説明

合成樹脂製二重容器

【課題】容器壁等を厚く形成して質感を良好にできるうえ、収容物の品質を良好に維持でき、しかも白化現象の発生を抑制して良好な外観を得ることができるようにする。
【解決手段】PET樹脂などの結晶性合成樹脂材料を成形材料として射出成型により内側容器部分(8)を形成する。内側容器部分(8)の外表面に、シクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂などの非結晶性合成樹脂材料を成形材料とする外側容器部分(9)を射出成型により形成する。内側容器部分(8)は蓋との装着部(7)を備える。外側容器部分(9)は、内側容器部分(8)の装着部(7)を除いた外表面に一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品などを収容する合成樹脂製二重容器に関し、さらに詳しくは、容器壁等を厚く形成して質感を良好にできるうえ、収容物の品質を良好に維持でき、しかも白化現象の発生を抑制して良好な外観を得ることができる、合成樹脂製二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料等を収納する容器は、収容物が変質しないように優れた耐薬品性が要求されるうえ、良好な美観や質感等が要求される。このため、ガラス製容器が多用されていたが、近年では色彩や装飾の容易さ等から、合成樹脂製容器も用いられている。これらの合成樹脂製容器は、重厚感をだすため容器壁や底部を厚くすることが望まれるが、容器壁等が厚いと射出成型等で形成する場合に冷却時間がかかるため、サイクルタイムを短くすることができず、生産性の向上が容易でない問題がある。
【0003】
従来、上記の問題点を解消して効率よく生産するため、射出成型により内側容器部分を形成したのち、その内側容器部分の外側に外側容器部分を一体成型する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術という。)。即ちこの従来技術は、一般的なタイプの射出成型機が2台用いられる。そして、最初に一方の射出成型機で内側容器部分が形成されたのち、他方の射出成型機のコア金型にこの内側容器部分が装着され、この内側容器部分の外側に外側容器部分が一体に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3114093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、内側容器部分の外表面と外側容器部分の内表面とが互いに溶融して一体化するように、同一樹脂材料が用いられている。しかしながら、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂ともいう。)などのような結晶性合成樹脂材料で形成すると、冷却の際に結晶化が進み、例えば射出成型機からのゲート周りで白濁するなどの白化現象を生じ、外観不良となる問題があった。
【0006】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、容器壁等を厚く形成して良好な質感が得られるうえ、収容物の品質を良好に維持でき、しかも白化現象の発生を抑制して外観を良好にできる、合成樹脂製二重容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1と図2に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は合成樹脂製二重容器に関し、結晶性合成樹脂材料を成形材料として射出成型により形成された内側容器部分(8)の外表面に、非結晶性合成樹脂材料を成形材料とする外側容器部分(9)が、射出成型により上記の内側容器部分(8)と一体に形成してあることを特徴とする。
【0008】
上記の外側容器部分は射出成型により形成されるので、内側容器部分と良好に一体化でき、全体として容器壁や底部が厚く重量感のある容器にされる。このとき、内側容器部分は結晶性合成樹脂材料で形成されているので、容器の内面に露出している部分は耐薬品性に優れている。しかし結晶性合成樹脂材料は射出成型の冷却の際、結晶化が進んでゲート周りなどに白化現象を生じる虞がある。しかしそのゲート部分は内側容器部分の外表面に設けられており、この外表面には上記の外側容器部分が射出成型により形成されるので、内側容器部分の外表面に上記の白化現象が生じていたとしても、その射出成型の際に外側容器部分の溶融した樹脂で加熱され、その白化現象が解消される。一方、上記の外側容器部分は非結晶性合成樹脂材料で形成されているので、成型時の冷却条件にかかわらず、冷却の際に白化現象を生じる虞がなく、良好な外観が得られる。
【0009】
上記の結晶性合成樹脂材料や非結晶性合成樹脂材料は、特定の合成樹脂材料に限定されないが、両者の相溶性が良好な組合せが好ましい。例えば、結晶性合成樹脂がPET樹脂であり、上記の非結晶性合成樹脂がシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂であると、このシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂は、PET樹脂との相溶性に優れているので、上記の射出成型で良好に一体化できて好ましい。しかもこのPET樹脂やシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂は、容器表面の光沢や明るさ,透明感などの質感をガラス製のものに近似させることができ、一層良好な質感を得ることができる利点もある。
【0010】
