説明

吊り戸棚

【課題】吊り戸棚の扉を容易に開閉しうる。
【解決手段】壁面6の上部に設けられる吊り戸棚1である。物品を収納可能な収納空間15を有しかつ前面が解放された箱状の戸棚本体2と、戸棚本体2の前面を開閉可能に覆いかつ取っ手4が設けられた扉3とを有する。取っ手4は、棒状体21からなるとともに、扉3の下縁3bに沿って水平にのびる水平状態と、扉3の下縁3bから下方に垂れ下がる垂直状態との間を向き換え可能に扉3に枢着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の上部に設けられる吊り戸棚に関し、詳しくは扉の開閉を容易に行ないうる吊り戸棚に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、キッチン内の空間を有効に活用して収納スペースを確保するために、キッチンの壁面の上部には吊り戸棚が設けられることが多い(例えば下記特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2005−144064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊り戸棚は、壁面の上部に設置されるため、通常、その扉を開閉するための取っ手も高い位置にある。したがって、例えば小柄な女性等にとっては、取っ手に手が届いても扉の開閉を操作しずらいという問題があった。特に、扉が上に向けて跳ね上げられる上解放の折れ戸の場合、扉を開くと、取っ手がさらに高所に位置するため、閉じるのがさらに困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、吊り戸棚の扉に設けられる取っ手を棒状体とするとともに、該取っ手を扉の下縁に沿って水平にのびる水平状態と、扉の下縁から下方に垂れ下がる垂直状態との間で向き換え可能に扉に枢着することを基本として、扉の開閉操作を容易に行いうる吊り戸棚を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、壁面の上部に設けられる吊り戸棚であって、物品を収納可能な収納空間を有しかつ前面が解放された箱状の戸棚本体と、前記戸棚本体の前面を開閉可能に覆いかつ取っ手が設けられた扉とを有し、前記取っ手は、棒状体からなるとともに、前記扉の下縁に沿って水平にのびる水平状態と、前記扉の下縁から下方に垂れ下がる垂直状態との間を向き換え可能に前記扉に枢着されることを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、扉は、上に向けて跳ね上げ可能な折れ戸である請求項1に記載の吊り戸棚である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記扉は、前記取っ手を水平状態で保持する保持手段が設けられる請求項1又は2に記載の吊り戸棚である。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記取っ手は、自在継手を介して扉に固着される請求項1ないし3のいずれかに記載の吊り戸棚である。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記回動手段は、前記扉の幅方向の一端側に枢着される請求項1ないし4のいずれかに記載の吊り戸棚である。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記取っ手は、前記扉の幅方向の一端側に枢着される請求項1ないし4のいずれかに記載の吊り戸棚である。
【0012】
また請求項7記載の発明は、前記取っ手は、前記扉と平行な水平軸回りに回動可能に枢着される請求項1ないし6の何れかに記載の吊り戸棚である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吊り戸棚は、扉に設けられた取っ手が棒状体からなるとともに、扉の下縁に沿って水平にのびる水平状態と、扉の下縁から下方に垂れ下がる垂直状態との間で向き換え可能に扉に枢着される。このような吊り戸棚は、取っ手を垂直状態として扉の下縁よりも下方へ垂れ下げうるので、取っ手に手が届き易く、かつ、扉の開閉操作を容易に行わせることができる。また、取っ手は、扉の下縁に沿って水平にのびる水平状態に向き換えしたときには、扉との一体感を醸しだし、吊り戸棚の見映えの悪化も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の吊り戸棚1の一実施形態を示すキッチン空間の斜視図、図2(a)、(b)は、図1の吊り戸棚1の縦断面図を示す。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の吊り戸棚1は、キッチン台5が設けられた壁面6の上部に左右に2つ並べて設けられている。このような吊り戸棚1は、キッチン台5の上部の空間を、収納スペースとして有効に活用するのに役立つ。
【0016】
本実施形態の吊り戸棚1は、前面が解放された箱状の戸棚本体2と、該戸棚本体2の前面を開閉可能に覆う扉3と、該扉3を開閉する際に把持される取っ手4とを含む。
【0017】
図2(a)、(b)に示されるように、戸棚本体2は、例えば、水平にのびる天板11、該天板11と平行にのびる底板12、これらの間を継ぎかつ垂直にのびる左右の側板13及び背板14を組み付けることにより、内部に物品を収納可能な収納空間15が形成される。なお、戸棚本体2には、収納空間15を上下に仕切る棚板16が適宜配されても良い。
【0018】
本実施形態の扉3は、戸棚本体2の前面を閉じた状態(図1の左側の吊り戸棚1に示される。)において、正面視略矩形状に形成される。また、本実施形態の扉3は、戸棚本体2の天板11に蝶番18によって回動可能に連結され、かつ、該扉3の上部側を構成する上部材3Aと、該上部材3Aに蝶番17によって扉3と平行な水平軸回りで回動可能に連結された下部材3Bとから形成された折り戸として形成される。
【0019】
このような扉3は、図2(a)の閉止状態から下部材3Bを上方へ押し上げることにより、図2(b)に示されるように、上部材3Aと下部材3Bとを屈曲させ、かつ、上部材3Aが図において左回りに回動しながら上部へと跳ね上げられる扉解放状態が得られる。なお、扉3の開閉動作を円滑に行うために、戸棚本体2と扉3との間に、ガスダンパー20等が設けられるのが望ましい。
【0020】
図3に拡大して示されるように、本実施形態において、取っ手4は、扉3の下部材3Bの前面かつ水平な下縁3b側に枢着された棒状体からなる。即ち、取っ手4の一端側には、孔22が形成されるとともに、該孔22は、扉3の前面に該前面から直角に突出形成された支持部24に回動自在に枢着される。
【0021】
前記支持部24は、例えば、扉3に固着された円柱状の本体部24aと、該本体部24aに連設されかつ前記孔22よりも細い径の円柱からなる小径部24bと、該小径部24bの先端に連設されたネジ軸部24cとを含む。取っ手4は、前記孔22を小径部24bに円周方向及び軸方向に隙間を有して遊嵌挿入されるとともに、ネジ軸部24cに螺着されるナット29により抜け止めされる。これにより、取っ手4は、扉3の前面と直角な水平軸回りで回動自在に扉3に枢着される。なお、ナット29には、これを目隠しするキャップ部材(図示省略)などが装着されるのが望ましい。
【0022】
また、取っ手4の他端側には、扉3側へ小長さでのびる凸部材23が固着される。なお、取っ手4を回動させた際に、凸部材23が扉3の前面等とこじれるのを防止するために、凸部材23の軸方向長さL2は、例えば前記支持部24の本体部24aの軸方向長さL1よりも小さく形成されるのが良い。また、本実施形態の凸部材23は、磁石に吸着される強磁性体を含んで構成されている。
【0023】
また、本実施形態の扉3には、取っ手4を、扉3の下縁3bに沿った水平状態に保持しうる保持手段25が設けられる。
【0024】
本実施形態の保持手段25は、扉3の前面から前方に突出するとともに磁石32が内蔵された吸着部31からなる。該吸着部31は、対向して向き合わされた取っ手4の前記凸部材23を吸着しかつ保持しうる。これにより、取っ手4は、扉3の下縁3bに沿った水平状態に保持される。なお、吸着部31の軸方向長さL3と凸部材23の軸方向長さL2との和は、支持部の本体部24aの軸方向長さL1と同程度か僅かにこれよりも大きく構成される。吸着部31から凸部材23を引き離すことにより、下方へと垂下しうる。
【0025】
このような吊り戸棚1は、例えば図1の左側及び図4(a)に仮想線で示されるように、取っ手4を水平状態に保持させることにより、吊り戸棚1との一体感を醸しだし、見栄えの悪化を防止できる。
【0026】
