説明

合糸巻取システム及び合糸巻取方法

【課題】 バリエーション豊かな合糸を実現し、テキスタイルの多様化のニーズに幅広く応えることができる合糸巻取システムを提供する。
【解決手段】 クリール10と、このクリール10から供給された複数の糸Y・Y・・・を合糸してパッケージKに巻き取る巻取機と、を備える。糸選択装置7と、この糸選択装置7で選択された糸を糸継ぎする糸継装置8と、を備える糸切換機構3を、クリール10と巻取機2との間に複数設置する。クリール10には、色や糸種が異なる複数の給糸パッケージ5・5・・・からなるパッケージ群4を、糸切換機構3の1つ1つに対応して仕掛けている。前記糸選択装置7は、パッケージ群4から供給された糸群Y・Y・・・から少なくとも1本を選択して巻取機2側へ供給するように構成する。また、巻き取られる途中の段階で、複数の前記糸切換機構3の全部又は一部を作動させ、巻取機2側へ送る糸Yの選択を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合糸巻取システムの構成及び合糸巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合糸巻取とは、複数個の給糸パッケージからそれぞれ解舒した糸を揃えてパッケージに巻き取ることであり、例えば特許文献1にはこれを実現する合糸機が開示されている。この特許文献1では、巻取中に糸が切れたとき或いは切ったときには、複数本の糸をそれぞれ糸継ぎし、巻取りを再開する旨が開示されており、糸継失敗を減らして糸の無駄を少なくするために、糸継時において引き出された糸の有無を糸監視器で監視しながら糸を引き出し、引き出された糸が所定本数揃うまで引き出し動作を継続する構成を提案している。
【特許文献1】特開平7−187514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年は、テキスタイルに対する消費者のニーズが年々多様化の度を深めており、この観点からは、合糸巻取の多品種少量生産に一層好適で、また、より斬新なテキスタイルを実現できる合糸巻取システム或いは合糸巻取方法の開発が強く望まれている。本発明は以上の目的に鑑みてされたものであり、その主な目的は、特許文献1に示すような従来の合糸機では得られない斬新なテキスタイルを実現できる合糸巻取システム及び合糸巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0005】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成する、合糸巻取システムが提供される。糸を供給する給糸パッケージを複数仕掛けることが可能なクリールと、このクリールから供給された複数の糸を合糸してパッケージに巻き取る巻取機と、を備える。糸選択装置と、この糸選択装置で選択された糸を糸継ぎする糸継装置と、を備える糸切換機構を、前記クリールと前記巻取機との間に複数設置する。前記クリールは、色又は糸種の少なくとも一方を異ならせた複数の前記給糸パッケージからなるパッケージ群を、前記糸切換機構の1つ1つに対応して仕掛けることが可能に構成されている。前記糸切換機構の糸選択装置に対し前記パッケージ群から解舒された糸群が供給されるとともに、当該糸選択装置は、供給された糸群から少なくとも1本を選択して前記巻取機側へ供給するように構成した。
【0006】
この構成により、各合糸において糸を糸切換機構において切り換えることができるので、合糸される糸の構成の変更にも柔軟に対応でき、多品種少量生産に極めて好適な合糸巻取システムを実現できる。
【0007】
前記の合糸巻取システムにおいては、合糸された糸が前記巻取機において巻き取られる途中で、複数の前記糸切換機構の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機側へ送られる糸の選択を切り換えるように制御する制御装置を備えることが好ましい。
【0008】
この構成により、パッケージに巻き取られる途中において、合糸される各糸をそれぞれの糸切換機構で切り換えることができるので、変化に富んだテキスタイルを容易に実現することができる。
【0009】
前記の合糸巻取システムにおいては、前記複数の糸切換機構は上下方向に並設されていることが好ましい。
