説明

合成樹脂製のなす環

【課題】バッグ、袋物などの商品に固定した止具に簡易に取り付けることができ、頑丈な構造で組立てが簡易にできる合成樹脂製のなす環を提供する。
【解決手段】なす環は、本体1とフック体2および支持環3から形成し、本体1は基部10の下面にフック部22を封鎖する抜止片11とフック体2を垂直面内で回動させる弾性片12とを並設し、基部10の表裏面に軸部13を設け、フック体2は本体1の基部10を表裏で被覆し、軸部13を挿入できる孔部24を備えた一対の側板25を設け、側板25の内側に収容凹部26を設けて基部10と弾性片12を収容し、フック体2の先端が抜止片11の先端に接近または離間する方向へ回動し、基部10の上端に支持環3を一体に設けるか、または水平に回動できるように軸支したなす環である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショルダーバッグ、リュックサックなどに用いられるベルトを挿通して、バッグ、袋物等に取り付けられた止具に対し、容易に引掛けて連結することができる合成樹脂製のなす環に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡単に取り扱いができるなす環に仕上げるため、ショルダーバッグなどのベルトを取り付けることができる環状の枠体あるいは支持環と、フックと弾性片を並設したフック体を枠体に対し、回動自在に軸支したなす環が知られている。例えば図9に示すように、1本の基杆と左右一対の転換杆を連結し、全体が二等辺三角形を呈し、左右一対の転換杆の中央に外側が拡径に広がった孔状の開口部を備え、この開口部の内側の縮径部分に切り込みを入れた切口を設けて変形できるように形成した保持具と、基板の一面に軸部を設け、軸部の先端に膨大状の拡大部を形成し、基板の他面にフック部と弾性的に変形できる閉鎮舌片を並設したフック本体を形成し、前記保持具の開口部に対し、フック本体の基板に突設した軸部の先端の拡大部を挿入し回動自在に形成したなす環が知られている。
【特許文献1】特許第2932138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前項で述べた図9に示すなす環は、ベルトを取り付けた保持具に対し、フック本体を回動自在に軸支したタイプであるから、バッグ、袋物などに取り付けた止具に対し、フック本体を水平面内で回動しながら取付位置を調整することができる便利さがある。しかしながらフック本体におけるフック部は基板と一体であるため、閉鎮舌片を押圧して弾性変形させ、バッグ、袋物などに固定した止具になす環を取り付ける。従って閉鎮舌片は太く頑丈な閉鎮舌片に形成することができないので、大きな力がなす環に加わったとき、閉鎮舌片が折れたり破損する恐れがある。またなす環をバッグ、袋物などの止具に取り付ける際、フック本体が固定され、単に水平面内で回動するのみであるから、取付操作が面倒であるなどの問題点がある。
【0004】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、なす環におけるフック体のフック部を抜止片を備えた本体に対し自由に垂直面内で回動できるように装着し、なす環をショルダーバッグ、袋物などの物品に固定した止具にきわめて簡易に取り付けることができ、またなす環自体を頑丈な構造に形成することができ、組立ても簡易にできる合成樹脂製のなす環を提供することが主たる目的である。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、ベルトを取り付ける支持環と抜止片を備えた本体とを合成樹脂を用いて一体成形手段によって形成したタイプで製作が容易な合成樹脂製のなす環を提供することが目的である。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、ベルトを取り付ける支持環に対し、抜止片を備えた本体とを水平面内で回動できるように形成したタイプのなす環で取付操作が簡易にできる合成樹脂製のなす環を提供することが目的である。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、フック体が抜止片を備えた本体に対して、フック体の先端が抜止片の先端に接近する方向へ回動する動作を規制でき、フック体の先端と抜止片の先端とが接することによる回動の規制と協働して、フック体が過剰に回動できないように形成した合成樹脂製のなす環を提供することを目的とする。
