手段と、
前記フィルタの固定箇所よりも下側の所定位置に接続され、前記カソード室と前記CO吸収手段とを接続する接続通路と、
前記接続通路の開閉を制御する開閉制御手段と、
前記フィルタの液面対向面とCO吸収電解液の液面との間に形成される空間の圧力を取得する空間圧力取得手段と、
前記空間圧力取得手段によって取得した圧力が設定圧よりも高圧の場合に、前記接続通路を開くように前記開閉制御手段を制御する連通制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れか1つにおいて、
前記フィルタは、H分子およびCO分子を通過させ、かつ、CO分子を通過させないサイズの細孔が形成された多孔体から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、COを通過させることなくHおよびCOを通過可能なフィルタを配置したので、COを吸収させた電解液の電気分解によって生成したガス中のCOの混入割合を低減できる。従って、FT反応の反応効率の低下を良好に抑制できる。また、第1の発明によれば、このフィルタを、カソード室におけるCO吸収電解液の液面全体を覆うように固定配置したので、CO吸収電解液の液面とフィルタとの間に形成される空間において、COの分圧を高めることもできる。そのため、CO吸収電解液からのCOの放出を抑制できると共に、この空間内に蓄積したCOをCO吸収電解液に再吸収させることもできる。従って、電解液中のCO濃度管理の容易化にも繋がる。
【0015】
第2の発明によれば、電解液供給制御手段によって、フィルタの液面対向面からCO吸収電解液の液面までの液面間距離が設定距離よりも短くなるように電解液供給手段を制御できる。そのため、CO吸収電解液の液面とフィルタとの間に形成される空間の圧力を所望圧力に制御できる。従って、CO吸収電解液からのCOの放出を一層抑制できると共に、CO吸収電解液へのCOガスの再吸収も一層促進できる。
【0016】
CO吸収電解液からCOが放出され続けると、CO吸収電解液の液面とフィルタとの間に形成される空間の圧力は、時間の経過と共に高くなり、CO吸収電解液の液面は押し下げられていくことになる。CO吸収電解液の液面が押し下げられれば、陰極とCO吸収電解液との接触面積が低下するので、電気分解の効率が低下してしまう。この点、第3の発明によれば、上記空間の圧力が設定圧よりも高圧の場合に、連通制御手段によって、カソード室とCO吸収手段とを接続する接続通路を開くように開閉制御手段を制御できる。従って、CO吸収電解液の液面を一定以上の高さに維持して、電気分解の効率低下を未然に防止できる。加えて、CO吸収手段に上記空間内のCOを還流できる。よって、CO吸収手段に蓄えられた電解液中のCO吸収量を増やして全体のシステム効率を向上させることが可能となる。
【0017】
第4の発明によれば、H分子およびCO分子を通過させ、かつ、CO分子を通過させないサイズの細孔が形成された多孔体によって、COを吸収させた電解液の電気分解によって生成したガス中のCOの混入割合を良好に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の合成ガス生成装置を含む燃料製造システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の電解器10の概略図である。
【図3】実施の形態2における電解器40の概略図である。
【図4】実施の形態2において実行される電解液注入制御の具体的なフローチャートを示した図である。
【図5】実施の形態3の合成ガス生成装置を含む燃料製造システムの全体構成を示す概略図である。
【図6】図5の電解器50の概略図である。
【図7】実施の形態3において実行されるCO放出制御の具体的なフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
先ず、図1および図2を参照しながら、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態の合成ガス生成装置を含む燃料製造システムの全体構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の合成ガス生成装置は、電気分解によりCOガスおよびHガスを同時に生成する電解器10を備えている。電解器10は、その装置内温度を所定範囲内に制御する温度制御装置(図示しない)付きの電気分解装置である。電解器10の詳細な構成は、図2の説明の際に説明する。
【0020】
電解器10の上流側には、CO吸収(溶解)済みの電解液(例えば、KHCO水溶液)をその内部に貯留する電解液タンク12が設けられている。電解液タンク12内の電解液は、そのCO濃度が設定濃度(例えば、CO飽和状態)に保たれており、図示しないポンプによって電解器10に送られる。
【0021】
電解液タンク12の上流側にはCO吸収器14が設けられている。CO吸収器14は、大気をバブリング導入するための大気流入経路14aを備えており、大気中のCOをその内部に貯留した電解液に吸収させることができる。また、CO吸収器14は、大気放出経路14bをも備えており、この大気放出経路14bからCO濃度の低下した大気を放出させることができる。CO吸収器14内の電解液は、CO吸収の後に図示しないポンプによって電解液タンク12に送られる。
