説明

吊り戸の下部振止装置

【課題】第2ガイドの突出高さを制限することにより、第2ガイドと案内溝の中間部との干渉を防止し、案内溝部材と床面設置部材との距離が近い場合でも、第1ガイドのみを確実に案内溝の中間部に導入し、吊り戸を安定的にガイドできるようにした吊り戸のガイド装置を提供すること。
【解決手段】ガイドピン2を、ケース1に摺動可能に収納された第2ガイド22と、第2ガイド22の内部に摺動可能に収納された第1ガイド21とにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材5の端部6aで磁力により突出させた第1ガイド21を、所要幅狭く形成した案内溝の中間部6cに導入するようにした吊り戸の下部振止装置において、案内溝6の端部6aで開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り戸の下部振止装置に関し、特に、ガイドピンの保持を確実にして吊り戸を安定的にガイドできるようにした吊り戸のガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記の特許文献1に開示されるように、天井レールにランナーを介して走行自在に吊り下げられた吊り戸に対し、床面に設置した床面設置部材に磁力によって突出可能に設けられたガイドピンが、吊り戸本体の下面に形成された案内溝に挿入されることにより、吊り戸のガイドを行う吊り戸の下部振止装置が知られている。
【0003】
この吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケースにガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、前記ガイドピンが挿入される吊り戸本体の案内溝部材とを備え、前記ガイドピンを、ケースに摺動可能に収納された第2ガイドと、該第2ガイドの内部に摺動可能に収納された第1ガイドとにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材の端部で突出させた第1ガイドを、所要幅狭く形成した案内溝の中間部に導入するようにしている。
【0004】
この吊り戸の下部振止装置は、幅広く形成した端部の案内溝で磁力によりガイドピンを突出させるとともに、その第1ガイドを、幅を狭くした案内溝の中間部に導入することにより、揺れの少ない吊り戸のガイドを行うようにしている。
【0005】
しかしながら、これら従来の吊り戸の下部振止装置では、吊り戸の下端位置が低いなど、案内溝部材と床面設置部材との距離が近すぎる場合に、第1ガイドに従動して引き上げられた第2ガイドが想定位置より上に突出し、この突出した第2ガイドが幅狭の案内溝の中間部の入口に引っ掛かり、吊り戸が移動できなくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−163384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の吊り戸の下部振止装置が有する問題点に鑑み、第2ガイドの突出高さを制限することにより、第2ガイドと案内溝の中間部との干渉を防止し、案内溝部材と床面設置部材との距離が近い場合でも、第1ガイドのみを確実に案内溝の中間部に導入し、吊り戸を安定的にガイドできるようにした吊り戸のガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケースにガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、前記ガイドピンが挿入される吊り戸本体の案内溝部材とを備え、前記ガイドピンを、ケースに摺動可能に収納された第2ガイドと、該第2ガイドの内部に摺動可能に収納された第1ガイドとにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材の端部で突出させた第1ガイドを、所要幅狭く形成した案内溝の中間部に導入するようにした吊り戸の下部振止装置において、前記案内溝の端部で開口端縁部から案内溝内に斜めに突出し、前記第1ガイドを案内溝に案内するとともに、前記第2ガイドと当接して第2ガイドの案内溝への第1ガイドとの共上がりを阻止する傾斜側壁を設けたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、第1ガイドに細首部を形成するとともに、該細首部に側方から挿入して第1ガイドを保持する鍔状のレール部を案内溝の中間部に設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吊り戸の下部振止装置によれば、案内溝の端部で開口端縁部から案内溝内に斜めに突出し、前記第1ガイドを案内溝に案内するとともに、前記第2ガイドと当接して第2ガイドの案内溝への第1ガイドとの共上がりを阻止する傾斜側壁を設けることから、第2ガイドの突出高さを傾斜側壁で案内溝の所定位置より下に制限することにより、第2ガイドと案内溝の中間部との干渉を防止することができ、これにより、案内溝部材と床面設置部材との距離が近い場合でも、第1ガイドのみを確実に案内溝の中間部に導入し、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