【0008】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明の目的に加え、フック体を押圧操作して回動させることにより、フック体の先端と抜止片の先端との間に、物品に固定した止具を通すための間隙を開放または閉鎖することができる合成樹脂製のなす環を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、合成樹脂製の本体1とフック体2とを有し、本体1に設けた基部10の下面に抜止片11と弾性片12とが垂下する形で並設し、この基部10の表面と裏面とから突出する軸部13を設け、フック体2に設けた基部23には、本体1の基部10の表裏面を被覆する表裏一対の側板25を設け、この側板25の内側に基部10と弾性片12とを収容することができる収容凹部26を設け、また側板25に軸部13が挿入することができる孔部24を設け、軸部13が孔部24に挿入した状態で、フック体2が軸部13を中心にして、フック体2の先端が抜止片11の先端に接近する方向と、フック体2の先端が抜止片11の先端から離間する方向とに回動可能に装着した合成樹脂製のなす環を主な構造とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、本体1に設置した基部10の上方に、環状を呈するベルトを取り付ける支持環3を一体成形手段で形成した合成樹脂製のなす環である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、頂端に膨大状の頭部18を備えた断面円形の首部17を、本体1に設置した基部10の上側に上方へ突出するように設け、この頭部18が嵌入して抜脱することができない挿入孔37を環状の支持環3に設け、支持環3をフック体2が回動する垂直面内と直交する水平面内で回動できるように形成した合成樹脂製のなす環である。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、本体1の側面に係合突部15を設け、フック体2の収容凹部26の上端に設けた当接部31と係合突部15とが対向して当接可能に形成した合成樹脂製のなす環である。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明の構成に加え、フック体2の先端は抜止片11の先端から離間する方向へフック体2が回動した時に、支持環3に接近する姿勢となって抜止片11の先端との間に間隙を形成し、抜止片11の先端へ接近する方向へフック体2が回動した時に、支持環3から離間する姿勢となって抜止片11の先端と接する合成樹脂製のなす環である。
【発明の効果】
【0014】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、合成樹脂製の本体とフック体とを有し、本体の基部の下面に抜止片と弾性片とを並設し、該基部の表裏面に軸部を突設し、フック体の基部は本体の基部の表裏面を被覆する一対の側板を設け、該側板の内側に基部と弾性片とを収容する収容凹部を設け、側板に軸部が挿入する孔部を設け、フック体が軸部を中心に、フック体の先端が抜止片の先端に接近する方向と、フック体の先端が抜止片の先端から離間する方向とに回動可能に装着したことによって下記の効果を奏する。
【0015】
フック体をなす環の垂直面内、すなわちなす環の表裏方向の軸を中心に回動させることができるので、フック体を指で押圧して操作することにより、フック体の先端と抜止片の先端との間に、バッグ、袋物等の物品に固定した止具を挿通させるための間隙を形成することができ、フック体を物品に対し容易に引っ掛けて装着することができる。また、フック体は抜止片よりも分厚く頑丈であり、このフック体を押圧操作するので、従来品のように薄板の抜止片を押圧操作して弾性変形させるのとは異なり、操作時にフック体あるいは抜止片が折れたり変形したりして破損することがなく、頑丈ななす環に仕上げられる効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、本体の基部の上方に環状の支持環を一体に成形したことによって、抜止片と弾性片とを備えた本体とベルトなどを取り付ける支持環を一体成形で形成しているから、部品点数が少なく、製品コストを削減でき、組立ての簡単ななす環に仕上げることができる効果がある。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、頂端に膨大頭部を有する首部を本体の基部の上方に突設し、該頭部が嵌入し抜脱不能の挿入孔を支持環に設け、支持環を回動可能に形成したことによって、抜止片と弾性片とを備えた本体に対し、ベルトなどを取り付ける支持環をなす環の縦軸に対して水平面内で回動できるように装着しているので、バッグ、袋物などに固定した止具へのなす環の取り付けがきわめて簡単に位置調整ができ、取付操作が簡易にできる効果がある。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、本体の側面に係合突部を設け、フック体の収容凹部の上端に設けた当接部と当接可能に形成したことによって、本体に対してフック体が正規の位置で回動を停止し、フック体の過剰な回動を簡単な構造で規制し、耐久性のあるなす環に仕上げることができる効果がある。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明の効果に加え、フック体の先端は、抜止片の先端から離間する方向に回動した時に、支持環に接近する姿勢となって抜止片の先端との間に間隙を形成し、抜止片の先端へ接近する方向に回動した時に、支持環から離間する姿勢となって抜止片の先端と接することによって、フック体を回動させることにより、フック体を押圧操作した側とは反対側の位置で、フック体の先端と抜止片との先端との間に、物品に固定した止具を通す間隙を確実に形成することができ、この間隙の開放または閉鎖操作を容易に行うことができる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明におけるなす環は、第1の形態として図1〜4に示すなす環と、第2の形態として図5〜8に示すなす環とがある。いずれのなす環も合成樹脂としてポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用い、射出成形手段によって、なす環を成形する。
【0021】
第1形態のなす環は、本体1とフック体2および支持環3とから形成し、本体1は板状の基部10の下面にフック体2の開口部分を封鎖する役目を果す抜止片11と、フック体2を垂直面内で回動させる役目を果す弾性片12とを並設し、基部10の表裏面の中央にはフック体2の孔部24と係合できるように軸部13を設け、軸部13の先端は弾性片12の付け根側に向って下り傾斜する斜面14を形成して孔部24との係合を容易にしている。基部10の上面に環状の支持環3を一体に連接しベルトの挿通ができるように形成し、また弾性片12の外側付け根には係合突部15を突設する。
【0022】
フック体2は本体1の基部10と弾性片12とを表裏面で被覆する形で基部23を設け、この基部23の中央に軸部13が嵌る孔部24を設ける。基部23は表裏に対向する一対の側板25を有し、側板の内側に基部10と弾性片12とを収容することができる収容凹部26を配置している。側板25の内面にはこの孔部24に向けて本体1の軸部13をガイドできる凹溝状のガイド部28を開口部27から設ける。この側板25の外側は連結壁30で表裏を連結するとともに、連結壁30の上端に当接部31を設けて本体1の係合突部15と当接させる。側板25の内側は開放されて本体1の基部10と弾性片12を収容できる収容凹部26を形成し、収容した弾性片12によってフック体2を垂直面内で回動させ、フック部22の先端に設けた係合凹部29を抜止片11の先端に設けた係合凸部16と係合させる。
【0023】
第2形態のなす環は、本体1とフック体2および支持環3とから形成し、本体1は板状の基部10の下面にフック体2の開口部分を封鎖する役目を果す抜止片11と、フック体2を垂直面内で回動させる役目を果す弾性片12とを並設し、基部10の表裏面の中央にはフック体2の孔部24と係合できるように軸部13を設け、軸部13の先端は弾性片12の付け根側に向って下り傾斜する斜面14を形成して孔部24との係合を容易にしている。基部10の頂面19には首部17を突設し、その先端に膨大状の頭部18を設ける。環状の支持環3は下側片35の中央に前記頭部18が嵌入できる挿入孔37を設けるが、挿入孔37の下端には拡径状の摺接面38を設けて本体1の頂面19と接触し安定化を図る。また挿入孔37の中間部分は首部17とは空隙のある大径部39を形成する。本体1と支持環3とは首部17の連結機構によって回動自在に装着する。