なお上記のシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂には、例えば、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位からなるポリエステルであって、かつエチレングリコール単位のモル比が、シクロヘキサンジメタノール単位のモル比よりも大きいPETG樹脂、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位からなるポリエステルであって、かつエチレングリコール単位のモル比が、シクロヘキサンジメタノール単位のモル比よりも小さいPCTG樹脂、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位とシクロヘキサンジメタノール単位とからなるPCTA樹脂などが包含され、これらはEastman Chemical Companyから入手可能である。
【0011】
上記の内側容器部分と外側容器部分は、特定の形状のものに限定されないが、上記の内側容器部分に蓋との装着部を形成し、この装着部を除いた外表面に、上記の外側容器部分を一体化してあると、上記の装着部を、例えば外周面に雄ねじ部を備えた形状など、任意の形状に容易に形成できるうえ、内側容器部分と外側容器部分とを良好に一体化できて好ましい。
【0012】
またこの場合、上記の装着部と外側容器部分の上面との間に、その装着部の外径よりも小径のアンダーカット部を形成してあると、内側容器部分の外表面に外側容器部分を射出成型する際に、このアンダーカット部を利用して内側容器部分をコア側金型に保持できるので、成型後の合成樹脂製二重容器を金型から容易に取り出すことができて好ましい。
【0013】
なお、上記の結晶性合成樹脂材料と非結晶性合成樹脂材料は、彩色や透明度などを任意に設定することができる。しかしこれらの材料の少なくともいずれか一方を、有色または無色の透明材料で構成するとともに拡散材を配合すると、容器壁等を透過する光が拡散されるので、マット加工やブラスト加工などを容器表面に施すことなく、磨りガラス調の容器にすることができ、高級感のある容器を安価に得ることができて好ましい。なおこの拡散材は、具体的には例えば炭酸カルシウムや、架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などのポリマー微粒子等をあげることができるが、光を散乱させることができればよく、特定の材料に限定されない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成樹脂製二重容器は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0015】
(1)内側容器部分と外側容器部分とが互いに一体化しているので、全体として容器壁や底部を厚く形成でき、重量感をもたせて高級感を与えるなど、質感を良好にすることができる。
(2)容器の内面は内側容器部分の結晶性合成樹脂材料で形成されているので、耐薬品性に優れており、化粧料等の収容物が容器の成形材料で変質する虞を防止でき、収容物の品質を良好に維持することができる。
(3)内側容器部分は結晶性合成樹脂材料で形成されるので、冷却時に白化現象を生じる虞があるが、外側容器部分を射出成型する際に加熱され溶融されるのでその白化現象を解消でき、しかも、外側容器部分は非結晶性合成樹脂材料で形成されているので、成型時の冷却条件にかかわらず冷却の際に白化現象を生じる虞がない。これらの結果、良好な外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す、合成樹脂製二重容器の一部破断正面図である。
【図2】図1の装着部近傍を拡大した一部破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、この合成樹脂製二重容器(1)は、内部に化粧料などが収容される収容部(2)を形成してあり、その周囲に厚く形成された容器壁(3)と底部(4)とを備え、上面に広い開口部(5)が開口された、広口容器状に形成してある。この開口部(5)の周囲には、外周面に雄ねじ(6)を備えた装着部(7)が形成してあり、図示しない蓋がこの装着部(7)に螺着される。
【0018】
上記の合成樹脂製二重容器(1)は、図1の断面図に示すように、内側容器部分(8)とその外側の外側容器部分(9)とからなる。この内側容器部分(8)は、上記の収容部(2)を取り囲むように容器壁部分(8a)と底部部分(8b)とを備え、この容器壁部分(8a)の上方に、上記の装着部(7)を備えている。この内側容器部分(8)は、例えばPET樹脂などの結晶性合成樹脂材料を成形材料として、射出成型により形成されており、例えば所定の色彩に着色された半透明にされている。
【0019】
一方、上記の外側容器部分(9)は、上記の内側容器部分(8)の外表面のうち、上記の装着部(7)を除いた外表面、即ち、上記の容器壁部分(8a)の外周面と底部部分(8b)の下面とに融着して一体化する状態に、射出成型により形成してある。その外側容器部分(9)は非結晶性合成樹脂材料を成形材料としており、具体的には、例えばPETG樹脂やPCTG樹脂、PCTA樹脂などのシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂が用いられ、例えば無色透明や有色透明の成形材料に拡散材を配合してある。
【0020】