【0010】
この構成により、複数の糸切換機構をコンパクトな領域に収めることができ、合糸巻取システムの省スペース化が実現される。
【0011】
前記の合糸巻取システムにおいては、上下方向に並設された複数の糸切換機構の組を当該並設方向と垂直な方向に並べるとともに、糸切換機構の組の並べられる方向と平行な方向に前記巻取機を並べて、複数錘分の合糸巻取を行うことが好ましい。
【0012】
これにより、複数錘分の合糸巻取を行う簡素でコンパクトなレイアウトを実現できる。
【0013】
本発明の第2の観点によれば、以下のような、合糸巻取方法が提供される。クリールに仕掛けられた複数の給糸パッケージから糸を供給し、複数本の糸を合糸して巻取機でパッケージに巻き取る。前記クリールには、パッケージごとに色又は糸種の少なくとも一方を異ならせた複数の給糸パッケージからなるパッケージ群を仕掛ける。各パッケージ群に対応して1つずつ設けられた糸選択装置のそれぞれに、当該パッケージ群から解舒される糸群を供給し、各糸選択装置においては、供給された糸群から少なくとも1本の糸を選択して前記巻取機に供給するよう構成する。また、この糸選択装置に1対1で対応するように、当該糸選択装置で選択された糸を糸継ぎする糸継装置を設ける。
【0014】
この方法によると、合糸を構成する各糸を糸選択装置において切り換えることができるので、合糸される糸の構成の変更にも柔軟に対応でき、多品種少量生産に極めて好適な合糸巻取システムを実現できる。
【0015】
前記の合糸巻取方法においては、合糸された糸が前記巻取機において巻き取られる途中で、複数の前記糸選択装置の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機側へ送られる糸の選択を切り換えることが好ましい。
【0016】
この方法によれば、パッケージに巻き取られる途中において、合糸される各糸をそれぞれの糸選択装置で切り換えることができるので、変化に富んだ斬新なテキスタイルを容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る合糸巻取システムの全体的な構成を示した斜視図、図2は糸切換機構の様子及び配列を示す断面側面図である。
【0018】
図1には合糸巻取システムの全体斜視図が示され、この合糸巻取システム1は、多数の給糸パッケージ5・5・・・が仕掛けられるクリール10と、給糸パッケージ5から解舒された糸Yを3本合糸して巻き取って合糸パッケージKを形成するための巻取機2を備えている。
【0019】
また、この合糸巻取システム1は、前記クリール10と巻取機2との間に、糸切換機構3を複数収容するハウジングとしての糸切換函12を備えている。本実施形態では、糸切換機構3が3個上下方向に並べられた状態で前記糸切換函12に備えられる。
【0020】
クリール10は平行型クリールとされており、また、クリールに仕掛けられた給糸パッケージ5は移動されることがない固定クリールに構成されている。図2に示すように、本実施形態においてクリール10は、横方向に6列、縦方向に3段の計18個の給糸パッケージ5を仕掛けることができるように構成されている。
【0021】
図1に示すように給糸パッケージ5はコーン状のパッケージとされるとともに、互いに糸色又は糸種が異なる幾つかの給糸パッケージ5(本実施形態では、6個の給糸パッケージ5)が纏められて、1つのパッケージ群4を構成している。例えば糸色を異ならせる場合、1つ目の給糸パッケージ5を赤色の色糸とし、2つ目を黄色とし、3つ目を青色とし、・・・といったようにである。そして、前記クリール10には、合糸される糸本数に見合う数のパッケージ群4を仕掛けることができるように構成されている。具体的に言えば、本実施形態で合糸される糸は前述したとおり3本であるので、3個のパッケージ群4(給糸パッケージ5の個数で言えば、3×6=18個)を仕掛けることができるように構成されている。なお、この3個のパッケージ群4のそれぞれは、同じく3個設けられる後述の糸切換機構3のそれぞれに、1つ1つ対応させるようにして設けられている。
【0022】