【0024】
フック体2は板状の基部23の両側の中央に孔部24を設けて本体1の軸部13を嵌合する。基部23の上端は本体1の頂面19と合致する頂面32を形成して支持環3の摺接面38と接触して回動する。基部23は表裏に対向する一対の側板25を有し、側板25の内側に本体1の基部10と弾性片12とを収容できる収容凹部26を形成している。側板25の内面には本体1の軸部13をガイドできる凹溝状のガイド部28を開口部27から孔部24へ向けて凹設する。側板25の側面は連結壁30で表裏を連結するとともに、連結壁30の上端に当接部31を設けて本体1の係合突部15と当接させる。収容凹部26に収容した弾性片12によってフック体2を垂直面内でフック部22と抜止片11とが接する方向へ回動させ、フック部22の先端に設けた被係合面33を本体1の抜止片11の先端に設けた係合面20と係合させる。
【実施例1】
【0025】
図1〜4に示す実施例1のなす環は、前項の第1形態で説明したとおり、全体が熱可塑性樹脂を用いて射出成形し、本体1とフック体2および支持環3とから形成し、本体1は1枚の板状の基部10を有し、基部10の下面にフック体2におけるフック部22の開口部分を封鎖するための抜止片11と、フック体2を垂直面内で回動させ、フック部22の開口部分が封鎖された姿勢と開放された姿勢とに変位させるための弾性片12とを並行して設け、抜止片11は従来品のように薄板の弾性板とは異なり、太い角柱から形成し、基部10の左右一側面と連続する外側面を有し、この外側面における先端に係合凸部16を設け、係合凸部16はフック部22に設けた係合凹部29に対向して配置され、係合凹部29へ嵌り込んで係合することができ、弾性片12は逆くの字状を呈し、基部10から突出する基端部と、抜止片11側へ向けて湾曲する中間部と、フック体2の収容凹部26内に接する先端部とを有している。
【0026】
基部10における抜止片11と弾性片12との間の下面は円弧状の湾曲面に形成し、弾性片12の基端部は湾曲面と所定の間隔を空けて並行に配置されている。これにより弾性片12が弾性変形して基部10側に接近しても、弾性片12の基端部は湾曲面との間の所定間隔内で変形し、基部10と接触することがなく、弾性片12の弾性変形を妨げることがない。また、弾性片12の中間部は、抜止片11へ向けて接近しながら湾曲するように形成されているので、弾性片12の長さが長くなり、弾性変形し易くすることができる。さらに、弾性片12の先端部は、フック体2の収容凹部26内に配置されているので、弾性片12の先端部とフック部22に引っ掛けられた物品の止具とが接触し合うことが無く、止具が先端部を破損させたりする恐れがない。基部10の左右の他側面、すなわち弾性片12の基端部の付け根外側には、突起状の係合突部15を設けている。係合突部15はフック体2に設けた当接部31に対向して配置され、当接部31と当接して、フック体2がそれ以上回動できないように形成する。
【0027】
基部10の表面と裏面の中央には表裏方向へ突出する軸部13を設けてフック体2の孔部24と嵌合させ、この軸部13の先端に弾性片12の付け根、すなわち弾性片12が基部10と連結する基端部側に向けて下り傾斜する斜面14を形成してフック体2の孔部24と容易に嵌合できるように形成する。軸部13の先端は、軸部13の中心点を通る直線を挟んだ一方の半部が斜面14に形成され、他方の半部が平坦面に形成されている。これにより、軸部13が孔部24に嵌り込んだ時に、抜脱しないように係止するために必要な肉厚を確保している。基部10の上面には上側片36と下側片35からなる長円形の支持環3を一体に連接し、ショルダーバッグなどのベルトが挿通できるように形成する。
【0028】
フック体2は、本体1の基部10と弾性片12とを内部に収容する基部23を有し、基部23は、本体1の基部10と弾性片12とを収容するための収容凹部26と、この収容凹部26と連通し、収容凹部26へ基部10と弾性片12とを挿入するための開口部27とを有している。収容凹部26は、表裏方向に一対の側板25が配設され、左右方向の一側面すなわちフック体2の内側面に開口部27を配し、左右方向の他側面すなわちフック体2の外側面に一対の側板25を連結する連結壁30が設けられており、一対の側板25と連結壁30とが収容凹部26を囲む周壁を構成している。一対の側板25は、本体1の基部10と弾性片12の表裏面を被覆し、側板25の表裏を貫通する孔部24を設けて、この孔部24へ基部10に設けた軸部13が挿通できるように形成する。また、一対の側板25の内面には、開口部27から孔部24へ向けて凹溝状のガイド部28が設けられており、基部10が収容凹部26内に挿入された際に、軸部13が孔部24へ向けて移動するのをガイドする。ガイド部28は開口部27から孔部24へ向うにつれて徐々に幅狭に形成されており、軸部13をガイド部28内へ入り込ませ易いようにしている。弾性片12の先端は収容凹部26の底面と当接し、フック体2を弾発的に押圧して、フック部22の先端が常に抜止片11の先端に向けて移動するように付勢している。