上記の合成樹脂製二重容器(1)は、外側から見ると磨りガラス状の外側容器部分(9)を介して内側容器部分(8)が目視されるので高級感のある外観を呈し、しかも両者は一体化されているので容器壁(3)と底部(4)とが厚く形成され、重量感がある。さらに、この二重容器(1)は合成樹脂製でありながら、外側容器部分(9)のゲート(10)周り等に白化現象を生じることがなく、良好な外観にされている。
【0021】
なお、この実施形態では、内側容器部分(8)を有色半透明の材料で構成し、外側容器部分(9)を拡散材が配合された無色透明の材料で構成した。しかし本発明では、内側容器部分(8)と外側容器部分(9)を、互いに同じ色彩に着色された材料や互いに異なる任意の色彩に着色された材料で形成してもよく、或いは、いずれか一方または両方を無色や有色の透明材料で形成してもよい。また上記の拡散材は、内・外側容器部分(8・9)のいずれか一方又は両方に配合してもよく、或いはこの拡散材の配合を省略してもよい。
【0022】
上記の合成樹脂製二重容器(1)は、例えば次の手順により、2台の射出成型機を用いて製作される。
最初に、一方の射出成型機により、上記の結晶性合成樹脂材料を成形材料として、上記の内側容器部分(8)を成型したのち、この射出成型機の金型を開いて内側容器部分(8)を取り出す。次いで、この内側容器部分(8)を、他方の射出成型機のコア側金型に装着し、この内側容器部分(8)の外表面に、上記の非結晶性合成樹脂材料を成形材料として、上記の外側容器部分(9)を成型する。このとき、上記の内側容器(8)はその外表面は、外側容器部分(9)の溶融している成形材料で加熱される。このため、仮に上記の内側容器(8)を成型する際にその外表面に白化現象が生じていても、その外表面は外側容器部分(9)の成型時の上記の加熱により、白化現象が解消される。一方、外側容器部分(9)のゲート(10)周り等は、その成形材料が非結晶性合成樹脂材料であるので、冷却の際に白化現象を生じる虞がない。
【0023】
図2に示すように、上記の装着部(7)と外側容器部分(9)の上面との間には、その装着部(7)の外径よりも小径のアンダーカット部(11)が溝状に形成してある。上記の外側容器部分(9)を成型する際、上記の内側容器部分(8)は、このアンダーカット部(11)によりコア側金型(12)に確りと保持されるので、成型後に金型を開く際、成型された合成樹脂製二重容器(1)がキャビティ側金型(13)から容易に離型されて取り出される。
【0024】
上記の実施形態で説明した合成樹脂製二重容器は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、構造などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0025】
例えば上記の実施形態では、内側容器部分の容器壁部分を取り囲む状態に外側容器部分を形成したので、この外側容器部分と内側容器部分とを良好に一体化できて好ましい。しかし本発明では、この内側容器部分と外側容器部分とは、この実施形態のものに限定されず、任意の形状に形成することができる。例えば、上記の容器壁は周方向に略均一な厚さを備えると、成型時の歪が抑制されて好ましいが、外周面を多角形状などの任意の形状に形成して、周方向に付均一な厚さであってもよい。また上記の装着部は、外側容器部分に形成することも可能である。
【0026】
上記の実施形態では、内側容器部分をPET樹脂で形成し、外側容器部分をPETG樹脂やPCTG樹脂、PCTA樹脂などで形成した。しかし本発明では、他の結晶性合成樹脂材料で内側容器部分や外側容器部分を形成してもよい。また、上記の収容部に収容する収容物は、化粧品に限定されないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の合成樹脂製二重容器は、容器壁等を厚く形成して質感を良好にできるうえ、収容物の品質を良好に維持でき、しかも白化現象の発生を抑制して良好な外観を得ることができるので、化粧品などを収容する容器に特に好適であるが、他の収容物を収容する容器にも好適である。
【符号の説明】
【0028】
1…合成樹脂製二重容器
7…装着部
8…内側容器部分
9…外側容器部分
11…アンダーカット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性合成樹脂材料を成形材料として射出成型により形成された内側容器部分(8)の外表面に、非結晶性合成樹脂材料を成形材料とする外側容器部分(9)が、射出成型により上記の内側容器部分(8)と一体に形成してあることを特徴とする、合成樹脂製二重容器。
【請求項2】
上記の結晶性合成樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、上記の非結晶性合成樹脂がシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の合成樹脂製二重容器。
【請求項3】
上記の内側容器部分(8)は蓋との装着部(7)を備え、この装着部(7)を除いた外表面に上記の外側容器部分(9)が一体化している、請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製二重容器。
【請求項4】
上記の装着部(7)と外側容器部分(9)の上面との間に、その装着部(7)の外径よりも小径のアンダーカット部(11)を形成した、請求項3に記載の合成樹脂製二重容器。
【請求項5】
上記の結晶性合成樹脂材料と非結晶性合成樹脂材料との少なくともいずれか一方を、有色または無色の透明材料で構成するとともに拡散材を配合した、請求項1から4のいずれか1項に記載の合成樹脂製二重容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate