説明

吊り具装置

【課題】スリングの玉掛け又は取り外しの操作が正確でかつ簡単にできる吊り具装置を提供する。
【解決手段】昇降搬機に装備され、吊り荷に装着したスリングを吊り具のフックに係着して吊り荷を搬送する吊り具装置において、端部にフックを回動可能に軸着したフック支持ブラケット14とスリング送り出し部材23が設けられたフック支持フレーム9と、フック支持フレーム9に対して上下動可能に装着され、吊り荷と当接することで上方に移動するプッシュロッド10と、プッシュロッド10に装着され、フックを回動する連結リンク25が設けられた荷検出部材支持フレーム11と、フック支持ブラケット14に回動可能に軸着され、フック開口部を開閉するストッパー19を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り荷を搬送するため、吊り荷に装着したスリングを吊り具のフックに係着して吊り荷を吊り上げ搬送する吊り具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吊り荷を吊り上げるフックとフックの開口部を開閉するストッパーを備えた吊り具において、ストッパーを開閉するアームの一端をストッパーに、他端を上下動するフランジにそれぞれ回動可能に取り付け、マニピュレータの先端工具によりフランジを上方に移動させることで、アームがストッパーを上方に回動させ、フックの開口部を開き、吊り荷に装着したスリングをフックに玉掛けしたり、またはスリングをフックから取り外すようにした開閉フック装置は公知である。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−157970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来装置では、フックの開口部を開閉するストッパーの開閉を作動するアームの一端が上下動するフランジに取り付けられており、フランジの上下動によりアームを介してフックを開閉する構成となっているため、フックに吊り荷に装着したスリングを玉掛けする場合、またはフックからスリングを外す場合には、マニピュレータの先端工具により、フランジをバネ力に抗して上方に移動させる動作により、アームの先端を上昇し、ストッパーを上方に回動させ、フックの開口部を開口してフックの開口部にスリングを玉掛け、またはフックからスリングを取り外す動作が行われていた。(特許文献1段落番号〔0004〕〜〔0006〕参照)
廃棄物等の汚染物質や化学物質等の危険物をマニピュレータを用いて吊り具により搬送する場合には、搬送物の取扱いに最大限の注意が払われ、吊り具を操作する装置においても、可能な限りの安全技術を備えることが必要となっている。そのための手段として、スリングをフックに係着または取り外しする操作において、操作工程が少なく、取扱いが簡単で、かつ誤動作の少ない安全な装置が要請されている。
【0004】
前記した従来装置は、吊り具装置による吊り荷の吊り上げ、吊り下し工程において、フックにスリングを玉掛けする場合、またはフックからスリングを取り外す場合には、前記した通り、マニピュレータの先端工具により、フランジをバネ圧に抗して上方に押動させるという押圧工程を伴う動作を必要とし、危険物を搬送する装置として安全技術上必ずしも好適ではないし、また操作工程が多く、さらに操作に注意を要するという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するもので、吊り荷に装着したスリングを吊り具のフックに係着して吊り荷を搬送する吊り具装置において、
端部にフックを回動可能に軸着したフック支持ブラケットとスリング送り出し部材が取設されたフック支持フレームと、フック支持フレームに対して上下動可能に装着され、吊り荷と当接することで上方に移動するプッシュロッドと、プッシュロッドに装着され、端部にフックとリンク機構を介して連結し、フックを回動する連結リンクが取設された荷検出部材支持フレームと、フック支持ブラケットに回動可能に軸着され、フック開口部を開閉するストッパーを備え、スリング玉掛け操作時には、スリングでストッパーを押動し、フックにスリングを玉掛けし、フックからスリングを取り外す操作時には、荷当接部が吊り荷に当接後吊り具を下降することで荷検出部材支持フレームがフック支持フレームに接近し、連結リンクを介してフックを回動し、フックからスリングを取り外すようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、フック支持フレームは、フック支持フレームから垂設され、荷検出部材支持フレームの上下動をガイドする昇降ガイド棒を