【0029】
抜止片11がフック部22を閉鎖する状態を維持するために、弾性片12の付勢に抗して、フック体2が回動しないようにする回動防止手段が必要である。その手段としては、まず、抜止片11の先端外側面とフック部22の先端内側面とをフック体2の回動方向に対向して配置し、各々が当接することにより、フック部22が抜止片11を乗り越えることなく、フック体2を回動しないようにしている。さらに、第2の手段として、連結壁30の上端に、本体1に設置した係合突部15と当接することができる当接部31を設け、当接部31と係合突部15とは、フック体2の回動方向に対向して配置されており、各々が当接することで、フック体の回動を確実に阻止することができる。フック体2の収容凹部26の底面から先端にかけてフック部22が形成され、フック部22の先端には、抜止片11の係合凸部16と嵌り合う係合凹部29を設けている。係合凸部16と係合凹部29は、抜止片11とフック部22の表裏方向に重なり合う状態で嵌りあっているので、抜止片11またはフック部22を表裏方向から押す外力が加わっても、抜止片11とフック部22の配置が変位することが無く、抜止片11がフック部22を閉鎖した状態を確実に維持することができる。
【0030】
このなす環の使用態様は、最初に本体1の基部10に突設した軸部13をフック体2における基部23の側板25の内面に形成した凹溝状のガイド部28に沿って収容凹部26内へ嵌入する。このとき、軸部13の斜面14が側板25と接し、側板25の間隔を押し拡げる。軸部13を孔部24に嵌合させると側板25は元の形状に弾性復帰して、軸部13は孔部24より抜脱不能となる。また、これと同時に、図2に示すように弾性片12をフック体2の収容凹部26に収容して、なす環の組立てが完了する。組立てが終ったなす環はフック体2をその外側面側から押圧して、軸部13を中心に回動させることで図4に示すように弾性片12と基部10へ接近する方向へ弾性変形させ、弾性片12の弾力に抗して抜止片11とフック部22とが離間する方向へ移動し、各々の間に間隙をつくり、フック部22にバッグなどに固定した止具を収容して引掛ける。フック体2の外側面の押圧を解除すると、弾性片12の復帰によってフック部22と抜止片11とが接触する方向へ移動し、各々の先端が当接して係合させる。
【実施例2】
【0031】
図5〜8に示す実施例2のなす環は、前項の第2形態で説明したとおり、全体が熱可塑性樹脂を用いて射出成形し、本体1とフック体2および支持環3とから形成し、本体1は板状の基部10を有し、基部10の下面に、フック体2におけるフック部22の開口部分を封鎖するための抜止片11と、フック体2を垂直面内で回動させ、フック部22の開口部分が封鎖された姿勢と開放された姿勢とに変位させるための弾性片12とを並行して設け、抜止片11は、角柱状に形成され、基部10の左右の一側面と連続する外側面を有し、この外側面における先端を傾斜した斜面として、フック部22の被係合面33と当接できる係合面20を形成する。弾性片12は、逆くの字状を呈し、基部10から突出する基端部と、抜止片11側へ向けて湾曲する中間部と、フック体2の収容凹部26内に接する先端部とを有している。基部10における抜止片11と弾性片12との間の下面は円弧状の湾曲面に形成され、弾性片12の基端部は湾曲面と所定の間隔を空けて並行に配置され、弾性片12が弾性変形して基部10側に接近しても、弾性片12の基端部は湾曲面との間の所定間隔内で変形し、基部10と接触することがなく、弾性片12の弾性変形を妨げることがない。
【0032】
