説明

合成樹脂製の組立式おもちゃ箱

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、合成樹脂製の組立式おもちゃ箱に関し、詳しくは多目的に使用できる組立式おもちゃ箱に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、合成樹脂製の組立式おもちゃ箱は知られている。例えば、実公平2−5834号公報で示されている合成樹脂製の組立式おもちゃ箱は、4枚の側板と1枚の底板とで組立てられている。これを組立てるためには、2枚の側板においては、その左右の側縁に、係止爪付舌片が複数個突設され、他の2枚の側板においては、その左右の側縁に、前記舌片が挿入できる係止孔が設けられている。また、4枚の各側板においては、その下縁に、底板用係止孔が設けられている。一方、底板の4側縁には、前記底板用係止孔に挿入する係止爪付舌片が突出されている。したがって、これを組立てるには、これらの係止爪付舌片を係止孔に挿入すればよく、接着剤や組立てボルトを用いなくて、簡単に組立てることができる。
【0003】そのため、かかる合成樹脂製の組立式おもちゃ箱では、■木製のものに比べ安価にできる、■運送、特に小売店から家庭迄の持ち運びや在庫管理時に分解できる、という長所を有するものの、次のような問題があった。
【0004】すなわち本来、おもちゃ箱、特にキャスター付おもちゃ箱は、おもちゃの保管はもとより、押し車や乗り物等にも使用されている(例えば、実開平3−67696号公報参照)。そのため、組立てられたおもちゃ箱はキシミ等の変形があってはならない。
【0005】ところが、合成樹脂製の組立式おもちゃ箱は、樹脂弾性を利用した係止爪付舌片を係止孔に挿入して組立てられるので、搭乗する幼児等の荷重がかかれば、樹脂弾性を利用しているだけに、箱体が変形するおそれがあって、多目的に使用することは好ましくない、という問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、かかる問題を解消するためになされたもので、その要旨とするところは、1)4枚の、内向きに凹とする略同一深さの合成樹脂射出成形製浅皿状側板と、1枚の底板とで組立てられるおもちゃ箱における前記側板同志の組立構造にあって、前記一方の側板の側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と、浅皿深さに略等しい切込み量とにより凹凸部を構成し、他方の側板の側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と、浅皿深さに略等しい切込み量とにより凹凸部を構成し、これらの一方と他方との凹凸部を密接嵌合重ね合せることにより、キシミの変形をなくした木製風のL形接ぎの組立構造にしたことを特徴とする合成樹脂製の組立式おもちゃ箱にあり、また、2)4枚の、内向きに凹とする各略同一深さの浅皿状合成樹脂射出成形製の側板と、1枚の底板とで組立てられるおもちゃ箱にあって、前記各側板の両側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と切込み量とによる凹凸部を形成して、互にL形になるよう突き合せて凹凸嵌合させるおもちゃ箱にして、前記凸部を、内向きに開口した中空凸部(6)と、内向きに開口した係止用中空凸部(9)とでそれぞれ形成し、前記凹部を、前記係止用凸部(9)に係止する係止爪付舌片(7)を設けた空間と、前記中空凸部(6)を嵌入する切欠空間(8)とで、それぞれ形成したことを特徴とする合成樹脂製の組立式おもちゃ箱にある。
【0007】
【実施例】本発明を添付図面に示す実施例により詳細に述べる。図1は本発明の実施例の全体概要斜視図、図2は図1の側板の全体平面図、図3(A)は図2のA部拡大図、図3(B)は同(A)のC矢視図、図4(A)は図2のB部拡大図、図3(B)は同(B)のD矢視図、図5は組立て説明図、図6はキャスター取付部の詳細拡大図、図7は補強枠体の斜視図および断面図である。
【0008】本実施例は、多目的、例えばキャスター付引き車等にも用いられる、合成樹脂製の組立式おもちゃ箱に好適である。
