説明

吊持用可動装飾具

【課題】吊持されている物の装飾要素が風力また風向に応じて様々な表情に変化することができ、しかも変化する物体の臨場感を視覚的に味わうことができる吊持用可動装飾具を提供する。
【解決手段】無色透明の合成樹脂製の容器1と、この容器に収容される、柔軟な無色透明の袋2に密封状態で収容されている水3および水中で揺動可能に支持されている装飾要素4と、前記容器1の天部に設けられる吊持手段5と、下部に設けられる揺動手段6とからなる。容器1は、概略半球形の椀状に形成された身部7および蓋部8からなり、袋2は水3とこの水中に浮遊する浮き玉22に吊り糸21を介して連結する装飾要素4を収容して密封し、そのままの状態で容器1に収容している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊持している物が風に吹かれて揺れ動いたり、また回転したりする吊持用可動装飾具に関する。
【背景技術】
【0002】
吊持用可動装飾具の一例として、釣鐘部と、その中に吊られた舌部とからなる風鈴がある。風鈴は、近年の住環境において、夏場は窓を締め切ることが多いことから、窓外に設けた風鈴の涼感音を聞くのは難しくなってきている。これについてはエアコンディショナーの送風を利用して室内で風鈴の音を聞くことはできるが、テレビやラジオなどの音と重なってしまうという問題がある。そのため風鈴の釣鐘部の表面に絵柄を施し、釣鐘部が回転したときに絵柄が回転するのを見て、涼感を視覚で味わうようにしているものがある。しかし、この絵柄の表情は釣鐘部が回転しても変化しないので、このような風鈴は興趣に欠ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、吊持されている物体そのものが風力また風向に応じて様々な表情に変化することができ、上記従来の風鈴の絵柄の動きとは異なる涼感または臨場感を視覚的に味わうことができる吊持用可動装飾具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の吊持用可動装飾具(請求項1)は、透視可能な容器と、この容器の中に収納される透視可能な透明度の液体と、この液体の中で揺動可能に支持されている装飾要素と、この容器の天部に連結した、この容器を揺動あるいは回転可能に吊持するための吊持手段とからなっている。
【0005】
前記容器は比較的硬質であるものが好ましい(請求項2)。
【0006】
また前記容器は比較的軟質であってもよい(請求項3)。
【0007】
前記硬質の容器の内部に透視可能な軟質の第二の容器が収容され、この第二の容器の中に前記液体および装飾要素が密閉収納されているのが好ましい(請求項4)。
【0008】
前記容器の外側に容器を揺れ動かすことが可能な揺動手段を設けているものが好ましい(請求項5)。
【0009】
このような揺動手段としては、その一端を自由端とし、同他端を前記容器に連結している風受け部材が好ましい(請求項6)。
【0010】
前記容器はそれぞれ概略半球形の椀状に形成された身部および蓋部からなるものが好ましい(請求項7)。
【0011】
前記軟質の第二の容器の底部は、下向きに凸湾形成されているものが特に好ましい(請求項8)。
【0012】
前記装飾要素が前記液体に浮く浮き部材に連結されているものが好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吊持用可動装飾具(請求項1)は、透視可能な容器の中に、透視可能な透明度の液体と、この液体の中で揺動可能な状態で支持されている装飾要素を収納しており、その容器の天部には、上記液体および装飾要素などを収納している当該容器を揺動あるいは回転可能に吊持する吊持手段が設けられている。そのため例えば、容器に風が当たると、上記容器は揺動あるいは回転することができる。
【0014】