また、吊り戸棚1の扉3を開く際には、取っ手4に図において反時計回りに回動させる向きの力を加えることにより、凸部材23が保持手段25から離間し、取っ手4は、前記水平状態から、扉3の下縁3bからさらに下方に垂れ下がる垂直状態へと向き換えされる。
【0027】
しかる後、図1の右側の吊り戸棚1及び図4(b)に示されるように、ユーザーは、下方に垂れ下がる取っ手4を確実に把持して扉3を上方に容易に押し上げ、扉3を跳ね上げできる。これにより、戸棚本体2の前面が開かれ、収納空間15への物品の出し入れを行なうことができる。
【0028】
また、扉3を閉止する際には、取っ手4を下方へ引き下げることによって、図4(c)に示されるように、戸棚本体2の前面を閉じることができる。なお、図4(b)のように扉3を跳ね上げた状態において、垂直状態の取っ手4の下端が、戸棚本体2の下縁2bよりも低い位置に設けられるのが好ましい。これにより、ユーザは、扉の閉止時でもより確実に取っ手4を操作することが可能になる。そして、扉3を閉止した後、取っ手4を図4において時計回りに回動させ、かつ、凸部材23を保持手段25に吸着させる。これにより、取っ手4は、垂直状態から水平状態へと向き換えされて保持される。
【0029】
このように、本実施形態の吊り戸棚1は、取っ手4を垂直状態として扉3の下縁3bから下方へ垂れ下げることによって、低い位置に取っ手4を移動させることができるので、手が届き易く、かつ、扉3の開閉操作を容易に行うことができる。また、取っ手4を水平状態へ向き換えすることにより、見映えを損ねることもない。
【0030】
また、本実施形態の取っ手4は、保持手段25によって水平状態に保持されるので、重力等による不用意な向き換えを抑制しうる。しかも、本実施形態のように、保持手段25が磁石32(図3に示す)による磁力によって取っ手4を保持する場合には、該保持手段25と取っ手4との着脱を容易に行うことができる点で望ましい。ただし、保持手段25には、上述の磁力を用いたものの他、嵌め込み等による機械的な保持機構(図示省略)などが採用されても良い。
【0031】
また、本実施形態の取っ手4は、図4(b)に示されるように、扉3の中央部よりも幅方向の一端側に寄せた位置に枢着される。これは、取っ手4が水平状態から垂直状態へ向き換えされた際、収納空間15の前面を広く開放させるのに役立つ。従って、収納空間15に物品を出し入れする際に、取っ手4が障害になることもない。
【0032】
図5及び図6には、本発明の他の実施形態の吊り戸棚の正面図及び部分斜視図が示される。この実施形態のように、取っ手4は、水平状態に保持されたときに、扉3の下縁3b設けられた溝43内に収納させても良い。
【0033】
溝43は、図5(a)のb−b及びc−c断面である図5(b)及び(c)に示されるように、扉3の下縁3bに沿ってのびており、取っ手4を水平に保持した状態で実質的にその全部を収容しうる容積を有する。
【0034】
また、取っ手4は、その一端側に扉3の前面と直交する向きにのびる孔22を有するボス部41が形成される。孔22は、図5(c)に示されるように、例えばピン45及びナット部材47で扉3に回動自在に枢着される。なお、本実施形態の取っ手4は、例えば強磁性体の金属材料で形成されるとともに、溝43には、図6に示されるように、取っ手4を吸着することにより該取っ手4を水平に保持する保持手段25としての磁石32が固着されている。
【0035】
さらに、前記ボス部41には、取っ手4の水平状態において、該取っ手4とは反対側にのびる突片42が形成される。なお、溝43には、この突片42がピン45回りに回動する際の衝合を防ぐ空所44が形成される。
【0036】
このような取っ手4は、不使用時、保持手段25によって水平状態に保持され、扉3の内部に収容される。したがって、吊り戸棚1の見栄えを損ねることがない。また、突片42が下から上に押し上げられることによって、取っ手4は図5(a)において、反時計回りに回動し、保持手段25から離脱して扉3の下縁3bから下方に垂れ下がる垂直状態に向き換えできる。なお、扉3を開閉した後は、図5(a)において、取っ手4を時計回りに回動させることによって、保持手段25で取っ手4を吸着し、再び水平状態へ向き換えしうる。
【0037】
