説明

吊り上げフック

本発明は、吊り上げ対象物(3)に形成された円柱状の吊り上げ面(5)において吊り上げ対象物(3)を把持するための吊り上げフックに関するものであり、吊り上げフック(2)は、フックシャンク(6)と、フックシャンク(6)につながるフック部(7)と、吊り上げフック(2)を吊り上げ対象物(3)にロックさせるためのロック装置(8)とを有する。吊り上げるべき部分(3)に吊り上げフックを確実に装着させるために、機械操作装置(9)がフック部(7)の上方に据え付けられて、吊り上げ面(5)の上面と共動して、フック部(7)を吊り上げ面(5)の下面の吊り上げ位置へと案内する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、吊り上げ対象物に形成された円柱状の吊り上げ面において吊り上げ対象物を把持するための吊り上げフックに関するものであり、この吊り上げフックは、フックシャンクと、フックシャンクにつながるフック部と、吊り上げフックを吊り上げ対象物にロックさせるためのロック装置とを有し、機械操作装置がフック部の上方に据え付けられて、吊り上げ面の上面と共動して、フック部を吊り上げ面の下面の吊り上げ位置へと案内する。本発明はとくに、抄紙機の大型ペーパーロールを処理するためのフックに関するものであり、この場合、通常は2本のフックが設けられる。これらのフックはペーパーロールを処理するための積荷運搬梁の両端に取り付けられ、ペーパーロールの円柱状巻取軸に設けられた円柱状の吊り上げ面と係合するように構成される。またフックは、円柱状の吊り上げ面を備えた他の対象物を処理するのにも適している。
【0002】
従来技術による吊り上げフックが、例えば米国特許第2,577,790A号、同第5,114,200A号公報、および日本国特開2001-354388号公報に開示されている。
【0003】
ペーパーロールを吊り上げて移動させるために抄紙機に用いられるクレーンの積荷運搬梁の吊り上げフックは、まず、ペーパーロールの巻取軸の両端に形成された円柱状の吊り上げ面溝に案内され、次にフックは溝内に案内されて、軸の吊り上げ面溝へフックが下方から確実に係合するようにし、その後、フックが吊り上げ面溝にロックされることで、ペーバーロールを吊り上げて、移動させることができる。この作業は、自動操作または手動操作のどちらででも行える。
【0004】
上述のペーパーロールの取り扱いにおいては、とくに自動吊り上げ操作に関し、吊り上げフックが吊り上げ面溝にきちんと係合せず、フックが溝の外側に逸れたり、またはフックのロックが正しいロック位置で行われなかった場合でも誤ってフックのロックが確認されたりするという問題がある。それにより、吊り上げに際して、ペーパーロールまたはその端部の一方がフックの一方または両方からはずれてしまうと、深刻な被害が生じる。一般的に、ロールが10cmを超える高さからロールの支持台の上に落下した場合、例えば、ペーパーロールの高価な巻取軸がねじれてしまい、使用不可能となる。一方、ロールが抄紙機の床の上に落ちた場合、床構造全体が広い範囲で大きな損傷を受けることもあり得る。
【0005】
自動吊り上げ操作は一般に、吊り上げフックや、場合によってはペーパーロールの巻取軸にも装着された位置検出器が提供する情報を利用して行われるが、この情報はあらゆる状況において完璧な信頼性がある訳ではない。そのため、通常、人の手で、または視覚的にフックの固定具合を確認しなければならず、実際上、たいていの場合、クレーンの操作者がその場まで歩いて行って状態を確認することになる。
【0006】
手動吊り上げ操作に関しては、通常、クレーン操作者が吊り上げフックをペーパーロールに手で留めてロックするが、そのために、クレーン操作者は常にクレーンとペーパーロールの間を行き来しなければならない。
【0007】
このことから、吊り上げフックを確実に操作しなければ、ペーパーロールの緊締およびロックの確実性が低下するであろうし、損傷による多額の損害をもたらすであろうことは明白である。この損害を避けようとすると、昨今では通常のことであるが、歩行による手動および視覚的な操作確認が余儀なくされるため、ペーパーロールの取り扱いにおいて不必要な遅れが生じる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述の問題を克服することを目的とする。とくに、ペーパーロールの全自動吊り上げおよび移動動作を、いかなるリスクも伴わずに行うことのできる方式を提供することを目的とする。
【0009】
これらの目的は、以下の事項を特徴とする本発明の方式によって達成される。すなわち、吊り上げ面は溝付きの面であり、機械操作装置は、吊り上げ面より幅が狭くフックシャンクからフック部の横方向に沿って前方に伸びる突起部であり、この突起部の前端には操作アームが設けられ、これは、突起部の上面に向かって上向きに傾斜した下面と、突起部の先端に向かって先細りの側面とを有している。
【0010】
言い換えると、本発明は、把持対象物の吊り上げ点から見て外側を向いた側部に機械操作装置が接触することでこれが駆動されることに基づいている。
【0011】
