説明

合成樹脂製キャップ、閉止装置、および飲料入り閉止装置

【課題】タンパーエビデンス性に優れ、しかも開栓トルクの上昇を抑えることができる合成樹脂製キャップの提供。
【解決手段】天板部とその周縁から垂下した筒部とを備え、筒部が、主部とタンパーエビデンスリング部9とに区画され、タンパーエビデンスリング部9に、開栓の際に容器の係止段部23に係止してタンパーエビデンスリング部9の移動を阻止する係止突起11が設けられた合成樹脂製キャップ1。タンパーエビデンスリング部9の内面に、係止突起11より上方に当接突起12が内方に突出して形成されている。当接突起12は、閉栓状態において係止段部23より低い位置にあり、開栓過程において係止突起11が係止段部23に達した状態で係止段部23の外面23aに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口元部を閉止する合成樹脂製キャップ、これを用いた閉止装置、および飲料入り閉止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒部が主部とタンパーエビデンスリング部(TEリング部)とに区画され、主部とTEリング部がブリッジを介して連結された合成樹脂製キャップ(以下、単にキャップという)が広く用いられている。
この種のキャップでは、開栓方向に回転させると、主部は回転に従って上昇する一方、TEリング部が容器の係止段部に係止するため、ブリッジに引張力が作用して破断され、TEリング部が主部から切り離される。これによって、キャップが開栓されたことが明示される。
【0003】
図7〜図9は、従来のキャップの例を示すものである。図7〜図9は、いずれもキャップが容器20の口元部21に巻締められた状態(閉栓状態)を示している。
図7に示すキャップ31では、TEリング部9が係止段部23から大きく離間しているため、開栓時にTEリング部9の姿勢が不安定となって一部のブリッジの切断が遅れるおそれがあり、タンパーエビデンス性の点で問題であった。
図8および図9に示すキャップ41、51は、この問題の解決を図るものであり、図8に示すキャップ41では、TEリング部9の内径が、係止段部23の外径よりやや小さくされている。図9に示すキャップ51では、TEリング部9に、係止段部23の外径よりやや小さい内径を有する厚肉部14が形成されている。
図8および図9に示すキャップ41、51では、TEリング部9が拡径状態で係止段部23に接するため、開栓時にTEリング部9の姿勢が安定することからブリッジは確実に切断されるが、その反面、開栓時にTEリング部9が係止段部23に押接するため開栓トルクが高くなってしまうという新たな問題が生じている。
また、TEリング部9が上方移動した状態で係止段部23に留まるため、再栓時にはTEリング部9の切り離しが確認しにくくなり、開栓明示性は良好とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−211605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、タンパーエビデンス性に優れ、しかも開栓トルクの上昇を抑えることができるキャップ、このキャップを用いた閉止装置および飲料入り閉止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の合成樹脂製キャップは、天板部とその周縁から垂下した筒部とを備え、前記筒部が、主部と、ブリッジによって前記主部に連結されたタンパーエビデンスリング部とに区画され、前記主部の内周面に、容器の雄ネジに螺合するネジ部が設けられ、前記タンパーエビデンスリング部に、開栓の際に容器の係止段部に係止して前記タンパーエビデンスリング部の移動を阻止する係止突起が設けられた合成樹脂製キャップにおいて、前記タンパーエビデンスリング部の内面に、当接突起が内方に突出して形成され、前記当接突起は、閉栓状態において前記係止段部より低い位置にあり、開栓過程において前記係止突起が前記係止段部に達した状態で前記係止段部の外面に当接するように形成されている。
前記当接突起は、前記係止段部に接する部分における内径が、前記係止段部の外径と同じまたはこれより小さくされていることが好ましい。
前記当接突起は、前記係止段部に接する部分の軸方向寸法が、前記係止段部の外面の軸方向寸法より小さくされていることが好ましい。
前記当接突起の上面は、上方に向けて徐々に拡径する傾斜面とされていることが好ましい。
【0007】
本発明の閉止装置は、容器と、その口元部に装着される合成樹脂製キャップとを備えた閉止装置であって、前記合成樹脂製キャップが前記のものである閉止装置である。
本発明の飲料入り閉止装置は、飲料が充填された容器と、その口元部に装着される合成樹脂製キャップとを備えた飲料入り閉止装置であって、前記合成樹脂製キャップが前記のものである飲料入り閉止装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、TEリング部の内面に、開栓過程において係止突起が係止段部に達した状態で係止段部の外面に当接する当接突起が形成されているので、係止突起が係止段部に達した状態でTEリング部の姿勢が安定する。このため、ブリッジが確実に切断されることから、タンパーエビデンス性は良好となる。
また、開栓開始時には当接突起は係止段部の外面に当接していないため、開栓開始時のトルクが上昇することはない。
従って、タンパーエビデンス性を良好とし、しかも開栓トルクの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の合成樹脂製キャップの一例の要部を示す断面図である。
【図2】前図に示す合成樹脂製キャップを示す断面図である。
【図3】合成樹脂製キャップの開栓時の動作を示す工程図である。
【図4】前図に続く工程図である。