【0010】
また、第1ガイドに細首部を形成するとともに、該細首部に側方から挿入して第1ガイドを保持する鍔状のレール部を案内溝の中間部に設けることにより、案内溝の中間部で磁力がなくてもガイドピンの保持を確実にし、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の吊り戸の下部振止装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図4に、本発明の吊り戸の下部振止装置の一実施例を示す。
この吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケース1にガイドピン2を上方に突出可能に収納した床面設置部材3と、前記ガイドピン2が挿入される吊り戸本体4の案内溝部材5とを備えている。
そして、前記ガイドピン2を、ケース1に摺動可能に収納された第2ガイド22と、該第2ガイド22の内部に摺動可能に収納された第1ガイド21とにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材5の端部6aで磁力により突出させた第1ガイド21を、所要幅狭く形成した案内溝の中間部6cに導入するようにしている。
【0013】
本実施例の吊り戸の下部振止装置は、かかる構成において、前記案内溝6の端部6aで開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7を設けている。
また、第1ガイド21に細首部23を形成するとともに、該細首部23に側方から挿入して第1ガイド21を保持する鍔状のレール部8を案内溝の中間部6cに設けている。
【0014】
第1ガイド21は、図3に示すように、外周部の対向する2箇所に摺動突起(図示省略)を備え、これらの摺動突起は、第2ガイド22のスリット溝(図示省略)にそれぞれ嵌入されるとともに、第2ガイド上部で係合して第2ガイド22を従動的に突出させる。
この第1ガイド21の上部には、下部が細径となる鉄等の磁性体材料からなる頭部24が固定されており、この頭部24下の細径部により細首部23が形成されている。
また、第2ガイド22は、ケース1に直接収納されており、ケース1は、アウターケース1aを介して床に設置される。
【0015】
一方、吊り戸本体4は、図4に示すように、天井レールにランナー(図示省略)を介して走行自在に吊り下げられており、吊り戸本体4の下面には、床面設置部材3の突出したガイドピン2がその案内溝6に挿入される案内溝部材5が配設されている。
案内溝部材5は、案内溝6の端部6aと移行部6bにのみガイドピン2を吸着する磁石9が配設されている。
【0016】
この案内溝部材5は、図1に示すように、案内溝6の端部6aで磁力により突出させた第1ガイド21を、所要幅狭く形成した案内溝の中間部6cに導入するようにしている。
この場合、本実施例では、案内溝の中間部6cの鍔状のレール部8が、吊り戸本体4の移動により、第1ガイド21の細首部23に挿入されるようにしている。
なお、案内溝の移行部6bは、案内溝の端部6aから中間部6cにガイドピン2が円滑に移行するための移行する部分であり、案内溝6の溝幅が中間部6cに向けて漸次狭くなるように形成されている。
【0017】
案内溝6の端部6aには、図1(c)に示すように、その開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7が設けられている。
傾斜側壁7は、1対のものが対向するように形成されるとともに、長手方向に連続して同じ形状に形成されており、第2ガイド22の前部がレール部8にさしかかる位置まで設けられている。
【0018】
次に、本実施例の吊り戸の下部振止装置の作用を説明する。
この吊り戸の下部振止装置は、吊り戸本体4が、床面に設置された床面設置部材3の上方位置に来ると、図1(c)に示すように、案内溝6の端部6aに配設した磁石9によって、第1ガイド21の頭部24が吸着され、第1ガイド21とこれに従動する第2ガイド22がケース1内から上方に突出する。
この場合、案内溝6の端部6aには、前記傾斜側壁7が設けられているため、第1ガイド21は斜面によって案内溝6の奥まで案内されるが、第2ガイド22は、その上部が傾斜側壁7に当接するため、床面設置部材3と案内溝部材5の距離が短い場合でも、第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりが阻止される。
そして、吊り戸本体4が移動することにより、図1(d)に示すように、第2ガイド22と案内溝の中間部6cとの干渉が防止された状態で、第1ガイド21の細首部23に案内溝6の鍔状のレール部8が側方から挿入され、ガイドピン2が保持される。
これにより、ガイドピン2を吸着する磁石9が存在しない案内溝の中間部6cにおいても、ガイドピン2を確実に保持することができる。