【0022】
また、電解器10の上流側には、水タンク16が設けられている。水タンク16内の水は、図示しないポンプによって電解器10に送られる。なお、本発明における「電解液」とは、電解液タンク12やCO吸収器14内に貯留されている電解液のみを指すのではなく、この電解液と水タンク16内の水とが混合した状態の混合液体をも含めたものを指すものとする。
【0023】
一方、電解器10の下流側には、FT合成器18が設けられている。FT合成器18の内部には、鉄、コバルト、ルテニウム系のFT触媒(図示しない)が設けられている。FT合成器18は、このFT触媒の作用により、電解器10からの合成ガス(CO、H)を炭化水素系燃料(HC)に変換可能に構成されている。
【0024】
FT合成器18におけるFT反応は、下記式(1)で表すことができる。
CO(g)+2H(g)→−[1/n(CH]−(l)+HO(g) ・・・(1)
上記式(1)において、−[1/n(CH]−は、HCを表すものとする。
FT反応により得られたHCは、FT合成器18の下流側の合成燃料タンク20に蓄えられる。
【0025】
次に、図2を参照しながら、電解器10の構成について説明する。図2は、図1の電解器10の概略図である。図2に示すように、電解器10は、CO吸収済みの電解液で満たされた電解槽22を備えている。電解槽22は、陰極24を有するカソード室26と、陽極28を有するアノード室30と、カソード室26とアノード室30とを連結する連結室32と、カソード室26の上方に設けられ図1のFT合成器18に接続されるガス取り出し部36とを備えている。
【0026】
陰極24は、電気分解時にCOを還元しにくい金属(例えばPt)から本体部分が構成され、この本体部分の表面の一部に、電気分解時にCOを選択的にCOに還元するCO還元触媒が設けられている。陽極28は、電気分解時に電解液に溶解しない金属(例えば、Au、Pt)から構成されている。
【0027】
陰極24と陽極28との間に電圧を印加すると、各電極において下記式(2)〜(4)の電気化学反応が起こる。
陰極24:CO+2H+2e→CO+HO ・・・(2)
2H+2e→H ・・・(3)
陽極28:2HO→O+4H+4e ・・・(4)
【0028】
上記式(2)の反応は、陰極24上のCO還元触媒が電解液に接する箇所において起こる。また、上記式(3)の反応は、陰極24の本体部分が電解液に接する箇所において起こる。また、上記式(4)の反応は、陽極28が水に接する箇所において起こる。
【0029】
ところで、HとCOのモル比率をH:CO=2:1(以下、この比率を「最適比率」と称す。)に設定することで、FT反応時のエネルギー効率を向上できることが知られている。本実施形態においては、この点を考慮して、電解器10で生成するHとCOの比率が最適比率となるように、電気分解条件(陰極24と陽極28との間に印加する印加電圧や、電解液中のCO濃度等)を制御している。
【0030】
しかしながら、陰極24からガス取り出し部36に送られるガスには、HガスやCOガスの他、電解液から放出(溶出)したCOガスが含まれる場合があり、このCOガスによって、HガスやCOガスの分圧が低くなり、FT反応時のHCの収率が低下する可能性がある。また、COは不活性であるため、FT反応を阻害する可能性もある。更に、電解液からCOが放出されることは、電解液中のCO濃度の低下を意味するので、電解器10で生成するHとCOの比率が最適比率から乖離する要因となり得る。
【0031】
そこで、本実施形態においては、図2に示すように、カソード室26の電解液の液面上方に、電解液の液面全体を覆うようにCOフィルタ34を設けている。COフィルタ34は、カソード室26の所定位置に固定されおり、CO分子(短径:約3.2Å、長径:約5.4Å)を通過させずに、H分子(短径:約2.0Å、長径:約2.7Å)およびCO分子(短径:約3.3Å、長径:約4.2Å)を通過させることの可能なサイズの細孔が無数に形成された多孔体から構成される。COフィルタ34としては、その平均細孔径が4.5〜5.0Åのゼオライトが好ましく用いられる。
【0032】
COフィルタ34によれば、不純物であるCOを除去でき、ガス取り出し部36に送られるガス中のHやCOの純度や分圧を高めることができるので、FT反応時のHCの収率低下を良好に抑制できる。また、ガス取り出し部36に送られるガス中のCOの混入によるFT反応の阻害を良好に抑制できる。また、図2に示すように、COフィルタ34が設けられることで、電解液の液面とCOフィルタ34との間の空間38においてCOの分圧を高めることができるので、電解液からのCOの放出を抑制できると共に、空間38に蓄積したCOガスを電解液に再吸収させることもできる。従って、電解液のCO濃度を設定濃度に維持できるので、電解器10で生成するHとCOの比率を最適比率に保つことが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態においては、電解槽22が上記第1の発明における「電解槽」に、COフィルタ34が上記第1の発明における「フィルタ」に、それぞれ相当する。
【0034】
実施の形態2.