【図5】前図に続く工程図である。
【図6】前図に続く工程図である。
【図7】従来の合成樹脂製キャップの一例を示す断面図である。
【図8】従来の合成樹脂製キャップの他の例を示す断面図である。
【図9】従来の合成樹脂製キャップのさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2は、本発明の合成樹脂製キャップおよび閉止装置の一実施形態を示すもので、ここに示す閉止装置は、容器20と、その口元部21に装着される合成樹脂製キャップ1(以下、単にキャップ1という)とから構成されている。
図1および図2は、キャップ1が容器20の口元部21に巻締められた状態(閉栓状態)を示している。図2における符号C1はキャップ1の中心軸を示す。中心軸C1に沿う方向を軸方向という。
容器20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂製のものを使用できる。口元部21のネジ部10の下方に形成された係止段部23は、径方向外方に突出する環状突起であって、キャップ1の軸方向(図中上下方向)に沿う外面23aを有する。
【0011】
キャップ1は、天板部2と、その周縁から垂下した筒部3とを備えている。
天板部2には、容器20の口元部21に嵌入して口元部21の内面21aに当接する内側シール突起4と、外面21cまたは開口端面21bに当接する外側シール突起5と、開口端面21bに接する開口端シール突起13とが形成されている。
筒部3は、スコア6(弱化部)によって、主部8と、ブリッジ7(図5参照)によって主部8に連結されたタンパーエビデンスリング部(TEリング部)9とに区画されている。スコア6は、キャップ1の軸方向にほぼ垂直に形成することができる。
【0012】
主部8の内周面には、容器20の雄ネジ22に螺合するネジ部10が形成されている。
TEリング部9の内周面には、開栓時に容器20の係止段部23に係止してTEリング部9の移動を阻止する係止突起であるフック11が形成されている。
フック11は、TEリング部9の内周面から内方に突出して形成されている。
【0013】
閉栓状態において係止段部23に対向する部分のTEリング部9の内径は、係止段部23の外径と同径またはこれより大きくされている。
図示例では、閉栓状態において係止段部23に対向する部分のTEリング部9の内径は係止段部23の外径より大きくされ、この部分のTEリング部9は係止段部23から離間している。
【0014】
TEリング部9の内面には、内方に突出する当接突起12が形成されている。
当接突起12は、開栓時のTEリング部9の姿勢を安定化させるためのもので、フック11の上面に一体に連設して形成された環状突起である。
当接突起12は、閉栓状態(図1および図2に示す状態)において係止段部23より低い位置(すなわち天板部2から遠い位置)にあり、フック11より高い位置(すなわち天板部2に近い位置)にある。
当接突起12は、閉栓状態において、開栓トルクに影響を与えない程度に係止段部23に接していてもよいが、係止段部23から離間していることが望ましい。
なお、当接突起12は全周に連続的に形成されていてもよいし、周方向に断続的に形成されていてもよい。
【0015】
当接突起12の内面12aは、キャップ1の中心軸方向に沿って形成されている。
当接突起12の内面12aにおける内径は、開栓過程で内面12aが係止段部23に当接するよう設定され、具体的には係止段部23の外径と同径(または略同径)またはこれより小さくすることができる。図示例では、内面12aにおける当接突起12の内径は、係止段部23の外径より小さくされている。
【0016】
内面12aの軸方向寸法(図1における上下方向寸法)は、係止段部23の外面23aの軸方向寸法より小さくされる。図示例では、内面12aの軸方向寸法は、外面23aの軸方向寸法の半分より小さい。
当接突起12の上面12bは、上方(天板部2に近づく方向)に向けて徐々に拡径する傾斜面となっている。
【0017】
当接突起は、閉栓状態において係止段部より低い位置にあり、開栓過程において係止段部の外面に当接してTEリング部の径方向移動を規制できるものであれば、その形状は図示例に限らず、その断面形状は、多角形状(矩形状、三角形状等)、円弧状(半円状等)としてもよい。
また、当接突起は、係止段部の外面に対し面接触するものであってもよいし、周方向に沿う線で接触するものであってもよい。
【0018】
キャップ1は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料で構成することができる。
【0019】
次に、キャップ1を開栓する操作について説明する。
図1および図2に示す閉栓状態では、内側シール突起4、外側シール突起5および開口端シール突起13が口元部21に当接することにより口元部21が密封されている。また、フック11および当接突起12は、係止段部23よりも低い位置(天板部2から遠い位置)にある。
【0020】
以下、キャップ1を開栓する過程におけるTEリング部9の動作を、図3〜図6を参照しつつ詳しく説明する。
図3に示す閉栓状態から、キャップ1を開栓方向に回すと、回転に従ってキャップ1は上昇する。
閉栓状態では当接突起12は係止段部23より低い位置にあるため、当接突起12が開栓開始時のトルク(いわゆるファーストトルク)に影響を与えることはない。
【0021】
図4に示すようにキャップ1が上昇すると、当接突起12は係止段部23に達し、さらに上昇させるとTEリング部9が拡径しつつ係止段部23に乗り上げ、内面12aが係止段部23の外面23aに当接する。
この際、当接突起12は、まず上面12bが係止段部23に接し、上面12bの傾斜に従ってスムーズに拡径方向に移動して外面23aに達する。
【0022】
当接突起12が係止段部23に乗り上げた状態では、当接突起12の内面12aが係止段部23の外面23aに接するため、TEリング部9の径方向の移動が規制されることから、TEリング部9は傾斜状態となりにくい。
