説明

吊戸のガイド

【課題】 吊戸本体を厚さ方向の中心軸線に沿って振れることなく走行させることができるばかりか、取付、調整も容易で平坦な床面を得ることができ、従来のガイドピンを用いたものにも適応することができるなど経済的にも優れた吊戸のガイドを提供する。
【解決手段】 吊戸本体の下端面に沿って形成された下方に開放した断面コ字形の走行溝に嵌挿することにより吊戸本体の走行時における厚さ方向の振れを規制するために床面に設置される吊戸のガイド1であって、床面に配置される基板2と、基板2に立設した一対のガイドローラ3a,3bと、基板2を床面に取り付けるための取付ねじ71,72,73とからなり、基板2は少なくとも幅方向(吊戸の厚さ方向)の中心位置に取付ねじ71の軸部71aが挿通可能な円形の軸孔21が形成されているとともに、一対のガイドローラ3a,3bが軸孔21を挟んで幅方向(吊戸の厚さ方向)並びに長さ方向(吊戸の走行方向)に対称となる所定の位置に立設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸本体の下端面に沿って形成された下方に開放した断面コ時形の走行溝に嵌挿することにより吊戸本体の走行時における厚み方向の振れを規制するために床面に設置される吊戸のガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、出入口枠の鴨居などに付設したレールに走行可能に吊戸本体が吊り下げ保持された吊戸が知られており、吊戸は吊戸本体が上端においてだけ支持されていることから走行時(開閉時)に前後方向に振れることがあり、これを防止する目的で前記吊戸本体に係着するガイドを床面に設置している。
【0003】
そして、吊戸のガイドとして吊戸本体の下端面に沿って形成された下方に開放した断面コ字形の走行溝に嵌挿する型式のものが知られており、例えば、ガイドピンに磁石を設けたものが特開平8−326402号公報に、縦軸にローラを軸支したガイドローラを基板に吊戸本体の厚さ方向に移動可能に立設したものが特開2002−138772号公報などに提示されている。
【0004】
ところが、前記公報に提示されているガイドピンやガイド板を設けたものは吊戸本体とガイドとの摩擦を考慮すると両者が密接した状態で配置すると吊戸本体の走行が困難となり開閉しづらくなり、両者の間に一定の隙間を形成することが必要でがたつきを解消することができない。また、ガイドピンの場合には一定の間隔で複数個を床面に配置する必要があり、平滑な床面を得ることができず、更に吊戸本体とガイドピンとが直接的に当接しているので、例えば吊戸本体に衝撃が加わった場合に破損してしまうという問題もある。
【0005】
また、前記公報に提示されている縦軸にローラを軸支したガイドローラを基板に吊戸本体の厚さ方向に移動可能に設置したものは、ガイドローラを厚さ方向に移動させることにより吊戸のガイド溝にガイドローラを接した状態で走行させることが可能であるが、移動は前方または後方の何れか一方に限られることから、例えばシール機能を有する吊戸の閉成箇所について使用する場合には都合がよいが、吊戸本体を走行方向へ延びる中心軸線に沿って移動させることは困難である。
【特許文献1】特開平8−326402号公報
【特許文献2】特開2002−138772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、吊戸本体を厚さ方向の中心軸線に沿って振れることなく走行させることができるばかりか、取付、調整も容易で平坦な床面を得ることができ、吊戸に加えられた衝撃を吸収し、従来のガイドピンを用いたものにも適応することができるなど経済的にも優れた吊戸のガイドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明である吊戸のガイドは、吊戸本体の下端面に沿って形成された下方に開放した断面コ字形の走行溝に嵌挿することにより吊戸本体の走行時における厚さ方向の振れを規制するために床面に設置される吊戸のガイドであって、床面に配置される基板と、前記基板に立設した一対のガイドローラと、前記基板を床面に取り付けるための取付ねじとからなり、前記基板は少なくとも幅方向(吊戸の厚さ方向)の中心位置に取付ねじの軸部が挿通可能な円形の軸孔が形成されているとともに、前記一対のガイドローラが前記軸孔を挟んで幅方向(吊戸の厚さ方向)並びに長さ方向(吊戸の走行方向)に対称となる所定の位置に前記ガイドローラが立設されていることを特徴とする。
【0008】
床面に設置した基板を厚さ方向の中心位置に配置される軸孔において回転させることにより、一対のガイドローラを吊戸本体の下端面に沿って形成されたガイド溝の前後の内側面にそれぞれ当接させることにより吊戸本体を厚さ方向の中心位置に沿ってがたつくことなく走行させる。
