説明

吊りボルトの緩み止め装置

【課題】組立作業を容易にする。
【解決手段】吊車20からの吊りボルト21の雄ねじ部21aに連結する支持ブロック11と、支持ブロック11に着脱自在に付設するロック金具12とを設け、ロック金具12を介して吊りボルト21を回転不能に拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動パネル用の吊りボルトの緩みを有効に防止することができる吊りボルトの緩み止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動間仕切り用の移動パネルは、たとえば部屋の天井部に設置するガイドレール内の吊車から垂下する吊りボルトを介して吊下されており、吊りボルトは、ロックナットを介して緩み止めするのが普通である。
【0003】
しかし、吊りボルトの緩み止め用のロックナットは、取付方により回転操作が容易でない場合が少なくない。そこで、回り止め用の座金を利用する吊りボルトの緩み止め機構が提案されている(特許文献1)。このものは、吊りボルトに対して相対回転不能の座金を組み合わせ、吊りボルトをねじ込むソケットの上面において座金を回転不能に拘束することにより、座金を介して吊りボルトを緩み止めすることができる。
【特許文献1】特開2000−310084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、座金は、吊りボルトに対して相対回転しないように、たとえば非円形断面の吊りボルトに適合する孔を設け、この孔に吊りボルトを挿通させるから、吊りボルトに移動パネルを連結するに際して、あらかじめ吊りボルトと一体にして作業しなければならず、組立作業が極めて煩雑であるという問題が避けられなかった。吊りボルトに移動パネルを連結するとき、吊りボルトを締付け方向に回転させなければならないのに、吊りボルトと一体の座金は、吊りボルトの回転を阻止し、作業の進行を著るしく阻害するからである。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、吊りボルトと別体のロック金具を用いることによって、組立作業を含む一連の作業を妨げるおそれがない吊りボルトの緩み止め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、移動パネルの上端部に装着し、吊車からの吊りボルトの雄ねじ部に連結する支持ブロックと、支持ブロックに着脱自在に付設するロック金具とを備えてなり、ロック金具は、支持ブロック上において吊りボルトを回転不能に拘束することをその要旨とする。
【0007】
なお、ロック金具は、吊りボルトの角柱部に係合する一対の突出部を有することができ、支持ブロックにねじ止めする取付部を有することができる。
【0008】
また、支持ブロックは、移動パネルの上端部の押出形材のフレーム材に移動自在に挿入し、セットボルトを介して固定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、支持ブロックは、吊りボルトの雄ねじ部をねじ込んで連結することにより、吊りボルトを介して吊車により移動パネルを移動自在に吊り下げて支持することができる。吊りボルトは、吊車から垂下しており、吊車は、たとえば部屋の天井部に設置するガイドレール内に移動走行自在に収納されているからである。一方、支持ブロックに付設するロック金具は、支持ブロック上において吊りボルトを回転不能に拘束することにより、吊りボルトの回転を阻止し、吊りボルトを緩み止めすることができる。なお、ロック金具は、支持ブロックに対して着脱自在であるから、たとえば支持ブロックを吊りボルトに連結するとき、吊りボルトを締め直しするときなど、吊りボルトを回転させる必要があるときは、支持ブロックからロック金具を取り外し、吊りボルトを回転自在に解放することにより、一連の作業に支障を生じるおそれがない。
【0010】
なお、ここでいう移動パネルとは、移動間仕切り用の移動パネルの他、いわゆる吊り戸を含むものとする。また、吊車のローラは、垂直回転形、水平回転形のいずれであってもよく、吊車に搭載するローラの数も、1個であってもよく、2個以上であってもよい。さらに、ロック金具による吊りボルトの拘束位置は、支持ブロックの上面に一致させてもよく、支持ブロックの上面から適当な距離だけ上方であってもよい。
【0011】
ロック金具は、一対の突出部を介して吊りボルトの角柱部に係合させることにより、吊りボルトを回転不能に拘束することができる。なお、吊りボルトの角柱部は、円形断面の吊りボルトを軸対称に2面または4面の平行平面によって切除する形態が好ましく、切除後の角部に円弧状の外形が残存していてもよい。
【0012】
支持ブロックは、移動パネルの上端部のフレーム材に移動自在に挿入することにより、吊りボルトによる移動パネルの吊下げ位置を任意に移動調節することができる。なお、押出形材のフレーム材は、たとえばガラス板やプラスチック板による薄板状の移動パネルに特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
吊りボルトの緩み止め装置は、支持ブロック11とロック金具12とを組み合わせてなる(図1)。
【0015】
吊りボルト21は、吊車20から垂下されている。吊車20は、2段の水平回転形のローラ22、22を有し、部屋の天井部Cに設置するガイドレールGR内に移動走行自在に収納されている(図2)。
【0016】
支持ブロック11は、フレーム材31を介して移動パネル30の上端部に装着されている。移動パネル30は、透明なガラス板またはプラスチック板の板材32の上縁に沿って押出形材のフレーム材31を付設して構成されている。ただし、板材32の下縁、左右の両側縁にも、それぞれ図示しない保護用のフレーム材を付設してもよい。フレーム材31、板材32は、接着剤33、33を介して接合されており、フレーム材31の上端面には、左右の可撓性のシール材34、34が上向きに付設されている。
【0017】
吊りボルト21の下端部には、雄ねじ部21aが形成されている(図1)。また、支持ブロック11には、雄ねじ部21aに適合する雌ねじ11aが形成されている。そこで、支持ブロック11は、雄ねじ部21aを雌ねじ11aにねじ込むことにより、吊りボルト21の雄ねじ部21aに連結されている。
【0018】