また、前記糸切換函12は、その内部空間を縦方向に3つに仕切った構成としており、こうして形成された区画P・P・・・の1つ1つに、図1に示す如く、糸選択装置7及びノッタ(糸継装置)8からなる糸切換機構3を収容する構成とされている。なお、以降では、3個の糸切換機構3のそれぞれを特定するために、上から数えて1番から3番までの番号を付して説明することとする(#1〜#3)。
【0023】
なお図1の符号9は糸切れを検出するためのセンサであり、このセンサ9は糸切換機構3ごとに1個ずつ配置されている。
【0024】
そして図1及び図2に示すとおり、糸切換機構3のそれぞれの糸選択装置7に対し、対応する前記パッケージ群4から解舒される糸群Y・Y・・・が供給される。即ち、対応するパッケージ群4を構成する様々な糸色の6個の給糸パッケージ5から、それぞれ1本ずつ、計6本の糸Y・Y・・・が解舒され、この6本の色とりどりの糸群Y・Y・・・が、適宜のヤーンガイドを経由して、対応する糸切換機構3の糸選択装置7へ供給されることになる。
【0025】
そして図1や図2に示すように、各糸切換機構3の糸選択装置7に供給された糸群Y・Y・・・のうち、当該糸選択装置7によって適宜選択された1本(又は複数本)の糸Yのみが、巻取機2側へ供給されることになる。
【0026】
上記の糸選択装置7は、例えば特開2004−156185号公報に開示されている糸選択装置と同様の構成であって、図2を参照して以下簡単に説明する。この糸選択装置7は、供給される糸Y・Y・・・の数(6本)に対応して6個設けられた糸ガイド17・17・・・と、この6個の糸ガイド17を個別に上下回動させることが可能な図略のシリンダと、糸Yを吸引可能な図略の吸引ノズル(吸引手段)と、この吸引に抗して糸Yの糸端を保持して待機させることが可能な保持ローラ18と、を備えている。
【0027】
それぞれの糸ガイド17は筒状に設けられるとともに、その内部に、供給された糸Yを挿通できるようになっている。また6個の糸ガイド17は、1個ごとに独立に、上昇位置(選択位置)と下降位置(選択解除位置ないし退避位置)との間で前記シリンダによって切換可能に構成されている。
【0028】
また、前記ノッタ8は、糸選択装置7のすぐ下流側に設けられている。このノッタ8の構成は一般的なものであり、例えば前記特開2004−156185号公報に開示されている公知のノッタ等を採用できるので、詳細な説明を省略する。
【0029】
以下、この構成の糸切換機構3(糸選択装置7及びノッタ8)による糸Yの切換について説明する。図2に示すように、各糸切換機構3の糸選択装置7に導入された6本の糸Y・Y・・・は、糸選択装置7において設けられた前記糸ガイド17・17・・・に、1個につき1本挿通されている。そして、糸選択装置7は、6本のうち1本または複数本の糸Yを選択し、この選択された糸Yに対応する糸ガイド17は上側の選択位置とするとともに、選択されていない糸Yの糸ガイド17は下側の退避位置とするように、前記シリンダを制御する。
【0030】
ここで、糸ガイド17が選択位置に切り換えられたときは、その糸ガイド17に案内されている糸Yは、その糸端を下流側のノッタ8へ受け渡すことができるようになっている。一方、糸ガイド17が退避位置にある場合は、糸Yの糸端はノッタ8へ受け渡されず、保持ローラ18に保持されて待機される。
【0031】
この構成の糸切換機構3において、現在選択されて巻取機2側へ供給されている糸Yを異なる色(或いは糸種)の糸Yへ切り換える場合は、前記シリンダを駆動して、現在供給されている糸Yに相当する糸ガイド17を下降させて退避位置とし、一方で、新しく選択する糸Yを案内している糸ガイド17を退避位置から上昇させて選択位置とする。そして、ノッタ8により現在の糸Yを切断するとともに、その切断された糸端(巻取機2側の糸端)と新しい糸Yの糸端を糸継ぎする。なお、選択されなくなった糸Yの糸端(給糸パッケージ5側の糸端)は、事後に再びその糸Yが選択されるのに備えて、自動的に保持ローラ18によって保持され待機される。このようにして、巻取機2側へ供給する糸Yの色(或いは糸種)を切り換えることができる。
【0032】
前記の糸選択装置7で選択され、上記の3個の糸切換機構3からそれぞれ引き出された糸Y・Y・Yは、図1のようにガイド13へ送られてこれを通過することで合糸され、巻取機2によって所定長だけ巻き取られ、合糸パッケージKを形成する。なお、前記ガイド13に加えて、又はこれに代えて、糸に張力を付与するためのテンサが設けられても良い。