【0009】
また、本発明において、前記基板を床面に固定するために基板における走行方向の端部に形成した取付けねじ孔の少なくとも一方が前記軸孔を中心とした円周上に位置する円弧状である場合には、止めねじを前記止めねじ孔を貫通して床面に仮止めした状態で基板を回転させてガイドローラを吊戸本体の下端面に沿って形成されたガイド溝の前後の内側面に当接させることにより、容易に所定の回転位置で基板を床面に設置することができる。
【0010】
更に、本発明において、前記基板の下面に前記基板を前記支軸を中心として回転可能に且つ所望の回転位置で固定可能に支持した床面取付板が付設されている場合には、更に調整が容易であるばかりか例えば床面取付板に前後方向(吊戸の厚さ方向)に移動可能な取付部を設けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、吊戸本体を確実に且つ円滑に吊戸本体の厚さ方向の中心位置に沿って走行させることができる。また、取付、調整も容易であり、従来のガイドピンのように床面に多数のガイドピンが突設することもなく、製造も容易であり、安価に提供擦ることも可能で経済的にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1乃至図3は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、本発明である吊戸のガイド1は、所定幅(例えば使用する吊戸の下面に形成されるガイド溝の幅程度)で適宜の長さと厚さを有するほぼ横長矩形状を呈する金属製の基板1とこの基板2上に立設された一対のガイドローラガイドローラ3a,3bと、前記基板2を床面に設置するための取付ねじ71,72,73とから構成される。
【0014】
更に詳しく説明すると、基板2は中心位置に取付ねじ71の軸部71aを挿通可能な円形を呈する軸孔21が形成されているとともに、この軸孔21を挟んで長さ方向並びに幅方向に対称となる所定の位置に前記ガイドローラ3a,3bが斜め方向に対向して立設されている。
【0015】
このガイドローラ3a,3bは従来周知のものであり、基板2に植設された金属製の縦軸31に機能性を有する硬質合成樹脂製のローラ本体32が回転可能に軸支されたものであり、必要であればベアリングなどの潤滑部材(図示せず)を備えても良い。また、基板2の長さ方向の両端部には前記軸孔21を中心とする所定の円周上に位置する円弧状に形成されている取付けねじ孔22,23が形成されている。
【0016】
このように構成される本実施の形態は図4に示すように、例えば、鴨居4に取り付けたレール41に懸吊された吊戸本体5の引き込み側の下端部に位置する床面6に取り付けて使用される。
【0017】
図5及び図6は取付状態及び調整状態を示すものであり、始めに図5に示すように床面6の吊戸本体5の走行方向の中心に沿う中心軸線Cの所定位置に軸孔21を合わせて例えば図示のように基端側のガイドローラ3aが吊戸本体5の下端に沿って形成されたガイド溝51の引き込み側の内側面51cに当接する位置に配置するとともに、軸孔21および取付けねじ孔22,23に取付ねじ71,72,73をそれぞれ挿入して床面6に仮止めしておく。
【0018】
そして、次に、図6に示すように、基板2を取付ねじ61である支軸を中心として水平方向に回転させ、例えば基端側のガイドローラ3aのローラ本体32をガイド溝51の手前側の内側面51aに、先端側のガイドローラ3bのローラ本体32をガイド溝51の手前側の内側面51bにそれぞれ当接させる。
【0019】
このとき、ガイドローラ3a,3bは吊戸本体5をガイドすればよく、圧接すると接触抵抗が増して吊戸本体5の走行に影響を与えるので注意を要する。
【0020】
そして、基板の所定のり回転位置が定まったならば、前記取付ねじ71,72,73を螺締して基板2を床面6に固定する。
【0021】
このようにして床面6に設置された本実施の形態であるガイド1によると、基端側のガイドローラ3aのローラ本体32をガイド溝51の手前側の内側面51aに、先端側のガイドローラ3bのローラ本体32をガイド溝51の手前側の内側面51bにそれぞれ当接しているので、吊戸本体5は図6の(a)に図示したように、矢印で示すA方向には振れない。また、先端側のガイドローラ3bはガイド溝51の手前側の内側面51bに当接しているので振れることになるが吊戸本体5は基本的に前記図4に示したように直線上のレール41によって移動を規制されているのでガイドローラ3a,3bはいずれもガイドとしての役割を果たしているので厚さ方向に振れる心配はない。また、このように本実施の形態では、ガイドローラ3a,3bと吊戸本体5とが強制的に接していないので、例えば吊戸本体5に衝撃が加わっても吊戸本体5がガイド1により破損したりする心配がない。
