説明

吊り上げ装置

【課題】一定の高さでバランスウエイトの作用が自動的に入り切りされ、また簡単な操作で作用する高さ範囲が切り替わり、作業者の負担を軽減できて、組付作業の用途に適した吊り上げ装置を提供する。
【解決手段】、架台(本体架台2)と、中間部が該架台2に移動自由に支持されて両端部が互い違いに昇降する牽索部材(チェーン3)と、該牽索部材3の一端に設けられて荷物(アセンブル部品92)を吊る吊り部材(組付治具4)と、該牽索部材3の他端に常時吊り下げられて前記吊り部材4の荷重に拮抗する基礎ウェイト5と、該基礎ウェイト5の上側に配置されて前記荷物92の荷重に拮抗する追加ウェイト6と、該追加ウェイト6の昇降経路の所定高さの着脱位置で該追加ウェイト6を保持しまた保持を解除するウェイト切替え機構(ウェイトアンチバック機構7)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を吊り上げる吊り上げ装置に関し、より詳細にはバランスウェイトを拮抗させて所要操作力を低減した吊り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電気機器などの組立ラインでは、ワークに順次部品を組み付けてゆき製品を完成させている。このとき、比較的大きく重量のある部品や製品の組付や移動では、人手だけに頼らずに吊り上げ装置が用いられる。クレーンなど大形の吊り上げ装置はモータなどの動力源をもつが、組付治具や組付部品を吊り上げる簡易な吊り上げ装置ではバランス方式が多用されている。バランス方式の吊り上げ装置では、例えば定滑車に移動自由に支持されたベルトの一端に吊り部材を設け、他端にバランスウェイトを吊り下げて両者を拮抗させることにより所要操作力を低減し、作業の省力化や迅速化を図っている。
【0003】
このバランスウエイトには、重力の作用する錘や一定の荷重で変形する定荷重ばねなどが用いられている。そして、想定される荷重の変動範囲が考慮されて、バランスウェイトの大きさが適切に選定されている。さらに、荷重の変動範囲が大きい場合の対応策の例を、本願出願人は特許文献1に開示している。特許文献1の吊り上げ装置は、基台と牽索部材と吊り部材とバランス手段とをもち、さらに作用を入り切りできる第二バランス手段を備え、例えば吊り部材の近傍に設けたレバーによる操作によって、バランスウエイトの大きさを二段階に切り替えられるように構成されている。
【特許文献1】特開2006−206276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の吊り上げ装置では、レバーなどの入り切り手段によってバランスウエイトを切り替えるのであるが、任意の吊り高さで切替操作できるため、操作タイミングを誤ると大きな荷重が予期しないタイミングで加わるおそれがあった。また、吊り部材や吊られた荷物に触れながらレバーを操作することは難しく、作業者にとって煩わしいものであった。
【0005】
また、組付作業用の吊り上げ装置では、組付部品を移動戴置台上に戴置して供給し、吊り部材に相当する組付治具にセットし、移動戴置台を元の位置に戻した後に下方のワークに組み付ける、という一連の手順で作業が行われる場合がある。そして、この用途では、セット位置と組付位置との高さ範囲でバランスウエイトが作用して荷重が相殺され、所要操作力の低減が図られるのが一般的となっている。ところが、移動戴置台を元の位置に戻すためには、組付治具及び組付部品を一度上昇させて移動戴置台を待避させる必要があり、セット位置よりも上方では作業者自身で組付部品の荷重を支える必要があった。逆に、セット位置よりも上方までバランスウエイトが作用するように構成すると、組付部品をセットする以前の荷重バランスが崩れ、やはり大きな操作力が必要となる。したがって、組付部品の有無によってバランスウエイトの作用する高さ範囲を切り替えることで、所要操作力を低減することができる。