次に、図3および図4を参照しながら、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態においては、上記実施の形態1で説明した燃料製造システムを前提とし、図3の水位計42の出力を用いて図4に示す電解液注入制御を実行することを特徴とする。そのため、上記実施の形態1と共通する構成については図中に同一の符号を付し、その説明を省略しまたは簡略化するものとする。
【0035】
図3は、本実施形態における電解器40の概略図である。図3に示すように、電解器40は、COフィルタ34の固定位置の直下のカソード室26に水位計42を備えている。水位計42は、カソード室26の液面の高さを検出可能に構成されている。
【0036】
上記実施の形態1で述べたように、陰極24と陽極28との間に電圧を印加すると、陽極28上で上記式(4)の反応が起こり、その結果、HOが消費される。そのため、電解槽22の液面は経時的に低下していくことになる。そこで、本実施形態においては、水位計42を用いて電解液の液面の高さを測定しながら、電解液の液面とCOフィルタ34との間に気相(つまり、上記実施の形態1で説明した空間38)が生じないように電解液および/または水を電解槽22に供給することとしている(電解液注入制御)。
【0037】
電解液注入制御を実行すれば、電解液の液面とCOフィルタ34との間の気相の体積をほぼゼロに近づけて、その全圧を高めることができる。そのため、電解液からのCOの放出を一層抑制できると共に、電解液へのCOガスの再吸収も一層促進できる。従って、電解器10で生成するHとCOの比率を、最適比率に近い値に保つことが可能となる。
【0038】
図4は、本実施形態において実行される電解液注入制御の具体的なフローチャートを示した図である。なお、図4に示すルーチンは、陰極24と陽極28との間に電圧を印加している間、繰り返し実行されるものとする。
【0039】
図4に示すルーチンでは、先ず、水位計42からカソード室26の液面高さが取得される(ステップ100)。続いて、この液面高さが予め設定した所定レベルを下回るか否かが判定される(ステップ110)。本実施形態においては、この所定レベルが満水レベル、つまり電解液の液面と、COフィルタ34の底面とが接する高さに設定されているものとする。
【0040】
ステップ110において、液面高さが所定レベルを下回ると判定された場合には、電解液タンク12から電解液および/または水タンク16から水が電解槽22に注入される(ステップ120)。なお、注入される電解液および水の総量は、電気分解によって消費された水量に応じて別途調整されるものとする。また、この消費水量は、例えば水位計42から取得した液面高さに基づいて推定されるものとする。一方、液面高さが所定レベルを下回る場合には、電解液および/または水の注入を中止する(ステップ130)。
【0041】
以上、図4に示したルーチンによれば、液面高さが満水レベルを下回ると判定された場合に電解液および/または水が電解槽22に注入されるので、COフィルタ34と液面の間の気相の体積をほぼゼロに近づけて、その全圧を高めることができる。従って、電解器10で生成するHとCOの比率を、最適比率に近い値に保つことが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態においては、電解液タンク12および/または水タンク16が上記第2の発明における「電解液供給手段」に相当する。また、本実施形態においては、図4のルーチンを実行することにより上記第2の発明における「電解液供給制御手段」が実現されている。
【0043】
実施の形態3.
次に、図5乃至図7を参照しながら、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態においては、上記実施の形態1で説明した燃料製造システムを前提とし、図6の圧力計54の出力を用いて図7に示すCO放出制御を実行することを特徴とする。そのため、上記実施の形態1と共通する構成については図中に同一の符号を付し、その説明を省略しまたは簡略化するものとする。
【0044】
図5は、実施の形態3の合成ガス生成装置を含む燃料製造システムの全体構成を示す概略図である。図5に示すように、本実施形態の合成ガス生成装置は、図1の電解器10同様、電気分解によりCOガスおよびHガスを同時に生成する電解器50を備えている。電解器50は、CO放出経路52を介してCO吸収器14と接続されている。CO吸収器14は、CO放出経路52の他に、大気をバブリング導入するための大気流入経路14aと大気放出経路14bとを備えている。CO放出経路52を流れるガス中のCOや、大気流入経路14aを流れる大気中のCOは、CO吸収器14内の電解液に吸収され、大気放出経路14bを経由して外部に放出される。
【0045】
また、図6は、本実施形態における電解器50の概略図である。図6に示すように、カソード室26は、COフィルタ34の固定位置よりも下側においてCO放出経路52と接続している。また、カソード室26がCO放出経路52と接続する接続口近傍の放出経路52には、圧力計54が設けられている。圧力計54は、空間38内の圧力を検出可能に構成されている。また、圧力計54の近傍のCO放出経路52には、CO放出経路52を開閉する遮断弁56が設けられている。
【0046】