【0009】先ず、全体の概略を述べる。このおもちゃ箱1は、4枚のPP製側板2,2…と1枚のPP製底板3と4個のナイロン製キャスター4,4とから大略構成されていて、上方(図2における上方をいい、以下、上下左右は図2を基準にして便宜上説明する)が開口された箱体になっている。
【0010】これらの側板2の形状および寸法は4枚とも同一にしている。例えば、横315mm、縦285mm、樹脂厚約2mmのものを内向き浅皿状にして、その浅皿深さt=23mmの寸法になっている。そして、これらの側板2同志は、重ね合せ凹凸嵌合によって組立てられる。
【0011】この重ね合せ凹凸嵌合とは、図1で明示のように、木材工芸の用語によって端的に表現すると、木箱で散見される「刻み組つき(あられ組つき、単にあられつぎ又はコーナーロッキングともいう)」に相当し、この刻み組つきは、いう迄もなくL形に接ぎ合せる2つ板材の木口に、略該板の厚さの間隔と深さ(切込み量)とに、櫛の歯状の複数の切欠きを形成して凹凸部を構成し、通常接着剤を介して、互に突き合せて嵌合して接ぐ方法で、これにより接合度を増し、箱体が歪なくガッチリと組立てられるもので、つまり、強度を要する木箱に構成できるものであるが、本実施例は、合成樹脂の射出成形品であるため、箱内向きに凹とする浅皿状の側板2を用い、側板2の厚さは、浅皿の深さtとし、かかる厚さ(t)をもつ側板2の左右両側縁に、厚さ(t)に略等しい間隔と深さ(切込み量)との凹凸部を形成し、他の側板2とL形に接ぎ合せるものである。
【0012】しかも、前記板材の刻み組つきに用いる接着剤の代りに、後記の舌片7と穴12とによる嵌め殺し機構(嵌めてしまった後、容易に外せないようにする機構をいう)を採択している。
【0013】したがって、本実施例の刻み組つきとは、第1の側板2の左右方縁に、該側板2を形成する浅皿の深さtを板厚とし、この板厚に略等しい間隔と深さとの凹凸部を形成して第2の側板2とL形に凹凸密接嵌合させる接ぎ方法となり、これを本明細書では、「いわゆる刻み組つき」と称する。
【0014】次に、各部について詳細に述べる。1つの側板2は、図2において、上方縁が開口側となり、下方縁に底板3が取付けられる。また、右側縁には、箱内側に向け開口している中空凸部6と、カギ状の係止爪付板状の舌片7を設けた空間とが交互に一体に形成・突設されており、つまり、凸部と凹部が形成されており、左側縁には、他の側板2における前記中空凸部6が嵌入する切欠空間8と、前記カギ状の係止爪付板状の舌片7が係止する、箱内側に向け開口している係止用中空凸部9とが交互に一体に形成・突設されている。つまり、凸部と凹部が形成されている。
【0015】前記中空凸部6は、おもちゃ箱1の各コーナに丸みをもたせるため、上端のものを除いて、浅皿深さtを半径とする円筒の4半円筒上下環切状(厚肉片側開き扇状)に形成されており、上端の中空凸部6aは、4半球下方環切状に形成されている。したがって、この中空凸部6aは開口側内上縁を形成している。
【0016】前記カギ状の係止爪付板状の舌片7は、主として図3および図5に示すように、舌片7aを長方形の板体で構成し、その舌片7aの先端一側面にカギ状に係止爪7bが形成されており、基端一側に突起7cが形成されている。
【0017】この舌片7aの他側面には、樹脂弾性力を増すため、リブ7dを設けている。このカギ状の係止爪付板状の舌片7の側部には、若干の隙間をおいて、舌片用ガイド片10,10が突設されている。この舌片用ガイド片10は、板体で構成されている。
【0018】前記係止用中空凸部9は、前記中空凸部6と外形および寸法が同一になっている。この箱内側に向け開口した係止用中空凸部9の内部には係止凸部用ガイド片11が設けられており、この係止凸部用ガイド片11は、前記舌片用ガイド片10と直交状態に配設されている。
【0019】また、係止用中空凸部9が突設された側板2の基部2a(浅皿の立上り部に相当する)には、係止爪用穴12が設けられている。勿論、係止用中空凸部9の形状を厚肉片側開き扇状にせず、単なる箱状にすれば、前記係止凸部用ガイド片11は不要となる。