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、一定の高さでバランスウエイトの作用が自動的に入り切りされ、また簡単な操作で作用する高さ範囲が切り替わり、作業者の負担を軽減できて、組付作業の用途に適した吊り上げ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吊り上げ装置は、架台と、中間部が該架台に移動自由に支持されて両端部が互い違いに昇降する牽索部材と、該牽索部材の一端に設けられて荷物を吊る吊り部材と、該牽索部材の他端に吊り下げられて該荷物及び該吊り部材の荷重に拮抗するバランスウェイトと、を備える吊り上げ装 置において、前記バランスウェイトは、常時吊り下げられて前記吊り部材の荷重に拮抗する基礎ウェイトと、該基礎ウェイトの上側に配置されて前記荷物の荷重に拮抗する追加ウェイトとからなり、該追加ウェイトの昇降経路の所定高さの着脱位置に配設され該追加ウェイトを保持して該牽索部材から解放するウェイト保持部材を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、前記ウェイト保持部材による前記追加ウェイトの保持を解除するウェイト切替え機構を備える、ようにしてもよい。
【0009】
前記ウェイト切替え機構は、前記着脱位置に突出して該追加ウェイトの下降を規制しまた該着脱位置から待避して該追加ウェイトの下降を解除するウェイトアンチバック機構であってもよい。
【0010】
本発明は、バランス方式の吊り上げ装置の改良に関し、荷物の荷重に拮抗する追加ウェイトを、所定高さの着脱位置に配設されたウェイト保持部材またはウェイト切替え機構によって自動的に着脱し、作用を入り切りするようにしたことを要旨としている。
【0011】
架台は、牽索部材、吊り部材、バランスウェイト、荷物などの全荷重を支持して立設される柱状の部材である。牽索部材は、中間部が架台に移動自由に支持され、両端部が互い違いに昇降する線状の部材である。牽索部材には、ロープやベルト、チェーンなどを、荷重の大きさなどの用途に応じて使い分けることができる。中間部の支持は、架台に軸支された滑車やギヤなどによって行うことができる。吊り部材は、牽索部材の一端に設けられて、荷物を吊る部材である。吊り部材は、例えば吊り上げフックのような汎用品としてもよく、あるいは組付部品を吊った状態で組み付ける組付治具とすることもできる。
【0012】
バランスウェイトには、牽索部材の他端に吊り下げられて荷物及び吊り部材の荷重に拮抗する錘を用いることができ、基礎ウェイトと追加ウェイトとで構成する。基礎ウェイトは、常時吊り下げられて吊り部材の荷重に拮抗する、すなわち吊り部材と略同等の重量を有する部材である。追加ウェイトは、該基礎ウェイトの上側に配置されて前記荷物の荷重に拮抗する、すなわち吊られる荷物と略同等の重量を有する部材である。追加ウェイトは、基礎ウェイトとは別体であるが、基礎ウェイト上に戴置されれば、共吊りされて両方がバランスウェイトの作用を果たすように構成することができる。また、追加ウェイトが別の部材によって保持されれば、基礎ウェイトのみがバランスウェイトとして作用するように構成することができる。
【0013】
ウェイト保持部材は、所定高さの着脱位置で追加ウェイトを着脱する部材である。ウェイト保持部材は着脱位置に配設され、昇降する基礎ウェイトには触れず、追加ウェイトのみを保持するように形成することができる。例えば、追加ウェイトを基礎ウェイトよりも大径の円板形状とし、円板の周縁にウェイト保持部材を配設してやればよい。すると、牽索部材の他端が下降してきたときに、基礎ウェイトはウェイト保持部材を通過するが、追加ウェイトはウェイト保持部材に保持されて牽索部材から解放さる。すなわち、バランスウェイトとして作用しなくなる。
【0014】