【0033】
前記巻取機2は、ボビン14を回転自在に支持するクレードル15と、このボビン14に糸(合糸)を巻き取って形成された糸層に接触して回転する接触ドラム16と、を備えている。この接触ドラム16の周面には綾振溝22が形成され、合糸された糸に係合してトラバースできるように構成している。
【0034】
そして前記合糸巻取システム1は、前記接触ドラム16を駆動するための電動モータ(モータ)19を備え、この電動モータ19は、角度制御が可能なモータ、例えばパルスモータやサーボモータとして構成されている。この電動モータ19は巻取機2のコントローラ(巻取コントローラ)20に接続され、この巻取コントローラ20によって前記電動モータ19の回転及び停止が制御される。また巻取コントローラ20は、合糸巻取システム1の全体制御のための上位のシステムコントローラ(制御装置)21に接続されている。
【0035】
そして、電動モータ19による巻取機2の回転駆動によってボビン14上に所定長の糸(合糸)が巻き取られて満巻となると、巻取機2は図示しない玉揚機構により玉揚げを行い、次の新しいボビン14に再び糸を合糸して巻き取ることができるようになっている。
【0036】
また、本実施形態の合糸巻取システム1では図1に示すように、前記システムコントローラ21が、前記の3個の糸切換機構3のそれぞれに電気的に接続され、当該糸切換機構3を個別に制御できるように構成されている。詳細は図示しないが、本実施形態ではシステムコントローラ21は公知のマイクロコンピュータ式に構成しており、演算手段としてのCPUや記憶手段としてのROMやRAMを備えるとともに、巻取コントローラ20や前記糸切換機構3に対する制御信号を出力する出力部等を備えて構成している。
【0037】
前記システムコントローラ21には、前記合糸パッケージKの巻取長さの情報が予め設定され、この長さの情報はRAM等の記憶手段に記憶される。そしてシステムコントローラ21は、その記憶された長さだけ巻取機2を駆動すべく巻取コントローラ20へ命令を送信する。この命令を受信した巻取コントローラ20は、指令された巻取長さに相当する接触ドラム16の回転角度を演算し、この回転角度だけ前記巻取機2の電動モータ19を駆動するよう制御する。こうして接触ドラム16が所定の回転角度だけ回転され、糸Yを合糸しながら巻き取って所定長の合糸パッケージKを形成することができる。
【0038】
またシステムコントローラ21は、糸Yの切換箇所と切換先の糸Yの情報(切換情報)を、合糸される3本の糸Y・Y・Yのそれぞれについて入力して設定し、この設定された情報をRAM等の記憶手段に記憶できるように構成されている。
【0039】
上記の切換情報を例として挙げるとすれば、「巻始めにおいては、1番〜3番の糸Yは、すべて青色とする。そして、巻始めから180cmの地点で、1番の糸Yを黄色に、2番の糸Yを赤色に、それぞれ切り換える。また、巻始めから230cmの地点では、1番の糸Yだけを白色に切り換える。」といった情報である。なお、上記の例において言及された糸Yの番号(1番〜3番)は、本実施形態では糸切換機構3に付された番号(1番〜3番、#1〜#3)に対応するように付されたものである。
【0040】
そして、システムコントローラ21は、上記の切換情報に基づき、巻始めから切換箇所までの距離に相当する回転角度だけ巻取機2の接触ドラム16を回転させた後、切り換えるべき糸Yに対応する糸切換機構3(糸選択装置7及びノッタ8)のみを選択的に作動させて、糸Yを切り換えるように構成されている。
【0041】
上記の切換情報の例に基づく制御の具体例を説明すれば、最初はシステムコントローラ21は1番〜3番の糸切換機構3に信号を送って、1番〜3番の糸Y・Y・Yについて、何れも青色の糸Yが選択されて供給されるようにする。その後、システムコントローラ21は巻取コントローラ20を介して前記電動モータ19を駆動して糸Yをボビン14に巻き始め、糸切換機構3の位置が巻始めから180cmの地点に相当するまで接触ドラム16を駆動して停止させる。その後、システムコントローラ21は1番と2番の糸切換機構3に糸切換指令信号を送り、1番の糸Yを黄色に、2番の糸Yを赤色に、それぞれ切り換える。