吊り上げフックを吊り上げ位置に案内する操作装置の駆動力はクレーンの移動動作によって発生し、後述の機械操作装置の形状を活用して、フックを平衡位置から逸脱させて吊り上げ面に対する吊り上げ接点へと導く。
【0012】
本発明は、完全自動化吊り上げ作業に関しても絶対的信頼性のある吊り上げ結果をもたらすことができ、また、人が操作確認に関与する必要がないため、手動および自動吊り上げのどちらの場合に関しても、吊り上げ作業を格段に速められるという明確な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、本発明を、好適な実施例に関連して、添付図面を参照してより詳細に述べる。すなわち、
【図1】本発明による吊り上げフックが端部に締結されたクレーンの積荷運搬梁の正面図である。
【図2】図1におけるフックの1つを示す側面図である。
【図3】上述の各図における吊り上げフックが操作装置の保護ケーシングを備え、ロック装置が解除されている状態を示す斜視図である。
【図4A】ないし
【図4C】本発明の吊り上げフックの動作を段階的に示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0014】
図1を参照すると、本図は橋型クレーンの積荷梁1を示し、梁の両端には、本発明の吊り上げフック2が設けられている。また、吊り上げフック2は、抄紙機の大型ペーパーロール3の巻取軸4に設けられた円柱状の吊り上げ面溝5と係合している様子が示され、これらの溝の径は、隣接する巻取軸4の表面部分より小さい。
【0015】
図2および図3は吊り上げフック2をより詳細に示す図であり、吊り上げフック2は、フックシャンク6と、フックシャンク6につながるフック部7と、吊り上げフックを吊り上げ対象物、すなわち本例ではロール3にロックさせるためのロック装置8と、フック部7の上方に据え付けられて、吊り上げ面溝5の上面と共動してフック部7を吊り上げ面溝の下面の吊り上げ位置へと案内する機械操作装置9とを含む。
【0016】
操作装置9は突起部9であり、その幅は吊り上げ面溝5より狭く、フックシャンク6からフック部7の横方向に沿って前方に伸び、突起部9の前端には操作アーム10が設けられ、その下面13は突起部9の上面12に向かって上向きに傾斜し、側面15は突起部9の先端14に向かって先細りになり、またこれに対して、フックシャンク6から突起部の操作アーム10に向かって伸びる突起部アーム11の下面16はわずかに下向きに傾斜していて、その傾斜角は、突起部の操作アーム10の下面13の上向き傾斜角より小さい。
【0017】
ロック装置8は軸受でフックシャンク6または操作装置9に取り付けられる押し込みレバー8であり、レバーの先端17は、吊り上げ対象物3の吊り上げ溝面5の外側の、フック部7の横軸方向に位置して、吊り上げ面溝5に隣接する円柱状のロック面18と共動し、ロック面の径は吊り上げ面溝5の径より大きい。吊り上げ対象物3、または本例ではとくに巻取軸4の吊り上げ面溝5をフック部7に案内する場合、レバー8は吊り上げ面溝5の上面に案内されて旋回するように配設されて、吊り上げ面溝5がフック部7にはめ込まれるようにし、これに対し、吊り上げ面溝5、すなわち吊り上げ対象物3がフック部7にはまっている場合、レバー8は不載荷状態であり、レバー8の先端17は、円柱状のロック面18の中心点を通ってフック部7の前方延伸方向に突き出されて、吊り上げ対象物3をフック部7にロックする。ロックレバー8の強制動作は、バネ(図示せず)によって実現してもよく、このバネは、例えばレバー8をフックシャンク6に枢軸可能に取り付ける軸19に配設してもよい。またロックレバー8は、レバーをフックシャンク6の方向に旋回させて吊り上げ対象物3をフック部から取り外すアクチュエータ21を備えていてもよい。アクチュエータ21は電気式もしくは油圧式でよく、または、例えばこれらを組み合わせたものでもよい。
【0018】
フック部7の把持面22(つまり操作面溝5の下面と接触する面)および操作装置9は、フック部7の操作および取付けを確実にする電気的位置センサ装置23、24を備えてもよい。操作装置9のセンサ装置24は、溝5を通して「見る」ことで吊り上げ面溝5へ向かう方向を伝達し、フック部7のセンサ装置23は、吊り上げ面溝5の下面がフック部7に十分にはまったことを知らせる。
【0019】
図4Aから図4Cは、吊り上げフック2、すなわちフックのフック部7が吊り上げ対象物3の吊り上げ面溝5に進入する様子を段階的に示す。図4Aでは、吊り上げフック2は吊り上げ対象物3の吊り上げ点、つまり巻取軸4の吊り上げ面溝5に向かって、操作装置9の操作アーム10が溝5に接するまで水平方向に動かされる。ついで操作装置9がフック2をその平衡位置から逸脱させ、フック部7を吊り上げ面溝5の下面へと案内し、その際、操作装置9は図4Bに示すように吊り上げ面溝5の上面を摺動する。図4Bは、アクチュエータ21によって解除状態にされるロック装置8を示すが、実際には、ロック装置は巻取軸4のロック面18によって誘導される。図4Cは、吊り上げフック2が持ち上がって、吊り上げ面溝5の誘導から解放される操作装置9を示す。吊り上げ面溝5の下面、およびそれに伴う吊り上げ対象物は、フック2のフック部7にはまっている。同時に、ロック装置8がロック位置へ自動的に旋回しているか、または旋回されている。