ウェイト保持部材は常に追加ウェイトを保持するのでなく、荷物の状況によっては追加ウェイトを通過させる態様としてもよく、追加ウェイトの保持を解除するウェイト切替え機構を備えるようにすればよい。ウェイト切替え機構には、例えば、着脱位置に突出及び待避するウェイトアンチバック機構を用いることができる。ウェイトアンチバック機構が着脱位置に突出した状態で追加ウェイトを保持して下降を規制するのは、ウェイト保持部材のみの態様と同じである。ウェイトアンチバック機構が着脱位置から待避した状態では、追加ウェイトは着脱位置を自由に通過して下降が解除されるので、着脱位置より下方を含む任意の高さで、バランスウェイトとして作用するようになる。ウェイトアンチバック機構を突出または待避させても、追加ウェイトの着脱状態は直ちに切り替わるわけではなく、次に着脱位置を通過する時点となる。したがって、早めにウェイトアンチバック機構を操作しておけばよいので、操作タイミングをデリケートに配慮する必要はない。
【0015】
なお、ウェイト切替え機構はウェイトアンチバック機構に限定されるものではなく、操作によって追加ウェイトの下降を規制及び解除できる機構であればよい。
【0016】
次に、上述のように構成された本発明の吊り上げ装置の使用方法、作用について説明する。初期状態では、牽索部材の一端及び吊り部材は上昇し、牽索部材の他端及び基礎ウェイトは下降し、追加ウェイトは、ウェイト保持部材またはウェイト切替え機構によって途中の高さに保持されている。このとき、吊り部材の荷重と基礎ウェイトとが拮抗しており、わずかな操作力で昇降操作を行えるようになっている。ここで、吊り部材を引き下げて荷物を吊ると、基礎ウェイトが上昇し、追加ウェイトが基礎ウェイト上に戴置される。したがって、牽索部材の一端には荷物の荷重が追加され、他端には追加ウェイトが加わって、両端は拮抗した状態が維持され、わずかな操作力で部品の組付や移動を行うことができる。次に、部品を取り外してやれば、荷重の大きくなった他端が下降し、追加ウェイトがウェイト保持部材またはウェイト切替え機構によって保持され、初期状態に戻る。なお、ウェイト切替え機構を備える態様では、追加ウェイトの保持を解除することにより、任意の高さで部品の荷重と追加ウェイトとを拮抗させることができ、作業の自由度が増す。
【0017】
前記ウェイト切替え機構の解除操作はフットペダルによる、ことが好ましい。
【0018】
ウェイト切替え機構の操作は、手動式のレバーで行うこともできるが、足で踏み下げることにより操作を行うフットペダルを用いることができる。フットペダルを用いることにより、両手が自由に使えて、部品の吊り上げ作業や組付作業が効率的に行える。
【0019】
前記着脱位置よりも高い上側着脱位置で前記追加ウェイトを保持しまた保持を解除する上側ウェイト切替え機構を備える、ようにしてもよい。
【0020】
例えば、部品組付用の吊り上げ装置では、部品を吊り上げ装置にセットする高い側の位置からワークに組み付ける低い側の位置までに限り追加ウェイトが作用すると、所要操作力が常に小さくて済み好ましい。換言すると、吊り部材の反対側の牽索手段の他端では、部品をセットするときの低い側の着脱位置で追加ウェイトを基礎ウェイト上に戴置し、部品を組み付けたとき高い側の上側着脱位置で追加ウェイトを解除することが好ましい。このために、低い側の着脱位置にウェイト切替え機構を設け、高い側の上側着脱位置に上側ウェイト切替え機構を備えることができる。上側着脱位置及び上側ウェイト切替え機構は、1箇所に限定されず、複数とすることもできる。
【0021】
前記追加ウェイトを前記上側着脱位置から前記着脱位置または前記基礎ウェイト上へ落下させる際に、自由落下による衝撃を吸収するクッション部材、及び落下速度を低減するダンパー部材の少なくとも一方を備える、ようにしてもよい。
【0022】
複数の着脱位置を有しかつ追加ウェイトを着脱する高さが異なる場合、上側着脱位置で保持された追加ウェイトを下方の着脱位置または基礎ウェイト上に戻すために、重力による落下を利用することができる。この態様では、クッション部材として例えばばね部材を追加ウェイトの下面に付設して、落下時の衝撃を吸収することができる。あるいは、ダンパー部材を設けて追加ウェイトの落下速度自体を低減するようにしてもよい。クッション部材及びダンパー部材の少なくとも一方の効果により、衝撃による損傷のおそれや、衝突音による迷惑の懸念を解消することができる。なお、保持された追加ウェイトを上方の着脱位置に戻すためには、別途動力が必要となる。