支持ブロック11には、セットボルト13用の雌ねじ11bが併せて形成されており、セットボルト13には、角座金13aが付属している。支持ブロック11は、フレーム材31に移動自在に挿入し(図3、図4)、角座金13aをフレーム材31の上部の内向きの溝31a、31aに係合させてセットボルト13を締め付けることにより、フレーム材31の長さ方向の任意の位置に固定することができる。
【0019】
なお、支持ブロック11は、吊りボルト21を垂下する吊車20とともに、図2、図4の各紙面に垂直な移動パネル30の幅方向、すなわちフレーム材31の長さ方向に前後一対を装着するものとする。そこで、移動パネル30は、前後の吊車20、20を介して、ガイドレールGRに沿って移動自在に吊下されている。
【0020】
ロック金具12は、水平の拘束部12aの一端に垂直の取付部12bを一体に付設して構成されている(図1、図3)。拘束部12aの先端には、一対の突出部12c、12cが形成されており、突出部12c、12cは、吊りボルト21の中間の角柱部21bを収納するようにして、両外側から角柱部21bに係合させることができる(図1の二点鎖線、図5)。
【0021】
ただし、角柱部21bは、雄ねじ部21aの上方に形成されており、円形断面の吊りボルト21の表面に軸対称の平行平面21c、21c…を形成することにより、角部に小さな円弧部21d、21d…を残す正方形断面に形成されている。また、各突出部12cの先端部、基部は、それぞれ内側の角部が円弧状に丸められている。ロック金具12は、取付部12bを貫通する止めねじ12dを介し、支持ブロック11の一方の端面にねじ止めされている。また、ロック金具12は、支持ブロック11とともにフレーム材31内に挿入するとき、拘束部12aの左右の側端部をフレーム材31の溝31a、31aに係合させるものとする(図2)。
【0022】
吊りボルト21は、ロック金具12を支持ブロック11に取り付けないとき、支持ブロック11に対して相対回転自在である。すなわち、吊りボルト21は、雄ねじ部21aを支持ブロック11の雌ねじ11aにねじ込んで回転させ、吊車20を介してガイドレールGRから吊下する移動パネル30の高さを調節することができる。また、吊りボルト21は、止めねじ12dを介してロック金具12を支持ブロック11に取り付け、突出部12c、12cを吊りボルト21の角柱部21bに係合させることにより、支持ブロック11に対して相対回転不能に拘束され、確実に緩み止めすることができる。
【0023】
なお、吊りボルト21は、たとえば左右のシール材34、34の一方または双方を取り外し、止めねじ12dを外してロック金具12を支持ブロック11から分離させることにより、たとえば角柱部21bにスパナを掛けて容易に締め直し、移動パネル30の高さを再調節することができる。そこで、ロック金具12は、支持ブロック11、拘束部12aの間に適切な隙間dを設け(図3)、隙間d内に雄ねじ部21a、角柱部21bの境界を配置するものとする。
【0024】
以上の説明において、吊車20は、水平回転形に代えて、垂直回転形のローラ22を搭載してもよく、吊車20上のローラ22は、1個でもよく、2個以上であってもよい。また、吊りボルト21の角柱部21bは、図5のように、雄ねじ部21aの最大外径を平行平面21c、21cの間隔に一致させてもよく、これに代えて、雄ねじ部21aの最大外径を円弧部21d、21d…の外径に一致させ、円弧部21d、21d…の表面にも雄ねじ部21aのねじを延長して形成してもよい。後者によれば、吊りボルト21は、雄ねじ部21aに加えて、角柱部21bをも支持ブロック11の雌ねじ11aにねじ込むことができ、ロック金具12の拘束部12aと支持ブロック11との隙間d=0に設定することも可能である。
【0025】
なお、この発明は、フレーム材31、板材32による薄板状の移動パネル30に限らず、たとえば枠状の構造材の内部にペーパハニカムの芯材を組み込み、両面に表面材を貼着する形式の移動パネルや、吊りボルト21付きの吊車20を介して吊下する吊り戸に対しても、広く好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】全体構成分解斜視図
【図2】図1のX1 矢視相当の使用状態説明図
【図3】図1のX2 矢視相当の模式組立説明図
【図4】図1のX3 矢視相当の使用状態説明図
【図5】図3のY−Y線矢視相当拡大断面図
【符号の説明】
【0027】
11…支持ブロック
12…ロック金具
12b…取付部
12c…突出部
13…セットボルト
20…吊車
21…吊りボルト
21a…雄ねじ部
21b…角柱部
30…移動パネル
31…フレーム材

特許出願人 小松ウオール工業株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動パネルの上端部に装着し、吊車からの吊りボルトの雄ねじ部に連結する支持ブロックと、該支持ブロックに着脱自在に付設するロック金具とを備えてなり、該ロック金具は、前記支持ブロック上において吊りボルトを回転不能に拘束することを特徴とする吊りボルトの緩み止め装置。
【請求項2】
前記ロック金具は、吊りボルトの角柱部に係合する一対の突出部を有することを特徴とする請求項1記載の吊りボルトの緩み止め装置。
【請求項3】
前記ロック金具は、前記支持ブロックにねじ止めする取付部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の吊りボルトの緩み止め装置。
【請求項4】
前記支持ブロックは、移動パネルの上端部の押出形材のフレーム材に移動自在に挿入し、セットボルトを介して固定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の吊りボルトの緩み止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−133060(P2009−133060A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307530(P2007−307530)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000184621)小松ウオール工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】