【0020】そして、図5に示すように、前記カギ状の係止爪7bと突起7cとの間隔L1が係止用中空凸部9の係止爪用穴12の開口端迄に距離L1に等しくし、舌片用ガイド片10の幅L2を係止凸部用ガイド片11の配置位置迄の距離L2に等しくしている。
【0021】したがって、図5のように係止爪付舌片7を係止用中空凸部9にa矢印のように挿入すれば、舌片用ガイド片10,10が係止凸部用ガイド片11に案内されながら、係止爪付舌片7が若干、樹脂変形をして、係止爪7bが係止爪用穴12に係止する。その結果、係止爪付舌片7と係止用中空凸部9とはb矢方向に、いわゆる嵌め殺しとなり、容易に分解できないようになる。
【0022】また、側板2の下方縁には、底板3の挿入片3aが挿入できる底板用挿入穴13が設けられている。この底板用挿入穴13の外側には、舌片状足14が突設されている。この舌片状足14は、おもちゃ箱1の段積み時やキャスター4を取付けない時に有効となる。
【0023】次に、底板3について述べる。図1に示すように、底板3は正方形状に形成され、裏面に不図示の格子状リブが補強されていて、幼児が乗っても変形しないようになっている。底板3の各辺には、前記のように挿入片3aが形成されている。
【0024】次に、キャスター4について述べる。図6に示すように、キャスター4には偏心位置にキャスター軸15が設けられ、側板2の基部2aに突設した軸受部16に挿入されて不図示のロック装置で回転止めされている。この軸受部16は、他の側板2の下端の中空凸部9bでカバーされるので、この中空凸部9bにもキャスター軸16が挿入され、したがって、このキャスター軸15によっても、隣接の側板2,2は互に係止される。
【0025】次に、本実施例の作用を述べる。4枚の側板2は、例えば、赤、黄、青および緑色にそれぞれ別個に着色して、射出成形する。したがって、射出成形用金型は1種のもので足りる。成形された側板2および底板3は、そのままで販売店から持ち運びができ、家庭内で組立てられる。その組立ては、先ず、底板3の挿入片3a,3b…を4枚の側板2の底板用挿入穴13に挿入しながら、中空凸部6に対し切欠空間8を、係止爪付舌片7に対し係止用中空凸部9をそれぞれ突き合せて重ね合せ凹凸嵌合させる。そのとき、特に、係止爪付舌片7を若干、樹脂変形させて係止爪7bを係止用穴12に嵌め殺し状態で係止させる。次いで、キャスター4を軸受部16に押込めばおもちゃ箱1は完成できる。
【0026】したがって、完成されたおもちゃ箱1に上方向から荷重が加わると、主として、いわゆる刻み組つきにおける重ね合された中空凸部6と係止用中空凸部9とで対抗し、横方向から荷重が加わると、主として、底板3と共に、係止爪付舌片7、側板2の基部2a、水平状ガイド片10,10および垂直状ガイド片11によって対抗するので、樹脂弾性を利用した係止爪片7の係止爪7aのみの対抗に比べ、おもちゃ箱1の変形は少ない。
【0027】なお、補強枠体17について念のため述べる。図7(A)に補強枠体17の斜視図、同(B)にその断面図を示すが、この補強枠体17は、断面L字状のPP材で4角状に構成して、側板2の開口上縁に装着される。その装着の仕方は、組立時に、側板2の内側リブやブラケット(いずれも不図示)と、上端の中空凸部6aの内面とで挟まれて装着される。この中空凸部6aが位置する部位は、断面コ字状になっていて、しかも切欠18を設けている。したがって、この補強枠体17により、底板3と同様、おもちゃ箱1の変形を防ぐことができる。
【0028】なおまた、本実施例のおもちゃ箱は、上方が開口された箱体で説明したが、本発明はこれに限らず、適宜の蓋を有するおもちゃ箱であってもよい。また、本実施例のおもちゃ箱は、同一寸法の4枚の側板であったが、本発明はこれに限らず、同一寸法の2枚と他の同一寸法の2枚の側板であってもよく、したがって、底板が長方形であってもよい。また、係止爪付舌片7と、係止用中空凸部9の係止凸部用ガイド片11や係止用穴12は一部省略してもよい。
【0029】
【発明の効果】本発明の、4枚の側板と1枚の底板で組立てられる合成樹脂製のおもちゃ箱によると、
【0030】■各側板を内向きに凹とする略同一深さの浅皿状にしたので、組立てられた箱が、厚みのある木製風の味を呈することができる。