上記実施の形態1で述べたように、COフィルタ34を設けることで空間38においてCOの分圧を高めることができる。しかしながら、経時的に見ると、空間38においては、COの分圧だけでなく全圧も上昇するので、電解液の液面が押し下げられていくことになる。電解液の液面が押し下げられれば、陰極24上のCO還元触媒が電解液に接触する面積が低下する。そうすると、電気分解の効率が低下し、或いは、電解器10で生成するHとCOの比率が最適比率から乖離する要因となり得る。そこで、本実施形態においては、圧力計54を用いて空間38の圧力を測定し、空間38の全圧が一定値以下になるように遮断弁56の開閉を制御することとしている(CO放出制御)。
【0047】
CO放出制御を実行すれば、電解液の液面を一定以上の高さに維持できる。そのため、上述した電気分解の効率低下や、最適比率からの乖離といった問題を未然に防止できる。また、空間38のCOガスは、高圧かつ高濃度である。従って、CO放出制御を実行すれば、CO吸収器14でのCO吸収量を増やして全体のシステム効率を向上させることが可能となる。
【0048】
図7は、本実施形態において実行されるCO放出制御の具体的なフローチャートを示した図である。なお、図7に示すルーチンは、陰極24と陽極28との間に電圧を印加している間、繰り返し実行されるものとする。
【0049】
図7に示すルーチンでは、先ず、圧力計54から空間38の圧力Paが取得される(ステップ140)。続いて、この圧力Paが閾値(例えば、20kPa)よりも高いか否かが判定される(ステップ150)。そして、圧力Paが閾値よりも高いと判定された場合には、空間38内の圧力を低下させるべく遮断弁56が開かれ、空間38内のCOガスがCO放出経路52側に放出される(ステップ160)。一方、圧力Paが閾値以下であると判定された場合には、遮断弁56が閉じられる(ステップ170)。
【0050】
以上、図7に示したルーチンによれば、空間38の圧力Paが閾値よりも高いと判定された場合にCOをCO放出経路52側に放出してCO吸収器14に還流できる。従って、電解液の液面を一定以上の高さに維持できるので、電気分解の効率低下や最適比率からの乖離といった問題を未然に防止できる。また、CO吸収器14でのCO吸収量を増やして全体のシステム効率を向上させることが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態においては、電解液タンク12が上記第3の発明における「電解液供給手段」に、CO吸収器14が上記第3の発明における「CO吸収手段」に、CO放出経路52が上記第3の発明における「接続通路」に、遮断弁56が上記第3の発明における「開閉制御手段」に、圧力計54が上記第3の発明における「空間圧力取得手段」に、それぞれ相当する。また、本実施形態においては、図7のステップ150〜170の処理を実行することにより上記第3の発明における「連通制御手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0052】
10,40,50 電解器
12 電解液タンク
14 CO吸収器
14a 大気流入経路
14b 大気放出経路
16 水タンク
18 FT合成器
20 合成燃料タンク
22 電解槽
24 陰極
26 カソード室
28 陽極
30 アノード室
32 連結室
34 COフィルタ
36 ガス取り出し部
38 空間
42 水位計
52 CO放出経路
54 圧力計
56 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COを吸収させた電解液を電気分解してHとCOとを含む合成ガスを生成する合成ガス生成装置であって、
陽極を有するアノード室と陰極を有するカソード室とを備え、それぞれの内部にCO吸収電解液を蓄える電解槽と、
前記カソード室におけるCO吸収電解液の液面全体を覆うように固定配置され、COを通過させることなくHおよびCOを通過可能なフィルタと、
を備えることを特徴とする合成ガス生成装置。
【請求項2】
前記電解槽にCO吸収電解液を供給する電解液供給手段と、
前記フィルタの液面対向面からCO吸収電解液の液面までの液面間距離が設定距離よりも短くなるように前記電解液供給手段を制御する電解液供給制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の合成ガス生成装置。
【請求項3】
前記電解槽にCO吸収電解液を供給する電解液供給手段と、
前記電解液供給手段に接続されると共に、内部に蓄えた電解液にCOを吸収させることが可能なCO吸収手段と、
前記フィルタの固定箇所よりも下側の所定位置に接続され、前記カソード室と前記CO吸収手段とを接続する接続通路と、
前記接続通路の開閉を制御する開閉制御手段と、
前記フィルタの液面対向面とCO吸収電解液の液面との間に形成される空間の圧力を取得する空間圧力取得手段と、
前記空間圧力取得手段によって取得した圧力が設定圧よりも高圧の場合に、前記接続通路を開くように前記開閉制御手段を制御する連通制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の合成ガス生成装置。
【請求項4】
前記フィルタは、H分子およびCO分子を通過させ、かつ、CO分子を通過させないサイズの細孔が形成された多孔体から構成されることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の合成ガス生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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