前記のように容器が揺動または回転すると、容器の中の液体は揺れ動き、また液体の中で揺動可能に支持されている装飾要素も液体の揺れ動きに反応して揺れ動くことになる。また液体の動きあるいは装飾要素の動きは容器が受ける風力の程度、また風向に反応するので、装飾要素は液体の中で回転したり、揺れ動いたりするだけではなく、繊細な動きをしたり、激しい動きをしたりなど変化に富んだ動きをする。
このように装飾要素の様々な動きは、容器が透視可能になっており、また液体も透視可能な透明度になっているので、容器のどの方向からでも見て取ることができる。
なお、ここでいう容器を揺動あるいは回転可能に吊持するための吊持手段とは、自然の風、またエアコンディショナーや扇風機などの機械的な風が容器に当たったとき、また指先などで容器を突付いたり、また押したりしたとき、上記容器が揺動、または回転などの動きを生じるように吊持するものをいう。
【0015】
前記容器が比較的硬質である場合(請求項2)、その容器は押圧や、また収納物の重みに対して、簡単には変形しない。したがってこのような容器は外側から押しても、凹んだりすることが防止され、中の装飾要素は保護される。また容器の天部の吊り手段を設けている部分は、液体の全重量を支持しているので、負荷がかかるが、当該部分は簡単に変形することが防止されているので、長期間、使用することができる。
【0016】
また前記容器が比較的軟質である場合(請求項3)、容器は、外側から内側に押すことが可能になっているので、中の液体を振動させて、装飾要素を動かすことができる。したがって装飾要素は容器の外側を指先などで突っついたり、押したりして液体を刺激することによって、揺れ動かすことができる。また装飾要素のこのような揺れ動きは、上記容器への突っつきや押す力を加減することによって、強弱させることができる。また前記突っつきや押す部位が異なれば、装飾要素の動きも異なるので、様々な動きを起こすことができる。
【0017】
前記硬質の容器の内部に透視可能な軟質の第二の容器を収容し、この第二の容器の中に前記液体および装飾要素を密閉収納している場合(請求項4)、装飾要素および液体は軟質の第二の容器と、その外側の硬質の容器によって二重に保護されている。そのため万一、外側の容器が損傷しても、内側の容器によって液体および装飾要素は外側の容器からこぼれたりはしない。第二の容器は軟質であるから、硬質の容器に比べて、液体を収納した状態で密閉収納することは一層、簡単である。
【0018】
前記容器の外側に容器を動かすことが可能な揺動手段を設けている場合(請求項5)、この揺動手段は容器の動きを促進あるいは補助することが可能である。したがって風がないとき、あるいは弱いときでも、上記容器は揺動手段によって揺動あるいは回転させることができる。ひいては装飾要素をより確かに動かすこともできる。
【0019】
このような揺動手段が、その一旦を自由端とし、同他端を前記容器に連結している風受け部材である場合(請求項6)、風受け部材はこれ自体が風力あるいは風向に敏感に反応する。つまり容器よりも風受け部材の方が、風力あるいは風向に敏感に反応する。したがってこの風受け部材は、風が吹く場所に容器を吊持していると、風が吹いた時に容器が揺れ動いたり、また回転するよりも先に風を受けて揺れ動き、また回転するので、早期に容器に確かな揺れと回転を与える。また微風のため、容器自体は敏感に風の作用を受けることができない場合でも、風受け部材がその風を受けることによって、容器を揺らし、また回転させて、装飾要素が揺れ動く様が観賞できる。また請求項4の硬質の容器の内部に軟質の第二の容器が収容されている二重構造の容器の場合、重量は一つの容器よりも重くなるが、硬質の容器の外側に設けられた風受け部材が風を受けることによって、硬質の容器および第二の容器を諸共、揺れ動かし、また回転させて、中の装飾要素に揺動を与える。
【0020】
前記容器が概略半球形の椀状に形成された身部および蓋部からなる場合(請求項7)、容器は閉蓋状態において、概略、球体の形状に形成されることが可能となっている。通常、球体の容器は、多角形の容器のような角部はない。したがって例えば容器が回転状態において中の物を見る場合、角部からそれを見たときのような、物が変形し、実際の姿が歪曲して見えることはない。また平面部と角部が規則的あるいは不規則に目の前に回転してこないので、物が変形しているのと、そうでないものが見える煩雑さはない。したがって本発明の場合、容器は大部分が湾曲面に形成されているので、回転状態においては、ほとんど湾曲面越しに装飾要素を見ることになる。そのため装飾要素が角部分で変形して見えることはほとんどなく、また実際の形状を見ることができるので、観賞するうえでの煩雑さはほとんどない。
【0021】
前記軟質の第二の容器の底部が下向きの凸彎曲面に形成されている場合(請求項8)、この容器は液体や装飾要素が収納されているので、それ相当の重量になっている。したがってこの軟質の容器の底部の凸湾曲面は前記硬質の容器の底部の湾曲面に沿い易く、また密着させ易い。そのため、第二の容器は硬質の容器の底部に安定した状態で収納させることができる。また第二の容器は硬質の容器内での安定感が高いので、硬質の容器が揺れ動いても容器内で転倒しない。また容器と袋の底部は一体観があるので、煩雑さがなく、好体裁の外観を呈する。
【0022】
前記装飾要素が前記液体に浮く浮き部材に連結されている場合(請求項9)、浮き部材は水が揺動するのに伴って、自ら、揺れ動くので、装飾要素も水中において揺動が可能となっている。したがって装飾要素は容器が揺れ動いたり、また回転したりしたときに、浮き部材の揺動によって、水中で揺動する。また浮き部材は容器が押されて水が移動すると、水中あるいは水面上を移動することが可能となっている。したがって装飾要素は所定の場所で揺動する単調なものではなく、容器の中央や端など異なるところで揺動することができるので、変化に富んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に図面を参照しながら本発明の吊持用可動装飾具(以下、装飾具という。)の実施形態を説明する。図1は本発明の装飾具の一実施形態を示す正面斜視図、図2aは図1の容器の嵌合部分の断面図、図2bは図1の容器の天部の一部斜視図、図2cは図1の容器の底部の一部斜視図、図3aは袋の底面図、図3bは同袋の正面図、図3cは同袋の側面図、図4aは図1の袋および装飾要素の一実施形態を示す正面図、図4bは同側面図、図5および図6は本発明に関する袋の他の実施形態を示す一部省略の正面図、図7は本発明の吊持用可動装飾具の他の実施形態を示す上面斜視図である。
【0024】
図1に示す装飾具は、可撓性の比較的硬質である無色透明の合成樹脂製の容器1と、この容器に収容される、柔軟な無色透明の袋2に密封状態で収容されている水3および水中で揺動可能に支持されている装飾要素4と、前記容器1の天部に設けられる吊持手段5と、下部に設けられる揺動手段6とからなる。
容器1は身部7と蓋部8からなる。身部7と蓋部8はそれぞれの周縁が円形の半球形の椀状に形成され、また周縁の直径は概略60〜100mmの範囲内が機能上、また美観上からも好ましいが、80mm前後のものは、特に好ましい。蓋部8は身部7よりも大きい椀状に形成されていて、図2aに示すように、蓋部8は周縁から外側に延びる水平面9aとこの水平面より垂直方向に立ち上がっている立ち上がり面9bからなる断面がカギ形の嵌合部10aを形成している。一方、身部7も同様に周縁から外側に延びる水平面9aとこの水平面より垂直方向に立ち上がっている立ち上がり面9bからなる断面がカギ形の被嵌合部10bを形成している。嵌合部10aと被嵌合部10bのそれぞれのカギ形はその水平面9a、9a同士が当接し、またその立ち上がり面同士9b、9bが密着する。
【0025】
また図2aおよび図2bに示すように、それぞれの立ち上がり面9b、9bの一方には凹条11aを、他方には凸条11bを要所要所に設けている。この凹条11aと凸条11bは立ち上がり面9b、9bが密着し、水平面9a、9aが当接した状態において嵌合するので、身部7と蓋部8の周縁同士は密着と嵌合によって、身部7の口部の閉蓋をより確かなものにする。しかして閉蓋状態における容器1は、図1に示すように、全体的には中空の球体を呈しているが、図1および図2a乃至図2bに示すようにその中間の表面を嵌合部10aおよび被嵌合部10bが突出して囲繞している。この突出部分は後述する吊持手段5によって容器1が吊持された場合、風の抵抗を受け易いので、容器1の揺動、また回転作用に有効である。
【0026】
さらに図2aに示すように前記立ち上がり面9b、9bの周縁から外側に向けて水平に延びる当接面9c、9cが形成されており、図1および図2bに示すようにその当接面9c、9cから吊持用穴12、12を穿設した突片13、13を延設している。また図2cに示すように前記突片13、13と真反対の当接面9c、9cから、紐通し穴14を穿設した突片15、15を延設している。この突片15、15は下端が連続形成されている。明らかなように上記容器1は一体形成されている。ただし別体としてもよい。
【0027】
図1および図2bに示すように容器1の天部には吊持手段5が取り付けられている。この吊持手段5は前記吊持用穴12と、これに挿通している金属製あるいは合成樹脂製の吊り環17と、この吊り環17に取り付けている柔軟な吊り紐18からなっている。吊り環17は一本の線材の両端を分離可能な状態で重ね合わせたリング状のものが特に好ましい。この吊り環17は、吊持用穴12、12から離脱させ、身部7と蓋部8の嵌合を解消して、蓋部8の口部を完全に開口させることができる。なお吊り環は、エンドレスのリングであってもよい。これは身部7を全面的に開口することはできないので、少なくとも、水3、装飾要素4を収納している袋2が容器1に出し入れができる開口を確保するために大きめのリングが好ましい。吊り紐18は特に木綿製の太目の糸など柔軟性に富み、また糸が捩れ易いものが容器1の揺動、特に回転作用が円滑となる。また木綿製の糸に代えて、合成樹脂製の極細紐でもよい。その場合、前記の糸のように容器の揺動や回転などの動きを円滑にすることはできないが、長期の使用に耐えることができる。なお、吊り環17を使用しないで吊持用穴12に直接、上記吊り紐18を取り付けることもできる。この場合、吊持用穴12の周りは面になっているので、吊り紐18は吊り環17に比して回転方向の抵抗を受けやすい。そのため容器の揺動また回転を抑制するには効果的である。
【0028】
図2cに示すように、容器1の下部には揺動手段6が設けられている。この揺動手段7は前記紐通し穴14と、短冊19と、この短冊を吊るす木綿製の吊り紐20からなっている。またこの短冊19は容器1の底部から少し離れたところで吊持されている。短冊19は自然の風あるいは室内のエアコンディショナーや扇風機による人工的な風を受けて、上記容器1を揺動または回転させることができる程度の大きさ、形状、厚さに形成されている。素材は合成樹脂製あるいは紙製のいずれでもよい。この短冊19は容器1から離れているので、風を受けたときに自らが軽快かつ簡単に揺動、また回転するので、容器1を早期に揺動させたり、また回転させたりするのに有効に作用する。またこの作用は後述する液体3および装飾要素4などを容器1に収納した状態においても、容器1を揺動また回転させたり、あるいは容器の揺動また回転を補助することができる。短冊19が紙製の場合は、図1に示すように本体19aの表面あるいは裏面または両面に仮着紙19bを貼着し、本体19aに取り扱い説明あるいは絵柄を施し、また仮着紙19bの表面も同様に印刷処理しておく。本体19aまた仮着紙19bの表面に絵柄を施す場合、異なる絵柄が好ましい。また本体19aに取り扱い説明が印刷されている場合、仮着紙19bは一旦、剥離した後、再度、仮着紙19bを本体19aに張り付けることができるものとしてもよい。
【0029】
図1に示すように、容器1の中には、折畳みが可能な柔軟な無色透明のビニル製の袋2の中に無色透明の水3と共に密閉収納されている。この装飾要素4は無色透明の極細の吊り糸21、例えばてぐすを介して無色透明の浮き玉22に連結されている。装飾要素4は水3の中で浮き玉22の浮力によって袋2の底部に接触しないように、また袋の底部より上方のところで動くことができるように吊持されている。
【0030】
上記袋2は、図3aに示すように底面2aはアーモンド形になっており、また図3a乃至図3cに示すように前面2bおよび後面2cはそれぞれの下方は、下端が下向きに凸湾する湾曲面になっている。上記前面2bの下縁は上記底面2aのアーモンド形の一方の周縁と溶着Y1し、また後面2cの下縁は同底面2aの他方の周縁と溶着Y2し、さらに上記前後面2b、2cのそれぞれの対向する側縁を溶着Y3している。明らかなように袋2は底襠の両側が側面の下方まで延びているアーモンド形の底襠付きの袋に形成されている。それぞれの溶着部は袋2の柔軟な素材に張り力を与えることができるようなそれ相当の幅になっている。特に底面2aの溶着部Y1、Y2は周縁から水平に延びているので、底面2aは実質的な収納部分の底面の面積よりも拡大している。したがって非常に安定感の良い底面になっている。
上記袋2は図4aに示すように水3、浮き玉付きの装飾要素4などを収容した後、図3bに示す袋の口部2dを溶着Y4するが、全ての溶着部は隣接する溶着部とつながっている。しかして図4aおよび図4bに示すように底面2aの両側は持ち上げられ、また下向きに凸湾する湾局面を保持する。また図4bに示すように密封された袋2の側面はほぼ三角形状を形成する。しかして水3や装飾要素が収容された状態の袋は重心が低く、また収容された水の周囲は張り力のある溶着部Y1、Y2で囲繞されているので、自立し、また転倒することを防止している。
【0031】
水3は通常の水道水を防腐処理をしたものを用いることができる。水道水は粘性が低いので、吊り糸21、浮き玉22および装飾要素4が揺れるのに格別の影響はない。水量は装飾要素4が袋2の底部に接触しないように、また浮き玉22が浮遊できる量になっている。また容器1の中に全体が納まるように水量を加減する。装飾要素4は水棲の動植物、虫、または魚など、水との相性がよいものを実物に似せて、立体的に形成している。したがって水中で動いているときは、臨場感溢れる表情を呈する。なお、装飾要素4が水中に生息しないもの、例えば空を飛ぶ昆虫類や鳥類は水を空に見立てることができるので、水中にあっても違和感はなく、使用することができる。
【0032】
図4に示すように袋2は、底面2aは前述のとおり下向きに凸湾した湾曲面に形成され、また側面は上方に向かって漸次細くなっているので、水などを入れた袋2全体の重心は下方に位置する。したがって図4bに示す袋は、球体形の容器1に収納した状態においても非常に安定感がある。また容器1の底部に密着し易く、一体感がある。そのため容器1の揺れまたは回転などの動きは、袋2の中の水や装飾要素4が敏感に反応する。例えば容器1の揺れが小さくても、装飾要素4は揺れ動くことができる。なお上記袋2は容器1に収容できる大きさにしているのが好ましい。しかし袋2が容器よりも高い場合、袋は柔軟であるから、折畳んで容器1に収容することができる。
【0033】
前記装飾要素4は、前述のとおり袋2が自立できるので、袋2ごと容器1から取り出して、机の上などにおいて飾ることができる。この場合、袋2の底面2aは柔軟であるから、水平の机上でも比較的安定した状態で飾ることができる。一方、底面2aは、全体的には弧面を保持しているので、袋2の側面の一方を他方に押すと揺り戻される。そのため装飾要素は揺動するので、吊持状態にしないでも揺動を楽しむことができる。また、装飾要素を袋ごと、他の容器に移し替えることもできる。例えば袋は柔軟であるから、仮に容器が細かったり、小さかったりしても、容器の形状に合わせることは可能である。その場合の容器は吊り持用、また設置用のいずれにも適応できる。
【0034】
図1に示す装飾具は、その外観はまるで慣れ親しんできた風鈴の外観を呈し、さらに水中の装飾要素4が風力および風向によって様々な動きをする。特に水3の中での動きは水の抵抗を受けながら揺動あるいは回転をするので非常に繊細である。また、一律的に動く単調な動きとは異なり、非常に興趣がある。また風を感じながら水の動く様子はいかにも涼しげであるから、一層涼感を得ることになる。そして従来の風鈴の釣鐘部に絵柄を施したものとは異なる装飾要素の動きを観賞することができる。
【0035】
具体的には、容器1が窓外の風通しのよい場所に吊り紐18を引っ掛けて吊持される場合、つまり自然の風を利用する場合、自然の風は一定の風力または風向が維持されるわけではないので、容器1は変化に富んだ揺動、または回転をする。特に短冊19は、容器以上にこうした風の影響を強く受け、吊り紐が捩れて容器1への回転作用、あるいは揺動作用を与える。したがって装飾要素4は自然の風によって、大きくも小さくも変化にとんだ動きを継続的に、または単発的にすることができ、また非常に繊細かつ大胆に動くこともできる。また装飾要素が水棲動植物または魚などの場合、水3の中での動きは非常に臨場感あふれたものになる。そしてこのような装飾要素4の動きは計算されたものではないので、興趣に富んでいる。また、仮に容器1が激しく揺れても、装飾要素4は水3に抵抗して動くので、同じ激しい動きにはならず、容器の動きの激しさと装飾要素の抑制された動きのギャップが興趣に富んでいる。また容器1が少しの揺れの場合でも、装飾要素は水が少し揺れるだけで簡単に、かつ繊細に動く。そのため従来の風鈴が鳴らない程度の風でも、装飾要素の動きを見て、涼感を得ることができる。なおエアコンディショナーや扇風機などの機械的な風を利用する場合、自然の風のような上記効果は望めないが、風力および風向を自然の風に機能調整しておけば、それに近い効果を得ることができる。
【0036】
なお、図1に示す容器1が水密状態で嵌合できる場合、袋2を省略して、液体と装飾要素4を直接容器1に収納することもできる。また袋2の中には図4aに示すように装飾要素4以外に袋2の底部に、例えば海底に沈む石、貝、海草やさんご礁など海中の生き物などの模擬物を装飾補助材23として、収納しておいてもよい。これらの装飾補助材23は袋2の底部に散在して設けているので、装飾要素4のように繊細に揺れ動くことはできないが、容器1が大きく揺れ動いた場合には、袋2の底部で動く。そのため袋の中では、装飾要素の水中で動く様と、装飾補助材23の底部で動く、異なる動きを同時に観賞できる。なお水3は無色透明に限るものではなく、装飾要素4また装飾補助材23の装飾効果が生かせる範囲で有色透明であってもよい。
【0037】
なお袋2の底部は図5に示すように、袋2の底面の縁から垂直に脚部30が延びているスタンディング形態のものであってもよい。この脚部30は水平面上に置く場合に、適している。しかし脚部は折り畳むことができるので、容器の形状に関係なく、収納することもできる。また、図6に示すように、袋2の口部の溶着部Y4が吊持用穴25を穿設した突片26を設けた形状にしておけば、この突片26を前記容器1の身部7と蓋部8の突片13、13の間に介在させ、かつ吊持用穴25にも吊り環17を通すことができる。袋2は容器1内で吊持された状態になるが、底面2aは容器1の内面に接触していてもよい。つまり袋2と容器1は上下で接触しているので、一体感が一層、良好となり、また袋の形状も損なわれないので、好体裁の外観を呈する。このような状態の装飾要素は、袋が吊り環に直結しているので、揺動し易くなる。
【0038】
図7は装飾具のその他の実施形態を示しているが、この装飾具の容器41は前記実施形態の図4aの袋2の上方を図6に示す形態に変更し、また溶着部Y1、Y2を垂直方向に延ばした形態に変更している。この溶着部には一対の風受け部材49をそれぞれ取り付けている。風受け部材49としては、薄肉の貝細工31を連結したものを使用している。これは風を受けたときに風受け部材同士がぶつかって涼感音を奏でるのに有効である。図示の容器41には前記実施形態と同じように水43、浮き玉付きの装飾要素44などを収容している。容器41は柔軟であるから、外側から内側に指先などで押すと、表面が凹むので、水43や装飾要素44を動かすことができる。したがって意図的に装飾要素44を確かに動かすことができる。
【0039】
上記の実施形態は、装飾要素44の動きと貝細工のぶつかり合う涼感音を同時に体験することができる。なお、上記貝細工以外に、風によって涼感音を奏でるものであってもよい。