【0031】■浅皿状にしたので、合成樹脂の射出成形の薄板でありながら、側板に、浅皿の深さによって、板厚を構成することができ、その結果、この板厚により、木材工芸におけるいわゆる「L形刻み組つき接合」を利用することができて、刻み組つきによる接合強度を発揮し、殊に箱のキシミの変形をなくし、ひいては、従来の舌片の挿込み接合に比べ、特段の強度をもつ箱に構成できるので、荷重のかかるおもちゃ箱に使用できるばかりか、箱歪みによる幼児の指づめを皆無ならしめる。
【0032】■すなわち、略同一の深さの浅皿状の各側板の側縁に、その浅皿深さに略等しい間隔と、その浅皿深さに略等しい切込み量とにより凹凸部を構成し、これに他の側板の側縁に構成した同様の凹凸部を密接嵌合重ね合せることにより外力に対抗できるばかりか、軽量化に資することができる。
【0033】■殊に、請求項2の発明によると、係止凹部と係止爪付舌片とによって係止させるので、木材工芸における「包蟻組接ぎ」にせず、また、接着剤を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の全体概要斜視図である。
【図2】図1の側板の全体平面図である。
【図3】(A)は図2のA部拡大図、(B)は(A)のC矢視図である。
【図4】(A)は図2のB部拡大図、(B)は(A)のD矢視図である。
【図5】組立て説明図である。
【図6】キャスターの取付部の詳細図である。
【図7】補強枠体の斜視図および断面図である。
【符号の説明】
1…おもちゃ箱、2…側板、2a…基部、3…底板、6…中空凸部、7…係止爪付舌片、7a…係止爪、8…切欠空間、9…係止用中空凸部、12…係止用穴、17…補強枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】4枚の、内向きに凹とする略同一深さの合成樹脂射出成形製浅皿状側板と、1枚の底板とで組立てられるおもちゃ箱における前記側板同志の組立構造にあって、前記一方の側板の側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と、浅皿深さに略等しい切込み量とにより凹凸部を構成し、他方の側板の側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と、浅皿深さに略等しい切込み量とにより凹凸部を構成し、これらの一方と他方との凹凸部を密接嵌合重ね合せることにより、キシミの変形をなくした木製風のL形接ぎの組立構造にしたことを特徴とする合成樹脂製の組立式おもちゃ箱。
【請求項2】4枚の、内向きに凹とする各略同一深さの浅皿状合成樹脂射出成形製の側板と、1枚の底板とで組立てられるおもちゃ箱にあって、前記各側板の両側縁に、該側板の浅皿深さに略等しい間隔と切込み量とによる凹凸部を形成して、互にL形になるよう突き合せて凹凸嵌合させるおもちゃ箱にして、前記凸部を、内向きに開口した中空凸部(6)と、内向きに開口した係止用中空凸部(9)とでそれぞれ形成し、前記凹部を、前記係止用凸部(9)に係止する係止爪付舌片(7)を設けた空間と、前記中空凸部(6)を嵌入する切欠空間(8)とで、それぞれ形成したことを特徴とする合成樹脂製の組立式おもちゃ箱。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】第2789420号
【登録日】平成10年(1998)6月12日
【発行日】平成10年(1998)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−321395
【出願日】平成5年(1993)11月25日
【公開番号】特開平7−148357
【公開日】平成7年(1995)6月13日
【審査請求日】平成7年(1995)9月26日
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【参考文献】
【文献】実開 昭62−523(JP,U)
【文献】実開 昭48−86038(JP,U)
【文献】実公 昭53−50668(JP,Y1)
【文献】実公 昭40−13291(JP,Y1)
【文献】実公 平2−5834(JP,Y2)
【文献】実公 昭56−36754(JP,Y2)
【文献】実公 平5−16106(JP,Y2)