説明

吊戸のガイドピン

【課題】 吊戸が組み込まれた状態でも、位置決め調整が熟練を必要とせずに簡単に行われ、また正確且つ確実に行われ、しかも長時間調整位置が維持される吊戸のガイドピンを提供することを目的としている。
【解決手段】 基板1に形成した円形の取付孔に円板2bとその頂面に多角形板2aを同心に重着させてなる回動板2が多角形板2bの少なくとも一部を基板1の頂面から突出させて回動可能に嵌装されており、回動板2の表面にガイドピン本体3が偏心位置に立設されており、基板1を床面Gに取り付けた状態で基板1の表面に突出している多角形板2bに側方から回転工具を嵌装して回動板2を回動させて基板1に立設させたガイドピン本体3の位置を調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸を設置した床面に取付けて吊戸の底面に進行方向へ延設されるガイド溝に嵌挿して前後方向への揺れを防止するための吊戸のガイドピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、出入口枠の鴨居などに取り付けた吊りレールに走行可能に吊り下げられた吊戸が下部において開閉時に前後方向へ揺れることになり、これを防止するために吊戸の底部に係着するガイドが床面に設置されている。
【0003】
そして、その1つとして吊戸の底面に進行方向へ延設されるガイド溝に嵌挿して前後方向への揺れを防止するガイドピンを床面に設置するものが知られている。
【0004】
また、前記ガイドピンとして、 特開2005−2770号公報、特開2005−163384号公報、特開2002−138772号公報等に提示されているが、これらのガイドピンは、図5に示すように基板10の略中央部にガイドピン本体11が立設されているとともに、基板10のガイドピン本体11における前後位置にに長孔の取付孔12,12が形成されているものと同様な位置調節機構を有するものである。
【0005】
即ち、前記従来のガイドピンは、長孔の取付孔12,12に挿通された取付ネジ13,13で基板10を仮止め状態としておき、基板10を前記取付ネジ13,13を差し込んだ状態で移動する範囲で取付孔12,12を左右に可動させてガイドピン本体11の位置決めをし、その後取付ネジ13,13を固く締めてガイドピン本体11の位置調整を行っている。
【0006】
しかしながら、この操作は、ガイドピン本体11の前後に配置される取付ネジ13,13をドライバーのような工具により操作することになり、ガイドピン本体11を吊り下げた吊戸の底面に形成したガイド溝に差し込んだ状態で行うことは困難であり、吊戸を一旦他の位置に移動させ、ドライバー等の工具を使用して取付ネジ14で軽く仮止めし、また引き寄せて調整具合を確かめ、この操作を何回か繰り返し行って位置決めを行っている。そのために熟練を要し、簡単に取り付けることが難しい。また、取付孔が長孔であることから、ネジが緩み易く、長時間締め付け強度を維持することが難しい。
【0007】
【特許文献1】特開2005−2770号公報
【特許文献2】特開2005−163384号公報
【特許文献3】特開2002−138772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであり、吊戸が組み込まれた状態でも、位置決め調整が熟練を必要とせずに簡単に行われ、また正確且つ確実に行われ、しかも長時間調整位置が維持される吊戸のガイドピンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る吊戸のガイドピンは、基板に形成した円形の取付孔に円板とその頂面に多角形板を同心に重着させてなる回動板が前記多角形板の少なくとも一部を前記基板の頂面から突出させて回動可能に嵌装されており、前記回動板の表面にガイドピン本体が偏心位置に立設されており、前記基板を床面に取り付けた状態で前記基板表面に突出している多角形板に側方から回転工具を嵌装して回動板を回動させて前記基板に立設させたガイドピン本体の位置を調節可能としたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、回動板の頂面における偏心位置にガイドピン本体が立設されているとともに、回動板を構成する多角形板が基板の頂面から突出しているので、ガイドピン本体の前後方向の位置決め調整をする際に、基板の頂面から突出している多角形板の側周面にスパナのような工具を嵌装して回動かすことによって、調整ができる。つまり、立設した多角形板が一種の多角形ナットとして作用するため、吊戸を組み付けた状態でも吊戸下端と床面との間に形成される隙間から露出している多角形板の側周面にレンチ等の工具を使用して回動板を回すことによって、簡単に位置決め調整ができる。
従って、吊戸を他の場所に移し、また所定の位置に戻して調整し、この操作を繰り返し行って、適切に調整する技量は必要がなく、熟練の必要もない。
【0011】
また、前記基板が上板と下板とを一体的に重着して形成されているとともに前記取付孔が前記上板に形成されているとともに、前記回動板を形成する円板の底面とこれに対向する前記下板の頂面とに互いに係合する係合突起と係合凹部とが前記下板の回転中心から放射状に所定の間隔で配設されている構成とすることにより、回動板を簡単に形成することができるとともに、調整する際に、回動板を回す操作によってクリック感が得られ、また調整した位置で一定の係合力で停止される。従って、ピンの位置決めが、正確且つ確実に行われる。そして、基板には、通常の(長孔でない)取付孔が形成されていることから、取付ネジの締め付けによって、長時間締め付け強度が維持される。
【0012】
更にまた、前記取付孔は内周面が頂面に向けて狭くなる傾斜面を有する円錐台形であり、前記取付孔に外周面が頂面に向けて狭くなる傾斜面を有する円錐台形を呈する 回動板を形成する円板が回動可能に且つ頂面方向へ抜けることなく嵌装されている構成とした場合には、製造が容易であるとともに回動も円滑で且つ嵌装状態も良好で回動板が基板から抜け出る心配もない。
【0013】