【0042】
なお、上記の切換時においては、3番の糸切換機構3は切換動作を行わない。即ち、巻始めから180cmの地点では、3つの糸切換機構3のうち、1番と2番の糸切換機構3のみが選択的に作動される。ただしこれは、その旨の前記糸切換情報が設定されているからであって、例えば1番から3番までのすべてを赤色に切り換える旨の糸切換情報が設定されている場合は、1番から3番までの3つすべての糸切換機構3が作動することになる。
【0043】
切換完了後は、再び電動モータ19を駆動し、今度は糸切換機構3が巻始めから230cmの地点に位置する回転角度になるまで巻取機2を駆動して停止させる。その後、システムコントローラ21は1番の糸切換機構3へ糸切換指令信号を送って選択的に作動させ、当該糸切換機構3が担当する1番の糸Yについて白色に糸Yを切り換える。
【0044】
このように制御することにより、1つの合糸パッケージKが巻き取られる途中で、合糸される1本1本の糸Yについて長さ方向に色や糸種を変化させることができ、多様な意匠を実現することができる。
【0045】
また、合糸される糸本数に見合う数(3個)だけノッタ8が設けられている本実施形態では、各ノッタ8は3本のうち1本の糸Yのみを受け持てば良く、3本の糸Yを一斉に切り換える際もそれぞれのノッタ8で分担して短時間で行うことができる。また、1つのノッタ8が1本の糸Yの切換を1対1で担当するので、システムコントローラ21側での制御を簡素化できる。
【0046】
また本実施形態では、巻取機2において接触ドラム16の回転角度の制御により前記の切換箇所を位置決めするので、合糸される糸相互での糸Yの切換位置のズレを少なくでき、意図したテキスタイルを的確に表現することができる。また本実施形態では、巻取機2の電動モータ19の回転角度(接触ドラム16の回転量)で測長する構成であるので、特別な測長装置が必要なくなり、構成の簡素化に寄与することができる。
【0047】
以上に示すように本実施形態の合糸巻取システム1では、糸Yを供給する給糸パッケージ5・5・・・を複数仕掛けることが可能なクリール10と、このクリール10から供給された複数の糸Y・Y・・・を合糸してパッケージKに巻き取る巻取機2と、を備える。そして、糸選択装置7と、この糸選択装置7で選択された糸を糸継ぎするノッタ8と、を備える糸切換機構3を、前記クリール10と前記巻取機2との間に形成される糸群Y・Y・・・の経路の中途に複数設置している。また、前記クリール10は、色を異ならせた複数の前記給糸パッケージ5からなるパッケージ群4を、前記糸切換機構3の1つ1つに対応して仕掛けることが可能に構成されている。そして、前記糸切換機構3の糸選択装置7に対し前記パッケージ群4から解舒された糸群Y・Y・・・が供給されるとともに、当該糸選択装置7は、供給された糸群Y・Y・・・から少なくとも1本を選択して前記巻取機2側へ供給する。
【0048】
これにより、合糸される糸Y・Y・Yのそれぞれを糸切換機構3で切り換えることができるので、合糸される糸Yの構成の変更にも柔軟に対応でき、多品種少量生産に極めて好適な合糸巻取システム1を実現できている。
【0049】
また、本実施形態では、合糸された糸Y・Y・Yが前記巻取機2において巻き取られる途中で、複数の前記糸切換機構3の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機2側へ送られる糸Yの選択を切り換えるように制御するシステムコントローラ21を備えている。
【0050】
これにより、パッケージKに巻き取られる途中において、合糸される糸Yのそれぞれを各糸切換機構3で切り換えることができるので、変化に富んだ斬新なテキスタイルを容易に実現することができる。
【0051】