【0023】
前記荷物を放す高さで前記牽索部材または前記吊り部材の移動を規制する牽索アンチバック機構を備える、ようにすることもできる。
【0024】
部品の組み付けが終わって部品の荷重が牽索部材から解放されたときに、荷重の急激な変化を相殺するための手段として、上側ウェイト切替え機構に代えて牽索アンチバック機構を備えるようにしてもよい。牽索アンチバック機構は、例えば、吊り部材を係止して昇降を規制することで、実現することができる。あるいは、牽索部材の一箇所を把持して移動を規制するようにしてもよい。牽索アンチバック機構によれば、部品の組み付けが終わるとき、すなわち吊り部材が荷物を放すときに荷重が変化しても、吊り部材または牽索部材が拘束されるため、作業者が突然大きな荷重を受けることがない。
【0025】
前記吊り部材は組付治具であり、前記荷物は組付部品であってもよい。さらに、移動戴置台上に戴置して供給した前記組付部品を該移動戴置台上で前記組付治具にセットし、次に該移動戴置台を元の位置に戻す際に前記ウェイト切替え機構を解除して該組付治具及び該組付部品を上昇させる、ようにしてもよい。
【0026】
本発明の吊り上げ装置は、牽索部材の一端に設けられた組付治具で組付部品を吊り上げて組付作業を行う用途に好適である。とりわけ、移動戴置台を元の位置に戻す際に組付治具及び組付部品を一度上昇させる必要がある場合、ウェイト切替え機構による保持を解除することによって任意の高さで組付部品の荷重と追加ウェイトとを拮抗させることができるので、大きな操作力を必要としない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の吊り上げ装置は、所定高さの着脱位置で追加ウェイトを着脱するウェイト保持部材またはウェイト切替え機構を備えるので、部品を吊るときに追加ウェイトが自動的に基礎ウェイト上に戴置されバランスウェイトとして作用し、わずかな操作力で部品の組付や移動を行うことができ、かつ煩雑な操作は不要である。
【0028】
また、ウェイト切替え機構を備える態様では任意の高さで組付部品の荷重と追加ウェイトとを拮抗させることができて大きな操作力を必要とせず、ウェイト切替え機構の解除操作をフットペダルで行う態様では両手が自由に使え、複数のウェイト切替え機構を備える態様や牽索アンチバック機構を備える態様では荷物を放すときにも小さな操作力で済むため、部品組付作業に好適であり、作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を参考にして説明する。図1は、本発明の実施例の吊り上げ装置を説明する右側面図であり、図2は部分背面図である。実施例の吊り上げ装置1は、自動変速機のケース91にアセンブル部品92を組み付ける工程で利用するものであり、作業者は図1の左側に位置し右方を向いて作業を行うようになっている。実施例の組付装置1は、本体架台2、チェーン3、組付治具4、基礎ウェイト5、追加ウェイト6、ウェイトアンチバック機構7、により構成されている。
【0030】
本体架台2は、床面に立設される略柱状の部材である。本体架台2の頂部にはギヤ取付材21が水平に渡され、ギヤ取付材21の両端には遊転する支持ギヤ22、23が軸支されている。また、本体架台2の中間高さから頂部にかけて2本のガイド棒24が平行に立設されている。本体架台2の前側(図中左側)下寄りには、自動変速機のケース91が固定されている。ケース91の上側には、本体架台2に対して紙面表裏方向に移動可能な移動戴置台25が設けられ、移動戴置台25上にはアセンブル部品92が仮留めされている。本体架台2の後側(図中右側)下寄りには、箱状のウェイトケース26が設けられている。