内面12aは外面23aに比べ軸方向寸法が小さいため、これらの接触面積は小さいことから、当接突起12が係止段部23に当接した状態での開栓トルクの上昇は低く抑えられる。
図4に示すように、フック11が係止段部23の下端に達した状態において、当接突起12は係止段部23に当接している。
【0023】
図5に示すように、キャップ1をさらに開栓方向に回すと、主部8は回転に従って上昇する一方、フック11が係止段部23に係止するためTEリング部9の上方移動は阻止される。
これによって、主部8とTEリング部9とを連結しているブリッジ7に引張力が作用し、ブリッジ7は破断し、TEリング部9は主部8から切り離される。
これによって、キャップ1が開栓されたことが明示される。
【0024】
図6に示すように、内面12aは軸方向寸法が小さく、外面23aに対する接触面積が小さいため、TEリング部9に作用する摩擦力も小さい。このため、TEリング部9は自重により落下しやすい。
TEリング部9が落下すると、再栓時においてもTEリング部9の切り離しが確認しやすくなるため、開栓明示性が高められる。
また、TEリング部9が落下して容器20のフランジ部24に当たったときの衝撃音も開栓明示性に貢献する。
キャップ1をさらに上昇させると、シール突起4、5、13が口元部21から離れ、密封が解除される。
【0025】
キャップ1では、TEリング部9の内面に、係止段部23に当接する当接突起12が形成されているので、フック11が係止段部23に達した状態でTEリング部9の姿勢が安定する。
TEリング部9が水平状態を維持するため、引張力がすべてのブリッジ7に均等に作用し、ブリッジ7が確実に切断されることから、タンパーエビデンス性は良好となる。
また、開栓開始時には当接突起12は係止段部23の外面23aに当接していないため、開栓開始時のトルクが上昇することはない。
従って、タンパーエビデンス性を良好とし、しかも開栓トルクの上昇を抑えることができる。
【0026】
なお、図示例では、当接突起12はフック11の上面に連設されているが、これに限らず、当接突起はフック(係止突起)から上方に離間した位置に形成されていてもよい。この場合でも、当接突起は、閉栓状態において係止段部より低い位置にあり、開栓過程において係止突起が係止段部に達した状態で係止段部の外面に当接するように形成される。
【0027】
この閉止装置は、炭酸飲料、果汁飲料、茶飲料、コーヒー飲料等の飲料を容器に充填することによって、飲料入り閉止装置とすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・キャップ(合成樹脂製キャップ)、2・・・天板部、3・・・筒部、7・・・ブリッジ、8・・・主部、9・・・TEリング部(タンパーエビデンスリング部)、10・・・ネジ部、11・・・フック(係止突起)、12・・・当接突起、12a・・・当接突起の内面、12b・・・当接突起の上面、20・・・容器、21・・・口元部、23・・・係止段部、23a・・・係止段部の外面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部とその周縁から垂下した筒部とを備え、前記筒部が、主部と、ブリッジによって前記主部に連結されたタンパーエビデンスリング部とに区画され、前記主部の内周面に、容器の雄ネジに螺合するネジ部が設けられ、前記タンパーエビデンスリング部に、開栓の際に容器の係止段部に係止して前記タンパーエビデンスリング部の移動を阻止する係止突起が設けられた合成樹脂製キャップにおいて、
前記タンパーエビデンスリング部の内面に、当接突起が内方に突出して形成され、
前記当接突起は、閉栓状態において前記係止段部より低い位置にあり、開栓過程において前記係止突起が前記係止段部に達した状態で前記係止段部の外面に当接するように形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記当接突起は、前記係止段部に接する部分における内径が、前記係止段部の外径と同じまたはこれより小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記当接突起は、前記係止段部に接する部分の軸方向寸法が、前記係止段部の外面の軸方向寸法より小さくされていることを特徴とする請求項1または2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記当接突起の上面は、上方に向けて徐々に拡径する傾斜面とされていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項5】
容器と、その口元部に装着される合成樹脂製キャップとを備えた閉止装置であって、
前記合成樹脂製キャップは、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のものであることを特徴とする閉止装置。
【請求項6】
飲料が充填された容器と、その口元部に装着される合成樹脂製キャップとを備えた飲料入り閉止装置であって、
前記合成樹脂製キャップは、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のものであることを特徴とする飲料入り閉止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−136728(P2011−136728A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297591(P2009−297591)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000145219)株式会社CSIジャパン (36)
【Fターム(参考)】