図7には、本発明のさらに他の実施形態が示される。この実施形態では、取っ手4が自在継手36を介して扉3に枢着される。本実施形態の自在継手36は、戸棚本体2の前面に突出固着されたロッド部37と、該ロッド部37の先端に形成される球状体38と、該球状体38に対して摺動可能かつ抜け止めされて嵌合するホルダー部39とから形成される。そして、このホルダー部39に取っ手4の一端側が固着されている。
【0038】
このような自在継手36は、取っ手4を、扉3の前面と直交する水平軸H1のみならず、扉(扉の前面)3と平行な水平軸H2の回りにも回動させることができる。したがって、例えば、図8(a)、(b)に示されるように、取っ手4は、戸棚本体2の収納空間15の中の物品Lを前方に引き出す際に、扉3と平行な水平軸H2回りに傾動させて物品Lとの干渉を防止できる。
【0039】
さらに、図9に示されるように、取っ手4は、扉3の幅方向の中央部に枢着されても構わない。この場合、取っ手4を上述の自在継手を組み合わせることが特に望ましい。
【0040】
なお、本発明の吊り戸棚1は、扉3が上に向けて跳ね上げられる折れ戸タイプに限定されるものではない。例えば、図10(a)、(b)に示されるように、いわゆる観音開きの扉51、51を有する吊り戸棚1でも良い。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態の吊り戸棚の一形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は戸棚本体の前面を閉じた状態を示す縦断面図、(b)は戸棚本体の前面を開いた状態を示す縦断面図である。
【図3】取っ手を拡大して示す斜視図である。
【図4】(a)は取っ手が垂直状態へ向き換えされた状態を示す正面図、(b)は戸棚本体の前面が開かれた状態を示す正面図、(c)は戸棚本体の前面が閉じられた状態を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示し、(a)は吊り戸棚の正面図、(b)はそのb−b断面図、(c)はそのc−c断面図である
【図6】取っ手付近の要部斜視図である。
【図7】自在継手を拡大して示す斜視図である
【図8】(a)は棚から荷物を引き出す状態を示す縦断面図、(b)は取っ手を扉と平行な水平軸回りに回動させた状態を示す縦断面図である。
【図9】(a)は本発明の他の実施形態の吊り戸棚を示す正面図、(b)はその吊り戸棚の前面が開かれた状態を示す正面図である。
【図10】(a)は本発明の他の実施形態の吊り戸棚を示す正面図、(b)はその吊り戸棚の前面が開かれた状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 吊り戸棚
2 戸棚本体
3 扉
3b 下縁
4 取っ手
6 壁面
15 空間
21 棒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の上部に設けられる吊り戸棚であって、
物品を収納可能な収納空間を有しかつ前面が解放された箱状の戸棚本体と、
前記戸棚本体の前面を開閉可能に覆いかつ取っ手が設けられた扉とを有し、
前記取っ手は、棒状体からなるとともに、前記扉の下縁に沿って水平にのびる水平状態と、前記扉の下縁から下方に垂れ下がる垂直状態との間を向き換え可能に前記扉に枢着されることを特徴とする吊り戸棚。
【請求項2】
前記扉は、上に向けて跳ね上げ可能な折れ戸である請求項1に記載の吊り戸棚。
【請求項3】
前記扉は、前記取っ手を水平状態で保持する保持手段が設けられる請求項1又は2に記載の吊り戸棚。
【請求項4】
前記取っ手は、自在継手を介して扉に固着される請求項1ないし3のいずれかに記載の吊り戸棚。
【請求項5】
前記取っ手は、前記扉の幅方向の中央部に枢着される請求項1ないし4のいずれかに記載の吊り戸棚。
【請求項6】
前記取っ手は、前記扉の幅方向の一端側に寄せて枢着される請求項1ないし4のいずれかに記載の吊り戸棚。
【請求項7】
前記取っ手は、前記扉と平行な水平軸回りに回動可能に枢着される請求項1ないし6の何れかに記載の吊り戸棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−131318(P2010−131318A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312459(P2008−312459)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】