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、ストッパーは、上部にフック支持ブラケットに当接し、フックに対する閉位置を規定するストッパー位置決め部と、ストッパーを常時フック位置決め部がフック支持ブラケットに当接する方向に付勢する付勢バネを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、プッシュロッドの下端に吊り荷の周縁部に当接する荷当接板を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、フックとフックを開閉するストッパーをフック支持フレームに取設されたフック支持ブラケットに軸着し、フック支持フレームに対し上下動可能に動作する荷検出部材支持フレームに取設された連結リンクを介してフックを回動するように構成したので、スリング玉掛け操作時には、スリングでストッパーを押動することで、スリングをフックに玉掛けでき、フックからスリングを取り外す操作時には、プッシュロッドまたは荷当接部が吊り荷に当接後吊り具を下降することで、連結リンクを介してフックを回動し、フックからスリングを取り外すことができるので、従来技術のように、マニピュレータの先端工具によりバネ圧に抗してフランジを上方に移動させて、ストッパーを上方に回動させてフックの開口部を開口するという複雑でかつ注意を要する工程を必要とせず、上記した通りの簡単な操作によりスリングの玉掛け、または取り外しを行うことができるので、操作が正確かつ簡単で、特にマニピュレータの操作により吊り荷を搬送する廃棄物等の汚染物質や危険物の吊り具装置として好適である。
【0010】
また、荷検出部材支持フレームの上下動をガイドする昇格ガイド棒を設けたので、荷検出部材支持フレームが上下動する場合に水平が確保され、スリングの玉掛け、取り外し操作を正確に行うことができる。
【0011】
また、ストッパーは、フックに対する閉位置を規定する位置決め部を有するので、搬送時においてストッパーが開く等の誤動作の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の吊り具装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図において、1は走行レール、2は走行レール1を走行するトロリー、3は内部にロードチェーンを巻回するロードシーブ(図示せず)を備えたチェーンブロック、4はトロリーフレーム、5aはロードシーブ3本体から垂下するロードチェーン、5bはトロリーフレーム4の前方に設けたシーブ(図示せず)から垂下するロードチェーン、6は下フック、7は下フック6が係着されるフレームである。
【0014】
次に、本発明の吊り具装置について図2〜図5を参照して説明する。
【0015】
図において、8はフレーム7にスラストベアリングを介して回転可能に懸垂軸支されている主軸、9は主軸8に固設されたフック支持フレーム、10は主軸8及びフック支持フレーム9に対し上下動可能に垂設されたプッシュロッド、11はプッシュロッド10の上部に取設され、プッシュロッド10と同期して上下動する荷検出部材支持フレーム、12はフック支持フレームに取設され、荷検出部材支持フレーム11の上下動をガイドする支持フレーム昇降ガイド棒、13は前記支持フレーム11の下部周縁部に取設されたフック支持ブラケット取着部、14は前記フック支持ブラケット取着部13の下部に取設されたフック支持ブラケット、15はフック支持ブラケット14の下端に回動可能に軸着されたフック、16は前記フック支持フレーム9の下部に取着され、前記昇降ガイド捧12と係合するガイド体、17は昇降ガイド棒12の下端部に設けられた止め部、18はプッシュロッド10の下端に取設された荷当接部である。
【0016】
19はフック支持ブラケット14の下部に開閉可能に軸着されたストッパーで、下部にフック15の先端部が挿通する切り欠き部20が設けられている。21はストッパー19の上端部に設けられたストッパー位置決め用部で、付勢バネ22の付勢力により、常時フック支持ブラケット14に接合するように付勢され、ストッパー19がフック15を閉じた状態においてストッパー19が開かないようにストッパー19の位置を規定している。
【0017】
22はフック支持ブラケット13の下端に設けられ、ストッパー19の位置決め部21を常時フック支持ブラケット14に接合するように付勢し、図2に示す荷吊り上げ状態において、ストッパー19の上端が、フック15の先端を塞ぐように付勢する付勢バネ、23はフック支持フレームの下端に取設されたスリング送り出し金具、24は荷検出部材支持フレーム11の下端周縁部に取設された連結部材支持ブラケット、25は一端が前記連結部材支持ブラケット24に軸着され、他端がフック15に取設された連結リンク26に軸着されたフック連結部材、27はフック支持ブラケット14間に嵌設され、フック15を軸支するフック支持軸である。