【0031】
チェーン3は牽索部材に相当するものであり、本体架台2の支持ギヤ22、23に懸架され、図中左側の支持ギヤ22から垂れる一端には組付治具4が設けられ、右側の支持ギヤ23から垂れる他端は下方のウェイトケース26内に延びている。
【0032】
組付治具4は、アセンブル部品92を吊った状態で組み付ける専用の吊り部材であり、アセンブル部品92の真上に配置されている。また、組付治具4には、2個のガイド筒41が一体に昇降するように配設され、ガイド筒41にはガイド棒24が挿通されている。すなわち、ガイド棒24に案内されてガイド筒41が昇降することにより、組付治具4及びアセンブル部品92が安定して昇降するようになっている。また、図2に示されるように、ウェイトケース26の上面には、ガイド筒41を係止して上昇を規制する牽索アンチバック機構27が設けられている。
【0033】
基礎ウェイト5は、組付治具4と同程度の重量を有する略円柱状の錘であり、ウェイトケース26内に延びたチェーン3の他端に吊り下げられている。追加ウェイト6は、アセンブル部品92と同程度の重量を有し、基礎ウェイト4よりも大きな外径の略円環状に形成されて、中央の穴部61をチェーン3が貫通している。追加ウェイト6は、図1では基礎ウェイト4の上方に離隔して配置されている。ウェイトケース26内には図示されていないガイド棒が立設され、基礎ウェイト5及び追加ウェイト6にはガイド孔が形成され、ガイド孔がガイド棒に案内されることによって、2つのウェイト5、6が滑らかに昇降するように構成されている。
【0034】
追加ウェイト6には、さらに昇降時の振動や衝撃を吸収するクッション部材が付設されている。図3は、追加ウェイト6及び後述のアンチバック部材71を説明する部分拡大図であり、追加ウェイト6の保持された状態が図示されている。クッション部材について詳述すると、追加ウェイト6の下面には図中左右にそれぞれ3個、計6個の脚部62が設けられ、各脚部62の下面にはウレタンシート63が貼設されている。左右の各中央の脚部62計2個には、ショックアブゾーバ64が設けられ、残りの4個の脚部62と追加ウェイト6との間にはそれぞれコイルスプリング65が介挿されて、弾性結合している。したがって、ウレタンシート63とショックアブゾーバ64とコイルスプリング65とが、協調してクッション部材の機能を果たすようになっている。
【0035】
ウェイトアンチバック機構7は、追加ウェイト6を保持及び保持を解除するものであり、2個のアンチバック部材71、フットペダル72、操作機構部73で構成されている。アンチバック部材71は、ウェイトケース26の中間高さの着脱位置に向き合って配設されている。図3に示されるように、アンチバック部材71の中央はウェイトケース26に枢支される枢支部711であり、上方に延びる上端部712が中央に向かって揺動すると追加ウェイト6の昇降経路に突出し、追加ウェイト6を戴置して保持するようになっている。また、上端部712がケース26壁に向かって揺動すると追加ウェイト6の昇降経路から待避し、追加ウェイト6の下降を解除するようになっている。このアンチバック部材71の揺動操作は、図1に示されるフットペダル72を踏み下げることにより行われるようになっている。操作機構部73は、フットペダル72の操作をアンチバック部材71まで伝達する機構である。なお、基礎ウェイト5の昇降経路は、追加ウェイト6よりも内側にあり、アンチバック部材71には干渉されないようになっている。
【0036】
次に、実施例の吊り上げ装置1を用いたアセンブル部品92の組付手順及び作用について、図4〜図6を参考にして説明する。図4は組付治具4を引き下げてアセンブル部品92を吊った状態、図5は吊ったアセンブル部品92を持ち上げた状態、図6はアセンブル部品92をケース91に組み付けている状態、をそれぞれ示している。また各図の(A)は右側面図、(B)は部分背面図を示し、チェーン3の一部は省略されている。
【0037】