【0020】
上述の明細書は、本発明の基本概念を単に例証するものである。したがって、当業者は本願特許請求の範囲内において、その詳細を変更することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げ対象物(3)に形成された円柱状の吊り上げ面(5)において該吊り上げ対象物(3)を把持するように配設され、フックシャンク(6)と、該フックシャンク(6)につながるフック部(7)と、吊り上げフック(2)を前記吊り上げ対象物(3)にロックさせるためのロック装置(8)とを含み、機械操作装置(9)が該フック部(7)の上方に据え付けられて、前記吊り上げ面(5)の上面と共動して該フック部(7)を該吊り上げ面(5)の下面の吊り上げ位置へと案内する吊り上げフック(2)において、該吊り上げ面(5)は溝付き面であり、前記操作装置(9)は突起部(9)であり、該突起部は、幅が前記吊り上げ面より狭く、前記フックシャンク(6)から前記フック部(7)の横方向に沿って前方に伸び、該突起部の前端には操作アーム(10)が設けられ、該操作アームは、該突起部の上面(12)に向かって上向きに傾斜した下面(13)と、該突起部の先端(14)に向かって先細りの側面(15)とを有することを特徴とする吊り上げフック。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り上げフックにおいて、前記フックシャンク(6)から前記突起部の前記操作アーム(10)に向かって伸びる突起部アーム(11)の下面(16)はわずかに下向きに傾斜し、その傾斜角は該突起部(9)の操作アーム(10)の下面(13)の上向き傾斜角より小さいことを特徴とする吊り上げフック。
【請求項3】
請求項2に記載の吊り上げフックにおいて、前記ロック装置は軸受で前記フックシャンク(6)または前記操作装置(9)に取り付けられた押し込みレバー(8)であり、該レバーの先端(17)は、前記吊り上げ対象物(3)の前記吊り上げ面(5)の外側で前記フック部(7)の横方向に位置して、該吊り上げ面(5)に隣接する円柱状のロック面(18)と共動し、該ロック面の径は該吊り上げ面(5)の径より大きく、該吊り上げ対象物(3)を該フック部(7)に案内すると、前記レバー(8)はこの案内動作によって旋回するよう配設されて該吊り上げ対象物(3)の吊り上げ面(5)が該フック部(7)にはめ込まれ、これに対し、該吊り上げ対象物(5)が該フック部(7)にはまっている場合、該レバー(8)は不載荷状態であり、該レバー(8)の先端(17)は、前記円柱状のロック面(18)の中心点を通って該フック部(7)の前方延伸方向に突き出されて、該吊り上げ対象物(3)を前記フック(2)にロックすることを特徴とする吊り上げフック。
【請求項4】
請求項3に記載の吊り上げフックにおいて、前記ロックレバー(8)の強制動作はバネによって生じることを特徴とする吊り上げフック。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の吊り上げフックにおいて、前記操作装置(9)の強制動作は釣り合い重り(20)によって生じることを特徴とする吊り上げフック。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載の吊り上げフックにおいて、前記ロックレバー(8)は、該レバーを前記フックシャンク(6)方向に旋回させて前記吊り上げ対象物(3)を前記フック部(7)から取り外すアクチュエータ(21)を備えることを特徴とする吊り上げフック。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の吊り上げフックにおいて、前記フック部(7)の把持面(22)および前記操作装置(9)は、該フック(2)の操作および取付けを確実にする電気的位置センサ装置(23、24)を備えることを特徴とする吊り上げフック。
【請求項8】
請求項に記載の吊り上げフックにおいて、該フックは2本のフック(2)を備え、該2本のフックは抄紙機においてペーパーロール(3)を処理するための積荷運搬梁(1)の両端に取り付けられ、該フック(2)は円柱状巻取軸(4)の円柱状の吊り上げ面(5)によって該ペーパーロール(3)を把持するよう構成されていることを特徴とする吊り上げフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−533112(P2010−533112A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515543(P2010−515543)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050416
【国際公開番号】WO2009/007507
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510051679)コネクレーンズ ピーエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】KONECRANES PLC
【Fターム(参考)】