弾性片12の中間部は、抜止片11へ向けて接近しながら湾曲するように形成されているので、弾性片12の長さが長くなり、弾性変形し易くすることができる。さらに、弾性片12の先端部は、フック体2の収容凹部26内に配置されているので、弾性片12の先端部とフック部22に引っ掛けられた物品の止具とが接触し合うことが無く、止具が先端部を破損させたりする恐れがない。基部10の左右の他側面、すなわち弾性片12の基端部の付け根外側には、突起状の係合突部15を設け、係合突部15はフック体2に設けた当接部31に対向して配置され、当接部31と当接して、フック体2がそれ以上回動できないように形成する。基部10の表面と裏面の中央には表裏方向へ突出する軸部13を設けてフック体2の孔部24と嵌合させ、この軸部13の先端は弾性片12の付け根すなわち弾性片12が基部10と連結する基端部側に向けて下り傾斜する斜面14を形成してフック体2の孔部24と容易に嵌合できるように形成する。基部10の頂面19には基部10と同厚の断面円形の首部17を突設し、その先端に膨大状の傘形の頭部18を設ける。
【0033】
支持環3は、上側片36と下側片35からなる矩形状に形成し、下側片35の中央には前記頭部18が嵌入できる挿入孔37を設ける。この挿入孔37の下面には拡径状の摺接面38を設け、本体1の頂面19すなわち下面とは反対側の上面と接触して支持環3が水平方向に回動することの安定化を図る。挿入孔37の中間部分は、図6に示したように首部17とは空隙のある大径部39を設け、挿入孔37の上縁には小径部40を設けている。大径部39は頭部18の直径と同径もしくは僅かに大きい直径であり、頭部18を挿入孔37内へ容易に挿入できるようにしている。一方、小径部40は頭部18の直径よりも小さい直径であり、頭部18が小径部40を弾性変形させて、挿入孔37の上縁から突出した後においては、頭部18が小径部40から抜けとれないようにする。このとき、首部17は小径部40よりも小さい直径であるので、小径部40内を自由に回動することができる。この頭部18、首部17、挿入孔37とが連結機構を構成し、本体1と支持環3とは首部17の連結機構によって、なす環の水平面内で自由に回動できるように形成する。
【0034】
フック体2は、本体1の基部10と弾性片12とを内部に収容する基部23を有し、基部23は、本体1の基部10と弾性片12とを収容するための収容凹部26と、この収容凹部26と連通し、収容凹部26へ基部10と弾性片12とを挿入するための開口部27とを有している。この収容凹部26の底面からフック体2の先端にかけてフック部22が形成され、収容凹部26は、表裏方向に一対の側板25が配設され、左右方向の一側面すなわちフック体2の内側面に開口部27を配し、左右方向の他側面すなわちフック体2の外側面に一対の側板25を連結する連結壁30が設けられ、一対の側板25と連結壁30とが収容凹部26を囲む周壁を構成している。一対の側板25は、本体1の基部10と弾性片12の表裏面を被覆し、側板25の表裏を貫通する孔部24を設けて、この孔部24へ基部10に設けた軸部13が挿通できるように形成する。また、一対の側板25の内面には、開口部27から孔部24へ向けて凹溝状のガイド部28が設けられており、基部10が収容凹部26内に挿入された際に、軸部13が孔部24へ向けて移動するのをガイドする。弾性片12の先端は収容凹部26の底面と当接し、フック体2を弾発的に押圧して、フック部22の先端が常に抜止片11の先端に向けて移動するように付勢している。
【0035】
抜止片11がフック部22を閉鎖する状態を維持するために、弾性片12の付勢に抗して、フック体2が回動しないようにする回動防止手段が必要である。その手段としては、まず、抜止片11の先端とフック部22の先端とをフック体2の回動方向に対向して配置し、各々が当接することにより、フック部22が抜止片11を乗り越えることなく、フック体2を回動しないようにしている。すなわち、フック部22の内側面における先端を傾斜した斜面として、抜止片11の係合面20と当接することができる被係合面33を設け、抜止片11の係合面20とフック部22の被係合面33とをフック体2の回動方向に対向して配置している。対向する係合面20と被係合面33とを斜面とすることにより、接触面積を広く確保することができ、フック体2の回動を確実に阻止することができる。さらに、第2の手段として、連結壁30の上端に、本体に設置した係合突部15と当接することができる当接部31を設け、当接部31と係合突部15とは、フック体2の回動方向に対向して配置されており、各々が当接することで、フック体の回動をより確実に阻止することができる。
【0036】