まず、図1及び図2に示される初期状態では、組付治具4は上昇し、基礎ウェイト5は下降し、追加ウェイト6はアンチバック部材71によって保持されチェーン3から解放されている。したがって、組付治具4の荷重と基礎ウェイト5とが拮抗して、わずかな操作力で昇降操作を行えるようになっている。ここで、組付治具4を引き下げてアセンブル部品92を吊ると、図4に示されるように、追加ウェイト6が基礎ウェイト5上に戴置されて共吊りされるようになる。つまり、アセンブル部品92の荷重と追加ウェイト6とがチェーン3の両端に加わるので、仮留めをはずし移動戴置台25からアセンブル部品92を取り外しても、拮抗した状態が維持される。そして、フットペダル72を踏み下げてやると、アンチバック部材71がウェイトケース26壁に向かって揺動し、追加ウェイト6の下降が解除される。
【0038】
次に、図5に示されるように、一度アセンブル部品92を持ち上げて、移動戴置台25を取り去る。このとき、追加ウェイト6は下降を解除されて既に着脱位置より下降しているので、基礎ウェイト5とともに任意の高さでバランスウェイトとして作用するようになっている。次に、図6に示されるように、アセンブル部品92を下降させてケース91に組み付ける。このとき、牽索アンチバック機構27でガイド筒41を係止することで、組付作業中にアセンブル部品92が上昇することを防止することができる。組付作業が終了したときには、チェーン3の一端は吊り部材4のみの荷重で、他端には基礎ウェイト5と追加ウェイト6とが共吊りされている。したがって、牽索アンチバック機構27を解除してやると、自動的にチェーン3の他端が下降する。このとき、フットペダル72は解放され、アンチバック部材71は中央に向かって揺動復帰しているため、追加ウェイト6がアンチバック部材71に保持されて、初期状態に戻る。
【0039】
なお、アンチバック部材71が中央に向かって揺動し昇降経路に突出した状態で下方から追加ウェイト6が上昇するとき、追加ウェイト6はアンチバック部材71を押し拡げながら通過して、損傷しないようになっている。
【0040】
実施例の吊り上げ装置1によれば、アセンブル部品92を吊るときの高さで追加ウェイト6が自動的に加えられて作用するので、大きな操作力は不要である。さらに、フットペダル72でアンチバック部材71を解除操作することにより、アセンブル部品92を任意の高さまでわずかな操作力で移動することが可能となり、作業性は極めて良好となっている。
【実施例】
【0041】
本発明の別の実施例について、図7を参考にして説明する。図7は、本発明の別の実施例で、2箇所にウェイト切替え機構の設けられた吊り上げ装置を説明する部分背面図である。別の実施例の吊り上げ装置10は、図1〜図6で説明した吊り上げ装置1に、上側アンチバック部材75が付加されて構成されている。詳述すると、上側アンチバック部材75は、ウェイトケース26内の上部高さの着脱位置に配設され、アンチバック部材71と同様の枢支部及び上端部を備えている。上側アンチバック部材75は、フットペダル72及び操作機構部73を共用し、アセンブル部品92を組み付けるときの高さで、追加ウェイト6を戴置できるようになっている。
【0042】
別の実施例の吊り上げ装置10では、組付作業中に追加ウェイト6が保持されるため、チェーン3の他端が下降することはない。また、組付作業終了時に上部高さで追加ウェイト6を保持するので、荷重とウェイトの拮抗を維持したまま組付治具4を上昇させて初期状態に戻ることができる。ただし、後で上側アンチバック部材75を待避させて、追加ウェイト6を中間高さの着脱位置まで落下させる必要が生じる。このとき、図3で説明したクッション部材の作用により、落下時の衝撃や衝突音は吸収される。なお、上側アンチバック部材75が付加された態様では、牽索アンチバック機構27は必要なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例の吊り上げ装置を説明する右側面図である。