【0018】
28は吊り荷、29は吊り荷搬送用スリング、30はスリングの端部に設けられた吊り輪、31はターンテーブル、32はマニピュレータである。
【0019】
上記した通り、本発明の吊り具装置は、フック支持ブラケット14にフック15とストッパー19が回動可能に軸着され、ストッパー17は図2に示すように、常時付勢バネ22により位置決め部21がフック支持ブラケット14に接合する方向に付勢され、フック15の開口部を塞ぐ位置に位置決めされている。プッシュロッド10は前記フック支持ブラケット14が取設されたフック支持フレーム9に対して上下動可能に装着され、プッシュロッド10に装着された荷検出部材支持フレーム11にはフック15を回動する連結リンク25を設けられている。
【0020】
後記するように、フック15にスリング29を玉掛けする操作時には、ストッパー17は、吊り輪30に押されて図5の矢印Bに示す方向に回動し、玉掛け終了後矢印A方向に回動する。また、フック15からスリング29を取り外す操作時には、フック15のみが回動し、ストッパー19は、図4に示すように回動しないように構成されている。
【0021】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0022】
図2は吊り具により吊り荷28を吊り上げた状態におけるフック15、ストッパー19及び連結リンク25の動作状態を示す。
【0023】
図3はフック15にスリング29に設けた吊り輪30を玉掛けする動作時におけるフック15、ストッパー19、及び連結リンク25の動作状態を示す。
【0024】
図4はフック15からスリング29を取り外す状態におけるフック15、ストッパー19及び連結リンク25の動作状態を示す。
【0025】
図3に示す吊り輪30の玉掛け動作時には、後記するマニピュレータ32により、吊り輪30をストッパー19に押し付け、ストッパー19を付勢バネ22の付勢力に抗して、図5B方向に回動し、吊り輪30をフック15に玉掛けし、玉掛けが終了すると、ストッパー19は付勢バネ22により図2に示す位置に復帰するように構成されている。
【0026】
図4に示すフック15から吊り輪30を取り外す動作時には、後記するように、吊り荷28を所定位置に搬送定置後に、プッシュロッドまたはプッシュロッドに設けた荷当接部18が吊り荷28の上端部に当接し、さらに所定量押し下げると、プッシュロッド10は止った状態でフック15が取着されているフック支持フレーム9のみが下降するため、荷検出部材支持フレーム11とフック支持フレーム9の相当位置が接近し、連結リンク25を介してフック15が図4に示す位置に回動し、吊り輪30はスリング送り出し金具23により押し出されて、フック15から吊り輪30が取り外されるように構成されている。
【0027】
次に、図6〜図11を用いて本発明の吊り具により、吊荷の吊り上げ吊り下り動作について説明する。
【0028】
図6は、吊り具をターンテーブル30上に載置された吊り荷29の直上に搬送し、ロードチェーンにより吊り具を吊り上げ位置に下降した状態を示す。吊り荷28には吊り荷29を吊り上げるための2本のスリング29a,29bが装着されている。また、各スリングの両端にはフック15に係着する吊り輪30が設けられている。
【0029】
次に、図7において、マニピュレータ32はスリング29の1端の吊り輪30aを把持し、持ち上げてフック15に玉掛けするため、ストッパー19に押し付け、ストッパー19をフック15の口を開くように回動し、吊り輪30aをフック15に玉掛けする。吊り輪30aがフック15に玉掛けされるとストッパー19は付勢バネ22により図2に示す位置に回動する。
【0030】
次に、図8において、吊り輪30aをフック15に掛けたままで、ターンテーブル31を90°回動させると、吊り具もターンテーブル31の回転に追従して回転し、図9に示すように、マニピュレータは2番目の吊り輪30bを最初の吊り輪30aと同手順でフック15に玉掛けし、2本のスリング29の両端に設けた吊り輪30をすべてフック15に玉掛けし、図10に示すように吊り具を吊り上げ、図11に示す所定位置に搬送する。図11において、吊り具を巻き下げ吊り荷28を所定位置に載置後に、さらに吊り具を巻き下げると、プッシュロッド10またはプッシュロッド10の先端に設けた荷当接部18が吊り荷28の上端部に当接し、さらに所定量押し下げると、プッシュロッド10は止った状態のままで、フック15が取着されているフック支持フレーム9が下降するため、荷検出部材支持フレーム11とフック支持フレーム9の相対位置が接近し、フック支持フレーム9の下降により、連結リンク25を介してフック15が図4に示す位置に回動し、吊り輪30はスリング送り出し金具23により一括して押し出されて、フック15から外れ、自重によりスリング29は落下し、吊り荷28の取り外し動作は終了する。