また、本実施形態の合糸巻取システム1においては、1番から3番の糸切換機構3は上下方向に並設されている。これにより、合糸巻取システム1のコンパクトなレイアウトが実現され、設置スペースを小さくすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、以下のような方法で合糸巻取が実現されている。即ち、クリール10に仕掛けられた複数の給糸パッケージ5・5・・・から糸Y・Y・・・を供給し、複数本の糸Y・Y・Yを合糸して巻取機2でパッケージKに巻き取る。そして、前記クリール10には、パッケージKごとに色を異ならせた複数の給糸パッケージ5・5・・・からなるパッケージ群4を仕掛ける。各パッケージ群4に対応して1つずつ設けられた糸選択装置7のそれぞれに、当該パッケージ群4から解舒される糸群Y・Y・・・を供給し、各糸選択装置7においては、供給された糸群Y・Y・・・から少なくとも1本の糸Yを選択して前記巻取機2に供給するよう構成する。また、この糸選択装置7に1対1で対応するように、当該糸選択装置7で選択された糸を糸継ぎするノッタ8を設ける。
【0053】
この方法により、合糸される糸Y・Y・Yのそれぞれを糸選択装置7で切り換えることができるので、合糸される糸Yの構成の変更にも柔軟に対応でき、多品種少量生産に極めて好適な合糸巻取方法とすることができる。
【0054】
また、上記の合糸巻取方法は、合糸された糸Y・Y・Yが前記巻取機2において巻き取られてパッケージKを形成する途中で、複数の前記糸選択装置7の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機2側へ送られる糸Yの選択を切り換えている。
【0055】
この方法によれば、パッケージKに巻き取られる途中において、合糸される各糸Y・Y・Yをそれぞれの糸選択装置7で切り換えることができるので、変化に富んだ斬新なテキスタイルを容易に実現することができる。
【0056】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は例えば以下のように変更することもできる。
【0057】
(1)上下方向に並設された3個の糸切換機構3(1番から3番)を1つの組として、この糸切換機構3の組を水平な方向(即ち、糸切換機構3の並設方向と垂直な方向に)に複数並べ、この組の並べられる方向と平行な方向に巻取機2を複数並べて、複数錘分の合糸巻取を行うように構成しても良い。この場合、3個の糸切換機構3の組ごとに1つの糸切換函12を設置しても良いし、1つの糸切換函12に複数組分の糸切換機構3をまとめて収納しても良い。また、クリール10は糸切換機構3の1組ごとに1つ設けても良いし、糸切換機構3の複数組分を1つのクリール10で受け持っても良い。上記の構成の場合、複数錘分の合糸巻取を行う簡素でコンパクトなレイアウトを実現できる。
【0058】
(2)糸継装置として上記実施形態ではノッタ8を採用したが、ノッタ8の代わりにスプライサ等の他の糸継装置を採用しても良い。また、クリール10は本実施形態では平行クリールとしたが、他の配列方式のものを採用しても良い。更には、前記クリール10や、糸Yの経路の中途の適宜位置には、糸Yの張力を調節するテンション装置が設けられても良い。
【0059】
(3)糸切換機構3は、上記実施形態では合糸される糸本数と同数の3個を設置したが、少なくとも3個であれば良く、例えば故障時に備えてスペアの糸切換機構3を追加し、その結果として糸切換機構3の総数が合糸される糸本数を超えることになっても勿論構わない。
【0060】
(4)各糸選択装置7で選択されるのは1本の糸Yとは限らない。例えば、1番の糸切換機構3の糸選択装置7において6つのうち2つの糸ガイド17・17を選択位置とすれば、1番の糸切換機構3から同時に2本の糸Y・Yを巻取機2側へ供給し、他の糸切換機構3からの糸Yと併せて計4本を合糸することが可能である。これにより、より多様なテキスタイルを実現することができる。
【0061】
(5)また、上記実施形態では糸選択装置7とノッタ8とから糸切換機構3を構成したが、糸Yを貯溜可能な糸貯溜装置を糸切換機構3に更に備えても良い。この場合、合糸パッケージKの形成途中において糸Yの切換のために巻取機2の回転を停止させる時間を少なくでき、或いはゼロとできるので、生産性を向上させることができる。
【0062】
(6)上記実施形態では糸Yの測長は接触ドラム16の回転角度を検出することで行っていたが、例えば巻取機2で巻き取られる前の糸Yに図略の測長ローラを接触させ、この測長ローラの回転量を検出することで糸Yの巻取り長さを演算して求め、上記の切換箇所に到達したか否かの判定を行うようにしても良い。
【0063】