【0022】
尚、本実施の形態では、吊戸5の引き込み側に手前側のガイドローラ3aを配置したが、これに限るものでなく、ガイドローラ3a,3bの位置は逆であっても良い。また、本実施の形態では前記取付ねじ71,72,73をいずれも床面6に螺締するものを用いたが、その内の少なくとも1つは床面6に対して支点としての働きをすればよく、螺締するものでなくても良い。
【0023】
図7及び図8は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、基板2及びガイドローラ3a,3bなどの構成は前記実施の形態とほぼ同様であるが、前記基板2の下面に基板2を前記軸孔21において挿通支持した支軸24によりこの支軸24中心として回転可能に床面取付板8が付設されている点が異る。
【0024】
特に本実施の形態では、基板2には軸孔21を中心とした1つの円弧状の取付けねじ孔22が形成されて、その下方に位置する床面取付板8形成したねじ孔81に短尺の止めねじ74を螺締するものであり、回転調整が1つの止めねじ74で可能とされており、更に、床面取付板8の走行方向の両端に幅方向に延びるねじ孔82,83が形成されており、取り付けねじ75,76により厚さ方向(前後方向)に移動可能に床面6に取り付けることができる。
【0025】
尚、図9は従来のガイドピン形のガイドローラを用いた従来例に本発明を実施した場合の一例を示すものであり、このようにガイド1を変更するだけで従来の吊戸5を用いても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1に示した実施の形態を示す平面図。
【図3】図1に示した実施の形態を示す側面図。
【図4】図1に示した実施の形態の使用箇所を示す説明図。
【図5】図1に示した実施の形態についての取り付け状態を示す説明図であり、(a)は平面から見た説明図、(b)は側面から見た説明図。
【図6】図1に示した実施の形態についての調整状態を示す説明図であり、(a)は平面から見た説明図、(b)は側面から見た説明図。図1に示した実施の形態の異なる使用状態を示す説明図。
【図7】本発明の異なる実施の形態についての取り付け状態を示す説明図であり、(a)は平面から見た説明図、(b)は側面から見た説明図。
【図8】図7に示した実施の形態についての調整状態を示す説明図であり、(a)は平面から見た説明図、(b)は側面から見た説明図。
【図9】本発明の更に異なるた実施の形態についての調整状態を示す説明図であり、(a)は平面から見た説明図、(b)は側面から見た説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 ガイド、 2 基板、 3a,3bガイドローラ、 4 支持部片、5 吊戸本体、 6 床面、 8 床面取付板、 21 軸孔、 22 取付けねじ孔、 23 取付けねじ孔、 71,72,73 取付ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊戸本体の下端面に沿って形成された下方に開放した断面コ字形の走行溝に嵌挿することにより吊戸本体の走行時における厚さ方向の振れを規制するために床面に設置される吊戸のガイドであって、床面に配置される基板と、前記基板に立設した一対のガイドローラと、前記基板を床面に取り付けるための取付ねじとからなり、前記基板は少なくとも幅方向(吊戸の厚さ方向)の中心位置に取付ねじの軸部が挿通可能な円形の軸孔が形成されているとともに、前記一対のガイドローラが前記軸孔を挟んで幅方向(吊戸の厚さ方向)並びに長さ方向(吊戸の走行方向)に対称となる所定の位置に前記ガイドローラが立設されていることを特徴とする吊戸のガイド。
【請求項2】
前記基板を床面に固定するために基板における走行方向の端部に形成した取付ねじ孔の少なくとも一方が前記軸孔を中心とした円周上に位置する円弧状である請求項1記載の吊戸のガイド。
【請求項3】
前記基板の下面に前記基板を前記支軸を中心として回転可能に且つ所望の回転位置で固定可能に支持した床面取付板が付設されている請求項1または2記載の吊戸のガイド。
【請求項4】
前記床面取付板が吊戸本体の厚さ方向に移動可能な取付部を有する請求項3記載の吊戸のガイド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−182675(P2007−182675A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380639(P2005−380639)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(598001397)株式会社フロンテア (19)