尚、基板は上板と下板を、回動板は多角形板と円板を、それぞれ溶接することによって容易に重着させることが可能であり、難しい加工部分は単独部品の状態で行い、その後溶接固着で一体化して製造できる。従って、基板と回動板とピンからなるガイドピンの製造が容易になる。
【0014】
また、ガイドピン本体に装着された円筒を、合成樹脂製にすることによって、吊戸走行時、ピンと案内レールとの接触による摩擦発生音が発生しない。
【発明の効果】
【0015】
以上の手段を有する本発明によれば、吊戸が組み込まれた状態でも、位置決め調整が熟練を必要とせずに簡単に、また正確且つ確実に行われ、しかも長時間調整位置が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示した本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1乃至図4は本発明の好ましい実施形態の一例を示すものであり、吊戸DのガイドピンPは、床面Gに取り付けられ(図2参照)、基板1と、その基板1に嵌着された回動板2と、回動板2に偏心して立設されたガイドピン本体3で構成されている。また、基板1は適宜の厚さを有する上板1aと薄い下板1bとからなり、点溶接等で重着させて一体にしたものであり、基板1には上板1aの略中央部に円形の孔4が形成され、その円形の孔4に回動板2が嵌装されている。
【0018】
更に詳しく説明すると、回動板2は多角形(例えば8角形)板2aと円板2bからなり、点溶接等によって同心に重ねて一体にしたものである。この回動板2を形成する多角形板2aは基板1から側周面が露出するとともに頂面には裏面側からのかしめ(コーキング)によりガイドピン本体3が偏心位置に立設されている。特に、本実施形態ではガイドピン本体3には、合成樹脂製の円筒5が回動可能に装着されており、吊戸Dの走行時に、吊戸Dのガイド溝dに接触しても円滑に走行でき、摩擦音が生じたりすることもない。
【0019】
基板1の対向するコーナー部には、取付孔8がそれぞれ形成されて、これらの取付孔8に装通される取付ネジ9の締め付けによって、基板1は固定される。これにより、吊戸DのガイドピンPは、吊戸Dが組み込まれた床面G側の所定の位置に正確に取付けられる(図2参照)。
【0020】
そして、回動板2を回すと、回動板2の多角形板2a上に立設されている偏心したピン3の位置が変移して、ガイドピンPの位置決め調整が簡単に行われる。従って、吊戸Dを組み込んでも、吊戸Dと床面Gとの間に形成される隙間からレンチ等の工具Tを差し込み嵌装して回転板2の多角形板2aを回すことによって、簡単に位置決め調整ができ、吊戸Dを外すことなく熟練の必要もない。
【0021】
また、本実施形態では、回動板2下側の円板2b裏面と環付凹部4の底面、即ち回動板2の裏面と基板1の下板1b上には、相互に係合する半円形凹溝と半円形突起、例えば円板2b裏面側に半円形凹溝6が形成され、下板1b上側には半円形突起7が設けられてそれぞれ環状に等間隔に配置されており、半円形凹溝6と半円形突起7とが係合するので、クリック感が得られ、また調整した位置で一定の係合力で停止されるので、位置決めが正確且つ確実に行われる。
【0022】
尚、本実施形態においては、2b裏面側に半円形凹溝6が形成され、下板1b上側には半円形突起7が設けられているが、逆に円板裏面側に半円形突起を設け、下板上側に半円形凹溝を形成してそれぞれ環状に等間隔に配置した構成にしても、同様の効果が得られる(図示せず)。
【0023】
また、本実施形態においては、回動板2の多角形板2aを正8角形としたが、3角形以上の多角形板が用いられる。更に、基板に形成する取付孔も対角線上に対向して2個形成されているが、必要に応じて適切な場所に3〜4個設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る吊戸のガイドピンの斜視図である。
【図2】図1の拡大縦断面図である。
【図3】(a)は図1に示した実施の形態の分解斜視図、(b)は回動板の底面図である。
【図4】図1に示した実施の形態のピン位置の調整方法を示す説明図である。
【図5】従来の吊戸のガイドピンの斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
D 吊戸、P ガイドピン、G 床面、T 工具、1 基板、1a 上板、1b 下板、2 回動板、2a 多角形板、2b円板、3 ピン、4 環付凹部、5 円筒、6 半円形凹溝、7 半円形突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成した円形の取付孔に円板とその頂面に多角形板を同心に重着させてなる回動板が前記多角形板の少なくとも一部を前記基板の頂面から突出させて回動可能に嵌装されており、前記回動板の表面にガイドピン本体が偏心位置に立設されており、前記基板を床面に取り付けた状態で前記基板表面に突出している多角形板に側方から回転工具を嵌装して回動板を回動させて前記基板に立設させたガイドピン本体の位置を調節可能としたことを特徴とする吊戸のガイドピン。
【請求項2】
前記基板が上板と下板とを一体的に重着して形成されているとともに前記取付孔が前記上板に形成されているとともに、前記回動板を形成する円板の底面とこれに対向する前記下板の頂面とに互いに係合する係合突起と係合凹部とが前記下板の回転中心から放射状に所定の間隔で配設されている請求項1記載の吊戸のガイドピン。
【請求項3】
前記取付孔は内周面が頂面に向けて狭くなる傾斜面を有する円錐台形であり、前記取付孔に外周面が頂面に向けて狭くなる傾斜面を有する円錐台形を呈する 回動板を形成する円板が回動可能に且つ頂面方向へ抜けることなく嵌装されていることを特徴とする請求項1または2記載の吊戸のガイドピン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−303182(P2007−303182A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133326(P2006−133326)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000141727)株式会社久力製作所 (20)