(7)糸の合糸本数(パッケージ群4や糸切換機構3の個数)、1つのパッケージ群4を構成する給糸パッケージ5・5・・・の数は、上記に限定されず、適宜変更することができる。また、給糸パッケージ5・5・・・の色又は糸種の組み合わせ等も任意であって、実現したい紋様や風合い等に応じて、同じ糸種の中で色のみを切り換えたり、同色で糸種のみを切り換えたり、色と糸種を同時に切り換えたり、必要に応じて様々な糸の切換が可能となるように適宜選択して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る合糸巻取システムの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】糸切換機構の様子及び配列を示す断面側面図。
【符号の説明】
【0065】
1 合糸巻取システム
2 巻取機
3 糸切換機構
4 パッケージ群
5 給糸パッケージ
7 糸選択装置
8 ノッタ(糸継装置)
10 クリール
12 糸切換函
13 ガイド
19 電動モータ(モータ)
20 巻取コントローラ
21 システムコントローラ(制御装置)
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給する給糸パッケージを複数仕掛けることが可能なクリールと、
このクリールから供給された複数の糸を合糸してパッケージに巻き取る巻取機と、を備える合糸巻取システムにおいて、
糸選択装置と、この糸選択装置で選択された糸を糸継ぎする糸継装置と、を備える糸切換機構を、前記クリールと前記巻取機との間に複数設置し、
前記クリールは、色又は糸種の少なくとも一方を異ならせた複数の前記給糸パッケージからなるパッケージ群を、前記糸切換機構の1つ1つに対応して仕掛けることが可能に構成されており、
前記糸切換機構の糸選択装置に対し前記パッケージ群から解舒された糸群が供給されるとともに、当該糸選択装置は、供給された糸群から少なくとも1本を選択して前記巻取機側へ供給するように構成したことを特徴とする、合糸巻取システム。
【請求項2】
請求項1に記載の合糸巻取システムであって、
合糸された糸が前記巻取機において巻き取られる途中で、複数の前記糸切換機構の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機側へ送られる糸の選択を切り換えるように制御する制御装置を備えることを特徴とする合糸巻取システム。
【請求項3】
請求項2に記載の合糸巻取システムであって、前記複数の糸切換機構は上下方向に並設されていることを特徴とする合糸巻取システム。
【請求項4】
請求項3に記載の合糸巻取システムであって、上下方向に並設された複数の糸切換機構の組を当該並設方向と垂直な方向に並べるとともに、糸切換機構の組の並べられる方向と平行な方向に前記巻取機を並べて、複数錘分の合糸巻取を行うことを特徴とする、合糸巻取システム。
【請求項5】
クリールに仕掛けられた複数の給糸パッケージから糸を供給し、複数本の糸を合糸して巻取機でパッケージに巻き取る合糸巻取方法であって、
前記クリールには、パッケージごとに色又は糸種の少なくとも一方を異ならせた複数の給糸パッケージからなるパッケージ群を仕掛け、
各パッケージ群に対応して1つずつ設けられた糸選択装置のそれぞれに、当該パッケージ群から解舒される糸群を供給し、各糸選択装置においては、供給された糸群から少なくとも1本の糸を選択して前記巻取機に供給するよう構成し、
また、この糸選択装置に1対1で対応するように、当該糸選択装置で選択された糸を糸継ぎする糸継装置を設けることを特徴とする、合糸巻取方法。
【請求項6】
請求項5に記載の合糸巻取方法であって、
合糸された糸が前記巻取機において巻き取られる途中で、複数の前記糸選択装置の全部又は選択された一部を作動させて、前記巻取機側へ送られる糸の選択を切り換えることを特徴とする合糸巻取方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−55778(P2007−55778A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244596(P2005−244596)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】