なお図1に示す容器1および図7に示す容器41は、風受け部材がこれらの容器を揺動または回転させるのに有効であるが、容器の吊持は一点吊持なので、これ自体が非常に不安定な状態になっている。したがって仮に風受け部材は無くても、容器は多少なりとも揺れ動き、また装飾要素は揺れ動く。したがって容器に風受け部材が設けられていない状態で使用することもできる。また容器が、柔軟な内容器に装飾要素及び水などを収容して密封し、それをまるごと柔軟な外容器の中に収容して密封してなる二重構造のものでもよい。これは図7の容器と同じように意図的に装飾要素を動かすことができるが、容器は二重構造になっているので、万一、指先で押したりしている時に、外側の容器が破損しても、水洩れが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の吊持用可動装飾具の一実施形態を示す正面斜視図である。
【図2】図2aは図1の容器の嵌合部分の断面図、図2bは図1の容器の天部の一部斜視図、図2cは図1の容器の底部の一部斜視図である。
【図3】図3aは袋の正面図、図3bは同袋の底面図、3c同袋の側面図である。
【図4】図4aは装飾要素などが密封された袋の正面図、図4bは図4aの側面図である。
【図5】その他の袋の実施形態を示す一部省略の正面図である。
【図6】その他の袋の実施形態を示す一部省略の正面図である。
【図7】その他の吊持用可動装飾具の上面斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 容器
2 袋
2a 底面
2b 前面
2c 後面
2d 口部
3 水
4 装飾要素
5 吊持手段
6 揺動手段
7 身部
8 蓋部
9a 水平面
9b 立ち上がり面
10a 嵌合部
10b 被嵌合部
11a 凹条
11b 凸条
12 吊持用穴
13 突片
14 紐通し穴
15 突片
17 吊り環
18 吊り紐
19 短冊
19a 本体
19b 仮着紙
20 吊り紐
21 吊り糸
22 浮き玉
23 装飾補助材
25 吊持用穴
26 突片
30 脚部
31 貝殻
41 容器
43 水
44 装飾要素
45 風受け部材
Y1 溶着部
Y2 溶着部
Y3 溶着部
Y4 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視可能な容器と、この容器の中に収納される透視可能な透明度の液体と、この液体の中で揺動可能に支持されている装飾要素と、この容器の天部に連結した、この容器を揺動あるいは回転可能に吊持するための吊持手段とからなる吊持用可動装飾具。
【請求項2】
前記容器が比較的硬質である請求項1記載の吊持用可動装飾具。
【請求項3】
前記容器が比較的軟質である請求項1記載の吊持用可動装飾具。
【請求項4】
前記硬質の容器の内部に透視可能な軟質の第二の容器が収容され、この第二の容器の中に前記液体および装飾要素が密閉収納されている請求項第2項記載の吊持用可動装飾具。
【請求項5】
前記容器の外側に容器を揺れ動かすことが可能な揺動手段を設けている請求項1または4記載の吊持用可動装飾具。
【請求項6】
前記揺動手段がその一端が自由端で、同他端を前記容器に連結している風受け部材である請求項5記載の吊持用可動装飾具。
【請求項7】
前記容器がそれぞれ概略半球形の椀状に形成された身部および蓋部からなる請求項2に記載の吊持用可動装飾具。
【請求項8】
前記軟質の第二の容器の底部が下向きに凸湾形成されている請求項4記載の吊持用可動装飾具。
【請求項9】
前記装飾要素が前記液体に浮く浮き部材に連結されている請求項1または4記載の吊持用可動装飾具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209467(P2007−209467A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31260(P2006−31260)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(591249471)
【Fターム(参考)】