【図2】図1の実施例の部分背面図である。
【図3】図1の実施例で、追加ウェイト及びアンチバック部材を説明する部分拡大図である。
【図4】図1の実施例の吊り上げ装置により、アセンブル部品を吊った状態を説明する図である。
【図5】図1の実施例の吊り上げ装置により、アセンブル部品を持ち上げた状態を説明する図である。
【図6】図1の実施例の吊り上げ装置により、アセンブル部品を組み付けている状態を説明する図である。
【図7】別の実施例で、2箇所にウェイト切替え機構の設けられた吊り上げ装置を説明する部分背面図である。
【符号の説明】
【0044】
1、10:吊り上げ装置
2:本体架台
21:ギヤ取付材 22、23:支持ギヤ
24:ガイド棒 25:移動戴置台
26:ウェイトケース 27:牽索アンチバック機構
3:チェーン(牽索部材)
4:組付治具(吊り部材)
41:ガイド筒
5:基礎ウェイト
6:追加ウェイト
62:脚部 63:ウレタンシート
64:ショックアブゾーバ 65:コイルスプリング
7:ウェイトアンチバック機構
71:アンチバック部材 72:フットペダル
73:操作機構部 75:上側アンチバック部材
91:ケース
92:アセンブル部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、中間部が該架台に移動自由に支持されて両端部が互い違いに昇降する牽索部材と、該牽索部材の一端に設けられて荷物を吊る吊り部材と、該牽索部材の他端に吊り下げられて該荷物及び該吊り部材の荷重に拮抗するバランスウェイトと、を備える吊り上げ装置において、
前記バランスウェイトは、常時吊り下げられて前記吊り部材の荷重に拮抗する基礎ウェイトと、該基礎ウェイトの上側に配置されて前記荷物の荷重に拮抗する追加ウェイトとからなり、該追加ウェイトの昇降経路の所定高さの着脱位置に配設され該追加ウェイトを保持して該牽索部材から解放するウェイト保持部材を備える、ことを特徴とする吊り上げ装置。
【請求項2】
前記ウェイト保持部材による前記追加ウェイトの保持を解除するウェイト切替え機構を備える請求項1に記載の吊り上げ装置。
【請求項3】
前記ウェイト切替え機構は、前記着脱位置に突出して該追加ウェイトの下降を規制しまた該着脱位置から待避して該追加ウェイトの下降を解除するウェイトアンチバック機構である請求項2に記載の吊り上げ装置。
【請求項4】
前記ウェイト切替え機構の解除操作はフットペダルによる請求項2または3のいずれかに記載の吊り上げ装置。
【請求項5】
前記着脱位置よりも高い上側着脱位置で前記追加ウェイトを保持しまた保持を解除する上側ウェイト切替え機構を備える請求項2〜4のいずれかに記載の吊り上げ装置。
【請求項6】
前記追加ウェイトを前記上側着脱位置から前記着脱位置または前記基礎ウェイト上へ落下させる際に、自由落下による衝撃を吸収するクッション部材、及び落下速度を低減するダンパー部材の少なくとも一方を備える請求項5に記載の吊り上げ装置。
【請求項7】
前記荷物を放す高さで前記牽索部材の移動または前記吊り部材の昇降を規制する牽索アンチバック機構を備える請求項1〜6のいずれかに記載の吊り上げ装置。
【請求項8】
前記吊り部材は組付治具であり、前記荷物は組付部品である、請求項1〜7のいずれかに記載の吊り上げ装置。
【請求項9】
移動戴置台上に戴置して供給した前記組付部品を該移動戴置台上で前記組付治具にセットし、次に該移動戴置台を元の位置に戻す際に前記ウェイト切替え機構を解除して該組付治具及び該組付部品を上昇させる、請求項8に記載の吊り上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−143681(P2008−143681A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334949(P2006−334949)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)