なお、吊り戸本体4が、床面に設置された床面設置部材3の上方位置から去ると、ガイドピン2(第1ガイド21及び第2ガイド22)は重力によりケース1内に退入する。
【0019】
かくして、本実施例の吊り戸の下部振止装置は、案内溝6の端部6aで開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7を設けることから、第2ガイド22の突出高さを傾斜側壁7で案内溝6の所定位置より下に制限することにより、第2ガイド22と案内溝の中間部6cとの干渉を防止することができ、これにより、案内溝部材5と床面設置部材3との距離が近い場合でも、第1ガイド21のみを確実に案内溝の中間部6cに導入し、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
そして、第1ガイド21に細首部23を形成するとともに、該細首部23に側方から挿入して第1ガイド21を保持する鍔状のレール部8を案内溝の中間部6cに設けることにより、案内溝の中間部6cで磁力がなくてもガイドピン2の保持を確実にし、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
【0020】
以上、本発明の吊り戸の下部振止装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明の吊り戸の下部振止装置は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することが可能である。
例えば、本発明の構成は、磁力を案内溝の中間部6cまで作用させることにより、図3(c)に示すような、細首部23やレール部8のない吊り戸の下部振止装置においても、実施して同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の吊り戸の下部振止装置は、第2ガイドの突出高さを制限することにより、第2ガイドと案内溝の中間部との干渉を防止し、第1ガイドのみを確実に案内溝の中間部に導入して吊り戸を安定的にガイドすることから、例えば、案内溝部材と床面設置部材との距離が変化したり近かったりする場合に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の吊り戸の下部振止装置の一実施例を示し、(a)は案内溝部材の正面縦断面図、(b)は同底面図、(c)は端部の案内溝でガイドピンが突出した状態を示す断面図、(d)は案内溝の中間部でガイドピンが突出した状態を示す断面図である。
【図2】案内溝部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は同B−B線断面図、(e)は同C−C線矢視図である。
【図3】床面設置部材を示し、(a)はガイドピンが突出した状態を示す断面図、(b)はガイドピンが退入した状態を示す断面図、(c)は床面設置部材の他の実施例を示す断面図である。
【図4】吊り戸本体と案内溝部材を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ケース
2 ガイドピン
21 第1ガイド
22 第2ガイド
23 細首部(細径部)
24 頭部
3 床面設置部材
4 吊り戸本体
5 案内溝部材
6 案内溝
6a 端部
6b 移行部
6c 中間部
7 傾斜側壁
8 レール部
9 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるケースにガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、前記ガイドピンが挿入される吊り戸本体の案内溝部材とを備え、前記ガイドピンを、ケースに摺動可能に収納された第2ガイドと、該第2ガイドの内部に摺動可能に収納された第1ガイドとにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材の端部で突出させた第1ガイドを、所要幅狭く形成した案内溝の中間部に導入するようにした吊り戸の下部振止装置において、前記案内溝の端部で開口端縁部から案内溝内に斜めに突出し、前記第1ガイドを案内溝に案内するとともに、前記第2ガイドと当接して第2ガイドの案内溝への第1ガイドとの共上がりを阻止する傾斜側壁を設けたことを特徴とする吊り戸の下部振止装置。
【請求項2】
第1ガイドに細首部を形成するとともに、該細首部に側方から挿入して第1ガイドを保持する鍔状のレール部を案内溝の中間部に設けたことを特徴とする請求項1記載の吊り戸の下部振止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308918(P2007−308918A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137525(P2006−137525)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000205476)大阪金具株式会社 (20)