このなす環の使用態様は、本体1の基部10に突設した軸部13をフック体2における基部23の側板25の内面に形成した凹溝状のガイド部28に沿って収容凹部26内へ嵌入する。このとき軸部13の斜面14が側板25に接し、側板25の間隔を押し拡げる。軸部13を孔部24に嵌合させると側板25は元の形状に弾性復帰して、軸部13は孔部24から抜脱不能となる。また、これと同時に、図6に示すように弾性片12をフック体2の収容凹部26に収容する。次に本体1の頂面19に形成した膨大状の頭部18を有する首部17を支持環3の下側片35に形成した挿入孔37に挿入し、図6,7に示すように挿入孔37の摺接面38と、本体1の基部10の頂面19およびフック体2の側板25に設置した頂面32と摺接し、水平面内で自由に回動できるように形成してなす環の組立てが完了する。組立てが終ったなす環は、支持環3を所定位置に固定した後、フック体2をその外側面から押圧して、軸部13を中心に回動させることで図8に示すように弾性片12を基部10に接近する方向へ弾性変形させ、弾性片12の弾力に抗して抜止片11とフック部22とが離間する方向へ移動し、各々の間に間隙をつくり、フック部22にバッグなどに固定した止具を収容して引掛ける。フック体2の外側面の押圧を解除すると、弾性片12の復帰によって、フック部22と抜止片11とが接触する方向へ移動し、各々の先端が当接して係合させる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明のなす環は、各種のショルダーバッグ、リュックサックなどのベルトを挿通したなす環をバッグ、袋物に固定した止具に引掛けて使用する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1に基づくなす環の分解斜視図である。
【図2】同上のなす環のフック体を切断した要部断面図である。
【図3】同上のなす環の図2のA−A断面図である。
【図4】同上のなす環の作用状態を示す説明図である。
【図5】実施例2に基づくなす環の分解斜視図である。
【図6】同上のなす環のフック体と支持環を切断した要部の断面図である。
【図7】同上のなす環の図6のB−B断面図である。
【図8】同上のなす環の作用状態を示す説明図である。
【図9】公知のなす環の分解正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 本体
2 フック体
3 支持環
10 基部(本体)
11 抜止片
12 弾性片
13 軸部
14 斜面
15 係合突部
17 首部
18 頭部
23 基部(フック体)
24 孔部
25 側板
26 収容凹部
27 開口部
31 当接部
37 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の本体1とフック体2とを有し、本体1の基部10の下面に抜止片11と弾性片12とを並設し、該基部10の表裏面に軸部13を突設し、フック体2の基部23は本体1の基部10の表裏面を被覆する一対の側板25を設け、該側板25の内側に基部10と弾性片12とを収容する収容凹部26を設け、側板25に軸部13が挿入する孔部24を設け、フック体2が軸部13を中心に、フック体2の先端が抜止片11の先端に接近する方向と、フック体2の先端が抜止片11の先端から離間する方向とに回動可能に装着されてなることを特徴とする合成樹脂製のなす環。
【請求項2】
本体1の基部10の上方に環状の支持環3を一体に成形してなる請求項1記載の合成樹脂製のなす環。
【請求項3】
頂端に膨大頭部18を有する首部17を本体1の基部10の上方に突設し、該頭部18が嵌入し抜脱不能の挿入孔37を支持環3に設け、支持環3を回動可能に形成してなる請求項1記載の合成樹脂製のなす環。
【請求項4】
本体1の側面に係合突部15を設け、フック体2の収容凹部26の上端に設けた当接部31と当接可能に形成してなる請求項1記載の合成樹脂製のなす環。
【請求項5】
フック体2の先端は、抜止片11の先端から離間する方向に回動した時に、支持環3に接近する姿勢となって抜止片11の先端との間に間隙を形成し、抜止片11の先端へ接近する方向に回動した時に、支持環3から離間する姿勢となって抜止片11の先端と接する請求項2または3記載の合成樹脂製のなす環。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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