【0031】
上記した実施の形態において、荷当接部18は吊り荷28の上面の形状により決定される。また、吊り荷28の上面に当接部があれが荷当接部を設けずプッシュロッドのみで良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の吊り具装置の全体概要図。
【図2】フックにスリングが係着している状態の吊り具装置の拡大正面図。
【図3】フックにスリングを玉掛けする状態の吊り具装置の拡大正面図。
【図4】フックからスリングを取り外す状態の吊り具装置の拡大正面図。
【図5】(a)はフック部分の拡大側面図、(b)は正面図。
【図6】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【図7】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【図8】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【図9】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【図10】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【図11】吊り具装置にスリングを玉掛けする操作工程からスリングを取り外す操作工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
9 フック支持フレーム
10 プッシュロッド
11 荷検出部材支持フレーム
12 昇降ガイド棒
13 フック支持ブラケット取着部
14 フック支持ブラケット
15 フック
16 ガイド体
17 止め部
18 荷当接部
19 ストッパー
20 切り欠き部
21 位置決め部
22 付勢バネ
23 スリング送り出し金具
24 連結部材支持ブラケット
25 連結リンク
26 フック連結部材
27 フック支持軸
28 吊り荷
29 スリング
30 吊り輪
31 ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機に吊り下げ、吊り荷を吊り上げるスリングを係着するフックを備えた吊り具装置において、
端部にフックを回動可能に軸着したフック支持ブラケットとスリング送り出し部材が取設されたフック支持フレームと、フック支持フレームに対して上下動可能に装着され、吊り荷と当接することで上方に移動するプッシュロッドと、プッシュロッドに装着され、端部にフックとリンク機構を介して連結し、フックを回動する連結リンクが取設された荷検出部材支持フレームと、フック支持ブラケットに回動可能に軸着され、フック開口部を開閉するストッパーを備え、スリング玉掛け操作時には、スリングでストッパーを押動し、フックにスリングを玉掛けし、フックからスリングを取り外す操作時には、荷当接部が吊り荷に当接後吊り具を下降することで荷検出部材支持フレームがフック支持フレームに接近し、連結リンクを介してフックを回動し、フックからスリングを取り外すようにしたことを特徴とする吊り具装置。
【請求項2】
フック支持フレームは、フック支持フレームから垂設され、荷検出部材支持フレームの上下動をガイドする昇降ガイド棒を備えたことを特徴とする請求項1記載の吊り具装置。
【請求項3】
ストッパーは、上部にフック支持ブラケットに当接し、フックに対する閉位置を規定するストッパー位置決め部と、ストッパーを常時フック位置決め部がフック支持ブラケットに当接する方向に付勢する付勢バネを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の吊り具装置。
【請求項4】
プッシュロッドの下端に吊り荷の周縁部に当接する荷当接板を設けたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の吊り具装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−143706(P2010−143706A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322181(P2008−322181)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】